説明

光電池モジュール用単一バックシート、その製造方法、および光電池モジュールの製造におけるその使用

【課題】少なくとも1種のポリアミドに基づく成形材料から製造されるか、又は製造され得る光電池モジュール用単一バックシートを提供する。
【解決手段】本発明による光電池モジュール用単一バックシートは、該少なくとも1種のポリアミドが、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、およびアミノカルボン酸ならびにこれらの混合物を含む群から選択される平均炭素原子数8〜17の直鎖状および/または分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式モノマーから合成されることを特徴とする。ポリアミドPA610およびポリアミドPA612は本発明から除外され、ラクタムおよびアミノカルボン酸に基づくポリアミドは架橋される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年6月18日に出願された欧州特許出願第EP09163070.7号の優先権を主張するものであり、該特許出願の全開示内容は、明示的な事実上の引用文献として本明細書の一部を成すものである。
【0002】
本発明は、光電池モジュール、すなわち光電子的発電のための太陽電池モジュールに関する。このような光電池モジュールでは、表面に、多くの個々の太陽電池が取り付けられ、相互連結されている。1つの太陽電池しか有さないモジュールも可能である。太陽電池は半導体材料から製造される薄いディスクであり、露光により電圧を放電し、入射する太陽光を直接的に電力に変換する。この目的のための半導体材料として、主に、シリコンが使用される。より大きな太陽光発電施設では、多くのモジュールが直列に連結され、その結果として高電圧および高電力が得られる。
【背景技術】
【0003】
典型的な光電池モジュールは積層体として平板状形態で構成される。透明板状体(transparent pane)、例えば、特殊ガラス製板状体が最上部に配置される。接着性媒介シート(adhesion-mediating sheet)、好ましくはエチレンビニルアセテート(EVA)製シートを、下部に結合させる。該シートは、透明板状体を実際の太陽電池(多数のシリコンディスクまたは1つだけの単一シリコンディスク)に連結させる。接着性媒介シート(EVA)はさらに太陽電池の下側を、モジュールの背面保護層(rear protective layer)に相当する少し厚いバックシートに連結する。これらの層の複合体は真空プレス(vacuum press)で熱的に圧縮される(そのため、これらの層は熱間圧縮によりEVAを介して互いに接着する)。層の材料は初め、プレス時において逆の順序で置かれるため、ガラス製板状体は積層中、その他の層のための硬質な下敷(rigid underlay)として使用できる。このように、太陽電池は弾性で透明なEVAホットメルト接着剤中に埋め込まれ、ガラスとバックシートとの間に封入される。このような光電池モジュールのバックシートが本発明の主要な対象である。
【0004】
この技術的な背景は特許文献1に適切に記載されている。その中で、ポリビニルフルオリド(PVF)製のシートであるテドラー(Tedlar)(E.I.デュポン・ドゥ・ネムール・アンド・カンパニー社の登録商標)が好ましいバックシートとして記載されている。テドラー(登録商標)バックシートは3層シート(PVF/PET/PVF)の形態で実用上、一般的に使用されている。特許文献1はさらに、背面モジュール層用に使用可能な材料として、ポリオレフィン、ポリエステル、種々のポリアミド(ナイロン)、ポリエーテルケトン、フルオロポリマー等の熱可塑性樹脂を開示する。
【0005】
特許文献2には、主に、光電池モジュール用封入材料としてポリアミドを使用することが記載されている。当該公報では、導入部において、背面封入材料としてフルオロポリマーおよびポリエステル(すなわち、PVFおよびPET)製の多層シート複合体を備えた従来技術が言及されている。この封入材料の埋込材料(エチレンビニルアセテート(EVA))に対する接着性が低いため、特許文献2では、ポリアミド(PA)が封入材料として、すなわち光電池モジュールのバックシートへの使用に適した材料として提案さている。様々なポリアミドの類型が明示的に記載されている;PA6,PA66,PA7,PA9,PA10,PA11,PA12,PA69,PA610,PA612,PA6−3−T,PA6I,およびポリフタルアミド(PPA)。しかしながら、特許文献2の明細書では、記載されたPAの類型はシート複合体での使用または単一シートとしての使用に適しているということは実験的に証明されていない。
【0006】
ポリアミド11はまた非特許文献1において使用可能なバックシート材料として示されている。この論文では、ナイロン11(またはPA11)は再生可能な原料源(ひまし油)に基づくため、バックシートの合理的な材料として考察されている。さらにPA11は、耐久性があり(すなわち生物学的に分解されないこと)、環境にやさしい太陽発電での使用に重要なものであることが開示されている。また、ナイロン11は実用上、単独で使用されず、むしろ常にはバックシートとしての別のシート材料(例えばセルロース)との複合物材において使用されることが開示されている。
【0007】
エス・ビー・レビーが筆頭発明者である特許文献3でも同じ結論に達している。ここでは、ポリアミド11(ナイロン−11層510)は、光電池用バックシート(500)としての、特別な、電気絶縁紙(505)との複合体において使用される(図5および対応する説明を参照のこと)。当該ポリアミド11は押出被覆により紙に対して被覆される。
【0008】
特許文献4では、光電池モジュールの保護シート用の層材料としてポリアミド12が記載され、これらのシート複合体は主として、ポリエステル(PETまたはPEN)またはフルオロポリマーETFEから選択されるキャリア材料層を含むことがさらに示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願第WO94/22172号公報
【特許文献2】国際特許出願第WO2008/138021A2号公報
【特許文献3】米国特許出願2009/0101204A1号公報
【特許文献4】国際特許出願WO2008/138022A1号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】プロック・オブ・スピー(Proc. of SPIE)(2008) 第7048巻「光電池、モジュール、構成要素、およびシステムの信頼性」、70480C/1−10に記載のエス・ビー・レビー(S.B. Levy)による技術論文「バイオ・ベースド・バックシート(Bio Based Backsheet)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多層型バックシートを一般的に提供する先行技術とは対照的に、本発明は、光電池モジュールのための単層型バックシート(single-layer backsheets)(単一シート(mono-sheets))を製造できる適切なポリアミドを見出すことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
当該目的は、請求項1の特徴を有するポリアミドに基づくバックシートによって達成される。好ましい具体例を従属請求項で開示する。さらに、そのようなバックシートの製造方法ならびに光電池モジュールの製造のための当該バックシートの使用を権利請求する。
【0013】
上記目的は、本発明に従って、ポリアミドに基づく成形材料から単一シートとして製造されるバックシートにより達成され、当該ポリアミドは、モノマーの炭素原子数が平均で8〜17になるように、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、およびアミノカルボン酸を含む群から選択される直鎖状および/または分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式モノマーに基づいて合成され、当該ポリアミドからはポリアミド610およびポリアミド612が除外され、ラクタムおよびアミノカルボン酸に基づくポリアミドは架橋物である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、換言すると、光電池モジュール用単一バックシート(mono-backsheets)に関するものである。当該単一バックシートは成形材料から製造されるか、または製造可能であり、当該成形材料は少なくとも1種のポリアミドに基づくものである。本発明に係る光電池モジュール用単一バックシートは、当該少なくとも1種のポリアミドが、直鎖状および/または分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式モノマーから合成されることを特徴とする。当該ポリアミドのために選択されるモノマーは平均で8〜17の炭素原子を有するものである(すなわち、個々のモノマーは、当該ポリアミドに含有されるその他のモノマーが8を超える炭素原子を有して当該ポリアミドを構成する場合、これを補うために炭素原子数が8未満であってもよい)。
【0015】
ポリアミドのために選択されるモノマーは平均炭素原子数が8〜17であるという事実は、(ポリアミドに含有される各モノマーの炭素原子数が少なくとも8でなければならないという、より厳密な条件と比較して)個々のモノマーの選択範囲を下方に拡張するものであり、平均炭素原子数が結果として少なくとも8(かつ多くとも17)となるように、可能な限り短いモノマー(例えば、短鎖ジアミン)を、同じポリアミドで、その他の種類のより長いモノマー(例えば、長鎖ジカルボン酸)を用いることによって相殺してもよいし、または過度に相殺してもよいという考えに基づいている。平均炭素原子数の要件は満足するが、全てのモノマーの炭素原子数は少なくとも8というわけではないポリアミドの具体例として、C4−ジアミンのブタンジアミンとC12−ジカルボン酸のドデカン二酸とから合成されるPA412が挙げられる。
【0016】
モノマーは、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、およびアミノカルボン酸、ならびにこれらの混合物を含む群から選択される。さらに、先行技術との境界を画定するために、以下の条件が適用される:ポリアミドPA610およびPA612は本発明から除外され、ラクタムおよびアミノカルボン酸に基づくポリアミドは架橋される。
【0017】
記載される範囲のジアミンおよびジカルボン酸に基づくポリアミドは、非架橋形態および架橋形態の両方の形態で好ましい実施態様を表す。
【0018】
ポリアミドは、脂肪族モノマーに加えて、脂環式モノマーも含有できる:脂環式モノマーとしては、CHDA(脂環式モノマー化合物であるシクロヘキサンジカルボン酸の略語であり、1,4−CHDAを意味する)、BAC(ビスアミノシクロヘキサンの略語)、PACM(=4,4'−ジアミノジシクロヘキシル−メタン)、MACM(=3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノジシクロヘキシルメタン)、および当該脂環式ジアミンの混合物が好ましい。
【0019】
好ましい実施態様では、ポリアミドは以下のポリアミドを含む群から選択される;ポリアミド4X(X=炭素原子数12〜18の直鎖状脂肪族ジカルボン酸)、ポリアミド4X架橋物、ポリアミド9架橋物、ポリアミド99、ポリアミド99架橋物,ポリアミド910,ポリアミド910架橋物,ポリアミド1010,ポリアミド1010架橋物,ポリアミド11架橋物,ポリアミド12架橋物,ポリアミド1010/10CHDA,ポリアミド1010/10CHDA架橋物,ポリアミド610/10CHDA,ポリアミド610/10CHDA架橋物,ポリアミド612/10CHDA,ポリアミド612/10CHDA架橋物,ポリアミド910/10CHDA,ポリアミド910/10CHDA架橋物,ポリアミド912/10CHDA,ポリアミド912/10CHDA架橋物,ポリアミド1012/10CHDA,ポリアミド1012/10CHDA架橋物,ポリアミド610/12CHDA,ポリアミド610/12CHDA架橋物,ポリアミド612/12CHDA,ポリアミド612/12CHDA架橋物,ポリアミド910/12CHDA,ポリアミド910/12CHDA架橋物,ポリアミド912/12CHDA,ポリアミド912/12CHDA架橋物,ポリアミド1012/12CHDA,ポリアミド1012/12CHDA架橋物,ポリアミド1212/12CHDA,ポリアミド1212/12CHDA架橋物,ポリアミド1212/10CHDA,ポリアミド1212/10CHDA架橋物,ポリアミド1012,ポリアミド1012架橋物,ポリアミド1014,ポリアミド1014架橋物,ポリアミド1212,ポリアミド1212架橋物,ポリアミド1210,ポリアミド1210架橋物,ポリアミドMACMY(Y=炭素原子数9〜18の直鎖状脂肪族ジカルボン酸),ポリアミドMACMY架橋物,ポリアミドPACMY,ポリアミドPACMY架橋物,ポリアミドMACMY/PACMY,ポリアミドMACMY/PACMY架橋物、およびこれらの混合物。
【0020】
ポリアミドは、ポリアミド1010およびポリアミド1010架橋物を含む群から選択されることが特に好ましい。
【0021】
一般的用語であるポリアミド(PAと略す)は、ホモポリアミド、コポリアミド、およびホモポリアミドおよび/またはコポリアミドの混合物(ブレンド)を包含して理解される。
【0022】
本発明に係るバックシートのポリアミド成形材料は、白色顔料、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、加水分解安定剤(hydrolysis stabilizers)、架橋活性剤(cross-linking activators)、難燃剤、層状ケイ酸塩、充填剤、着色剤(染料および有色顔料を含む)、補強剤、接着性媒介物質(adhesion mediators)、耐衝撃性改良材、およびフルオロポリマーから選択される少なくとも1種の添加剤を含有することが好ましい。
【0023】
特に好ましい実施態様および単一層においては、請求された範囲からポリアミドを選択すること、およびこれらの添加剤の1種またはそれ以上を任意に添加することにより、本発明に係るポリアミド光電池モジュール用単一バックシートは、このようなバックシートに必須の特性、例えば耐候安定性(耐紫外線性および耐加水分解性(hydrolysis resistance))、耐熱性、機械的保護性、電気的絶縁性、高反射性、および良好な接着性等の全てを満足する。
【0024】
所望の高反射性を提供する白色顔料は二酸化チタン(例えば、ルチルまたはアナターゼ結晶変性(rutile or anatase crystal modification)のもの)が好ましい。二酸化チタンは同時に紫外線吸収剤としても作用する。他の使用可能な白色顔料は、例えば、酸化亜鉛および硫化亜鉛である。白色顔料を用いて達成されるバックシートの反射率は好ましくは少なくとも92%である。
【0025】
本発明に係る光電池モジュール用単一バックシートを製造するに際し、最適に適用されるのは押し出し法である。ポリアミドの架橋が達成されるべき場合は、ポリアミド成形材料配合物に架橋活性剤を成形前に添加する。好ましい架橋活性剤は、例えば、TMPTMA(=トリメチロールプロパントリメタクリレート)およびTAIC(=トリアリルイソシアヌレート)である。架橋は、配合中、またはシートのインライン押出(sheet extrusion in-line)中において、対応する活性剤を用いたラジカル法(a radical manner)により実施することができる。しかしながら、架橋は、その後で、押し出されたシート上、高エネルギー放射により開始することが好ましい。高エネルギー照射は電子線照射により行うことが好ましい。
【0026】
本発明に係る組成物から製造されたバックシートは光電池モジュールの製造に使用される。
【0027】
ひまし油はPA11モノマーを製造するための出発基材(starting base)であるだけでなく、C10二酸および/またはC10ジアミンを有するポリアミドの合成に使用されるセバシン酸(デカン二酸)およびデカンジアミンの出発基材でもあるので、架橋ポリアミド11およびポリアミド910(非架橋物および架橋物)、ポリアミド1010(非架橋物および架橋物)、ポリアミド1010/10CHDA(非架橋物および架橋物)、ポリアミド1012(非架橋物および架橋物)、およびポリアミド1210(非架橋物および架橋物)を含む態様は、当該ポリアミドが再生可能原料(renewable raw material)に基づくものであるという環境を考慮した議論をさらに主張できる。さらに、アゼライン酸(すなわち、C9二酸)もまた、ひまし油から入手できるものであり、PA99またはPA(Mおよび/またはP)ACM9において存在する。
【0028】
本発明を以下、実施例および比較例に基づいてさらに詳しく説明する。特許文献2に記載されたポリアミドの中には、単一バックシートとしての使用のための全ての要求性能を満足するわけではないものがあることは明らかである。例えば、ポリアミド6およびポリアミド66は自身の高吸水性のために、考慮に入らないことは、比較実験なしで明言できる。例えば、ポリフタルアミド等の部分的芳香族ポリアミドは、芳香族モノマーが耐紫外線性でないために適切ではない。他方で、標準的なポリアミド11およびポリアミド12には、自身の融点が、真空プレスによるモジュール製造時の積層温度(lamination temperature)をわずかに超えるにすぎない、という問題がある。この加工上の問題は架橋によって軽減することができ、すなわち当該ポリアミドを流出させることなく、より高い積層温度を適用することができる。さらに、耐久性、すなわち屋外使用でのバックシートの寿命を架橋によって増大することができる。
【実施例】
【0029】
表1〜4に従って行われる実施例および比較例としての実験例において、以下の原料を用いた:
PA12:ポリアミド12(ηrel=1.85)、イー・エム・エス−ケミー・アー・ゲー(EMS-CHEMIE AG)、スイス国
PA612:ポリアミド612(ηrel=1.80)、イー・エム・エス−ケミー・アー・ゲー(EMS-CHEMIE AG)、スイス国
PA1010:ポリアミド1010(ηrel=1.92)、イー・エム・エス−ケミー・アー・ゲー(EMS-CHEMIE AG)、スイス国
(相対粘度ηrelはそれぞれ、後述する方法に従って測定した。)
酸化防止剤1:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]
立体的ヒンダードフェノール(a sterically hindered phenol)に基づく酸化防止剤
酸化防止剤2:テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト
ホスホナイトに基づく酸化防止剤
紫外線吸収剤:N−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)オキサミド
紫外線/熱安定剤:N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゾールジカルボキサミド
TiO:二酸化チタン、ルチル型
TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート、架橋活性剤
【0030】
ウェルナー・ウント・プライデラー(Werner u. Pfleiderer)社製のZSK25型二軸スクリュー押出機により、表1に従う組成の成形材料を製造した。特定のポリアミド粒状物を安定剤とともに取り入れ口に添加し、二酸化チタンを、サイドコンベヤーを用いて溶融物中に添加した。架橋活性剤は、好ましくは、取り入れ口の後方の低温領域内へポンプを用いて添加される。
【0031】
ハウジング温度は昇温プロファイル(rising profile)として最高270℃に設定した。スクリュー速度200RPM(回転/分)で、1時間あたり12kgの処理量を達成した。ストランド粒状化法(strand granulation)を用いて粒状化を行った。80℃で24時間乾燥した後、粒状物の特性を測定し、平坦なシートを製造した。
【0032】
平坦なシートは、3300型、30mm径、L/D比=25の3−ゾーンスクリュー、冷却ロール型136/350のコリン社製の実験室用設備(Collin laboratory facility)を用いて製造した。シリンダー温度およびダイ温度は表1に示す。シートの幅は300mm、厚みは300μm(=0.3mm)であった。これらのシートからDIN53448に従う形態の衝撃引張試験片を、ウォーター・ジェット・切断法(water jet cutting)により裁断した。
【0033】
架橋活性剤を有する態様の場合、電子線架橋を、DIN A4フォーマットに裁断したシートについて行った。加速電圧は10MeV、照射線量は125kGyであった。
【0034】
加熱貯蔵を、ISO2578/IEC216−1に従って、空気循環炉中、80℃、100℃および120℃で行った。
【0035】
耐候試験を、ウェザロメーター耐候装置CI4000型の内部において、以下の条件下で行った:照射量0.50W/m、サイクル102/18分間(乾燥/降雨)。黒体温度(black body temperature)は65℃±3℃、湿度は65%±5%であった。
【0036】
耐温度性および耐候性の基準として、引張衝撃強さ(DIN53448)および色差ΔD65(DIN6174)(すなわち退色)について測定した。
【0037】
相対粘度ηrel:EN ISO 307(2003)に従い、m−クレゾール中の0.5重量%ポリアミド溶液(すなわち、100ml溶液中に0.5gのポリアミドを含有する溶液)について25℃の温度で測定した。ηrel=η/η(溶媒の粘度で割った溶液の粘度)で定義される。
【0038】
MVR(溶融体積量(melt volume rate)):単位cm/10分間で表されるメルトフローインデックスであり、ISO1133に従って275℃および荷重5kgで測定される。
【0039】
PA612は従来技術に従う比較例(以下の表中、V1として示される)として用い、一方で本発明に従う実施例はE1(PA1010に相当)、E2(PA1010架橋物)およびE3(PA12架橋物)で示した。
【0040】
表1は、実施された実験における個々の材料組成および採用された機械パラメータの一覧を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表2は、80℃での炉内貯蔵中における引張衝撃強さおよび色の変化を示す。
【0043】
【表2】

【0044】
表3は、ウェザロメーターでの耐候試験中における引張衝撃強さおよび色の変化を示す。
【0045】
【表3】

【0046】
複合体接着試験:
各種実験でA4フォーマットに製造されたシートをエタノールで洗浄し、ポリアミドシート0.3mm/ソーラーモジュール(solar modules)用EVAホットメルト接着シート0.5mm/ポリアミドシート0.3mmの層構造で、ポリアミドシート間の上部35mmを接着防止ペーパーで隔離し、2枚の金属プレート間において、加熱可能なプレス機を用いて圧縮し、初めは10分間で室温から140℃まで加熱し、この温度に5分間保持した後、10分間以内で室温まで冷却した。
【0047】
24時間後、シート状複合体を幅20mmおよび長さ155mmのストリップ(strips)に裁断した。裁断されたシートを直ちに70℃および62.5%周囲湿度の状態に移し、1週間保存した。室温まで冷却してから、シート状複合体の引張強さを、さらに24時間経過後の層剥離(layer separation)について試験した。
【0048】
上端部に未接着部分を有するポリアミドシートを引張試験機内で把持するために用いた。試験は50mm/分の速度で行った。複合体を剥離するための最高けん引力Fmaxを平均値として測定した。当該けん引力は本発明の用途のためには40N/cmより大きいことが必要である。
【0049】
表4は、ポリアミドシート/ソーラーモジュール用EVAシート/ポリアミドシートの複合接着体の上記の平均値を示す。
【0050】
【表4】

【0051】
これらの実験では、本発明のものは上記要求性能を満足し、特許文献2に従う従来技術に相当する比較例のV1(PA612)よりも有意に良好な特性および耐性を有することが示されている。特に、PA1010およびPA1010架橋物を用いたE1およびE2がより好ましく、予期せぬ良好な結果を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリアミドに基づく成形材料から製造される光電池モジュール用単一バックシートであって、該少なくとも1種のポリアミドが、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、およびアミノカルボン酸ならびにこれらの混合物を含む群から選択される平均炭素原子数8〜17の直鎖状および/または分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式モノマーから合成されることを特徴とする該光電池モジュール用単一バックシート(但し、該ポリアミドからはポリアミド610およびポリアミド612が除外され、ラクタムおよびアミノカルボン酸に基づくポリアミドは架橋物である)。
【請求項2】
ジアミンおよびジカルボン酸に基づくポリアミドが非架橋物または架橋物である請求項1に記載の光電池モジュール用単一バックシート。
【請求項3】
ポリアミドが、脂肪族モノマーのほかに、CHDA、BAC、PACM、MACMおよび該脂環式ジアミンの混合物の群から選択される脂環式モノマーを含有する請求項1または2に記載の光電池モジュール用単一バックシート。
【請求項4】
ポリアミドが、下記の化合物から成る群から選択される請求項1〜3のいずれかに記載の光電池モジュール用単一バックシート:ポリアミド4X、ポリアミド4X架橋物、ポリアミド9架橋物、ポリアミド99、ポリアミド99架橋物,ポリアミド910,ポリアミド910架橋物,ポリアミド1010,ポリアミド1010架橋物,ポリアミド11架橋物,ポリアミド12架橋物,ポリアミド1010/10CHDA,ポリアミド1010/10CHDA架橋物,ポリアミド610/10CHDA,ポリアミド610/10CHDA架橋物,ポリアミド612/10CHDA,ポリアミド612/10CHDA架橋物,ポリアミド910/10CHDA,ポリアミド910/10CHDA架橋物,ポリアミド912/10CHDA,ポリアミド912/10CHDA架橋物,ポリアミド1012/10CHDA,ポリアミド1012/10CHDA架橋物,ポリアミド610/12CHDA,ポリアミド610/12CHDA架橋物,ポリアミド612/12CHDA,ポリアミド612/12CHDA架橋物,ポリアミド910/12CHDA,ポリアミド910/12CHDA架橋物,ポリアミド912/12CHDA,ポリアミド912/12CHDA架橋物,ポリアミド1012/12CHDA,ポリアミド1012/12CHDA架橋物,ポリアミド1212/12CHDA,ポリアミド1212/12CHDA架橋物,ポリアミド1212/10CHDA,ポリアミド1212/10CHDA架橋物,ポリアミド1012,ポリアミド1012架橋物,ポリアミド1014,ポリアミド1014架橋物,ポリアミド1212,ポリアミド1212架橋物,ポリアミド1210,ポリアミド1210架橋物,ポリアミドMACMY,ポリアミドMACMY架橋物,ポリアミドPACMY,ポリアミドPACMY架橋物,ポリアミドMACMY/PACMY,ポリアミドMACMY/PACMY架橋物、およびこれらの混合物を含む群(式中、Xは炭素原子数12〜18の直鎖状脂肪族ジカルボン酸を示す;Yは炭素原子数9〜18の直鎖状脂肪族ジカルボン酸を示す)。
【請求項5】
ポリアミドが、ポリアミド1010およびポリアミド1010架橋物の群から選択される請求項4に記載の光電池モジュール用単一バックシート。
【請求項6】
ポリアミド成形材料が、白色顔料、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、加水分解安定剤、架橋活性剤、難燃剤、層状ケイ酸塩、充填剤、着色剤、補強剤、接着性媒介物質、耐衝撃性改良材、およびフルオロポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の光電池モジュール用単一バックシート。
【請求項7】
白色顔料が二酸化チタンである請求項6に記載の光電池モジュール用単一バックシート。
【請求項8】
白色顔料を含有し、少なくとも92%の反射率を有する請求項6または7に記載の光電池モジュール用単一バックシート。
【請求項9】
少なくとも1種のポリアミドに基づく成形材料から請求項1〜8のいずれかに記載の光電池モジュール用単一バックシートを製造する方法であって、ジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、およびアミノカルボン酸ならびにこれらの混合物を含む群から選択される平均炭素原子数8〜17の直鎖状および/または分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式モノマーから合成される少なくとも1種のポリアミド(但し、該ポリアミドからはポリアミド610およびポリアミド612が除外され、ラクタムおよびアミノカルボン酸に基づくポリアミドは架橋物である)に基づく成形材料を押し出すことを特徴とする方法。
【請求項10】
ポリアミド成形材料に架橋活性剤を成形前に添加し、ポリアミドの架橋を達成する請求項9に記載の光電池モジュール用単一バックシートの製造方法。
【請求項11】
シートを押し出した後、押し出されたシートの架橋を高エネルギー放射線により開始する請求項10に記載の光電池モジュール用単一バックシートの製造方法。
【請求項12】
高エネルギー照射を電子線照射により行う請求項11に記載の光電池モジュール用単一バックシートの製造方法。
【請求項13】
架橋活性剤が、トリメチロールプロパントリメタクリレートおよびトリアリルイソシアヌレートの群から選択される請求項10〜12のいずれかに記載の光電池モジュール用単一バックシートの製造方法。
【請求項14】
光電池モジュールの製造時における、請求項1〜8のいずれかに記載の光電池モジュール用単一バックシートまたは請求項9〜13のいずれかに記載の該単一バックシートの製造方法の使用。

【公開番号】特開2011−3905(P2011−3905A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−139080(P2010−139080)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(505343930)エムス−パテント アクチエンゲゼルシャフト (10)
【Fターム(参考)】