説明

光電極構造体及びその製造方法

【課題】光電極構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】光負極基板上にナノワイヤを含む光散乱層を配置する段階と、該光散乱層に無機バインダ溶液を塗布し、該光散乱層を該光負極基板上に固定させる段階と、を含む光電極構造体の製造方法である。これにより、該製造された光電極構造体は、光散乱層の基板に対する接着力が向上し、光電流密度を上昇させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電極構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染料感応太陽電池(dye-sensitized solar cell)は、一般的に、光電極、相対電極及び電解質から構成され、そのうち光電極は、透明伝導性基板上に、広いバンドギャップエネルギーを有する金属酸化物ナノ粒子及び感光性染料を吸着させて使用し、相対電極としては、透明伝導性基板上に、白金をコーティングして使用する。
【0003】
染料感応太陽電池は、太陽光が入射されれば、太陽光を吸収した感光性染料が励起状態(excited state)になり、電子を金属酸化物の伝導帯に送る。伝導された電子は、電極に移動し、外部回路に流れて電気エネルギーを伝達し、電気エネルギーを伝達した分だけ低いエネルギー状態になって相対電極に移動する。その後、感光性染料は、金属酸化物に伝達した電子数だけ電解質溶液から電子を供給されて本来の状態に戻るが、このときに使われる電解質は、酸化−還元反応によって、相対電極から電子を受けて感光性染料に伝達する役割を行う。
【0004】
前記光電極は、染料がコーティングされた金属酸化物ナノ粒子から構成されている光吸収層と、光吸収層で吸収することができない光を再び光吸収層に戻す光散乱層とから構成されている。光散乱層は、染料が吸着された光吸収層で全て吸収できない光をさらに散乱させることによって、光電子変換効率を向上させることができる。しかし、光散乱層は、約200ないし500nmほどと、比較的大サイズの金属酸化物粒子が使われるが、これは、光散乱の効果だけ有しており、生成された光電子を透明伝導性基板に伝達することができないという短所がある。
【0005】
染料感応太陽電池のエネルギー転換効率を高めるためには、太陽光によって、染料から発生した光電子が電極に円滑に移動することができるシステム開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光散乱を誘導すると同時に、生成された光電子の伝達経路を提供して光電流密度を向上させ、併せて光負極基板に対する光散乱層の接着力を向上させることができる光電極構造体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって、光負極基板上に、ナノワイヤを含む光散乱層を配置する段階と、前記光散乱層に無機バインダ溶液を塗布し、前記光散乱層を前記光負極基板上に固定させる段階と、を含む光電極構造体の製造方法が提供される。
【0008】
本発明によって、また、光負極と、ナノワイヤと、を含む、前記光負極基板上に配置された光散乱とを、を含み、前記光散乱層は、無機バインダによって、前記光負極基板上に固定された光電極構造体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明による光電極構造体の製造方法は、光負極基板上にナノワイヤを含む光散乱層を形成し、光散乱を誘導すると同時に、生成された光電子の伝達経路を提供することによって、光電流密度を上昇させ、染料感応太陽電池の効率を増大させることが可能である。また、前記光散乱層の形成時、無機バインダ溶液を利用して、光負極基板に対する光散乱層の接着力を向上させ、光電極構造体の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態によって製造された光電極構造体を概略的に図示した断面図である。
【図2】実施例1によって製造された染料感応太陽電池での光散乱層形成後の表面に対するSEM(scanning electron microscope)写真である。
【図3】実施例1によって製造された染料感応太陽電池での光散乱層形成後の表面に対するSEM写真である。
【図4】図4Aは、実施例4で、光負極構造体のTiOナノワイヤ表面の微細構造を5,000倍率で拡大観察したSEMイメージである。図4Bは、実施例4で、光負極構造体の断面微細構造を5,000倍率で拡大観察したSEMイメージである。
【図5】図5Aは、実施例4で、TiOナノワイヤ及び光吸収層の界面部分の微細構造を50,000倍率に拡大観察したSEMイメージである。図5Bは、実施例4で、図5Aの界面を傾けて観察した微細構造を、50,000倍率に拡大観察したSEMイメージである。
【図6】実施例1及び比較例1,2による染料感応太陽電池の光電流−電圧曲線を示したグラフである。
【図7】実施例1及び比較例1,2による染料感応太陽電池の入射する光子に対する電流生産効率(IPCE:incident photon to current efficiencies)を測定した結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による光電極構造体の製造方法について、さらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態による光電極構造体の製造方法は、光負極基板上に、ナノワイヤを含む光散乱層を配置する段階と、前記光散乱層に無機バインダ溶液を塗布し、前記光散乱層を前記光負極基板上に固定させる段階と、を含む。
【0013】
前記光電極構造体の製造に使われる前記光負極基板は、例えば、次の通りである。
【0014】
一実施例によれば、前記光負極基板は、光透過性導電基板と、前記光透過性導電基板に配置された、染料が吸着されたナノ粒子を含む光吸収層と、を含んだものである。
【0015】
前記光透過性導電基板としては、例えば、透明基板上に導電性フィルムがコーティングされたものを使用する。
【0016】
前記導電性フィルムに使われる物質は、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープト酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、SnO、In、ZnO、伝導性不純物がドーピングされたTiOなど多様であり、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で使用可能である透明導電性酸化物であるならば、いずれも使用することができる。それら酸化物を少なくとも一つ以上積層して導電性フィルムを形成することができる。
【0017】
前記導電性フィルムを支持する支持体の役割を行う透明基板は、外部光の入射が可能なように透明に形成され、石英及びガラスのような透明無機基板またはプラスチック基板などを使用することができる。柔軟性ある染料感応太陽電池の場合、プラスチック基板が有用である。プラスチックの具体的な例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリスチレンなどを挙げることができる。
【0018】
前記光透過性導電基板に配置された光吸収層は、染料が吸着されたナノ粒子を含む。前記ナノ粒子の平均粒径は、5ないし50nmであって、例えば、5ないし20nmであり、例えば、10ないし50nmである。これは、ナノ粒子の比表面積を大きくし、さらに多量の染料分子を吸着させることによって、さらに多量の光を吸収させるものである。
【0019】
前記ナノ粒子は、染料のLUMO(lowest unoccupied molecular orbital)より酸化物の伝導帯エネルギーが低い半導体酸化物からなり、チタン(Ti)酸化物、スズ(Sn)酸化物、ニオブ(Nb)酸化物、ジルコニウム(Zr)酸化物、タングステン(W)酸化物、バナジウム(V)酸化物、亜鉛(Zn)酸化物、銅(Cu)酸化物、鉄(Fe)酸化物、鉛(Pb)酸化物、ビスマス(Bi)酸化物、カドミウム(Cd)酸化物、タンタル(Ta)酸化物、ストロンチウム(Sr)酸化物、インジウム(In)酸化物、イリジウム(Ir)酸化物、ランタン(La)酸化物、モリブデン(Mo)酸化物、マグネシウム(Mg)酸化物、アルミニウム(Al)酸化物、イットリウム(Y)酸化物、スカンジウム(Sc)酸化物、サマリウム(Sm)酸化物、ガリウム(Ga)酸化物、ストロンチウムチタン(SrTi)酸化物、カリウムタンタル(KTa)酸化物、バリウムチタン(BaTi)酸化物、鉄チタン(FeTi)酸化物、イットリウム鉄(YFe)酸化物、カドミウム鉄(CdFe)酸化物、鉛鉄(PbFe)酸化物、水銀ニオビウム(HgNb)酸化物、ZnS、In、CdS、ZrS、HgS、MoS、HfS、FeS及びPbSからなる群から選択される少なくとも1つの半導体酸化物を含んでもよい。例えば、二酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化スズ(SnO)、酸化ニオブ(Nb)、三酸化タングステン(WO)などを使用することができる。具体的に、例えば、このうち光電子の生成効率にすぐれる二酸化チタン(TiO)を使用することができる。しかし、必ずしもそれら酸化物に限定されるものではなく、当技術分野で使用可能である半導体酸化物であるならば、いずれも使用することができる。
【0020】
前記ナノ粒子は、光電子を生成する染料の電子生成効率を高めるために、染料が吸着される表面に広まるように多孔質で生成されてもよい。
【0021】
一方、前記ナノ粒子に吸着される染料は、光電子発生に直接参与する素材であって、可視光全領域にわたって吸収が起こり、吸光係数が大きいほど有利である。染料のLUMOは、前記ナノ粒子をなす半導体酸化物の伝導帯エネルギーより高く設計される。前記光電極構造体の製造方法に使用可能である染料としては、有機金属化合物、有機化合物及びInP,CdSeなどの量子ドット無機化合物などを挙げることができる。前記有機金属化合物の例としては、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ユウロビウム(Eu)、鉛(Pb)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)などの金属を含む化合物がある。例えば、前記染料は、ルテニウム系N3,N719、ブラックダイ(Black dye)などを使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で、太陽光に感応することができる染料として使用可能である染料であるならば、いずれも可能である。前記N3は、RuL(NCS)(L=2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)であり、N719は、RuL(NCS):2TBA(L=2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸、TBA=テトラ−n−ブチルアンモニウム)を示す。
【0022】
前記光吸収層の厚さは、約20μm以下、例えば、1ないし20μm、さらに具体的には、1ないし15μmである。光吸収層は、構造上の理由で直列抵抗が大きく、直列抵抗の増加は、変換効率の低下をもたらすために、厚さを前記範囲に調節してその機能を維持しつつ、直列抵抗を低く維持して変換効率の低下を防止することができる。
【0023】
前記光負極基板は、当技術分野で公知の方法を利用して製造することができる。例えば、前記光負極基板は、ナノ粒子(例えば、二酸化チタンナノ粒子)、バインダ及び溶媒を含むペースト組成物をスピンコーティング、ディップコーティングなどを利用して、光透過性導電基板上に一定厚に塗布した後、熱処理することによって製造される。一方、一実施例によれば、光散乱層と光負極基板との接着力を向上させるために、光吸収層を形成するために塗布したナノ粒子と、その上に光散乱層を形成するために蒸着させたナノワイヤとを同時に熱処理することにより、光吸収層を接する界面に存在するナノワイヤの少なくとも一部を前記光吸収層に含浸させる。このとき、光散乱層の接着力をさらに向上させるために、蒸着されたナノワイヤを熱処理する前に、熱圧着したり、あるいはテトラヒドロフラン(THF)のような接着性物質で蒸気処理する方式を採用することも可能である。
【0024】
一方、他の一実施例によれば、前記光負極基板は、光吸収層を別途に配置させていない光透過性導電基板でもって構成されてもよい。このように、光透過性導電基板上に別途の光吸収層を配置させない場合には、前記光散乱層が光吸収及び光電子発生の機能を同時に行うことができるように、前記光散乱層に染料を吸着させたり、あるいは前記光散乱層に光吸収層に使われるナノ粒子をさらに含めて染料を吸着させて使用することが可能である。
【0025】
前記光負極基板が準備されれば、前記光負極基板上に、ナノワイヤを含む光散乱層を配置する。
【0026】
前記光散乱層を構成するナノワイヤは、導電性であり、一次元の線形構造を有する。光散乱効果を有するように、前記ナノワイヤの直径は、約100ないし600nmの範囲に調節することができ、例えば、前記ナノワイヤの直径は、200ないし500nmであってもよい。
【0027】
前記ナノワイヤは、チタン(Ti)酸化物、スズ(Sn)酸化物、ニオブ(Nb)酸化物、ジルコニウム(Zr)酸化物、タングステン(W)酸化物、バナジウム(V)酸化物、亜鉛(Zn)酸化物、銅(Cu)酸化物、鉄(Fe)酸化物、鉛(Pb)酸化物、ビスマス(Bi)酸化物、カドミウム(Cd)酸化物、タンタル(Ta)酸化物、ストロンチウム(Sr)酸化物、インジウム(In)酸化物、イリジウム(Ir)酸化物、ランタン(La)酸化物、モリブデン(Mo)酸化物、マグネシウム(Mg)酸化物、アルミニウム(Al)酸化物、イットリウム(Y)酸化物、スカンジウム(Sc)酸化物、サマリウム(Sm)酸化物、ガリウム(Ga)酸化物、ストロンチウムチタン(SrTi)酸化物、カリウムタンタル(KTa)酸化物、バリウムチタン(BaTi)酸化物、鉄チタン(FeTi)酸化物、イットリウム鉄(YFe)酸化物、カドミウム鉄(CdFe)酸化物、鉛鉄(PbFe)酸化物、水銀ニオビウム(HgNb)酸化物、ZnS、In、CdS、ZrS、HgS、MoS、HfS、FeS及びPbSからなる群から選択される少なくとも1つの半導体酸化物を含んでもよい。例えば、前記ナノワイヤは、二酸化チタン(TiO)または酸化亜鉛(ZnO)のナノワイヤ、またはそれらの混合物であってもよい。しかし、必ずしもそれらに限定されるものではなく、ナノワイヤ製作が可能であり、光散乱効果及び伝導性を有するものであるならば、当技術分野で使用可能である半導体酸化物は、いずれも使用することができる。前記ナノワイヤは、前記ナノ粒子と同一の半導体酸化物を使用したり、あるいは互いに異なる半導体酸化物を使用して形成することが可能である。
【0028】
前記ナノワイヤは、例えば、CVD(chemical vapor deposition)、レーザ溶発(laser ablation)、熱蒸着(thermal evaporation)、電気蒸着(electrodeposition)、電界放射(electrospinning)など多様な方法を利用して形成することができる。一実施例によれば、前記ナノワイヤは、電界放射法を利用して形成することができる。前記電界放射法を利用して、ナノワイヤが絡まっている構造(tangled structure)に光散乱層を形成することができる。
【0029】
さらに具体的に、前記光散乱層の配置段階は、ナノワイヤ前駆体を含む前駆体溶液を、前記光負極基板の一面上に電界放射した後、熱処理する段階を含んでもよい。
【0030】
例えば、前記前駆体溶液は、ナノワイヤ前駆体が溶媒に含まれたものであり、必要によって、バインダ、pH調節のための酸、その他添加剤をさらに含んでもよい。
【0031】
前記ナノワイヤ前駆体は、例えば、チタンイソプロポキシド、チタンエトキシド、塩化チタン及びチタンメトキシドからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。このように、前駆体物質として、チタン化合物を利用する場合、二酸化チタンのナノワイヤを含む光散乱層を形成することができ、熱処理によって二酸化チタンを生成することができる前駆体であるならば、前述のナノワイヤ前駆体に限定されるものではなく、いずれも使用可能である。
【0032】
前記前駆体溶液で、前記ナノワイヤ前駆体の含有量は、ナノワイヤ前駆体と溶媒との総重量を基準に、5ないし30重量%であり、さらに具体的には、10ないし20重量%であってもよい。前記含有量範囲で、前駆体溶液内にナノワイヤ前駆体を均一に分散させ、均一組織のナノワイヤを形成することができる。
【0033】
前記ナノワイヤ前駆体を溶解することができる溶媒としては、テレピネオール、エタノール、蒸溜水、エチレングリコール、α−テレピネオールなどを利用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で使用可能である溶媒であるならば、いずれも使用することができる。
【0034】
前記溶媒の含有量は、ナノワイヤ前駆体と溶媒との総重量を基準に、70ないし95重量%であり、さらに具体的には、80ないし90重量%であってもよい。前記含有量範囲で、ナノワイヤ前駆体が均一に分散された前駆体溶液を形成することができる。
【0035】
前記前駆体溶液が電界放射されて形成されたナノワイヤが、光負極基板上にある程度の接着力を有してバインディングされるように、前記前駆体溶液にバインダがさらに添加され、前記バインダとしては、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチルセルロース、ヒドロプロピルセルロースなどを使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で使われるバインダであって、400℃以上で熱分解されるものであるならば、いずれも使用可能である。
【0036】
前記前駆体溶液での前記バインダ含有量は、前記ナノワイヤ前駆体100重量部に対して、10ないし40重量部であり、さらに具体的には、20ないし30重量部であってもよい。前記含有量範囲で、前駆体溶液の粘度を適正に維持し、電界放射を容易になさしめ、形成されたナノワイヤ間に適切な結合力を有するように一助とする。
【0037】
また、前記前駆体溶液の酸度(pH)を調節するために、酢酸のような酸をさらに投入することができ、必要によっては、その他の添加剤などをさらに投入することが可能である。
【0038】
前記前駆体溶液が準備されれば、前記前駆体溶液を前記光負極基板の一面上に電界放射させた後で熱処理し、光散乱層を形成する。
【0039】
一実施例によれば、前記光散乱層は、前記光散乱層が光透過性導電基板に配置された光吸収層の少なくとも一部を覆いつつ、前記光散乱層の少なくとも一部が、前記光透過性導電基板に接触するように前駆体溶液を電界放射させ、光散乱層を形成することが望ましい。前記光透過性導電基板と接触するように、ナノワイヤを含む光散乱層を配置することによって、前記光散乱層が光散乱を誘導するだけではなく、光吸収層で生成された光電子を光散乱層のナノワイヤを介して、光透過性導電基板に輸送する伝達経路を提供できる。これによって、光電子が通過する界面の数が相対的に減少し、光電子の再結合による損失率を低下させ、光電流密度を上昇させ、光電変換効率を上昇させることができる。
【0040】
前記電界放射は、例えば、前駆体溶液を、5ないし10kVの電圧で、10ないし20μ/分の速度で、10ないし30分間行うことができる。前記電界放射条件で、電界放射時間によって、光散乱層の厚さを調節することができる。
【0041】
また、前記前駆体溶液を電界放射する間、例えば、ホットプレートなどを利用し、前記光負極基板を100ないし50℃の温度に維持することができる。このように、光負極基板を、常温より高い高温に維持しつつ、電界放射を実施する場合、電界放射されたナノワイヤの接着力がさらに向上しうる。
【0042】
ナノワイヤ前駆体溶液を電界放射した後、熱処理温度は、400ないし600℃範囲で遂行される。例えば、前記熱処理温度は、400ないし550℃、さらに具体的には、400ないし500℃であってもよい。熱処理温度が過度に高ければ、光負極基板が曲がることがあり、熱処理温度が過度に低ければ、二酸化チタンの焼成が困難であるので、前記熱処理温度範囲で調節し、欠陥が少く、かつ光伝導効率の高い光散乱層を得ることができる。
【0043】
このように形成された光散乱層は、厚さが0.1ないし10μmであり、例えば、0.5ないし3μmであってもよい。光散乱層の厚さが前記範囲であるとき、光伝導効率が高く、かつ光散乱効果が優秀である。
【0044】
前記光散乱層を配置した後、前記光散乱層に染料を吸着させる段階がさらに含まれてもよい。これにより、光散乱層のナノワイヤに染料を吸着させれば、前記光散乱層は、太陽光を吸収して光電子を発生させ、固有の光散乱機能だけではなく、光電子の発生及びその輸送の機能を同時に行うことができるのである。ここで、使用可能な染料は、前述の前記光吸収層に使用可能な染料と同じである。また選択的に、前記光散乱層に染料を吸着させる段階は、光散乱層に無機バインダ溶液を塗布し、前記光散乱層を前記光負極基板上に固定させる段階後に行ってもよい。
【0045】
前記光負極基板に光散乱層を配置させた後には、前記光散乱層に無機バインダ溶液を塗布し、前記光散乱層を前記光負極基板上に固定させる。
【0046】
前記ナノワイヤ前駆体溶液を電界放射した後に熱処理して得られた前記光散乱層は、形成されたナノワイヤ自体にある程度の接着力があるが、ナノワイヤの接着力が完全ではなく、前記光散乱層が前記光負極基板上に完全に固定されたものであるとは言えない。従って、無機バインダ溶液を前記光散乱層に塗布することによって、光散乱層の接着力問題を改善させ、光散乱層を前記光負極基板上に固定させることができる。
【0047】
前記無機バインダ溶液の塗布は、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング及びスクリーン印刷のうち、少なくとも1つの方法を利用してなされる。
【0048】
また、前記無機バインダ溶液を塗布した後、前記無機バインダ溶液が塗布された光散乱層を熱処理する段階をさらに含んでもよい。例えば、前記無機バインダ溶液が塗布された光散乱層の熱処理は、400ないし500℃で行われてもよい。前記熱処理を介して、前記無機バインダ溶液内に含まれた溶媒やバインダ成分は、熱分解され、前記無機バインダ溶液内に含まれた無機質成分は、ナノワイヤ表面に付着した状態、またはナノワイヤ表面にコーティングされた状態で残り、ナノワイヤ間の接着力を向上させつつ、光散乱層を光負極基板上に固定させることができる。
【0049】
前記無機バインダ溶液の塗布及び熱処理は、必要によって数回反復されてもよい。
【0050】
一実施例によれば、前記無機バインダ溶液は、TiOゾルであってもよい。前記TiOゾルは、粒径が5ないし50nmであるTiOナノ粒子を含む。例えば、前記TiOゾルは、エチルセルロース、ヒドロプロピルセルロースのようなバインダ内に、TiOナノ粒子を分散させるための分散剤として、ホスフェートエステル系界面活性剤、または長鎖アルコールから由来した極性の酸性エステル(polar acidic ester of long chain alcohol)系添加剤などを利用し、TiOナノ粒子を分散させたゾルを使用することができる。TiOゾルの場合、塗布後に熱処理を介して、TiOナノ粒子がナノワイヤ上に付着された状態で残り、ナノワイヤの結合力を向上させることになる。その場合、前記ナノワイヤ表面に付着されたTiOナノ粒子によって、光吸収あるいは光散乱の役割を同時に期待することができる。
【0051】
一実施例によれば、前記無機バインダは、NbCl含有溶液であってもよい。例えば、前記NbCl含有溶液は、10ないし40mMの濃度でNbClを含んでもよい。前記NbCl含有溶液は溶媒であり、エタノール、蒸溜水、エチレングリコール、テレピネオール、α−テレピネオールなどを使用することができ、必要によっては、他の添加剤を含んでもよい。NbCl含有溶液塗布後、熱処理を介して溶媒は除去され、NbClは、Nb酸化物形態に変化しつつ、ナノワイヤ表面にコーティングされた状態で残る。このように、ナノワイヤ表面にコーティングされたNb酸化物は、ナノワイヤの結合力を向上させるだけではなく、光散乱層で発生しうる光電子の再結合を防止し、光電流密度を上昇させることができる効果を共にもたらす。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、光負極基板と、ナノワイヤを含む、前記光負極基板上に配置された光散乱層とを含み、前記光散乱層は、無機バインダによって、前記光負極基板上に固定された光電極構造体が提供される。
【0053】
一実施形態によって製造した光電極構造体の断面を、図1に概略的に図示した。
【0054】
図1を参照すれば、一実施形態によって製造された光電極構造体1は、光負極基板10及び光散乱層20を含み、ここで、前記光負極基板10は、光透過性導電基板11;前記光透過性導電基板11に配置され、染料が吸着されたナノ粒子を含む光吸収層12を含んでもよい。
【0055】
一方、前記光散乱層20は、電界放射法を利用して、ナノワイヤが絡み合った構造(tangled structure)に形成されてもよい。前記光散乱層20は、前記光吸収層12の少なくとも一部を覆いつつ、前記光散乱層20の少なくとも一部が、前記光透過性導電基板11に接触するように配置されることによって、光吸収層12で形成された電子が、光透過性導電基板11に容易に伝えられるように促進することができる。
【0056】
かような光電極構造体1は、光電子の移動が、光吸収層12から、ナノ粒子の界面を介して光透過性導電基板11に輸送されもするが、光散乱層20のナノワイヤを介して、光電子が光透過性導電基板11に輸送される伝達経路が追加して備わるために、相対的に通過する界面の数を減らすことができ、光電子の再結合による損失率を低減させ、光電流密度を上昇させることができる。
【0057】
前記光散乱層20は、無機バインダによって、前記光負極基板10上に固定されるが、前記光散乱層20上に無機バインダ溶液を塗布して熱処理することにより、前記光散乱層20を固定させることができる。一実施例によれば、前記無機バインダ溶液は、TiOゾルであって、前記TiOゾルは、TiOナノ粒子を含んでもよい。TiOゾルの場合、塗布後に熱処理を介して、TiOナノ粒子が、ナノワイヤ上に付着した状態で残るようになり、ナノワイヤの結合力を向上させる。その場合、前記ナノワイヤの表面に付着したTiOナノ粒子によって、光吸収や光散乱の役割を同時に期待することができる。前記TiOナノ粒子は、粒径が5ないし50nmであるものであってもよい。
【0058】
一実施例によれば、前記無機バインダ溶液は、NbCl含有溶液であってもよい。例えば、前記NbCl含有溶液は、10ないし100mMの濃度(例えば、10ないし40mMの濃度)でNbClを含んでもよい。NbCl含有溶液塗布後、熱処理を介して、溶媒は除去され、NbClは、Nb酸化物形態に変化しつつ、ナノワイヤ表面にコーティングされた状態で残る。このように、ナノワイヤ表面にコーティングされたNb酸化物は、ナノワイヤの結合力を向上させるだけではなく、光散乱層で発生しうる光電子の再結合を防止し、光電流密度を増大させることができるという効果を共にもたらす。
【0059】
一実施例によれば、光散乱層20と光負極基板10との接着力を向上させるために、光散乱層13に含まれたナノワイヤのうち、前記光吸収層12と接する界面に存在するナノワイヤの少なくとも一部が、前記光吸収層12に含浸されていてもよい。
【0060】
このように製造された光電極構造体を染料感応太陽電池に採用することによって、染料感応太陽電池の光電変換効率を上昇させることができる。
【0061】
一実施形態による染料感応太陽電池は、前述の光電極構造体;前記光透過性導電基板(以下、「第1電極」とする)に対向して配置される第2電極;及び前記光透過性導電基板(すなわち、第1電極)と前記第2電極との間に配置された電解質;を含む。
【0062】
前記光電極構造体については、前述の通りであり、前記第2電極は、光電極構造体の第1電極に対向して配置され、電解質は、前記光電極構造体の第1電極と前記第2電極との間に配置される。前記第2電極及び電解質は、当技術分野で一般的な構成を含むことができ、その製造方法もまた、一般的な方法を利用して製造することができるので、特別に制限するものではない。
【0063】
例えば、前記第2電極は、導電性物質であるならば、いずれも制限なしに使用可能であるが、絶縁性の物質であっても、第1電極に対面する側面に導電層が設置されていれば、それも使用可能である。例えば、第2電極として、透明基板上に透明導電性酸化物を含む透明電極、及び酸化−還元対(redox couple)を活性化させる触媒を含むものを使用することができる。
【0064】
第2電極に使われる前記透明基板は、前記透明電極及び触媒を支持する支持体の役割を行うものであり、石英及びガラスのような透明無機基板またはプラスチック基板などを使用することができる。
【0065】
前記透明電極は、透明導電性酸化物を含み、前記第1電極(すなわち、光透過性導電基板)で説明したところと同様に、ITO、FTO、ATO、IZO、AZO、GZO、SnO、In、ZnO、伝導性不純物がドーピングされたTiOなど、当技術分野で使用可能である透明導電性酸化物であるならば、いずれも使用することができる。それら酸化物を少なくとも一つ以上積層して透明電極を形成することができる。
【0066】
前記触媒は、酸化−還元対を活性化させる役割を行うものであり、白金、金、銀、ルテニウム、パラジウム、イリジウム、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、炭素(C)、WO、TiOまたは伝導性高分子などの伝導性物質を含んでもよい。
【0067】
前記電解質は、第1電極と第2電極との間に配置され、酸化還元によって、第2電極から電子を受けて染料に伝達する役割を行う。
【0068】
電解質は、I/Iのように酸化−還元対に構成されており、Iイオンの源泉としては、LiI、NaI、アルキルアンモニウムヨードまたはイミダゾリウムヨードなどが使われ、Iイオンは、Iを溶媒に溶かして生成させる。電解質の媒質は、アセトニトリルのような液体、またはポリエチレンオキシドのような高分子が使用可能である。液体媒質としては、カーボネート類、ニトリル化合物類、アルコール類などが使われ、特に、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、及びアセトニトリル、メトキシアセトニトリルなどのニトリル化合物などが使用可能である。高分子媒質としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、アクリル−イオン性液体組み合わせ、ピリジン系、ポリエチレンオキシド(PEO)系などが使用可能である。また、前記液体電解質にゲレータ(gelatorを添加し、ゲル型電解質を製造して使用することも可能である。
【0069】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は、それらに限定されるものではない。
【0070】
実施例1
光透過性導電基板(第1電極)として、FTO(2.8T,T:ガラス厚)からなる伝導性薄膜上に、二酸化チタンのナノパーティクルペースト(PST 18NR、JGCC&C社製)を順次にコーティング、乾燥、コーティング及び乾燥し、これを500℃で約30分間熱処理した後、前記コーティング、乾燥、コーティング、乾燥及び熱処理の過程をさらに反復し、10μm厚の光吸収層を形成した。
【0071】
一方、チタンイソプロポキシド1.5g、酢酸0.604ml(0.634g)及びエタノール3ml(2.367g)を混合した混合物をまず準備し、ここにエタノール7.5ml(5.918g)及びポリビニルピロリドン(PVP)0.45gを混合した溶液を投入し、二酸化チタンナノワイヤ前駆体溶液を製造した。前記光吸収層上に、前記二酸化チタンナノワイヤ前駆体溶液を、10kVの電圧で、15μl/分の速度で30分間電界放射した。ノズルの内径は1mm、噴射ノズルから光吸収層までの距離は、30cmであった。また、電界放射する間、前記光吸収層の配置された第1電極基板は、ホットプレートを利用して、300℃に維持した。電界放射後、結果物を500℃で約30分間熱処理し、2μm厚の光散乱層を形成した。
【0072】
前記形成された光散乱層表面に係わるSEM(scanning electron microscope)写真を図2及び図3に示した。図2及び図3から分かるように、二酸化チタンナノワイヤが二酸化チタン光吸収層上に絡まりあった状態で放射されて形成されており、形成されたナノワイヤの平均直径が約100〜140μmであることが分かる。
【0073】
次に、前記結果物を80℃に維持し、これを、染料であるN719をエタノールに0.3mM濃度で溶解した染料分散液に浸漬し、染料吸着処理を24時間行った。その後、染料吸着された光吸収層を、エタノールを利用して洗い出して常温乾燥した。
【0074】
その次に、前記染料吸着された光吸収層上に、エタノールを溶媒としたNbCl 0.1M溶液を1,000rpmの速度で10秒間スピンコーティングし、これを300℃で約30分間熱処理して光電極構造体を製造した。
【0075】
これと別途に、相対電極用として、フルオリンドーピングされた酒石酸化物の透明伝導体上に、スパッタを利用してPt層を蒸着した後、電解液注入のために、0.6mm径のドリルを利用して微細孔を設けた。
【0076】
60μm厚の熱可塑性高分子フィルムを、光電極構造体と相対電極との間に置き、90℃で10秒圧着させることによって、2電極を接合させた。相対電極に形成された微細孔を介して、酸化−還元電解質を注入させ、カバーガラスと熱可塑性高分子フィルムとを利用して微細孔を密封することにより、染料感応太陽電池を製作した。このとき、酸化−還元電解質は、0.62Mの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨード、0.1MのLiI、0.5MのI、0.5Mの4−tert−ブチルピリジンを、アセトニトリルに溶解させたものを利用した。
【0077】
実施例2
前記実施例1で、前記光吸収層形成時に電界放射する間、ホットプレートの温度を200℃に維持したことを除いては、前記実施例1と同じ過程を遂行し、染料感応太陽電池を製造した。
【0078】
実施例3
前記実施例1で、前記光吸収層形成時に電界放射する間、ホットプレートの温度を100℃に維持したことを除いては、前記実施例1と同じ過程を遂行し、染料感応太陽電池を製造した。
【0079】
ナノワイヤ前駆体溶液を電界放射するとき、ホットプレートの温度を300℃(実施例1)、200℃(実施例2)及び100℃(実施例3)に維持しつつ、光散乱層を形成する前記実施例1〜3の結果を比較した結果、ホットプレートの温度が高温であるほど、形成された光散乱層が接着力にすぐれることを確認することができた。
【0080】
実施例4(→TiOナノパーティクル層及びTiOナノワイヤ層の同時焼成)
前記実施例1で、前記FTOガラス上にコーティング及び乾燥されたTiOナノパーティクルペーストを熱処理せずに、前記TiOナノパーティクルペースト、及び次に電界放射されたTiOナノワイヤを500℃で約30分間同時に焼成したことを除き、前記実施例1と同じ過程を実施し、染料感応太陽電池を製造した。
【0081】
前記実施例4において、光負極構造体のTiOナノワイヤ表面の微細構造(図4A)、及び光負極構造体の断面微細構造(図4B)をSEM(scanning electron microscope)で観察したイメージを図示した。図4は5,000倍率に拡大したイメージであり、単位長は、5μmである。
【0082】
また、TiOナノワイヤ及び光吸収層の界面部分の微細構造(図5A)、及び前記界面を傾けて観察した微細構造(図5B)を50,000倍率に拡大観察したSEMイメージを示した。図5A及び図5Bから分かるように、同時焼成によって、TiOナノワイヤがナノパーティクル層(光吸収層)に含浸されて焼結されているところを確認することができた。
【0083】
比較例1
前記実施例1で、前記光散乱層を形成せず、光透過性導電基板(第1電極)上に、光吸収層のみを形成したものを、光電極構造体として使用したことを除き、前記実施例1と同じ過程を遂行し、染料感応太陽電池を製造した。
【0084】
比較例2
前記実施例1で、前記光散乱層に染料を吸着させた後、NbCl 0.1M溶液でもって処理せず、前記染料吸着された光散乱層を、光電極構造体として使用したことを除いては、前記実施例1と同じ過程を遂行し、染料感応太陽電池を製造した。
【0085】
評価例1:光電変換効率評価
前記実施例1及び比較例1,2によって製造された染料感応太陽電池に対して、光電流電圧を測定し、その結果を図6に示した。また、測定された光電流電圧曲線から、開放電圧、電流密度及び充填係数を計算し、それらから太陽電池の効率を評価し、下記表1に示した。
【0086】
ここで、光源としては、キセノンランプを使用し、前記キセノンランプの太陽条件は、標準太陽電池(Frunhofer Institute Solare Engeriessysysteme,Certificate No.C−ISE369,Type of material:Mono−Si+KGフィルタ)を使用して補正し、電力密度100mW/cmで測定した。
【0087】
下記表1の開放電圧、光電流密度、エネルギー変換効率(energy conversion efficiency)及び充填係数(fill factor)の測定条件は、次の通りである。
【0088】
(1)開放電圧(V)及び光電流密度(mA/cm):開放電圧と光電流密度は、Keithley SMU2400を利用して測定した。
【0089】
(2)エネルギー変換効率(%)及び充填係数(%):エネルギー変換効率の測定は、1.5AM 100mW/cmのソーラーシミュレータ(Xeランプ[300W,Oriel]、AM1.5フィルタ及びKeithley SMU2400によって構成される)を利用し、充填係数は、前記で得た変換効率及び下記計算式を利用して計算した。
【数1】

【0090】
前記数式で、Jは、変換効率曲線のY軸値であり、Vは、変換効率曲線のX軸値であり、Jsc及びVocは、各軸の切片値である。
【0091】
また、測定誤差を考慮し、2回にわたって前記値を測定し、その結果を下記表1に併記した。
【表1】

【0092】
図6を参照すれば、実施例1の染料感応太陽電池は、比較例1,2の場合に比べて、光電流密度が上昇するということが分かり、このように光電流密度の上昇は、太陽光の損失減少に起因する。このような結果は、前記表1でも確認可能であり、前記表1から分かるように、実施例1の場合、比較例1,2と比較して、染料感応太陽電池の効率にもすぐれるということが分かる。
【0093】
評価例2:散乱効果評価
前記実施例1及び比較例1,2によって製造された染料感応太陽電池において、染料吸収波長対に係わる吸収intensityについての電流生産効率(IPCE:incident photon to current efficiencies)を測定し、その結果を図7に示した。
【0094】
図7を参照すれば、実施例1の染料感応太陽電池が、比較例1に比べて、散乱効果にすぐれるということが分かり、NbCl無機バインダ溶液を塗布していない比較例2の散乱効果とほぼ類似した散乱効果を有しているということが分かる。
【0095】
以上、本発明の望ましい製造例を参照しつつ説明したが、当該技術分野の当業者であるならば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から外れない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更させることができるということを理解することができるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の光電極構造体の製造方法は、例えば、太陽電関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 光電極構造体
10 光負極基板
11 光透過性基板
12 光吸収層
13 光散乱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光負極基板上に、ナノワイヤを含む光散乱層を配置する段階と、
前記光散乱層に無機バインダ溶液を塗布し、前記光散乱層を前記光負極基板上に固定させる段階と、を含む光電極構造体の製造方法。
【請求項2】
前記光負極基板は、光透過性導電基板と、前記光透過性導電基板に配置された、染料が吸着されたナノ粒子を含む光吸収層と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項3】
前記ナノ粒子は、チタン(Ti)酸化物、スズ(Sn)酸化物、ニオブ(Nb)酸化物、ジルコニウム(Zr)酸化物、タングステン(W)酸化物、バナジウム(V)酸化物、亜鉛(Zn)酸化物、銅(Cu)酸化物、鉄(Fe)酸化物、鉛(Pb)酸化物、ビスマス(Bi)酸化物、カドミウム(Cd)酸化物、タンタル(Ta)酸化物、ストロンチウム(Sr)酸化物、インジウム(In)酸化物、イリジウム(Ir)酸化物、ランタン(La)酸化物、モリブデン(Mo)酸化物、マグネシウム(Mg)酸化物、アルミニウム(Al)酸化物、イットリウム(Y)酸化物、スカンジウム(Sc)酸化物、サマリウム(Sm)酸化物、ガリウム(Ga)酸化物、ストロンチウムチタン(SrTi)酸化物、カリウムタンタル(KTa)酸化物、バリウムチタン(BaTi)酸化物、鉄チタン(FeTi)酸化物、イットリウム鉄(YFe)酸化物、カドミウム鉄(CdFe)酸化物、鉛鉄(PbFe)酸化物、水銀ニオビウム(HgNb)酸化物、ZnS、In、CdS、ZrS、HgS、MoS、HfS、FeS及びPbSからなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、粒径が5ないし50nmであることを特徴とする請求項2に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項5】
前記光散乱層が、前記光吸収層の少なくとも一部を覆いつつ、前記光散乱層の少なくとも一部が、前記光透過性導電基板に接触するように、前記光散乱層を配置することを特徴とする請求項2に記載の光電極構造の製造方法。
【請求項6】
前記ナノワイヤは、チタン(Ti)酸化物、スズ(Sn)酸化物、ニオブ(Nb)酸化物、ジルコニウム(Zr)酸化物、タングステン(W)酸化物、バナジウム(V)酸化物、亜鉛(Zn)酸化物、銅(Cu)酸化物、鉄(Fe)酸化物、鉛(Pb)酸化物、ビスマス(Bi)酸化物、カドミウム(Cd)酸化物、タンタル(Ta)酸化物、ストロンチウム(Sr)酸化物、インジウム(In)酸化物、イリジウム(Ir)酸化物、ランタン(La)酸化物、モリブデン(Mo)酸化物、マグネシウム(Mg)酸化物、アルミニウム(Al)酸化物、イットリウム(Y)酸化物、スカンジウム(Sc)酸化物、サマリウム(Sm)酸化物、ガリウム(Ga)酸化物、ストロンチウムチタン(SrTi)酸化物、カリウムタンタル(KTa)酸化物、バリウムチタン(BaTi)酸化物、鉄チタン(FeTi)酸化物、イットリウム鉄(YFe)酸化物、カドミウム鉄(CdFe)酸化物、鉛鉄(PbFe)酸化物、水銀ニオビウム(HgNb)酸化物、ZnS、InS3、CdS、ZrS、HgS、MoS、HfS、FeS及びPbSからなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項7】
前記ナノワイヤは、二酸化チタン(TiO)を含むことを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項8】
前記ナノワイヤは、直径が100ないし600nmであることを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項9】
前記光散乱層は、前記ナノワイヤが絡まりあった構造を有することを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項10】
前記光散乱層の配置段階は、ナノワイヤ前駆体を含む前駆体溶液を、前記光負極基板の一面上に電界放射した後で熱処理する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項11】
前記ナノワイヤ前駆体が、チタンイソプロポキシド、チタンエトキシド、塩化チタン及びチタンメトキシドからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項10に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項12】
前記電界放射は、5ないし10kVの電圧で、10ないし20μl/分の速度で、1ないし20分間遂行されることを特徴とする請求項10に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項13】
前記前駆体溶液を電界放射する間、前記光負極基板を、100ないし350℃の温度に維持することを特徴とする請求項10に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項14】
前記電界放射後の熱処理は、400ないし600℃で行われることを特徴とする請求項10に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項15】
前記光散乱層は、厚さが0.5ないし3μmであることを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項16】
前記光散乱層の配置段階、または前記光散乱層の固定段階後に、前記光散乱層に染料を吸着させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項17】
前記無機バインダ溶液は、TiOゾルであることを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項18】
前記TiOゾルは、粒径が5ないし50nmであるTiOナノ粒子を含むことを特徴とする請求項17に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項19】
前記無機バインダ溶液は、NbCl含有溶液であることを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項20】
前記NbCl含有溶液は、10ないし100mMの濃度に、NbClを含むことを特徴とする請求項19に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項21】
前記無機バインダ溶液の塗布は、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、スプレーコーティング及びスクリーン印刷のうち、少なくとも1つの方法を利用してなされることを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項22】
前記無機バインダ溶液を塗布した後、前記無機バインダ溶液が塗布された光散乱層を熱処理する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項23】
前記無機バインダ溶液が塗布された光散乱層の熱処理は、400ないし500℃で行われることを特徴とする請求項22に記載の光電極構造体の製造方法。
【請求項24】
光負極基板と、
ナノワイヤを含む、前記光負極基板上に配置された光散乱層と、を含み、
前記光散乱層は、無期バインダによって、前記光負極基板上に固定された光電極構造体。
【請求項25】
前記ナノワイヤは、チタン(Ti)酸化物、スズ(Sn)酸化物、ニオブ(Nb)酸化物、ジルコニウム(Zr)酸化物、タングステン(W)酸化物、バナジウム(V)酸化物、亜鉛(Zn)酸化物、銅(Cu)酸化物、鉄(Fe)酸化物、鉛(Pb)酸化物、ビスマス(Bi)酸化物、カドミウム(Cd)酸化物、タンタル(Ta)酸化物、ストロンチウム(Sr)酸化物、インジウム(In)酸化物、イリジウム(Ir)酸化物、ランタン(La)酸化物、モリブデン(Mo)酸化物、マグネシウム(Mg)酸化物、アルミニウム(Al)酸化物、イットリウム(Y)酸化物、スカンジウム(Sc)酸化物、サマリウム(Sm)酸化物、ガリウム(Ga)酸化物、ストロンチウムチタン(SrTi)酸化物、カルシウムタンタル(KTa)酸化物、バリウムチタン(BaTi)酸化物、鉄チタン(FeTi)酸化物、イットリウム鉄(YFe)酸化物、カドミウム鉄(CdFe)酸化物、鉛鉄(PbFe)酸化物、水銀ニオビウム(HgNb)酸化物、ZnS、In、CdS、ZrS、HgS、MoS、HfS、FeS及びPbSからなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項24に記載の光電極構造体。
【請求項26】
前記無期バインダは、TiOナノ粒子を含むことを特徴とする請求項24に記載の光電極構造体。
【請求項27】
前記無期バインダは、Nbを含むことを特徴とする請求項24に記載の光電極構造体。
【請求項28】
前記光負極基板は、光透過性導電基板と、前記光透過性導電基板上に配置され、染料が吸着されたナノ粒子を含む光吸収層と、を含むことを特徴とする請求項24に記載の光電極構造体。
【請求項29】
前記光散乱層は、前記光吸収層の少なくとも一部を覆いつつ、前記光散乱層の少なくとも一部が、前記光透過性導電基板に接触するように配置されたことを特徴とする請求項28に記載の光電極構造体。
【請求項30】
前記光吸収層と接する界面に存在する前記ナノワイヤのうち少なくとも一部が、前記光吸収層に含浸されていることを特徴とする請求項28に記載の光電極構造体。
【請求項31】
前記光散乱層は、前記ナノワイヤが絡み合った構造を有することを特徴とする請求項24に記載の光電極構造体。
【請求項32】
前記光散乱層は、前記ナノワイヤに吸着された染料をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の光電極構造体。
【請求項33】
請求項24ないし請求項32のうち、いずれか1項に記載の光電極構造体を含む第1電極と、
前記第1電極に対向して配置される第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極間に配置された電解質と、を含む染料感応太陽電池。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−248537(P2012−248537A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−122342(P2012−122342)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】