説明

光電気セルおよび光電気セル用多孔質半導体膜形成用塗料

【課題】
本発明は、使用開始当初から高い光電変換効率を発現する光電気セルおよび該光電気セル用多孔質半導体膜形成用塗料に関する。
【解決手段】
表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)が、有機基含有酸化チタン粒子を含んでなり、
該有機基がアシル基、アロイル基、アルコキシ基、カルボキシレート基からなる群から選ばれる少なくとも1種である光電気セル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用開始当初から高い光電変換効率を発現する光電気セルおよび該光電気セル用多孔質半導体膜形成用塗料に関する。
さらに詳しくは、使用開始当初から高い光電変換効率を発現するともに長期にわたって高い光電変換効率を維持することが可能な光電気セルおよび該光電気セル用多孔質半導体膜形成用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
高バンドギャップを有する金属酸化物半導体材料が光電変換材料、光触媒材料等の他光センサーや蓄電材料(バッテリー)等に用いられている。
このうち、光電変換材料は光エネルギーを電気エネルギーとして連続して取り出せる材料であり、電極間の電気化学反応を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する材料である。このような光電変換材料に光を照射すると、一方の電極側で電子が発生し、対電極に移動し、対電極に移動した電子は、電解質中をイオンとして移動して一方の電極に戻る。このエネルギー変換は連続であるため、たとえば、太陽電池などに利用されている。
【0003】
一般的な太陽電池は、先ず透明性導電膜を形成したガラス板などの支持体上に光電変換材料用半導体の膜を形成して電極とし、次に、対電極として別の透明性導電膜を形成したガラス板などの支持体を備え、これらの電極間に電解質を封入して構成されている。
【0004】
光電変換材料用半導体に吸着した光増感材に例えば太陽光を照射すると、光増感材は可視領域の光を吸収して励起する。この励起によって発生する電子は半導体に移動し、次いで、透明導電性ガラス電極に移動し、2つの電極を接続する導線を通って対電極に移動し、対電極に移動した電子は電解質中の酸化還元系を還元する。一方、半導体に電子を移動させた光増感材は、酸化体の状態になっているが、この酸化体は電解質中の酸化還元系によって還元され、元の状態に戻る。このようにして電子が連続的に流れ、光電変換材料は太陽電池として機能する。
【0005】
この光電変換材料としては、半導体表面に可視光領域に吸収を持つ分光増感色素を吸着させたものが用いられている。たとえば、特開平1−220380号公報(特許文献1)には、金属酸化物半導体の表面に、ルテニウム錯体などの遷移金属錯体からなる分光増感色素層を有する太陽電池が記載されている。また、特表平5−504023号公報(特許文献2)には、金属イオンでドープした酸化チタン半導体層の表面に、ルテニウム錯体などの遷移金属錯体からなる分光増感色素層を有する太陽電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−220380号公報
【特許文献2】特表平5−504023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の太陽電池では、使用開始時の光電変換効率が低く、所定の光電変換効率に達するまでに長時間を要し、このため、製品は直ちに使用することができず、所定の光電変換効率に達するまで稼働させ、性能を確認後出荷されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点に鑑み、本発明者等は鋭意検討した結果、多孔質金属酸化物半導体膜と吸着させる光増感色素との親和性を高めれば、これらの問題点が解決できると考えた。そして、構成する酸化チタン粒子がアセチル基などの官能基を含んでいると稼働開始当初からほぼ所定の光電変換効率を達成できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)が、有機基含有酸化チタン粒子を含んでなり、
該有機基がアシル基、アロイル基、アルコキシ基、カルボキシレート基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする光電気セル。
[2]前記有機基含有酸化チタン粒子の有機基の含有量が炭素換算で50〜2000重量ppmの範囲にある[1]の光電気セル。
[3]前記有機基含有酸化チタン粒子の平均粒子径が5〜3000nmの範囲にある[1]または[2]の光電気セル。
【0010】
[4]アシル基、アロイル基、アルコキシ基、カルボキシレート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基含有酸化チタン粒子と、分散媒とからなることを特徴とする光電気セル用多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
[5]前記有機基含有酸化チタン粒子の有機基の含有量が炭素換算で50〜2000重量ppmの範囲にある[4]に記載の光電気セル。
[6]前記有機基含有酸化チタン粒子の平均粒子径が5〜3000nmの範囲にある[4]または[5]の光電気セル用多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多孔質金属酸化物半導体膜を構成する酸化チタン粒子が特定の有機基を含んでいるので稼働開始当初からほぼ所定の高い光電変換効率が得られる光電気セルおよび該光電気セル用多孔質半導体膜形成用塗料を提供することができる。このため、製品は直ちに使用することが可能であり、出荷における性能確認も容易となり、出荷までの時間を著しく短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光電気セルの1例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1・・・・・電極層(1)
2・・・・・半導体膜(1)
3・・・・・電極層(2)
4・・・・・電解質層(2)
5・・・・・基板(1)
6・・・・・基板(2)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、先ず、本発明に係る光電気セルについて具体的に説明する。
[光電気セル]
本発明に係る光電気セルは、表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、
表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる。
【0015】
本発明によって得られる光電気セルとしては、たとえば、図1に示すものが挙げられる。
図1は、本発明によって得られる光電気セルの1例を示す概略断面図であり、表面に電極層(1)を有し、必要に応じて該電極層(1)上に酸化チタン薄膜(1)を有し、電極層(1)上、あるいは酸化チタン薄膜(1)上に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質が封入されている。
【0016】
図1中、1は電極層(1)、2は半導体膜(1)、3は電極層(2)、4は電解質層(2)、5は基板(1)、6は基板(2)を示す。
なお、本発明によって得られる光電気セルは図示した光電気セルに限定されるものではなく、半導体膜を2層以上有し、この間に別の電極層および電解質層を設けた光電気セルであってもよい。
【0017】
基板
一方の基板としてはガラス基板、PET等の有機ポリマー基板等の透明でかつ絶縁性を有する基板を用いることができる。
【0018】
他の一方の基板としては使用に耐える強度を有していれば特に制限はなく、ガラス基板、PET等の有機ポリマー基板等の絶縁性基板の他に、金属チタン、金属アルミニウム、金属銅、金属ニッケルなどの導電性基板を使用することができる。
【0019】
また、基板は少なくとも一方が透明であればよい。また双方の基板が透明であってもよい。通常、光の入射側に透明な基板を用いる。
電極層
基板表面に形成された電極層としては、特に制限されるものでなく、白金、ロジウム、ルテニウム金属、ルテニウム酸化物等の電極材料、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされた酸化錫、Snおよび/またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛などの導電性酸化材料からなる電極や、前記導電性材料表面をメッキあるいは蒸着した電極、カーボン電極など従来公知の電極を用いることができる。
【0020】
なお光の入射側の透明基板表面には透明電極層を形成し、該透明電極層は、上記の導電材料のうち、酸化錫、Sb、FまたはPがドーピングされた酸化錫、Snおよび/またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、白金、ロジウム、ルテニウム金属などの貴金属などの電極を使用することができる。
【0021】
このような電極層は、基板上に直接コーティング、メッキあるいは蒸着させて、導電性材料を熱分解法、CDV法等の従来公知の方法により導電層を形成した後、必要に応じて、該導電層上に前記電極材料をメッキあるいは蒸着するなど従来公知の方法により形成することができる。
【0022】
なお、2つの基板は、双方とも透明基板であってもよく、また基板上に形成される電極層は、双方とも透明電極であってもよい。さらに、2つの基板は同じものであってもよく、電極層も同じものであってもよい。なお通常、光の入射側に透明電極を設ける。
【0023】
透明電極層の可視光透過率は高い方が好ましく、具体的には50%以上、特に好ましくは90%以上であることが望ましい。可視光透過率が低ければ光が透過しにくくなり光電変換効率が低くなることがある。
【0024】
電極層自体の抵抗値は、各々100Ω/cm2以下であることが好ましい。電極層の抵抗値が100Ω/cm2を超えて高くなると光電変換効率が低くなることがある。

酸化チタン薄膜
本発明において、必要に応じて電極層(1)ないし(2)上に酸化チタン薄膜を形成していていもよい。酸化チタン薄膜はペルオキシチタン酸水溶液あるいはチタン塩水溶液等を塗布、乾燥するなど従来公知の方法で形成することができ、緻密な膜である。
【0025】
なお、スパッタリングなどの方法でも、緻密な酸化チタン薄膜を得ることは可能であるが、緻密すぎて電子の移動を阻害したり、後に形成する多孔質金属酸化物半導体膜との密着性が不充分となることがある。
【0026】
酸化チタン薄膜は、電極層のどちらかの上に形成されていればよく、透明電極層の上でも、透明でない電極層の上に形成されていてもよい。
酸化チタン薄膜が形成されていると暗電流の抑制、電子の再結合の抑制をすることができ光電変換効率を向上させることができる。
【0027】
酸化チタン薄膜は膜厚が70nm以下、さらには40nm以下の範囲にあることが好ましい。酸化チタン薄膜の膜厚が厚すぎると、エネルギー障壁が大きくなりすぎて電子の移動が抑制され、逆に光電変換効率が低下することがある。
【0028】
このような酸化チタン薄膜は、電極層上にペルオキシチタン酸水溶液、あるいは四塩化チタン等のチタン塩化合物の水溶液を、(A)スピンコート法、(B)ディップコート法、(C)フレキソ印刷法、(D)ロールコーター法、(E)電気泳動法から選ばれる1種以上の方法で塗布し、乾燥し、硬化させることにより形成することができる。
【0029】
酸化チタン薄膜の形成に用いるペルオキシチタン酸水溶液あるいはチタン塩化合物水溶液の濃度はTiO2として0.1〜2.0重量%、さらには0.3〜1.0重量%の範囲にあることが好ましい。水溶液の濃度が薄いと、所望の膜厚の酸化チタン薄膜が得られないことがあり、繰返し塗布、乾燥を行う必要が生じる。水溶液の濃度が高いと、乾燥時にクラックが生じたり、緻密な膜を形成できないことがあり、暗電流の抑制、電子の再結合の抑制効果が得られないことがある。
【0030】
また、ペルオキシチタン酸水溶液あるいはチタン塩化合物水溶液は増粘剤を含んでいてもよく、増粘剤としてはエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、ターシャリーブタノール等が含まれていてもよい。このような増粘剤が含まれていると、水溶液の粘度が高くなり、これにより均一に塗布することができ、クラックのない均一な膜厚の酸化チタン薄膜が得られ、下層の電極層との密着性の高い酸化チタン薄膜を得ることができる。
【0031】
乾燥処理のみでも硬化するが、さらに必要に応じて紫外線を照射し、ついで加熱処理によってアニーリングすることもできる。
多孔質金属酸化物半導体膜
前記電極層上に多孔質金属酸化物半導体膜が形成されている。この多孔質金属酸化物半導体膜の膜厚は0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。
【0032】
本発明に係る多孔質金属酸化物半導体膜の細孔容積は0.10〜0.80ml/g、さらには0.20〜0.65ml/gの範囲にあることが好ましい。細孔容積が小さいと、増感色素の吸着が不十分となったり、電解質の拡散性が低下してバックカレントを引き起こすことがあり、変換効率が不充分となることがある。また細孔容積が大きすぎても金属酸化物半導体膜の強度が不充分となることがある。通常、本発明に係る半導体膜は、5〜50nm程度の細孔を有し、かかる細孔に、光増感材を吸着している。
【0033】
このような多孔質金属酸化物半導体膜の製造方法は、前記した有機基含有酸化チタン粒子を含む多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗布液を用いる以外は、本願出願人の出願による特開平11−339867号公報に開示した金属酸化物半導体膜の製造方法は好適に準用することができる。
【0034】
好ましくは後述する本発明に係る光電気セル用多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料を電極層上、または必要に応じて形成した酸化チタン薄膜上に塗布し、乾燥した後、紫外線照射により硬化、あるいは加熱硬化させて形成することができる。
【0035】
多孔質金属酸化物半導体膜の金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫等従来公知の金属酸化物を使用することができる。本発明では、これら金属酸化物の微粒子が用いられる。
(有機基含有酸化チタン粒子)
本発明の多孔質金属酸化物半導体膜には、有機基含有酸化チタン粒子が含まれる。該有機基がアシル基、アロイル基、アルコキシ基、カルボキシレート基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
アシル基はRCO−(Rは炭素数1〜10の炭化水素基)で表され、アセチル基(CH3CO−)、C25CO−、C37CO−等が挙げられる。
アロイル基はArCO−(Arは芳香族炭化水素基)で表されるが、C65CO−等が挙げられる。)
カルボキシレート基は上記アシル基(RCO−)、アロイル基(ArCO−)がさらに酸素原子を含むRCOO−(アシルオキシ基)、ArCOO−(アロイルオキシ基)で表される有機基が挙げられる。
【0037】
アルコキシ基はRO−(Rは炭素数1〜10の炭化水素基)で表され、CH3O−、C25O−、C37O−等が挙げられる。
このような有機基を含むことで、吸着させる光増感色素との親和性を高くなり、稼働開始当初からほぼ所定の光電変換効率を達成できる。
【0038】
有機基含有酸化チタン粒子の有機基の含有量が炭素換算で50〜2000重量ppm、さらには100〜1000重量ppmの範囲にあることが好ましい。
有機基の含有量が少なすぎると、多孔質金属酸化物半導体膜における、比表面積に対してごく微量であるため、後述する光増感剤との相互作用が弱いためか、光電気セルの定常状態になるのに時間を要する場合がある。一方、有機基が多すぎても、後述する多孔質金属酸化物半導体膜形成時に高温で焼成することから得ることが困難であり、得られたとしてもさらに初期性能を向上させる効果が得られておらず、光増感剤の吸着を阻害するためか、変換効率が低下する場合がある。
【0039】
なお、有機基含有酸化チタン粒子中の有機基の含有量は、半導体膜形成後の有機基の含有量が有効と考えられることから、有機基含有酸化チタン粒子を半導体膜と同様の焼成条件で焼成した後の炭素の量を測定し、炭素換算として規定している。また、有機基の同定は焼成後、赤外分光法により行なう。なお、かかる有機基は後記する有機化合物がそのまま存在しているのではなく、金属酸化物粒子(酸化チタン粒子)の表面OH基と反応して結合した状態となっているものと考えられる。これはIRによって確認できる。
【0040】
この時の焼成温度は200〜600℃で、時間は0.5〜48時間である。
従って、有機基含有酸化チタン粒子の有機基の含有量は、粒子調製時の特定有機基含有有機化合物の量と焼成状件によって調整することができる。
【0041】
有機基含有酸化チタン粒子の平均粒子径が5〜3000nm、さらには10〜2000nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が低いものは得ることが困難であり、得られたとしても結晶性が低く、また、粒子が焼結しやすくなるため、それにともない形成後の半導体膜を加熱処理した際に温度によっては有機基が脱離しやすくなることがあり、定常状態になる時間を充分短縮できない場合がある。平均粒子径が大きすぎても膜強度が低くなったり、比表面積の低下に伴い、光増感材の吸着量が不充分となるため光電変換効率が不充分となることがある。
【0042】
本発明では、これらの粒子の平均粒子径は、粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、任意の粒子100個について粒子径を測定し、その平均値として求める。
本発明で使用される酸化チタン粒子の結晶性は、特に限定されないが、アナタース型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、ルチル型酸化チタンであることが好ましい。
【0043】
(有機基含有酸化チタン粒子の製造方法)
かかる粒子の製造方法としては、焼成した後も前記した特定の有機基を所定量含む粒子が得られれば特に制限はなく従来公知の方法を採用することができる。
【0044】
以下に例示するがこれらに限定するものではない。
第1の方法としては、チタンアルコキシドと有機基源となる有機化合物との混合水溶液に酸を加えて加水分解して酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリーを調製し、ついで洗浄した後オートクレーブ等で加熱下熟成することによって有機基含有酸化チタン微粒子分散液を調製する方法が挙げられる。この時、有機化合物の使用量によって有機基の含有量を調整することができ、酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリーの濃度、加熱温度・時間等によって粒子径、結晶性を調整することができる。
【0045】
第2の方法としては、チタン塩水溶液にアルカリを加えて加水分解して酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリーを調製し、ついで、洗浄した後、必要に応じて結晶化剤等を混合し、さらに有機基源となる有機化合物を添加した後、オートクレーブ等で加熱下熟成することによって有機基含有酸化チタン微粒子分散液を調製する方法が挙げられる。さらに、必要に応じて洗浄することもできる。この時も、有機化合物の使用量によって有機基の含有量を調整することができ、酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリーの濃度、加熱温度・時間等によって粒子径、結晶性を調整することができる。
【0046】
第3の方法としては、チタンアルコキシド溶液に酸を加えて加水分解した酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー、あるいはチタン塩水溶液にアルカリを加えて加水分解して酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリーに過酸化水素を加えて溶解したペルオキシチタン酸水溶液に有機基現となる有機化合物を混合した溶液あるいはこれを50〜90℃で熟成したペルオキシチタン酸水溶液を、さらにオートクレーブ等で加熱下熟成することによって有機基含有酸化チタン微粒子分散液を調製する方法が挙げられる。この時も、有機化合物の使用量によって有機基の含有量を調整することができ、ペルオキシチタン酸水溶液の濃度、加熱温度・時間等によって粒子径、結晶性を調整することができる。
【0047】
使用される有機化合物としては、前記焼成条件で、所定の有機基として、酸化チタン中に存在するものであれば特に制限されないが、たとえば、アセチルアセトン、3-メチル2,4ペンタジオン、3-プロピル-2,4-ベンタジオン、安息香酸、フタル酸、3-フェニル-2,4ペンタジオン、酢酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。
【0048】
(複合粒子)
また、本発明では、前記平均粒子径範囲にあり、比較的大きな粒子径を有する有機基含有酸化チタン粒子と比較的小さな粒子径を有する有機基含有酸化チタン微粒子とを混合して使用することができる。この場合、多孔質金属酸化物半導体膜中の粒子密度が向上し、光電変換効率が向上する効果が得られる場合がある。
【0049】
また、前記有機基含有酸化チタン粒子は、粒子径の大きな酸化チタンからなる基体粒子と、該基体粒子の表面を被覆した粒子径の小さい酸化チタン微粒子とからなる複合粒子を用いることもできる。係る複合粒子の場合、粒子径の小さい酸化チタン微粒子に有機基が含有され、基体粒子表面で被覆層を構成している。このような粒子は大粒径の粒子の存在によって、光透過せずに散乱させることができる。
【0050】
酸化チタン基体粒子は、平均粒子径が80〜3,000nm、さらには100〜2,000nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が80nm未満の場合は、形成後の半導体膜の細孔が小さく、且つ長く曲折しているため発生した電子の移動に時間を要し、電子の再結合が起こりやすく、光電変換効率が不充分となることがある。平均粒子径が3,000nmを越えると、粒子が大きすぎるため膜強度が弱くなったり、粒子間の空隙が大きくなるため光の透過量が増大したり、反射が不充分となるために光の利用率が低下し、光電変換効率が不充分となることがある。
【0051】
なお、酸化チタン基体粒子は、前記したと同様に有機基を含有していてもよい。
酸化チタン基体粒子の表面を被覆する有酸化チタン微粒子の平均粒子径は5〜50nm、さらには20〜35nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が前記下限未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても結晶性が低く、また、形成後の半導体膜を加熱処理した際の温度あるいは有機基の種類によっては脱離したり分解する場合があり、定常状態になる時間を充分短縮できない場合がある。平均粒子径が大きすぎると、有機基含有酸化チタン微粒子層の比表面積が小さくなり、このため光増感材の吸着量が不充分となり、光電変換効率が不充分となることがある。
【0052】
前記有機基含有酸化チタン粒子は、前記有機基含有酸化チタン微粒子が酸化チタン基体粒子を被覆している。この時、有機基含有酸化チタン粒子は互いに結合、あるいは凝集状態になく単分散していることが好ましい。
【0053】
有機基含有酸化チタン微粒子の被覆量は有機基含有酸化チタン粒子中に10〜60重量%、さらには20〜50重量%の範囲にあることが好ましい。被覆量が少ないと光増感材の吸着量が不充分となり、光電変換効率が不充分となることがある。また、基体粒子に光増感材が含まれていない場合、前記有機基の含有量が少なくなるために定常状態になるまでの時間を充分短縮できない場合がある。有機基含有酸化チタン微粒子の被覆量が多すぎると微粒子層が厚くなり、従来の酸化チタン微粒子のみからなる半導体膜と同様に電子の移動に時間を要し、電子の再結合がおこりやすく、光電変換効率が不十分となることがある。
このような複合粒子の平均粒子径は85〜3,000nm、さらには110〜2,000nmの範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、上記したように、本発明が目的とする効果を発揮する。
【0054】
このような複合粒子の調製方法に制限はないが、例えば酸化チタン基体粒子の分散液に、有機基含有酸化チタン粒子中の有機基含有酸化チタン微粒子が前記した所定量の範囲となるように有機基含有酸化チタン微粒子を混合した分散液とし、必要に応じて分散液のpHを概ね10〜13に制御して、必要に応じて概ね100〜300℃で熟成(水熱処理)すればよい。分散媒としては、水、アルコール、グリコール、ケトン、エステル等、およびこれらの混合液を用いることができる。
【0055】
なお、このような複合粒子を用いる場合、微粒子層を構成する有機基含有酸化チタン微粒子同士の粒子間隙による細孔径が1〜15nmの範囲の細孔と、有機基含有酸化チタン粒子同士の粒子間隙による細孔径が20〜500nmの範囲の細孔を有している。
(バインダー成分)
通常多孔質金属酸化物半導体膜中にはバインダー成分が含まれていてもよい。たとえばペリオキソチタン成分に由来する酸化チタンバインダーが例示される。
光増感材
光増感材としては、可視光領域、紫外光領域、赤外光領域の光を吸収して励起するものであれば特に制限はなく、たとえば有機色素、金属錯体などを用いることができる。
【0056】
有機色素としては、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン基、カルボキシアルキル基等の官能基を有する従来公知の有機色素が使用できる。 具体的には、メタルフリーフタロシアニン、シアニン系色素、メタロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素およびウラニン、エオシン、ローズベンガル、ローダミンB、ジブロムフルオレセイン等のキサンテン系色素等が挙げられる。これらの有機色素は金属酸化物半導体膜への吸着速度が早いという特性を有している。
また、金属錯体としては、特開平1-220380号公報、特表平5-504023号公報などに記載された銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニンなどの金属フタロシアニン、クロロフィル、ヘミン、ルテニウム-トリス(2,2'-ビスピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)、シス-(SCN-)-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシレート)ルテニウム、ルテニウム-シス-ジアクア-ビス(2,2'-ビピリジル-4,4'-ジカルボキシラート)などのルテニウム-シス-ジアクア-ビピリジル錯体、亜鉛-テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィンなどのポルフィリン、鉄-ヘキサシアニド錯体等のルテニウム、オスミウム、鉄、亜鉛などの錯体を挙げることができる。これらの金属錯体は分光増感の効果や耐久性に優れている。たとえば、ダイソル社製のBA(N3)、B2(N719)、DNH2(Z907)、DBL(749)などが好適である。
【0057】
上記の光増感材としての有機色素または金属錯体は単独で用いてもよく、有機色素または金属錯体の2種以上を混合して用いてもよく、さらに有機色素と金属錯体とを併用してもよい。
【0058】
多孔質金属酸化物半導体膜の光増感材の吸着量は多孔質金属酸化物半導体膜の比表面積1cm2あたり100μg以上、さらには150μg以上であることが好ましい。光増感材の吸着量が少ないと光電変換効率が不充分となる。
【0059】
このような光増感材の吸着方法は、特に制限はなく、光増感材を溶媒に溶解した溶液を、ディッピング法、スピナー法、スプレー法等の方法により多孔質金属酸化物半導体膜に吸収させ、次いで乾燥する等の一般的な方法が採用できる。さらに必要に応じて前記吸収工程を繰り返してもよい。また、光増感材溶液を加熱環流しながら前記基板と接触させて光増感材を多孔質金属酸化物半導体膜に吸着させることもできる
光増感材を溶解させる溶媒としては、光増感材を溶解するものであればよく、具体的には、水、アルコール類、トルエン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、エチルセルソルブ、Nーメチルピロリドン、テトラヒドロフラン等を用いることができる。
【0060】
光増感材溶液の光増感材の濃度は多孔質金属酸化物半導体膜の比表面積1cm2あたり100μg以上、さらには200μg以上となる濃度が好ましい。
電解質層
電解質としては、電気化学的に活性な塩とともに酸化還元系を形成する少なくとも1種の化合物との混合物が使用される。
【0061】
電気化学的に活性な塩としては、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドなどの4級アンモニウム塩が挙げられる。酸化還元系を形成する化合物としては、キノン、ヒドロキノン、沃素(I-/I-3)、沃化カリウム、臭素(Br-/Br-3)、臭化カリウム等が挙げられる。場合によってはこれらを混合して使用することもできる。
【0062】
このような電解質の使用量は、電解質の種類、後述する溶媒の種類によっても異なるが、概ね0.1〜5モル/リットルの範囲にあることが好ましい。
電解質層には、従来公知の溶媒を用いることができる。具体的には水、アルコール類、オリゴエーテル類、プロピオンカーボネート等のカーボネート類、燐酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、スルホラン66の硫黄化合物、炭酸エチレン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0063】
本発明では、前記した表面に電極層(1)を有し、該電極層(1)上に必要に応じて酸化チタン薄膜(1)を有し、かつ電極層(1)上または酸化チタン薄膜(1)上に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜を有する基板(1)と、表面に電極層(2)を有する基板(2)とを、電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置し、側面を樹脂にてシールし、多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質を封入し、さらに電極間をリード線で接続することによって光電気セルを製造することができる。
【0064】
つぎに、本発明に係る光電気セル用多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料について説明する。
[光電気セル用多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料]
本発明に係る光電気セル用多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料は、前記した特定の有機基を有する酸化チタン粒子と分散媒とを含む。
【0065】
分散媒
塗料の分散媒としては水、アルコール類、ケトン類、グリコール類、エーテル類、テレピン類からなる群選ばれる1種または2種以上が用いられる。
具体的には、アルコール類としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等、ケトン類としてはアセトンなどグリコール類としてエチレングリコール、プロピレングリコール等、エーテル類としてはブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等、テレピン類としては、テルピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピノーレン等が挙げられる。
【0066】
スクリーン印刷法ではテルピネオール、ブチルカルビトール等の溶媒に分散させた塗料が好適に用いられる。また、速乾性が要求される印刷方法では、水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の比較的低沸点のアルコール類を含む水性分散媒は前記酸化チタン粒子、後述する必要に応じて用いる増粘剤とを均一に分散あるいは溶解できるとともに、基材に酸化チタン粒子層を形成した後、乾燥する際に分散媒が蒸発しやすいので好適に用いることができる。
【0067】
増粘剤
本発明の塗料には増粘剤が含まれていてもよく、増粘剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ケトン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。このような増粘剤が多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料中に含まれていると、塗料の粘度が高くなり、これにより均一に塗布することができ、前記した細孔容積および細孔径を有する多孔質金属酸化物半導体膜を得ることができる。
【0068】
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料中の増粘剤の濃度は増粘剤の種類によっても異なるが、増粘剤を含む場合、固形分として1.0〜40重量%、さらには4.0〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
増粘剤が少ないと効果が不充分でとなることがあるが、多すぎても塗布性が低下するとともに、得られる半導体膜の強度が不充分となり、さらに増粘剤の完全な除去が困難となり、充分な光電変換効率の向上効果が得られないことがある。
【0069】
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料中の有機基含有酸化チタン粒子の含有量(必要に応じてペルオキシチタン酸を含む場合はその合計量)は、固形分としてとして1〜30重量%、さらには2〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
前記濃度が薄すぎると1回の操作で所望の厚さの金属酸化物半導体膜を形成できない場合があり、繰り返し操作が必要となる。前記濃度が高すぎても分散液の粘度が高くなり、得られる金属酸化物半導体膜の緻密度が低下し、半導体膜の強度、耐摩耗性が不充分となることに加え、電子の移動性が低下し、光電変換効率が不充分となることがある。
【0070】
前記多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料にはペルオキシチタン酸が含まれていてもよい。このようなペルオキソチタン酸はバインダー成分として機能し、緻密で強度に優れ、光増感剤の吸着量が多く、電子移動性に優れた、この結果光電変換効率が向上した多孔質金属酸化物半毒体瞑が得られるという効果が達成される。ペルオキソチタン酸は、半導体中ではバインダーの酸化チタンとなる。塗料中のペルオキシチタン酸の使用量は酸化チタンとして有機基含有酸化チタン粒子の1〜30重量%、さらには2〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
【0071】
ペルオキシチタン酸の使用量が少ないと、場合によって、酸化チタン薄膜との緻密性、半導体膜の強度や、光増感材の吸着量、光電変換効率などが不充分となることがある。ペルオキシチタン酸を多くしても、前記効果が更に向上することもなく、光電変換効率が低下することがある。
【0072】
このような、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料を電極層上やる酸化チタン薄膜上に塗布し、乾燥した後紫外線照射により硬化、あるいは加熱硬化するとともにアニーリングして形成することができる。
【0073】
塗布方法はディップ法、スピナー法、ロールコーター法、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が好適である。
乾燥は分散媒を除去できる温度であればよく、従来公知の方法を採用することができ、風乾することも可能であるが、通常50〜200℃で0.2〜5時間程度乾燥する。加熱処理は有機基の種類によっても異なるが、通常、200〜600℃、さらには400〜550℃で概ね0.5〜48時間処理する。
【0074】
このようにして得られた多孔質金属酸化物半導体膜の膜厚は0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに実施例により限定されるものではない。
【0075】
[実施例1]
有機基含有酸化チタン微粒子(1)分散液の調製
チタンテトライソプロポキシド(マツモトファインケミカル(株)製:TiO2濃度 28.3重量%)464.5gと有機基源として酢酸(純度100%)155.6gをよく混合した溶液を純水2300gに添加し、80℃にて2時間攪拌混合した後、濃度61重量%の硝酸水溶液80.0g加え、さらに2時間攪拌混合してTiO2濃度が4.4重量%の酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー (1)を得た。
得られた酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー (1)の電導度が25mS/cm以下となるように、純水を用いて希釈し、遠心分離により上澄みを除去して洗浄し、TiO2濃度が8重量%の、洗浄酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー (1)を得た。
【0076】
得られた洗浄酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー (1)をオートクレーブにて、255℃で12時間熟成し、ついで、常温に冷却した後、硝酸水溶液を用いてpHが3.5となるように調整し、限外濾過膜にてTiO2濃度が20重量%となるように濃縮を行い、有機基含有酸化チタン微粒子(1)分散液を調製した。
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(1)について、平均粒子径を測定し、X線回折法により結晶形を同定し、結果を表に示す。
また、有機基含有酸化チタン微粒子(1)を下記多孔質金属酸化物半導体膜形成時の焼成条件と同じく450℃で1時間焼成した粒子について赤外分光計により有機基を同定するとともに、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表1に示す。
【0077】
なお、有機基の同定については同定した有機基の波数とともに吸収スペクトルの強い場合には◎、明らかに吸収が認められる場合には○、僅かに認められる場合は△、認められない場合は×を付して表に示した。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(1)の調製
有機基含有酸化チタン粒子(1)分散液100gにエタノールを400g加え攪拌した後、エチルセルロース8gを10%濃度となるようにエタノールで溶解した溶液を加え、さらに、テルピネオールを75g加えた溶液を加え、よく攪拌した後、ロータリーエバポレータにてTiO2濃度が19重量%となるように濃縮し、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(1)を調製した。
【0078】
多孔質金属酸化物半導体膜(1)の形成
フッ素ドープSnO2導電性ガラス(日本板硝子株式会社製:板厚4.0mm)をTiO2濃度が40mMの四塩化チタン水溶液に浸漬させ、70℃にて30分保持した後、純水洗浄およびエタノール洗浄を行い、乾燥させて酸化チタン薄膜を形成した後、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(1)をスクリーン印刷法により、14μmの膜厚となるように印刷-120℃での乾燥-冷却を繰返した後、450℃にて1時間焼成して多孔質金属酸化物半導体膜(1)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(1)の細孔容積を測定し、結果を表に示す。なお、四塩化チタン水溶液を用いて形成した酸化チタン薄膜については、薄膜の形成は認められたが、極めて薄いことから膜厚、細孔容積および平均細孔径は測定しなかった。
光増感材の吸着
光増感材としてDYESOL社製DNH2(Z907)色素を濃度0.3mmol/lとなるようにアセトニトリルおよびtert−ブタノール(体積比1:1)の溶液に溶解し光増感材溶液を調製した。この溶液に酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(1)を形成したガラスを5時間漬込み、取り出した後アセトニトリルで洗浄し、色素を吸着させた。
【0079】
【化1】

光電気セル(1)の作成
先ず、溶媒として3-メトキシプロピオニトリル中に1-メチルー3-プロピルイミダゾリウムヨーダイド 0.6mol/l、N−メチルベンゾイミダゾール 0.5mol/l、ヨウ素 0.1mol/lとなるように溶解して電解質を調製した。
【0080】
前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、光電気セル(1)を作成した。
【0081】
光電気セル(1)は、ソーラーシュミレーターで100W/m2の強度の光を入射角90°(セル面と90°)で照射して、2時間後、5時間後および10時間後のVoc(開回路状態の電圧)、Joc(回路を短絡したときに流れる電流の密度)、FF(曲線因子)およびη(変換効率)を測定し結果を表1に示した。
[実施例2]
有機基含有酸化チタン微粒子(2)分散液の調製
実施例1において、酢酸(純度100%)118.08gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が20重量%の有機基含有酸化チタン微粒子(2)分散液を調製した。
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(2)について、平均粒子径、結晶形、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(2)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(2)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(2)を調製した。
【0082】
多孔質金属酸化物半導体膜(2)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(2)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(2)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(2)の細孔容積を測定し、結果を表に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(2)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(2)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(2)を作成した。
【0083】
光電気セル(2)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[実施例3]
有機基含有酸化チタン微粒子(3)分散液の調製
実施例1において、酢酸(純度100%)216.48gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が20重量%の有機基含有酸化チタン微粒子(3)分散液を調製した。
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(3)について、平均粒子径、結晶形、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(3)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(3)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(3)を調製した。
【0084】
多孔質金属酸化物半導体膜(3)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(3)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(3)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(3)の細孔容積を測定し、結果を表1に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(3)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
【0085】
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(3)を作成した。
【0086】
光電気セル(3)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[実施例4]
有機基含有酸化チタン微粒子(5)分散液の調製
実施例1において、酢酸の代わりにアセチルアセトン129.67gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が20重量%の有機基含有酸化チタン微粒子(4)分散液を調製した。
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(4)について、平均粒子径、結晶形、有機基の同定、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。
【0087】
なお、有機基の同定においては、実施例1の酢酸を用いた場合と同じ波数に吸収が認められたが、これは、酸化チタンの表面酸素が関係していると考えられるが、アセチルアセトンを用いていることからアシル基(アセチル基)で表示した。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(4)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(4)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(4)を調製した。
【0088】
多孔質金属酸化物半導体膜(4)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(4)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(4)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(4)の細孔容積を測定し、結果を表に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(4)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(4)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(4)を作成した。
【0089】
光電気セル(4)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[実施例5]
有機基含有酸化チタン微粒子(5)分散液の調製
四塩化チタン溶液(TiO2濃度:27.8%)183.5gを純水でTiO2濃度が5%となるまで希釈し、pHが9.3となるように15%濃度のアンモニア水を加え、よく混合し、酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー(5)を得た。その酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー(5)をろ過洗浄した後、回収したケーキに純水を加えTiO2濃度5%に調整し、これにテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の濃度が0.1重量%となるように、濃度25重量%のTMAH水溶液を加え、さらに有機基源としてアセチルアセトン濃度が0.45重量%となるようにアセチルアセトンを添加した。その後、オートクレーブにて170℃にて20時間熟成し、ついで、常温に冷却した後、硝酸水溶液を用いてpHが1.0となるように調整し、限外濾過膜にてTiO2濃度が20重量%となるように濃縮を行い、有機基含有酸化チタン微粒子(5)分散液を調製した。
【0090】
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(5)について、平均粒子径、結晶形、有機基の同定、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(5)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(4)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(4)を調製した。
【0091】
多孔質金属酸化物半導体膜(5)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(5)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(5)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(5)の細孔容積を測定し、結果を表に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(5)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(5)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(5)を作成した。
【0092】
光電気セル(4)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[実施例6]
有機基含有酸化チタン微粒子(6)分散液の調製
実施例5において、アセチルアセトン濃度が0.20重量%となるようにアセチルアセトンを添加した以外は同様にしてTiO2濃度が20重量%の有機基含有酸化チタン微粒子(6)分散液を調製した。
【0093】
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(6)について、平均粒子径、結晶形、有機基の同定、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(6)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(6)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(6)を調製した。
【0094】
多孔質金属酸化物半導体膜(6)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(6)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(6)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(6)の細孔容積を測定し、結果を表1に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(6)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(6)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(6)を作成した。
【0095】
光電気セル(6)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[実施例7]
有機基含有酸化チタン微粒子(7)分散液の調製
実施例5において、アセチルアセトン濃度が1.45重量%となるようにアセチルアセトンを添加した以外は同様にしてTiO2濃度が20重量%の有機基含有酸化チタン微粒子(7)分散液を調製した。
【0096】
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(7)について、平均粒子径、結晶形、有機基の同定、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(7)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(7)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(7)を調製した。
【0097】
多孔質金属酸化物半導体膜(7)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(7)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(7)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(7)の細孔容積を測定し、結果を表に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(7)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(7)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(7)を作成した。
【0098】
光電気セル(7)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[実施例8]
有機基含有酸化チタン微粒子(8)分散液の調製
実施例1と同様にして調製した洗浄酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー(1)をオートクレーブにて、235℃で12時間熟成し、ついで、常温に冷却した後、硝酸水溶液を用いてpHが3.5となるように調整し、限外濾過膜にてTiO2濃度が20重量%となるように濃縮を行い、有機基含有酸化チタン微粒子(8)分散液を調製した。
【0099】
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(8)について、平均粒子径、結晶形、有機基の同定、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(8)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(8)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(8)を調製した。
【0100】
多孔質金属酸化物半導体膜(8)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(8)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(8)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(8)の細孔容積を測定し、結果を表に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(8)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(8)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(8)を作成した。
【0101】
光電気セル(8)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[実施例9]
有機基含有酸化チタン微粒子(9)分散液の調製
実施例1と同様にしてTiO2濃度が5重量%の、洗浄酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー(2)を得た。
【0102】
ついで、洗浄酸化チタン水和物ヒドロゲルスラリー(2)をオートクレーブにて、255℃で20時間熟成し、ついで、常温に冷却した後、硝酸水溶液を用いてpHが3.5となるように調整し、限外濾過膜にてTiO2濃度が20重量%となるように濃縮を行い、有機基含有酸化チタン微粒子(9)分散液を調製した。
【0103】
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(9)について、平均粒子径、結晶形、有機基の同定、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(9)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(9)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(9)を調製した。
【0104】
多孔質金属酸化物半導体膜(9)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(9)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(9)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(9)の細孔容積を測定し、結果を表に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(9)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(9)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(9)を作成した。
【0105】
光電気セル(9)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[実施例10]
ペルオキシチタン酸コーティング液(1)の調製
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO2として1.0重量%含有する水溶液を得た。これを撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO2として濃度10.2重量%の水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃で2時間加熱して溶解し、TiO2として濃度1.0重量%のペルオキソチタン酸水溶液(1)を得た。さらに、TiO2濃度0.5%、エチレングリコール濃度20%となるように水およびペルオキソチタン酸水溶液にエチレングリコールを加えペルオキソチタン酸コーティング液(1)を得た。
【0106】
酸化チタン薄膜(1)の形成
ペルオキソチタン酸コーティング溶液(1)をフッ素ドープした酸化スズを電極として形成した透明ガラス基板にフレキソ印刷法で塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cm2の紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、膜を硬化させた。さらに、450℃で30分間加熱して硬化およびアニーリングを行って酸化チタン薄膜(1)を形成した。
【0107】
得られた酸化チタン薄膜(1)の膜厚は40nm、窒素吸着法によって求めた細孔容積は0.12ml/g、平均細孔径は2nmであった。
多孔質金属酸化物半導体膜(10)の形成
実施例1と同様にして調製した多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(1)をスクリーン印刷法により、酸化チタン薄膜(1)上に14μmの膜厚となるように印刷-120℃での乾燥-冷却を繰返した後、光散乱層形成のためチタニアペーストPST−400C(日揮触媒化成株式会社製)を用いてスクリーン印刷法により、4μmの膜厚となるように印刷-120℃での乾燥を行い、450℃にて1時間焼成し多孔質金属酸化物半導体膜(10)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(10)の細孔容積は多孔質金属酸化物半導体膜(1)と同じとして表に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(10)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(10)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(10)を作成した。
【0108】
光電気セル(10)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[実施例11]
有機基含有酸化チタン粒子(11)分散液の調製
酸化チタン基体粒子用酸化チタン粒子分散液(触媒化成工業(株)製:HPW−400C、平均粒子径400nm、TiO2濃度20重量%)60gと、実施例1と同様にして調製したTiO2濃度が20重量%の有機基含有酸化チタン微粒子(1)分散液40gとを混合し、合計のTiO2濃度を7.5重量%となるように調整し、これをオートクレーブにて、235℃で8時間水熱処理した。ついで、限外濾過膜法で濃縮してTiO2濃度20重量%の有機基含有酸化チタン粒子(11)分散液を調製した。
【0109】
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(11)について、平均粒子径、結晶形、有機基の同定、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。なお、有機基量は有機基含有酸化チタン微粒子(1)と同じとした。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(11)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(11)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(11)を調製した。
【0110】
酸化チタン薄膜(1)の形成
実施例10と同様にしてペルオキソチタン酸コーティング溶液(1)をフッ素ドープした酸化スズを電極として形成した透明ガラス基板にフレキソ印刷法で塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cm2の紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、膜を硬化させた。さらに、450℃で30分間加熱して硬化およびアニーリングを行って酸化チタン薄膜(1)を形成した。
【0111】
多孔質金属酸化物半導体膜(11)の形成
実施例10において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(1)の代わりに多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(11)をスクリーン印刷法により、酸化チタン薄膜(1)に14μmの膜厚となるように印刷-120℃での乾燥-冷却を繰返した後、光散乱層形成のためチタニアペーストPST−400C(日揮触媒化成株式会社製)を用いてスクリーン印刷法により、4μmの膜厚となるように印刷-120℃での乾燥を行い、450℃にて1時間焼成し多孔質金属酸化物半導体膜(11)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(11)の細孔容積を測定し、結果を表1に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(11)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(11)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(11)を作成した。
【0112】
光電気セル(11)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[比較例1]
多孔質金属酸化物半導体膜(R1)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(1)の代わりにチタニアペーストPST−18NR(日揮触媒化成(株)製:TiO2濃度17.3%、平均粒子径20nm、酸化チタン粒子は有機基を含まない)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(R1)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(R1)の細孔容積を測定し、結果を表に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(R1)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(R1)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(R1)を作成した。
【0113】
光電気セル(R1)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。
[比較例2]
多孔質金属酸化物半導体膜(R2)の形成
有機基含有酸化チタン微粒子(R1)分散液の調製
実施例1において、有機基源として酢酸(純度100%)7.8gを用いた以外は同様にして有機基含有酸化チタン微粒子(R1)分散液を調製した。
得られた有機基含有酸化チタン微粒子(R1)について、平均粒子径、結晶形、有機基の同定、炭素換算の有機基量を測定し、結果を表に示す。
多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R2)の調製
実施例1において、有機基含有酸化チタン粒子(R1)分散液100gを用いた以外は同様にしてTiO2濃度が19重量%の多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R2)を調製した。
【0114】
多孔質金属酸化物半導体膜(R2)の形成
実施例1において、多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料(R2)を用いた以外は同様にして多孔質金属酸化物半導体膜(R2)を形成した。多孔質金属酸化物半導体膜(R2)の細孔容積を測定し、結果を表に示す。
光増感材の吸着
実施例1において、酸化チタン薄膜および多孔質金属酸化物半導体膜(R2)を形成した透明ガラス基板を用いた以外は同様にして色素を吸着させた。
光電気セル(R2)の作成
実施例1と同様にして、前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して光電気セル(R2)を作成した。
【0115】
光電気セル(R2)について、実施例1と同様にVoc、Joc、FFおよびηを測定し結果を表1に示す。

【0116】
【表1−1】

【0117】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電極層(1)を有し、かつ該電極層(1)表面に光増感材を吸着した多孔質金属酸化物半導体膜(1)が形成されてなる基板(1)と、表面に電極層(2)を有する基板(2)とが、
前記電極層(1)および電極層(2)が対向するように配置してなり、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)と電極層(2)との間に電解質層を設けてなる光電気セルにおいて、
多孔質金属酸化物半導体膜(1)が、有機基含有酸化チタン粒子を含んでなり、
該有機基がアシル基、アロイル基、アルコキシ基、カルボキシレート基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする光電気セル。
【請求項2】
前記有機基含有酸化チタン粒子の有機基の含有量が炭素換算で50〜2000重量ppmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の光電気セル。
【請求項3】
前記有機基含有酸化チタン粒子の平均粒子径が5〜3000nmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の光電気セル。
【請求項4】
アシル基、アロイル基、アルコキシ基、カルボキシレート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基含有酸化チタン粒子と、分散媒とからなることを特徴とする光電気セル用多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。
【請求項5】
前記有機基含有酸化チタン粒子の有機基の含有量が炭素換算で50〜2000重量ppmの範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の光電気セル。
【請求項6】
前記有機基含有酸化チタン粒子の平均粒子径が5〜3000nmの範囲にあることを特徴とする請求項4または5に記載の光電気セル用多孔質金属酸化物半導体膜形成用塗料。

【図1】
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【公開番号】特開2013−51174(P2013−51174A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189472(P2011−189472)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】