説明

光電気装置の製造方法

光電気装置の製造方法が開示されており、当該方法は、基板(10)を用意し、基板の第1の主面に電気的に相互接続された開放分流構造(20)を載せ、電気的に相互接続された開放分流構造を透明層(30)中に埋め込み、基板を電気的に相互接続された開放分流構造から除去し、基板の除去後、形成された自由表面(31)の上に機能層構造(40)を堆積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電気装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電気装置は、電気信号に応答して光電効果を提供するか、あるいは光刺激に応答して電気信号を生成する装置である。第1のものの例としては、発光ダイオード、例えば有機発光ダイオードおよびエレクトロクロミック装置がある。第2のものの例としては、光電池および光センサがある。
【0003】
可撓性プラスチック基板上での大面積OLED(有機発光ダイオード)の発光はシステムの駆動に大電力を必要とする。アノード(例えば、ITO)およびカソード(例えば、Ba/Al)に使用されている現在の薄膜材料は大きな比抵抗を有し、大電流が流れるとかなりの電圧降下を生じ、発光が均質でなくなる。プラスチック基板上に大面積の可撓性のOLED装置を製造するためには、プラスチック基板の追加の分流構造が必要となる。従って、発光装置やエレクトロクロミック装置のような光電気装置のみならず、光起電製品については、分流構造として、一方では導電性が良好であり、他方では放射線の透過性が高いものの需要がある。
【0004】
この分流構造は、透明な導電層と比べて比較的高い導電性を提供しなければならないが、機能層との間の光の伝送を過度に妨げてはならない。光子放射の良好な伝送を達成するために、分流構造は、通常は、細長い要素で形成され、例えば、比較的に狭い幅(すなわち、透明な導電層に平行な平面内であって長さに対して横の寸法)を持ち、迷路状の構造に配置されている。十分な導電性を達成するために、細長い要素は(透明な導電層により定義される平面を横切る)高さが比較的に高くなければならない。そのような分流構造の高さのプロフィルの故に、装置の機能層をその上に堆積することが難しい。分流層の突出部分と分流構造により分流される対向する電極層との間の短絡を防止するために注意が必要である。一方、分流構造が機能層構造の後で適用される場合、機能構造を熱や湿気にさらすことにより機能構造を損傷しないように注意しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、透明な導電層を支持する分流構造を有する光電気装置を提供する改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、光電気装置の製造方法であって、
基板を用意し、
前記基板の第1の主面に電気的に相互接続された開放分流構造を載せ、
前記電気的に相互接続された開放分流構造を透明層に埋め込み、かつ
前記基板を前記埋め込まれた電気的に相互接続された開放分流構造から除去する
ことを特徴とする方法、が提供される。
【0007】
本発明の第1の態様による方法の一実施の形態は、機能層構造を前記基板を除去した後に形成される自由表面の上に堆積することを含む。機能層構造は、例えば、発光層、光起電層またはエレクトロクロミック層を備えていてもよい。また、補助層、例えば電荷キャリア注入層および輸送層を追加してもよい。
【0008】
本発明の第1の態様による方法においては、埋め込まれた導電性の相互に接続された開放分流構造(以下、「分流構造」ともいう)から基板を除去した後に、実質的に平坦な表面が得られる。これにより、光電気装置の機能層構造の均一な堆積が容易になる。分流構造を透明層に埋め込むときに分流構造が不均一であってもかまわないが、これは短絡の危険がないからである。さらに、透明層は平坦化層であってもよく、あるいは平坦化副層(sublayer)、例えば、有機層を含んでいてもよい。導電性の相互接続された開放パターンは一時的な基板上に形成され、機能層構造上に形成される訳ではないので、さもなければ機能層構造に有害であるような、種々の堆積方法も適切に使用することができる。
【0009】
本発明の第1の態様による方法の一実施の形態では、透明層はバリア層である。これの利点は、分流構造の側に別個のバリア層を設けることが不要となることである。特に、OLED装置には、バリア層は環境中の湿気による装置の劣化を防止することが望まれている。バリア層は、一般的には、少なくとも2種類の異なる材料の副層が交互に配されたスタックを備える。装置の反対側に第2のバリア層を堆積し、装置を完全に封入する封入体を形成してもよい。代替的に、封入は端封(edge sealing)により完了してもよい。若干のタイプの装置については、例えば若干のタイプの光起電装置については、バリア層は不要である。
【0010】
本発明の第1の態様による方法の一実施の形態は、少なくとも1つの中間層を基板の第1の側に、前記基板の当該側に電気的に相互接続された開放分流構造を載せる前に、堆積することを含む。金属製基板に、導電性パターンを適用する前に、1つ以上の中間層を堆積してもよい。中間層を、ポリマー基板のような熱に弱い基板の上に直接これを堆積するのに不利なプロセス条件を用いて適用しなければならない場合、このようにすることは特に有利である。そのような中間層は、例えば、透明な導電層である。一般的には、そのような層、例えば導電性金属酸化物、例えばフッ素をドープした酸化錫の層は、ポリマー基板のような熱に弱い基板にとって損害を招くような、比較的高い温度でもっともよく適用することができる。
【0011】
本発明の第1の態様による方法の一実施の形態では、前記基板は金属または金属箔を備え、前記基板はエッチングにより除去される。金属または金属箔、例えばアルミニウム、チタン、銅、鋼、鉄、ニッケル、銀、亜鉛、モリブデン、クロムおよびそれらの合金は高いプロセス温度に耐えることができる。種々の薬剤、例えば酸または塩基、例えば硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウムが基板のエッチングに適切である。
【0012】
中間層が存在しない場合、基板と分流構造とで異なる材料が使用され、基板に用いられた材料が分流構造の金属よりもエッチング剤に対して実質的に高い感受性を有するならば、金属製基板を分流構造から除去することができる。その一例としては、基板に金属アルミニウム、分流構造に銀、エッチング剤にNaOHを使用する。
【0013】
中間層は分流構造を堆積する前に基板に堆積され、これは停止層として機能する。その場合、基板と分流構造からの金属は上述の金属の中から任意に選択することができる。所望により、同じ金属を基板と分流層の双方に用いてもよい。中間層は透明な導電層であってもよい。それを用いると、中間層は二重の目的に役立つ、すなわち透明電極および停止層の双方として役立つ。
【0014】
一時的基板は金属製である必要はない。代替的に、分流層の堆積後に除去できる他の材料を用いてもよい。例えば、ポリマー層を前記一時的基板として用いてもよい。ポリマー層は、これを溶解することによって除去してもよい。
【0015】
本発明の第1の態様による方法の一実施の形態では、電気的に相互接続された開放分流構造は、電着により設けられる。電着のプロセスは機能層が存在すると実施が難しいが、これは使用されるべき水分が機能層に悪影響を与えるからである。本発明の方法では、前記電気的に相互接続された開放分流パターンを適用するときには、機能層は未だ存在しないので、機能層が損傷を受けることはあり得ない。
【0016】
本発明の第1の態様による方法の他の実施の形態では、電気的に相互接続された開放分流構造は、
相互接続された開放構造の基板に液状物質を堆積し、
前記液状物質を硬化することにより提供され、前記硬化された液状物質により形成された前記相互接続された開放構造は導電性である。
【0017】
硬化プロセスは高温で行なわれるのが好ましい。それにより、恐らく、機能層またはポリマー基板の損傷が起こるであろう。しかしながら、本発明による装置を製造するときは、これは該当しない。導電性の相互接続された開放構造を硬化するときは、機能層は未だ存在していないからである。
【0018】
本発明の第1の態様による方法のさらに別の実施の形態では、電気的に相互接続された開放分流構造は、基板に金属の連続層を堆積し、堆積された層をパターニングすることにより提供される。
【0019】
分流構造が埋め込まれた透明層は、少なくともポリマー層からなっていてもよい。ポリマー層は、製品の支持体として機能してもよい。ロール・ツー・ロール(roll to roll)プロセスにおける製品の取扱中に、約1μmの厚さを有するポリマー層が十分な強度を与える。しかしながら、消費者向け製品ではより大きな厚さが要求される。これは透明層に十分に厚いポリマー層、例えば数十マイクロメートル(μm)の厚さを有するものを含めることによって得られる。また、そのような層を装置の反対側に設けてもよい。代替的に、ポリマー箔を透明層に積層してもよい。ポリマー箔、例えば、約100μmの厚さを有するPENまたはPET箔の積層は非常に時間効率よく実現できる。
【0020】
本発明の第1の態様による方法の一実施の形態では、前記基板の前記第1の側に追加の電気的に相互接続された開放分流構造を載せることを含む。追加の分流構造はさらなる電極をサポートすることができる。
【0021】
これらおよび他の態様は添付図面を参照してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明による方法を用いて得られる薄膜光電気装置の概略図である。
【図1A】図1Aは、薄膜光電気装置に用いる第1の分流構造を示す図である。
【図1B】図1Bは、薄膜光電気装置に用いる第2の分流構造を示す図である。
【図1C】図1Cは、薄膜光電気装置に用いる第3の分流構造を示す図である。
【図1D】図1Dは、薄膜光電気装置に用いる第4の分流構造を示す図である。
【図1E】図1Eは、薄膜光電気装置に用いる第5の分流構造を示す図である。
【図2A】図2Aは本発明の第1の態様による方法の説明図であって、第1の工程を示す。
【図2B】図2Bは本発明の第1の態様による方法の説明図であって、第2の工程を示す。
【図2C】図2Cは本発明の第1の態様による方法の説明図であって、第3の工程を示す。
【図2D】図2Dは本発明の第1の態様による方法の説明図であって、第4の工程を示す。
【図2E】図2Eは本発明の第1の態様による方法の説明図であって、第5の工程を示す。
【図2F】図2Fは、図2A〜図2Eの方法を用いて得られた装置の写真である。
【図3A】図3Aは、本発明の第1の態様による、さらなる方法の説明図であって、第1の工程を示す。
【図3B】図3Bは、本発明の第1の態様による、さらなる方法の説明図であって、第2の工程を示す。
【図3C】図3Cは、本発明の第1の態様による、さらなる方法の説明図であって、第3の工程を示す。
【図3D】図3Dは、本発明の第1の態様による、さらなる方法の説明図であって、第4の工程を示す。
【図3E】図3Eは、本発明の第1の態様による、さらなる方法の説明図であって、第5の工程を示す。
【図3F】図3Fは、図3A〜図3Eの方法を用いて得られた装置の写真である。
【図3G】図3Gは、図3Fの詳細を示す図である。
【図3H】図3Hは、代替的一実施の形態における半完成品を示す図である。
【図4】図4は、本発明による種々の装置および本発明外の1つの装置についての電源端子の距離の関数としての輝度を示すグラフである。
【図5A】図5Aは、本発明の第1の態様によるさらなる方法の説明図であって、該方法の第1のステージにおける半完成品第1の工程を示す。
【図5B】図5Bは、図5AのB方向から見た図である。
【図5C】図5Cは、該方法の第2のステージにおける半完成品を示す図である。
【図5D】図5Dは、該方法の第3のステージにおける半完成品を示す図である。
【図5E】図5Eは、該方法の第4のステージにおける半完成品を示す図である。
【図5F】図5Fは、該方法の第5のステージにおける半完成品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な説明中に、本発明の完全な理解を提供するために多くの具体的詳細事項が説明されている。しかしながら、当業者には了解されるように、本発明はこれらの具体的な詳細事項なしでも実施することができる。他には、周知の方法、手順および部品は詳細に説明されていないが、これは本発明の態様を分かりにくくしないためである。
【0024】
以下に、本発明の実施の形態を示す添付図面を参照して、本発明をさらに十分に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で実施することができ、ここに開示されている実施の形態に限定されないものと了解される。むしろ、これらの実施の形態は、本開示が完全であり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供される。図面中、明瞭に説明するために、層および領域の寸法と相対的寸法は誇張されていることがある。本発明の実施の形態は、ここに断面図を参照して説明されているが、これらの断面図は本発明の理想化された実施の形態(および中間構造)の概略図である。そのようなものとして、例えば製造技術および/または公差の結果、図示の形状からの種々の変形例が期待される。従って、本発明の実施の形態は、ここに示された特定の形状または領域に限定されず、例えば製造から生じる形状の偏差を含むものと了解されるべきである。従って、図示された領域は、本来概略を示すものであり、それらの形状は装置の領域の現実の形状を示すことを意図するものではなく、本発明の範囲を限定することを意図するものでもない。ここで使用されている、所与の材料の「層」はその材料の領域であってその厚さがその長さと幅の両方に比べて小さい領域を含む。層の例としては、シート、箔(ホイル)、フィルム、積層(ラミネーション)、コーティング等が挙げられる。ここに使用されているように、層は平面状である必要はなく、曲げられ、折りたたまれ、そのほかの方法により曲線を付けて作られていて、少なくとも部分的に他の部品を包むことができるものである。ここに使用されているように、層は多重副層をも含んでいてもよい。層は、また、不連続の部分の集合から、例えば個々のピクセルを含む不連続の活性領域の層から成っていてもよい。
【0025】
光電気装置は局所的に平面状であるがより大局的に見ると、任意の形状に湾曲していてもよい。実地上は、厚さDの平坦な薄膜装置は厚さDの50倍の半径まで湾曲していてもよい。代替的に、本発明による薄膜装置は任意の湾曲形状に製造することができる。局所的には、バリア層構造の平面が側部の寸法(lateral dimensions)を決定する。この構造の高さはこの平面に直角に(transverse)決定される。
【0026】
要素または層が他の要素または層の「上に」、これに「結合され」またはこれに「連結され」ていると言及されているときは、該要素または層は、直接他の要素または層の上にあり、これに結合され、またはこれに連結されていてもよく、あるいは、介在する要素または層が存在していてもよいものと了解される。これに対して、要素が「直接上に」、「直接結合され」、または「直接連結され」ていると言及されているときは、介在する要素または層は存在しない。全体にわたって、同じ符号は同じ要素を示す。ここに使用されているように、「および/または」という用語は関連付けられた網羅された事項の1つ以上のいずれかまたは任意の組み合わせを含む。
【0027】
第1の、第2の、第3の等の用語をここに種々の要素、部品、領域、層および/またはセクションを記載するのに使用されていることがあるが、これらの要素、部品、領域、層および/またはセクションはこれらの用語に限定されるものではない。これらの用語は1つの要素、部品、領域、層またはセクションを他の要素、部品、領域、層またはセクションから区別するためにのみ使用されている。従って、以下に説明する第1の要素、部品、領域、層またはセクションは第2の要素、部品、領域、層またはセクションと名付けても本発明の教示から逸脱しないであろう。
【0028】
空間的に相対的な用語、例えば「真下」(beneath)、「下方」(below)、「下側(低い)」(lower)、「上方」(above)、「上側」(upper)等が、ここに用いられていることがあるが、図に示されている一つの要素または特徴の他の要素または特徴との関係を説明する際の説明を容易にするためである。空間的相対用語は図面に描かれた向きに加えて、使用または操作時の装置の異なる向きを包含することが意図されているものと了解される。例えば、図示の装置が天地を逆にした場合、他の要素または特徴の「下方」(below)または「真下」(beneath)と記載された要素は今度は他の要素または特徴の「上方」(above)に向いていることになる。従って、例示的用語「下方」(below)は上方および下方の両方の向きを含むことができる。装置は他の向き(90°回転または他の向き)であってもよく、ここに用いられている空間的相対記述子(descriptors)はそれに沿って解釈される。
【0029】
別途定義されていない場合、ここに用いられている全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の通常の技倆を有する者により普通に了解されるものと同じ意味を有する。さらに、普通に用いられている辞書中に定義されている用語のような用語は、関連する技術分野の文脈におけるそれらの用語の意味と矛盾しない意味を有するものとして解釈されるべきであり、ここに明示されていない限り、理想化され、または過度に形式的な意味に解釈されない。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優越する。加えて、材料、方法および例は説明のためのものに過ぎず、制限的であることは意図されていない。
【0030】
図1は薄膜光電気装置の概略を示す。この装置は、複数の機能層を含んでいてもよい機能層構造40を備える。機能層は少なくとも第1および第2の電極層と、これらの電極層の間に配置された光電気層(opto−electric layer)とを備える。図1Aに詳細を示す透明層30内に埋め込まれた、電気的に相互接続された開放分流構造20により、少なくとも1つの電極層が分流される。分流装置20は、実質的にこれらの層に平行な平面内に延在する。分流構造20は開放されており、すなわち分流構造の材料は上記平面の面積の1/3以下の相対的表面積を占め、材料は1cmより大きいスケールで規則的に分布している。すなわち、この寸法の部分が実質的に同じ分布をしている。図1Aに示す実施の形態では、分流構造は6角形の迷路の形状をしている。代替的に、他のタイプの迷路、例えば矩形の迷路を用いてもよい。
【0031】
また、図1B〜1Eに示すように、他の形状(topologies)を用いてもよい。図1Bにおいて、開放された、電気的に相互接続された導電性構造20は、金属製の複数の細長い要素21を備える。これらの要素21は装置の全幅に渡って延在し、かつ導電性フレームのバスバー22により相互に接続され、装置との電気的接触を容易にしている。
【0032】
細長い要素21は、例えば1〜200μmの範囲、特に10〜500μmの範囲、例えば50μmの幅を持つ。バスバー22は1〜5mmの範囲、例えば1mmの幅を持つ。
【0033】
図1Cにおいて、少なくとも1つの導電性構造20は、くし状構造(comb structure)である。
【0034】
図1Dは、一対の導電性構造23,24を示し、それぞれ、くし状構造の形状をしており、相互に食い込んでいる。
【0035】
図1Eは複数の曲がりくねった導電性構造23,24が配置されている例を示す。この例では、一対の導体が示され、例えば、それぞれが電源の極性を持っていてもよい。しかしながら、追加の導電性構造が、例えば制御信号を伝えるために存在していてもよい。
【0036】
図2A〜2Eは本発明の第1の態様による方法を説明している。
【0037】
図2Aは、第1のステップ(S1)を示す。ステップ(S1)では基板10が用意される。基板は金属または合金製であってもよい。適切な金属としては、例えば、アルミニウム、チタン、銅、鋼、鉄、ニッケル、銀、亜鉛、モリブデン、クロムおよびそれらの合金が挙げられる。
【0038】
図示の実施の形態では、基板は高さHを有し、高さHは20〜500μmの範囲から選ばれる。高さHが実質的に20μmより小さく、例えば10μmならば、金属製基板は比較的に脆く、それを用いると工業的プロセスにおいて取り扱いが難しい。高さHが実質的に500μmよりも大きく、例えば1mmならば、金属製基板は比較的に堅く、それを用いると、ロール・ツー・ロール法を用いる工業的プロセスにおいて取り扱いが難しい。代替的に、金属をコートしたポリマー箔または金属をコートしたガラス板を基板として用いてもよい。さらに、これにより以下のステップ(S4)のプロセス時間が長くなる。この場合、基板は厚さが0.125mmのアルミニウム箔である。
【0039】
図2Bは、基板10に第1の側11において、電気的に相互接続された開放分流構造20を載せる第2のステップ(S2)を示す。この実施の形態では、このステップは、印刷法、例えばグラビュア印刷またはロータリー・スクリーン印刷のようなパターニング堆積法を用いて前駆材料を塗布する第1のサブステップを備える。このサブステップで、前駆材料は分流構造のための所望のパターン、例えば図1A〜1Eの一つに示すパターンで、塗布される。次いで、そのように適用されたパターン化された層は、第2のサブステップS2において、例えば層を加熱または照射することにより、パターン化された層にエネルギーを供給することにより、硬化される。特に、金属製基板10が用いられると、このプロセスが比較的高温で生起することができる。これはパターン化された層の急速硬化が可能であるため、有利である。一般的に、パターン化された層は、高さが2〜10μm、幅が10〜100μmである、相互に接続された細長い要素を有する。図2Fに示される実施の形態では、高さは2〜10μm、幅は約100μmである。印刷可能な物質は、例えば金属ナノ粒子を含有するインクである。その例としては、キャボット社(カボット・プリンティング・エレクトロニクス・アンド・ディスプレイズ(Cabot Printing Electronics and Displays)、米国)により提供されるような、銀ナノ粒子をエチレングリコール/エタノール混合物に分散したディスパージョンが挙げられる。この銀インクは20重量%の銀ナノ粒子を含有し、粒径は30〜50nmの範囲内である。このインクの粘度と表面張力は、それぞれ14.4mPa.sおよび31mNm−1である。
【0040】
代替的に、金属錯塩を有機系または水系溶剤に混合したものを印刷可能物質として使用してもよい。例えば溶剤と銀アミドを含む銀錯塩インク、例えばインク・テック社(InkTech)により製造されたインクを用いることができる。銀アミドは130℃〜150℃の間のある温度で分解して銀原子と揮発性アミンと二酸化炭素になる。溶媒とアミンが蒸発すると、銀原子は基板上に残留する。銀の代わりに、例えば銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、パラジウム、金、バナジウム、およびビスマスをベースとする他の金属錯塩を代替的にまたは組み合わせて使用することができる。
【0041】
さらに、金属ナノ粒子を含有するインクおよび/または金属錯塩インクの代わりに種々の組成の導電性ペーストを用いることができる。
【0042】
図2Cは第3のステップを示す。第3のステップでは、分流構造20が透明層30内に埋め込まれている。図示の実施の形態では、透明層30はバリア層である。図示の実施の形態では、バリア層30は、順次第1の無機副層と、有機層と、第2の無機副層とを備えるスタックである。このスタックはさらに有機および無機の副層を備えていてもよい。
【0043】
有機副層は架橋(熱硬化性)材料、エラストマー、線状ポリマー、または分岐または超分岐ポリマーシステム、あるいは、光の透過を依然として保証する大きさの無機粒子で随意に充填された上述のものの任意の組み合わせから用意されてもよい。この材料は溶液からまたは100%固体の材料として処理される。硬化または乾燥は、例えば、湿った材料、純粋または適切に感光性または感熱性ラジカルまたは超酸開始剤で適切に処方された固まっていない材料に、UV光、可視光、赤外線、または熱、E−ビーム、g−光線または上述のものの任意の組み合わせを照射することにより引き起こすことができる。有機層の材料は、比水蒸気透過率が低く、疎水性が高いことが好ましい。適切な架橋(熱硬化性)システムの例としては、脂肪族もしくは芳香族エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、飽和炭化水素アクリレート、エポキシド、エポキシド−アミン系、エポキシド−カルボン酸の組み合わせ、オキセタン、ビニルエーテル、ビニル誘導体、およびチオール−エン系の任意の単味または任意の組み合わせが挙げられる。エラストマー材料の適切な例としては、ポリシロキサンが挙げられる。適切な分岐または線状ポリマー系の例としては、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリノルボルネン、環状オレフィンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルクロライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレンの任意の単味または任意の組み合わせが挙げられる。有機副層は0.1〜200μm、好ましくは5μmと50μmの間の厚さを有していてもよい。
【0044】
無機副層は、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化錫(SnO)、インジウム錫酸化物(ITO)、In+SnO),炭化ケイ素(SiC)、シリコンオキシナイトライド(SiON)およびそれらの組み合わせを含む任意の透明セラミックであってもよい。
【0045】
無機層は、実地上、有機層よりも実質的に薄い。無機層は10nm〜1000nmの範囲内、好ましくは100nm〜300nmの範囲内の厚さを持っていなければならない。
【0046】
第1および第2のバリア層の全厚さは、好ましくは少なくとも50μmである。50μmよりも実質的に小さい、例えば20μmの厚さで、得られた封入された電子装置は急速に損傷を受け易い。好ましくは、全厚さは500μmより小さい。厚さが実質的により大きく、例えば1mmである場合、製品の可撓性が損なわれる。
【0047】
ステップS4において、分流構造が埋め込まれた後、この埋め込まれた電気的に相互接続された開放分流構造から基板10が除去される。基板10が金属箔の場合、金属箔は酸または塩基、例えば硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)を用いたエッチングにより除去することができる。
【0048】
基板10がアルミニウム箔であり、分流構造20が銀製である、示された実施の形態では、アルミニウム基板は、NaOHエッチング液を用い銀製の分流構造20を損傷することなく除去することができる。
【0049】
図2Dに示すように、基板10を除去するステップS4の後、実質的に平坦な、自由表面31が残る。この自由表面31はバリア層30とこれに埋め込まれた分流構造20とから形成されている。
【0050】
ステップS5では、基板10の除去後に形成された自由表面31を覆って、直ちに機能層構造40が堆積される。この場合、機能層構造40は、正孔注入層42(ここではPEDOT層という)、発光層44およびカソード層46を備える。
【0051】
発光層44は、一般的に、任意の有機エlレクトロルミネッセンス(EL)材料からなり、限定されないが、小分子量の有機蛍光化合物、蛍光および燐光金属錯体、共役ポリマー、並びにそれらの混合物を含む。蛍光化合物の例としては、限定されないが、ピレン(pyrene)、ペリレン(perylene)、ルブレン(rubrene)、クマリン(coumarin)、それらの誘導体およびそれらの混合物が挙げられる。金属錯体の例としては、限定されないが、金属キレート化オキシノイド化合物、例えば、ペトロフ他(Petrov et al.)の米国特許第6,670,645号明細書、PCT出願公開第WO03/063555号明細書、および同第WO2004/016710号明細書に記載のような、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム[tris(8−hydroxyquinolato)aluminum](alq3)、シクロメタレーション化されたイリジウムおよび白金エレクトロルミネッセンス化合物、例えばイリジウムとフェニルピリジン(phenylpyridine)、フェニルキノリン(phenylquinoline)またはフェニルピリミジン(phenylpyrimidine)リガンドとの錯体、および、例えばPCT出願公開第WO03/008424号明細書、同第WO03/091688号明細書、同第WO03/040257号明細書に記載のような有機金属錯体およびそれらの混合物が挙げられる。
【0052】
電荷担持ホスト材料および金属錯体を含むエレクトロルミネッセンス発光層が、トンプソン他(Thompson et al.)による米国特許第6,303,238号明細書に、およびバロウズおよびトンプソン(Burrows and Thompson)によるPCT出願公開第WO00/70655および同第WO01/41512に記載されている。共役ポリマーの例としては、限定されないが、ポリ(フェニレンビニレン)[poly(phenylenevinylenes)]、ポリフルオレン[polyfluorenes]、ポリ(スピロビフルオレン)[poly(spirobifluorenes)]、ポリチオフェン[polythiophenes]、ポリ(p−フェニレン)[poly(p−phenylenes)]、およびそれらのコポリマーが挙げられ、さらにそれらの組み合わせまたは混合物が挙げられる。
【0053】
特定の材料の選択は、特定の用途、操作時に使用される電位、その他の要因によって決めることができる。エレクトロルミネッセンス有機材料を含有する発光層44は、蒸着、溶液処理技術または熱転写を含む任意の数の技術を用いて適用することができる。他の実施の形態では、ELポリマー前駆体を適用し、次いでこれを、一般的には熱その他の外部エネルギー源(例えば、可視光またはUV放射線)により、ポリマーに転換することができる。
【0054】
カソード層46は、通常、副層のスタック、例えばCa/Ag、Au/Al/Au、LiF/Ag/ITO、Sr/Ag、Ca/Al、Ba/Alにより形成される。この場合、副層が言及される順序はスタックに材料が適用される順序を示している。例えば、この例では、Ba/Alスタックが適用されるが、ここでは、バリウム副層は約5nmの厚さを持ち、発光層44に対して適用され、アルミニウム副層は、ここでは100〜400nmの範囲内の厚さを持ち、バリウム副層の上面に適用される。
【0055】
第2のバリア層50が適用されるが、これはバリア層30と同様であってもよい。代替的に、例えば、異なる材料の無機副層を交互に積んだスタックから成る、他のタイプのバリア層を適用してもよい。図2Eに示すように、第1および第2のバリア層30,50は機能層構造40と分流構造20とをそれらに一緒に埋め込んでいる。
【0056】
製品中に用いられている、図2Dに示す半完成品の写真が図2Fに示されている。
【0057】
図3A〜3Eは本発明の第1の態様による方法の第2の実施の形態を示す。図3Fは上記方法により得られた製品の写真である。
【0058】
図3A〜3Eに示す方法は、図2A〜2Eに示す方法とは、電気的に相互接続された開放分流構造を基板10に載せる前に、少なくとも1つの中間層12を基板10の第1の側11に堆積する追加のステップの有無により、異なっている。この追加のステップの結果を図3Aに示す。この場合、少なくとも1つの中間層12が透明導電層であり、ここではインジウム錫酸化物(ITO)の層であるが、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、ATO(アンチモン錫酸化物)、錫酸化物ニッケル−タングステン−酸化物、インジウムドープ亜鉛酸化物、マグネシウムインジウム酸化物のような他の材料も適切である。中間層12は一時的金属基板10に適用されるので、比較的高い処理温度を使用することができる。すなわち、550℃の温度における温度大気圧化学蒸着(APCVD)プロセスの間、中間層12を適用することができ、それにより、10〜600nmの範囲内の厚さを持つ高品質の電極層が得られる。
【0059】
次いで、電気的に相互接続された開放分流構造20が、基板10の第1の側11に、すなわち、中間層12の自由面に堆積される。
【0060】
本発明の第1の態様による方法の他の実施の形態のように、電気的に相互接続された開放分流構造20は、透明層30、好ましくはバリア層中に埋め込まれ、図3Cに示す半完成品が得られる。随意に、図3Cの破線で表わされた箱により示されるようにポリマー箔、例えばPENまたはPET箔60をバリア層30の自由表面に積層してもよい。
【0061】
本発明の第1の態様による方法の他の実施の形態のように、埋め込まれた電気的に相互接続された開放分流構造20から基板10が除去され、図3Dの中間製品が得られる。図3Dは、また、透明バリア層30を構成する副層32,34,36を詳細に示す。第1の副層32は、無機層、例えば酸化ケイ素または窒化ケイ素の層であり、10〜1000nm、好ましくは100〜300nmの範囲内の厚さを持つ。この場合、厚さは約100nmである。第1の副層32は、分流構造20と共形である。第2の副層34は平坦化有機層、例えばポリアクリレート層であり、0.1〜100μm、好ましくは5〜50μmの範囲内、例えば約20μmの厚さを持つ。第3の層36は、また、無機層、例えば酸化ケイ素または窒化ケイ素の層であって、第1の層32の厚さと匹敵する厚さ、例えば100nmを持つ。
【0062】
上記スタックは、交互に積み重ねられた、さらなる有機および無機副層、例えば、図3Hに示すように、無機層36および有機層38を備えていてもよい。一実施の形態では、スタック30は1つ以上の染色された有機層を備え、所望により出力光の色を変える。これは図1を参照して説明した実施の形態にも応用可能である。
【0063】
さらに、例えばコーティングおよび硬化によりポリマーフィルムをスタック30に適用して、一時的基板10を除去した後、最終的基板としてもよい。
【0064】
図2A〜2Eを参照して説明した実施の形態とは異なり、中間層12はエッチング停止層として機能する。これにより、広範囲の金属を使用することが可能となる。一時的基板10および分流構造20のための金属を選択しているにも拘わらず、同じ金属が分流構造20と一時的基板10とに用いられている場合でさえも、一時的基板10は分流構造12に損傷を引き起こすことなく除去することができる。
【0065】
図2A〜2Eに示す実施の形態のように、次いで機能層構造40が適用され、そしてバリア層50が適用される。
【0066】
そのようにして得られた製品の写真が図3Fに示される。同図に示される装置の面積は9cm×9cmである。中間層12は500nmの厚さのSnO:F層である。分流構造20はAgのインクジェット印刷により得られる。分流構造は、幅150μm、高さ約300nmの相互に平行なラインを備える。
【0067】
本発明による方法を用いて得られた種々の装置および本発明によらない装置をシミュレーションしてそれらの出力光の均質性を判断した。それらの結果を図4に示す。
【0068】
図2A〜2Eに示す方法の実施の形態を用いて得られる本発明による装置をシミュレーションした。これらの装置は、装置の全幅にわたって延在する相互に平行な分流ラインにより形成された電気的に相互接続された開放分流構造20を有する。相互間の間隔2.5mmの距離で相互に離隔した平行な分流ラインは幅が70μm、高さが5μmである。
【0069】
図4において、大文字「A」は図3Eに示すように、本発明によるこれらの装置の第1の変形例のモデル化を表し、SnO製の中間の透明な導電層12の厚さは200〜600nmの範囲内であるが、正孔注入層はない。大文字「B」は本発明によるこれらの装置の第2の変形例のシミュレーションを表し、透明な導電層と残りの機能構造との間に100nmの追加の正孔注入層を有する。2つのスピーシーズをシミュレーションした。一方は、比較的低い導電率を持つ正孔注入層を有するもの、すなわち、導電率が1×10S/mのPEDOT層と、もう一方は、高い導電率を持つもの、すなわち導電率が2.5×10S/mのPEDOT層である。大文字Cは図2Eに従う本発明による装置の第3の変形例を表す。この場合、正孔注入層42は、100nmのPEDOT層である。
【0070】
本発明によらない装置(D)もシミュレーションした。これは分流構造を持たず、SnOの透明導電層のみを持つ。
【0071】
シミュレーションの結果を図4に示す。この場合、光出力をCd/m(垂直)で、透明電極用の電力供給端子が取付けられている端部からの距離m(水平)の関数として与えられる。すべての装置がその端部で同じ輝度1500Cd/mを示した。
【0072】
すべての装置がそれらの端部で実質的に同じ輝度1500Cd/mを示した。
【0073】
本発明によらない装置(D)は、輝度がその端部における約1500Cd/mから端部から1cmの距離における約900Cd/mへの急速な低下を示す。端部から5cmの距離において、輝度は約500Cd/m、すなわち端部における輝度の約1/3に減少した。
【0074】
変形例AおよびBによる装置は、約1300Cd/m、すなわち13%の比較的穏やかな輝度の減少を示しただけである。外部電力が供給される端部から約2cm〜6cmの範囲内で、輝度は1200Cd/mのレベルで実質的に一定であった。輝度は僅かに透明導電層12の厚さと正の相関を示したが、差は小さい。
【0075】
本発明の変形例Cによる装置は、端部から0.4mmの距離において輝度が約1200Cd/mへの減少、例えば20%の減少を示す。0.4mmから約6cmまでの端部からの距離において、輝度はこの1200Cd/mのレベルを維持している。
【0076】
従って、本発明の方策は装置の輝度の均質性を明瞭に改善する分流構造を適用する新規かつ発明的手段を提供する。
【0077】
装置が、一方向的に放射するだけでよいか、または放射線を受けるだけでよい場合、電極46は透明である必要はなく、従って、所定の導電率を有するのに必要な厚さであってもよい。しかしながら、装置が両側に放射することができるか、または両側から放射線を受けることができることが望まれる場合、電極の厚さは適度であって、装置に入射し、または装置から出射する放射線を、電極が過度に吸収しないようにすることが必要である。その場合、基板の第1の側に追加の電気的に相互接続された開放分流構造を載せる工程を有する、第1の態様による方法の一実施の形態では、外部電力線に対する十分に低いインピーダンスの電気伝導が得られる。結果は、基板の第1の側には、図1Dまたは1Eに示すように、相互に分離された、第1および第2の電気的に相互接続された開放分流構造23、24が設けられる。
【0078】
図5Aは、電気的に相互接続された開放分流構造23、24を設けられた半完成品の一部分を示す。図5Bは図5AのB方向から見た底面図である。分流構造23,24は、分流構造24を適用する前に中間層12に堆積された絶縁層14、例えば金属酸化物層、例えばAlの層により相互に分離されている。分流構造23、24は同時に、例えば印刷により適用されるのが好ましい。
【0079】
図5A、5Bに示す状況では、分流構造23は透明導電層12に電気的に接続されている。分流構造は。今度は導電層46に、例えば図5Cおよび5Dに示す工程によって接続されてもよい。
【0080】
図5Cに示す工程において、孔26が機能層44、42、中間層12および絶縁層14を通して分流構造24まで穿孔される。孔26は次いで、導体ペーストで(図5Dに示すように)充填し、直交(transverse)導体28を形成する。この目的のための適切な導体ペーストとしては、例えば金属充填ポリマーペースト、例えば銀または銅を充填したエポキシ、アクリレートまたはシリコーンが挙げられる。
【0081】
図5Eに示す次の工程では、直交導体28の周りのトーラス形孔29を穿孔により形成して直交導体28を透明導電層12から絶縁する。次いで、直交導体28の周りのトーラス形孔29に絶縁材料、例えば金属フリーのエポキシ、アクリレートまたはシリコーンを充填する。代替的に、円筒状孔を穿孔してもよい。すなわち、先ず、トーラス形孔29の外表面と一致する円筒状表面を有し、絶縁層14または分流構造24まで延在する孔を穿孔する。次いで、この円筒状孔に絶縁ペースト、例えば金属フリーのエポキシ、アクリレートまたはシリコーンを充填する。硬化後、図5Cの形状26に一致する孔を絶縁ペースト内に穿孔する。次いで、絶縁ペースト内のこの孔に導体ペーストを充填して直交導体28を形成する。これによっても、図5Eの半完成品が得られる。
【0082】
図5Fに示すように、導電層46を先行層44に適用した後、この導電層46を直交導体46を介して分流構造24に接続する。1つの直交導電要素46のみを示しているが、装置は複数の直交導電要素を有し、これらが分散されて導電層46の表面全体にわたって電気接点を形成していてもよい。それにより、導電層46はそれ自体が非常に低いコンダクタンスを持っている必要はなく、従って、装置によって発生された放射線または装置によって受けられる放射線に対する良好な透過率を有する比較的薄い層であってもよい。図5Fに示すように、分流構造23、24はそれぞれの直交導体23a、24aを介して、それぞれの外部接点23b、24bに結合される。それぞれの直交導体23a,24aは、それぞれの孔を穿孔し、これらの孔に導体ペーストを充填することにより設けることができる。分流構造23、24は比較的高い導電率を有することができるので、分流構造23、24のそれぞれに1つの接点で十分である。超大面積の装置については、分流構造23、24のそれぞれに複数の電気接点を設けることを考えてもよい。
【0083】
基板は金属または金属の合金である必要はない。代替的に、ポリマー箔を一時的基板として使用してもよい。ポリマーは、ステップS4において溶剤を用いて除去することができる。例えば、一時的基板はポリマー箔上にスパッタしたアルミニウムの層またはポリマー箔上に水溶性層をスパッタした層を備えていてもよい。その一例は、PEDOT/Al/PENのスタックを備える一時的基板である。この一時的スタックは水にさらすことにより容易に除去することができる。一時的基板の他の例は、LEP/PEDOT/ガラスにより形成されたスタックである。分流構造は、バリア構造中に埋め込まれた後に、この一時的基板から剥離することができる。
【0084】
しかしながら、一時的基板として金属箔を使用することは、比較的高い処理温度を使用することができるという利点を有する。
【0085】
本発明は、光電気装置がOLEDである実施の形態について詳細に説明したが、装置は代替的に他の光電気装置、例えば太陽電池であってもよい。その場合、光電気層構造は、光子放射線を電流に変換する少なくとも1つの光起電層を備える。他の実施の形態では、装置は、クロム電気メッキ鏡である。その場合、光電気層構造は、電気的に制御可能な透過率を有する少なくとも1つの層を備える。
【0086】
本明細書において使用されている場合、「備える」(comprises)および/または「備えている」(comprising)という用語は、述べられた特長、整数、工程、操作、要素および/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特長、整数、工程、操作、要素、構成要素および/またはそれらの群の存在または追加を排除しない。特許請求の範囲の各請求項において、「備えている」(comprising)という用語は他の要素または工程を排除せず、不定冠詞“a”または“an”は複数を排除しない。単一の構成要素または他のユニットが各請求項中に記載された複数の事項の機能を果たしてもよい。ある手段が相互に異なる請求項中に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。請求項中の参照符号はその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0087】
さらに、反対の旨を明記されていない限り、「または」、「もしくは」、「あるいは」(or)は包含的意味を持ち、排除的意味を持たない。例えば、条件Aまたは(or)Bは、次のいずれか1つにより満足されることになる。すなわち、Aは真(または、存在する)かつBは偽(または、存在しない)、Aは偽(または、存在しない)かつBは真(または存在する)、およびAおよびBは共に真(または、存在する)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電気装置の製造方法であって、
基板(10)を用意し、
前記基板の第1の主面に電気的に相互接続された開放分流構造(20)を載せ、
前記電気的に相互接続された開放分流構造を透明層(30)中に埋め込み、
前記基板を、前記電気的に相互接続された開放分流構造から、除去する
ことを特徴とする光電気装置の製造方法。
【請求項2】
請求項2に記載の方法であって、
さらに、前記基板を除去した後に形成された自由表面に機能層構造(40)を堆積する
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記透明層はバリア層である
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記基板の前記第1の側に前記電気的に相互接続された開放分流構造を載せる前に、前記基板の前記第1の側に少なくとも1つの中間層を堆積する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの中間層は、透明導電層であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記基板は金属製基板であり、前記基板はエッチングにより除去されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記基板は可溶性層を設けられており、前記可溶性層に当接して前記分流構造が適用され、かつ
前記基板は前記可溶性層を溶解することにより除去される
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記基板はリリース層を設けられ、前記リリース層に当接して前記分流構造が適用され、かつ
前記基板は、前記埋め込まれた分流構造を前記基板から前記リリース層を用いて除去される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、
前記電気的に相互接続された開放分流構造はさらなる金属で形成され、前記さらなる金属は前記一時的基板として用いられた金属とは異なり、かつ
前記さらなる金属は前記用いられたエッチング剤に対して実質的に無反応である
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記電気的に相互接続された開放分流構造は電着により設けられる
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記電気的に相互接続された開放分流構造は、
前記基板に液状物質を相互接続された開放構造に堆積し、
前記液状物質を硬化することにより得られ、前記硬化された液状物質により形成された前記相互接続された開放構造は導電性である
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、
前記電気的に相互接続された開放分流構造は金属の層を前記構造に堆積し、かつ
前記堆積された層をパターニングすることにより用意される
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記透明層の上にポリマー箔を積層する
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、
前記透明層の上にコーティングおよび硬化によりポリマーフィルムを適用する
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記基板の前記第1の側に追加の電気的に相互接続された開放分流構造(24)を載せる
ことを特徴とする方法。


【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【公表番号】特表2013−501342(P2013−501342A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523579(P2012−523579)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050499
【国際公開番号】WO2011/016725
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(506297485)ネーデルランデ オルガニサティー ヴール トゥーヘパストナツールウェテンスハペライク オンデルズーク テーエヌオー (30)
【出願人】(512030533)コニンクレイケ フィリップス エレクトロニクス エン.フェー. (1)
【Fターム(参考)】