光MSK変調/任意偏移量CPFSKの光サンプリング復調方法
【課題】 本発明は,遅延干渉計を用いない光位相連続周波数変調(CPFSK)信号の復調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の第1の側面は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号を復調するための光サンプリング復調装置に関する。この復調装置は,局部発振光を出力する局部発振光源11と、光90°ハイブリッドカプラ12と、第1及び第2のバランスド検波部13,14と,サンプリング部15と,位相推測部16と,検出部17とを有する。そして,サンプリング部15は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のビット中心となるタイミング又はビット中心から所定時間ずれた時間においてでサンプリングを行う。
【解決手段】 本発明の第1の側面は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号を復調するための光サンプリング復調装置に関する。この復調装置は,局部発振光を出力する局部発振光源11と、光90°ハイブリッドカプラ12と、第1及び第2のバランスド検波部13,14と,サンプリング部15と,位相推測部16と,検出部17とを有する。そして,サンプリング部15は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のビット中心となるタイミング又はビット中心から所定時間ずれた時間においてでサンプリングを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,光MSK変調/任意偏移量CPFSKの光サンプリング復調方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2006-340188号公報には,光CPFSK信号の復調器が開示されている。この復調器は,周波数分離するために遅延干渉計を用いるものである。
【0003】
特開2009-27442号公報には,QAM信号のヘテロダイン同期検波を行うための光受信回路が開示されている。この回路は,光90°ハイブリッドカプラを用い,搬送波と局部発振光との位相差を求めて,位相差をサンプリング出力とからデータを復調する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-340188号公報
【特許文献2】特開2009-27442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,遅延干渉計を用いない光位相連続周波数変調(CPFSK)信号の復調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は,基本的には,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のI成分及びQ成分ごとにバランスド検波を行い,サンプリング信号を用いて搬送波の位相を推測して,位相同期検波を行うことで,CPFSK信号を復調できるという知見に基づく。
【0007】
本発明の第1の側面は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号を復調するための光サンプリング復調装置に関する。この復調装置は,局部発振光を出力する局部発振光源11と、光90°ハイブリッドカプラ12と、第1及び第2のバランスド検波部13,14と,サンプリング部15と,位相推測部16と,検出部17とを有する。
【0008】
光90°ハイブリッドカプラ12は,受信信号である光位相連続周波数変調(CPFSK)信号と局部発振光とを混合して出力する。第1のバランスド検波部13は,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換する。第1のバランスド検波部13は,これにより,I成分に対応した電気信号を得る。第2のバランスド検波部14は,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して光信号から電気信号に変換する。第2のバランスド検波部14はこれにより,Q成分に対応した電気信号を得る。サンプリング部15は,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号をサンプリングする。位相推測部16は,サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する。検出部17は,位相推測部16が推測した搬送波の位相情報を用いて,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号を位相同期検波する。
【0009】
本発明の第1の側面の好ましい態様は,局部発振光の周波数が,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号の搬送波の周波数と同一である。この復調装置は,検出部17がホモダイン検波を行う。
【0010】
本発明の第1の側面の好ましい態様は,サンプリング部15が,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のビット中心となるタイミングでサンプリングを行うものである。
【0011】
本発明の第2の側面の好ましい態様は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号が,光最小偏移変調(MSK)信号のものである。
【0012】
本発明の第1の側面は,上記の光サンプリング復調装置を用いた復調方法に関する。そして,局部発振光源11からの局部発振光及び,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号が光90°ハイブリッドカプラ12に入力する工程と,第1のバランスド検波部13が,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,I成分に対応した電気信号を得る工程と,第2のバランスド検波部14が,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,Q成分に対応した電気信号を得る工程と,サンプリング部15が,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号をサンプリングする工程と,位相推測部16が,サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する工程と,検出部17が,位相推測部16が推測した搬送波の位相情報を用いて,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号を位相同期検波する工程とを含む。
【0013】
この方法の好ましい態様は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号は,光最小偏移変調(MSK)信号である。
【0014】
この方法の好ましい態様は,光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,サンプリングする工程は,時間間隔B,t=0でサンプリングを行う。これにより復調が難しい光MSK信号を,光QPSK信号を復調するようにして復調できることとなる。
【0015】
この方法の好ましい態様は,光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,サンプリングする工程は,時間間隔B,t=B/2でサンプリングを行う。これにより復調が難しい光MSK信号を,光BPSK信号を復調するようにして復調できることとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,遅延干渉計を用いずに光位相連続周波数変調(CPFSK)信号を復調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は,本発明の復調装置のブロック図である。
【図2】図2は,4つのマッハツェンダーIQ変調器を用いて光MSK信号が得られる様子を示す図である。
【図3】図3は,MSK信号のサンプリングポイントを説明するための図である。
【図4】図4は,デジタルホモダイン検波を行うための,コンステレーションマップを示す。
【図5】図5は,MSK信号のサンプリングポイントを示す。
【図6】図6は,MSK信号のサンプリングポイントを位相平面上に表現したものである。
【図7】図7(a)は,MSK信号をビット中心でサンプリングした場合のシンボル配置を示す。図7(b)は,MSK信号をビット端でサンプリングした場合のシンボル配置を示す。
【図8】図8は,MSK信号に含まれる符号1と符号0との数の差(ΔN)が奇数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。
【図9】図9は,MSK信号に含まれる符号1と符号0との数の差(ΔN)が偶数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。
【図10】図10は,MSK信号をビット中心でサンプリングした場合のシンボル配置を示す。図10(a)は,ΔNが奇数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。図10(b)は,ΔNが偶数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。
【図11】図11は,MSK信号をビット端でサンプリングした場合のシンボル配置を示す。図11(a)は,ΔNが奇数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。図11(b)は,ΔNが偶数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。
【図12】図12は,10Gb/sにおけるコヒーレント光MSK変調及び復調を実現するための実験系を示す。
【図13】図13は,実施例における実験結果を示す図面に替わるグラフである。図13(a)は,受信したMSK信号の最善のタイミングであるビット継続時間の中間におけるコンステレーションマップである。図13(b)は,復調信号スペクトルである。図13(c)は,受信したMSK信号のBERを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の側面は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号を復調するための光サンプリング復調装置に関する。図1は,本発明の復調装置のブロック図である。図1に示されるように,この復調装置は,局部発振光を出力する局部発振光源11と、光90°ハイブリッドカプラ12と、第1及び第2のバランスド検波部13,14と,サンプリング部15と,位相推測部16と,検出部17とを有する。
【0019】
局部発振光源11は,光位相同期検波に用いられている。このため,通常用いられている局部発振光源を適宜用いることができる。局部発振光の周波数の例は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号の搬送波の周波数と同一である。光CPFSK信号の例は,光最小遷移変調(MSK)信号である。
【0020】
光90°ハイブリッドカプラ12は,受信信号である光位相連続周波数変調(CPFSK)信号と局部発振光とを混合して出力する。光90°ハイブリッドカプラ12においてCPFSK信号が,局部発振光の位相空間へ射影される。そして,I成分及びQ成分に分離されて出力される。
【0021】
第1のバランスド検波部13は,光90°ハイブリッドカプラ12からの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換する。第1のバランスド検波部13は,これにより,I成分に対応した電気信号を得る。この電気信号は,アナログ信号であるから,A/D回路によりデジタル信号に変換されることが好ましい。バランスド検波を行うバランスド検波器は,既に知られている。よって,第1のバランスド検波部13は公知のバランスド検波器を用いればよい。
【0022】
第2のバランスド検波部14は,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して光信号から電気信号に変換する。第2のバランスド検波部14はこれにより,Q成分に対応した電気信号を得る。この電気信号は,アナログ信号であるから,A/D回路によりデジタル信号に変換されることが好ましい。バランスド検波を行うバランスド検波器は,既に知られている。よって,第2のバランスド検波部14は公知のバランスド検波器を用いればよい。
【0023】
サンプリング部15は,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号をサンプリングする。サンプリング部15が,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のビット中心となるタイミングでサンプリングを行う。たとえば,CPFSK信号の変調速度をBbit/sとすると,Bbit/sの時間間隔でサンプリングを行う。
【0024】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとする。時間間隔B,t=0でサンプリングした場合,光MSK信号をQPSK信号に変換できる。よって,QPSK信号を復調する方法にて,光MSK信号を復調できる。時間間隔B,t=B/2でサンプリングした場合,1/2のビットレートに時分割多重分離した後,偶数チャネル及び奇数チャネルは,光MSK信号をBPSK信号に変換できる。よって,BPSK信号を復調する方法にて,光MSK信号を復調できる。BPSK信号を復調する方法は,2値を弁別するだけでよいため,サンプリングを用いた変換作業を行うことで装置構成を簡単にできる。
【0025】
位相推測部16は,サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する。サンプリングしたデータから搬送波の位相を推測する方法は,公知である。搬送波の位相を推測する方法の例は,第4−パワーアルゴリズムである。位相ロックループにコスタスループを用いて搬送波の位相追尾を行うことで,搬送波の位相を推測しても良い。なお,安定化のため一定時間平均化を行うことが好ましい。この平均化は,たとえば,FIR(有限インパルス応答)フィルタを用いることで実現できる。特に,位相成分に,位相雑音が含まれているため,数シンボル分にわたって平均化することにより,位相雑音による不確定性を軽減できる。
【0026】
検出部17は,位相推測部16が推測した搬送波の位相情報を用いて,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号を位相同期検波する。これにより,CPFSK信号を復調できる。
【0027】
4つのマッハツェンダーIQ変調器を用いた光MSK信号の送信機
図2は,4つのマッハツェンダーIQ変調器を用いて光MSK信号が得られる様子を示す図である。4つのマッハツェンダーIQ変調器は,4つのMZMを含む。この変調器は,メインMZMの2つのアームのそれぞれに2つの連続したサブMZMを含む。それぞれのMZMは,以下のように駆動される。メインMZMの両アームの最初のMZMであるMZM1及びMZM3に,それぞれ周波数fのRFクロック信号を印加する。そして,それらに続くMZMであるMZM2及びMZM4に,位相差による変調データCSRZ(キャリア抑圧リターントゥゼロ)−DPSKをもたらす。MSKの連続位相を実現するため,fは,ビットレートBの半分の値に設定される。CSRZ−DPSK列は,半ビット分遅れたオフセット値を有する。そして,相対的位相差は,π/2である。このように,2つのCSRZ−DPSKの相対的位相差により,USB及びLSBを得ることができる。このようにすれば,DPSKと比較して,変調スペクトルをコンパクトにすることができ,しかも,不必要な成分を抑圧できる。
【0028】
図3は,MSK信号のサンプリングポイントを説明するための図である。図3は,MSK信号の位相遷移例と,サンプリングポイント例が示されている。図4は,デジタルホモダイン検波を行うための,コンステレーションマップを示す。
【0029】
光MSK信号のコヒーレント受信機
以下,光MSK信号のコヒーレント復調原理について説明する。光MSK信号をコヒーレント復調するために,ヘテロダイン検波及びホモダイン検波のいずれも用いてもよい。以下の説明では,高速シグナルについて復調を行うことが可能であるためホモダイン検波を行うスキームについて説明する。光MSKをホモダイン検波するための受信機側の構成は,従来のPSK信号の受信機と同様である。
【0030】
受信機は,受信したMSK信号を局部発振(LO)の光位相空間へ射影する。位相空間において,MSKシグナルのマーク/スペース(又はスペース/マーク)に相当するUSB/LSB成分が時計回り/又は反時計回りに回転する。その際,それぞれのビットにおける位相シフト量は,π/2である。受信信号がそれぞれのビットの中点のタイミングであるB b/sの間隔でサンプリングされたとすれば,QPSKのIQマップのように4つの等間隔の像がIQマップ上に現れるはずである。すると,閾値を設定することで,I成分とQ成分からもともとのデータを抽出できる。このスキームは,QPSK受信機にわずかな修正を加えた,デジタルホモダイン受信機により実装できる。
【0031】
以下では,本発明のサンプリング原理を説明する。以下の説明は,光MSK信号を,QPSK信号やBPSK信号を復調する方式で復調するための原理説明である。
光MSK信号の符号1と符号0の数を数えて、符号1と符号0とが同数分存在する場合は,位相回転が相殺され,位相シフト量が初期位相に戻る。その場合,光MSK信号を復調するためには,符号1と符号0の数の差ΔNビットの位相シフトを追っていけばよいこととなる。符号1のビットが多い場合は,図5の正の次元のグラフのように表記できる。この場合,符号1のビットが多い場合は,図5の正の次元における点(シンボル)のようにサンプリングできる。一方,符号0のビットが多い場合は,図5の負の次元のグラフのように表記できる。よって,符号0のビットが多い場合は,図5の負の次元の点(シンボル)のようにサンプリングできる。
【0032】
これを,位相平面上(IQ平面上)にプロットすると,図6のようになる。図6には,シンボルが8個存在する。図6の状態のうち,ビット中央及びビット端でサンプリングした場合,図7(a) 及び図7(b)でに示されるように,PSK信号と同等のシンボル配置となる。なお,符号1と符号0の数が相殺されるためには必ず偶数ビット必要である。そこで,ΔNビットが奇数の場合には、サンプリング後のシンボル配置が図8のようになる。図8は,シンボル数が4個である。一方ΔNビットが偶数の場合にはシンボル配置は図9になる。
【0033】
ビット中央及でサンプリングした場合,図10(a)及び図10(b)に示されるように,ΔNの偶奇にかかわらず常にQPSKと同等のシンボル配置となる。一方,ビット端でサンプリングした場合,ΔNが偶数,奇数の場合にはそれぞれ,図11(a)及び図11(b)のように90度位相角の異なるBPSK信号に変換される。
【0034】
よって,ビット中央でサンプリングした場合, ΔNの偶奇にかかわらず,光MSK信号は光QPSK信号に変換される。一方,ビット端でサンプリングした場合,光MSK信号を1/2のビットレートにて時間多重分離すると,時間多重分離後の信号は,光BPSK信号に変換されることがわかる。
【実施例1】
【0035】
図12は,10Gb/sにおけるコヒーレント光MSK変調及び復調を実現するための実験系を示す。送信機側では,外部キャビティレーザダイオードを用いて,線幅が150kHzの連続光を生成した。この連続光を4つのマッハツェンダー導波路を有するIQ変調器によりMSKフォーマットに変調した。変調器は,ZカットLN導波路に形成されたものであり,変調電極の3dBバンド幅は,約36GHzであった。それぞれのマッハツェンダー変調器(MZM)の半波電極はDC値で6Vであった。それぞれのMZMを,ヌル点にバイアスし,異なる信号の組を用いてプッシュプル駆動した。MZM2とMZM4を,215−1の長さを有する疑似ランダム数中の2つの5Gb/sNRZデータを用いて駆動し,ここでデータ列に100psの遅延を与えた。動作条件において,メインMZMに90度の位相オフセットを与えることで,5Gb/sCSRZ−BPSK信号をメインMZMの両アームに生成した。2つのシグナルを10Gb/sのMSK信号を得るために直行させて重畳した。
【0036】
受信機側では,MSKフォーマット用に設計されたオフラインデジタルコヒーレント受信機がMSK信号を受信した。外部キャビティを有するレーザーダイオードを用い,500MHz以下に調整して,局部発振光(LO光)を得た。LO信号に射影された受信信号のI成分及びQ成分を,90°ハイブリッドカプラで検出し,バランスド検波した。バランスド検波した信号をA/D変換器でデジタル信号に変換した。I成分とQ成分を,実時間サンプリングオシロスコープを用いて50Gsa/sのサンプリングレートにてサンプリングした。オフライン信号処理においては,記録されたデータを10Gsa/sにて再サンプリングし,いわゆる第4−パワーアルゴリズムを用いて,キャリア位相を推測した。いったん,最善点においてサンプリングを行った後は,QPSKの変調のように,サンプリング信号を同様に処理した。平均化を行うために,タップ長15のFIRフィルタを用いた。
【0037】
図13(a)は,受信したMSK信号の最善のタイミングであるビット継続時間の中間におけるコンステレーションマップである。4つのシンボルが,QPSK信号のように,コンステレーションマップ上に明確に表れている。このことは,予測した通り,MSK信号を復調できたことを示している。図13(b)に示されるように,復調信号は,15GHzの線幅を持つスペクトルであった。このことは,MSK信号を復調できたことの別の証拠である。図13(c)は,受信したMSK信号のバックトゥーバックビットエラーレート(BER)を示す。エラーフリー動作(BER<2x10−6)の受信機の感度は,−36.3dBmであった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は,光情報通信の分野で利用されうる。
【符号の説明】
【0039】
11 局部発振光源
12 光90°ハイブリッドカプラ
13,14 バランスド検波部
15 サンプリング部
16 位相推測部
17 検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は,光MSK変調/任意偏移量CPFSKの光サンプリング復調方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2006-340188号公報には,光CPFSK信号の復調器が開示されている。この復調器は,周波数分離するために遅延干渉計を用いるものである。
【0003】
特開2009-27442号公報には,QAM信号のヘテロダイン同期検波を行うための光受信回路が開示されている。この回路は,光90°ハイブリッドカプラを用い,搬送波と局部発振光との位相差を求めて,位相差をサンプリング出力とからデータを復調する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-340188号公報
【特許文献2】特開2009-27442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は,遅延干渉計を用いない光位相連続周波数変調(CPFSK)信号の復調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は,基本的には,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のI成分及びQ成分ごとにバランスド検波を行い,サンプリング信号を用いて搬送波の位相を推測して,位相同期検波を行うことで,CPFSK信号を復調できるという知見に基づく。
【0007】
本発明の第1の側面は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号を復調するための光サンプリング復調装置に関する。この復調装置は,局部発振光を出力する局部発振光源11と、光90°ハイブリッドカプラ12と、第1及び第2のバランスド検波部13,14と,サンプリング部15と,位相推測部16と,検出部17とを有する。
【0008】
光90°ハイブリッドカプラ12は,受信信号である光位相連続周波数変調(CPFSK)信号と局部発振光とを混合して出力する。第1のバランスド検波部13は,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換する。第1のバランスド検波部13は,これにより,I成分に対応した電気信号を得る。第2のバランスド検波部14は,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して光信号から電気信号に変換する。第2のバランスド検波部14はこれにより,Q成分に対応した電気信号を得る。サンプリング部15は,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号をサンプリングする。位相推測部16は,サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する。検出部17は,位相推測部16が推測した搬送波の位相情報を用いて,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号を位相同期検波する。
【0009】
本発明の第1の側面の好ましい態様は,局部発振光の周波数が,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号の搬送波の周波数と同一である。この復調装置は,検出部17がホモダイン検波を行う。
【0010】
本発明の第1の側面の好ましい態様は,サンプリング部15が,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のビット中心となるタイミングでサンプリングを行うものである。
【0011】
本発明の第2の側面の好ましい態様は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号が,光最小偏移変調(MSK)信号のものである。
【0012】
本発明の第1の側面は,上記の光サンプリング復調装置を用いた復調方法に関する。そして,局部発振光源11からの局部発振光及び,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号が光90°ハイブリッドカプラ12に入力する工程と,第1のバランスド検波部13が,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,I成分に対応した電気信号を得る工程と,第2のバランスド検波部14が,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,Q成分に対応した電気信号を得る工程と,サンプリング部15が,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号をサンプリングする工程と,位相推測部16が,サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する工程と,検出部17が,位相推測部16が推測した搬送波の位相情報を用いて,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号を位相同期検波する工程とを含む。
【0013】
この方法の好ましい態様は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号は,光最小偏移変調(MSK)信号である。
【0014】
この方法の好ましい態様は,光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,サンプリングする工程は,時間間隔B,t=0でサンプリングを行う。これにより復調が難しい光MSK信号を,光QPSK信号を復調するようにして復調できることとなる。
【0015】
この方法の好ましい態様は,光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,サンプリングする工程は,時間間隔B,t=B/2でサンプリングを行う。これにより復調が難しい光MSK信号を,光BPSK信号を復調するようにして復調できることとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,遅延干渉計を用いずに光位相連続周波数変調(CPFSK)信号を復調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は,本発明の復調装置のブロック図である。
【図2】図2は,4つのマッハツェンダーIQ変調器を用いて光MSK信号が得られる様子を示す図である。
【図3】図3は,MSK信号のサンプリングポイントを説明するための図である。
【図4】図4は,デジタルホモダイン検波を行うための,コンステレーションマップを示す。
【図5】図5は,MSK信号のサンプリングポイントを示す。
【図6】図6は,MSK信号のサンプリングポイントを位相平面上に表現したものである。
【図7】図7(a)は,MSK信号をビット中心でサンプリングした場合のシンボル配置を示す。図7(b)は,MSK信号をビット端でサンプリングした場合のシンボル配置を示す。
【図8】図8は,MSK信号に含まれる符号1と符号0との数の差(ΔN)が奇数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。
【図9】図9は,MSK信号に含まれる符号1と符号0との数の差(ΔN)が偶数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。
【図10】図10は,MSK信号をビット中心でサンプリングした場合のシンボル配置を示す。図10(a)は,ΔNが奇数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。図10(b)は,ΔNが偶数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。
【図11】図11は,MSK信号をビット端でサンプリングした場合のシンボル配置を示す。図11(a)は,ΔNが奇数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。図11(b)は,ΔNが偶数の場合におけるサンプリング後のシンボル配置を示す。
【図12】図12は,10Gb/sにおけるコヒーレント光MSK変調及び復調を実現するための実験系を示す。
【図13】図13は,実施例における実験結果を示す図面に替わるグラフである。図13(a)は,受信したMSK信号の最善のタイミングであるビット継続時間の中間におけるコンステレーションマップである。図13(b)は,復調信号スペクトルである。図13(c)は,受信したMSK信号のBERを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の側面は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号を復調するための光サンプリング復調装置に関する。図1は,本発明の復調装置のブロック図である。図1に示されるように,この復調装置は,局部発振光を出力する局部発振光源11と、光90°ハイブリッドカプラ12と、第1及び第2のバランスド検波部13,14と,サンプリング部15と,位相推測部16と,検出部17とを有する。
【0019】
局部発振光源11は,光位相同期検波に用いられている。このため,通常用いられている局部発振光源を適宜用いることができる。局部発振光の周波数の例は,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号の搬送波の周波数と同一である。光CPFSK信号の例は,光最小遷移変調(MSK)信号である。
【0020】
光90°ハイブリッドカプラ12は,受信信号である光位相連続周波数変調(CPFSK)信号と局部発振光とを混合して出力する。光90°ハイブリッドカプラ12においてCPFSK信号が,局部発振光の位相空間へ射影される。そして,I成分及びQ成分に分離されて出力される。
【0021】
第1のバランスド検波部13は,光90°ハイブリッドカプラ12からの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換する。第1のバランスド検波部13は,これにより,I成分に対応した電気信号を得る。この電気信号は,アナログ信号であるから,A/D回路によりデジタル信号に変換されることが好ましい。バランスド検波を行うバランスド検波器は,既に知られている。よって,第1のバランスド検波部13は公知のバランスド検波器を用いればよい。
【0022】
第2のバランスド検波部14は,光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して光信号から電気信号に変換する。第2のバランスド検波部14はこれにより,Q成分に対応した電気信号を得る。この電気信号は,アナログ信号であるから,A/D回路によりデジタル信号に変換されることが好ましい。バランスド検波を行うバランスド検波器は,既に知られている。よって,第2のバランスド検波部14は公知のバランスド検波器を用いればよい。
【0023】
サンプリング部15は,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号をサンプリングする。サンプリング部15が,光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のビット中心となるタイミングでサンプリングを行う。たとえば,CPFSK信号の変調速度をBbit/sとすると,Bbit/sの時間間隔でサンプリングを行う。
【0024】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとする。時間間隔B,t=0でサンプリングした場合,光MSK信号をQPSK信号に変換できる。よって,QPSK信号を復調する方法にて,光MSK信号を復調できる。時間間隔B,t=B/2でサンプリングした場合,1/2のビットレートに時分割多重分離した後,偶数チャネル及び奇数チャネルは,光MSK信号をBPSK信号に変換できる。よって,BPSK信号を復調する方法にて,光MSK信号を復調できる。BPSK信号を復調する方法は,2値を弁別するだけでよいため,サンプリングを用いた変換作業を行うことで装置構成を簡単にできる。
【0025】
位相推測部16は,サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する。サンプリングしたデータから搬送波の位相を推測する方法は,公知である。搬送波の位相を推測する方法の例は,第4−パワーアルゴリズムである。位相ロックループにコスタスループを用いて搬送波の位相追尾を行うことで,搬送波の位相を推測しても良い。なお,安定化のため一定時間平均化を行うことが好ましい。この平均化は,たとえば,FIR(有限インパルス応答)フィルタを用いることで実現できる。特に,位相成分に,位相雑音が含まれているため,数シンボル分にわたって平均化することにより,位相雑音による不確定性を軽減できる。
【0026】
検出部17は,位相推測部16が推測した搬送波の位相情報を用いて,第1のバランスド検波部13から出力される電気信号及び第2のバランスド検波部14から出力される電気信号を位相同期検波する。これにより,CPFSK信号を復調できる。
【0027】
4つのマッハツェンダーIQ変調器を用いた光MSK信号の送信機
図2は,4つのマッハツェンダーIQ変調器を用いて光MSK信号が得られる様子を示す図である。4つのマッハツェンダーIQ変調器は,4つのMZMを含む。この変調器は,メインMZMの2つのアームのそれぞれに2つの連続したサブMZMを含む。それぞれのMZMは,以下のように駆動される。メインMZMの両アームの最初のMZMであるMZM1及びMZM3に,それぞれ周波数fのRFクロック信号を印加する。そして,それらに続くMZMであるMZM2及びMZM4に,位相差による変調データCSRZ(キャリア抑圧リターントゥゼロ)−DPSKをもたらす。MSKの連続位相を実現するため,fは,ビットレートBの半分の値に設定される。CSRZ−DPSK列は,半ビット分遅れたオフセット値を有する。そして,相対的位相差は,π/2である。このように,2つのCSRZ−DPSKの相対的位相差により,USB及びLSBを得ることができる。このようにすれば,DPSKと比較して,変調スペクトルをコンパクトにすることができ,しかも,不必要な成分を抑圧できる。
【0028】
図3は,MSK信号のサンプリングポイントを説明するための図である。図3は,MSK信号の位相遷移例と,サンプリングポイント例が示されている。図4は,デジタルホモダイン検波を行うための,コンステレーションマップを示す。
【0029】
光MSK信号のコヒーレント受信機
以下,光MSK信号のコヒーレント復調原理について説明する。光MSK信号をコヒーレント復調するために,ヘテロダイン検波及びホモダイン検波のいずれも用いてもよい。以下の説明では,高速シグナルについて復調を行うことが可能であるためホモダイン検波を行うスキームについて説明する。光MSKをホモダイン検波するための受信機側の構成は,従来のPSK信号の受信機と同様である。
【0030】
受信機は,受信したMSK信号を局部発振(LO)の光位相空間へ射影する。位相空間において,MSKシグナルのマーク/スペース(又はスペース/マーク)に相当するUSB/LSB成分が時計回り/又は反時計回りに回転する。その際,それぞれのビットにおける位相シフト量は,π/2である。受信信号がそれぞれのビットの中点のタイミングであるB b/sの間隔でサンプリングされたとすれば,QPSKのIQマップのように4つの等間隔の像がIQマップ上に現れるはずである。すると,閾値を設定することで,I成分とQ成分からもともとのデータを抽出できる。このスキームは,QPSK受信機にわずかな修正を加えた,デジタルホモダイン受信機により実装できる。
【0031】
以下では,本発明のサンプリング原理を説明する。以下の説明は,光MSK信号を,QPSK信号やBPSK信号を復調する方式で復調するための原理説明である。
光MSK信号の符号1と符号0の数を数えて、符号1と符号0とが同数分存在する場合は,位相回転が相殺され,位相シフト量が初期位相に戻る。その場合,光MSK信号を復調するためには,符号1と符号0の数の差ΔNビットの位相シフトを追っていけばよいこととなる。符号1のビットが多い場合は,図5の正の次元のグラフのように表記できる。この場合,符号1のビットが多い場合は,図5の正の次元における点(シンボル)のようにサンプリングできる。一方,符号0のビットが多い場合は,図5の負の次元のグラフのように表記できる。よって,符号0のビットが多い場合は,図5の負の次元の点(シンボル)のようにサンプリングできる。
【0032】
これを,位相平面上(IQ平面上)にプロットすると,図6のようになる。図6には,シンボルが8個存在する。図6の状態のうち,ビット中央及びビット端でサンプリングした場合,図7(a) 及び図7(b)でに示されるように,PSK信号と同等のシンボル配置となる。なお,符号1と符号0の数が相殺されるためには必ず偶数ビット必要である。そこで,ΔNビットが奇数の場合には、サンプリング後のシンボル配置が図8のようになる。図8は,シンボル数が4個である。一方ΔNビットが偶数の場合にはシンボル配置は図9になる。
【0033】
ビット中央及でサンプリングした場合,図10(a)及び図10(b)に示されるように,ΔNの偶奇にかかわらず常にQPSKと同等のシンボル配置となる。一方,ビット端でサンプリングした場合,ΔNが偶数,奇数の場合にはそれぞれ,図11(a)及び図11(b)のように90度位相角の異なるBPSK信号に変換される。
【0034】
よって,ビット中央でサンプリングした場合, ΔNの偶奇にかかわらず,光MSK信号は光QPSK信号に変換される。一方,ビット端でサンプリングした場合,光MSK信号を1/2のビットレートにて時間多重分離すると,時間多重分離後の信号は,光BPSK信号に変換されることがわかる。
【実施例1】
【0035】
図12は,10Gb/sにおけるコヒーレント光MSK変調及び復調を実現するための実験系を示す。送信機側では,外部キャビティレーザダイオードを用いて,線幅が150kHzの連続光を生成した。この連続光を4つのマッハツェンダー導波路を有するIQ変調器によりMSKフォーマットに変調した。変調器は,ZカットLN導波路に形成されたものであり,変調電極の3dBバンド幅は,約36GHzであった。それぞれのマッハツェンダー変調器(MZM)の半波電極はDC値で6Vであった。それぞれのMZMを,ヌル点にバイアスし,異なる信号の組を用いてプッシュプル駆動した。MZM2とMZM4を,215−1の長さを有する疑似ランダム数中の2つの5Gb/sNRZデータを用いて駆動し,ここでデータ列に100psの遅延を与えた。動作条件において,メインMZMに90度の位相オフセットを与えることで,5Gb/sCSRZ−BPSK信号をメインMZMの両アームに生成した。2つのシグナルを10Gb/sのMSK信号を得るために直行させて重畳した。
【0036】
受信機側では,MSKフォーマット用に設計されたオフラインデジタルコヒーレント受信機がMSK信号を受信した。外部キャビティを有するレーザーダイオードを用い,500MHz以下に調整して,局部発振光(LO光)を得た。LO信号に射影された受信信号のI成分及びQ成分を,90°ハイブリッドカプラで検出し,バランスド検波した。バランスド検波した信号をA/D変換器でデジタル信号に変換した。I成分とQ成分を,実時間サンプリングオシロスコープを用いて50Gsa/sのサンプリングレートにてサンプリングした。オフライン信号処理においては,記録されたデータを10Gsa/sにて再サンプリングし,いわゆる第4−パワーアルゴリズムを用いて,キャリア位相を推測した。いったん,最善点においてサンプリングを行った後は,QPSKの変調のように,サンプリング信号を同様に処理した。平均化を行うために,タップ長15のFIRフィルタを用いた。
【0037】
図13(a)は,受信したMSK信号の最善のタイミングであるビット継続時間の中間におけるコンステレーションマップである。4つのシンボルが,QPSK信号のように,コンステレーションマップ上に明確に表れている。このことは,予測した通り,MSK信号を復調できたことを示している。図13(b)に示されるように,復調信号は,15GHzの線幅を持つスペクトルであった。このことは,MSK信号を復調できたことの別の証拠である。図13(c)は,受信したMSK信号のバックトゥーバックビットエラーレート(BER)を示す。エラーフリー動作(BER<2x10−6)の受信機の感度は,−36.3dBmであった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は,光情報通信の分野で利用されうる。
【符号の説明】
【0039】
11 局部発振光源
12 光90°ハイブリッドカプラ
13,14 バランスド検波部
15 サンプリング部
16 位相推測部
17 検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局部発振光を出力する局部発振光源(11)と、
受信信号である光位相連続周波数変調(CPFSK)信号と前記局部発振光とを混合して出力する光90°ハイブリッドカプラ(12)と、
前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,I成分に対応した電気信号を得る第1のバランスド検波部(13)と,
前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,Q成分に対応した電気信号を得る第2のバランスド検波部(14)と,
前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号をサンプリングするサンプリング部(15)と,
前記サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する位相推測部(16)と,
前記位相推測部(16)が推測した搬送波の位相情報を用いて,前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号を位相同期検波する検出部(17)と,
を有する,
光サンプリング復調装置。
【請求項2】
前記局部発振光の周波数は,前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号の搬送波の周波数と同一であり,これにより前記検出部(17)がホモダイン検波を行う,
請求項1に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項3】
前記サンプリング部(15)は,
前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のビット中心となるタイミングでサンプリングを行う,
請求項1に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項4】
前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号は,光最小偏移変調(MSK)信号である請求項1に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項5】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,
前記サンプリング部(15)は,時間間隔B,t=0でサンプリングを行う,請求項4に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項6】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,
前記サンプリング部(15)は,時間間隔B,t=B/2でサンプリングを行う,請求項4に記載の請求項1に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項7】
局部発振光を出力する局部発振光源(11)と、
受信信号である光位相連続周波数変調(CPFSK)信号と前記局部発振光とを混合して出力する光90°ハイブリッドカプラ(12)と、
前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,I成分に対応した電気信号を得る第1のバランスド検波部(13)と,
前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,Q成分に対応した電気信号を得る第2のバランスド検波部(14)と,
前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号をサンプリングするサンプリング部(15)と,
前記サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する位相推測部(16)と,
前記位相推測部(16)が推測した搬送波の位相情報を用いて,前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号を位相同期検波する検出部(17)と,
を有する,
光サンプリング復調装置を用いた復調方法であって,
前記局部発振光源(11)からの局部発振光及び,前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号が前記光90°ハイブリッドカプラ(12)に入力する工程と,
前記第1のバランスド検波部(13)が,前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,I成分に対応した電気信号を得る工程と,
前記第2のバランスド検波部(14)が,前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,Q成分に対応した電気信号を得る工程と,
前記サンプリング部(15)が,前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号をサンプリングする工程と,
前記位相推測部(16)が,前記サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する工程と,
前記検出部(17)が,前記位相推測部(16)が推測した搬送波の位相情報を用いて,前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号を位相同期検波する工程と,
を含む,
復調方法。
【請求項8】
前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号は,光最小偏移変調(MSK)信号である請求項7に記載の復調方法。
【請求項9】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,
前記サンプリングする工程は,時間間隔B,t=0でサンプリングを行う,請求項8に記載の復調方法。
【請求項10】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,
前記サンプリングする工程は,時間間隔B,t=B/2でサンプリングを行う,請求項8に記載の復調方法。
【請求項1】
局部発振光を出力する局部発振光源(11)と、
受信信号である光位相連続周波数変調(CPFSK)信号と前記局部発振光とを混合して出力する光90°ハイブリッドカプラ(12)と、
前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,I成分に対応した電気信号を得る第1のバランスド検波部(13)と,
前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,Q成分に対応した電気信号を得る第2のバランスド検波部(14)と,
前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号をサンプリングするサンプリング部(15)と,
前記サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する位相推測部(16)と,
前記位相推測部(16)が推測した搬送波の位相情報を用いて,前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号を位相同期検波する検出部(17)と,
を有する,
光サンプリング復調装置。
【請求項2】
前記局部発振光の周波数は,前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号の搬送波の周波数と同一であり,これにより前記検出部(17)がホモダイン検波を行う,
請求項1に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項3】
前記サンプリング部(15)は,
前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号のビット中心となるタイミングでサンプリングを行う,
請求項1に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項4】
前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号は,光最小偏移変調(MSK)信号である請求項1に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項5】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,
前記サンプリング部(15)は,時間間隔B,t=0でサンプリングを行う,請求項4に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項6】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,
前記サンプリング部(15)は,時間間隔B,t=B/2でサンプリングを行う,請求項4に記載の請求項1に記載の光サンプリング復調装置。
【請求項7】
局部発振光を出力する局部発振光源(11)と、
受信信号である光位相連続周波数変調(CPFSK)信号と前記局部発振光とを混合して出力する光90°ハイブリッドカプラ(12)と、
前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,I成分に対応した電気信号を得る第1のバランスド検波部(13)と,
前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,Q成分に対応した電気信号を得る第2のバランスド検波部(14)と,
前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号をサンプリングするサンプリング部(15)と,
前記サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する位相推測部(16)と,
前記位相推測部(16)が推測した搬送波の位相情報を用いて,前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号を位相同期検波する検出部(17)と,
を有する,
光サンプリング復調装置を用いた復調方法であって,
前記局部発振光源(11)からの局部発振光及び,前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号が前記光90°ハイブリッドカプラ(12)に入力する工程と,
前記第1のバランスド検波部(13)が,前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が0°の成分と位相が180°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,I成分に対応した電気信号を得る工程と,
前記第2のバランスド検波部(14)が,前記光90°ハイブリッドカプラからの出力信号のうち位相が90°の成分と位相が−90°の成分とをバランスド検波して,光信号から電気信号に変換することで,Q成分に対応した電気信号を得る工程と,
前記サンプリング部(15)が,前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号をサンプリングする工程と,
前記位相推測部(16)が,前記サンプリング部がサンプリングしたデータから,搬送波の位相を推測する工程と,
前記検出部(17)が,前記位相推測部(16)が推測した搬送波の位相情報を用いて,前記第1のバランスド検波部(13)から出力される電気信号及び前記第2のバランスド検波部(14)から出力される電気信号を位相同期検波する工程と,
を含む,
復調方法。
【請求項8】
前記光位相連続周波数変調(CPFSK)信号は,光最小偏移変調(MSK)信号である請求項7に記載の復調方法。
【請求項9】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,
前記サンプリングする工程は,時間間隔B,t=0でサンプリングを行う,請求項8に記載の復調方法。
【請求項10】
光MSK信号の各ビットの中央のタイミングをt=0として,ビット周期をBとしたときに,
前記サンプリングする工程は,時間間隔B,t=B/2でサンプリングを行う,請求項8に記載の復調方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−199657(P2011−199657A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64972(P2010−64972)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
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