説明

免疫原性が抑制されたBMP−7変異体

本発明は、抑制された免疫原性を有する骨形成タンパク質に関する。特に、本発明は、野生型BMP−7のアミノ酸配列の変化によって免疫原性を抑制するよう改変された、ヒトBMP−7に関する。本発明は、野生型ヒトBMP−7と比較して、その免疫原性を抑制するように改変したBMP−7、例えばヒト組換えBMP−7に関する。より具体的には、本発明によるBMP−7タンパク質を、潜在的な免疫原性エピトープを除去するように改変する。結果として、本発明のBMP−7タンパク質は、野生型BMP−7と比較して、改善した生物学的性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年12月22日に出願された米国仮特許出願第61/289,220号の利益を主張し、この米国仮特許出願の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、免疫原性を抑制するように改変した骨形成タンパク質−7(BMP−7)、および免疫原性を抑制するようにBMP−7を改変するための方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
背景
骨成長を誘導し得るタンパク質である、骨形成タンパク質−1(OP−1)としても公知のBMP−7は、様々な軟骨および骨の疾患および欠損を処置するために有用である。例えば、組換えヒトBMP−7は、世界中で40,000人以上の患者を処置するために使用されてきた。しかし、臨床結果は、組換えヒトBMP−7は、いくつかの臨床適応症において高度に免疫原性であることを明らかにした。言い換えると、上記組換えタンパク質は、患者において免疫反応を刺激し、上記患者にBMP−7に対する抗体を作らせ得る。これらの抗体はまた、上記患者によって内因性に産生されたBMP−7の機能を阻害し、患者の健康にとって潜在的な長期的結果を引き起こし得る。よって、当該分野において、患者においてその有効性を改善し、そして有害作用を抑制するために、免疫原性を抑制し、一方その生物学的活性および臨床的に関連のある骨形成の性質を維持する、組換えBMP−7を含む、BMP−7に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本発明は、野生型ヒトBMP−7と比較して、その免疫原性を抑制するように改変したBMP−7、例えばヒト組換えBMP−7に関する。より具体的には、本発明によるBMP−7タンパク質を、潜在的な免疫原性エピトープを除去するように改変する。結果として、本発明のBMP−7タンパク質は、野生型BMP−7と比較して、改善した生物学的性質を有する。
【0005】
1つの局面によって、本発明は、成熟ヒトBMP−7と少なくとも90%の配列同一性を有する、変異体BMP−7タンパク質を含む。上記変異体BMP−7は、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、または8個以上の、成熟ヒトBMP−7に対応する以下の位置で、置換を含む:G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105。さらなる実施態様において、上記変異体タンパク質は、成熟ヒトBMP−7と少なくとも95%の同一性を有する。
【0006】
さらなる実施態様において、上記置換は、1つ以上の以下のものである:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70G/D、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。さらなる実施態様において、上記変異体は、BMP−7活性を示す。
【0007】
別の局面において、本発明は、本発明の変異体BMP−7タンパク質をコードする核酸に関する。例えば、上記核酸はDNAまたはRNAである。
【0008】
別の局面において、本発明は、本発明の変異体BMP−7タンパク質をコードする核酸を含む、組換え発現ベクターに関する。
【0009】
さらに別の局面において、本発明は、本発明の変異体BMP−7タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを含む細胞に関する。上記細胞は、1つの実施態様において原核生物であり得る、または別の実施態様において真核生物であり得る。
【0010】
さらなる局面において、本発明は、本発明の変異体BMP−7タンパク質および薬学的キャリアを含む薬学的組成物に関する。
【0011】
さらなる局面によって、本発明は、患者における骨格障害を処置する方法に関する。上記方法は、上記患者に、治療的に有効な量の本発明の変異体BMP−7タンパク質を投与することを必要とする。
【0012】
またさらなる局面によって、本発明は、ヒトBMP−7タンパク質の免疫原性を抑制する方法に関する。上記方法は、ヒトBMP−7の免疫原性エピトープを同定すること、およびBMP−7のアミノ酸配列において1つ以上の置換を工学技術で作製することによって、ヒトBMP−7のアミノ酸配列においてエピトープを改変して、改変アミノ酸配列を作製することを必要とする。1つ以上の置換が、成熟ヒトBMP−7に対応する、1つ以上の位置G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105において起こる。1つの実施態様において、上記ヒトBMP−7は組換体である。さらなる実施態様において、上記1つ以上の置換は、G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70G/D、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105Vのいずれか1つ以上である。さらなる実施態様において、上記方法は、適当な発現システムにおいて、上記改変されたアミノ酸配列によってコードされるタンパク質を発現する工程、および上記タンパク質を精製する工程を含み得る。上記タンパク質を、1つの実施態様において真核細胞において発現し得る、または別の実施態様において原核細胞において発現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、それぞれ15アミノ酸長であり、そして5または10アミノ酸のいずれかで重複する、ヒトBMP−7の成熟領域の配列全体をカバーする、18個のペプチドを示す。
【図2】図2は、ヒトBMP−7の成熟領域全体に関連する、これらのペプチド間の重複を示す、18個のペプチドの概略図である。
【図3】図3は、患者血清サンプル由来の、非中和抗BMP−7抗体に対する、図1に示した18個のペプチドの、ELISAにおける結合の結果を示す棒グラフである。(その棒は、左から右に、11266−、111694+、111945+、111665+、および1B12/12G3+である)。
【図4】図4は、患者血清サンプル由来の、中和抗BMP−7抗体に対する、図1に示した18個のペプチドの、ELISAにおける結合の結果を示す棒グラフである。(その棒は、左から右に、1113791−、113113+、113331+、113756+、112956+、113757+、113766+、111694+、および1B12/12G3+である)。
【図5】図5Aは、BMP−2、4、5、6、および9における対応する領域とともに、ペプチド9(図1に示すような)に対応するBMP−7の部分の整列である。図5Bは、BMP−2、4、5、6、および9における対応する領域とともに、ペプチド13(図1に示すような)に対応するBMP−7の部分の整列である。
【図6】図6は、成熟ヒトBMP−7の配列である(配列番号1)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
組換えヒトBMP−7は、いくつかの臨床適応症において高度に免疫原性であることが示された。例えば、BMP−7は、OP−1(登録商標)PuttyまたはOP−1(登録商標)Implant(Stryker Biotech Hopkinton、MA)の一部として患者に移植された場合、いくらかの患者において、組換えヒトBMP−7に対する抗体を生成することによって、免疫反応を示すようになる。これは、BMP−7処置の有効性を減少させ、そして副作用を引き起こし得る。
【0015】
よって、本発明は、野生型BMP−7と比較して、抑制された免疫原性を有する変異体BMP−7タンパク質に関する。本発明はまた、抑制された免疫原性を有するBMP−7変異体を製造および使用する方法も含む。本発明によって、潜在的な免疫原性エピトープを含むBMP−7部分のアミノ酸残基を改変することによって、免疫原性を抑制する。よって、本発明によって改変したBMP−7タンパク質は、その生物学的活性を維持するが、その野生型BMP−7対応物より実質的に免疫原性が低い。例えば、BMP−7の免疫原性の性質を、本発明によって除去または実質的に抑制する。よって、そのような変異体BMP−7タンパク質は、患者、例えばヒト患者に投与した場合に、免疫原性が低いことが予期される。
【0016】
骨形成タンパク質
骨形成タンパク質(BMP)は、TGF−βスーパーファミリーに属する。上記TGF−βスーパーファミリータンパク質は、6個の保存されたシステイン残基によって特徴付けられるサイトカインである。ヒトゲノムは、TGF−βスーパーファミリータンパク質をコードする、約42個のオープンリーディングフレームを含む。上記TGF−βスーパーファミリータンパク質を、配列類似性およびそれらが活性化する特異的シグナル伝達経路に基づいて、少なくともBMPサブファミリーおよびTGF−βサブファミリーに分けることができる。上記BMPサブファミリーは、BMP−2、BMP−3(オステオゲニン)、BMP−3b(GDF−10)、BMP−4(BMP−2b)、BMP−5、BMP−6、BMP−7(骨形成タンパク質−1またはOP−1)、BMP−8(OP−2)、BMP−8B(OP−3)、BMP−9(GDF−2)、BMP−10、BMP−11(GDF−11)、BMP−12(GDF−7)、BMP−13(GDF−6、CDMP−2)、BMP−15(GDF−9)、BMP−16、GDF−1、GDF−3、GDF−5(CDMP−1、MP−52)、およびGDF−8(ミオスタチン)を含むがこれに限らない。さらに、ヒト集団の異なるメンバーの間で、BMP配列の対立遺伝子変異が存在し、そして現在までに発見および特徴付けされたBMPの間で種の変異が存在する。本明細書中で使用される場合、「BMPサブファミリー」、「BMP」、「BMPリガンド」およびその文法的同等物は、明確に他に示さなければ、BMPサブファミリーのメンバーを指す。
【0017】
これらの配列、およびその化学的ならびに物理的性質を開示する出版物は、以下のものを含む:
【0018】
【数1】

【0019】
上記の出版物は、本明細書中で参考文献に組込まれる。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「TGF−βスーパーファミリーメンバー」または「TGF−βスーパーファミリータンパク質」は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリーのメンバーとして当業者に公知であるタンパク質を意味する。構造的に、そのようなタンパク質は、疎水性のシグナル配列、数百アミノ酸のN末端プロ領域、および可変N末端領域、および保存された6個または7個のシステイン骨格を有する特徴的なシステインモチーフを有する約100アミノ酸を含む、高度に保存されたC末端領域を含む成熟ドメインを含む大きな前駆体ポリペプチド鎖として発現するホモまたはヘテロダイマーである。これらの構造的に関連するタンパク質は、様々な発生のイベントに関与するとして同定された。
【0021】
「形態形成タンパク質」という用語は、真の形態形成活性を有する、タンパク質のTGF−βスーパーファミリーに属するタンパク質を指す。例えば、そのようなタンパク質は、前駆細胞を誘導して、増殖させ得る、および/または、局所環境の指示(cue)に依存して、軟骨、骨、腱、靭帯、神経または他の型の分化組織の形成に至る分化経路の一連のイベントを開始し得る。従って、本発明によって有用な形態形成タンパク質は、異なる環境において異なる挙動をし得る。ある実施態様において、本発明の形態形成タンパク質は、ホモダイマー種またはヘテロダイマー種であり得る。
【0022】
「骨形成タンパク質(OP)」という用語は、前駆細胞を誘導して軟骨および/または骨も形成し得る、形態形成タンパク質を指す。上記骨は、膜内の骨または軟骨内の骨であり得る。ほとんどの骨形成タンパク質は、BMPサブファミリーのメンバーであり、そして従ってBMPでもある。しかし、逆は真ではない。本発明によって、DNA配列相同性またはアミノ酸配列同一性によって同定されたBMPはまた、骨形成タンパク質であるために、機能的な生物検定において明白な骨形成または軟骨形成活性を有さなければならない。適当な生物検定は、当該分野で周知である;特に有用な生物検定は、異所性骨形成アッセイである(例えば、米国特許第5,011,691号;米国特許第5,266,683号を参照のこと)。
【0023】
構造的に、BMPはダイマーのシステインノットタンパク質(cystein knot protein)である。BMPの各モノマーは、複数の分子内ジスルフィド結合を含む。さらなる分子間ジスルフィド結合が、ほとんどのBMPにおいてダイマー化を媒介する。BMPは、ホモダイマーを形成し得る。いくつかのBMPはヘテロダイマーを形成し得る。BMPは、長いプロドメイン、1つ以上の切断部位、および成熟ドメインを含む、プロタンパク質として発現する。上記プロドメインは、正しいフォールディングおよびBMPのプロセシングを助けると考えられる。さらに、全てではないがいくつかのBMPにおいて、上記プロドメインは上記成熟ドメインに非共有結合的に結合し得、そしてインヒビターとして作用し得る(例えばThiesら、(2001)Growth Factors 18:251−259)。
【0024】
BMPは、天然には長いプロドメイン、1つ以上の切断部位、および成熟ドメインを含むプロタンパク質として発現する。次いでこのプロタンパク質が、細胞機構によって処理されて、ダイマーの成熟BMP分子を生じる。上記プロドメインは、正しいフォールディングおよびBMPのプロセシングを助けると考えられる。さらに、全てではないがいくつかのBMPにおいて、上記プロドメインは上記成熟ドメインに非共有結合的に結合し得、そしてシャペロンおよびインヒビターとして作用し得る(例えばThiesら、(2001)Growth Factors 18:251−259)。
【0025】
BMPシグナル伝達は、BMPダイマーが、2つのI型および2つのII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体に結合したときに開始される。I型受容体は、ALK−1、ALK−2(ActRlaまたはActRIとも呼ばれる)、ALK−3(BMPRIaとも呼ばれる)、およびALK−6(BMPRIbとも呼ばれる)を含むがこれに限らない。II型受容体は、ActRIIa(ActRIIとも呼ばれる)、ActRIIb、およびBMPRIIを含むがこれに限らない。ヒトゲノムは、7個のI型および5個のII型受容体を含む、受容体セリン/スレオニンキナーゼファミリーの12個のメンバーを含み、それらは全て、TGF−βシグナル伝達に関与する(Manningら、2002、Science、298:1912−1934、その開示は本明細書によって参考文献に組込まれる)。BMPが結合した後、上記II型受容体は、上記I型受容体をリン酸化し、そのI型受容体は転写因子のSmadファミリーのメンバーをリン酸化し、そしてそのSmadは核に移動して、そして一群の遺伝子の発現を活性化する。
【0026】
BMPはまた、BAMBI(BMPおよびアクチビン膜結合インヒビター)、BMPER(BMP結合内皮細胞前駆体由来制御因子)、セルベラス(Cerberus)、コルディン(cordin)、コルディン様、ダン(Dan)、ダンテ(Dante)、フォリスタチン(follistatin)、フォリスタチン関連タンパク質(FSRP)、エクトディン(ectodin)、グレムリン(gremlin)、ノギン(noggin)、ダンおよびセルベラス(cerberus)に関連するタンパク質(PRDC)、スクレロスチン(sclerostin)、スクレロスチン様、および子宮感作関連遺伝子−1(uterine sensitization−associated gene−1)(USAG−1)を含むがこれに限らない、インヒビター、可溶性受容体、およびデコイ受容体と相互作用する。さらに、BMPは、補助受容体と相互作用し得、例えばBMP−2およびBMP−4は、補助受容体DRAGON(Samadら、(2005)J.Biol.Chem.280:14122−14129)、およびヘパリン硫酸およびヘパリンのような細胞外マトリックス成分(Irieら、(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.308:858−865)に結合する。
【0027】
本明細書中で企図されるように、「BMP」という用語は、DNA相同性およびアミノ酸配列同一性に基づいて規定される、TGF−βスーパーファミリーのタンパク質の、BMPサブファミリーに属するタンパク質を指す。本発明によって、タンパク質は、上記BMPサブファミリーを特徴づける、保存されたC末端システインリッチドメイン内で、公知のBMPサブファミリーメンバーと少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有する場合、上記BMPサブファミリーに属する。BMPサブファミリーのメンバーは、全体的に50%未満のDNA配列同一性またはアミノ酸配列同一性を有し得る。本明細書中で使用される場合、「BMP」という用語はさらに、天然に存在する骨形成タンパク質のアミノ酸配列変異体、ドメイン交換変異体、および短縮化および活性断片であるタンパク質、およびBMP−2/7;BMP−4/7;BMP−2/6;BMP−2/5;BMP−4/7;BMP−4/5;およびBMP−4/6ヘテロダイマーのような、2つの異なるモノマーBMPペプチドから形成される、ヘテロダイマータンパク質を指す。適当なBMP変異体およびヘテロダイマーは、US2006/0235204;WO07/087053;WO05/097825;WO00/020607;WO00/020591;WO00/020449;WO05/113585;WO95/016034およびWO93/009229において記載するものを含む。
【0028】
1つの実施態様によって、本発明の方法によって生じた、BMP−7変異体のようなBMP変異体は、対応する野生型BMPタンパク質配列と、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を維持する。
【0029】
1つの実施態様によって、本発明の方法によって生じた、BMP−7変異体のようなBMP変異体は、対応する野生型BMPタンパク質配列のC末端領域の保存されたシステインドメインと、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を維持する。
【0030】
「対応する野生型タンパク質」によって、その改変BMPまたは変異体BMPの野生型バージョンを意味する。例えば、上記改変BMPまたは変異体BMPが改変BMP−7または変異体BMP−7であるなら、対応する野生型BMPは、野生型BMP−7である。
【0031】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の同一性パーセントを決定するために、その配列を、最適な比較の目的のために整列する(例えば、2番目のアミノ酸配列または核酸配列との最適な整列のために、最初のアミノ酸配列または核酸配列の配列中に、ギャップを導入し得る)。2つの配列間の同一性パーセントは、上記配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、相同性%=同一の位置の数/全部の位置の数×100)。2つの配列間の相同性パーセントの決定を、数学的アルゴリズムを用いて達成し得る。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの、好ましい、制限しない例は、KarlinおよびAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−77におけるように改変された、KarlinおよびAltschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−68のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組込まれている。BLASTヌクレオチドサーチを、NBLASTプログラム、スコア=100、語長(wordlength)=12で行い得る。BLASTタンパク質サーチを、XBLASTプログラム、スコア=50、語長=3で行い得る。比較の目的のためにギャップを挿入した整列を得るために、Altschulら(1997)Nucleic Acids Research 25(17):3389−3402において記載されるように、Gapped BLASTを利用し得る。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用し得る。
【0032】
変異体BMP−7
本発明は、BMP−7の免疫原性を抑制するための方法を提供する。上記免疫原性を抑制または排除するために、野生型BMP−7と異なる変異体BMP−7タンパク質を作製する。本発明の実施態様によって、これらの変異体は、BMP−7の免疫原性エピトープの1つ以上のアミノ酸が改変されている点で、野生型BMP−7と異なる。本発明の実施態様によって、BMP−7の潜在的な免疫原性エピトープを、本明細書中で記載されたように、および/または当該分野で公知の他の方法によって同定し、そして上記エピトープを改変して上記エピトープの免疫原性効果を抑制または排除する。次いで、上記エピトープの免疫原性効果を抑制または排除するために、標準的な遺伝子操作手順によって、上記エピトープ領域において置換、欠失、または挿入のようなアミノ酸の改変を行う。本発明の1つの実施態様によって、本発明のBMP−7変異体は、その生物活性を維持するが、野生型BMP−7と比較して、免疫原性が抑制されている、または実質的に抑制されている、または排除されている。
【0033】
本発明の1つの実施態様によって、エピトープを含むと同定されたBMP−7の領域を、上記エピトープを除去するために、別のBMPの対応する領域由来のアミノ酸配列で置き換える。例えば、1つの実施態様において、成熟ヒトBMP−7の残基61−75の配列を、BMP−2(GYHAFYCHGECPFPL(配列番号20)−図5Aの残基319−333)、BMP−4(GYQAFYCHGDCPFPL(配列番号21)−図5Aの残基331−345)、BMP−5(GYAAFYCDGECSFPL(配列番号22)−図5Aの残基376−390)、BMP−6(GYAANYCDGECSFPL(配列番号23)−図5Aの残基435−449)、またはBMP−9(EYEAYECKGGCFFPL(配列番号24)−図5Aの残基350−364)由来の対応するアミノ酸配列で置き換える。別の実施態様において、成熟ヒトBMP−7の残基91−105の配列を、BMP−2(VNSVNSKIPKACCV(配列番号25)−図5Bの残基349−362)、BMP−4(VNSVNSSIPKACCV(配列番号26)−図5Bの残基361−374)、BMP−5(VHLMFPDHVPKPCCA(配列番号27)−図5Bの残基406−420)、BMP−6(VHLMNPEYVPKPCCA(配列番号28)−図5Bの残基465−479)、またはBMP−9(VHLKFPTKVGKACCV(配列番号29)−図5Bの残基380−394)由来の対応するアミノ酸配列で置き換える。
【0034】
本発明の別の実施態様において、エピトープを含むBMP−7の領域中にあると同定された、BMP−7の1つ以上のアミノ酸を、上記エピトープを除去するために、例えば別のBMPのその残基に対応するアミノ酸の置換によって改変する。例えば、図5Aおよび5Bにおいて示すように、2つの推定エピトープ領域(ペプチド9および13)の、他のBMPタンパク質由来の対応する領域との整列を示し、これにより、BMP−7に対する可能性のあるアミノ酸改変が示唆される。
【0035】
本発明の別の実施態様において、エピトープを除去するために、1つ以上の点突然変異をヒトBMP−7に導入する。例えば、1つの実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の1個以上において、置換を有する。
【0036】
別の実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の2個以上において、置換を有する。
【0037】
別の実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の3個以上において、置換を有する。
【0038】
別の実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の4個以上において、置換を有する。
【0039】
別の実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の5個以上において、置換を有する。
【0040】
別の実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の6個以上において、置換を有する。
【0041】
別の実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の7個以上において、置換を有する。
【0042】
別の実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の8個以上において、置換を有する。
【0043】
別の実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の9個以上において、置換を有する。
【0044】
別の実施態様において、BMP−7は、残基G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105の10個以上において、置換を有する。
【0045】
さらなる実施態様において、BMP−7は、1個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0046】
さらなる実施態様において、BMP−7は、2個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0047】
さらなる実施態様において、BMP−7は、3個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0048】
さらなる実施態様において、BMP−7は、4個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0049】
さらなる実施態様において、BMP−7は、5個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0050】
さらなる実施態様において、BMP−7は、6個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0051】
さらなる実施態様において、BMP−7は、7個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0052】
さらなる実施態様において、BMP−7は、8個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0053】
さらなる実施態様において、BMP−7は、9個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0054】
さらなる実施態様において、BMP−7は、10個以上の以下の置換を有する:G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70D/G、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V。
【0055】
本発明の別の局面によって、本発明によるBMP−7変異体は、BMP−7の生物学的活性を維持する。本明細書中で使用される場合、「生物学的活性」という用語は、インビボまたはインビトロで、あらゆる測定可能なBMPの機能を指す。BMPの生物学的活性を測定し得るいくつかの方法を、下記の「実施例」の項で列挙する。1つの実施態様において、本発明のBMP−7変異体は、野生型BMP−7と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%の生物学的活性を有する。例えば、1つの実施態様において、本発明のBMP−7変異体は、ヒト野生型BMP−7または組換えヒト野生型BMP−7と比較して、少なくとも前述の%の生物学的活性の1つを有する。
【0056】
BMP−7変異体の治療的使用
本発明によるBMP−7変異体を、広く様々な状態を処置するために、哺乳類患者、例えばヒトに移植または投与し得る。本発明のBMP−7変異体を、単独でまたは適当なキャリアまたは他の処方剤と組み合わせて、固体、ゲル、またはペースト形態で移植し得る、または上記患者にゲル、ペースト、または液体形態で注射し得る。本発明のBMP−7変異体は、広く様々な状態を処置するために有用である。例えば、本発明のBMP−7変異体を、外傷または炎症性疾患のいずれによって引き起こされたかに関わらず、軟骨の変性を含む骨格障害を処置するために使用し得る。例えば、本発明のBMP−7変異体によって処置可能な疾患は、関節リウマチ(RA)および変形性関節症(OA)、および全身性エリテマトーデス(SLE)および強皮症のような自己免疫疾患を包含する。
【0057】
本発明のBMP−7変異体を、骨格疾患または損傷を処置するために、有効に使用し得る。例えば、上記BMP−7変異体を、開放骨折または閉鎖骨折のような、骨折を処置するために使用し得る。閉鎖骨折の処置のために、上記BMP−7変異体を好ましくはその骨折部位に注入する。開放骨折、重大なサイズの欠損、または持続する偽関節に関して、上記BMP−7変異体を、その骨折部位における外科的移植によって投与し得る。どちらの場合においても、上記BMP−7変異体を、単独で、または骨セメント、リン酸カルシウム材料、ゲル材料またはコラーゲンマトリックスのような、適当なキャリア、マトリックス、または足場(scaffold)と組み合わせて投与し得る。適当なキャリア、マトリックス、および足場は、米国特許第6,919,308;6,949,251;および7,041,641号において開示されるものを含む。
【0058】
好ましい実施態様において、本発明のBMP−7変異体を、軟骨の分解または軟骨の欠損を引き起こす疾患または損傷を処置するために使用し得る。例えば、本発明のBMP−7変異体を、変性椎間円板のような軟骨欠損部位、または腱、靭帯、または半月板を含む他の線維軟骨組織に適用し得る。そのような方法を、米国特許第6,958,149号において述べる。公開されたPCT出願WO05/115438において詳述したように、本発明のBMP−7変異体をまた、膝、肘、臀部、または肩を含む、滑膜性の連結(synovial joint)のような、関節の軟骨内層(cartilage lining)のような、関節軟骨の欠損または変性を処置するために使用し得る。この実施態様において、上記BMP−7変異体を、好ましくは、上記関節の滑膜腔に注入する。別の実施態様において、本発明のBMP−7変異体を、関節における軟骨の欠損または骨軟骨の欠損のような、関節軟骨の欠損部位を処置するために使用する。そのような関節軟骨の欠損は、変形性関節症または関節リウマチのような疾患の進行の結果、または上記関節の損傷のためであり得る。この実施態様において、上記BMP−7変異体を、関節腔に注入し得る、またはそれを外科的に移植し得る。例えば、上記BMP−7変異体を、単独で、または1つ以上のさらなる活性薬剤、支持マトリックスまたは足場、または骨髄間質細胞と組み合わせて、上記欠損内に置くことができる。上記欠損内においたBMP−7変異体を、必要に応じて適当な被膜、例えば筋皮弁またはコラーゲン膜のような生体吸収性膜で覆い得る。
【0059】
当業者によって認識されるように、患者に投与するBMP−7変異体の濃度は、制限無しに、投与する薬剤の投与量および投与経路を含む多くの因子に依存して変動する。投与する薬剤の好ましい投与量はまた、おそらく、疾患の型および程度、組織の喪失または欠損の型および程度、特定の患者の全体的な健康状態、選択した化合物の相対的な生物学的有効性、上記化合物の処方、上記処方における賦形剤の存在および型、および投与経路を含むがこれに限らない、可変物(variable)に依存する。本発明のBMP−7変異体を、個人に提供し得、ここで典型的な用量の範囲は1日あたり体重1kgあたり約10ngから約1gであり、好ましい用量の範囲は体重1kgあたり約0.1mgから100mgであり、そしてより特に好ましい投与量の範囲は、10−1000μg/用量である。特定の好ましい実施態様において、10−1000μgの用量のBMP−7を、変形性関節症に苦しむ個人に投与する。
【0060】
さらに、下記で記載するように、本発明のBMP−7変異体を、非骨格組織の疾患または損傷を処置するために使用し得る。本発明によってさらに企図されるように、BMPは、骨または軟骨とは異なる、哺乳類の様々な組織に関して、骨形態形成および組織形態形成の発生のカスケードを誘導し得る。この形態形成活性は、前駆細胞の増殖および分化を誘導する能力、および骨、軟骨、非ミネラル化骨格または結合組織および他の成人組織の形成をもたらすイベントの進行によって、その分化した表現型を支持および維持する能力を含む。
【0061】
例えば、本発明のBMP−7変異体を、代謝性骨疾患において骨量の喪失を予防する、および/または骨量を増加させる処置のために使用し得る。骨形成タンパク質を用いて、代謝性骨疾患における骨量の喪失を予防する、および/または骨量を増加させる処置のための一般的な方法が、米国特許第5,674,844号において開示され、その開示は、本明細書によって参考文献に組込まれる。本発明のBMP−7変異体を、歯周組織の再生のために使用し得る。骨形成タンパク質を用いた、歯周組織再生のための一般的な方法は、米国特許第5,733,878号において開示され、その開示は本明細書によって参考文献に組込まれる。BMP−7変異体を、肝臓の再生のために使用し得る。骨形成タンパク質を用いた肝臓再生のための一般的な方法は、米国特許第5,849,686号において開示され、その開示は本明細書によって参考文献に組込まれる。BMP−7変異体を、慢性腎不全の処置のために使用し得る。骨形成タンパク質を用いた、慢性腎不全の処置のための一般的な方法は、米国特許第6,861,404号において開示され、その開示は本明細書によって参考文献に組込まれる。本発明のBMP−7を、中枢神経系の虚血または外傷後の機能回復を増強するために使用し得る。骨形成タンパク質を用いた、中枢神経系の虚血または外傷後の機能回復を増強するための一般的な方法は、米国特許第6,407,060号において開示され、その開示は本明細書によって参考文献に組込まれる。本発明のBMP−7変異体を、樹状突起の成長を誘導するために使用し得る。骨形成タンパク質を用いた、樹状突起の成長を誘導するための一般的な方法は、米国特許第6,949,505号において開示され、その開示は本明細書によって参考文献に組込まれる。BMP−7変異体を、神経細胞接着を誘導するために使用し得る。骨形成タンパク質を用いた、神経細胞接着を誘導するための一般的な方法は、米国特許第6,800,603号において開示され、その開示は本明細書によって参考文献に組込まれる。BMP−7変異体を、パーキンソン病の処置および予防のために使用し得る。骨形成タンパク質を用いた、パーキンソン病の処置および予防のための一般的な方法は、米国特許第6,506,729号において開示され、その開示は本明細書によって参考文献に組込まれる。
【0062】
別の例として、BMP−7変異体をまた、象牙質形成を誘導するために使用し得る。現在まで、損傷に対する歯髄組織の予測不能な反応が、歯科医学における基本的な臨床的問題である。さらに別の例として、BMP−7変異体は、中枢神経系(CNS)の修復に対して再生効果を誘導し得、それを、ラット脳穿刺モデルを用いて評価し得る。
【実施例】
【0063】
実施例1:ELISAによる免疫原性エピトープの同定
BMP−7の潜在的な線状T細胞エピトープを同定するために、野生型ヒトBMP−7の成熟領域の配列全体をカバーするペプチドを合成した(Synthetic Biomolecules San Diego、CA)。それぞれ15アミノ酸の18個のペプチドを構築した。各ペプチドは、BMP−7のうちの近接する領域(contiguous region)をカバーするペプチドと比較して、5から10アミノ酸の重複を有していた。上記18個のペプチドそれぞれの配列を、図1に示し、その様々なペプチド間の重複を、図2に示す。
【0064】
上記18個のペプチドを、ELISAアッセイにおいて試験して、その抗BMP−7抗体に対する結合を決定した。上記18個のペプチドそれぞれを、96穴高結合マイクロタイタープレートの個々の列に、5μg/mLの濃度で個々にコーティングした。3枚のプレートを使用し、プレート1はペプチド1〜6、プレート2はペプチド7〜12、およびプレート3はペプチド13〜18を有していた。合成的に作製した陰性コントロールペプチドを、各プレートの列7にコーティングし、陰性コントロールとした。BMP−7を、各プレートの列8にコーティングし、陽性コントロールとした。
【0065】
コーティングしたプレートを、室温で一晩インキュベートした。次の日、そのプレートをBBS/Tで6回洗浄した。次いで上記プレートを、200μl/ウェルのBBS/Tミルクでブロッキングし、そして37℃で2時間インキュベートした。そのプレートを再びBBS/Tで6回洗浄した。
【0066】
BMP−7に対する中和抗体に関して陽性である7人の患者の血清サンプルおよびBMP−7に対する非中和抗体に関して陽性である3人の患者の血清サンプルを、BBS/Tミルク中で1:80に希釈し、そして3枚のプレート全ての2つの隣接する行(column)に加えた(100μl/ウェルで2組試験した)。上記患者の血清サンプルを、OP−1 Putty(Stryker Biotech Hopkinton、MA)で処置した患者から得た。例えば、患者1の血清を、全てのプレートの行1〜2に加え、患者2の血清を、全てのプレートの行3〜4に加える等した。抗BMP−7抗体に関して陰性である1人の患者の血清サンプルを、陰性コントロールとして使用した。モノクローナル抗BMP−7抗体、1B12および12G3の組み合わせを、陽性コントロールとして使用した。
【0067】
患者の血清サンプルを、ペプチドをコーティングしたプレートに加え、そして37℃で1時間インキュベートした。上記プレートを、BBS/Tで6回洗浄した。100μlのヤギ抗ヒトIgHRP(Southern Biotech)を、BBS/Tミルク中1:40,000の希釈で、各ウェルに加えた。上記プレートを、続いて37℃で1時間インキュベートし、そして次いでBBS/Tミルクで6回洗浄した。100μlのTMB基質(BioFX)を、顕色のために各ウェルに加えた。
【0068】
100μlの0.18M HSO硫酸停止溶液を、各プレートに加えた。上記プレートを、次いでM5 SpectraMax(Molecular Devices)に置き、そして450nmで吸光度を測定した。
【0069】
患者血清由来の非中和抗BMP−7抗体の、上記18個のペプチドに対する結合の結果を、図3に示し、そして患者血清由来の中和抗BMP−7抗体の、その18個のペプチドに対する結合を図4に示す。図3に示すように、ペプチド13は、上記3つの陽性患者の血清サンプル(111694、111945、および111665)由来の非中和抗BMP−7抗体に高い結合親和性を示し、一方陰性の患者血清(111266)は、予測されたように、結合親和性を示さなかった。これは、ペプチド13はこれらの非中和抗BMP−7抗体に対する線状結合エピトープを含むことを示す。
【0070】
図4に示すように、ペプチド13は、再びいくつかの上記陽性患者サンプル由来の中和抗BMP−7抗体に対して高い結合親和性を示し、このことは、ペプチド13は中和抗BMP−7抗体の線状結合エピトープを含むことを示唆する。さらに、図4のデータは、抗BMP−7抗体の、ペプチド13に含まれる線状エピトープへの結合を確認するだけでなく、中和抗体は、ペプチド1および9に含まれる線状エピトープにもいくらか結合親和性を有し得ることも示唆する。ペプチド5に関してもいくらかの結合が観察された。
【0071】
実施例2.エピトープを変化させることによって、抑制された免疫原性を有するBMP−7タンパク質を工学技術で作製する(engineer)
ペプチド9は、アミノ酸配列GYAAYYCEGECAFPL(配列番号10)を有し、一方ペプチド13は、アミノ酸配列VHFINPETVPKPACCA(配列番号14)を有する。しかし、実施例1において示すように、エピトープはペプチド9およびペプチド13に対応するBMP−7の領域に存在する。よって、これらの配列の免疫原性を抑制または排除するために、ペプチド9およびペプチド13の残基に対応する残基において、BMP−7のアミノ酸を変化させる。
【0072】
ペプチド9および13の免疫原性に関与する特定の残基を決定するために、2つの連続するアミノ酸を、それぞれアラニン残基に改変した、いくつかのペプチドアナログを生成する。2つの連続するアラニン残基による、ペプチド9および13の全ての並べ替え(permutation)が生じるように十分なペプチドを生成する。次いでそのペプチドアナログを、ペプチド9および13の抗BMP−7抗体に結合する能力と比較して、抗BMP−7抗体に結合するそれらの能力に関してアッセイする。抗BMP−7抗体への結合が減少したペプチドアナログを同定し、そして、ペプチド9の残基1、3、5、6、8、10、または12(成熟ヒトBMP−7(配列番号1)の残基61、63、65、66、68、70、および72に対応する)の1つ以上、および/またはペプチド13の残基2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、または15(成熟ヒトBMP−7(配列番号1)の残基92、93、94、95、96、97、98、99、100、102、または105に対応する)の1つ以上が、上記抗BMP−7抗体への結合に関与し、そしてそれによって組換えヒトBMP−7の免疫原性を引き起こすことが決定される。よって、BMP−7の免疫原性を引き起こすと決定されたそれらの残基を、例えば置換によって改変して、抑制された免役原性を有するBMP−7変異体を作製する。
【0073】
本明細書中で教示されるアミノ酸置換のような、本発明による変化を、標準的な組換え遺伝子操作技術によって、BMP−7の遺伝子配列に導入する。次いでその変異体BMP−7を、標準的なプロトコールによって、原核生物または真核生物発現システムにおいて発現する。次いでその発現した変異体BMP−7を、標準的なプロトコールによって精製する。
【0074】
実施例3.BMP−7変異体は、アルカリホスファターゼ活性を誘導する
本発明のBMP−7変異体の、ラット骨肉腫細胞系統ROS17/2.8におけるアルカリホスファターゼ(ALP)活性を誘導する能力をアッセイする。本発明の変異体BMP−7を、野生型BMP−7を陽性コントロールとして使用して、3組で9点における用量反応性を試験する。特に、ROS17/2.8細胞を、96穴組織培養プレートにまく。BMP−7変異体を、6000、2000、666、222、74、24、8、2、および0.9ng/mlの投与量で上記細胞に加え、そして48時間の期間インキュベートする。続いて細胞を溶解し、そしてその増殖因子のALP活性を誘導する効力を、上記サンプルの平均吸光度(OD)の非線形回帰から得られるEC50に基づいて評価する。試験した全てのBMP−7変異体が、明確なアルカリホスファターゼ活性を示し、このことは、上記変異体がその生物学的活性を維持していることを示す。
【0075】
実施例4.BMP−7変異体は、野生型と比較して、抑制されたまたは排除された免役原性を有する
本発明の実施態様によるBMP−7変異体を、その免疫原性を決定するために霊長類において試験する。真核生物で産生したBMP−7変異体を、コントロールとして投与した野生型ヒトBMP−7(真核生物で産生した)と共に試験する。典型的な実験において、アカゲザルに、40μg/kgの上記タンパク質サンプルを、1日1回、皮下に4週間注射する。規則的な間隔で、血清をその動物から得て、そしてBMP−7に対する抗体の血清濃度を、ヒトIL−7コーティング96穴プレートを用いて、ELISAによって測定する。典型的には、各血清サンプルの段階希釈物を、3組で各ウェルに2時間加え、PBS中0.05%のTween(Tween20)で洗浄し、そしてPBS中1%のBSA/1%のヤギ血清でブロックする。各サンプルに、西洋ワサビペルオキシダーゼ−結合抗アカゲザルIgGを加え(サンプル緩衝液中1:60,000)、37℃で2時間インキュベートし、そして上記プレートをPBS中0.05%のTweenで8回洗浄する。次いでサンプルを、比色定量基質溶液OPD(o−フェニレンジアミン二塩酸塩)を用いて、490nmにおけるODを測定し、650nmにおけるバックグラウンドの測定値を引くことによって、アッセイする。
【0076】
真核生物で産生した野生型ヒトBMP−7は、高い抗BMP−7抗体力価を生じることが見出される。対照的に、真核生物で産生された変異体ヒトBMP−7の抗体力価は、有意に低い抗BMP−7抗体の力価を生じる。
【0077】
実施例6.変異体BMP−7は、ヒト患者において、低い濃度で骨および軟骨の増殖を誘導するのに有効である。
【0078】
2人のヒト患者が、それぞれ腰椎(lambar spine)において後外側の癒合(fusion)をもたらす処置を必要とする。1人の患者において、ウシ骨コラーゲンおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのマトリックス(OP−1(登録商標)Putty、Stryker Biotech、Hopkinton、MAと類似の)中1.5mgの変異体BMP−7を、癒合が必要な部位の上記腰椎(the spine)の各側に、外科的に移植する。そのマトリックスを、移植の前に、滅菌食塩水(0.9%)溶液で再構成する。他方の患者において、ウシ骨コラーゲンおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのマトリックス(OP−1(登録商標)Putty、Stryker Biotech、Hopkinton、MAと類似の)中3.5mgの野生型BMP−7を、癒合が必要な部位の上記腰椎の各側に、外科的に移植する。
【0079】
数ヶ月の最初の期間の後、各患者の脊椎を、例えばX線によって、X線撮影で検査して、上記癒合における骨増殖の存在を決定する。変異体BMP−7を投与された上記患者において、骨の増殖が、癒合部位において検出される。しかし、癒合は完全ではない。野生型BMP−7を投与された上記患者において、変異体BMP−7を投与された上記患者と同じレベルの骨増殖が検出される。再び、椎骨の癒合は完全ではない。
【0080】
数ヶ月の最初の期間と同じ、数ヶ月の2番目の期間の後、各患者の脊椎を再び、例えばX線によってX線撮影で検査する。各患者において、移植部位における椎骨の癒合は完全である。
【0081】
よって、変異体BMP−7を、同じ速度の骨増殖を促進しながら、対応する野生型BMPよりも低い濃度で投与し得る。これは、BMP−7変異体に対する免疫反応の減少に起因し得、それによって、BMP−7が免疫系の反応に対して失われないので、同じレベルの骨増殖を達成するために、野生型BMP−7と比較して、より低い濃度の変異体BMP−7を投与することを可能にする。
【0082】
別の例において、2人のヒト患者がそれぞれ、腰椎の後外側癒合をもたらすための処置を必要とする。1人の患者において、ウシ骨コラーゲンおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのマトリックス(OP−1(登録商標)Putty、Stryker Biotech、Hopkinton、MAと類似の)中3.5mgの変異体BMP−7を、癒合が必要な部位において、上記腰椎の各側に、外科的に移植する。そのマトリックスを、移植の前に、滅菌食塩水(0.9%)溶液で再構成する。他方の患者において、ウシ骨コラーゲンおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのマトリックス(OP−1(登録商標)Putty、Stryker Biotech、Hopkinton、MAと類似の)中3.5mgの野生型BMP−7を、癒合が必要な部位において、上記腰椎の各側に、外科的に移植する。
【0083】
数ヶ月の最初の期間の後、各患者の脊椎を、例えばX線によって、X線撮影で検査して、癒合における骨増殖の存在を決定する。変異体BMP−7を投与された上記患者において、骨の増殖が、その癒合部位において検出され、そしてその椎骨の癒合は完全である。対照的に、野生型BMP−7を投与された上記患者において、移植部位において骨の増殖が検出される。しかし、上記椎骨の癒合は不完全である。
【0084】
数ヶ月の最初の期間と同じ、数ヶ月の2番目の期間の後、野生型BMP−7を投与された患者の脊椎を再び、例えばX線によってX線撮影で検査する。移植部位における椎骨の癒合は完全である。
【0085】
よって、変異体BMP−7を、加速した速度の骨増殖を達成するために、対応する野生型BMPと同じ濃度で投与し得る。これは、BMP−7変異体に対して開始される免疫反応の低減に起因し得、それによって、野生型よりも一層多くの変異体BMP−7が骨増殖を促進することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成熟ヒトBMP−7(配列番号1)と少なくとも90%の配列同一性を含む、BMP−7変異体であって、該BMP−7変異体は、成熟ヒトBMP−7に対応する、以下:
G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105のうちの1つ以上の位置において置換を含む、BMP−7変異体。
【請求項2】
前記置換は、以下:
G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70G/D、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105V、のうちの一つ以上である、請求項1に記載のBMP−7変異体。
【請求項3】
前記変異体は、BMP−7活性を示す、請求項1に記載のBMP−7変異体。
【請求項4】
前記変異体は、成熟ヒトBMP−7と少なくとも95%の配列同一性を含む、請求項1に記載のBMP−7変異体。
【請求項5】
請求項1に記載のBMP−7変異体をコードする核酸。
【請求項6】
請求項1に記載の核酸を含む、組換え発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ベクターを含む、細胞。
【請求項8】
前記細胞は、原核生物細胞である、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
前記細胞は、真核生物細胞である、請求項7に記載の細胞。
【請求項10】
請求項1に記載のBMP−7変異体および薬学的キャリアを含む、組成物。
【請求項11】
患者における骨格障害を処置する方法であって、治療的に有効な量の請求項1に記載のBMP−7変異体を該患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項12】
ヒトBMP−7タンパク質の免疫原性を抑制する方法であって、
ヒトBMP−7のアミノ酸配列において免疫原性エピトープを同定する工程;および
BMP−7のアミノ酸配列において1つ以上の置換を工学技術で作製する工程であって、ここで、該1つ以上の置換が、成熟ヒトBMP−7に対応する、G61、A63、Y65、Y66、E68、E70、A72、H92、F93、I94、N95、P96、E97、T98、V99、P100、P102、またはA105のうちの1つ以上の位置に起こって、改変されたアミノ酸配列を生じる工程、を含む、方法。
【請求項13】
前記1つ以上の置換が、以下:
G61E、A63E/Q/H、Y65F/N、Y66E、E68D/K/H、E70G/D、A72S/F/P、H92N、F93N/L/S、I94M/K/S/V、N95V/F、P96S/N、E97S/T/D/K、T98K/I/S/Y/H、V99I、P100G、P102A、またはA105Vのうちのいずれか1つ以上である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
適切な発現システムにおいて前記改変されたアミノ酸配列によってコードされるタンパク質を発現する工程、および該タンパク質を精製する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質を発現する工程が、真核生物細胞中で起こる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質を発現する工程が、原核生物細胞中で起こる、請求項12に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−514811(P2013−514811A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546131(P2012−546131)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061437
【国際公開番号】WO2011/087768
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】