免疫グロブリン断片を用いたインスリン分泌結合体
本発明は、インスリン分泌ペプチド、非ペプチド性重合体および免疫グロブリンFc領域が互いに共有結合によって連結されており、生体内持続性および安定性が向上したインスリン分泌ペプチド結合体およびその利用に関する。本発明のインスリン分泌ペプチド結合体は、比較的高く維持される生体内活性、および著しく増加した血中半減期を有するため、様々なペプチド薬物の持続型剤形の開発に有用に利用できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン分泌ペプチドの持続型剤形のためのインスリン分泌ペプチド結合体に関する。具体的には、本発明は、インスリン分泌ペプチドを非ペプチド性重合体および免疫グロブリンFc領域と共有結合によって相互連結させることにより、生体内持続効能をより画期的に増加させた、変形されたインスリン分泌ペプチド結合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ペプチドは、安定性が低くて容易に変性されるうえ、体内タンパク質加水分解酵素によって分解されてその活性を失いし、相対的に大きさが小さくて腎臓を介して容易に除去される。そのため、薬理学的有効成分としてペプチドを含む医薬品の血中濃度および力価を維持するためには、ペプチド薬物を患者に頻繁に投与する必要がある。ところが、ペプチド薬物の大部分は注射剤の形態で患者に投与され、このような頻繁な注射投与は患者の夥しい苦痛を引き起こす。かかる問題点を克服するために様々な試みが行われてきた。このような試みの一つとして、ペプチド薬物の生体膜透過度を増加させて口腔または鼻腔による吸入によってペプチドの薬物を体内に伝達する試みがあった。ところが、このような方法は、注射剤に比べてペプチド薬物の体内伝達効率が著しく低いため、ペプチド薬物の体内活性を要求する条件に維持するには依然として難しさが多い。
【0003】
一方、ペプチド薬物の血中安定性を増加させ、血中薬物濃度を長期間高く持続させて薬効を極大化しようとする努力が続けられてきた。このようなペプチド薬物の持続型製剤は、患者に免疫反応を誘発せず、ペプチド薬物の安定性を高めるうえ、薬物自体の力価が十分に高く維持されなければならない。
ペプチドを安定化させ且つタンパク質加水分解酵素による分解を抑制するための方法として、タンパク質加水分解酵素に敏感な特定のアミノ酸配列を変更する試みが行われてきた。例えば、血中グルコース濃度を減少させる作用をし、第2型糖尿病を治療するGLP−1(7−37または7−36アミド)は、生理活性半減期が約4分以下(Kreymann et al., 1987)と短いが、これはジペプチジルペプジダーゼIV(Dipeptidyl pepdidase IV、DPP IV)によるGLP−1の8番目のアミノ酸(Ala)と9番目のアミノ酸(Asp)間の切断によるGLP−1の力価喪失に起因する。結果的に、DPP IVに抵抗性を有するGLP−1類似体に対する様々な研究が行われた。このような研究によってAla8をGlyで置換し(Deacon et al., 1998; Burcelin et al., 1999)、或いはAla8をLeuまたはD−Alaで置換して(Xiao et al., 2001)DPP IVに対する抵抗性を増加させながら活性を維持することができた。GLP−1のN末端アミノ酸His7はGLP−1の活性に非常に重要であり、DPP IVのターゲットとして提供される。したがって、米国特許第5,545,618号では、N末端をアルキルまたアシル基に変形し、Gallwitzなどは7番目のHisをN−メチル化(N-methylation)またはα−メチル化(alpha-methylation)させるか、あるいはHis全体をイミダゾールで置換してDPP IV抵抗性を増加させ、生理活性を維持した。
【0004】
これらの変形体以外に、アメリカドクトカゲ(glia monster)の唾液腺から精製されたGLP−1類似体エキセンディン(exendin)-4( 米国特許第5,424,686号)は、DPP IVに対する抵抗性と共に、GLP−1に比べて高い生理活性を有する。よって、体内半減期が2〜4時間であってGLP−1に比べて長くなった。ところが、DPP IVの抵抗性を増加させる方法のみでは、十分な生理活性の持続時間を期待することができない。例えば、現在市販されているエキセディン−4(exenatide)の場合、患者に1日2回注射によって投与されなければならないが、これは依然として患者に大きい負担となっている。
このようなインスリン分泌ペプチドの問題点は、ペプチドの大きさが小さいため、腎臓から回収されず、体外に消失されることである。よって、腎臓における消失を抑制するために、ポリエチレングリコール(PEG)などの溶解度の高い高分子物質をペプチドの表面に化学的に付加させる方法が使用されてきた。
【0005】
PEGは、目的ペプチドの特定の部位または様々な部位に非特異的に結合してペプチドの分子量を増加させることにより腎臓による消失を抑制し、加水分解を防止するには効果があり、特別な副作用も起さない。例えば、国際特許公開公報WO2006/076471は、NPR−Aに結合してcGMPの生産を活性化して動脈内の血圧を減少させることにより、うっ血性心不全(congestive heart failure)治療剤として用いられるB型ナトリウム排泄増加ペプチド(B-type natriuretic peptide、BNP)にPEGを結合して生理活性を持続させることについて開示している。 米国特許第6,924,264号では、エキセディン−4のリジン残基にPEGを結合させて生体内持続時間を増加させる方法について開示している。ところが、このような方法は、PEG分子量を増加させてペプチド薬物の生体内持続時間を延長することができるが、分子量が増加するほどペプチド薬物の力価が著しく低くなりかつペプチドとの反応性が低くなって収率が減少するという問題がある。
【0006】
国際特許公開公報WO02/46227は、組み換え遺伝子技術を用いたGLP−1、エキセディン−4またはその類似体と、ヒト血清アルブミンまたは免疫グロブリン断片(Fc)との融合タンパク質について開示している。 米国特許第6,756,480号は、副甲状腺ホルモン(PTH)およびその類似体とFc融合タンパク質について開示している。このような方法は、低いPEG化収率(pegylation yield)および非特異性問題を克服することができるが、血中半減期の増加効果が予想より画期的ではなく、場合に応じては力価が低いという問題点をもっている。血中半減期の増加効果を極大化するために様々な種類のペプチドリンカーが使用されたりもするが、免疫反応を誘発する可能性がある。また、BNPのようにジスルフィド結合を持っているペプチドを用いる場合、ミスフォールディング(misfolding)の確率が高いため、このようなペプチドを適用することが難しいという問題点がある。
【0007】
この他に、GLP−1誘導体であるNN2211は、GLP−1のアミノ酸を置換し、アシル側鎖を結合させてアルブミンと非共有結合をなすようにすることにより、体内持続時間を増加させた。ところが、半減期が11〜15時間であってエキセンディン−4に比べて著しい増加がないため、GLP−1誘導体は依然として1日1回注射による投与が必要である(Nauck et al., 2004)。また、CJC−1131は、GLP−1とアルブミンとが血液内で共有結合されるようにマレイミド反応基を有するGLP−1誘導体であって、生体内半減期の増加を目的として開発を試みたが、最近開発が中断した状態である。後続の物質であるCJC−1134は、組み換えアルブミンと共有結合によって連結されたエキセンディン−4であって、約17時間(Rat)の血中半減期を有するため、顕著な血中安定性の増加効果を示していない(Thibauoleau et.al., 2006)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,424,686号
【特許文献2】国際特許公開公報WO2006/076471
【特許文献3】米国特許第6,924,264号
【特許文献4】国際特許公開公報WO02/46227
【特許文献5】米国特許第6,756,480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、インスリン分泌ペプチドの血中半減期の増加および生体内活性の維持を同時に極大化することが可能な方法として、免疫グロブリンFc領域、非ペプチド性重合体およびインスリン分泌ペプチドを共有結合によってN−末端以外のアミノ酸残基に部位選択的に相互連結させることにより、生体内効力持続効果が画期的に増加することを確認した。特に、本発明者らはインスリン分泌ペプチド結合体のうち、たとえばエキセンディン−4、エキセンディン−4のN末端アミン基を除去したデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(des-amino-histidyl exendin-4)、エキセンディン−4のN末端アミン基をヒドロキシル基で置換したベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニルエキセンディン−4(beta-hydroxyl-imidazo-propionyl exendin-4)のN末端アミン基を2つのメチル基に変更したジメチル−ヒスチジルエキセンディン−4(dimethyl-histidyl exendin-4)、およびエキセンディン−4の1番目のアミノ酸であるヒスチジンのアルファ炭素およびこれに結合したN末端アミン基を除去したイミダゾ−アセチル−エキセンディン−4(imidazo-acetyl-exendin-4)のようなペプチド結合体の生体内効力持続効果が画期的に増加することを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、インスリン分泌ペプチドの生体内活性を維持しながら血中半減期を延長させたインスリン分泌ペプチド持続型製剤を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は天然型エキセンディン−4(N)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図2】図2は天然型エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図3】図3はデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図4】図4はベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニル、すなわち、(2-ヒドロキシー3−(1H- イミダゾール-4- yl)プロピオニル) エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図5】図5はイミダゾ−アセチル、すなわち、(2-(1H-イミダゾール-4- yl)アセチル)エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図6】図6はSer12−変異された−デス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図7】図7はArg12−変異された−デス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図8】図8はデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−ヒト血清アルブミン(HSA)結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図9】図9はジメチル−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図10】図10はGLP−1(N)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図11】図11はデス−アミノ−ヒスチジルGLP−1(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図12】図12は天然型エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図13】図13はイミダゾ−アセチル、すなわち、(2-(1H-イミダゾール-4- yl)アセチル)、エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体を12% SDS−PAGEで分析した結果である。
【図14】図14はデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の血中グルコース濃度の減少効果を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一様態において、本発明は、インスリン分泌ペプチドと両末端に反応基を有する非ペプチド性重合体とが相互共有結合によって連結されている持続型インスリン分泌ペプチド結合体に関する。
本発明で使用されるインスリン分泌ペプチドは、インスリン分泌機能を保有したペプチドであって、膵臓ベータ細胞のインスリンの合成および発現を刺激する。このようなペプチドは、前駆物質(precursors)、アゴニスト(agonist)、誘導体(derivatives)、断片(fragments)および変異体(variants)を含み、好ましくはGLP(Glucagon like peptide)−1、エキセンディン3(exendin 3)およびエキセンディン4(exendin 4)である。
GLP−1は、小腸で分泌されるホルモンであって、一般に、インスリンの生合成および分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制し、細胞内のグルコース吸収を促進する。グルカゴン前駆体は小腸で3つのペプチド、すなわちグルカゴン、GLP−1およびGLP−2に分解される。ここで、GLP−1はGLP−1(1−37)を意味し、元々インスリン分泌機能のない形態であるが、GLP−1(7−37)の形態でプロセスされて活性型GLP−1(7−37)になる。GLP−1(7−37)アミノ酸配列は、次のとおりである:
GLP−1(7−37)
HAEGT FTSDV SSYLE GQAAK EPIAW LVKGR G
【0013】
GLP−1誘導体は、GLP−1と比較して少なくとも80%アミノ酸配列で相同性を示し、化学的に変更された形態であってもよく、GLP−1と比較してインスリン分泌機能も少なくとも同等またはそれ以上を示すペプチドを意味する。
GLP−1断片は、天然型GLP−1のN末端またはC末端に対して一つまたはそれ以上のアミノ酸が追加または削除された形態を意味し、追加されたアミノ酸は天然に存在しないアミノ酸(例えば、D型アミノ酸)も可能である。
GLP−1変異体は、天然型GLP−1とアミノ酸配列が少なくとも一つ異なるペプチドであって、インスリン分泌機能を保有したペプチドを意味する。
エキセンディン3とエキセンディン4は、GLP−1と53%のアミノ酸配列類似性を示す39個のアミノ酸からなるインスリン分泌ペプチドであり、エキセンディン−3とエキセンディン−4のアミノ酸配列は、次のとおりである:
エキセンディン−3
HSDGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS
エキセンディン−4
HGEGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS
【0014】
エキセンディンアゴニストは、エキセンディンの構造を問わずに、エキセンディンの生体内受容体に結合してエキセンディンと同一の生物学的活性を示す物質を意味する。エキセンディン誘導体は、天然型エキセンディンと比較して少なくとも80%アミノ酸配列で相同性を示し、アミノ酸残基の一部グループが化学的に置換(例えば、アルファ−メチル化、アルファ−ヒドロキシル化)、除去(例えば、脱アミノ化)または変更(例えば、Nメチル化)された形態であってもよく、インスリン分泌機能を保有したペプチドを意味する。
エキセンディン断片は、天然型エキセンディンのN末端またはC末端に対して一つまたはそれ以上のアミノ酸が追加または削除された形態を意味し、天然に存在しないアミノ酸(例えば、D型アミノ酸)の追加も可能である。このようなエキセンディン断片はインスリン分泌機能を保有する。
エキセンディン変異体は、天然型エキセンディンとアミノ酸配列が少なくとも一つ異なるペプチドであって、インスリン分泌機能を保有したペプチドを意味する。
エキセンディンアゴニスト、誘導体、断片および変異体でそれぞれ使用された製造方法は、独立に使用でき、組み合わせも可能である。例えば、本発明は天然型インスリン分泌ペプチドとはアミノ酸配列が少なくとも一つ異なり、N末端アミノ酸残基に脱アミノ化アミノ酸配列を有するインスリン分泌ペプチドも含まれる。
【0015】
具体的な一様態において、本発明で使用した天然型インスリン分泌ペプチドと変形されたインスリン分泌ペプチドは固相法によって合成でき、天然型インスリン分泌ペプチドを含む大部分の天然型ペプチドは組み換え方法によっても生産可能である。
また、本発明で使用されたインスリン分泌ペプチドは、様々な部位で非ペプチド性重合体と結合できる。本発明で製造したペプチド結合体は、インスリン分泌ペプチドの結合部位によって活性の差異があり得る。
たとえば、N末端部位およびC末端などのN末端以外の部位にそれぞれカップリングしてインビトロ(in vitro)活性の差異を確認することができる。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、高いpH条件、例えばpH9.0ではリジン残基とも共有結合を形成することができる。反応pHを変えながらPEG化(Pegylation)反応を行った後、イオン交換カラムを用いて反応混合物から位置異性体を分離することができる。
【0016】
インスリン分泌ペプチドが、生体内活性に重要な部位であるN末端以外の位置にカップリングする場合、天然型アミノ酸配列で変更しようとするアミノ酸残基位置に反応性チオール基を導入して非ペプチド性重合体のマレイミドリンカーを用いて共有結合を形成することができる。
インスリン分泌ペプチドが、生体内活性に重要な部位であるN末端以外の位置にカップリングする場合、天然型アミノ酸配列で変更しようとするアミノ酸残基位置に反応性のあるアミン基を導入して非ペプチド性重合体のアルデヒドリンカーを用いて共有結合を形成することができる。
非ペプチド性重合体にあるアルデヒドリンカーを使用すると、このようなアルデヒドリンカーは、N末端およびリシン残基にあるアミン基と反応し、選択的に反応収率を向上させるために、変形された形態のインスリン分泌ペプチドを使用することができる。たとえば、N末端をブロッキングする方法、リシン残基を置換する方法、カルボキシル末端にアミン基を導入する方法などを用いて反応することが可能なアミン基を所望の位置に一つのみ維持することができ、これによりPEG化およびカップリング収率を向上させることができる。N末端の保護方法は、ジメチル化(dimethylation)の他に、メチル化(methylation)、脱アミノ化(deamination)またはアセチる化(acetylation)方法も使用可能であり、このようなアルキル化(alkylation)方法に限定されない。
【0017】
本発明の好適な様態において、本発明のインスリン分泌ペプチド結合体は、インスリン分泌ペプチドのN末端以外のアミン基に特異的に免疫グロブリンFc領域が結合されたインスリン分泌ペプチド結合体である。
具体的な一実施例において、本発明者らは、インスリン分泌ペプチドのリシン残基に選択的にPEGをカップリングするための方法として、pH9.0で天然型エキセンディン−4のPEG化反応を誘導した。他の方法として、リシン残基でPEG化するために、pH7.5でN末端が除去または保護された形態のエキセンディン−4誘導体のPEG化反応を行った。N末端ヒスチジンのアルファアミン基を除去する方法、N末端アミノ基をヒドロキシル基で置換する方法、N末端ヒスチジンのアルファアミン基に2つのメチル基を付ける方法、一番目のアミノ酸(ヒスチジン)のアルファ炭素およびこれに結合されているN末端アミン基を除去してイミダゾ−アセチル基のみを残す方法などを用いて、N末端のPEG化を予め防止した。このような誘導体を下記化学式1に示した。
<化学式1>
【0018】
【化1】
【0019】
N末端カップリングの場合とは異なり、PEGがN末端を除いたリシン残基にカップリングされると、インビトロ活性が約8.5%程度維持されることを確認することができた(表1)。また、エキセンディン−4のN末端アミン基を除去したデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(des-amino-histidyl exendin-4、以下「DA−エキセンディン−4」とも称する)、エキセンディン−4のN末端アミン基をヒドロキシルで置換したベータ−ヒドロキシ−イミダゾプロピオニルエキセンディン−4(beta-hydroxy-imidazopropionyl exendin-4、以下「HY−エキセンディン−4」とも称する)、エキセンディン−4のN末端アミン基を2つのメチル基に変更したジメチルヒスチジル−エキセンデイン−4(dimethyl histidyl-exendin-4、以下「DM−エキセンディン−4」とも称する)、そしてエキセンディン−4の1番目のアミノ酸であるヒスチジンのアルファ炭素およびこれに結合したN−末端アミン基を除去したイミダゾアセチル−エキセンディン−4(imidazoacetyl-exendin-4、以下「CA−エキセンディン−4」とも称する)の免疫グロブリンFc結合体が、天然型エキセンディン−4結合体に比較的類似したインビトロ活性および血中半減期を示したが(表1)、このような免疫グロブリンFc結合体は、インビボ効力試験では予測できなかった著しい持続性効果を示した(図14)。したがって、本発明で製造したDM−エキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体、DA−エキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体、CAエキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体、およびHY−エキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体の血中半減期は50時間以上画期的に増加した。ペプチドの活性に影響を与えないリシン残基にカップリングさせて力価の減少を最小化した。また、N末端のアミン基およびアルファカーボンの除去により、予測できなかった血中グルコース濃度減少活性の向上を示すことを確認した。
【0020】
免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドなので、薬物のキャリアとして使用するには安全である。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン全体分子に比べて相対的に分子量が少ないため、結合体の製造、精製および収率の面で有利である。それだけでなく、アミノ酸配列が抗体ごとに異なって高い非均質性を示すFab部分が除去されるため、免疫グロブリンFc領域が物質の同質性を大きく増加させ、血中抗原性の誘発可能性も低くする効果を期待することができる。
本発明で使用されるインスリン分泌ペプチドは、キャリア物質と非ペプチド性重合体によって連結される。
本発明に使用可能なキャリア物質は、免疫グロブリンFc領域、アルブミン、トランスフェリン(transferrin)およびPEGよりなる群から選択でき、好ましくは免疫グロブリンFc領域である。
【0021】
本発明において、「免疫グロブリンFc領域」は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域、重鎖不変領域1(CH--1)と軽鎖不変領域(CL1)を除いた、重鎖不変領域2(CH2)および重鎖不変領域3(CH3)部分を意味し、重鎖不変領域にヒンジ部分を含んだりもする。また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等またはより向上した効果を有する限りは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除外し、一部または全体重鎖不変領域1(CH1)および/または軽鎖不変領域1(C-L-1)を含む拡張されたFc領域であり得る。また、CH2および/またはCH-3に該当する相当長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。すなわち、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCH4ドメイン、2)CH1ドメインおよびCH2ドメイン、3)CH1ドメインおよびCH3ドメイン、4)CH2ドメインおよびCH3ドメイン、5)1つまたは2つ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の二量体であってもよい。
【0022】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体(変異体)を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列の少なくとも一つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換、またはこれらの組み合わせによって相異なる配列を有することを意味する。たとえば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られている214〜238、297〜299、318〜322、または327〜331番ののアミノ酸残基が変形のために適当な部位として利用できる。また、ジスルフィド結合を形成することが可能な部位が除去されるか、あるいは天然型FcからN末端の幾つかのアミノ酸が除去されるか、あるいは天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加され得るなど、様々な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター(effector)機能を無くすために、C1q結合部位およびADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位のような補体結合部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開WO97/34631および国際特許公開96/32478に開示されている。
【0023】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質およびペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野で公知のものである(H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York,197 9)。最も一般に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
場合に応じて、Fc領域はリン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、およびアミド化(amidation)などによって変更されてもよい。
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同一の生物学的活性を示す誘導体であり、あるいはいわゆるFc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させた誘導体である。
【0024】
また、このようなFc領域は、ヒトおよび牛、ヤギ、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内で分離した天然型から得られてもよく、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え型またはその誘導体であってもよい。ここで、天然型から獲得する方法は、全体免疫グロブリンをヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して得ることができる。パパインを処理する場合にはFabおよびFcに切断され、ペプシンを処理する場合にはpF’cおよびF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFcまたはpF’cに分離することができる。
好ましくは、ヒト由来のFc領域は微生物から得た組み換え型免疫グロブリンFc領域である。
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖、または糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、通常の方法、例えば化学的方法、酵素学的方法、および微生物を用いた遺伝工学的方法などが利用できる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(Clq)の結合力が著しく低下し、抗体−依存性細胞毒性または補体−依存性細胞毒性が減少または除去されるので、生体内における不要な免疫反応を誘発しない。このような点から、糖鎖が除去された、または脱糖化された免疫グロブリンFc領域は、薬物のキャリアとしての本来の目的にさらに符合する形態であるといえる。
【0025】
本発明において、「糖鎖の除去」はFc領域から酵素で糖成分を除去することを意味し、「脱糖化」はFc領域を、糖化されていない形態で原核動物、好ましくは大腸菌から生産することを意味する。
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒトまたは牛、ヤギ、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、好ましくはヒト起源である。また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来またはこれらの組み合わせ(combination)またはこれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。免疫グロブリンFc領域は、好ましくはヒトの血液に最も豊かなタンパク質に該当するIgGまたはIgGM由来であり、最も好ましくはリガンド結合タンパク質の半減期を向上させるものと知られているIgG由来である。
一方、本発明において、「組み合わせ」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが相異なる起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。すなわち、二量体または多量体は、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD FcおよびIgE Fc断片よりなる群から選ばれた2つ以上の断片から製造可能である。
【0026】
本発明において、「ハイブリッド」とは、単鎖の免疫グロブリンFc領域内に2つ以上の相異なる起源の免疫グロブリンFc断片に該当する配列が存在することを意味する。本発明の場合、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、ドメインハイブリッドはIgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE FcおよびIgD FcのCH1、CH2、CH3およびCH4よりなる群から選ばれた1つ〜4つのドメインからなってもよく、ヒンジを含んでもよい。
一方、IgGはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではこれらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドも可能である。好ましくはIgG2およびIgG4サブクラスであり、最も好ましくは補体依存的毒性(CDC、Complementdependent cytotoxicity)などのエフェクター機能が殆どないIgG4のFc領域である。
【0027】
すなわち、最も好ましい本発明の薬物キャリア用免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の脱糖化Fc領域である。ヒト由来のFc領域はヒト生体内で抗原として作用し、これに対する新しい抗体を生成するなどの不適な免疫反応を引き起こすおそれのある非ヒト由来のFc領域に比べて好ましい。
本発明において、「非ペプチド性重合体」は、繰返し単位が少なくとも2つ結合した生体適合性重合体を意味し、前記繰返し単位はペプチド結合ではなく任意の共有結合によって互いに連結される。
本発明に使用可能な非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、たとえばPLA(ポリ乳酸)やPLGA(ポリ乳酸−グリコール酸)などの生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択でき、好ましくはポリエチレングリコールである。また、当該分野で公知になっているこれらの誘導体および当該分野の技術水準で容易に製造することが可能な誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0028】
既存のinframe fusion方法によって製造された融合タンパク質で使用されたペプチド性リンカーの欠点は、生体内でタンパク質分解酵素によって容易に切断され、期待しただけのキャリアによる活性薬物の血中半減期増加効果を得ることができないことである。ところが、本発明では、タンパク質分解酵素に抵抗性がある重合体を用いて、キャリアと同様にペプチドの血中半減期を維持することができる。したがって、本発明で使用できる非ペプチド性重合体は、前述したような役割、すなわち生体内タンパク質分解酵素に抵抗性がある重合体であればいずれでも使用できる。非ペプチド性重合体の分子量は1〜100kDaの範囲、好ましくは1〜20kDaの範囲である。また、前記免疫グロブリンFc領域と結合する本発明の非ペプチド性重合体としては、1種の重合体だけでなく、相異なる種類の重合体の組み合わせも使用できる。
本発明に使用される非ペプチド性重合体は、免疫グロブリンFc領域およびタンパク質薬物と結合できる反応基を有する。
【0029】
前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、およびスクシンイミド(succinimide)誘導体よりなる群から選択されることが好ましい。前記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルプロピオネート、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカーボネートが利用できる。特に、前記非ペプチド性重合体が両末端に反応性アルデヒド基を有する場合、非特異的反応を最小化し、非ペプチド性重合体の両末端で生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンとそれぞれ結合するには効果的である。アルデヒド結合による還元性アルキル化により生成された最終産物は、アミド結合によって連結されたものより一層安定的である。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、pH9.0などの高いpH条件でリシン残基との共有結合を形成することができる。
【0030】
前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は互いに同じでも異なってもよい。たとえば、非ペプチド性重合体は、一方の末端にはマレイミド基を、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を持つことができる。両末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性重合体として用いる場合には、公知の化学反応によって前記ヒドロキシ基を前記様々な反応基に活性化し、あるいは商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを用いて本発明のインスリン分泌ペプチド結合体を製造することができる。
このような本発明のインスリン分泌ペプチド結合体は、インスリンの合成および分泌の促進、食欲抑制、体重減少、ベータ細胞の血中グルコース敏感度の増加、ベータ細胞増殖の促進、胃内容排出の遅延、グルカゴン抑制などといった既存のインスリン分泌ペプチドの生体内活性を維持させるうえ、インスリン分泌ペプチドの血中半減期およびこれによる前記ペプチドの生体内効力持続効果が画期的に増加するので、糖尿、肥満、急性冠症候群(Acute coronary syndrome)または多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic ovary syndrome)の治療に有用である。
【0031】
また、本発明の別の様態において、本発明は、
(1)両末端にアルデヒド、マレイミドまたはスクシンイミド誘導体反応基を有する非ペプチド性重合体をインスリン分泌ペプチドのアミン基またはチオール基に共有結合によって連結する段階と、
(2)前記(1)の反応混合物から、N−末端以外の位置に非ペプチド性重合体が共有結合されたインスリン分泌ペプチドを含む結合体を分離する段階と、
(3)分離された結合体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結することにより、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドと結合されたペプチド結合体を生成する段階とを含む、インスリン分泌ペプチド結合体の製造方法を提供する。
本発明において、用語「結合体」とは、非ペプチド性重合体とインスリン分泌ペプチドとが共有結合によって連結された中間体であって、後で、結合体にある非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を結合させる。
【0032】
また、好ましい一様態において、本発明は、
(1)両末端にアルデヒド反応基を有する非ペプチド性重合体をインスリン分泌ペプチドのリシン残基に共有結合によって連結させる段階と、
(2)前記(1)の反応混合物から、リシン残基に非ペプチド性重合体が共有結合されたインスリン分泌ペプチドを含む結合体を分離する段階と、
(3)分離された結合体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結することにより、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドと結合されたタンパク質結合体を生成する段階とを含む製造方法を提供する。さらに好ましくは、前記(1)の非ペプチド性重合体とインスリン分泌ペプチドのリシン残基とはpH7.5以上で連結される。
また、本発明の別の様態において、本発明は、本発明のインスリン分泌ペプチド結合体を含む糖尿病治療用薬学的組成物を提供する。
【0033】
本発明の結合体を含む薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与の際には結合剤、活滑剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素および香料などを使用することができる。注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤および安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には基剤、賦形剤、潤滑剤および保存剤などを使用することができる。本発明の薬学的組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容される担体と混合して様々に製造できる。たとえば、薬学的組成物は、経口投与の際には錠剤、チローキ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップおよびウエハーなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形態で製造することができ、その他に溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセルおよび徐放性製剤などに剤形化することができる。
一方、製剤学的剤形に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、未晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用できる。また、 製剤学的剤形は充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料および防腐剤などをさらに含むことができる。
【0034】
本発明に係る結合体は、糖尿、肥満、急性冠症候群または多嚢胞性卵巣症候群の治療に有用である。したがって、これを含む薬学的組成物を投与することにより、前記疾患の治療を図ることができる。
本発明において、「投与」は、ある適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味する。前記結合体の投与経路は、薬物が目的の組織に到達することができる限りはいずれの一般な経路を通じても投与できる。投与方法としては、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与および直腸内投与など様々であるが、これに限定されない。ところが、経口投与の際に、ペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコートし、あるいは胃における分解から保護されるように剤形化することが好ましい。好ましくは注射剤の形態で投与できる。また、薬学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動することが可能な任意の装置によって投与できる。
また、本発明に係る薬学的組成物の投与回数および投与量は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重および疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類に応じて決定される。本発明の薬学的組成物は、生体内持続性および力価に優れるので、本発明の薬学的製剤の投与回数および投与量を著しく減少させることができる。
【0035】
以下、下記実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1.エキセンディン−4のPEG化(peglylation)と位置異性体の分離
3.4K PropionALD(2)PEG(プロピオンアルデヒド基を2つ持っているPEG、IDB Inc.,韓国)をエキセンディン−4(AP、米国)のN末端にPEG化させるために、ペプチドとPEGのモル比を1:15、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で90分間反応させた。この際、反応はpH4.0の100mM濃度のNaOAc緩衝液内で、還元剤としての20mM SCB(NaCNBH3)を添加して行った。3.4K PropionLAD(2)PEGをエキセンディン−4のリシン(Lys)残基にPEG化させるために、ペプチドとPEGのモル比を1:30、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で3時間反応させた。この際、反応はpH9.0の100mM濃度のNa−Phosphate緩衝液内で、還元剤としての20mM SCBを添加して行った。各反応液はSOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)を通じて1次的にモノ−PEG化ペプチドを精製し、SOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)を通じて異性体を分離した。N末端がPEG化されたピークが最も前に、その後に順次2つのリシンがPEG化されたピークが出ることが分かった。ペプチドマッピング方法で溶出されたピークのPEG化位置を確認することができた。Lys12PEG化結合体がまず溶出され、Lys27PEG化結合体は最も後方に溶出され、N−末端位置異性体およびLys12位置異性体を完璧に分離することができた。
【0036】
カラム:SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→40%80分B(A:20mMトリスpH8.5、B:A+0.5M NaCl)
カラム:SOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→100%50分B(A:20mMクエン酸pH3.0、B:A+0.5M KCl)
【0037】
実施例2:エキセンディン−4(N)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の製造
実施例1の方法を用いて3.4K PropionALD(2)PEGをエキセンディン−4のN末端と反応させた後、N末端の異性体のみを精製して免疫グロブリンFcとカップリングさせた。ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を50mg/mLにして4℃で17時間反応させた。反応は100mM K−P(pH6.0)で行った。ここに、還元剤としての20mM SCBを添加した。カップリング反応液は、2つの精製カラムを経て精製される。まず、カップリング反応に参与していない多量の免疫グロブリンFcを除去するために、SOURCE Q(XK 16mL、Amersham Biosciences)を用いた。Salt gradientとして20mMトリス(pH7.5)および1M NaClを使用すると、相対的に結合力の弱い免疫グロブリンFcがまず溶出され、相次いでエキセンディン−4−免疫グロブリンFcが溶出される。1次精製によってある程度免疫グロブリンFcが除去されるが、イオン交換カラムでは免疫グロブリンFcとエキセンディン−4−免疫グロブリンFcの結合力の差が大きくないため、完全には分離されない。したがって、2物質の疎水性を用いて2次精製を行った。SOURCE ISO(HR16mL、Amersham Biosciences)に20mMトリス(pH7.5)1.5M硫酸アンモニウムを用いて、1次精製された試料を結合させた後、益々硫酸アンモニウムの濃度を低めながら試料を溶出させる。HICカラムで結合力の弱い免疫グロブリンFcがまず溶出され、結合力の強いエキセンディン−4−免疫グロブリンFc試料が後で溶出される。これらは、疎水性の差異が大きいため、イオン交換カラムより一層分離が容易である。ところが、モル比の差による過量の免疫グロブリンFcが反応に投入されるため、HICカラムのみを使用しては高純度の結合体を得ることができない。HPLC逆相分析の結果、純度は91.6%を示した(図1)。
【0038】
カラム:SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→25%70分B(A:20mMトリスpH7.5、B:A+1M NaCl)
カラム:SOURCE ISO(HR16mL、Amersham Biosciences)
流速:7.0mL/分
勾配:B100→0%60分B(A:20mMトリスpH7.5、B:A+1.5M 硫酸アンモニウム)
【0039】
実施例3.エキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
実施例1の方法を用いて3.4K PropionALD(2)PEGをエキセンディン−4のLysと反応させた後、Lys異性体のみを精製して免疫グロブリンFcとカップリングさせた。2つのLys異性体ピークのうち、反応が多くN末端の異性体とは確然に区分される最も後方の異性体ピーク(Lys−27位置異性体)を用いてカップリングを行った。反応は、ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を50mg/mLにして、4℃で16時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は91.7%を示した(図2)。
【0040】
実施例4.デス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
3.4K PropionALD(2)PEGをデス−アミノ−ヒスチジル−エキセンディン−4(DAエキセンディン−4、AP、米国)のLysとPEG化するために、ペプチドと3.4K PropionALD(2)のモル比を1:30、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で12時間反応させた。反応液はpH7.5の100mM Na−phosphateであり、還元剤として20mM SCBを添加した。SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)とSOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)を用いてPEG化ペプチドを2段階で精製した。異性体の精製過程で、2つのLys異性体ピークのうち、反応が多くN末端の異性体とは確然に区分される最も後方の異性体ピーク(Lys−27位置異性体)を用いてカップリングを行った。反応は、ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は95.8%を示した(図3)。
【0041】
カラム:SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→20%70分B(A:20mMトリスpH9.0、B:A+1M NaCl)
カラム:SOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→50%50分B(A:20mMクエン酸pH3.0、B:A+1.M KCl)
【0042】
実施例5.ベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニル(Hydroxy-imidazo-propionyl)エキセンディ−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
ベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニルエキセンディン−4(HYエキセンディン−4、AP、米国)を用いて、実施例4と同様の方法で、3.4K PropionALD(2)PEGをHYエキセンディン−4のLysと反応させた後、2つのLys異性体ピークのうち、反応が多くN末端の異性体とは確然に区分される最も後方の異性体ピーク(Lys−27位置異性体)を用いてカップリングを行った。反応は、ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は93.9%を示した(図4)。
【0043】
実施例6.イミダゾ−アセチルエキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
イミダゾ−アセチルエキセンディン−4(CAエキセンディン−4、AP、米国)を用いて、実施例4と同一の方法で、3.4K PropionALD(2)PEGをCAエキセンディン−4のLysと反応させた後、2つのLys異性体ピークのうち、反応が多くN末端の異性体とは完全に区分される最も後方の 異性体ピーク(Lys27位置異性体)を用いてカップリングを行った。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は95.8%を示した(図5)。
【0044】
実施例7.Ser12変異されたDAエキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
3.4K PropionALD(2)PEGをSer12変異されたDAエキセンディン−4(AP、米国)のLysとPEG化させるために、ペプチドと3.4K PropionALD(2)のモル比を1:30、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、25℃で3時間反応させた。この際、反応はpH7.5の100mM Na−Phosphateで行い、還元剤として20mM SCBを添加した。SOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)を用いた異性体精製過程なしで、SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)を用いてモノ−PEG化(Mono-pegylated)ペプチド精製過程のみを実施例4と同様に行った。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。Ser12変異されたDAエキセンディン−4は、他のペプチドに比べてさらに強い陰イオン性質を示すため、SOURCE Qカラム精製過程のみでも、効果的に反応に参与していない過量の免疫グロブリンFcを除去することができた。したがって、SOURCE ISOカラム精製は省略された。SOURCE Qカラム精製条件は実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は92.5%を示した(図6)。
【0045】
実施例8.Arg12変異されたDAエキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
Arg12変異されたDAエキセンディン−4(AP、米国)を用いて、実施例7と同様の方法で、3.4K PropionALD(2)PEGをArg12変異されたDAエキセンディン−4のLysと反応させ、精製した後、カップリングを行った。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は99.2%を示した(図7)。
【0046】
実施例9.デス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4(Lys27)−アルブミン結合体の製造
実施例4と同一の方法で、3.4K PropionALD(2)PEGをデス−アミノ−ヒスチジル−エキセンディン−4(DA−エキセンディ−4、AP、米国)のLys残基と反応させ、精製した。反応は、ペプチドとキャリアとしてのヒト血液由来アルブミン(緑十字、韓国)のモル比を1:7、全体タンパク質濃度を50mg/mLにして、4℃で24時間行った。反応は100mM Ka−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は90.3%を示した(図8)。
【0047】
実施例10:ジメチル−ヒスチジル−エキセンデン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
ジメチル−ヒスチジル−エキセンディン−4(DMエキセンディン−4、AP、米国)を用いて、実施例4と同様の方法で、ジメチル−ヒスチジル−エキセンジン−4(Lsy27)−免疫グロブリンFc結合体を製造した。HPLC逆相分析の結果、純度は96.4%を示した(図9)。
【0048】
実施例11.GLP−1(N)−免疫グロブリンFc結合体の製造
3.4K ButyrALD(2)PEG(ブチルアルデヒド基を2つ持っているPEG、Nektar、米国)をGLP−1(AP、米国)のN末端にPEG化させるために、ペプチドとPEGのモル比を1:5、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で90分間反応させた。この際、反応はpH6.0の100mM濃度のK−P緩衝液内で行い、還元剤として20Mm SCB(NaCNBH3)を添加して反応させた。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:10、全体タンパク質濃度を50mg/mLにして、4℃で16時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は91%を示した(図10)。
【0049】
実施例12.デス−アミノ−ヒスチジル(Des-amino-histidyl)−GLP−1(Lys)−免疫グロブリンFc結合体の製造
3.4K PropionALD(2)PEGをデス−アミノ−ヒスチジル−GLP−1(Ap.,米国)のLysとPEG化させるために、ペプチドと3.4K PropionALD(2)のモル比を1:30、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で4時間反応させた。この際、反応はpH7.5の100mM Na−phosphate内で行い、還元剤として20Mm SCBを添加した。SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)を用いてモノPEG化ペプチドのみを精製した。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:6、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で16時間行わせた。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は実施例2と同様である。ところが、GLP−1−免疫グロブリンFc結合体は、エキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体より免疫グロブリンFcとの疎水性差が少ないため、16mLのSOURCE ISOカラムにおける分離能が低下する。したがって、16mLのSOURCE ISOカラム精製をもう1回繰り返した。HPLC逆相分析の結果、純度は91.9%を示した(図11)。
【0050】
実施例13.ButyrALDリンカーPEGを使用した結合体の製造
3.4K ButyrALD(2)PEG(ブチルアルデヒド基を2つ持っているPEG、Nektar、米国)を用いて、実施例1と同一の方法で3.4K−エキセンディン−4を製造した。その後、3.4K−エキセンディン−4を実施例3と同一の方法で免疫グロブリンFcとカップリングした。HPLC逆相分析の結果、純度は92.3%を示した(図12)。
【0051】
実施例14.持続型エキセンディン−4のインビトロ活性の測定
エキセンディン−4持続型製剤の効力を測定する方法として、インビトロ細胞の活性を測定する方法を用いた。通常、GLP−1のインビトロ活性は、インスリノーマ細胞またはランゲルハンス島(islet of Langerhans)を分離してGLP−1処理による細胞内のcAMP増加有無を確認することにより測定される。
本発明で使用されたインビトロ活性測定方法は、RIN−m5F(ATCC.)であり、この細胞はラットのインスリノーマ細胞として知られており、GLP−1受容体を持っているため、GLP−1系統のインビトロ活性を測定する方法として多く用いられている。RIN−m5FにGLP−1、エキセンディン−4および試験物質を濃度別に処理して、試験物質による細胞内の信号伝達物質であるcAMPの発生度合いによるEC50値を測定し、比較する試験で行った。その結果は表1にまとめた。
【0052】
【表1】
【0053】
DMエキセンディン−4:ジメチル−ヒスチジル(dimethyl-histidly)エキセンディン−4
DAエキセンディン−4:デス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4
HYエキセンディン−4:ベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニル(beta-Hydroxy-imidazo-propionyl)エキセンディン−4
CAエキセンディン−4:イミダゾ−アセチルエキセンディン−4
Ser12 DAエキセンディン−4:12番目のリシン残基がSerで置換されたDAエキセンディン−4
DA GLP−1:デス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)−GLP−1
エキセンディン−4(N)−PEG−Fc:エキセンディン−4のN末端とFc領域とがPEGで連結された結合体
エキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:エキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
DMエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:ジメチル−ヒスチジルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
DAエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:デス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
HYエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:ベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
CAエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:イミダゾ−アセチルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
Ser12 DAエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:12番目のリシン残基がSerで置換されたデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
DAエキセンディン−4(Lys27)−PEG−アルブミン:デス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とアルブミンとがPEGで連結された結合体
DA GLP−1(Lys20,28)−PEG−Fc:デス−アミノ−ヒスチジルGLP−1のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
【0054】
実施例15.持続型エキセンディン−4のインビボ効力試験
エキセンディン−4持続型製剤のインビボ効力を測定するために、糖尿モデルマウスとしてのdb/dbマウスを用いて血糖の減少を確認した。約6〜7週齢の糖尿モデルマウスを試料制限していない状態で2週間持続型製剤を100mcg/kgで1回投与し、天然型エキセンディン−4は毎日100mcg/kg用量を投与した。試験物質を投与した後、毎日採血して血糖の変化を測定し、特に天然型エキセンディン−4は毎日投与1時間後に血糖の濃度を測定した(図14)。エキセンディン−4誘導体の結合体は1回投与により10日以上血中グルコース濃度の減少効果が維持されたが、これに対し、天然型エキセンディン−4結合体は8日以後から血中グルコース濃度の減少効果が無くなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のインスリン分泌ペプチド結合体は、比較的高く維持される生体内活性、および著しく増加した血中半減期を有するため、様々なペプチド薬物の持続型剤形の開発に有用に利用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン分泌ペプチドの持続型剤形のためのインスリン分泌ペプチド結合体に関する。具体的には、本発明は、インスリン分泌ペプチドを非ペプチド性重合体および免疫グロブリンFc領域と共有結合によって相互連結させることにより、生体内持続効能をより画期的に増加させた、変形されたインスリン分泌ペプチド結合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ペプチドは、安定性が低くて容易に変性されるうえ、体内タンパク質加水分解酵素によって分解されてその活性を失いし、相対的に大きさが小さくて腎臓を介して容易に除去される。そのため、薬理学的有効成分としてペプチドを含む医薬品の血中濃度および力価を維持するためには、ペプチド薬物を患者に頻繁に投与する必要がある。ところが、ペプチド薬物の大部分は注射剤の形態で患者に投与され、このような頻繁な注射投与は患者の夥しい苦痛を引き起こす。かかる問題点を克服するために様々な試みが行われてきた。このような試みの一つとして、ペプチド薬物の生体膜透過度を増加させて口腔または鼻腔による吸入によってペプチドの薬物を体内に伝達する試みがあった。ところが、このような方法は、注射剤に比べてペプチド薬物の体内伝達効率が著しく低いため、ペプチド薬物の体内活性を要求する条件に維持するには依然として難しさが多い。
【0003】
一方、ペプチド薬物の血中安定性を増加させ、血中薬物濃度を長期間高く持続させて薬効を極大化しようとする努力が続けられてきた。このようなペプチド薬物の持続型製剤は、患者に免疫反応を誘発せず、ペプチド薬物の安定性を高めるうえ、薬物自体の力価が十分に高く維持されなければならない。
ペプチドを安定化させ且つタンパク質加水分解酵素による分解を抑制するための方法として、タンパク質加水分解酵素に敏感な特定のアミノ酸配列を変更する試みが行われてきた。例えば、血中グルコース濃度を減少させる作用をし、第2型糖尿病を治療するGLP−1(7−37または7−36アミド)は、生理活性半減期が約4分以下(Kreymann et al., 1987)と短いが、これはジペプチジルペプジダーゼIV(Dipeptidyl pepdidase IV、DPP IV)によるGLP−1の8番目のアミノ酸(Ala)と9番目のアミノ酸(Asp)間の切断によるGLP−1の力価喪失に起因する。結果的に、DPP IVに抵抗性を有するGLP−1類似体に対する様々な研究が行われた。このような研究によってAla8をGlyで置換し(Deacon et al., 1998; Burcelin et al., 1999)、或いはAla8をLeuまたはD−Alaで置換して(Xiao et al., 2001)DPP IVに対する抵抗性を増加させながら活性を維持することができた。GLP−1のN末端アミノ酸His7はGLP−1の活性に非常に重要であり、DPP IVのターゲットとして提供される。したがって、米国特許第5,545,618号では、N末端をアルキルまたアシル基に変形し、Gallwitzなどは7番目のHisをN−メチル化(N-methylation)またはα−メチル化(alpha-methylation)させるか、あるいはHis全体をイミダゾールで置換してDPP IV抵抗性を増加させ、生理活性を維持した。
【0004】
これらの変形体以外に、アメリカドクトカゲ(glia monster)の唾液腺から精製されたGLP−1類似体エキセンディン(exendin)-4( 米国特許第5,424,686号)は、DPP IVに対する抵抗性と共に、GLP−1に比べて高い生理活性を有する。よって、体内半減期が2〜4時間であってGLP−1に比べて長くなった。ところが、DPP IVの抵抗性を増加させる方法のみでは、十分な生理活性の持続時間を期待することができない。例えば、現在市販されているエキセディン−4(exenatide)の場合、患者に1日2回注射によって投与されなければならないが、これは依然として患者に大きい負担となっている。
このようなインスリン分泌ペプチドの問題点は、ペプチドの大きさが小さいため、腎臓から回収されず、体外に消失されることである。よって、腎臓における消失を抑制するために、ポリエチレングリコール(PEG)などの溶解度の高い高分子物質をペプチドの表面に化学的に付加させる方法が使用されてきた。
【0005】
PEGは、目的ペプチドの特定の部位または様々な部位に非特異的に結合してペプチドの分子量を増加させることにより腎臓による消失を抑制し、加水分解を防止するには効果があり、特別な副作用も起さない。例えば、国際特許公開公報WO2006/076471は、NPR−Aに結合してcGMPの生産を活性化して動脈内の血圧を減少させることにより、うっ血性心不全(congestive heart failure)治療剤として用いられるB型ナトリウム排泄増加ペプチド(B-type natriuretic peptide、BNP)にPEGを結合して生理活性を持続させることについて開示している。 米国特許第6,924,264号では、エキセディン−4のリジン残基にPEGを結合させて生体内持続時間を増加させる方法について開示している。ところが、このような方法は、PEG分子量を増加させてペプチド薬物の生体内持続時間を延長することができるが、分子量が増加するほどペプチド薬物の力価が著しく低くなりかつペプチドとの反応性が低くなって収率が減少するという問題がある。
【0006】
国際特許公開公報WO02/46227は、組み換え遺伝子技術を用いたGLP−1、エキセディン−4またはその類似体と、ヒト血清アルブミンまたは免疫グロブリン断片(Fc)との融合タンパク質について開示している。 米国特許第6,756,480号は、副甲状腺ホルモン(PTH)およびその類似体とFc融合タンパク質について開示している。このような方法は、低いPEG化収率(pegylation yield)および非特異性問題を克服することができるが、血中半減期の増加効果が予想より画期的ではなく、場合に応じては力価が低いという問題点をもっている。血中半減期の増加効果を極大化するために様々な種類のペプチドリンカーが使用されたりもするが、免疫反応を誘発する可能性がある。また、BNPのようにジスルフィド結合を持っているペプチドを用いる場合、ミスフォールディング(misfolding)の確率が高いため、このようなペプチドを適用することが難しいという問題点がある。
【0007】
この他に、GLP−1誘導体であるNN2211は、GLP−1のアミノ酸を置換し、アシル側鎖を結合させてアルブミンと非共有結合をなすようにすることにより、体内持続時間を増加させた。ところが、半減期が11〜15時間であってエキセンディン−4に比べて著しい増加がないため、GLP−1誘導体は依然として1日1回注射による投与が必要である(Nauck et al., 2004)。また、CJC−1131は、GLP−1とアルブミンとが血液内で共有結合されるようにマレイミド反応基を有するGLP−1誘導体であって、生体内半減期の増加を目的として開発を試みたが、最近開発が中断した状態である。後続の物質であるCJC−1134は、組み換えアルブミンと共有結合によって連結されたエキセンディン−4であって、約17時間(Rat)の血中半減期を有するため、顕著な血中安定性の増加効果を示していない(Thibauoleau et.al., 2006)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,424,686号
【特許文献2】国際特許公開公報WO2006/076471
【特許文献3】米国特許第6,924,264号
【特許文献4】国際特許公開公報WO02/46227
【特許文献5】米国特許第6,756,480号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明者らは、インスリン分泌ペプチドの血中半減期の増加および生体内活性の維持を同時に極大化することが可能な方法として、免疫グロブリンFc領域、非ペプチド性重合体およびインスリン分泌ペプチドを共有結合によってN−末端以外のアミノ酸残基に部位選択的に相互連結させることにより、生体内効力持続効果が画期的に増加することを確認した。特に、本発明者らはインスリン分泌ペプチド結合体のうち、たとえばエキセンディン−4、エキセンディン−4のN末端アミン基を除去したデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(des-amino-histidyl exendin-4)、エキセンディン−4のN末端アミン基をヒドロキシル基で置換したベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニルエキセンディン−4(beta-hydroxyl-imidazo-propionyl exendin-4)のN末端アミン基を2つのメチル基に変更したジメチル−ヒスチジルエキセンディン−4(dimethyl-histidyl exendin-4)、およびエキセンディン−4の1番目のアミノ酸であるヒスチジンのアルファ炭素およびこれに結合したN末端アミン基を除去したイミダゾ−アセチル−エキセンディン−4(imidazo-acetyl-exendin-4)のようなペプチド結合体の生体内効力持続効果が画期的に増加することを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、インスリン分泌ペプチドの生体内活性を維持しながら血中半減期を延長させたインスリン分泌ペプチド持続型製剤を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は天然型エキセンディン−4(N)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図2】図2は天然型エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図3】図3はデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図4】図4はベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニル、すなわち、(2-ヒドロキシー3−(1H- イミダゾール-4- yl)プロピオニル) エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図5】図5はイミダゾ−アセチル、すなわち、(2-(1H-イミダゾール-4- yl)アセチル)エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図6】図6はSer12−変異された−デス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図7】図7はArg12−変異された−デス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図8】図8はデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−ヒト血清アルブミン(HSA)結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図9】図9はジメチル−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図10】図10はGLP−1(N)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図11】図11はデス−アミノ−ヒスチジルGLP−1(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図12】図12は天然型エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相HPLCで分析した結果である。
【図13】図13はイミダゾ−アセチル、すなわち、(2-(1H-イミダゾール-4- yl)アセチル)、エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体を12% SDS−PAGEで分析した結果である。
【図14】図14はデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の血中グルコース濃度の減少効果を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一様態において、本発明は、インスリン分泌ペプチドと両末端に反応基を有する非ペプチド性重合体とが相互共有結合によって連結されている持続型インスリン分泌ペプチド結合体に関する。
本発明で使用されるインスリン分泌ペプチドは、インスリン分泌機能を保有したペプチドであって、膵臓ベータ細胞のインスリンの合成および発現を刺激する。このようなペプチドは、前駆物質(precursors)、アゴニスト(agonist)、誘導体(derivatives)、断片(fragments)および変異体(variants)を含み、好ましくはGLP(Glucagon like peptide)−1、エキセンディン3(exendin 3)およびエキセンディン4(exendin 4)である。
GLP−1は、小腸で分泌されるホルモンであって、一般に、インスリンの生合成および分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制し、細胞内のグルコース吸収を促進する。グルカゴン前駆体は小腸で3つのペプチド、すなわちグルカゴン、GLP−1およびGLP−2に分解される。ここで、GLP−1はGLP−1(1−37)を意味し、元々インスリン分泌機能のない形態であるが、GLP−1(7−37)の形態でプロセスされて活性型GLP−1(7−37)になる。GLP−1(7−37)アミノ酸配列は、次のとおりである:
GLP−1(7−37)
HAEGT FTSDV SSYLE GQAAK EPIAW LVKGR G
【0013】
GLP−1誘導体は、GLP−1と比較して少なくとも80%アミノ酸配列で相同性を示し、化学的に変更された形態であってもよく、GLP−1と比較してインスリン分泌機能も少なくとも同等またはそれ以上を示すペプチドを意味する。
GLP−1断片は、天然型GLP−1のN末端またはC末端に対して一つまたはそれ以上のアミノ酸が追加または削除された形態を意味し、追加されたアミノ酸は天然に存在しないアミノ酸(例えば、D型アミノ酸)も可能である。
GLP−1変異体は、天然型GLP−1とアミノ酸配列が少なくとも一つ異なるペプチドであって、インスリン分泌機能を保有したペプチドを意味する。
エキセンディン3とエキセンディン4は、GLP−1と53%のアミノ酸配列類似性を示す39個のアミノ酸からなるインスリン分泌ペプチドであり、エキセンディン−3とエキセンディン−4のアミノ酸配列は、次のとおりである:
エキセンディン−3
HSDGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS
エキセンディン−4
HGEGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS
【0014】
エキセンディンアゴニストは、エキセンディンの構造を問わずに、エキセンディンの生体内受容体に結合してエキセンディンと同一の生物学的活性を示す物質を意味する。エキセンディン誘導体は、天然型エキセンディンと比較して少なくとも80%アミノ酸配列で相同性を示し、アミノ酸残基の一部グループが化学的に置換(例えば、アルファ−メチル化、アルファ−ヒドロキシル化)、除去(例えば、脱アミノ化)または変更(例えば、Nメチル化)された形態であってもよく、インスリン分泌機能を保有したペプチドを意味する。
エキセンディン断片は、天然型エキセンディンのN末端またはC末端に対して一つまたはそれ以上のアミノ酸が追加または削除された形態を意味し、天然に存在しないアミノ酸(例えば、D型アミノ酸)の追加も可能である。このようなエキセンディン断片はインスリン分泌機能を保有する。
エキセンディン変異体は、天然型エキセンディンとアミノ酸配列が少なくとも一つ異なるペプチドであって、インスリン分泌機能を保有したペプチドを意味する。
エキセンディンアゴニスト、誘導体、断片および変異体でそれぞれ使用された製造方法は、独立に使用でき、組み合わせも可能である。例えば、本発明は天然型インスリン分泌ペプチドとはアミノ酸配列が少なくとも一つ異なり、N末端アミノ酸残基に脱アミノ化アミノ酸配列を有するインスリン分泌ペプチドも含まれる。
【0015】
具体的な一様態において、本発明で使用した天然型インスリン分泌ペプチドと変形されたインスリン分泌ペプチドは固相法によって合成でき、天然型インスリン分泌ペプチドを含む大部分の天然型ペプチドは組み換え方法によっても生産可能である。
また、本発明で使用されたインスリン分泌ペプチドは、様々な部位で非ペプチド性重合体と結合できる。本発明で製造したペプチド結合体は、インスリン分泌ペプチドの結合部位によって活性の差異があり得る。
たとえば、N末端部位およびC末端などのN末端以外の部位にそれぞれカップリングしてインビトロ(in vitro)活性の差異を確認することができる。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、高いpH条件、例えばpH9.0ではリジン残基とも共有結合を形成することができる。反応pHを変えながらPEG化(Pegylation)反応を行った後、イオン交換カラムを用いて反応混合物から位置異性体を分離することができる。
【0016】
インスリン分泌ペプチドが、生体内活性に重要な部位であるN末端以外の位置にカップリングする場合、天然型アミノ酸配列で変更しようとするアミノ酸残基位置に反応性チオール基を導入して非ペプチド性重合体のマレイミドリンカーを用いて共有結合を形成することができる。
インスリン分泌ペプチドが、生体内活性に重要な部位であるN末端以外の位置にカップリングする場合、天然型アミノ酸配列で変更しようとするアミノ酸残基位置に反応性のあるアミン基を導入して非ペプチド性重合体のアルデヒドリンカーを用いて共有結合を形成することができる。
非ペプチド性重合体にあるアルデヒドリンカーを使用すると、このようなアルデヒドリンカーは、N末端およびリシン残基にあるアミン基と反応し、選択的に反応収率を向上させるために、変形された形態のインスリン分泌ペプチドを使用することができる。たとえば、N末端をブロッキングする方法、リシン残基を置換する方法、カルボキシル末端にアミン基を導入する方法などを用いて反応することが可能なアミン基を所望の位置に一つのみ維持することができ、これによりPEG化およびカップリング収率を向上させることができる。N末端の保護方法は、ジメチル化(dimethylation)の他に、メチル化(methylation)、脱アミノ化(deamination)またはアセチる化(acetylation)方法も使用可能であり、このようなアルキル化(alkylation)方法に限定されない。
【0017】
本発明の好適な様態において、本発明のインスリン分泌ペプチド結合体は、インスリン分泌ペプチドのN末端以外のアミン基に特異的に免疫グロブリンFc領域が結合されたインスリン分泌ペプチド結合体である。
具体的な一実施例において、本発明者らは、インスリン分泌ペプチドのリシン残基に選択的にPEGをカップリングするための方法として、pH9.0で天然型エキセンディン−4のPEG化反応を誘導した。他の方法として、リシン残基でPEG化するために、pH7.5でN末端が除去または保護された形態のエキセンディン−4誘導体のPEG化反応を行った。N末端ヒスチジンのアルファアミン基を除去する方法、N末端アミノ基をヒドロキシル基で置換する方法、N末端ヒスチジンのアルファアミン基に2つのメチル基を付ける方法、一番目のアミノ酸(ヒスチジン)のアルファ炭素およびこれに結合されているN末端アミン基を除去してイミダゾ−アセチル基のみを残す方法などを用いて、N末端のPEG化を予め防止した。このような誘導体を下記化学式1に示した。
<化学式1>
【0018】
【化1】
【0019】
N末端カップリングの場合とは異なり、PEGがN末端を除いたリシン残基にカップリングされると、インビトロ活性が約8.5%程度維持されることを確認することができた(表1)。また、エキセンディン−4のN末端アミン基を除去したデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4(des-amino-histidyl exendin-4、以下「DA−エキセンディン−4」とも称する)、エキセンディン−4のN末端アミン基をヒドロキシルで置換したベータ−ヒドロキシ−イミダゾプロピオニルエキセンディン−4(beta-hydroxy-imidazopropionyl exendin-4、以下「HY−エキセンディン−4」とも称する)、エキセンディン−4のN末端アミン基を2つのメチル基に変更したジメチルヒスチジル−エキセンデイン−4(dimethyl histidyl-exendin-4、以下「DM−エキセンディン−4」とも称する)、そしてエキセンディン−4の1番目のアミノ酸であるヒスチジンのアルファ炭素およびこれに結合したN−末端アミン基を除去したイミダゾアセチル−エキセンディン−4(imidazoacetyl-exendin-4、以下「CA−エキセンディン−4」とも称する)の免疫グロブリンFc結合体が、天然型エキセンディン−4結合体に比較的類似したインビトロ活性および血中半減期を示したが(表1)、このような免疫グロブリンFc結合体は、インビボ効力試験では予測できなかった著しい持続性効果を示した(図14)。したがって、本発明で製造したDM−エキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体、DA−エキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体、CAエキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体、およびHY−エキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体の血中半減期は50時間以上画期的に増加した。ペプチドの活性に影響を与えないリシン残基にカップリングさせて力価の減少を最小化した。また、N末端のアミン基およびアルファカーボンの除去により、予測できなかった血中グルコース濃度減少活性の向上を示すことを確認した。
【0020】
免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドなので、薬物のキャリアとして使用するには安全である。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン全体分子に比べて相対的に分子量が少ないため、結合体の製造、精製および収率の面で有利である。それだけでなく、アミノ酸配列が抗体ごとに異なって高い非均質性を示すFab部分が除去されるため、免疫グロブリンFc領域が物質の同質性を大きく増加させ、血中抗原性の誘発可能性も低くする効果を期待することができる。
本発明で使用されるインスリン分泌ペプチドは、キャリア物質と非ペプチド性重合体によって連結される。
本発明に使用可能なキャリア物質は、免疫グロブリンFc領域、アルブミン、トランスフェリン(transferrin)およびPEGよりなる群から選択でき、好ましくは免疫グロブリンFc領域である。
【0021】
本発明において、「免疫グロブリンFc領域」は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域、重鎖不変領域1(CH--1)と軽鎖不変領域(CL1)を除いた、重鎖不変領域2(CH2)および重鎖不変領域3(CH3)部分を意味し、重鎖不変領域にヒンジ部分を含んだりもする。また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等またはより向上した効果を有する限りは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除外し、一部または全体重鎖不変領域1(CH1)および/または軽鎖不変領域1(C-L-1)を含む拡張されたFc領域であり得る。また、CH2および/またはCH-3に該当する相当長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。すなわち、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCH4ドメイン、2)CH1ドメインおよびCH2ドメイン、3)CH1ドメインおよびCH3ドメイン、4)CH2ドメインおよびCH3ドメイン、5)1つまたは2つ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の二量体であってもよい。
【0022】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体(変異体)を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列の少なくとも一つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換、またはこれらの組み合わせによって相異なる配列を有することを意味する。たとえば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られている214〜238、297〜299、318〜322、または327〜331番ののアミノ酸残基が変形のために適当な部位として利用できる。また、ジスルフィド結合を形成することが可能な部位が除去されるか、あるいは天然型FcからN末端の幾つかのアミノ酸が除去されるか、あるいは天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加され得るなど、様々な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター(effector)機能を無くすために、C1q結合部位およびADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位のような補体結合部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開WO97/34631および国際特許公開96/32478に開示されている。
【0023】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質およびペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野で公知のものである(H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York,197 9)。最も一般に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
場合に応じて、Fc領域はリン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、およびアミド化(amidation)などによって変更されてもよい。
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同一の生物学的活性を示す誘導体であり、あるいはいわゆるFc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させた誘導体である。
【0024】
また、このようなFc領域は、ヒトおよび牛、ヤギ、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内で分離した天然型から得られてもよく、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え型またはその誘導体であってもよい。ここで、天然型から獲得する方法は、全体免疫グロブリンをヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して得ることができる。パパインを処理する場合にはFabおよびFcに切断され、ペプシンを処理する場合にはpF’cおよびF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFcまたはpF’cに分離することができる。
好ましくは、ヒト由来のFc領域は微生物から得た組み換え型免疫グロブリンFc領域である。
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖、または糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、通常の方法、例えば化学的方法、酵素学的方法、および微生物を用いた遺伝工学的方法などが利用できる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(Clq)の結合力が著しく低下し、抗体−依存性細胞毒性または補体−依存性細胞毒性が減少または除去されるので、生体内における不要な免疫反応を誘発しない。このような点から、糖鎖が除去された、または脱糖化された免疫グロブリンFc領域は、薬物のキャリアとしての本来の目的にさらに符合する形態であるといえる。
【0025】
本発明において、「糖鎖の除去」はFc領域から酵素で糖成分を除去することを意味し、「脱糖化」はFc領域を、糖化されていない形態で原核動物、好ましくは大腸菌から生産することを意味する。
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒトまたは牛、ヤギ、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、好ましくはヒト起源である。また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来またはこれらの組み合わせ(combination)またはこれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。免疫グロブリンFc領域は、好ましくはヒトの血液に最も豊かなタンパク質に該当するIgGまたはIgGM由来であり、最も好ましくはリガンド結合タンパク質の半減期を向上させるものと知られているIgG由来である。
一方、本発明において、「組み合わせ」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが相異なる起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。すなわち、二量体または多量体は、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD FcおよびIgE Fc断片よりなる群から選ばれた2つ以上の断片から製造可能である。
【0026】
本発明において、「ハイブリッド」とは、単鎖の免疫グロブリンFc領域内に2つ以上の相異なる起源の免疫グロブリンFc断片に該当する配列が存在することを意味する。本発明の場合、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、ドメインハイブリッドはIgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE FcおよびIgD FcのCH1、CH2、CH3およびCH4よりなる群から選ばれた1つ〜4つのドメインからなってもよく、ヒンジを含んでもよい。
一方、IgGはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではこれらの組み合わせまたはこれらのハイブリッドも可能である。好ましくはIgG2およびIgG4サブクラスであり、最も好ましくは補体依存的毒性(CDC、Complementdependent cytotoxicity)などのエフェクター機能が殆どないIgG4のFc領域である。
【0027】
すなわち、最も好ましい本発明の薬物キャリア用免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の脱糖化Fc領域である。ヒト由来のFc領域はヒト生体内で抗原として作用し、これに対する新しい抗体を生成するなどの不適な免疫反応を引き起こすおそれのある非ヒト由来のFc領域に比べて好ましい。
本発明において、「非ペプチド性重合体」は、繰返し単位が少なくとも2つ結合した生体適合性重合体を意味し、前記繰返し単位はペプチド結合ではなく任意の共有結合によって互いに連結される。
本発明に使用可能な非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、たとえばPLA(ポリ乳酸)やPLGA(ポリ乳酸−グリコール酸)などの生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択でき、好ましくはポリエチレングリコールである。また、当該分野で公知になっているこれらの誘導体および当該分野の技術水準で容易に製造することが可能な誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0028】
既存のinframe fusion方法によって製造された融合タンパク質で使用されたペプチド性リンカーの欠点は、生体内でタンパク質分解酵素によって容易に切断され、期待しただけのキャリアによる活性薬物の血中半減期増加効果を得ることができないことである。ところが、本発明では、タンパク質分解酵素に抵抗性がある重合体を用いて、キャリアと同様にペプチドの血中半減期を維持することができる。したがって、本発明で使用できる非ペプチド性重合体は、前述したような役割、すなわち生体内タンパク質分解酵素に抵抗性がある重合体であればいずれでも使用できる。非ペプチド性重合体の分子量は1〜100kDaの範囲、好ましくは1〜20kDaの範囲である。また、前記免疫グロブリンFc領域と結合する本発明の非ペプチド性重合体としては、1種の重合体だけでなく、相異なる種類の重合体の組み合わせも使用できる。
本発明に使用される非ペプチド性重合体は、免疫グロブリンFc領域およびタンパク質薬物と結合できる反応基を有する。
【0029】
前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、およびスクシンイミド(succinimide)誘導体よりなる群から選択されることが好ましい。前記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルプロピオネート、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチルまたはスクシンイミジルカーボネートが利用できる。特に、前記非ペプチド性重合体が両末端に反応性アルデヒド基を有する場合、非特異的反応を最小化し、非ペプチド性重合体の両末端で生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンとそれぞれ結合するには効果的である。アルデヒド結合による還元性アルキル化により生成された最終産物は、アミド結合によって連結されたものより一層安定的である。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、pH9.0などの高いpH条件でリシン残基との共有結合を形成することができる。
【0030】
前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は互いに同じでも異なってもよい。たとえば、非ペプチド性重合体は、一方の末端にはマレイミド基を、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基またはブチルアルデヒド基を持つことができる。両末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性重合体として用いる場合には、公知の化学反応によって前記ヒドロキシ基を前記様々な反応基に活性化し、あるいは商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを用いて本発明のインスリン分泌ペプチド結合体を製造することができる。
このような本発明のインスリン分泌ペプチド結合体は、インスリンの合成および分泌の促進、食欲抑制、体重減少、ベータ細胞の血中グルコース敏感度の増加、ベータ細胞増殖の促進、胃内容排出の遅延、グルカゴン抑制などといった既存のインスリン分泌ペプチドの生体内活性を維持させるうえ、インスリン分泌ペプチドの血中半減期およびこれによる前記ペプチドの生体内効力持続効果が画期的に増加するので、糖尿、肥満、急性冠症候群(Acute coronary syndrome)または多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic ovary syndrome)の治療に有用である。
【0031】
また、本発明の別の様態において、本発明は、
(1)両末端にアルデヒド、マレイミドまたはスクシンイミド誘導体反応基を有する非ペプチド性重合体をインスリン分泌ペプチドのアミン基またはチオール基に共有結合によって連結する段階と、
(2)前記(1)の反応混合物から、N−末端以外の位置に非ペプチド性重合体が共有結合されたインスリン分泌ペプチドを含む結合体を分離する段階と、
(3)分離された結合体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結することにより、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドと結合されたペプチド結合体を生成する段階とを含む、インスリン分泌ペプチド結合体の製造方法を提供する。
本発明において、用語「結合体」とは、非ペプチド性重合体とインスリン分泌ペプチドとが共有結合によって連結された中間体であって、後で、結合体にある非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を結合させる。
【0032】
また、好ましい一様態において、本発明は、
(1)両末端にアルデヒド反応基を有する非ペプチド性重合体をインスリン分泌ペプチドのリシン残基に共有結合によって連結させる段階と、
(2)前記(1)の反応混合物から、リシン残基に非ペプチド性重合体が共有結合されたインスリン分泌ペプチドを含む結合体を分離する段階と、
(3)分離された結合体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結することにより、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドと結合されたタンパク質結合体を生成する段階とを含む製造方法を提供する。さらに好ましくは、前記(1)の非ペプチド性重合体とインスリン分泌ペプチドのリシン残基とはpH7.5以上で連結される。
また、本発明の別の様態において、本発明は、本発明のインスリン分泌ペプチド結合体を含む糖尿病治療用薬学的組成物を提供する。
【0033】
本発明の結合体を含む薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与の際には結合剤、活滑剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素および香料などを使用することができる。注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤および安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には基剤、賦形剤、潤滑剤および保存剤などを使用することができる。本発明の薬学的組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容される担体と混合して様々に製造できる。たとえば、薬学的組成物は、経口投与の際には錠剤、チローキ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップおよびウエハーなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形態で製造することができ、その他に溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセルおよび徐放性製剤などに剤形化することができる。
一方、製剤学的剤形に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、未晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムまたは鉱物油などが使用できる。また、 製剤学的剤形は充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料および防腐剤などをさらに含むことができる。
【0034】
本発明に係る結合体は、糖尿、肥満、急性冠症候群または多嚢胞性卵巣症候群の治療に有用である。したがって、これを含む薬学的組成物を投与することにより、前記疾患の治療を図ることができる。
本発明において、「投与」は、ある適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味する。前記結合体の投与経路は、薬物が目的の組織に到達することができる限りはいずれの一般な経路を通じても投与できる。投与方法としては、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与および直腸内投与など様々であるが、これに限定されない。ところが、経口投与の際に、ペプチドは消化されるため、経口用組成物は活性薬剤をコートし、あるいは胃における分解から保護されるように剤形化することが好ましい。好ましくは注射剤の形態で投与できる。また、薬学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動することが可能な任意の装置によって投与できる。
また、本発明に係る薬学的組成物の投与回数および投与量は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重および疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類に応じて決定される。本発明の薬学的組成物は、生体内持続性および力価に優れるので、本発明の薬学的製剤の投与回数および投与量を著しく減少させることができる。
【0035】
以下、下記実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1.エキセンディン−4のPEG化(peglylation)と位置異性体の分離
3.4K PropionALD(2)PEG(プロピオンアルデヒド基を2つ持っているPEG、IDB Inc.,韓国)をエキセンディン−4(AP、米国)のN末端にPEG化させるために、ペプチドとPEGのモル比を1:15、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で90分間反応させた。この際、反応はpH4.0の100mM濃度のNaOAc緩衝液内で、還元剤としての20mM SCB(NaCNBH3)を添加して行った。3.4K PropionLAD(2)PEGをエキセンディン−4のリシン(Lys)残基にPEG化させるために、ペプチドとPEGのモル比を1:30、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で3時間反応させた。この際、反応はpH9.0の100mM濃度のNa−Phosphate緩衝液内で、還元剤としての20mM SCBを添加して行った。各反応液はSOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)を通じて1次的にモノ−PEG化ペプチドを精製し、SOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)を通じて異性体を分離した。N末端がPEG化されたピークが最も前に、その後に順次2つのリシンがPEG化されたピークが出ることが分かった。ペプチドマッピング方法で溶出されたピークのPEG化位置を確認することができた。Lys12PEG化結合体がまず溶出され、Lys27PEG化結合体は最も後方に溶出され、N−末端位置異性体およびLys12位置異性体を完璧に分離することができた。
【0036】
カラム:SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→40%80分B(A:20mMトリスpH8.5、B:A+0.5M NaCl)
カラム:SOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→100%50分B(A:20mMクエン酸pH3.0、B:A+0.5M KCl)
【0037】
実施例2:エキセンディン−4(N)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の製造
実施例1の方法を用いて3.4K PropionALD(2)PEGをエキセンディン−4のN末端と反応させた後、N末端の異性体のみを精製して免疫グロブリンFcとカップリングさせた。ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を50mg/mLにして4℃で17時間反応させた。反応は100mM K−P(pH6.0)で行った。ここに、還元剤としての20mM SCBを添加した。カップリング反応液は、2つの精製カラムを経て精製される。まず、カップリング反応に参与していない多量の免疫グロブリンFcを除去するために、SOURCE Q(XK 16mL、Amersham Biosciences)を用いた。Salt gradientとして20mMトリス(pH7.5)および1M NaClを使用すると、相対的に結合力の弱い免疫グロブリンFcがまず溶出され、相次いでエキセンディン−4−免疫グロブリンFcが溶出される。1次精製によってある程度免疫グロブリンFcが除去されるが、イオン交換カラムでは免疫グロブリンFcとエキセンディン−4−免疫グロブリンFcの結合力の差が大きくないため、完全には分離されない。したがって、2物質の疎水性を用いて2次精製を行った。SOURCE ISO(HR16mL、Amersham Biosciences)に20mMトリス(pH7.5)1.5M硫酸アンモニウムを用いて、1次精製された試料を結合させた後、益々硫酸アンモニウムの濃度を低めながら試料を溶出させる。HICカラムで結合力の弱い免疫グロブリンFcがまず溶出され、結合力の強いエキセンディン−4−免疫グロブリンFc試料が後で溶出される。これらは、疎水性の差異が大きいため、イオン交換カラムより一層分離が容易である。ところが、モル比の差による過量の免疫グロブリンFcが反応に投入されるため、HICカラムのみを使用しては高純度の結合体を得ることができない。HPLC逆相分析の結果、純度は91.6%を示した(図1)。
【0038】
カラム:SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→25%70分B(A:20mMトリスpH7.5、B:A+1M NaCl)
カラム:SOURCE ISO(HR16mL、Amersham Biosciences)
流速:7.0mL/分
勾配:B100→0%60分B(A:20mMトリスpH7.5、B:A+1.5M 硫酸アンモニウム)
【0039】
実施例3.エキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
実施例1の方法を用いて3.4K PropionALD(2)PEGをエキセンディン−4のLysと反応させた後、Lys異性体のみを精製して免疫グロブリンFcとカップリングさせた。2つのLys異性体ピークのうち、反応が多くN末端の異性体とは確然に区分される最も後方の異性体ピーク(Lys−27位置異性体)を用いてカップリングを行った。反応は、ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を50mg/mLにして、4℃で16時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は91.7%を示した(図2)。
【0040】
実施例4.デス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
3.4K PropionALD(2)PEGをデス−アミノ−ヒスチジル−エキセンディン−4(DAエキセンディン−4、AP、米国)のLysとPEG化するために、ペプチドと3.4K PropionALD(2)のモル比を1:30、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で12時間反応させた。反応液はpH7.5の100mM Na−phosphateであり、還元剤として20mM SCBを添加した。SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)とSOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)を用いてPEG化ペプチドを2段階で精製した。異性体の精製過程で、2つのLys異性体ピークのうち、反応が多くN末端の異性体とは確然に区分される最も後方の異性体ピーク(Lys−27位置異性体)を用いてカップリングを行った。反応は、ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は95.8%を示した(図3)。
【0041】
カラム:SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→20%70分B(A:20mMトリスpH9.0、B:A+1M NaCl)
カラム:SOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→50%50分B(A:20mMクエン酸pH3.0、B:A+1.M KCl)
【0042】
実施例5.ベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニル(Hydroxy-imidazo-propionyl)エキセンディ−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
ベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニルエキセンディン−4(HYエキセンディン−4、AP、米国)を用いて、実施例4と同様の方法で、3.4K PropionALD(2)PEGをHYエキセンディン−4のLysと反応させた後、2つのLys異性体ピークのうち、反応が多くN末端の異性体とは確然に区分される最も後方の異性体ピーク(Lys−27位置異性体)を用いてカップリングを行った。反応は、ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は93.9%を示した(図4)。
【0043】
実施例6.イミダゾ−アセチルエキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
イミダゾ−アセチルエキセンディン−4(CAエキセンディン−4、AP、米国)を用いて、実施例4と同一の方法で、3.4K PropionALD(2)PEGをCAエキセンディン−4のLysと反応させた後、2つのLys異性体ピークのうち、反応が多くN末端の異性体とは完全に区分される最も後方の 異性体ピーク(Lys27位置異性体)を用いてカップリングを行った。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は95.8%を示した(図5)。
【0044】
実施例7.Ser12変異されたDAエキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
3.4K PropionALD(2)PEGをSer12変異されたDAエキセンディン−4(AP、米国)のLysとPEG化させるために、ペプチドと3.4K PropionALD(2)のモル比を1:30、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、25℃で3時間反応させた。この際、反応はpH7.5の100mM Na−Phosphateで行い、還元剤として20mM SCBを添加した。SOURCE S(XK16mL、Amersham Biosciences)を用いた異性体精製過程なしで、SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)を用いてモノ−PEG化(Mono-pegylated)ペプチド精製過程のみを実施例4と同様に行った。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。Ser12変異されたDAエキセンディン−4は、他のペプチドに比べてさらに強い陰イオン性質を示すため、SOURCE Qカラム精製過程のみでも、効果的に反応に参与していない過量の免疫グロブリンFcを除去することができた。したがって、SOURCE ISOカラム精製は省略された。SOURCE Qカラム精製条件は実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は92.5%を示した(図6)。
【0045】
実施例8.Arg12変異されたDAエキセンディン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
Arg12変異されたDAエキセンディン−4(AP、米国)を用いて、実施例7と同様の方法で、3.4K PropionALD(2)PEGをArg12変異されたDAエキセンディン−4のLysと反応させ、精製した後、カップリングを行った。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で20時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は99.2%を示した(図7)。
【0046】
実施例9.デス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4(Lys27)−アルブミン結合体の製造
実施例4と同一の方法で、3.4K PropionALD(2)PEGをデス−アミノ−ヒスチジル−エキセンディン−4(DA−エキセンディ−4、AP、米国)のLys残基と反応させ、精製した。反応は、ペプチドとキャリアとしてのヒト血液由来アルブミン(緑十字、韓国)のモル比を1:7、全体タンパク質濃度を50mg/mLにして、4℃で24時間行った。反応は100mM Ka−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は、実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は90.3%を示した(図8)。
【0047】
実施例10:ジメチル−ヒスチジル−エキセンデン−4(Lys27)−免疫グロブリンFc結合体の製造
ジメチル−ヒスチジル−エキセンディン−4(DMエキセンディン−4、AP、米国)を用いて、実施例4と同様の方法で、ジメチル−ヒスチジル−エキセンジン−4(Lsy27)−免疫グロブリンFc結合体を製造した。HPLC逆相分析の結果、純度は96.4%を示した(図9)。
【0048】
実施例11.GLP−1(N)−免疫グロブリンFc結合体の製造
3.4K ButyrALD(2)PEG(ブチルアルデヒド基を2つ持っているPEG、Nektar、米国)をGLP−1(AP、米国)のN末端にPEG化させるために、ペプチドとPEGのモル比を1:5、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で90分間反応させた。この際、反応はpH6.0の100mM濃度のK−P緩衝液内で行い、還元剤として20Mm SCB(NaCNBH3)を添加して反応させた。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:10、全体タンパク質濃度を50mg/mLにして、4℃で16時間行った。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度は91%を示した(図10)。
【0049】
実施例12.デス−アミノ−ヒスチジル(Des-amino-histidyl)−GLP−1(Lys)−免疫グロブリンFc結合体の製造
3.4K PropionALD(2)PEGをデス−アミノ−ヒスチジル−GLP−1(Ap.,米国)のLysとPEG化させるために、ペプチドと3.4K PropionALD(2)のモル比を1:30、ペプチドの濃度を3mg/mLにして、4℃で4時間反応させた。この際、反応はpH7.5の100mM Na−phosphate内で行い、還元剤として20Mm SCBを添加した。SOURCE Q(XK16mL、Amersham Biosciences)を用いてモノPEG化ペプチドのみを精製した。反応はペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:6、全体タンパク質濃度を60mg/mLにして、4℃で16時間行わせた。反応は100mM K−P(pH6.0)内で行い、還元剤として20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、16mLのSOURCE Qと16mLのSOURCE ISOを用いた2段階の精製方法は実施例2と同様である。ところが、GLP−1−免疫グロブリンFc結合体は、エキセンディン−4−免疫グロブリンFc結合体より免疫グロブリンFcとの疎水性差が少ないため、16mLのSOURCE ISOカラムにおける分離能が低下する。したがって、16mLのSOURCE ISOカラム精製をもう1回繰り返した。HPLC逆相分析の結果、純度は91.9%を示した(図11)。
【0050】
実施例13.ButyrALDリンカーPEGを使用した結合体の製造
3.4K ButyrALD(2)PEG(ブチルアルデヒド基を2つ持っているPEG、Nektar、米国)を用いて、実施例1と同一の方法で3.4K−エキセンディン−4を製造した。その後、3.4K−エキセンディン−4を実施例3と同一の方法で免疫グロブリンFcとカップリングした。HPLC逆相分析の結果、純度は92.3%を示した(図12)。
【0051】
実施例14.持続型エキセンディン−4のインビトロ活性の測定
エキセンディン−4持続型製剤の効力を測定する方法として、インビトロ細胞の活性を測定する方法を用いた。通常、GLP−1のインビトロ活性は、インスリノーマ細胞またはランゲルハンス島(islet of Langerhans)を分離してGLP−1処理による細胞内のcAMP増加有無を確認することにより測定される。
本発明で使用されたインビトロ活性測定方法は、RIN−m5F(ATCC.)であり、この細胞はラットのインスリノーマ細胞として知られており、GLP−1受容体を持っているため、GLP−1系統のインビトロ活性を測定する方法として多く用いられている。RIN−m5FにGLP−1、エキセンディン−4および試験物質を濃度別に処理して、試験物質による細胞内の信号伝達物質であるcAMPの発生度合いによるEC50値を測定し、比較する試験で行った。その結果は表1にまとめた。
【0052】
【表1】
【0053】
DMエキセンディン−4:ジメチル−ヒスチジル(dimethyl-histidly)エキセンディン−4
DAエキセンディン−4:デス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4
HYエキセンディン−4:ベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニル(beta-Hydroxy-imidazo-propionyl)エキセンディン−4
CAエキセンディン−4:イミダゾ−アセチルエキセンディン−4
Ser12 DAエキセンディン−4:12番目のリシン残基がSerで置換されたDAエキセンディン−4
DA GLP−1:デス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)−GLP−1
エキセンディン−4(N)−PEG−Fc:エキセンディン−4のN末端とFc領域とがPEGで連結された結合体
エキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:エキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
DMエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:ジメチル−ヒスチジルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
DAエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:デス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
HYエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:ベータ−ヒドロキシ−イミダゾ−プロピオニルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
CAエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:イミダゾ−アセチルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
Ser12 DAエキセンディン−4(Lys27)−PEG−Fc:12番目のリシン残基がSerで置換されたデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
DAエキセンディン−4(Lys27)−PEG−アルブミン:デス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4の27番目のリシン残基とアルブミンとがPEGで連結された結合体
DA GLP−1(Lys20,28)−PEG−Fc:デス−アミノ−ヒスチジルGLP−1のリシン残基とFc領域とがPEGで連結された結合体
【0054】
実施例15.持続型エキセンディン−4のインビボ効力試験
エキセンディン−4持続型製剤のインビボ効力を測定するために、糖尿モデルマウスとしてのdb/dbマウスを用いて血糖の減少を確認した。約6〜7週齢の糖尿モデルマウスを試料制限していない状態で2週間持続型製剤を100mcg/kgで1回投与し、天然型エキセンディン−4は毎日100mcg/kg用量を投与した。試験物質を投与した後、毎日採血して血糖の変化を測定し、特に天然型エキセンディン−4は毎日投与1時間後に血糖の濃度を測定した(図14)。エキセンディン−4誘導体の結合体は1回投与により10日以上血中グルコース濃度の減少効果が維持されたが、これに対し、天然型エキセンディン−4結合体は8日以後から血中グルコース濃度の減少効果が無くなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のインスリン分泌ペプチド結合体は、比較的高く維持される生体内活性、および著しく増加した血中半減期を有するため、様々なペプチド薬物の持続型剤形の開発に有用に利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン分泌ペプチドと免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる非ペプチド性重合体によって互いに連結され、前記インスリン分泌ペプチドのN末端以外のアミノ酸残基に前記非ペプチド性重合体が結合されたことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項2】
前記インスリン分泌ペプチドは、GLP−1、エキセンディン−3、エキセンディン−4、これらのアゴニスト(agonist)、これらの誘導体(derivative)、これらの断片(fragment)、これらの変異体(variant)、およびこれらの組み合わせからよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項3】
前記誘導体は、天然型インスリン分泌ペプチドのN末端アミン基の置換、除去および変更の中から選ばれたいずれか一つの方法によって製造され、インスリン分泌機能を保有するペプチド、これらの断片およびこれらの変異体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項4】
前記誘導体は、天然型インスリン分泌ペプチドのアルファカーボンおよびN末端アミン基が除去されたペプチド、これらの断片およびこれらの変異体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項5】
N末端アミン基の置換、除去または変更によって製造されたエキセンディン−4誘導体と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項6】
前記エキセンディン−4誘導体は、エキセンディン−4のN末端アミン基が除去されたエキセンディン−4誘導体、エキセンディン−4のN末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン−4誘導体、エキセンディン−4のN末端アミン基がジメチル基に変更されたエキセンディン−4誘導体、インスリン分泌ペプチドのうちエキセンディン−4の一番目のアミノ酸(ヒスチジン)のアルファ炭素を除去したエキセンディン−4誘導体、エキセンディン−4の12番目のアミノ酸(リシン)がセリンで置換されたエキセンディン−4誘導体、およびエキセンディン−4の12番目のアミノ酸(リシン)がアルギニンで置換されたエキセンディン−4誘導体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項7】
エキセンディン−4のN末端アミン基が除去されたデス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項8】
エキセンディン−4のN末端アミン基が除去されたデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4とアルブミンとが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項9】
エキセンディン−4のN末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン−4と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項10】
エキセンディン−4のN末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン−4とアルブミンとが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項11】
エキセンディン−4のN末端ヒスチジン残基のアルファ炭素およびアルファ炭素に結合されたN末端アミン基が除去されたエキセンディン−4誘導体と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項12】
エキセンディン−4のN末端ヒスチジン残基のアルファ炭素およびアルファ炭素に結合したN末端アミン基が除去されたエキセンディン−4誘導体とアルブミンとが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項13】
下記化学式1のアミノ酸配列を有する、インスリン分泌ペプチド誘導体。
R1−X−Y−Z−R2 ……<化学式1>
(式中、R1はヒスチジン、デス−アミノ−ヒスチジル基、N−ジメチル−ヒスチジル基、ベータ−ヒドロキシイミダゾプロピル基および4−イミダゾアセチル基よりなる群から選択され、
R2は−NH2、−OHおyび−Lysよりなる群から選択され、
XはGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−R3−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−R4−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser、Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−R3−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−R4−Asn−Gly−Gly、およびSer−Asp−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−R3−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−R4−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Serよりなる群から選択され、
R3はLys、SerおよびArgよりなる群から選択され、
R4はLys、SerおよびArgよりなる群から選択され、
Yはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
Zは免疫グロブリンFc領域である。)
【請求項14】
非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドのアミン基またはチオール基に結合されたことを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項15】
免疫グロブリンFc領域が脱糖化(deglycosylated)されることを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項16】
免疫グロブリンFc領域が、CH1、CH2、C--H3およびCH4ドメインよりなる群から選ばれる1つ〜4つのドメインからなることを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項17】
免疫グロブリンFc領域がヒンジ領域をさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項18】
免疫グロブリンFc領域が、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMよりなる群から選ばれる免疫グロブリン由来のFc領域であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項19】
免疫グロブリンFc領域のそれぞれのドメインが、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMよりなる群から選ばれる免疫グロブリンに由来の相異なる起源を有するドメインハイブリッドであることを特徴とする、請求項18に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項20】
免疫グロブリンFc領域が、同一起源の単鎖免疫グロブリンからなる二量体または多量体(免疫グロブリンFcの組み合わせ)である、請求項18に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項21】
免疫グロブリンFc領域がIgG4 Fc領域であることを特徴とする、請求項18に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項22】
免疫グロブリンFc領域がヒト脱糖化IgG4 Fc領域であることを特徴とする、請求項21に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項23】
非ペプチド性重合体の反応基がアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基およびスクシンイミド誘導体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項24】
スクシンイミド誘導体がスクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルカルボキシメチル、ヒドロキシスクシンイミジルおよびスクシンイミジルカーボネートよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項23に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項25】
非ペプチド性重合体が両末端に反応性アルデヒド基を有することを特徴とする、請求項23に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項26】
非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項25に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項27】
(1)両末端にアルデヒド、マレイミド、およびスクシンイミド誘導体の中から選ばれる反応基を有する非ペプチド性重合体をインスリン分泌ペプチドのアミン基またはチオール基に共有結合させる段階と、
(2)前記(1)の反応混合物から、N末端のアミノ酸以外のアミノ酸に非ペプチド性重合体が共有結合されたインスリン分泌ペプチドを含む結合体を分離する段階と、
(3)分離された結合体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結することにより、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドと結合されたタンパク質結合体を生成する段階とを含む、インスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項28】
(1)両末端にアルデヒド反応基を有する非ペプチド性重合体をインスリン分泌ペプチドのリシン残基にpH7.5以上で共有結合させる段階と、
(2)前記(1)の反応混合物から、リシン残基に非ペプチド性重合体が共有結合されたインスリン分泌ペプチドを含む結合体を分離する段階と、
(3)分離された結合体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結することにより、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドと結合sれたタンパク質結合体を生成する段階とを含む、インスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項29】
前記インスリン分泌ペプチドは、エキセンディン−4のN末端アミン基が除去されたデス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4誘導体であることを特徴とする、請求項27または28に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項30】
前記インスリン分泌ペプチドは、エキセンディン−4のN末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン−4誘導体であることを特徴とする、請求項27または28に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項31】
前記インスリン分泌ペプチドは、エキセンディン−4の一番目のアミン酸(ヒスチジン)のアルファカーボンが除去されたエキセンディン−4誘導体であることを特徴とする、請求項27または28に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項32】
前記非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項27または28に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか1項のタンパク質結合体を含む、糖尿、肥満、急性冠症候群または多嚢胞性卵巣症候群治療用薬学的組成物。
【請求項1】
インスリン分泌ペプチドと免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる非ペプチド性重合体によって互いに連結され、前記インスリン分泌ペプチドのN末端以外のアミノ酸残基に前記非ペプチド性重合体が結合されたことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項2】
前記インスリン分泌ペプチドは、GLP−1、エキセンディン−3、エキセンディン−4、これらのアゴニスト(agonist)、これらの誘導体(derivative)、これらの断片(fragment)、これらの変異体(variant)、およびこれらの組み合わせからよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項3】
前記誘導体は、天然型インスリン分泌ペプチドのN末端アミン基の置換、除去および変更の中から選ばれたいずれか一つの方法によって製造され、インスリン分泌機能を保有するペプチド、これらの断片およびこれらの変異体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項4】
前記誘導体は、天然型インスリン分泌ペプチドのアルファカーボンおよびN末端アミン基が除去されたペプチド、これらの断片およびこれらの変異体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項5】
N末端アミン基の置換、除去または変更によって製造されたエキセンディン−4誘導体と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項6】
前記エキセンディン−4誘導体は、エキセンディン−4のN末端アミン基が除去されたエキセンディン−4誘導体、エキセンディン−4のN末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン−4誘導体、エキセンディン−4のN末端アミン基がジメチル基に変更されたエキセンディン−4誘導体、インスリン分泌ペプチドのうちエキセンディン−4の一番目のアミノ酸(ヒスチジン)のアルファ炭素を除去したエキセンディン−4誘導体、エキセンディン−4の12番目のアミノ酸(リシン)がセリンで置換されたエキセンディン−4誘導体、およびエキセンディン−4の12番目のアミノ酸(リシン)がアルギニンで置換されたエキセンディン−4誘導体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項7】
エキセンディン−4のN末端アミン基が除去されたデス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項8】
エキセンディン−4のN末端アミン基が除去されたデス−アミノ−ヒスチジルエキセンディン−4とアルブミンとが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項9】
エキセンディン−4のN末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン−4と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項10】
エキセンディン−4のN末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン−4とアルブミンとが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項11】
エキセンディン−4のN末端ヒスチジン残基のアルファ炭素およびアルファ炭素に結合されたN末端アミン基が除去されたエキセンディン−4誘導体と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項12】
エキセンディン−4のN末端ヒスチジン残基のアルファ炭素およびアルファ炭素に結合したN末端アミン基が除去されたエキセンディン−4誘導体とアルブミンとが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される非ペプチド性重合体によって互いに連結され、天然型エキセンディン−4結合体より血糖低下効果および生体内持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項13】
下記化学式1のアミノ酸配列を有する、インスリン分泌ペプチド誘導体。
R1−X−Y−Z−R2 ……<化学式1>
(式中、R1はヒスチジン、デス−アミノ−ヒスチジル基、N−ジメチル−ヒスチジル基、ベータ−ヒドロキシイミダゾプロピル基および4−イミダゾアセチル基よりなる群から選択され、
R2は−NH2、−OHおyび−Lysよりなる群から選択され、
XはGly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−R3−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−R4−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser、Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−R3−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−R4−Asn−Gly−Gly、およびSer−Asp−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−R3−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−R4−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Serよりなる群から選択され、
R3はLys、SerおよびArgよりなる群から選択され、
R4はLys、SerおよびArgよりなる群から選択され、
Yはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカリド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸およびこれらの組み合わせよりなる群から選択され、
Zは免疫グロブリンFc領域である。)
【請求項14】
非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドのアミン基またはチオール基に結合されたことを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項15】
免疫グロブリンFc領域が脱糖化(deglycosylated)されることを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項16】
免疫グロブリンFc領域が、CH1、CH2、C--H3およびCH4ドメインよりなる群から選ばれる1つ〜4つのドメインからなることを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項17】
免疫グロブリンFc領域がヒンジ領域をさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項18】
免疫グロブリンFc領域が、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMよりなる群から選ばれる免疫グロブリン由来のFc領域であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項19】
免疫グロブリンFc領域のそれぞれのドメインが、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMよりなる群から選ばれる免疫グロブリンに由来の相異なる起源を有するドメインハイブリッドであることを特徴とする、請求項18に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項20】
免疫グロブリンFc領域が、同一起源の単鎖免疫グロブリンからなる二量体または多量体(免疫グロブリンFcの組み合わせ)である、請求項18に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項21】
免疫グロブリンFc領域がIgG4 Fc領域であることを特徴とする、請求項18に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項22】
免疫グロブリンFc領域がヒト脱糖化IgG4 Fc領域であることを特徴とする、請求項21に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項23】
非ペプチド性重合体の反応基がアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基およびスクシンイミド誘導体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項24】
スクシンイミド誘導体がスクシンイミジルプロピオネート、スクシンイミジルカルボキシメチル、ヒドロキシスクシンイミジルおよびスクシンイミジルカーボネートよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項23に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項25】
非ペプチド性重合体が両末端に反応性アルデヒド基を有することを特徴とする、請求項23に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項26】
非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項25に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項27】
(1)両末端にアルデヒド、マレイミド、およびスクシンイミド誘導体の中から選ばれる反応基を有する非ペプチド性重合体をインスリン分泌ペプチドのアミン基またはチオール基に共有結合させる段階と、
(2)前記(1)の反応混合物から、N末端のアミノ酸以外のアミノ酸に非ペプチド性重合体が共有結合されたインスリン分泌ペプチドを含む結合体を分離する段階と、
(3)分離された結合体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結することにより、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドと結合されたタンパク質結合体を生成する段階とを含む、インスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項28】
(1)両末端にアルデヒド反応基を有する非ペプチド性重合体をインスリン分泌ペプチドのリシン残基にpH7.5以上で共有結合させる段階と、
(2)前記(1)の反応混合物から、リシン残基に非ペプチド性重合体が共有結合されたインスリン分泌ペプチドを含む結合体を分離する段階と、
(3)分離された結合体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結することにより、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドと結合sれたタンパク質結合体を生成する段階とを含む、インスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項29】
前記インスリン分泌ペプチドは、エキセンディン−4のN末端アミン基が除去されたデス−アミノ−ヒスチジル(des-amino-histidyl)エキセンディン−4誘導体であることを特徴とする、請求項27または28に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項30】
前記インスリン分泌ペプチドは、エキセンディン−4のN末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン−4誘導体であることを特徴とする、請求項27または28に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項31】
前記インスリン分泌ペプチドは、エキセンディン−4の一番目のアミン酸(ヒスチジン)のアルファカーボンが除去されたエキセンディン−4誘導体であることを特徴とする、請求項27または28に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項32】
前記非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項27または28に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか1項のタンパク質結合体を含む、糖尿、肥満、急性冠症候群または多嚢胞性卵巣症候群治療用薬学的組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−515677(P2010−515677A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544800(P2009−544800)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000061
【国際公開番号】WO2008/082274
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508047691)ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】HANMI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】893−5, Hajeo−ri, Paltan−myeon, Hwaseong−si, Gyeonggi−do, 445−813, Republic of Korea
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000061
【国際公開番号】WO2008/082274
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508047691)ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】HANMI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】893−5, Hajeo−ri, Paltan−myeon, Hwaseong−si, Gyeonggi−do, 445−813, Republic of Korea
【Fターム(参考)】
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