説明

光音響撮像装置およびその作動方法

【課題】内視鏡を用いた光音響撮像において、広範囲かつ均一に測定光を照射することを可能とする。
【解決手段】光音響撮像装置10において、光照射部58bおよび電気音響変換部56を取り囲みかつ膨張収縮可能なバルーン57を先端部55に有し、かつバルーン57に音響整合液59を供給する整合液供給手段58aを有する内視鏡5と、電気音響変換部56により検出された光音響波に基づいて光音響画像を生成して、光音響画像に基づいて表示画像を生成する画像生成手段12とを備え、バルーン57が光を散乱させる光散乱構造を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響画像を撮像することが可能な光音響撮像装置およびその作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の内部の断層画像を取得する方法としては、超音波が被検体内に照射されることにより被検体内で反射した超音波を検出して超音波画像を生成し、被検体内の形態的な断層画像を得る超音波イメージングが知られている。一方、被検体の検査においては形態的な断層画像だけでなく機能的な断層画像を表示する装置の開発も近年進められている。そして、このような装置の一つに光音響分析法を利用した装置がある。この光音響分析法は、所定の波長を有する光(例えば、可視光、近赤外光又は中間赤外光)を被検体に照射し、被検体内の特定物質がこの光のエネルギーを吸収した結果生じる弾性波である光音響波を検出して、その特定物質の濃度を定量的に計測するものである。被検体内の特定物質とは、例えば血液中に含まれるグルコースやヘモグロビンなどである。このように光音響波を検出しその検出信号に基づいて光音響画像を生成する技術は、光音響イメージング(PAI:Photoacoustic Imaging)或いは光音響トモグラフィーと呼ばれる。
【0003】
例えば特許文献1は、上記のような光音響イメージングを応用し、被検体の体表に超音波探触子を当てて超音波画像および光音響画像を同時に取得できる生体情報画像化装置を開示している。
【0004】
また近年では、例えば特許文献2のようなカテーテル、または内視鏡に光音響イメージングを応用する試みもなされ始めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−12295号公報
【特許文献2】特開2006−314474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光音響イメージングをカテーテルや内視鏡に応用する場合には、その先端部の小型化に伴う空間的な制約によって、測定光を照射するため光照射部の配置場所が制限されてしまうという問題がある。このような場合、広範囲かつ均一に測定光を照射することが難しくなってしまい、分析範囲が制限されたり光音響の信号強度がばらついたりする原因となる。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、内視鏡を用いた光音響撮像において、広範囲かつ均一に測定光を照射することを可能とする光音響撮像装置およびその作動方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る光音響撮像装置は、
被検体内に測定光を照射し、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出して光音響波を電気信号に変換し、この電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像装置において、
被検体内に測定光を照射する光照射部、光音響波の検出を行う電気音響変換部、並びに、光照射部および電気音響変換部を取り囲みかつ膨張収縮可能なバルーンを先端部に有し、かつバルーンに音響整合液を供給する整合液供給手段を有する内視鏡と、
電気音響変換部により検出された光音響波に基づいて光音響画像を生成して、光音響画像に基づいて表示画像を生成する画像生成手段と、
画像生成手段により生成された表示画像を表示する画像表示部とを備え、
バルーンが、光を散乱させる光散乱構造を有することを特徴とするものである。
【0009】
そして、本発明に係る光音響撮像装置において、光散乱構造は、バルーンの表面に設けられた散乱面であることが好ましい。この場合において、散乱面はバルーンの表面に凹凸構造を有することが好ましい。
【0010】
そして、本発明に係る光音響撮像装置において、バルーンは多層構造を有するものであり、光散乱構造は、多層構造のうちの1つの層とこの1つの層に隣接する層との間に設けられた散乱液であることが好ましい。この場合において、上記1つの層は多層構造のうちの最表層であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る光音響撮像装置の作動方法は、
被検体内に測定光を照射し、測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出して光音響波を電気信号に変換し、この電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像装置の作動方法において、
内視鏡の先端部に設けられた、被検体内に測定光を照射する光照射部が作動し、
内視鏡の先端部に設けられた、光音響波の検出を行う電気音響変換部が作動し、
内視鏡に設けられた、光照射部および電気音響変換部を取り囲むバルーンであって光を散乱させる光散乱構造を有するバルーンに音響整合液を供給する整合液供給手段が作動し、
電気音響変換部により検出された光音響波に基づいて光音響画像を生成して、光音響画像に基づいて表示画像を生成する画像生成手段が作動し、
画像生成手段により生成された表示画像を表示する画像表示部が作動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光音響撮像装置は、特に、光照射部および電気音響変換部を取り囲みかつ膨張収縮可能なバルーンを先端部に有し、かつバルーンに音響整合液を供給する整合液供給手段を有する内視鏡を備え、バルーンが、光を散乱させる光散乱構造を有することを特徴とする。したがって、光照射部から照射された測定光はバルーンを透過して被検体に照射される構成となり、測定光がバルーンを透過する際に測定光はバルーンの光散乱構造により散乱される。これにより、内視鏡を用いた光音響撮像において、測定光をそのまま被検体に照射する場合に比べてより広範囲かつ均一に測定光を照射することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る光音響撮像装置の作動方法は、上記の光音響撮像装置を作動させるものであるから、内視鏡を用いた光音響撮像において、測定光をそのまま被検体に照射する場合に比べてより広範囲かつ均一に測定光を照射することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光音響撮像装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】実施形態の内視鏡を示す概略図である。
【図3】実施形態の内視鏡の先端部を示す概略的な切断部端面図である。
【図4】バルーン中に音響整合液を供給した場合における内視鏡の先端部を示す概略図である。
【図5】内視鏡を体空内に挿入し撮像を行う様子を示す概略図である。
【図6】他の実施形態の内視鏡の先端部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0016】
図1は、本発明の実施形態の光音響撮像装置10の基本構成を示すブロック図である。この光音響撮像装置10は、超音波探触子11、超音波ユニット12、およびレーザユニット13を備えている。なおこの光音響撮像装置10は、超音波画像と光音響画像との双方を生成可能に構成されている。
【0017】
レーザユニット13は、被検体に照射すべきレーザ光を測定光として出射する。レーザユニット13は、例えば所定の波長の光を発生する1以上の光源を有する。光源として、特定の波長成分又はその成分を含む単色光を発生する半導体レーザ(LD)、固体レーザ、ガスレーザ等の発光素子を用いることができる。例えば本実施形態においてレーザユニット13は、励起光源であるフラッシュランプ35とレーザ発振を制御するQスイッチ36とを含むQスイッチパルスレーザ光源である。レーザユニット13は、トリガ制御回路32がフラッシュランプトリガ信号を出力すると、フラッシュランプ35を点灯し、Qスイッチパルスレーザを励起する。
【0018】
レーザユニット13は、レーザ光として1〜100nsecのパルス幅を有するパルス光を出力するものであることが好ましい。レーザ光の波長は、計測の対象となる被検体内の物質の光吸収特性によって適宜決定される。生体内のヘモグロビンは、その状態(酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、メトヘモグロビン、炭酸ガスヘモグロビン、等)により光学的な吸収係数が異なる。たとえば計測対象が生体内のヘモグロビンである場合(つまり、生体内部の血管を撮像する場合)には、生体の光透過性が良く、かつ各種ヘモグロビンが光の吸収ピークを持つ600〜1000nm程度とすることが好ましい。さらに、被写体の深部まで届くという観点からも、上記レーザの波長は600〜1000nmであることが好ましい。そして、上記レーザ光の出力は、レーザ光と光音響波の伝搬ロス、光音響変換の効率および現状の検出器の検出感度等の観点から、10μJ/cm〜数10mJ/cmであることが好ましい。さらに、パルス光出力の繰り返しは、画像構築速度の観点から、10Hz以上であることが好ましい。また、レーザ光は上記パルス光が複数並んだパルス列とすることもできる。レーザユニット13から出力されたレーザ光は、例えば光ファイバ、導光板、レンズおよびミラー等の導光手段を用いて超音波探触子11の近傍まで導光され、超音波探触子11の近傍から被検体に照射される。
【0019】
超音波探触子11は、被検体に向けて超音波を照射し、被検体内を伝搬する音響波を検出するものである。すなわち、超音波探触子11は、被検体に対する超音波の照射(送信)、および被検体から反射して戻って来るその超音波の反射波の検出(受信)を行う。さらに超音波探触子11は、被検体内の観察対象物がレーザ光を吸収することにより被検体内に発生した光音響波の検出も行う。なお本明細書において、「音響波」とは超音波および光音響波を含む意味である。ここで、「超音波」とは電気音響変換部の振動により被検体内に発生した弾性波およびその反射波を意味し、「光音響波」とは測定光の照射による光音響効果により被検体内に発生した弾性波を意味する。そのために超音波探触子11は、例えば一次元または二次元に配列された複数の超音波振動子から構成される振動子アレイを有する。この超音波振動子が本発明における電気音響変換部に相当する。超音波振動子は、例えば、圧電セラミクス、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような高分子フィルムから構成される圧電素子である。超音波振動子は、音響波を受信した場合にその受信信号を電気信号に変換する機能を有している。この電気信号は後述する受信回路21に出力される。この超音波探触子11は、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等の中から診断部位に応じて選択される。
【0020】
超音波探触子11は、音響波を効率よく検出するために音響整合層を振動子アレイの表面に備えてもよい。一般に圧電素子材料と生体では音響インピーダンスが大きく異なるため、圧電素子材料と生体が直接接した場合には、界面での反射が大きくなり音響波を効率よく検出することができない。このため、圧電素子材料と生体の間に中間的な音響インピーダンスを有する音響整合層が配置されることにより、音響波を効率よく検出することができる。音響整合層を構成する材料の例としては、エポキシ樹脂や石英ガラスなどが挙げられる。
【0021】
本実施形態においては、レーザ光の導光手段および超音波探触子11として例えば図2に示されるような内視鏡を使用した場合を例にして具体的に説明する。図2は、超音波探触子および上記レーザ光を導光するための光ファイバを備える内視鏡5を示す概略図であり、図3は、内視鏡5の挿入部の先端部を示す概略的な切断部端面図である。本実施形態の内視鏡5は、図2に示すように、挿入部51、操作部52、接続コード53およびユニバーサルコード54から構成される。本実施形態において、光ファイバ58bは、挿入部51、操作部52およびユニバーサルコード54に亘って通されており、ユニバーサルコード54の上流側の接続部54aで、レーザユニット13の図示しない出力部に接続される。
【0022】
内視鏡5の挿入部51は、患者の体空内に挿入することができるように細長い可撓性の管状となっている。操作部52は、挿入部51の基端に設けられている。内視鏡5は、接続コード53を介して光音響撮像装置本体の電気系統に接続され、ユニバーサルコード54を介してレーザユニット13及び例えば図示しない光学観測装置に接続されている。
【0023】
内視鏡5の挿入部51の先端部55には、図3に示されるように振動子アレイ56、膨張収縮可能なバルーン57、およびレーザ光を導光するための光ファイバ58bの出射端が設けられている。
【0024】
例えば本実施形態における挿入部51の先端部55aには、コンベックス型の振動子アレイ56が設けられている。振動子アレイ56は、図3に示すように、例えば半円周状に並べられた第1〜第12の超音波振動子T1〜T12から構成される。振動子アレイ56は、レーザ光の照射に起因して生じる光音響波を受信して複数の受信信号を光音響撮像装置本体の受信回路に出力する。また、内視鏡5の操作部52には、例えば鉗子および穿刺針等の手術用の処置具が挿入される処置具挿入口52aが形成されている。処置具を通すための挿入孔は処置具挿入口52aから挿入部51の先端部55aまで繋がっている。
【0025】
バルーン57は、振動子アレイ56(電気音響変換部)および光ファイバ58bの出射端(光照射部)を取り囲むように挿入部51の先端部55に設けられている。図4はある実施形態における先端部55aの構成を示す切断部端面図であり、図5は図4における内視鏡5の挿入部51を被検体の体空80内に挿入した様子を示す切断部端面図である。バルーン57は、図4および図5に示されるように、振動子アレイ56と体空内の管壁81との間の空間を音響整合液59で満たすことを可能にするために、音響整合液59を保持する役割を果たす。これにより、振動子アレイ56と被検体の音響インピーダンスが整合され、超音波および光音響波の検出を効率よく行うことができる。音響整合液59の材料の例としては、振動子アレイ56の材料と生体に対して中間的な音響インピーダンスを有する水が挙げられる。バルーン57は音響整合液59が供給された場合に膨張する。また、バルーン57は、例えば低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンおよびゴム等の樹脂から構成することができる。さらに、バルーン57は、光透過性を有するように構成され、光音響撮像において使用するレーザ光の透過率が80%以上であることが好ましい。
【0026】
さらに、バルーン57には、光散乱構造が設けられている。光散乱構造は、レーザ光がバルーン57を透過する際に、レーザ光を散乱させる機能を有する構造である。例えば図4では、バルーン57の表面に設けられている凹凸構造を有する散乱面が光散乱構造である。例えば、このような構造は、例えば、樹脂フィルムを成型する時に樹脂表面に凹凸構造の型を押し付けて表面にエンボス加工を施す方法、および硬化前に樹脂フィルムを型押しする方法等により形成することができる。また、バルーンの表面に沿った幅が10〜50μm程度、当該表面からの高さ(或いは深さ)が10〜50μm程度の凸部および/または凹部を有する凹凸構造を当該表面に付けた場合には、20度〜60度程度の拡散角が得られるため、本発明の課題を解決するに際しより好ましい。この場合、上記凹凸構造の凸部および/または凹部の幅および高さ(或いは深さ)、並びに、各要素(凸部および凹部)の互いの間隔は、散乱した光が干渉を生じない程度にばらついていることが好ましい。また、散乱面は、下記のような散乱粒子を混ぜた樹脂フィルムによって構成することもできる。
【0027】
また、図6は他の実施形態における先端部55bの構成を示す切断部端面図である。図6では、多層構造を有するバルーン60の最表層60aとこれに隣接する層60b(最表層から2番目の層)との間に設けられた散乱液62が光散乱構造である。なお、散乱液62を設ける場所としては最表層60aとこれに隣接する層60bとの間に限られない。また、さらに最表層60aの表面に凹凸構造を設けてもよい。散乱液62としては散乱粒子を含有する音響整合液を挙げることができる。散乱粒子の屈折率は1.40〜1.60であることが好ましい。また、散乱粒子の粒径は0.1〜5.0μmであり、音響整合液中における散乱粒子の濃度は0.01〜0.30wt%であることが好ましい。なお、上記のように散乱粒子の濃度が低く設定されていることにより散乱粒子による光の吸収の影響は無視できるため、散乱粒子を構成する材質の光吸収係数は特に限定されない。一方、前述した光音響波の透過率を実現する観点から、散乱粒子を構成する材質の音響インピーダンスは、音響整合液(特に水)の音響インピーダンスに近いことが好ましく、その値は1.2〜1.9×10kg/m/sであることが好ましい。或いは、散乱粒子の密度は0.90〜1.10g/ccであり、散乱粒子を構成する材質中の音速は1300〜1700m/sであることが好ましい。なお、上記のように散乱粒子の濃度が低く設定されていることにより散乱粒子による光音響波の吸収の影響は無視できるため、散乱粒子を構成する材質の粘度は特に限定されない。
【0028】
上記のような光散乱構造の存在により、レーザ光はバルーン57を透過する際に散乱することとなる。具体的には、図4に示されるように、光ファイバ58bの出射端から出射したレーザ光は、当初θ1の拡散角(レーザ光のビーム径が伝搬に伴い拡がる角度)で伝搬する(図4および図5のL1)が、バルーン57を透過した後はθ1よりも大きいθ2の拡散角で伝搬するようになる(図4および図5のL2)。この結果、レーザ光がそのまま被検体に照射される場合に比べてレーザ光の照明範囲を拡大することが可能となる。さらに、レーザ光が散乱されたことによりレーザ光の強度分布を均一化することも可能となる。なお、図4および図5では、分岐された光ファイバ58bのうちの一か所からしかレーザ光が出射していないが、これは便宜上そのように示したに過ぎず、実際はすべての出射端からレーザ光は出射する。
【0029】
内視鏡5にはバルーン57の内側に音響整合液59を供給するための整合液供給手段58aが設けられている。整合液供給手段58aは、挿入部51、操作部52およびユニバーサルコード54に亘って通されており、ユニバーサルコード54の上流側の接続部54aでポンプ等の音響整合液の供給源に接続されている。
【0030】
複数に分岐された光ファイバ58bの端部は、光ファイバ58bによるレーザ光の照明領域が振動子アレイ56による超音波の受信領域(すなわち超音波に基づく画像化可能領域)と重なるように配置されている。本実施形態において、この光ファイバ58bの出射端部が本発明の光照射部に相当する。
【0031】
超音波ユニット12は、本発明における画像生成手段に相当する。より具体的には超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、受信メモリ23、データ分離手段24、光音響画像再構成手段25a、光音響画像再構成手段25aからの信号を受信する検波・対数変換手段26a、光音響画像を構築する画像構築手段27a、超音波画像再構成手段25b、超音波画像再構成手段25bからの信号を受信する検波・対数変換手段26b、超音波画像を構築する画像構築手段27b、画像合成手段28、表示画像生成手段29、トリガ制御回路32、送信制御回路33および制御手段34を有している。制御手段34は、超音波ユニット12内の各部を制御する。
【0032】
受信回路21は、超音波探触子11から出力された音響波の電気信号を受信する。AD変換手段22はサンプリング手段であり、受信回路21が受信した電気信号を例えばクロック周波数40MHzのADクロック信号に同期してサンプリングしてデジタル信号に変換する。AD変換手段22は、例えば外部から入力されるADクロック信号に同期して、所定のサンプリング周期で上記電気信号をサンプリングする。
【0033】
AD変換手段22は、サンプリングしたデジタル信号(サンプリングデータ)を受信メモリ23に格納する。受信メモリ23に格納されたサンプリングデータは、光音響波に関するデータ(光音響データ)、超音波に関するデータ(超音波データ)またはこれらの混合データである。
【0034】
データ分離手段24は、受信メモリ23に格納されたサンプリングデータを光音響データと超音波データとに分離する。サンプリングデータを分離する方法は特に限定されない。例えば、超音波の照射とレーザ光の照射とを時間的にずらして実施した場合には、サンプリングデータをある時刻で分けることによりサンプリングデータを光音響データと超音波データとに分離することができる。また例えば、光音響データおよび超音波データそれぞれに関する周波数や遅延量の違いを利用してもサンプリングデータを光音響データと超音波データとに分離することができる。データ分離手段24は、分離された光音響データを光音響画像再構成手段25aに入力し、超音波データを超音波画像再構成手段25bに出力する。
【0035】
光音響画像再構成手段25aは、例えば超音波探触子11の64個の超音波振動子の各出力信号から得られた上記光音響データを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。なお、この光音響画像再構成手段25aは、遅延加算法に代えて、CBP法(Circular Back Projection)により再構成を行うものでもよい。あるいは光音響画像再構成手段25aは、ハフ変換法又はフーリエ変換法を用いて再構成を行うものでもよい。光音響画像再構成手段25aは、上記のようにして加算整合された光音響データを検波・対数変換手段26aに出力する。
【0036】
検波・対数変換手段26aは、光音響画像再構成手段25aから出力された光音響データの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。そして、検波・対数変換手段26aは、上記のようにして信号処理した光音響データを画像構築手段27aに出力する。
【0037】
画像構築手段27aは、対数変換が施された各ラインの光音響データに基づいて、断層画像(光音響画像)を構築する。画像構築手段27aは、例えば光音響データの時間軸の位置を、断層画像における深さを表す変位軸の位置に変換して光音響画像を構築する。
【0038】
一方、超音波画像再構成手段25bは、例えば超音波探触子11の64個の超音波振動子の各出力信号から得られた上記超音波データを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。なお、この超音波画像再構成手段25bは、遅延加算法に代えて、CBP法(Circular Back Projection)により再構成を行うものでもよい。あるいは超音波画像再構成手段25bは、ハフ変換法又はフーリエ変換法を用いて再構成を行うものでもよい。超音波画像再構成手段25bは、上記のようにして加算整合された超音波データを検波・対数変換手段26bに出力する。
【0039】
検波・対数変換手段26bは、超音波画像再構成手段25bから出力された超音波データの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。そして、検波・対数変換手段26bは、上記のようにして信号処理した超音波データを画像構築手段27bに出力する。
【0040】
画像構築手段27bは、対数変換が施された各ラインの超音波データに基づいて、断層画像(超音波画像)を構築する。画像構築手段27bは、例えば超音波データの時間軸の位置を、断層画像における深さを表す変位軸の位置に変換して超音波画像を構築する。
【0041】
トリガ制御回路32は、レーザユニット13にフラッシュランプトリガ信号及びQスイッチトリガ信号を出力し、レーザユニット13からレーザ光を出射させる。また、トリガ制御回路32は、送信制御回路33に超音波送信トリガ信号を出力し、プローブ11から超音波を出力させる。更に、トリガ制御回路32は、レーザ光の照射又は超音波送信と同期してAD変換手段22に対してADトリガ信号を出力し、AD変換手段22におけるサンプリングを開始させる。
【0042】
トリガ制御回路32は、レーザユニット13に対して光の出力を指示するフラッシュランプトリガ信号を出力する。これによりレーザユニット13では、フラッシュランプトリガ信号に応答してフラッシュランプ35が点灯し、レーザ励起が開始される。その後、トリガ制御回路32は、所定のタイミングでQスイッチトリガ信号を出力する。これによりレーザユニット13では、Qスイッチ36がQスイッチトリガ信号に応答してON状態となり、レーザ光が出力されて、被検体にレーザ光が照射される。フラッシュランプ35の点灯からQスイッチパルスレーザが十分な励起状態となるまでに要する時間は、Qスイッチパルスレーザの特性などから見積もることができる。トリガ制御回路32からQスイッチを制御するのに代えて、レーザユニット13内において、Qスイッチパルスレーザを十分に励起させた後にQスイッチ36をON状態にしてもよい。その場合は、Qスイッチ36をON状態にした旨を示す信号を超音波ユニット12側に通知してもよい。
【0043】
またトリガ制御回路32は、超音波送信を指示する超音波トリガ信号を送信制御回路33に出力する。送信制御回路33は、上記超音波トリガ信号を受けると、超音波探触子11から超音波を送信させる。トリガ制御回路32は、先にフラッシュランプトリガ信号を出力し、その後超音波トリガ信号を出力する。つまりトリガ制御回路32は、フラッシュランプトリガ信号の出力に後続して、超音波トリガ信号を出力する。フラッシュランプトリガ信号が出力されることで被検体に対するレーザ光の照射および光音響波の検出が行われた後、超音波トリガ信号が出力されることで被検体に対する超音波の送信およびその反射波の検出が行われる。
【0044】
トリガ制御回路32はさらに、AD変換手段22に対して、サンプリング開始を指示するサンプリングトリガ信号を出力する。このサンプリングトリガ信号は、前記フラッシュランプトリガ信号が出力された後で、かつ超音波トリガ信号が出力される前、より好ましくは被検体に実際にレーザ光が照射されるタイミングで出力される。そのためにサンプリングトリガ信号は、例えばトリガ制御回路32がQスイッチトリガ信号を出力するタイミングに同期して出力される。AD変換手段22は上記サンプリングトリガ信号を受けると、超音波探触子11にて検出された上記電気信号のサンプリングを開始する。
【0045】
画像合成手段28は、画像構築手段27aおよび27bにそれぞれ構築された光音響画像および超音波画像を合成する。画像合成手段28は、合成されて得られた画像を表示画像生成手段29に出力する。なお、合成画像を表示しない場合には光音響画像および超音波画像はそれぞれ合成処理されないまま、画像合成手段28から出力されてもよい。
【0046】
表示画像生成手段29は、画像合成手段28により合成されて得られた画像に必要な処理を施して画像表示手段14に表示するための最終的な画像(表示画像)を生成する。
【0047】
画像表示手段14は、表示画像生成手段29により生成された表示画像を表示する。
【0048】
以上のように、本発明に係る光音響撮像装置は、特に、光照射部および電気音響変換部を取り囲みかつ膨張収縮可能なバルーンを先端部に有し、かつバルーンに音響整合液を供給する整合液供給手段を有する内視鏡を備え、バルーンが、光を散乱させる光散乱構造を有することを特徴とする。したがって、光照射部から照射された測定光はバルーンを透過して被検体に照射される構成となり、測定光がバルーンを透過する際に測定光はバルーンの光散乱構造により散乱される。これにより、内視鏡を用いた光音響撮像において、測定光をそのまま被検体に照射する場合に比べてより広範囲かつ均一に測定光を照射することが可能となる。
【0049】
また、本発明に係る光音響撮像装置の作動方法は、上記の光音響撮像装置を作動させるものであるから、内視鏡を用いた光音響撮像において、測定光をそのまま被検体に照射する場合に比べてより広範囲かつ均一に測定光を照射することが可能となる。
【符号の説明】
【0050】
5 内視鏡
10 光音響撮像装置
11 超音波探触子
12 超音波ユニット
13 レーザユニット
14 画像表示手段
21 受信回路
22 AD変換手段
23 受信メモリ
24 データ分離手段
25a 光音響画像再構成手段
25b 超音波画像再構成手段
28 画像合成手段
29 表示画像生成手段
32 トリガ制御回路
33 送信制御回路
34 制御手段
51 挿入部
52 操作部
52a 処置具挿入口
53 接続コード
54 ユニバーサルコード
54a 接続部
55、55a、55b 挿入部の先端部
56 振動子アレイ
57 バルーン
58a 整合液供給手段
58b 光ファイバ
59 音響整合液
60 バルーン
62 散乱液
80 体空

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に測定光を照射し、該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換し、該電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像装置において、
被検体内に測定光を照射する光照射部、光音響波の検出を行う電気音響変換部、並びに、前記光照射部および前記電気音響変換部を取り囲みかつ膨張収縮可能なバルーンを先端部に有し、かつ前記バルーンに音響整合液を供給する整合液供給手段を有する内視鏡と、
該電気音響変換部により検出された前記光音響波に基づいて光音響画像を生成して、該光音響画像に基づいて表示画像を生成する画像生成手段と、
前記画像生成手段により生成された前記表示画像を表示する画像表示部とを備え、
前記バルーンが光を散乱させる光散乱構造を有することを特徴とする光音響撮像装置。
【請求項2】
前記光散乱構造が、前記バルーンの表面に設けられた散乱面であることを特徴とする請求項1に記載の光音響撮像装置。
【請求項3】
前記散乱面が前記バルーンの表面に凹凸構造を有することを特徴とする請求項2に記載の光音響撮像装置。
【請求項4】
前記バルーンが多層構造を有するものであり、
前記光散乱構造が、前記多層構造のうちの1つの層と該1つの層に隣接する層との間に設けられた散乱液であることを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の光音響撮像装置。
【請求項5】
前記1つの層が前記多層構造のうちの最表層であることを特徴とする請求項4に記載の光音響撮像装置。
【請求項6】
被検体内に測定光を照射し、該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換し、該電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像装置の作動方法において、
内視鏡の先端部に設けられた、被検体内に測定光を照射する光照射部が作動し、
内視鏡の先端部に設けられた、光音響波の検出を行う電気音響変換部が作動し、
内視鏡に設けられた、前記光照射部および前記電気音響変換部を取り囲むバルーンであって光を散乱させる光散乱構造を有する前記バルーンに音響整合液を供給する整合液供給手段が作動し、
前記電気音響変換部により検出された前記光音響波に基づいて光音響画像を生成して、該光音響画像に基づいて表示画像を生成する画像生成手段が作動し、
前記画像生成手段により生成された前記表示画像を表示する画像表示部が作動することを特徴とする光音響撮像装置の作動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate