免疫抑制された患者のためのワクチン免疫治療
【課題】有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を投与する工程により癌を治療する免疫治療方法であって、当該天然サイトカイン混合物は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、方法を提供すること。
【解決手段】有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を投与する工程により癌を治療する免疫治療方法であって、当該天然サイトカイン混合物は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、方法。
【解決手段】有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を投与する工程により癌を治療する免疫治療方法であって、当該天然サイトカイン混合物は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.技術分野)
本発明は、癌患者のワクチン治療に関する。より具体的には、本発明は、内因性および外因性の両腫瘍のペプチドまたはタンパク質に対して免疫抑制を有するワクチン免疫治療に関し、該治療は癌患者に免疫する。
【背景技術】
【0002】
(2.背景技術)
ヒトの癌は抗原を有し、宿主の免疫系に反応する場合、腫瘍の緩解をもたらすことが次第に明らかになっている。これらの抗原は血清学的および細胞学的な両免疫アプローチによって定義されている。これらはB細胞およびT細胞の両エピトープの定義につながる(Sahin Uら、Curr Opin Immunol 9:709−715,1997; Van der Eynde,B,ら. Curr Opin Immunol 9:684−693,1997; Wang RF,ら.,Immunologic Reviews 170:85−100,1999)。これらの結果に基づいて、腫瘍の緩解を誘導することが癌免疫治療の目標となっている。しかしながら、従来、成功した試みは散発的であり、頻度および規模において一般に少ない。
【0003】
癌患者に免疫する試みの基本的な問題は、担癌状態が腫瘍および宿主の両免疫系障害に由来する免疫抑制機構に関連することであり(Kavanaugh D Yら、Hematol−Oncol Clinics of North Amer 10(4):927−951,1996)、それにより、免疫は困難であり現在のところ一貫した基準で不可能である。免疫の抑制または低下は免疫系の応答能の低下を伴う。このような抑制は薬物または疾患に誘導され得る。該状態は、治療による薬物誘導性、AIDSなどのウイルス誘導性、または癌などの疾態誘導性であり得る。この状態の免疫系は事実上停止する。
【0004】
種々の腫瘍免疫戦略が開発されてきた。しかしながら、これらの戦略の全ては複雑であり、感染病に用いられる従来の免疫戦略から著しく逸脱する(Weber J. Tumor,Medscape Anthology 3:2,2000)。一つのこのような腫瘍免疫戦略は、キーホール・リンペット・ヘモシアニンと共役し、且つデトックス(Detox)(R)マイコバクテリア・アジュバントおよび低用量シクロホスファミドと共に投与されるシアリルTN多糖ムチン抗原のセラトープ(Theratope)(R)を含む(Maclean G Dら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol 19(4):309−316,1996)。しかしながら、転移性乳癌および卵巣癌をもつ患者における該ワクチンの使用は、低い割合の患者に重大な臨床反応を引き起こしている。重大な反応は50%を上回る腫瘍の減少を意味する。
【0005】
パピローマ・ウイルス・ペプチド16を発現する遺伝子用の発現ベクターとしてアデノウイルス構築物を用いて、遺伝子治療も試みられており、該ペプチド16は免疫用にまたは子宮頸癌の患者に用いられており、低い割合の患者に重大な臨床反応を引き起こしている(Borysiewickz,L Kら、Lancet 347:1524−1527,1996)。
【0006】
樹状細胞が媒介する治療も試みられており、樹状細胞は前立腺特異的抗原(PSA)のオリゴペプチド断片を用いてパルスされた。前立腺特異的膜抗原(PSMA)は転移性前立腺癌の患者に用いられており、重大な臨床反応が低い割合の患者で起きている(Sanda M Gら、Urology 52:2,1999; Murphy GPら、The prostate. 38:43−78,1999)。
【0007】
さらに、自己腫瘍は悪性黒色腫の癌患者を免疫するために低用量のシクロホスファミドおよびBCGとともに用いられてきた。しかしながら、臨床反応はほとんど報告されなかった(Mastrangelo M Jら、Seminars in Oncology 23(6):773−781,1996)。試みられた他の戦略は種々のワクチン・アジュバントとともにMAGEの使用を含んだ。また、これは悪性黒色腫の患者に有るか無しかの反応を生じた(personal communication Thierry Boon)。
【0008】
Doyleら(米国特許第5,503,841号;第5,800,810号;第6,060,068号;第5,643,565号;第5,100,664号)のいくつかの特許は、インターロイキン−2(IL−2)を用いて患者の免疫応答を増強する方法を開示する。この方法は、免疫原性であることが知られる抗原を用いて、感染病および主として感染作用に応じた用途を開示する。限られた適用性が証明された。上記で開示されるように、癌の治療は異なるアプローチを要することが知られる。今日まで、IL−2を用いた治療は、腎癌および悪性黒色腫の二つの癌において僅かな効果を示した(20%未満の応答速度)。これは、一般的に、扁平上皮細胞癌、頭頸部癌、および子宮頸癌ならびに前立腺癌に無効であると考えられる。従って、これらの用途に認可されていない。故に、癌治療において、Doyleらの特許の方法を小ペプチドの使用に適用することは当業者内ではないだろう。
【0009】
健康な患者における複合構造および高分子量の既知の「古典的」抗原を用いた予防に対し免疫抑制患者(一般的に不成功)における腫瘍抗原またはペプチド(一般的に不成功)を用いた治療(一般的に不成功)を対比することは重要である。前者は容易であり、本発明者らの現在のウイルス・ワクチンはそれらの効能を証明する。後者は30年の真剣な努力にもかかわらず日常には不可能に近い。
【0010】
本発明は、樹状細胞により処理され提示される内因性ペプチド、または樹状細胞が調製されT細胞に効果的にそれらを提示できる環境(リンパ節)に内因的に投与された内因性ペプチドを用いて免疫することに関するが、これに限定されないことが重要である。この目標は多数の免疫学者により克服できないと考えられている。ペプチドは非常に小さすぎて有効な免疫原ではなく、それらの半減期は短く、それらはしばしば非突然変異自己抗原であり、該抗原に対して患者は免疫学的に寛容であり、応答を得ることは自己免疫を誘導することと等しい。
【0011】
上記戦略のいくつかにおいて、腫瘍関連抗原に対する細胞性免疫および/または腫瘍免疫が誘導された(Weber J. Tumor,Medscape Anthology 3:2,2000; Maclean G Dら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol 19(4):309−316,1996; Borysiewickz L Kら、Lancet 347:1524−1527,1996; Sanda M Gら、Urology 52:2,1999)。これは特に腫瘍緩解と非常に関連する。それにもかかわらず、このような治療の成功率はごく僅かであり一貫性がない(<30%)。
【0012】
従って、癌患者に免疫する一貫した効果的な方法を開発することは有用であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
本発明に従って、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法が提供される。さらに、本発明は有効量のシクロホスファミド(CY)および有効量のインドメタシン(INDO)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。種々の抗癌治療法も提供され、該方法において、有効量のCYは、インドメタシン(INDO)、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、有効量の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とともに投与する。より具体的には、本発明は、有効量のINDOおよび有効量のIFN−δ、IL−2、IL−1、およびTNF−αと組み合わせて有効量のCYを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。さらに、本発明は、有効量のINDOおよび有効量の組換えIL−2、組換えIFN−δ、組換えTFN−α、および組換えIL−1と組み合わせて有効量のCYを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。本発明は、本明細書に記載するNCMと組み合わせて有効量のCYおよびINDOを投与することにより相乗的な抗癌治療をさらに提供する。その上、本発明は、リンパ節の未熟な樹状細胞の分化および成熟を促進し、結果として生じる成熟樹状細胞によるT細胞への抗原の提示を可能にして抗原に対するT細胞の免疫を獲得し、ならびに転移の進行を妨げることにより、抗転移治療法を提供する。または、本発明は、リンパ節での免疫の障害を取り除き(unblock)、ならびに全身免疫を生成することにより、抗転移法を提供する。本発明は、本明細書に記載するNCMと組み合わせて有効量のCYおよびINDOを適用することにより、皮膚試験および樹状細胞(DC)の前治療法も提供する。本発明は、本明細書に記載するNCMと組み合わせて有効量のCYおよびINDOを適用することにより、洞組織球増殖症または陰性NCM皮膚試験により特徴付けられる単球欠損を治療する方法をさらに提供する。最後に、本発明は、内因性または外因性の腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物および方法を提供する。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を投与する工程により癌を治療する免疫治療方法であって、当該天然サイトカイン混合物は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、方法。
・(項目2)
上記投与する工程は、75単位〜500単位のIL−2当量の投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目3)
上記投与する工程は、リンパ節に流れ出るリンパ管への上記NCMの両側投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目4)
上記投与する工程は、上記NCMの片側投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目5)
上記投与する工程は、少なくとも1日間〜10日間の上記NCMの投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目6)
上記投与する工程は、約20日間までの上記NCMの投与としてさらに定義される、項目5に記載の方法。
・(項目7)
上記投与する工程は、約10日間の上記NCMの両側投与としてさらに定義される、項目6に記載の方法。
・(項目8)
上記投与する工程は、手術または放射線治療の前の上記NCMの投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目9)
上記投与する工程は、腫瘍の再発の間の上記NCMの投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目10)
有効量のシクロホスファミド(CY)を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
・(項目11)
インドメタシン(INDO)、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される有効量の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
・(項目12)
有効量のシクロホスファミド(CY)および有効量のインドメタシン(INDO)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法。
・(項目13)
有効量のシクロホスファミド(CY)および有効量の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与することによる相乗的な抗癌治療方法であって、当該NSAIDは、インドメタシン(INDO)、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択される、方法。
・(項目14)
有効量のインドメタシン(INDO)ならびに有効量のIFN−δ、IL−2、IL−1、およびTNF−αと組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法。
・(項目15)
有効量のインドメタシン(INDO)ならびに有効量の組換えIL−2、組換えIFN−δ、組換えTFN−α、および組換えIL−1と組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法。
・(項目16)
IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む天然サイトカイン混合物(NCM)と組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)およびインドメタシン(INDO)を投与する工程を包含する、相乗的な抗癌治療。
・(項目17)
有効量のシクロホスファミド(CY)、有効量のインドメタシン(INDO)、ならびに有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を含む相乗的な抗癌組成物であって、当該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、組成物。
・(項目18)
抗転移治療法であって、当該方法は、リンパ節の未熟な樹状細胞の分化および成熟を促進する工程;結果として生じる成熟樹状細胞によるT細胞への抗原の提示を可能にして当該抗原に対する当該T細胞の免疫を獲得する工程;ならびに転移の進行を妨げる工程を包含する、方法。
・(項目19)
リンパ節での免疫の障害を取り除く工程、および全身免疫を生成する工程ことによる、抗転移方法。
・(項目20)
転移の進行を妨げる工程をさらに包含する、項目19に記載の抗転移方法。
・(項目21)
治療結果を予測するための診断用皮膚試験として天然サイトカイン混合物を用いる方法であって、当該方法は、天然サイトカイン混合物(NCM)を皮内投与工程、および24時間以内に当該NCMに対する応答を測定することにより、ここで、陰性の皮膚試験は、当該NCMに対する不応答を示し、当該陰性の皮膚試験は、放射線治療の有無を問わず、患者が手術に反応できないことを予測する、方法。
・(項目22)
IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む天然サイトカイン混合物(NCM)と組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)およびインドメタシン(INDO)を適用するこ
とによる樹状細胞(DC)の前治療法。
・(項目23)
洞組織球増殖症または陰性天然サイトカイン混合物(NCM)皮膚試験により特徴付けられる単球欠損を治療する方法であって、当該方法は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含むNCMと組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)およびインドメタシン(INDO)を適用することによる、方法。
・(項目24)
腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、当該方法は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を投与することによる、方法。
・(項目25)
上記腫瘍抗原は、内因性腫瘍抗原および外因性腫瘍抗原から基本的になる群より選択される、項目24に記載の方法。
・(項目26)
有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)および有効量のシクロホスファミド(CY)を投与することにより腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、当該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、方法。
・(項目27)
上記腫瘍抗原は、内因性腫瘍抗原および外因性腫瘍抗原から基本的になる群より選択される、項目26に記載の方法。
・(項目28)
有効量の天然サイトカイン混合物(NCM);有効量のシクロホスファミド(CY);および有効量のインドメタシン(INDO)を投与することにより腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、当該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、方法。
・(項目29)
上記腫瘍抗原は、内因性腫瘍抗原および外因性腫瘍抗原から基本的になる群より選択される、項目28に記載の方法。
・(項目30)
内因性腫瘍抗原または外因性腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、当該組成物は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を含む、組成物。
・(項目31)
有効量のシクロホスファミド(CY)をさらに含む、項目30に記載の組成物。
・(項目32)
有効量のインドメタシン(INDO)を含む、項目31に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の他の利点は、容易に理解され、添付図面に関して考察される際に下記の詳細な説明を参照することにより良く理解されるようになる。
【図1】図1は、対照、および扁平上皮細胞頭頸部癌(H&NSCC)の癌対照またはIRX−2(NCM)処理群のリンパ節の大きさを示す棒グラフである。
【図2】図2は対照ならびに頭頸部扁平上皮癌の対照およびNCM(IRX−2)処理患者の二つの棒グラフを示し、一つはT細胞領域を示し、二番目は密度を示す。
【図3】図3は3治療群のB細胞領域および濾胞(follicle)を示す二つの棒グラフを示す。
【図4】図4は3治療群の他細胞および洞組織球増殖症の比較を示す。
【図5】図5は節B&Tおよび癌B&Tの適合プロットを示すグラフである。
【図6】図6は48月齢の処理患者の生存率を図示するグラフである。
【図7】図7は微応答者および無応答者と比較した完全応答者および部分応答者の生存を図示するグラフである。
【図8】図8は生存に対する病理指標の関連を図示するグラフである。
【図9】図9は生存に対するリンパ球浸潤の関係を示すグラフである。
【図10A】図10は24月齢の処理患者の生存率(用量反応)を図示するグラフであり、「x」は約100 IU/mLのIL−2に等しい。
【図10B】図10は24月齢の処理患者の生存率(用量反応)を図示するグラフであり、「x」は約100 IU/mLのIL−2に等しい。
【図11A】図11は成熟樹状細胞および活性化樹状細胞に及ぼすNCM治療の効果を図示する樹状細胞グラフである。
【図11B】図11は成熟樹状細胞および活性化樹状細胞に及ぼすNCM治療の効果を図示する樹状細胞グラフである。
【図12A】図12は共役体およびアジュバントで免疫されたマウスのペプチド特異的DTH応答を図示するチャートであり、該応答は各マウス(ドット)および平均(棒)についてmmの腫脹として示され、アジュバントはx軸で列挙され、未投薬(naive)は免疫されていないマウスを示し、他の全マウスは、指示しない限り(KLH)、オブアルブミン−PSMAペプチド共役体で免疫される。
【図12B】図12は共役体およびアジュバントで免疫されたマウスのペプチド特異的DTH応答を図示するチャートであり、該応答は各マウス(ドット)および平均(棒)についてmmの腫脹として示され、アジュバントはx軸で列挙され、未投薬(naive)は免疫されていないマウスを示し、他の全マウスは、指示しない限り(KLH)、オブアルブミン−PSMAペプチド共役体で免疫される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
一般的に、本発明は、患者が免疫抑制されるワクチン免疫治療を利用して患者を治療する方法を提供する。免疫抑制されるとは、患者が細胞性免疫の低下により新しい抗原に対する応答能力を損ねたことを意味する。より具体的には、血中において、Tリンパ球数が減少し、ならびに/またはこれらの細胞の機能が、例えばPHA増殖検定により示されるように、損なわれる。
「アジュバント」とは、特定抗原に対する免疫応答を増強する能力をもつ組成物を意味する。有効であるために、アジュバントは抗原の部位にまたは該部位の近くに送達されなければならない。このような能力は免疫媒介性防御における有意な増加により明示される。免疫の増強は抗原に対して生じる抗体の力価の有意な増加(通常10倍を上回る)により通常明示される。細胞性免疫の増強は、陽性皮膚試験、細胞障害性T細胞検定、δIFNもしくはIL−2についてのELISPOT検定、または腫瘍内へのT細胞浸潤により測定できる(下記に記載の通り)。
【0016】
「腫瘍関連抗原」とは、類似のタンパク質もしくはペプチド(これらは生体外での樹状細胞のパルシングにより機能することが以前に示された)または他の等価な抗原を意味する。これは、PSMAペプチド、MAGEペプチド(Sahin Uら、Curr Opin Immunol 9:709−715,1997;Wang RFら、Immunologic Reviews 170:85−100,1999)、パピローマ・ウイルス・ペプチド(E6およびE7)、MAGE断片、NY ESO−1、または他の類似抗原を含み得るが、これらに限定されない。以前、これらの抗原は、それらの大きさ、即ち、それらが小さすぎること、またはそれらが免疫原性(即ち、自己抗原)を有さないと以前考えられていたことのいずれかに基づいて、患者を治療するのに有効であるとみなされていなかった。
【0017】
「NCM」とは、米国特許第5,632,983号および第5,698,194号に定義され示されるように、天然のサイトカイン混合物として意味される。NCMは組換えサイトカインを含み得る。簡潔には、NCMは、4−アミノキノロン抗生物質の常在下で、ならびに好ましい実施形態においてPHAである有糸分裂促進剤の常在またはパルス存在とともに調製される。
【0018】
Tリンパ球減少症(低い血中T細胞濃度)は細胞性免疫不全の診断特徴であり、既存の胸腺細胞の機能障害が他の特徴である。Tリンパ球減少症を治療するための一般に承認される(臨床的に認可される)方法はない。骨髄移植(+−胸腺移植)は重症複合免疫不全の症例(SCID−先天性、放射線照射または化学療法が誘発した)で用いられてきた。組換えIL2はAIDSで試行されており、多大な毒性により若干の効果がある。
【0019】
Tリンパ球減少症を治すことを試みて新規なT細胞を作製するための二つの方法がある。一つの方法は、rIL−2治療のように、末梢に既存するT細胞、即ち記憶T細胞(CD45RO)(血液、リンパ節および脾臓)を増やす。他方は、骨髄に由来する前駆体から新規なT細胞への胸腺での処理を伴う。これは生来小児で起きるが成人では起きない。これらの新規な細胞は最近の「胸腺エミグレス(emigres)」と呼ばれ、「未感作」T細胞、即ちCD45RAの表面マーカーを有する。NCM治療(およびサイモシンα1)はこれらの新規なT細胞の産生および増殖する先在の記憶T細胞をもたらす。より具体的には、本発明は免疫付与に関し、抗原に対する免疫応答を提供し、これは内因的または外因的のいずれかで投与される。過去において、このような抗原は免疫原性であると信じられてきたかもしれないが、本発明で用いられる他の抗原は非免疫原性であると以前考えられていたかもしれない。任意の抗原が本発明で使用できる。このような抗原の例は、MAGE−1タンパク質からEADPTGHSY(黒色腫)、MAGE−3からEVDPIGHLY(肺癌)、MAGE−3からEVDPIGHLY(肺癌)、およびその他多数である(Belloneら、Immunology Today,Vol. 20,No.10,p 457−462(1999)を参照)。本発明は一般に抗原処理に作用することを対象とするため、任意の抗原が本発明で使用できる。本発明は腫瘍抗原ならびにペプチドおよび/または糖質を含むハプテンのあらゆる形態にまでおよび得る。本発明は、HIV+患者のAIDSウイルス・ワクチン;状態を管理することが困難な他;腎移植;高齢者等のような適用領域までおよび得る。
【0020】
本発明は、このような免疫が以前では不可能と考えられた被験体において免疫を獲得するために、いくつかの一般的な導出方法工程を利用する。より具体的には、本発明は未感作T細胞の産生を誘導することにより免疫機能低下を克服する方法を提供する。「未感作」T細胞という用語は、新たに産生されたT細胞を成体でも意味することを意味し、これらのT細胞はまだ抗原に暴露されていない。この工程の該T細胞はまだ非特異的であるが、腫瘍ペプチドなどの抗原に暴露された成熟樹状細胞による提示の際に特異的になることができる。従って、本発明は新規なT細胞を補充または作製する。これは一般に天然サイトカイン混合物(NCM)を投与することにより遂行される。NCMは、IL1、IL2、IL6、IL8、IL10、IL12、δIFN、TNFα、G−CSFおよびGM−CSF、これらの組換え体、ならびにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。これらの構成物質の量および割合は以下に詳述する。好ましくは、約150〜600単位のIL2がNCMに含まれる。
【0021】
任意の実施形態において、NCMは、腫瘍または治療される他の持続性病変などの病変に近い(regional to)リンパ節に流出するリンパ腺の周辺に注射される。腫瘍周辺の注射は僅かな応答、進行にさえ関係するため禁忌である。十(10)日の注射計画が最適であり、二十(20)日の注射プロトコルは、臨床的に有効であるが、癌へのリンパ浸潤により測定されるように、TH1応答を低減し、あまり望ましくないTH2応答へ移行する傾向がある。両側注射も有効である。根治的頸部廓清が起きた場合、対側注射が有効である。
【0022】
種々の癌病変により惹起されるようなT細胞の内因性抑制を遮断することが好ましい。遮断は低用量のシクロホスファミド(CY)および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の共送達によりもたらされる。最適なNSAIDはインドメタシン(INDO)である。INDOは最も効果的なNSAIDであるが、最も有毒でもあるといえるだろう。Celebrex(登録商標)およびVioxx(登録商標)のCoxII NSAIDSもあまり効果がない。イブプロフェンは有効であったが、組織学的応答はTH1媒介応答よりむしろTH2に特徴的であった。これはあまり望ましくない。NSAIDSの副作用はプロトンインヒビターおよびプロスタグランジンE類似体で積極的に処理されることである。亜鉛および総合ビタミンはT細胞免疫を回復する助けになる有用な剤である。反抑制およびNCMなしの亜鉛による治療は効果がない。
【0023】
要約すれば、最短計画はCYおよびNSAIDを用いた反抑制と併用してNCMによる外リンパ治療である。代替計画は、亜鉛およびビタミンをさらに含み、可能ならセレンの添加を含む先述の計画である。亜鉛の好ましい用量は50mgから75mgである。標準的な総合ビタミンが投与できる。亜鉛は市販のグルコン酸塩であり得る。
【0024】
臨床応答を最大にするためならびに生存率の最大増加のため、リンパ球浸潤の程度および種類は重要である。90:10比のリンパ球:顆粒球またはマクロファージの浸潤が最適である。T細胞および/またはB細胞の浸潤は広範性で活発であり末梢性でないことが好ましい。20%未満の軽度の浸潤は頑健な臨床応答と関連しない。組織学的試料における腫瘍の減少および断片化は良好な応答を反映する際に好ましい。良好な応答の鍵となるリンパ節の変化は少なくとも五つ(5)の局面を含む。リンパ節の腫脹ならびに腫瘍が誘導するサイズ縮小の逆転だけでなく正常と比較してサイズの全体的増加が好ましい。増加したT細胞およびB細胞の領域は免疫を示す。洞組織球増殖症(SH)は未熟な樹状細胞の蓄積であると考えられており、該細胞は、腫瘍抗原を取り込み処理するが、成熟できず、細胞毒素T細胞およびB細胞に至るTH1およびTH2に有効な細胞を刺激できる未感作T細胞に対してこれらの腫瘍ペプチドを提示できない。SHの逆転が好ましい。
【0025】
従って、本発明は、局所リンパ節における未熟な樹状細胞の分化および成熟を促進し、故に結果として生じる成熟樹状細胞による小ペプチド、一般に長さ9アミノ酸のT細胞に対する提示を可能にし、T細胞の免疫を獲得することにより、局所リンパ節での免疫の障害を取り除くことを提供する。さらに、成熟樹状細胞の誘導が獲得される。最後に、内因性腫瘍ペプチドを提示する樹状細胞に応答できる非感作T細胞の誘導の存在下でTリンパ球産生患者の末梢血Tリンパ球の動員が望ましい(Sprentら、Science,Vol 293,July 13,2001,pgs 245−248を参照)。
【0026】
上記に鑑みて、本発明の重要な機構特性は有効なペプチド抗原の提示をもたらす樹状細胞のインビボ成熟である。下記に示す例に基づいて、CD45 RA陽性の分化決定されていない未感作T細胞の増加が見出された。抗原とともに、これはT細胞およびB細胞のクローン性増殖を導き、患者に免疫を付与する。結果として生じる血行性散布による腫瘍内への浸潤は頑健な腫瘍の崩壊をもたらす。結果は、下記のデータで見出されるように、免疫記憶による生存の増加である(上記で引用されたSprentらを参照)。
【0027】
外因的に供給される合成または抽出の腫瘍ペプチド(上記で引用されたBellone,らを参照)が前感作または共感作された局所または末梢のリンパ節に送達され、B細胞の有無を問わず、腫瘍抗原に特異的なT細胞を生じ得ることが論理的に予測される。三つの例が以下に示される。上記に鑑みて、NCMおよび他の剤の作用が任意の腫瘍抗原(合成および内因性のペプチドおよびタンパク質)に関して有用であると結論できる。これらのペプチドの多くは正常な免疫原でなく、成熟した活性化樹状細胞により提示された場合のみ、未感作T細胞を免疫するのに有効であろう。従って、免疫T細胞の出現は、樹状細胞が適切に生成されたまたは機能できたことを事実上意味する。また、事実上、樹状細胞の活性化および成熟は、癌免疫不全、ならびにアネルギーおよび推定アポトーシスによる数および機能の低減などのT細胞の周知の障害において重要な因子と考えられるはずである。
【0028】
該計画および本発明に従って送達される薬剤により具体的に言及すると、本発明は、癌患者などの患者、および他の病変または抗原が引き起こす病態の患者に免疫するためにNCMを利用する。
【0029】
より具体的には、本発明は、NCMおよび腫瘍関連抗原を含む有効量の組成物を投与することにより、癌に対する癌患者の免疫応答を増強する方法を利用する。NCMはアジュバントとして作用し免疫応答を引き起こす。腫瘍関連抗原は、癌患者の局所節に存在する内因的に処理された腫瘍ペプチド調製品であり得る、或いは該節に若しくは該節の近くに外因的に投与された腫瘍抗原調製品と併用され得る。腫瘍ペプチドおよび抗原は、ペプチドが免疫原性であると予測されなくとも、本明細書に含まれ、腫瘍関連タンパク質抗原は全長(complete)であるため,より免疫原性である可能性が高い。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明の構成は、低用量のCY、シクロオキシゲナーゼインヒビター、および本発明の組成物の効力をさらに増大することが示された他の類似化合物とともに、以下に定義されるように、NCMおよび腫瘍関連抗原または特異的抗原の投与を含む。
【0031】
本発明に従って、高齢の免疫抑制マウスにおいてT細胞の発達および機能を促進するのに効果的であることが先に示されたNCMが提供される。このNCMを頭頸部癌の免疫抑制患者に投与する際に、NCMで治療された癌患者の血中のTリンパ球の動員がCD2およびCD45 RAの両方をもつ未熟な未感作T細胞の増加を引き起こすことが初めて本適用で証明される。これは、成人が未感作T細胞を生成できることの最初の証明の一つである。先の参照文献:Mackallら,(New England Journal of Medicine(1995),Vol.332,pp.143−149)およびMackall(Stem Cells 2000,Vol. 18. pp. 10−18)による概説は、成人では新規のT細胞を生成できず、小児ではできることを論じ、癌化学療法および/または放射線治療の後にT細胞の補充を試みる問題を論じている。一般に、新規のT細胞は成人で生成されないという定説がある。しかしながら、強化化学療法の骨髄移植後に、新規のT細胞が成人で生成できるという証拠がある。今日まで、分子治療はこれを達成できていないが、HIV感染患者で組換えインターロイキン−2を用いた長期の強化治療でリンパ球数の増加が達成されている。これらは胸腺に由来するT細胞であることが明白に証明されておらず、おそらく既存の末梢T細胞の増殖である。
【0032】
以前、Cortesinaら.は、頭頸部癌の患者で外リンパ的に天然IL−2を使用し、白血球の若干の腫瘍浸潤(Valente Gら、Modern Pathol 3(6):702−708,1990)とともに幾らかの腫瘍の緩解を誘導した(Cortesina Gら、Cancer 62:2482−2485,1988)。治療不可能な再発が起き、該応答は非特異的と呼ばれ、記憶はないため、非免疫性であった(Cortesina Gら、Br J Cancer 69:572−577,1994)。組換えIL−2を用いて初期の観察を確認する反復の試みは実質的に成功しなかった(Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997)。
【0033】
本発明の方法は、局部外リンパ注射または当業者に知られる他の注射でNCMの使用を伴い、免疫治療化合物の十分な局在化を提供する。好ましい実施形態において、該注射は頸部に行われるが、治療されるべき疾患の必要に応じて他の位置に適用できる。この治療は高い割合の患者で臨床的緩解を誘導し、該患者は無再発生存の向上も示した(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 120:395−403,1994; Meneses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454,1998; Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351,2000; Whitesideら、Cancer Res. 53:564−5662,1993)。Whitesideら(Cancer Res. 53:5654−5662,1993)は、頭頸部癌において、組換えインターロイキン−2の腫瘍注射がT細胞リンパ球の浸潤を生じたが、有意な臨床応答はなかったことを観察した。150人以下の患者で外リンパ注射と組み合わせたMultikine(Celsci Website)の腫瘍周辺注射は有意な腫瘍応答を引き起こした。即ち、僅か11人の患者で50%を上回る腫瘍の減少があり、これらの応答割合は本研究で観察される40%の高度の応答と対照的に10%未満であった。その上、彼らは50%の非応答者に言及したが、出願人は僅か20%を観察した。
【0034】
腫瘍周辺および腫瘍内の注射は、初期にNCMプロトコルに対して陽性応答した患者でさえ疾患の進行に関連し得るため、その利点を抹消する。腫瘍周辺注射は従って禁忌であり、本発明の一部として含まれない。これは、腫瘍が免疫の部位でないという解釈につながり、本出願は局所リンパ節が免疫の部位であるという文書を提示する。その後、局所リンパ節の分析は、該局所リンパ節が仮想腫瘍抗原に対する免疫の部位であることが示されたデータを明らかにした(図14〜18)。多数の異なる腫瘍抗原が同定され、このような抗原の存在を考えると、これらが免疫プロトコルで効果的に利用されていないことが過去10年間にわたって難問であった。散発性の肯定的な例が報告されているが、概して、該データは否定的である。抗原提示の問題は過去10年間に集中しており、樹状細胞は腫瘍に由来する小ペプチドの提示において重要な役割として浮上している。DeLaugh and Lotts,Current Opinion In Immunology,2000,Vol.12,pp.583−588; Banchereauら、Annual Reviews of Immunology,(2000),Vol. 18,pp. 767−811;また、Albertら、Nature,Vol. 392,pp.86−89(1998)を参照せよ。
【0035】
簡潔には、腫瘍抗原が適切に抗原性であるために、壊死よりむしろアポトーシスの腫瘍細胞から達しなければならない(Albert,Nature,39 2:86−87,1997)。これらは大組織球の形態を有する未熟な樹状細胞により捕捉される必要がある。これらの未熟樹状細胞は抗原を処理(エンドサイトーシス、食作用および消化)し成熟樹状細胞になり、該成熟細胞はT細胞に提示するためMHCグローブに消化された抗原のペプチド断片(一般に9アミノ酸)を示す。T細胞は、応答するために、MHCグローブおよび種々の共刺激シグナルでそれらに抗原提示しなければならない。
【0036】
Murphyら,1999などの研究者達は、培養で生成した樹状細胞を利用して腫瘍抗原でパルスし、前立腺に特異的な膜抗原ペプチドに対して患者に免疫付与することに僅かな成功を収めた。残念ながら、樹状細胞をパルスするこの研究方法は煩雑であり、むしろ効率が悪い。本発明において、出願人は、リンパ節洞に存在する該細胞が、癌に蓄積し、樹状細胞の系統の細胞であること、および本発明のNCMプロトコルによるインビボ処理後にこれらの細胞が出現し該抗原が最終的にT細胞に対する免疫原になることを示した。これらは次いで該腫瘍に応答できる。このように、本発明の局面は局所リンパ節に微環境を形成でき、有効な抗原の処理および提示を可能にする。病変に往来し腫瘍を破壊できるT細胞に結果を導き出す免疫は、事実上、樹状細胞による適切な抗原処理の証明である。その上、NCMで治療された患者は誰も遠隔転移を発症しなかった。これは臨床的に15%までおよび病理学的に50%まで予測される。これは、単に局所免疫よりむしろ全身免疫が該治療により誘導されたことを示す。これは、先行技術がせいぜい転移性疾患に対して一貫性なく有効であったため、先行技術の組成物を上回る劇的な改善である。本発明の組成物の全身免疫を創出する能力は患者のより有効で効率的な治療を可能にする。さらに、全身応答の規模は、治療の効果を限定することなく且つ毒性なしで、より少ない用量で個体に投与できる。
【0037】
文献(Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997; Hadden JW. Immunology and immunotherapy of breast cancer:An update: Int’l J Immunopharmacol 21:79−101,1999)は、二つの主要な型の癌であるSCCおよび腺癌の両方で、局所リンパ節が、洞組織球増殖症、リンパ枯渇、およびしばしばアネルギー腫瘍関連リンパ球の存在(腫瘍細胞に反応でき、生体外で増殖し、IL−2を用いて回復する)を含む、腫瘍に関係する異常を反映することを示した。次いで、転移とともに、リンパ枯渇および機能低下が起きる。さらに、このような患者の浸潤のない頸部リンパ節は、平均サイズの縮小および頭頸部癌に関連する洞組織球増殖症の増加を示した(図1〜4を参照)。
【0038】
具体的に該組成物に関して、本発明の組成物は天然サイトカイン混合物および内因性または外因性のいずれかの腫瘍関連抗原を含む。その上、低用量のCY、シクロオキシゲナーゼインヒビター、亜鉛、および他の類似化合物は、本発明の組成物の効果をさらに増大することが示された。
【0039】
癌、HIV感染、加齢、腎移植および他のこのような欠損症に関連する細胞性免疫不全の患者を治療するための免疫が本発明の組成物を用いた達成され得る。
【0040】
本発明は多数の実施形態を有する。一つの実施形態において、本発明は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないサイトカインを含む、有効量のNCMを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。上記の方法は75単位から500単位のIL−2当量を投与する工程をさらに含み、該投与はリンパ節に流出するリンパ腺へ両側で行うことが好ましい。または、該投与は片側に行える。NCMは少なくとも1日から10日の間および約20日まで投与される。一つの好ましい実施形態において、投与は約10日間両側で行う。NCMは手術または放射線治療の前に投与できる。または、NCMは腫瘍の再発中に投与できる。NCMに加えて、有効量のCYが投与できる。さらに、有効量のNSAIDが投与でき、該NSAIDは、INDO、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、それらの組み合わせ、および当業者に知られる任意の他の類似NSAIDであり得るが、これらに限らない。
【0041】
本発明の他の実施形態において、有効量のCYおよび有効量のINDOを投与することにより癌を治療する免疫治療方法が提供される。本発明の他の実施形態は有効量のCYおよび有効量のNSAIDを投与することにより相乗的な抗癌治療法を提供する。該NSAIDは、INDO、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、それらの組み合わせ等であり得るが、これらに限らない。
【0042】
本発明の他の実施形態は、有効量のINDOおよび有効量のIFN−δ、IL−2、IL−1、およびTNF−αと組み合わせて、有効量のNCMを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。さらなる実施形態は、有効量のINDO、ならびに有効量の組換えIL−2、組換えIFN−δ、組換えTFN−α、および組換えIL−1と組み合わせて、有効量のNCMを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を対象とする。
【0043】
相乗的な抗癌治療も本発明により提供され、該治療はNCMと組み合わせて有効量のCYおよびINDOを投与する工程を含む。NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、それらの組み合わせ、および当業者に知られる任意の他の類似サイトカインを含み得るが、これらに限定されない。
【0044】
抗転移治療法は本発明の他の実施形態であり、該方法は、リンパ節の未熟な樹状細胞の分化および成熟を促進し、結果として生じる成熟樹状細胞によるT細胞への抗原の提示を可能にして抗原に対するT細胞の免疫を獲得し、ならびに転移の進行を妨げる工程を含む。
【0045】
さらなる実施形態は、リンパ節での免疫の障害を取り除き、ならびに全身免疫を生成する工程を含む抗転移法を提供する。この方法は転移の進行を妨げる工程をさらに含む。
【0046】
本発明の他の実施形態は、NCMを皮内投与し、24時間以内のNCMの応答を測定することにより、治療結果を予測するための診断用皮膚試験として天然サイトカイン混合物を用いる方法を提供する。陰性の皮膚試験は、NCMに対する不応答を示し、放射線治療の有無を問わず、患者が手術に反応できないことを予測する。他の実施形態は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、それらの組み合わせ、および当業者に知られる任意の他の類似サイトカインなどであるが、これらに限定されないサイトカインを含むNCMと組み合わせて、有効量のCYおよびINDOを適用することにより、樹状細胞(DC)の前治療法を提供する。
【0047】
本発明は、NCMと組み合わせて、有効量のCYおよびINDOを適用することにより、洞組織球増殖症または陰性NCM皮膚試験により特徴付けられる単球欠損を治療する方法を提供する。NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、それらの組み合わせ、および当業者に知られる任意の他の類似サイトカインを含むが、これらに限定されない。
【0048】
さらに、本発明は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、種々のサイトカインを含む有効量のNCMを投与することにより、内因性または外因性の腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する種々の方法を提供する。本発明の他の実施形態は、内因性または外因性の腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発するために、上記のNCMおよび有効量のCYを投与することを提供する。本発明のさらなる他の実施形態において、内因性または外因性の腫瘍抗原に対して免疫応答を誘発する方法は、有効量のNCM;有効量のCY;および有効量のINDOを投与することにより行う。該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせなどのサイトカインを含むが、これらに限定されない。
【0049】
本発明は、内因性または外因性の腫瘍抗原に対して免疫応答を誘発する組成物も提供する。該組成物は有効量のNCMを含み、該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせなどのサイトカインを含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、該組成物は有効量のCYを含む。さらなる他の実施形態において、該組成物は有効量のINDOをさらに含む。
【0050】
上記実施形態のいずれについても、下記の投与詳細および/または治療プロトコルが用いられる。
【0051】
(投与および治療プロトコル)
(遺伝子産物/合成抗原の送達)
本発明の化合物(NCMを含む)、および外来性抗原は、各患者の臨床状態、投与の部位および方法、投与の日程計画、患者の年齢、性別、体重を考慮して、最適な免疫を得るために投与および服用される。本明細書の目的上、薬学的に「有効な量」とは、従って、当分野で知られるような検討材料により決定される。該量は、腫瘍の減少、断片化および浸潤の改善、生存率若しくは早期回復、または症状の改善もしくは解消を含むが、これらに限定されない、免疫を達成するのに有効でなければならない。
【0052】
本発明の方法において、本発明の化合物は種々の方法で投与できる。それらは化合物としてまたは薬学的に許容しうる塩として投与され得ることならびに単独でまたは薬学的に許容しうる担体、希釈剤、アジュバントおよび賦形剤と組み合わせた活性成分として投与され得ることに留意すべきである。該化合物は、皮内もしくは皮下に、またはリンパ周辺もしくはリンパ内、節内もしくは脾臓内もしくは筋内、腹腔内、および胸内に投与され得る。該化合物の移植も有用であり得る。治療される患者は温血動物であり、とりわけヒトを含む哺乳動物である。薬学的に許容しうる担体、希釈剤、アジュバントおよび担体、ならびに移植担体は、一般に、本発明の活性成分と反応しない、不活性な非毒性の固体もしくは液体の増量剤、希釈剤、または封入材料を指す。
【0053】
該用量は単回用量または数日の期間にわたる複数回用量であり得る。本発明の化合物を投与する場合、一般に単位用量注射剤形(溶液、懸濁液、乳濁液)で製剤される。注射に適した薬剤形は滅菌の水溶液または分散液および滅菌注射の溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含む。該担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。
【0054】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用により、分散液の場合、必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、保持され得る。綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、または落花生油、およびミリスチン酸イソプロピル等のエステルなどの非水性賦形剤も化合物組成物の溶媒系として使用できる。その上、抗菌性保存剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含む、組成物の安定性、滅菌、および等張性を強化する種々の添加剤も添加できる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などにより、保証され得る。多くの場合において、等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい。注射用薬剤形の持続的吸収は、吸収を遅延する剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用により実施できる。しかしながら、本発明に従って、使用される任意の賦形剤、希釈剤、または添加剤は該化合物と適合しなければならない。
【0055】
ペプチドは重合され得るまたは当分野で周知のヒト血清アルブミンなどの担体と共役され得る。滅菌注射溶液は、本発明を実施する際に使用される化合物を、必要ならば種々の他の成分とともに、必要量の適切な溶媒に加えることにより、調製できる。
【0056】
本発明の薬剤形は、種々の賦形剤、添加剤、および希釈剤などの任意の適合担体を含む注射剤形で患者に投与され得る;または、本発明で使用される化合物は、徐放性皮下移植の剤形で、もしくはモノクローナル抗体、ベクター送達、イオントフォレーゼ、ポリマー・マトリクス、リポソーム、およびマイクロスフェアなどの標的送達系で、患者に非経口投与され得る。本発明に有用な送達系の例は、米国特許第5,225,182号;第5,169,383号;第5,167,616号;第4,959,217号;第4,925,678号;第4,487,603号;第4,486,194号;第4,447,233号;第4,447,224号;第4,439,196号;および第4,475,196号を含む。他の多数のこのような移植、送達系、およびモジュールは当業者に周知である。
【0057】
前記は、自己または定義された通りのタンパク質もしくはペプチドのいずれかの腫瘍抗原に対して癌患者を免疫するためにアジュバントとしてNCMを用いるプロトコルを提供する。
【0058】
使用されるべき抗原調製品: 癌
1)PSMAペプチド(9)−市販 前立腺
2)MAGE1&3&MAGE断片&NY ESO−1 黒色腫
Ludwig Inst. Of Immunolから入手 H&NSCC
3)市販のパピローマ・ウイルスE6&E7 子宮頸部SCC。
【0059】
頸部は利用しやすく全身のリンパ節の>30%を含むため、市販では抗原の投与経路は頸部であることが好ましく、全身性免疫は結果を想定できる。
【0060】
(低用量のCY)
低用量のCYは癌のマウスおよび患者において細胞性免疫を増大しリンパ球による抑制を低減するために用いられ(Berd D.,Progress in Clin Biol Res 288:449−458,1989; Berd Dら、Cancer Research 47:3317−3321,1987)、癌患者の効果的な免疫治療に利用されてきた(Weber J.,Medscape Anthology 3:2,2000; Murphy GP,Tjoa B A,Simmons S J. The prostate. 38:43−78,1999; Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 120:395−403,1994)。
【0061】
(亜鉛)
亜鉛欠乏は細胞性免疫の改善に関連し、亜鉛による治療はマウスで免疫回復する(Hadden JW.,Int’l J Immunopharmacol 17:696−701,1995; Saha A.,ら. Int’l J Immunopharmacol 17:729−734,1995)。
【0062】
(INDOなどのシクロオキシゲナーゼインヒビター(COXi))
癌はプロスタグランジンを産生し、宿主のマクロファージによるプロスタグランジンの産生を誘導する(Hadden JW. The immunopharmacology of head and neck cancer:An update. Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997)。プロスタグランジンはT細胞に免疫抑制することが知られているため、シクロオキシゲナーゼインヒビターを用いたPG合成の阻害が適切である。
【0063】
(組換えタンパク質の精製)
Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization. A laboratory course manual.」 CSHL Press,1996。
【0064】
(抗原の用量および頻度)
1〜1000 μg、好ましくは10〜500;可溶性の剤形(必要ならば、部分重合または担体に共役)。用量の投与は、1日目、12日目、および21日目に行う。前処方薬は12日目、21日目、および31日目に行う。注射の部位は局所(即ち、頸部注射)である。
【0065】
(予測される応答)
1) 腫瘍の減少;
2) 腫瘍の病理変化(減少、断片化、リンパ浸潤);
3) 抗原に対する体液性免疫(RAIまたはELISA);および/または
4) 抗原に対する細胞性免疫(ELISPOT検定の皮内皮膚試験インビトロ・リンパ
球増殖)。
【0066】
PSMA、MAGE断片、E6、E7ペプチドなどのオリゴペプチドは樹状細胞へのパルシングでさえ免疫原性に乏しい。従って、有効な免疫が生じると予測されないだろう。たとえ有効な免疫でも、特に前立腺および頸部と同様な遠隔での本方法による腫瘍の緩解は、意外と考えられるだろう。免疫治療による転移性疾患の緩解は常に驚くべき事象である。臨床応答の程度および頻度は、有効性の因子であるため、本研究法の新規性である。
【0067】
診断用皮膚試験はより有効な免疫を得るための他の方法である。患者は、より良い応答(NCMおよびPHA皮膚試験およびリンパ球数およびリンパ節異常の逆転を増大する)を誘起するために本発明のNCMで前治療され得る。結果として、アジュバント計略が創出された。該計略では、免疫回復およびアジュバンシー(adjuvancy)の組み合わせが行われ、ペプチドおよびタンパク質を免疫原性にすることが行われ、ならびに腫瘍緩解を遠隔でもたらす免疫応答の度合いを得ることが可能である。
【0068】
患者はプロトコルの検討前に一つ以上の腫瘍ペプチドについて皮膚試験され得る。100 pgの一つ以上の腫瘍ペプチドは、NCM系の1日目および10日目に、以下に論じるようなNCMプロトコルを用いて、NCMとともに頸部のリンパ周辺に投与され得る。該組み合わせは21日目に反復される。腫瘍の応答および組織像に加えて、該ペプチドに対する免疫反応は反復皮膚試験によりまたは当分野で知られる他の手段により観察される。
【0069】
上記の論議は本発明の用途の事実上の基礎を提供する。本発明の有用性とともに用いられる方法は以下の非限定的な実施例および添付の図面により示され得る。
【実施例】
【0070】
(材料および方法)
細胞培養に関する全ての工程は滅菌状態の下で実施される。本明細書に記載されない細胞免疫学の一般方法は、Mishell and Shiigi(Selected Methods in Cellular Immunology,1981)などの細胞免疫学技法についての一般的な参照文献に記載されているように実施され、当業者に周知である。
【0071】
(天然サイトカイン混合物(NCM)の調製)
ヒトの血液の軟膜白血球は複数のHIV陰性肝炎ウイルス陰性の提供者から回収する。代替実施形態において、動物は獣医学用途の細胞起源でありうる。提供者からの細胞はプールされ、ficoll hypaque gradient(Pharmacia)に積層し、好中球および赤血球を含まないリンパ球を得た。当分野で知られるものと同じ出発リンパ球集団を生じる代替方法が用いられうる。
【0072】
リンパ球は洗浄し、刺激剤、即ちPHAなどの有糸分裂促進剤が固定される細胞サブセット選別用の表面活性化細胞培養フラスコ(MICROCELLECTOR(登録商標) T−25 Cell Culture Flask)へX vivo−10 media(Whittaker Bioproducts)中に分配した。一連の実験において、X vivo−15およびX vivo−20の培地は指示通りに使用した。刺激剤の固定化工程は、パニング手法、即ち該フラスコで細胞を分離する手法用に種々の物質を固定化することについては製造業者の記載通りである。または、リンパ球は、刺激剤、例えばPHAに、2〜4時間暴露された後、三回洗浄する。
【0073】
該細胞はCO2/空気インキュベーターで37℃で80 μg/mlのシプロフロキサシン(Miles Lab)とともにX vivo−10培地中で24〜48時間インキュベートする。または、RPMI1640培地が使用されうる(Webbら. 1973)。一般的に、HSAは0.1%から0.5%で使用される(体積重量)。インキュベーション後、上清は注いで回収する。HSAを含まない培地が代々使用される場合、ヒト血清アルブミン(HSA)は、インターロイキンをさらに安定化するために添加されうる。該上清は4℃から−70℃で保存される。
【0074】
(リンパ球の刺激)
本目的は、血清の不在下で且つ上清に有意な量のPHAを生じない方法で高レベルのインターロイキン−2を産生するためにリンパ球を刺激する方法を見出すことであった。これを行うため、PHAは、「パニング」細胞分離の製造業者の取扱説明書に記載されているように細胞サブセットの選別用の表面活性化細胞培養フラスコ(AIS MICROCELLECTOR(登録商標)T−25プレート)に固定されまたは該細胞にパルスされた後洗浄した(パルス技法)。
【0075】
これらの実験で用いる培地はX vivo−10(Whittaker)であった。これはインターロイキン−2リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞プロトコルで米国食品医薬品局によりヒトへの投与が認可されている。最小必須培地(MEM)またはRPMI−1640(Sigma)のようにヒトのリンパ球の増殖を支持できる無血清培地も使用されうる。
【0076】
初期の実験は、PHA(HA−16,Murex Diagnostics Ltd.,Dartford,UK)が製造業者により記載される技法によって固定されうること、ならびに7.5〜15x106/mlの細胞数、24時間から48時間の暴露時間、および25または50 μg/mlのPHA濃度の適切な条件下で、無血清上清に高収率のIL−2が得られうることを示した。さらなる詳細な情報は、Haddenの国際公開番号WO03/035004 A2およびHaddenの国際公開番号WO02/34119 A2に示され、これらは参照により本明細書にそのまま組み入れられる。
【0077】
(NCMの調製)
本明細書に記載する実施例では、INCAN血液銀行から得られるプールされたヒト末梢血軟膜はフィトヘマグルチニン(Murex,Dartford,UK)とともにインキュベートし洗浄した。該細胞は無血清培地(x−vivo 10,BioWhitaker)で24時間インキュベートした。バッチは、6人の血液提供者から調製し、B型およびC型の肝炎ウイルス、HTLV1および2、ならびにHIVについてINCAN血液銀行によりスクリーニングした。培養の24時間後、培養物は遠心分離し、上清は0.2ミクロン・フィルターを通して濾過し、天然サイトカイン混合物はバイアルに静置した。本発明のNCMのバッチの活性はELISAによる測定で平均して200 U/mlのIL−2であった。バッチのバイアルは使用するまで−70℃に保存した。
【0078】
サイトカインは市販のELISAキット(Quantikine(登録商標)、R&D Systems,Inc.,Minneapolis,MN)(表1を参照)を用いて検定した。本発明のNCMの生物活性はマウスの細胞障害性T細胞系(CTLL−2)を用いて確認し、これは当初IL−2の生物活性の指標として開発された。
【0079】
(表I:INCANで使用される5つのロットについてのNCMサイトカイン含量)
【0080】
【表1】
(患者)
頭頸部のI〜IV期扁平上皮癌を患う42人の患者が試験に参加した(Hadden,ら.,International Immunopharmacology 3;1073−1081(2003))。27人の患者は本発明のNCMの一つ以上の10日コースで治療された。15人の患者は二つの頸部部位で本発明のNCMの20日コースを受けた。これらの患者のうち4人は低レベルのサイトカインを含む本発明のNCMの調製品を受けた(1/4x、これらの患者は統計分析から排除された)。他の10人の患者は研究参加の時点で研究対象患者基準を満たしていなかったが、温情的様式でNCMで治療された。温情的治療は、NCMに対する陰性皮膚試験への応答、転移性疾患の発生、または外科的治療の対象でないことにより、生じる。全患者の年齢中央値は66.0歳(34〜86歳の範囲)であり、男性:女性の比率は4:1であった。大半の患者は喉頭または口腔のIII&IV期扁平上皮癌を患っていた。I&II期の患者は舌の病変を患っていた。
【0081】
応答は標準的な癌基準および腫瘍に基づいて評価された。生存はコンピュータ・ソフトウェア統計パッケージ(GRAPHPAD(登録商標),San Diegom CA)を用いてカプラン−マイヤー・プロットにより見積もられ、完全応答(CR)、50%を上回る腫瘍減少の部分応答(PR)、および無応答または25%未満の腫瘍減少が記録された。
【0082】
(治療計画)
それぞれの治療周期は21日続いた。各周期は、300 mg/m2のシクロホスファミド(CY)の静脈注射、一日三回経口で25 mgのインドメタシン(INDO)、および一日一回経口で亜鉛(硫酸塩として65 mgの元素亜鉛)を用いて開始した。患者は0.1 mLのNCMを経皮投与される皮膚試験も受けて構成要素に対するアレルギー応答を除外しならびに4日目にNCMに対する遅延型過敏症(DTH)を示した。患者は、1.0 mLのNCMを10日間または2.0 mLのNCMを20日間、乳突先端(mastoid tip)の2.0 cm下の胸鎖乳突筋の停止(insertion)点で筋肉内投与されて治療した。手術を受けた患者において、治療は手術部位に対側な無傷の頸部に投与した。全ての患者は研究に参加することの同意書に署名し、該研究はINCANの施設内倫理委員会および調査委員会ならびにメキシコ厚生省(Mexican Ministry of Health)により承認された。いずれの基礎免疫疾患、重症な全身性疾患の患者、または免疫抑制治療を要する患者は該試験から除外した。外科的治療の対象である患者は21日目に手術を受け;術後の放射線治療は外科医および顧問の放射線腫瘍医の裁量で再発の危険性が高い患者(例えば、病変節および/または陽性の切除縁をもつ者)に施された。常套的な外科病理学が全ての治療前および治療後の生検標本について行われた。腫瘍の様々な組織要素を定量するために、腫瘍を含む代表的な生検切片は低出力下で選別され、腫瘍の量は全領域の百分率として表した。残りの基質はリンパ球を有する領域の割合について評価された。腫瘍は、充実性である標本領域の割合、および記載される浸潤のような散在白血球による断片化の割合についてさらに評価された。
【0083】
(表II:頭頸部癌の研究の患者特性)
【0084】
【表2】
(実施例1)
NCMおよび低用量CY、INDO、および亜鉛を含む頸部の局所リンパ周辺注射は、改善された再発のない生存の証明とともに、高率の扁平細胞頭頸部癌(H&NSCC)患者に臨床的緩解を誘起した(Hadden J W,ら.,Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 120:395−403,1994; Meneses A,ら.,Arch Pathol Lab Med 122:447−454,1998; Barrera J,ら.,Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351,2000; Hadden,ら.,2003; Menesis,ら.,2003)。病理標本の微応答(25%−50%)、腫瘍の縮小および腫瘍の減少を含めて、全体としては、90%を上回って応答し、大半が50%を上回る腫瘍の減少があった。
【0085】
これらの応答は、Bリンパ球およびTリンパ球の両方が腫瘍を浸潤することが観察されたため、免疫緩解により媒介されることが推測される。該治療は有意な毒性を伴わなかった。NCMと組み合わせたリンパ球減少癌患者の治療は著しいリンパ球の動員を招いた。分析すると、これらの患者はCD45RA陽性T細胞(即ち、未感作T細胞(表IV))の増加を示した。さらに、H&NSCC患者におけるNCMの腫瘍内注射または腫瘍周辺注射は、免疫治療が誘発する腫瘍緩解の逆行または腫瘍の進行のいずれかを引き起こす。従って、腫瘍は免疫の部位ではない。結果として、局所リンパ節の分析は、該局所リンパ節が想定腫瘍抗原に対する免疫の部位であることを示すデータを明らかにした(Meneses,ら.,2003)(図1〜5を参照)。NCMで治療されたこれらの患者は誰も臨床的に15%および病理学的に50%まで予測される転移を発症しなかった。これは、単に局所免疫よりむしろ全身性免疫が誘起されたことを示す。患者は治療前に0.1 mlのNCMに対して皮膚試験で予備試験され、陽性の皮膚試験(24時間で>0.3 mm)者の90%以上が頑健な臨床応答および病理応答であった。陰性の皮膚試験の患者は弱い応答または無応答であった。従って、皮膚試験は良好な応答者を選別する。
【0086】
Tリンパ球数(CD2)752−>1020の際立った増加がこれらのTリンパ球減少患者において観察された(T細胞数752対1600(正常))。重要なことには、「未感作」CD45RA陽性T細胞(532−>782)が対応して増加した。先述するように、これらの増加は特にNCMのような薬理療法で成人に起きないと一般に考えられている。これらの細胞はおそらく胸腺遊出(thymic emigre)したばかりであり、腫瘍抗原と同様な新規の抗原に対して応答する主要な新能力と考えられうる。既存のCD45RA陽性細胞は腫瘍抗原に応答しなかった。該細胞は、腫瘍が誘発する免疫抑制(アネルギー)により、そのようにすることができないことがあり得る。
【0087】
文献(Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997; Hadden JW. Int’l J Immunopharmacol 21:79−101,1999)は、二つの主要な型の癌であるSCCおよび腺癌の両方で、局所リンパ節が、洞組織球増殖症、リンパ枯渇、およびしばしば(IL−2で)腫瘍細胞に反応できるアネルギー腫瘍関連リンパ球の存在を含む、腫瘍に関係する異常を反映することを示す。転移とともに、リンパ枯渇および機能低下が起きる。浸潤のない頸部リンパ節の未公開分析で、10人のH&NSCCおよび10人の対照は、平均サイズの縮小およびH&NSCCに関連する洞組織球増殖症の増加を示した(図1〜4)。
【0088】
(表III:NCMによるH&NSCCのリンパ球減少患者の治療は血中の未感作T細胞を増加させる(#/mm))
【0089】
【表3】
一周期のNCMプロトコル(Hadden JW,ら.,Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 120:395−403,1994; Meneses A,ら.,Arch Pathol Lab Med 122:447−454,1998; Barrera J,ら.,Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351,2000)による治療後、浸潤のない頸部リンパ節は図1〜4に示す変化を示した。NCMで治療しないH&NSCC患者の局所リンパ節と比べると、これらの節は、サイズ、T細胞の領域および密度で有意な増加を示し、胚中心数および洞組織球増殖症およびうっ血で減少を示した。治療患者のリンパ節は全て刺激され、対照節より大きく、T細胞の領域および密度が増加した。従って、これらの節は正常に回復するだけでなく、H&NSCCの生存との知られる正相関であるT細胞優勢の証拠を示した(Hadden JW. Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997)。
【0090】
重要なことには、B細胞およびT細胞の領域に関連するリンパ節の変化がT細胞およびB細胞の浸潤を反映する腫瘍の変化と相関した場合、高度の相関関係がT細胞(p.<0.01)およびB細胞(<0.01)および全リンパの存在(p.<0.001)について得られる(図5)。同様に、これらの変化は病理基準および臨床基準による腫瘍の減少と相関する。これらの発見は、腫瘍の反応がリンパ節の変化と直接に且つ正に相関すること、および腫瘍の反応が従属変数のようにリンパ節の変化を反映することを示す。免疫系が全般にどのように機能するかについての知見(Roitt I,Brostoff J,Male D. Immunology J B Lippincott Co,Phila,Pa.,1989)と併せて、これらの発見およびサイトカイン遺伝子による下記の腫瘍トランスフェクション(Maass Gら、Proc Natl Acad Sci USA,1995,92:5540−5542)は、NCMプロトコルがリンパ節のレベルで未だ同定されていない腫瘍抗原に対して該患者に免疫付与することを示す。誰も自己腫瘍抗原による免疫を反映するリンパ節の変化についての証明をこれまで提示しなかった。これは、本発明が遠隔転移の緩解を得る作用においてこれまで無効なまたは効果に乏しい腫瘍抗原を用いて免疫を誘発できることを確認する。
【0091】
(実施例2)
前述したINCAN研究の臨床学的、病理学的および生存のデータのさらなる分析は、自身の自己腫瘍抗原に対する癌患者の免疫および得られる腫瘍の免疫緩解に関するため、本発明の性質により多くの洞察を与える。図6は、NCMプロトコル(IRX−2)による治療が48ヶ月目の生存の増加(p<0.01)に関連することを示す。図7は、完全応答(CR)および部分応答(PR)(>50%の腫瘍減少)の該患者が微応答(MR)(<50%だが、>25%の腫瘍減少)または無応答(NR)()の患者より良好な生存率を有する(p<0.01)という点で、臨床応答が生存を決定することを示す。図8は、強い病理応答の患者(6〜9の指標)が弱い病理応答(<6)の患者より良いことを示す(p<0.02)。図9は、単一の変数としての腫瘍へのリンパ浸潤が生存を予測する(p<0.01)ことを示す。最後に、病理応答に対する臨床応答の関係のカイ二乗分析は極めて有意な関係を示し(p<0.01)、両応答が相互におよび生存に強調的に関連することを示すため、臨床応答、免疫緩解パラメータ、および生存に相関するデータの統計三角測量を提供する。このような関係はヒトの癌の免疫治療について決して示されなかった。
【0092】
(実施例3)
二人の患者は頭頸部のリンパ腫を治療された。含まれる患者は該プロトコルに参加することに同意した頭頸部癌の患者であった。
【0093】
治療前に、該患者は前腕の皮下に0.1 mlのNCMで皮膚試験し、その領域は印を付け、24時間後に該試験は読み取られた。該試験は、誘発および紅斑が3 mm以上である場合に陽性とみなされた。
【0094】
(症例1)
患者は、左顎下腺領域に腫瘍が存在する3ヶ月の前歴をもち他の症状はないことを提示する23歳の男性であった。緊急治療室で、彼は深いレベルに部分固定された一貫して堅い直径約6.5 cmの左顎下三角のリンパ節腫脹を有することが見出された。他の健康診断は正常であった。切開生検はホジキン・リンパ腫を示した。該病変はECIIA期であった。NCMの一周期治療が施され、リンパ節腫脹が直径1 cmのサイズに減少する微応答が得られた。NCM治療が病変の60%を示した後に得られる生検報告は、正常なリンパ球の浸潤を示し、残りの新生組織形成(40%)は壊死を示した。生存する腫瘍細胞は見出されなかった。
【0095】
この後、患者は頸部に3600ラドの放射線治療を受けた。該患者は現在無病である。
【0096】
(症例2)
患者は82歳の男性であり、有痛性の中頸部腫瘤である二ヶ月の前歴および10 kgの体重減少を提示した。健康診断で、該患者は右口蓋扁桃に腫瘍を提示し、これは約4x3 cmまで肥大し、扁桃腺の中心に潰瘍があった。頸部で、右顎下リンパ節は約2x2 cmを測定し、レベルIIおよびレベルIIIのリンパ節の腫瘤は約5x5cmであった。他の試験は正常であった。扁桃腺および頸部のリンパ節の一つの切開生検は、中等度の明確な混合の非ホジキン・リンパ腫であることを証明した。
【0097】
該患者は二周期のNCMを受け、その終わりに扁桃腺および頸部リンパ節腫脹に直径1 cmの減少が観察された。NCM治療後の病理報告は、生存腫瘍が20%、断片化および壊死が30%、ならびに正常なリンパ球の浸潤が50%であることを示した。
【0098】
該患者は6周期間の化学治療(CHOP)、次いで4600ラドの全用量で外部放射線治療(RT)を施された。彼はRTの8ヶ月後に後頭部のレベルに副腎過形成を再発した。該患者は頸部疾患の徴候の3ヵ月後に亡くなった。
【0099】
(実施例4)
臨床的にIB1期、IB2期およびIIA期である未治療の初期子宮頸癌を患う10人の患者は、局所リンパ周辺注射のNCM(10日の連日注射)で治療された後、21日目に広範子宮全摘術で治療された。本発明のNCM治療を開始する一日前に、患者は300 mg/mの単回IV用量のCYを受容した。INDOまたはイブプロフェンおよび硫酸亜鉛は1日目から21日目まで経口投与された。臨床応答および病理応答、毒性および無病生存率が評価された。
【0100】
全ての患者がNCMを治療を完了し、応答および毒性について評価された。臨床応答は患者の50%に見られた(3人が部分応答(PR)、2人が微応答(MR)(>25%<50%の減少))。7人の患者は手術を受けた。病理学的に腫瘍断片化に関連する腫瘍の減少は5人の症例で見出された。腫瘍に浸潤する細胞型は、リンパ球、形質細胞、好中球、マクロファージおよび好酸球を含む、むしろ混成の様式であった。治療は、注射中の軽度の疼痛および少量の出血ならびにINDOに対する胃の不耐性を除いて、十分に耐えられるものであった。24ヶ月のフォロー・アップで、9人の患者は無病であった。
【0101】
これまで未公開の本研究は、腫瘍周辺のNCMが初期の未治療の子宮頸癌において免疫媒介性腫瘍応答を誘起することを示す。
【0102】
(実施例5)
原発性肝細胞癌から肝転移した二人の患者は脾臓内NCM(1回または3回の注射)で治療した。該プロトコルは、さもなければ、H&NSCC、子宮頸部、またはリンパ腫の症例について先述した通りであった。一人の進行性肝細胞癌患者は断層撮影により確認される部分応答を有した。組織像は利用できない。もう一人は手術により確認される部分応答を有した。組織試験は、腫瘍の減少、断片化、およびリンパ浸潤を示した。
【0103】
(実施例6)
陰茎の扁平上皮癌(ヒト・パピローマ・ウイルスが関係する)の4患者は上述したようなNCMプロトコルで治療し;4人全員が臨床的に部分応答し、外科標本はH&NSCC癌患者に特徴的な腫瘍減少および断片化およびリンパ浸潤を示した。
【0104】
(実施例7)
(天然サイトカイン混合物の用量および頻度)
10日の注射プロトコルは20日の注射プロトコルと比較された。両側注射は片側注射と比較され、一連の用量が比較された。生存に有意な活性は74〜1310単位のIL−2当量(ELISA、R&D Systemsにより測定される)から観察され、ピークは100〜233単位であった(図9)。両側注射は有効であり、同側リンパ節の切開を受けた1人の再発患者では、対側注射が用いられ、良好な応答が得られた。この観察は、腫瘍抗原が対側節にも存在しうることを示すため、両側注射が好まれる。20日注射プロトコルは臨床応答および生存率の点で有効であったが、外科標本は10日片側プロトコル(34%領域)または10日両側プロトコル(33%領域)より少ないリンパ浸潤(17%領域)を示した(p<.05)。同等な腫瘍減少応答とともに少ないリンパ浸潤は抗体媒介性免疫応答が関与することを示す。なぜなら、これらの応答はリンパ球媒介性応答(即ち、細胞障害性T細胞)より効果が低いと考えられるためであり、20日注射プロトコルはより多くの労働および費用を伴い、100単位のIL−2当量または部位を用いる10日両側注射プロトコルが最適と考えられる。
【0105】
図10は24ヶ月での全生存率について本発明のNCMの一連の用量を図解する。約100〜233国際単位のIL−2当量で生存率に最適な影響を及ぼし、約16単位では効果が無く、約1310単位では効果が弱い。
【0106】
(非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の役割)
INDOはシクロオキシゲナーゼI&IIの両方に作用する最も強力なNSAIDであるが、より強い胃腸毒性を有する。セレコキシブ(Celebrex(登録商標))およびロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))等の新しいCoxIIインヒビターは弱い胃腸毒性を有すると考えられる。少数の患者におけるINDOの代わりの該二剤の使用は、臨床基準および病理基準によりならびに生存率により測定されると、より弱い応答を生じた。Vioxx(登録商標)の場合、全7人の患者は1週間の治療後に胃炎の臨床的徴候を有した。子宮頸癌患者では、イブプロフェンがNSAIDとして使用され、良好な応答が得られた。これらの観察に基づいて、INDOが好ましいが、セレブレックスまたはイブプロフェンは、INDOが耐容性でない場合、代用できる。Vioxx(登録商標)は推奨されない。経口プロスタグランジン類似体の有無を問わず、プリロセック(Prilosec)または他のプロトン・ポンプインヒビターは胃炎の予防として推奨されるが、ヒスタミンH2遮断薬は指標と考えられない。
【0107】
(CYと併用したNSAIDの役割)
4人の患者において、不活性と考えられる用量(図10、15単位カラムを参照)のNCMがINDOおよびCYと併用して付与された。生存は観察されなかったが、2患者は微応答(<50%だが、>25%の腫瘍縮小)を有し、4人全員が腫瘍の減少および断片化ならびにリンパ浸潤とともに腫瘍標本に中等度の病理変化を示した(表IVを参照)。INDOは数人の患者でリンパ浸潤および腫瘍減少を増大し得る(Panje,1981およびHirsch,ら.,1983を参照)が、H&NSCCの有用な治療として臨床的に承認されてない。同様に、この用量のCYはH&NSCCで臨床的に活性であるとみなされていない。INDOおよびCYの単独の活性は腫瘍応答の規模および種類において意外と考えられる。INDOおよびCYは他形態の免疫治療での使用に相乗的な組み合わせとして考えられる。
【0108】
最近、低用量の組換えIL−2がH&NSCC患者で転移の再発を遅らせ平均生存時間を上昇させることが報告された(DeStefani,ら.,2002,and Valenteら、1990を参照)。先行技術の研究において、臨床応答は観察されず、より弱い腫瘍の変化(腫瘍緩解のないリンパ浸潤)が観察された。それにもかかわらず、rIL−2はCY&INDOと作用してさらに臨床応答を誘発し生存率を向上し得る。NCMに単独でまたは共同で存在するものに対応する他の天然または組換えのサイトカインも潜在的に活性である。例えば、IL−1、IFN−δ、TNF−α、IL−6、IL−8、GM−CSF、G−CSF、IL−12、およびそれらの組み合わせ等のサイトカインは天然または組換えの形態で使用され得る。
【0109】
(表IV:CYおよびINDO(±NCM))
【0110】
【表4】
(実施例8)
(予後における皮内皮膚試験の役割)
本発明者らは、NCMに対して陰性の皮内皮膚試験の患者が一人の患者に基づいて弱い臨床応答を示すことを以前に示唆した。本発明者らは、現在、一連の皮膚試験に陰性の患者を累積し、該患者が実施例7で見られる有意なNCMを含まないCY&INDOの組み合わせに類似する変化を示すことを見出す。10人の患者(フアレス病院からの4人を含む)は本発明のNCMで陰性の皮膚試験を有し(即ち、NCMに反応しない)、NCMならびにCYおよびINDOで治療された。これらの患者は、弱い臨床応答、少ない腫瘍の減少および断片化、ならびに低い生存率(20%)を有した(表Vを参照)。従って、これらの観察は、INDOおよびCYがNCMなしに著しい活性を有するという実施例7からの結論を裏付ける。重要なことには、これらは、該皮膚試験が生存率の改善に関係する強い臨床応答および病理応答を予測するために重要であることを確認する。その上、陰性の皮膚試験は、放射線治療の有無を問わず、手術に対する患者の応答不能を予測する。NCM皮膚試験はH&NSCCの治療結果を予測するために有効に用いられ得る。以前、ジニトロクロロベンゼン(DNCB)を用いた皮膚試験はH&NSCCの予後的意義を示したが、感作を要する煩雑な手順により、臨床的にもはや用いられていない。NCM皮膚試験は簡便な24時間の試験を提供する。
【0111】
興味深いことに、これらの患者は二群に分類された。表VIbの一群では、応答が特に弱く、生存者はいなかった。表VIaの他方の群では、該患者は、陰性のNCM試験を治療後に陽性に変化させ、プロトコルの患者と同様な臨床応答および病理応答ならびに生存率を示した(表VIBを参照)。
【0112】
これらの患者の一人は手術不可能と考えられる腫瘍を有し、陰性の試験を陽性に変えることが示され、第二の治療により臨床的におよび病理基準により該腫瘍を減少でき、術後の生存率を延ばすことができた(>7年)。NCMを用いた皮膚試験陰性患者のこの前治療は応答割合を増加し得る。NCMおよびサイモシンα1は機能も予測され得る(公開された米国出願第20030124136号を参照)。陰性のNCM皮膚試験は単球の障害を反映し、天然または組換えの形態の単球活性サイトカインを用いた治療は単独でまたはこれらの組み合わせで有用であることが予測される。これらは、GM−CSF、M−CSF、IFN−δ、IL−1、IL−6、IL−8、IL−12およびその他を含むが、これらに限定されない。
【0113】
(表V:陰性のNCM皮膚試験の患者)
【0114】
【表5】
(表VI:ALFペプチドに対する血清IgG)
【0115】
【表6】
(表VIB:LLHペプチドに対する血清IgG)
【0116】
【表6B】
(表VIC:オブアルブミンに対する血清IgG)
【0117】
【表6C】
(実施例9)
(本発明の使用についての他の予後指標)
従来、H&NSCCの転帰についての予測因子はほとんどなかった。リンパ球数、IgEおよびIgAのレベルまたは栄養が示唆され、記載する通り、DNCB皮膚試験が用いられていた。化学治療(5FU&CISPLATINUM)では、臨床応答は大半の患者で術前に生じるが、平均生存時間および全生存率は本質的に影響されない。従って、免疫応答は、H&NSCC癌患者を治療しまたは延命するための放射線治療の有無を問わず、手術能力に関係するらしい。実施例で提示されるデータは、本発明の使用が、術後の残存腫瘍を有する者の転移の再発を延ばし、臨床応答の規模に関係する方法で生存率を上昇させ、腫瘍の減少、断片化およびリンパ浸潤の定量により評価されるように腫瘍を攻撃する免疫の強度を増加させることを示す。これらの観察は生存率をさらに向上するために本発明の重要な改良を指摘している。
【0118】
(重症免疫不全症の患者において)
リンパ球数の少ない患者では、弱いまたは欠如したNCM皮膚試験、洞組織球増殖症、弱い病理応答、再治療および免疫応答の観察が徴候である。
微臨床応答または無臨床応答の患者において:
これらの患者は転移の再発の危険性が高いため、理論的に本発明のNCMを用いた術後治療から恩恵を受けるであろう。該患者で観察される腫瘍拒絶応答に対する特異反応について現在利用できる試験がない場合、米国特許第6,482,389号に記載される三つ組みの試験とともに追跡検査は、本発明のNCMを用いた再治療の頻度を決定する助けとなるであろう。
【0119】
(再発患者において)
二つの完全応答を含む有意な応答は、本発明のNCMを用いて再治療された患者で観察された。これは再治療に応答できなかった天然および組換えのIL−2を用いた以前の結果と対照的である。従って、本発明は患者の転移の再発を治療するのに有効である。
【0120】
(実施例10)
(放射線治療または化学治療のような他の治療と本発明の併用)
IV期H&NSCC癌の患者は、放射線治療の追加に関わらず、III期疾患の患者と比べて著しく生存率が低下した(10〜20%対30〜50%)。放射線治療は該患者のTリンパ球数を長期間減少させることがよく知られている。T細胞の数および機能に及ぼす放射線治療の負の影響に関わらず、本発明のNCMで治療されたIV期疾患の患者はIII期疾患の患者と同様に行った。従って、治療影響はIV期患者で比較的大きく、これは、免疫治療およびサイトカイン治療が極小の腫瘍でより良く機能するという現在の定説に相反する。本発明は放射線治療の影響を増強することも示唆される。同様に、陰茎SCC癌の4患者において、本発明のNCMが使用された後、5FUおよびシスプラチナ(cysplatinum)ならびに第二周期の本発明のNCMで化学治療した。臨床的な腫瘍の減少が初期の免疫治療でおよび化学治療で観察され、手術から得た腫瘍の検査は免疫緩解の持続を示した。本発明のNCM、続いて5FUおよびシスプラチナを用いた化学治療で治療された他のH&NSCC患者は同じ結果を示した。これらの観察は、本発明のNCMが化学治療と併用できることを示す。
【0121】
(実施例11)
(NCMによる癌の樹状細胞欠損の相関関係についてのさらなる特徴決定)
リンパ節は5人のNCM治療患者および5人の未治療H&NSCC対照患者から単離され、細胞組成は樹状細胞の細胞表面マーカーのパネル(即ち、CD83、CD86およびCD68)を用いてフローサイトメトリーにより分析された。洞組織球増殖症(SH+)はCD68+、CD83+の蓄積に関係するが、CD86−DCには関係しない一方、顕著なSHでない者はCD83+細胞がほとんどない(図11)。本発明のNCM治療は未治療癌対照と比べてCD86+(CD68+CD83+と共存)細胞の数に5倍の増加をもたらし、これは「活性化」DC表現型への変換を示す。対照はNCM治療された癌患者と比べて未治療のH&NSCCである。
【0122】
洞組織球増殖症はCD68+CD83+CD86−骨髄樹状細胞(DC)の洞様内蓄積により特徴付けられ、本発明のNCMの効果的な使用は活性化成熟DCを示すCD86+細胞の5倍の増加に関連した。洞組織球増殖症は内因性腫瘍ペプチドを生じると推測される部分的に成熟したDCの蓄積を表すことが確認される。共刺激受容体(B7.1またはCD86)の発現とともに十分な成熟および活性化は、成熟時にこの欠損を直しT細胞への有効な抗原提示を可能にするための本発明のNCMの使用を反映する。本発明のNCMは洞組織球増殖症を逆行し、「未感作」T細胞の有効な免疫につながる。
【0123】
洞組織球増殖症が骨髄起源のDCの欠損および陰性のNCM皮膚試験により特徴付けられるという事実は、他の骨髄細胞の欠損を予測し、単球はこれらが連関する観察であることを示唆する(即ち、癌に対する宿主の免疫応答に重要な骨髄系列の欠損が存在する)。
【0124】
(実施例12)
(本発明を用いた外来性腫瘍抗原の投与)
(マウス)
該手順は、オブアルブミンまたはキーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)のいずれかに共役させたT細胞ペプチド(ALF&LLH)(100μg@)としての前立腺特異的膜抗原(PSMA)でマウスを免疫することであった。単離された非共役ペプチドを用いた先の試みはマウスで成功しなかった。NCM(0.1 mL)は低用量のCY(400 μg/マウス)の次に両共役抗原とともに単回免疫として施された後、抗原なしでNCM(0.1 mL)を9日間連日注射し、一方、CpG、Alum、またはRibi−CorixaのアジュバントはOVA共役体とともに単回一次免疫であった。二回の追加免疫(共役体およびアジュバント)は21日目および28日目に各群のマウスに施された。T細胞ペプチドに対するDTHは最終追加免疫の9日後に測定され、血清は15〜21日目に屠殺して採取した。
【0125】
図12は個々のALFおよびLLHのペプチド(10 μg@)を用いて共役体を用いない皮膚試験に対するDTHの結果を示す。NCMは、両共役体を用いた免疫およびOVA共役体に対してAlumを用いた免疫の後、有意なDTH応答を誘起する。Alum、Ribi−Corixa、およびCpGはごく僅かな活性を示した。
【0126】
(血清抗体の結果)
血清は指示通り希釈し、ペプチド(ALFもしくはLLH)またはオブアルブミンのいずれかで被覆したマクロプレートのウェルに添加した。結果は5つのマウスの群について405の平均ODとして表される。データは表VIIに提示される。
【0127】
KLH共役体+NCMで免疫されたマウスはオブアルブミン抗体に対して陰性であったが、ペプチドに対して陽性であった。OVA共役体+NCMで免疫されたマウスはOVAおよび該ペプチドの両方の抗体に対して陽性であったが、OVA共役体+CpGで免疫されたマウスはOVAのみに陽性であった。これらの結果は、NCMにより、共役PMSAペプチドが、DTHおよび該ペプチドに特異的なIgG応答の両方を刺激するのに効果的になることを示すが、alum、Ribi−Corixa、およびCpGなどの他のアジュバントは不活性または活性に乏しかった。
【0128】
(ヒト)
進行性前立腺癌の3患者は、低用量のCY(300 mg/m2)ならびに連日のINDO(25 mg、一日三回)および9回のNCM(1 ml)の追加注射の後、NCM(1 ml−100単位IL−2当量)とともに非共役ALF&LLHペプチドを受容した。15日目に、NCMおよびペプチドの追加免疫が施された。1人の患者(#4)はこの計画でOVA共役ペプチドを受容した。遅延型過敏反応(DTH)は、24時間での紅斑のセンチメーターおよび持続時間を読み取る皮内皮膚試験により、NCM(0.1 ml)、ALF、LLH(10 μg)を用いて測定した。該結果は表VIIに提示する。
【0129】
(表VII:PSMAペプチド&NCMに対するDTH)
【0130】
【表7】
これらのデータは、NCM計画が進行性前立腺癌のヒトにおいて非共役および共役のPMSAペプチドに対するDTH反応を誘発するのに有効であることを示す。この結果は、単離ペプチドでは失敗した大半の先の試みの結果と異なる。
【0131】
本出願を通して、米国特許を含む、種々の刊行物は、著者および年および特許番号により参照される。該刊行物についての全引用は下記に列挙する。これらの刊行物および特許の開示は、本発明が属する技術の状態をより十分に記載するために、参照により本出願にそのまま組み込まれる。
【0132】
本発明は説明様式で記載されており、用いられた専門用語は限定よりむしろ記載の単語の性質にあることを意図することが理解されるべきである。
【0133】
明らかに、本発明の多数の修飾および変形が上記の教示に鑑みて可能である。従って、記載される発明の範囲内において、本発明は具体的に記載されるものと違う方法で実施され得ることが理解されるべきである。
【0134】
(参考文献)
(米国特許番号)
【0135】
【表8】
(刊行物)
【0136】
【表9】
【0137】
【表10】
【0138】
【表11】
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
【表14】
【0142】
【表15】
【0143】
【表16】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(1.技術分野)
本発明は、癌患者のワクチン治療に関する。より具体的には、本発明は、内因性および外因性の両腫瘍のペプチドまたはタンパク質に対して免疫抑制を有するワクチン免疫治療に関し、該治療は癌患者に免疫する。
【背景技術】
【0002】
(2.背景技術)
ヒトの癌は抗原を有し、宿主の免疫系に反応する場合、腫瘍の緩解をもたらすことが次第に明らかになっている。これらの抗原は血清学的および細胞学的な両免疫アプローチによって定義されている。これらはB細胞およびT細胞の両エピトープの定義につながる(Sahin Uら、Curr Opin Immunol 9:709−715,1997; Van der Eynde,B,ら. Curr Opin Immunol 9:684−693,1997; Wang RF,ら.,Immunologic Reviews 170:85−100,1999)。これらの結果に基づいて、腫瘍の緩解を誘導することが癌免疫治療の目標となっている。しかしながら、従来、成功した試みは散発的であり、頻度および規模において一般に少ない。
【0003】
癌患者に免疫する試みの基本的な問題は、担癌状態が腫瘍および宿主の両免疫系障害に由来する免疫抑制機構に関連することであり(Kavanaugh D Yら、Hematol−Oncol Clinics of North Amer 10(4):927−951,1996)、それにより、免疫は困難であり現在のところ一貫した基準で不可能である。免疫の抑制または低下は免疫系の応答能の低下を伴う。このような抑制は薬物または疾患に誘導され得る。該状態は、治療による薬物誘導性、AIDSなどのウイルス誘導性、または癌などの疾態誘導性であり得る。この状態の免疫系は事実上停止する。
【0004】
種々の腫瘍免疫戦略が開発されてきた。しかしながら、これらの戦略の全ては複雑であり、感染病に用いられる従来の免疫戦略から著しく逸脱する(Weber J. Tumor,Medscape Anthology 3:2,2000)。一つのこのような腫瘍免疫戦略は、キーホール・リンペット・ヘモシアニンと共役し、且つデトックス(Detox)(R)マイコバクテリア・アジュバントおよび低用量シクロホスファミドと共に投与されるシアリルTN多糖ムチン抗原のセラトープ(Theratope)(R)を含む(Maclean G Dら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol 19(4):309−316,1996)。しかしながら、転移性乳癌および卵巣癌をもつ患者における該ワクチンの使用は、低い割合の患者に重大な臨床反応を引き起こしている。重大な反応は50%を上回る腫瘍の減少を意味する。
【0005】
パピローマ・ウイルス・ペプチド16を発現する遺伝子用の発現ベクターとしてアデノウイルス構築物を用いて、遺伝子治療も試みられており、該ペプチド16は免疫用にまたは子宮頸癌の患者に用いられており、低い割合の患者に重大な臨床反応を引き起こしている(Borysiewickz,L Kら、Lancet 347:1524−1527,1996)。
【0006】
樹状細胞が媒介する治療も試みられており、樹状細胞は前立腺特異的抗原(PSA)のオリゴペプチド断片を用いてパルスされた。前立腺特異的膜抗原(PSMA)は転移性前立腺癌の患者に用いられており、重大な臨床反応が低い割合の患者で起きている(Sanda M Gら、Urology 52:2,1999; Murphy GPら、The prostate. 38:43−78,1999)。
【0007】
さらに、自己腫瘍は悪性黒色腫の癌患者を免疫するために低用量のシクロホスファミドおよびBCGとともに用いられてきた。しかしながら、臨床反応はほとんど報告されなかった(Mastrangelo M Jら、Seminars in Oncology 23(6):773−781,1996)。試みられた他の戦略は種々のワクチン・アジュバントとともにMAGEの使用を含んだ。また、これは悪性黒色腫の患者に有るか無しかの反応を生じた(personal communication Thierry Boon)。
【0008】
Doyleら(米国特許第5,503,841号;第5,800,810号;第6,060,068号;第5,643,565号;第5,100,664号)のいくつかの特許は、インターロイキン−2(IL−2)を用いて患者の免疫応答を増強する方法を開示する。この方法は、免疫原性であることが知られる抗原を用いて、感染病および主として感染作用に応じた用途を開示する。限られた適用性が証明された。上記で開示されるように、癌の治療は異なるアプローチを要することが知られる。今日まで、IL−2を用いた治療は、腎癌および悪性黒色腫の二つの癌において僅かな効果を示した(20%未満の応答速度)。これは、一般的に、扁平上皮細胞癌、頭頸部癌、および子宮頸癌ならびに前立腺癌に無効であると考えられる。従って、これらの用途に認可されていない。故に、癌治療において、Doyleらの特許の方法を小ペプチドの使用に適用することは当業者内ではないだろう。
【0009】
健康な患者における複合構造および高分子量の既知の「古典的」抗原を用いた予防に対し免疫抑制患者(一般的に不成功)における腫瘍抗原またはペプチド(一般的に不成功)を用いた治療(一般的に不成功)を対比することは重要である。前者は容易であり、本発明者らの現在のウイルス・ワクチンはそれらの効能を証明する。後者は30年の真剣な努力にもかかわらず日常には不可能に近い。
【0010】
本発明は、樹状細胞により処理され提示される内因性ペプチド、または樹状細胞が調製されT細胞に効果的にそれらを提示できる環境(リンパ節)に内因的に投与された内因性ペプチドを用いて免疫することに関するが、これに限定されないことが重要である。この目標は多数の免疫学者により克服できないと考えられている。ペプチドは非常に小さすぎて有効な免疫原ではなく、それらの半減期は短く、それらはしばしば非突然変異自己抗原であり、該抗原に対して患者は免疫学的に寛容であり、応答を得ることは自己免疫を誘導することと等しい。
【0011】
上記戦略のいくつかにおいて、腫瘍関連抗原に対する細胞性免疫および/または腫瘍免疫が誘導された(Weber J. Tumor,Medscape Anthology 3:2,2000; Maclean G Dら、J Immunother Emphasis Tumor Immunol 19(4):309−316,1996; Borysiewickz L Kら、Lancet 347:1524−1527,1996; Sanda M Gら、Urology 52:2,1999)。これは特に腫瘍緩解と非常に関連する。それにもかかわらず、このような治療の成功率はごく僅かであり一貫性がない(<30%)。
【0012】
従って、癌患者に免疫する一貫した効果的な方法を開発することは有用であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
本発明に従って、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法が提供される。さらに、本発明は有効量のシクロホスファミド(CY)および有効量のインドメタシン(INDO)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。種々の抗癌治療法も提供され、該方法において、有効量のCYは、インドメタシン(INDO)、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、有効量の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とともに投与する。より具体的には、本発明は、有効量のINDOおよび有効量のIFN−δ、IL−2、IL−1、およびTNF−αと組み合わせて有効量のCYを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。さらに、本発明は、有効量のINDOおよび有効量の組換えIL−2、組換えIFN−δ、組換えTFN−α、および組換えIL−1と組み合わせて有効量のCYを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。本発明は、本明細書に記載するNCMと組み合わせて有効量のCYおよびINDOを投与することにより相乗的な抗癌治療をさらに提供する。その上、本発明は、リンパ節の未熟な樹状細胞の分化および成熟を促進し、結果として生じる成熟樹状細胞によるT細胞への抗原の提示を可能にして抗原に対するT細胞の免疫を獲得し、ならびに転移の進行を妨げることにより、抗転移治療法を提供する。または、本発明は、リンパ節での免疫の障害を取り除き(unblock)、ならびに全身免疫を生成することにより、抗転移法を提供する。本発明は、本明細書に記載するNCMと組み合わせて有効量のCYおよびINDOを適用することにより、皮膚試験および樹状細胞(DC)の前治療法も提供する。本発明は、本明細書に記載するNCMと組み合わせて有効量のCYおよびINDOを適用することにより、洞組織球増殖症または陰性NCM皮膚試験により特徴付けられる単球欠損を治療する方法をさらに提供する。最後に、本発明は、内因性または外因性の腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物および方法を提供する。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を投与する工程により癌を治療する免疫治療方法であって、当該天然サイトカイン混合物は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、方法。
・(項目2)
上記投与する工程は、75単位〜500単位のIL−2当量の投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目3)
上記投与する工程は、リンパ節に流れ出るリンパ管への上記NCMの両側投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目4)
上記投与する工程は、上記NCMの片側投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目5)
上記投与する工程は、少なくとも1日間〜10日間の上記NCMの投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目6)
上記投与する工程は、約20日間までの上記NCMの投与としてさらに定義される、項目5に記載の方法。
・(項目7)
上記投与する工程は、約10日間の上記NCMの両側投与としてさらに定義される、項目6に記載の方法。
・(項目8)
上記投与する工程は、手術または放射線治療の前の上記NCMの投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目9)
上記投与する工程は、腫瘍の再発の間の上記NCMの投与として定義される、項目1に記載の方法。
・(項目10)
有効量のシクロホスファミド(CY)を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
・(項目11)
インドメタシン(INDO)、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される有効量の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与する工程をさらに包含する、項目1に記載の方法。
・(項目12)
有効量のシクロホスファミド(CY)および有効量のインドメタシン(INDO)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法。
・(項目13)
有効量のシクロホスファミド(CY)および有効量の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与することによる相乗的な抗癌治療方法であって、当該NSAIDは、インドメタシン(INDO)、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択される、方法。
・(項目14)
有効量のインドメタシン(INDO)ならびに有効量のIFN−δ、IL−2、IL−1、およびTNF−αと組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法。
・(項目15)
有効量のインドメタシン(INDO)ならびに有効量の組換えIL−2、組換えIFN−δ、組換えTFN−α、および組換えIL−1と組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)を投与することにより癌を治療する免疫治療方法。
・(項目16)
IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む天然サイトカイン混合物(NCM)と組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)およびインドメタシン(INDO)を投与する工程を包含する、相乗的な抗癌治療。
・(項目17)
有効量のシクロホスファミド(CY)、有効量のインドメタシン(INDO)、ならびに有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を含む相乗的な抗癌組成物であって、当該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、組成物。
・(項目18)
抗転移治療法であって、当該方法は、リンパ節の未熟な樹状細胞の分化および成熟を促進する工程;結果として生じる成熟樹状細胞によるT細胞への抗原の提示を可能にして当該抗原に対する当該T細胞の免疫を獲得する工程;ならびに転移の進行を妨げる工程を包含する、方法。
・(項目19)
リンパ節での免疫の障害を取り除く工程、および全身免疫を生成する工程ことによる、抗転移方法。
・(項目20)
転移の進行を妨げる工程をさらに包含する、項目19に記載の抗転移方法。
・(項目21)
治療結果を予測するための診断用皮膚試験として天然サイトカイン混合物を用いる方法であって、当該方法は、天然サイトカイン混合物(NCM)を皮内投与工程、および24時間以内に当該NCMに対する応答を測定することにより、ここで、陰性の皮膚試験は、当該NCMに対する不応答を示し、当該陰性の皮膚試験は、放射線治療の有無を問わず、患者が手術に反応できないことを予測する、方法。
・(項目22)
IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む天然サイトカイン混合物(NCM)と組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)およびインドメタシン(INDO)を適用するこ
とによる樹状細胞(DC)の前治療法。
・(項目23)
洞組織球増殖症または陰性天然サイトカイン混合物(NCM)皮膚試験により特徴付けられる単球欠損を治療する方法であって、当該方法は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含むNCMと組み合わせて、有効量のシクロホスファミド(CY)およびインドメタシン(INDO)を適用することによる、方法。
・(項目24)
腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、当該方法は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を投与することによる、方法。
・(項目25)
上記腫瘍抗原は、内因性腫瘍抗原および外因性腫瘍抗原から基本的になる群より選択される、項目24に記載の方法。
・(項目26)
有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)および有効量のシクロホスファミド(CY)を投与することにより腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、当該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、方法。
・(項目27)
上記腫瘍抗原は、内因性腫瘍抗原および外因性腫瘍抗原から基本的になる群より選択される、項目26に記載の方法。
・(項目28)
有効量の天然サイトカイン混合物(NCM);有効量のシクロホスファミド(CY);および有効量のインドメタシン(INDO)を投与することにより腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する方法であって、当該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む、方法。
・(項目29)
上記腫瘍抗原は、内因性腫瘍抗原および外因性腫瘍抗原から基本的になる群より選択される、項目28に記載の方法。
・(項目30)
内因性腫瘍抗原または外因性腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発するための組成物であって、当該組成物は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせから基本的になる群より選択されるサイトカインを含む有効量の天然サイトカイン混合物(NCM)を含む、組成物。
・(項目31)
有効量のシクロホスファミド(CY)をさらに含む、項目30に記載の組成物。
・(項目32)
有効量のインドメタシン(INDO)を含む、項目31に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の他の利点は、容易に理解され、添付図面に関して考察される際に下記の詳細な説明を参照することにより良く理解されるようになる。
【図1】図1は、対照、および扁平上皮細胞頭頸部癌(H&NSCC)の癌対照またはIRX−2(NCM)処理群のリンパ節の大きさを示す棒グラフである。
【図2】図2は対照ならびに頭頸部扁平上皮癌の対照およびNCM(IRX−2)処理患者の二つの棒グラフを示し、一つはT細胞領域を示し、二番目は密度を示す。
【図3】図3は3治療群のB細胞領域および濾胞(follicle)を示す二つの棒グラフを示す。
【図4】図4は3治療群の他細胞および洞組織球増殖症の比較を示す。
【図5】図5は節B&Tおよび癌B&Tの適合プロットを示すグラフである。
【図6】図6は48月齢の処理患者の生存率を図示するグラフである。
【図7】図7は微応答者および無応答者と比較した完全応答者および部分応答者の生存を図示するグラフである。
【図8】図8は生存に対する病理指標の関連を図示するグラフである。
【図9】図9は生存に対するリンパ球浸潤の関係を示すグラフである。
【図10A】図10は24月齢の処理患者の生存率(用量反応)を図示するグラフであり、「x」は約100 IU/mLのIL−2に等しい。
【図10B】図10は24月齢の処理患者の生存率(用量反応)を図示するグラフであり、「x」は約100 IU/mLのIL−2に等しい。
【図11A】図11は成熟樹状細胞および活性化樹状細胞に及ぼすNCM治療の効果を図示する樹状細胞グラフである。
【図11B】図11は成熟樹状細胞および活性化樹状細胞に及ぼすNCM治療の効果を図示する樹状細胞グラフである。
【図12A】図12は共役体およびアジュバントで免疫されたマウスのペプチド特異的DTH応答を図示するチャートであり、該応答は各マウス(ドット)および平均(棒)についてmmの腫脹として示され、アジュバントはx軸で列挙され、未投薬(naive)は免疫されていないマウスを示し、他の全マウスは、指示しない限り(KLH)、オブアルブミン−PSMAペプチド共役体で免疫される。
【図12B】図12は共役体およびアジュバントで免疫されたマウスのペプチド特異的DTH応答を図示するチャートであり、該応答は各マウス(ドット)および平均(棒)についてmmの腫脹として示され、アジュバントはx軸で列挙され、未投薬(naive)は免疫されていないマウスを示し、他の全マウスは、指示しない限り(KLH)、オブアルブミン−PSMAペプチド共役体で免疫される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
一般的に、本発明は、患者が免疫抑制されるワクチン免疫治療を利用して患者を治療する方法を提供する。免疫抑制されるとは、患者が細胞性免疫の低下により新しい抗原に対する応答能力を損ねたことを意味する。より具体的には、血中において、Tリンパ球数が減少し、ならびに/またはこれらの細胞の機能が、例えばPHA増殖検定により示されるように、損なわれる。
「アジュバント」とは、特定抗原に対する免疫応答を増強する能力をもつ組成物を意味する。有効であるために、アジュバントは抗原の部位にまたは該部位の近くに送達されなければならない。このような能力は免疫媒介性防御における有意な増加により明示される。免疫の増強は抗原に対して生じる抗体の力価の有意な増加(通常10倍を上回る)により通常明示される。細胞性免疫の増強は、陽性皮膚試験、細胞障害性T細胞検定、δIFNもしくはIL−2についてのELISPOT検定、または腫瘍内へのT細胞浸潤により測定できる(下記に記載の通り)。
【0016】
「腫瘍関連抗原」とは、類似のタンパク質もしくはペプチド(これらは生体外での樹状細胞のパルシングにより機能することが以前に示された)または他の等価な抗原を意味する。これは、PSMAペプチド、MAGEペプチド(Sahin Uら、Curr Opin Immunol 9:709−715,1997;Wang RFら、Immunologic Reviews 170:85−100,1999)、パピローマ・ウイルス・ペプチド(E6およびE7)、MAGE断片、NY ESO−1、または他の類似抗原を含み得るが、これらに限定されない。以前、これらの抗原は、それらの大きさ、即ち、それらが小さすぎること、またはそれらが免疫原性(即ち、自己抗原)を有さないと以前考えられていたことのいずれかに基づいて、患者を治療するのに有効であるとみなされていなかった。
【0017】
「NCM」とは、米国特許第5,632,983号および第5,698,194号に定義され示されるように、天然のサイトカイン混合物として意味される。NCMは組換えサイトカインを含み得る。簡潔には、NCMは、4−アミノキノロン抗生物質の常在下で、ならびに好ましい実施形態においてPHAである有糸分裂促進剤の常在またはパルス存在とともに調製される。
【0018】
Tリンパ球減少症(低い血中T細胞濃度)は細胞性免疫不全の診断特徴であり、既存の胸腺細胞の機能障害が他の特徴である。Tリンパ球減少症を治療するための一般に承認される(臨床的に認可される)方法はない。骨髄移植(+−胸腺移植)は重症複合免疫不全の症例(SCID−先天性、放射線照射または化学療法が誘発した)で用いられてきた。組換えIL2はAIDSで試行されており、多大な毒性により若干の効果がある。
【0019】
Tリンパ球減少症を治すことを試みて新規なT細胞を作製するための二つの方法がある。一つの方法は、rIL−2治療のように、末梢に既存するT細胞、即ち記憶T細胞(CD45RO)(血液、リンパ節および脾臓)を増やす。他方は、骨髄に由来する前駆体から新規なT細胞への胸腺での処理を伴う。これは生来小児で起きるが成人では起きない。これらの新規な細胞は最近の「胸腺エミグレス(emigres)」と呼ばれ、「未感作」T細胞、即ちCD45RAの表面マーカーを有する。NCM治療(およびサイモシンα1)はこれらの新規なT細胞の産生および増殖する先在の記憶T細胞をもたらす。より具体的には、本発明は免疫付与に関し、抗原に対する免疫応答を提供し、これは内因的または外因的のいずれかで投与される。過去において、このような抗原は免疫原性であると信じられてきたかもしれないが、本発明で用いられる他の抗原は非免疫原性であると以前考えられていたかもしれない。任意の抗原が本発明で使用できる。このような抗原の例は、MAGE−1タンパク質からEADPTGHSY(黒色腫)、MAGE−3からEVDPIGHLY(肺癌)、MAGE−3からEVDPIGHLY(肺癌)、およびその他多数である(Belloneら、Immunology Today,Vol. 20,No.10,p 457−462(1999)を参照)。本発明は一般に抗原処理に作用することを対象とするため、任意の抗原が本発明で使用できる。本発明は腫瘍抗原ならびにペプチドおよび/または糖質を含むハプテンのあらゆる形態にまでおよび得る。本発明は、HIV+患者のAIDSウイルス・ワクチン;状態を管理することが困難な他;腎移植;高齢者等のような適用領域までおよび得る。
【0020】
本発明は、このような免疫が以前では不可能と考えられた被験体において免疫を獲得するために、いくつかの一般的な導出方法工程を利用する。より具体的には、本発明は未感作T細胞の産生を誘導することにより免疫機能低下を克服する方法を提供する。「未感作」T細胞という用語は、新たに産生されたT細胞を成体でも意味することを意味し、これらのT細胞はまだ抗原に暴露されていない。この工程の該T細胞はまだ非特異的であるが、腫瘍ペプチドなどの抗原に暴露された成熟樹状細胞による提示の際に特異的になることができる。従って、本発明は新規なT細胞を補充または作製する。これは一般に天然サイトカイン混合物(NCM)を投与することにより遂行される。NCMは、IL1、IL2、IL6、IL8、IL10、IL12、δIFN、TNFα、G−CSFおよびGM−CSF、これらの組換え体、ならびにこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。これらの構成物質の量および割合は以下に詳述する。好ましくは、約150〜600単位のIL2がNCMに含まれる。
【0021】
任意の実施形態において、NCMは、腫瘍または治療される他の持続性病変などの病変に近い(regional to)リンパ節に流出するリンパ腺の周辺に注射される。腫瘍周辺の注射は僅かな応答、進行にさえ関係するため禁忌である。十(10)日の注射計画が最適であり、二十(20)日の注射プロトコルは、臨床的に有効であるが、癌へのリンパ浸潤により測定されるように、TH1応答を低減し、あまり望ましくないTH2応答へ移行する傾向がある。両側注射も有効である。根治的頸部廓清が起きた場合、対側注射が有効である。
【0022】
種々の癌病変により惹起されるようなT細胞の内因性抑制を遮断することが好ましい。遮断は低用量のシクロホスファミド(CY)および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の共送達によりもたらされる。最適なNSAIDはインドメタシン(INDO)である。INDOは最も効果的なNSAIDであるが、最も有毒でもあるといえるだろう。Celebrex(登録商標)およびVioxx(登録商標)のCoxII NSAIDSもあまり効果がない。イブプロフェンは有効であったが、組織学的応答はTH1媒介応答よりむしろTH2に特徴的であった。これはあまり望ましくない。NSAIDSの副作用はプロトンインヒビターおよびプロスタグランジンE類似体で積極的に処理されることである。亜鉛および総合ビタミンはT細胞免疫を回復する助けになる有用な剤である。反抑制およびNCMなしの亜鉛による治療は効果がない。
【0023】
要約すれば、最短計画はCYおよびNSAIDを用いた反抑制と併用してNCMによる外リンパ治療である。代替計画は、亜鉛およびビタミンをさらに含み、可能ならセレンの添加を含む先述の計画である。亜鉛の好ましい用量は50mgから75mgである。標準的な総合ビタミンが投与できる。亜鉛は市販のグルコン酸塩であり得る。
【0024】
臨床応答を最大にするためならびに生存率の最大増加のため、リンパ球浸潤の程度および種類は重要である。90:10比のリンパ球:顆粒球またはマクロファージの浸潤が最適である。T細胞および/またはB細胞の浸潤は広範性で活発であり末梢性でないことが好ましい。20%未満の軽度の浸潤は頑健な臨床応答と関連しない。組織学的試料における腫瘍の減少および断片化は良好な応答を反映する際に好ましい。良好な応答の鍵となるリンパ節の変化は少なくとも五つ(5)の局面を含む。リンパ節の腫脹ならびに腫瘍が誘導するサイズ縮小の逆転だけでなく正常と比較してサイズの全体的増加が好ましい。増加したT細胞およびB細胞の領域は免疫を示す。洞組織球増殖症(SH)は未熟な樹状細胞の蓄積であると考えられており、該細胞は、腫瘍抗原を取り込み処理するが、成熟できず、細胞毒素T細胞およびB細胞に至るTH1およびTH2に有効な細胞を刺激できる未感作T細胞に対してこれらの腫瘍ペプチドを提示できない。SHの逆転が好ましい。
【0025】
従って、本発明は、局所リンパ節における未熟な樹状細胞の分化および成熟を促進し、故に結果として生じる成熟樹状細胞による小ペプチド、一般に長さ9アミノ酸のT細胞に対する提示を可能にし、T細胞の免疫を獲得することにより、局所リンパ節での免疫の障害を取り除くことを提供する。さらに、成熟樹状細胞の誘導が獲得される。最後に、内因性腫瘍ペプチドを提示する樹状細胞に応答できる非感作T細胞の誘導の存在下でTリンパ球産生患者の末梢血Tリンパ球の動員が望ましい(Sprentら、Science,Vol 293,July 13,2001,pgs 245−248を参照)。
【0026】
上記に鑑みて、本発明の重要な機構特性は有効なペプチド抗原の提示をもたらす樹状細胞のインビボ成熟である。下記に示す例に基づいて、CD45 RA陽性の分化決定されていない未感作T細胞の増加が見出された。抗原とともに、これはT細胞およびB細胞のクローン性増殖を導き、患者に免疫を付与する。結果として生じる血行性散布による腫瘍内への浸潤は頑健な腫瘍の崩壊をもたらす。結果は、下記のデータで見出されるように、免疫記憶による生存の増加である(上記で引用されたSprentらを参照)。
【0027】
外因的に供給される合成または抽出の腫瘍ペプチド(上記で引用されたBellone,らを参照)が前感作または共感作された局所または末梢のリンパ節に送達され、B細胞の有無を問わず、腫瘍抗原に特異的なT細胞を生じ得ることが論理的に予測される。三つの例が以下に示される。上記に鑑みて、NCMおよび他の剤の作用が任意の腫瘍抗原(合成および内因性のペプチドおよびタンパク質)に関して有用であると結論できる。これらのペプチドの多くは正常な免疫原でなく、成熟した活性化樹状細胞により提示された場合のみ、未感作T細胞を免疫するのに有効であろう。従って、免疫T細胞の出現は、樹状細胞が適切に生成されたまたは機能できたことを事実上意味する。また、事実上、樹状細胞の活性化および成熟は、癌免疫不全、ならびにアネルギーおよび推定アポトーシスによる数および機能の低減などのT細胞の周知の障害において重要な因子と考えられるはずである。
【0028】
該計画および本発明に従って送達される薬剤により具体的に言及すると、本発明は、癌患者などの患者、および他の病変または抗原が引き起こす病態の患者に免疫するためにNCMを利用する。
【0029】
より具体的には、本発明は、NCMおよび腫瘍関連抗原を含む有効量の組成物を投与することにより、癌に対する癌患者の免疫応答を増強する方法を利用する。NCMはアジュバントとして作用し免疫応答を引き起こす。腫瘍関連抗原は、癌患者の局所節に存在する内因的に処理された腫瘍ペプチド調製品であり得る、或いは該節に若しくは該節の近くに外因的に投与された腫瘍抗原調製品と併用され得る。腫瘍ペプチドおよび抗原は、ペプチドが免疫原性であると予測されなくとも、本明細書に含まれ、腫瘍関連タンパク質抗原は全長(complete)であるため,より免疫原性である可能性が高い。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明の構成は、低用量のCY、シクロオキシゲナーゼインヒビター、および本発明の組成物の効力をさらに増大することが示された他の類似化合物とともに、以下に定義されるように、NCMおよび腫瘍関連抗原または特異的抗原の投与を含む。
【0031】
本発明に従って、高齢の免疫抑制マウスにおいてT細胞の発達および機能を促進するのに効果的であることが先に示されたNCMが提供される。このNCMを頭頸部癌の免疫抑制患者に投与する際に、NCMで治療された癌患者の血中のTリンパ球の動員がCD2およびCD45 RAの両方をもつ未熟な未感作T細胞の増加を引き起こすことが初めて本適用で証明される。これは、成人が未感作T細胞を生成できることの最初の証明の一つである。先の参照文献:Mackallら,(New England Journal of Medicine(1995),Vol.332,pp.143−149)およびMackall(Stem Cells 2000,Vol. 18. pp. 10−18)による概説は、成人では新規のT細胞を生成できず、小児ではできることを論じ、癌化学療法および/または放射線治療の後にT細胞の補充を試みる問題を論じている。一般に、新規のT細胞は成人で生成されないという定説がある。しかしながら、強化化学療法の骨髄移植後に、新規のT細胞が成人で生成できるという証拠がある。今日まで、分子治療はこれを達成できていないが、HIV感染患者で組換えインターロイキン−2を用いた長期の強化治療でリンパ球数の増加が達成されている。これらは胸腺に由来するT細胞であることが明白に証明されておらず、おそらく既存の末梢T細胞の増殖である。
【0032】
以前、Cortesinaら.は、頭頸部癌の患者で外リンパ的に天然IL−2を使用し、白血球の若干の腫瘍浸潤(Valente Gら、Modern Pathol 3(6):702−708,1990)とともに幾らかの腫瘍の緩解を誘導した(Cortesina Gら、Cancer 62:2482−2485,1988)。治療不可能な再発が起き、該応答は非特異的と呼ばれ、記憶はないため、非免疫性であった(Cortesina Gら、Br J Cancer 69:572−577,1994)。組換えIL−2を用いて初期の観察を確認する反復の試みは実質的に成功しなかった(Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997)。
【0033】
本発明の方法は、局部外リンパ注射または当業者に知られる他の注射でNCMの使用を伴い、免疫治療化合物の十分な局在化を提供する。好ましい実施形態において、該注射は頸部に行われるが、治療されるべき疾患の必要に応じて他の位置に適用できる。この治療は高い割合の患者で臨床的緩解を誘導し、該患者は無再発生存の向上も示した(Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 120:395−403,1994; Meneses Aら、Arch Pathol Lab Med 122:447−454,1998; Barrera Jら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351,2000; Whitesideら、Cancer Res. 53:564−5662,1993)。Whitesideら(Cancer Res. 53:5654−5662,1993)は、頭頸部癌において、組換えインターロイキン−2の腫瘍注射がT細胞リンパ球の浸潤を生じたが、有意な臨床応答はなかったことを観察した。150人以下の患者で外リンパ注射と組み合わせたMultikine(Celsci Website)の腫瘍周辺注射は有意な腫瘍応答を引き起こした。即ち、僅か11人の患者で50%を上回る腫瘍の減少があり、これらの応答割合は本研究で観察される40%の高度の応答と対照的に10%未満であった。その上、彼らは50%の非応答者に言及したが、出願人は僅か20%を観察した。
【0034】
腫瘍周辺および腫瘍内の注射は、初期にNCMプロトコルに対して陽性応答した患者でさえ疾患の進行に関連し得るため、その利点を抹消する。腫瘍周辺注射は従って禁忌であり、本発明の一部として含まれない。これは、腫瘍が免疫の部位でないという解釈につながり、本出願は局所リンパ節が免疫の部位であるという文書を提示する。その後、局所リンパ節の分析は、該局所リンパ節が仮想腫瘍抗原に対する免疫の部位であることが示されたデータを明らかにした(図14〜18)。多数の異なる腫瘍抗原が同定され、このような抗原の存在を考えると、これらが免疫プロトコルで効果的に利用されていないことが過去10年間にわたって難問であった。散発性の肯定的な例が報告されているが、概して、該データは否定的である。抗原提示の問題は過去10年間に集中しており、樹状細胞は腫瘍に由来する小ペプチドの提示において重要な役割として浮上している。DeLaugh and Lotts,Current Opinion In Immunology,2000,Vol.12,pp.583−588; Banchereauら、Annual Reviews of Immunology,(2000),Vol. 18,pp. 767−811;また、Albertら、Nature,Vol. 392,pp.86−89(1998)を参照せよ。
【0035】
簡潔には、腫瘍抗原が適切に抗原性であるために、壊死よりむしろアポトーシスの腫瘍細胞から達しなければならない(Albert,Nature,39 2:86−87,1997)。これらは大組織球の形態を有する未熟な樹状細胞により捕捉される必要がある。これらの未熟樹状細胞は抗原を処理(エンドサイトーシス、食作用および消化)し成熟樹状細胞になり、該成熟細胞はT細胞に提示するためMHCグローブに消化された抗原のペプチド断片(一般に9アミノ酸)を示す。T細胞は、応答するために、MHCグローブおよび種々の共刺激シグナルでそれらに抗原提示しなければならない。
【0036】
Murphyら,1999などの研究者達は、培養で生成した樹状細胞を利用して腫瘍抗原でパルスし、前立腺に特異的な膜抗原ペプチドに対して患者に免疫付与することに僅かな成功を収めた。残念ながら、樹状細胞をパルスするこの研究方法は煩雑であり、むしろ効率が悪い。本発明において、出願人は、リンパ節洞に存在する該細胞が、癌に蓄積し、樹状細胞の系統の細胞であること、および本発明のNCMプロトコルによるインビボ処理後にこれらの細胞が出現し該抗原が最終的にT細胞に対する免疫原になることを示した。これらは次いで該腫瘍に応答できる。このように、本発明の局面は局所リンパ節に微環境を形成でき、有効な抗原の処理および提示を可能にする。病変に往来し腫瘍を破壊できるT細胞に結果を導き出す免疫は、事実上、樹状細胞による適切な抗原処理の証明である。その上、NCMで治療された患者は誰も遠隔転移を発症しなかった。これは臨床的に15%までおよび病理学的に50%まで予測される。これは、単に局所免疫よりむしろ全身免疫が該治療により誘導されたことを示す。これは、先行技術がせいぜい転移性疾患に対して一貫性なく有効であったため、先行技術の組成物を上回る劇的な改善である。本発明の組成物の全身免疫を創出する能力は患者のより有効で効率的な治療を可能にする。さらに、全身応答の規模は、治療の効果を限定することなく且つ毒性なしで、より少ない用量で個体に投与できる。
【0037】
文献(Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997; Hadden JW. Immunology and immunotherapy of breast cancer:An update: Int’l J Immunopharmacol 21:79−101,1999)は、二つの主要な型の癌であるSCCおよび腺癌の両方で、局所リンパ節が、洞組織球増殖症、リンパ枯渇、およびしばしばアネルギー腫瘍関連リンパ球の存在(腫瘍細胞に反応でき、生体外で増殖し、IL−2を用いて回復する)を含む、腫瘍に関係する異常を反映することを示した。次いで、転移とともに、リンパ枯渇および機能低下が起きる。さらに、このような患者の浸潤のない頸部リンパ節は、平均サイズの縮小および頭頸部癌に関連する洞組織球増殖症の増加を示した(図1〜4を参照)。
【0038】
具体的に該組成物に関して、本発明の組成物は天然サイトカイン混合物および内因性または外因性のいずれかの腫瘍関連抗原を含む。その上、低用量のCY、シクロオキシゲナーゼインヒビター、亜鉛、および他の類似化合物は、本発明の組成物の効果をさらに増大することが示された。
【0039】
癌、HIV感染、加齢、腎移植および他のこのような欠損症に関連する細胞性免疫不全の患者を治療するための免疫が本発明の組成物を用いた達成され得る。
【0040】
本発明は多数の実施形態を有する。一つの実施形態において、本発明は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないサイトカインを含む、有効量のNCMを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。上記の方法は75単位から500単位のIL−2当量を投与する工程をさらに含み、該投与はリンパ節に流出するリンパ腺へ両側で行うことが好ましい。または、該投与は片側に行える。NCMは少なくとも1日から10日の間および約20日まで投与される。一つの好ましい実施形態において、投与は約10日間両側で行う。NCMは手術または放射線治療の前に投与できる。または、NCMは腫瘍の再発中に投与できる。NCMに加えて、有効量のCYが投与できる。さらに、有効量のNSAIDが投与でき、該NSAIDは、INDO、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、それらの組み合わせ、および当業者に知られる任意の他の類似NSAIDであり得るが、これらに限らない。
【0041】
本発明の他の実施形態において、有効量のCYおよび有効量のINDOを投与することにより癌を治療する免疫治療方法が提供される。本発明の他の実施形態は有効量のCYおよび有効量のNSAIDを投与することにより相乗的な抗癌治療法を提供する。該NSAIDは、INDO、イブプロフェン、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、CoxIIインヒビター、それらの組み合わせ等であり得るが、これらに限らない。
【0042】
本発明の他の実施形態は、有効量のINDOおよび有効量のIFN−δ、IL−2、IL−1、およびTNF−αと組み合わせて、有効量のNCMを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を提供する。さらなる実施形態は、有効量のINDO、ならびに有効量の組換えIL−2、組換えIFN−δ、組換えTFN−α、および組換えIL−1と組み合わせて、有効量のNCMを投与することにより癌を治療する免疫治療方法を対象とする。
【0043】
相乗的な抗癌治療も本発明により提供され、該治療はNCMと組み合わせて有効量のCYおよびINDOを投与する工程を含む。NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、それらの組み合わせ、および当業者に知られる任意の他の類似サイトカインを含み得るが、これらに限定されない。
【0044】
抗転移治療法は本発明の他の実施形態であり、該方法は、リンパ節の未熟な樹状細胞の分化および成熟を促進し、結果として生じる成熟樹状細胞によるT細胞への抗原の提示を可能にして抗原に対するT細胞の免疫を獲得し、ならびに転移の進行を妨げる工程を含む。
【0045】
さらなる実施形態は、リンパ節での免疫の障害を取り除き、ならびに全身免疫を生成する工程を含む抗転移法を提供する。この方法は転移の進行を妨げる工程をさらに含む。
【0046】
本発明の他の実施形態は、NCMを皮内投与し、24時間以内のNCMの応答を測定することにより、治療結果を予測するための診断用皮膚試験として天然サイトカイン混合物を用いる方法を提供する。陰性の皮膚試験は、NCMに対する不応答を示し、放射線治療の有無を問わず、患者が手術に反応できないことを予測する。他の実施形態は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、それらの組み合わせ、および当業者に知られる任意の他の類似サイトカインなどであるが、これらに限定されないサイトカインを含むNCMと組み合わせて、有効量のCYおよびINDOを適用することにより、樹状細胞(DC)の前治療法を提供する。
【0047】
本発明は、NCMと組み合わせて、有効量のCYおよびINDOを適用することにより、洞組織球増殖症または陰性NCM皮膚試験により特徴付けられる単球欠損を治療する方法を提供する。NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、それらの組み合わせ、および当業者に知られる任意の他の類似サイトカインを含むが、これらに限定されない。
【0048】
さらに、本発明は、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、種々のサイトカインを含む有効量のNCMを投与することにより、内因性または外因性の腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発する種々の方法を提供する。本発明の他の実施形態は、内因性または外因性の腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発するために、上記のNCMおよび有効量のCYを投与することを提供する。本発明のさらなる他の実施形態において、内因性または外因性の腫瘍抗原に対して免疫応答を誘発する方法は、有効量のNCM;有効量のCY;および有効量のINDOを投与することにより行う。該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせなどのサイトカインを含むが、これらに限定されない。
【0049】
本発明は、内因性または外因性の腫瘍抗原に対して免疫応答を誘発する組成物も提供する。該組成物は有効量のNCMを含み、該NCMは、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IL−12、IFN−δ、TNF−α、GM−CSF、G−CSF、それらの組換え体、およびそれらの組み合わせなどのサイトカインを含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、該組成物は有効量のCYを含む。さらなる他の実施形態において、該組成物は有効量のINDOをさらに含む。
【0050】
上記実施形態のいずれについても、下記の投与詳細および/または治療プロトコルが用いられる。
【0051】
(投与および治療プロトコル)
(遺伝子産物/合成抗原の送達)
本発明の化合物(NCMを含む)、および外来性抗原は、各患者の臨床状態、投与の部位および方法、投与の日程計画、患者の年齢、性別、体重を考慮して、最適な免疫を得るために投与および服用される。本明細書の目的上、薬学的に「有効な量」とは、従って、当分野で知られるような検討材料により決定される。該量は、腫瘍の減少、断片化および浸潤の改善、生存率若しくは早期回復、または症状の改善もしくは解消を含むが、これらに限定されない、免疫を達成するのに有効でなければならない。
【0052】
本発明の方法において、本発明の化合物は種々の方法で投与できる。それらは化合物としてまたは薬学的に許容しうる塩として投与され得ることならびに単独でまたは薬学的に許容しうる担体、希釈剤、アジュバントおよび賦形剤と組み合わせた活性成分として投与され得ることに留意すべきである。該化合物は、皮内もしくは皮下に、またはリンパ周辺もしくはリンパ内、節内もしくは脾臓内もしくは筋内、腹腔内、および胸内に投与され得る。該化合物の移植も有用であり得る。治療される患者は温血動物であり、とりわけヒトを含む哺乳動物である。薬学的に許容しうる担体、希釈剤、アジュバントおよび担体、ならびに移植担体は、一般に、本発明の活性成分と反応しない、不活性な非毒性の固体もしくは液体の増量剤、希釈剤、または封入材料を指す。
【0053】
該用量は単回用量または数日の期間にわたる複数回用量であり得る。本発明の化合物を投与する場合、一般に単位用量注射剤形(溶液、懸濁液、乳濁液)で製剤される。注射に適した薬剤形は滅菌の水溶液または分散液および滅菌注射の溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含む。該担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。
【0054】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用により、分散液の場合、必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、保持され得る。綿実油、ゴマ油、オリーブ油、大豆油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、または落花生油、およびミリスチン酸イソプロピル等のエステルなどの非水性賦形剤も化合物組成物の溶媒系として使用できる。その上、抗菌性保存剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝剤を含む、組成物の安定性、滅菌、および等張性を強化する種々の添加剤も添加できる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などにより、保証され得る。多くの場合において、等張剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい。注射用薬剤形の持続的吸収は、吸収を遅延する剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用により実施できる。しかしながら、本発明に従って、使用される任意の賦形剤、希釈剤、または添加剤は該化合物と適合しなければならない。
【0055】
ペプチドは重合され得るまたは当分野で周知のヒト血清アルブミンなどの担体と共役され得る。滅菌注射溶液は、本発明を実施する際に使用される化合物を、必要ならば種々の他の成分とともに、必要量の適切な溶媒に加えることにより、調製できる。
【0056】
本発明の薬剤形は、種々の賦形剤、添加剤、および希釈剤などの任意の適合担体を含む注射剤形で患者に投与され得る;または、本発明で使用される化合物は、徐放性皮下移植の剤形で、もしくはモノクローナル抗体、ベクター送達、イオントフォレーゼ、ポリマー・マトリクス、リポソーム、およびマイクロスフェアなどの標的送達系で、患者に非経口投与され得る。本発明に有用な送達系の例は、米国特許第5,225,182号;第5,169,383号;第5,167,616号;第4,959,217号;第4,925,678号;第4,487,603号;第4,486,194号;第4,447,233号;第4,447,224号;第4,439,196号;および第4,475,196号を含む。他の多数のこのような移植、送達系、およびモジュールは当業者に周知である。
【0057】
前記は、自己または定義された通りのタンパク質もしくはペプチドのいずれかの腫瘍抗原に対して癌患者を免疫するためにアジュバントとしてNCMを用いるプロトコルを提供する。
【0058】
使用されるべき抗原調製品: 癌
1)PSMAペプチド(9)−市販 前立腺
2)MAGE1&3&MAGE断片&NY ESO−1 黒色腫
Ludwig Inst. Of Immunolから入手 H&NSCC
3)市販のパピローマ・ウイルスE6&E7 子宮頸部SCC。
【0059】
頸部は利用しやすく全身のリンパ節の>30%を含むため、市販では抗原の投与経路は頸部であることが好ましく、全身性免疫は結果を想定できる。
【0060】
(低用量のCY)
低用量のCYは癌のマウスおよび患者において細胞性免疫を増大しリンパ球による抑制を低減するために用いられ(Berd D.,Progress in Clin Biol Res 288:449−458,1989; Berd Dら、Cancer Research 47:3317−3321,1987)、癌患者の効果的な免疫治療に利用されてきた(Weber J.,Medscape Anthology 3:2,2000; Murphy GP,Tjoa B A,Simmons S J. The prostate. 38:43−78,1999; Hadden JWら、Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 120:395−403,1994)。
【0061】
(亜鉛)
亜鉛欠乏は細胞性免疫の改善に関連し、亜鉛による治療はマウスで免疫回復する(Hadden JW.,Int’l J Immunopharmacol 17:696−701,1995; Saha A.,ら. Int’l J Immunopharmacol 17:729−734,1995)。
【0062】
(INDOなどのシクロオキシゲナーゼインヒビター(COXi))
癌はプロスタグランジンを産生し、宿主のマクロファージによるプロスタグランジンの産生を誘導する(Hadden JW. The immunopharmacology of head and neck cancer:An update. Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997)。プロスタグランジンはT細胞に免疫抑制することが知られているため、シクロオキシゲナーゼインヒビターを用いたPG合成の阻害が適切である。
【0063】
(組換えタンパク質の精製)
Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization. A laboratory course manual.」 CSHL Press,1996。
【0064】
(抗原の用量および頻度)
1〜1000 μg、好ましくは10〜500;可溶性の剤形(必要ならば、部分重合または担体に共役)。用量の投与は、1日目、12日目、および21日目に行う。前処方薬は12日目、21日目、および31日目に行う。注射の部位は局所(即ち、頸部注射)である。
【0065】
(予測される応答)
1) 腫瘍の減少;
2) 腫瘍の病理変化(減少、断片化、リンパ浸潤);
3) 抗原に対する体液性免疫(RAIまたはELISA);および/または
4) 抗原に対する細胞性免疫(ELISPOT検定の皮内皮膚試験インビトロ・リンパ
球増殖)。
【0066】
PSMA、MAGE断片、E6、E7ペプチドなどのオリゴペプチドは樹状細胞へのパルシングでさえ免疫原性に乏しい。従って、有効な免疫が生じると予測されないだろう。たとえ有効な免疫でも、特に前立腺および頸部と同様な遠隔での本方法による腫瘍の緩解は、意外と考えられるだろう。免疫治療による転移性疾患の緩解は常に驚くべき事象である。臨床応答の程度および頻度は、有効性の因子であるため、本研究法の新規性である。
【0067】
診断用皮膚試験はより有効な免疫を得るための他の方法である。患者は、より良い応答(NCMおよびPHA皮膚試験およびリンパ球数およびリンパ節異常の逆転を増大する)を誘起するために本発明のNCMで前治療され得る。結果として、アジュバント計略が創出された。該計略では、免疫回復およびアジュバンシー(adjuvancy)の組み合わせが行われ、ペプチドおよびタンパク質を免疫原性にすることが行われ、ならびに腫瘍緩解を遠隔でもたらす免疫応答の度合いを得ることが可能である。
【0068】
患者はプロトコルの検討前に一つ以上の腫瘍ペプチドについて皮膚試験され得る。100 pgの一つ以上の腫瘍ペプチドは、NCM系の1日目および10日目に、以下に論じるようなNCMプロトコルを用いて、NCMとともに頸部のリンパ周辺に投与され得る。該組み合わせは21日目に反復される。腫瘍の応答および組織像に加えて、該ペプチドに対する免疫反応は反復皮膚試験によりまたは当分野で知られる他の手段により観察される。
【0069】
上記の論議は本発明の用途の事実上の基礎を提供する。本発明の有用性とともに用いられる方法は以下の非限定的な実施例および添付の図面により示され得る。
【実施例】
【0070】
(材料および方法)
細胞培養に関する全ての工程は滅菌状態の下で実施される。本明細書に記載されない細胞免疫学の一般方法は、Mishell and Shiigi(Selected Methods in Cellular Immunology,1981)などの細胞免疫学技法についての一般的な参照文献に記載されているように実施され、当業者に周知である。
【0071】
(天然サイトカイン混合物(NCM)の調製)
ヒトの血液の軟膜白血球は複数のHIV陰性肝炎ウイルス陰性の提供者から回収する。代替実施形態において、動物は獣医学用途の細胞起源でありうる。提供者からの細胞はプールされ、ficoll hypaque gradient(Pharmacia)に積層し、好中球および赤血球を含まないリンパ球を得た。当分野で知られるものと同じ出発リンパ球集団を生じる代替方法が用いられうる。
【0072】
リンパ球は洗浄し、刺激剤、即ちPHAなどの有糸分裂促進剤が固定される細胞サブセット選別用の表面活性化細胞培養フラスコ(MICROCELLECTOR(登録商標) T−25 Cell Culture Flask)へX vivo−10 media(Whittaker Bioproducts)中に分配した。一連の実験において、X vivo−15およびX vivo−20の培地は指示通りに使用した。刺激剤の固定化工程は、パニング手法、即ち該フラスコで細胞を分離する手法用に種々の物質を固定化することについては製造業者の記載通りである。または、リンパ球は、刺激剤、例えばPHAに、2〜4時間暴露された後、三回洗浄する。
【0073】
該細胞はCO2/空気インキュベーターで37℃で80 μg/mlのシプロフロキサシン(Miles Lab)とともにX vivo−10培地中で24〜48時間インキュベートする。または、RPMI1640培地が使用されうる(Webbら. 1973)。一般的に、HSAは0.1%から0.5%で使用される(体積重量)。インキュベーション後、上清は注いで回収する。HSAを含まない培地が代々使用される場合、ヒト血清アルブミン(HSA)は、インターロイキンをさらに安定化するために添加されうる。該上清は4℃から−70℃で保存される。
【0074】
(リンパ球の刺激)
本目的は、血清の不在下で且つ上清に有意な量のPHAを生じない方法で高レベルのインターロイキン−2を産生するためにリンパ球を刺激する方法を見出すことであった。これを行うため、PHAは、「パニング」細胞分離の製造業者の取扱説明書に記載されているように細胞サブセットの選別用の表面活性化細胞培養フラスコ(AIS MICROCELLECTOR(登録商標)T−25プレート)に固定されまたは該細胞にパルスされた後洗浄した(パルス技法)。
【0075】
これらの実験で用いる培地はX vivo−10(Whittaker)であった。これはインターロイキン−2リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞プロトコルで米国食品医薬品局によりヒトへの投与が認可されている。最小必須培地(MEM)またはRPMI−1640(Sigma)のようにヒトのリンパ球の増殖を支持できる無血清培地も使用されうる。
【0076】
初期の実験は、PHA(HA−16,Murex Diagnostics Ltd.,Dartford,UK)が製造業者により記載される技法によって固定されうること、ならびに7.5〜15x106/mlの細胞数、24時間から48時間の暴露時間、および25または50 μg/mlのPHA濃度の適切な条件下で、無血清上清に高収率のIL−2が得られうることを示した。さらなる詳細な情報は、Haddenの国際公開番号WO03/035004 A2およびHaddenの国際公開番号WO02/34119 A2に示され、これらは参照により本明細書にそのまま組み入れられる。
【0077】
(NCMの調製)
本明細書に記載する実施例では、INCAN血液銀行から得られるプールされたヒト末梢血軟膜はフィトヘマグルチニン(Murex,Dartford,UK)とともにインキュベートし洗浄した。該細胞は無血清培地(x−vivo 10,BioWhitaker)で24時間インキュベートした。バッチは、6人の血液提供者から調製し、B型およびC型の肝炎ウイルス、HTLV1および2、ならびにHIVについてINCAN血液銀行によりスクリーニングした。培養の24時間後、培養物は遠心分離し、上清は0.2ミクロン・フィルターを通して濾過し、天然サイトカイン混合物はバイアルに静置した。本発明のNCMのバッチの活性はELISAによる測定で平均して200 U/mlのIL−2であった。バッチのバイアルは使用するまで−70℃に保存した。
【0078】
サイトカインは市販のELISAキット(Quantikine(登録商標)、R&D Systems,Inc.,Minneapolis,MN)(表1を参照)を用いて検定した。本発明のNCMの生物活性はマウスの細胞障害性T細胞系(CTLL−2)を用いて確認し、これは当初IL−2の生物活性の指標として開発された。
【0079】
(表I:INCANで使用される5つのロットについてのNCMサイトカイン含量)
【0080】
【表1】
(患者)
頭頸部のI〜IV期扁平上皮癌を患う42人の患者が試験に参加した(Hadden,ら.,International Immunopharmacology 3;1073−1081(2003))。27人の患者は本発明のNCMの一つ以上の10日コースで治療された。15人の患者は二つの頸部部位で本発明のNCMの20日コースを受けた。これらの患者のうち4人は低レベルのサイトカインを含む本発明のNCMの調製品を受けた(1/4x、これらの患者は統計分析から排除された)。他の10人の患者は研究参加の時点で研究対象患者基準を満たしていなかったが、温情的様式でNCMで治療された。温情的治療は、NCMに対する陰性皮膚試験への応答、転移性疾患の発生、または外科的治療の対象でないことにより、生じる。全患者の年齢中央値は66.0歳(34〜86歳の範囲)であり、男性:女性の比率は4:1であった。大半の患者は喉頭または口腔のIII&IV期扁平上皮癌を患っていた。I&II期の患者は舌の病変を患っていた。
【0081】
応答は標準的な癌基準および腫瘍に基づいて評価された。生存はコンピュータ・ソフトウェア統計パッケージ(GRAPHPAD(登録商標),San Diegom CA)を用いてカプラン−マイヤー・プロットにより見積もられ、完全応答(CR)、50%を上回る腫瘍減少の部分応答(PR)、および無応答または25%未満の腫瘍減少が記録された。
【0082】
(治療計画)
それぞれの治療周期は21日続いた。各周期は、300 mg/m2のシクロホスファミド(CY)の静脈注射、一日三回経口で25 mgのインドメタシン(INDO)、および一日一回経口で亜鉛(硫酸塩として65 mgの元素亜鉛)を用いて開始した。患者は0.1 mLのNCMを経皮投与される皮膚試験も受けて構成要素に対するアレルギー応答を除外しならびに4日目にNCMに対する遅延型過敏症(DTH)を示した。患者は、1.0 mLのNCMを10日間または2.0 mLのNCMを20日間、乳突先端(mastoid tip)の2.0 cm下の胸鎖乳突筋の停止(insertion)点で筋肉内投与されて治療した。手術を受けた患者において、治療は手術部位に対側な無傷の頸部に投与した。全ての患者は研究に参加することの同意書に署名し、該研究はINCANの施設内倫理委員会および調査委員会ならびにメキシコ厚生省(Mexican Ministry of Health)により承認された。いずれの基礎免疫疾患、重症な全身性疾患の患者、または免疫抑制治療を要する患者は該試験から除外した。外科的治療の対象である患者は21日目に手術を受け;術後の放射線治療は外科医および顧問の放射線腫瘍医の裁量で再発の危険性が高い患者(例えば、病変節および/または陽性の切除縁をもつ者)に施された。常套的な外科病理学が全ての治療前および治療後の生検標本について行われた。腫瘍の様々な組織要素を定量するために、腫瘍を含む代表的な生検切片は低出力下で選別され、腫瘍の量は全領域の百分率として表した。残りの基質はリンパ球を有する領域の割合について評価された。腫瘍は、充実性である標本領域の割合、および記載される浸潤のような散在白血球による断片化の割合についてさらに評価された。
【0083】
(表II:頭頸部癌の研究の患者特性)
【0084】
【表2】
(実施例1)
NCMおよび低用量CY、INDO、および亜鉛を含む頸部の局所リンパ周辺注射は、改善された再発のない生存の証明とともに、高率の扁平細胞頭頸部癌(H&NSCC)患者に臨床的緩解を誘起した(Hadden J W,ら.,Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 120:395−403,1994; Meneses A,ら.,Arch Pathol Lab Med 122:447−454,1998; Barrera J,ら.,Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351,2000; Hadden,ら.,2003; Menesis,ら.,2003)。病理標本の微応答(25%−50%)、腫瘍の縮小および腫瘍の減少を含めて、全体としては、90%を上回って応答し、大半が50%を上回る腫瘍の減少があった。
【0085】
これらの応答は、Bリンパ球およびTリンパ球の両方が腫瘍を浸潤することが観察されたため、免疫緩解により媒介されることが推測される。該治療は有意な毒性を伴わなかった。NCMと組み合わせたリンパ球減少癌患者の治療は著しいリンパ球の動員を招いた。分析すると、これらの患者はCD45RA陽性T細胞(即ち、未感作T細胞(表IV))の増加を示した。さらに、H&NSCC患者におけるNCMの腫瘍内注射または腫瘍周辺注射は、免疫治療が誘発する腫瘍緩解の逆行または腫瘍の進行のいずれかを引き起こす。従って、腫瘍は免疫の部位ではない。結果として、局所リンパ節の分析は、該局所リンパ節が想定腫瘍抗原に対する免疫の部位であることを示すデータを明らかにした(Meneses,ら.,2003)(図1〜5を参照)。NCMで治療されたこれらの患者は誰も臨床的に15%および病理学的に50%まで予測される転移を発症しなかった。これは、単に局所免疫よりむしろ全身性免疫が誘起されたことを示す。患者は治療前に0.1 mlのNCMに対して皮膚試験で予備試験され、陽性の皮膚試験(24時間で>0.3 mm)者の90%以上が頑健な臨床応答および病理応答であった。陰性の皮膚試験の患者は弱い応答または無応答であった。従って、皮膚試験は良好な応答者を選別する。
【0086】
Tリンパ球数(CD2)752−>1020の際立った増加がこれらのTリンパ球減少患者において観察された(T細胞数752対1600(正常))。重要なことには、「未感作」CD45RA陽性T細胞(532−>782)が対応して増加した。先述するように、これらの増加は特にNCMのような薬理療法で成人に起きないと一般に考えられている。これらの細胞はおそらく胸腺遊出(thymic emigre)したばかりであり、腫瘍抗原と同様な新規の抗原に対して応答する主要な新能力と考えられうる。既存のCD45RA陽性細胞は腫瘍抗原に応答しなかった。該細胞は、腫瘍が誘発する免疫抑制(アネルギー)により、そのようにすることができないことがあり得る。
【0087】
文献(Hadden JW,Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997; Hadden JW. Int’l J Immunopharmacol 21:79−101,1999)は、二つの主要な型の癌であるSCCおよび腺癌の両方で、局所リンパ節が、洞組織球増殖症、リンパ枯渇、およびしばしば(IL−2で)腫瘍細胞に反応できるアネルギー腫瘍関連リンパ球の存在を含む、腫瘍に関係する異常を反映することを示す。転移とともに、リンパ枯渇および機能低下が起きる。浸潤のない頸部リンパ節の未公開分析で、10人のH&NSCCおよび10人の対照は、平均サイズの縮小およびH&NSCCに関連する洞組織球増殖症の増加を示した(図1〜4)。
【0088】
(表III:NCMによるH&NSCCのリンパ球減少患者の治療は血中の未感作T細胞を増加させる(#/mm))
【0089】
【表3】
一周期のNCMプロトコル(Hadden JW,ら.,Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 120:395−403,1994; Meneses A,ら.,Arch Pathol Lab Med 122:447−454,1998; Barrera J,ら.,Arch Otolaryngol Head Neck Surg 126:345−351,2000)による治療後、浸潤のない頸部リンパ節は図1〜4に示す変化を示した。NCMで治療しないH&NSCC患者の局所リンパ節と比べると、これらの節は、サイズ、T細胞の領域および密度で有意な増加を示し、胚中心数および洞組織球増殖症およびうっ血で減少を示した。治療患者のリンパ節は全て刺激され、対照節より大きく、T細胞の領域および密度が増加した。従って、これらの節は正常に回復するだけでなく、H&NSCCの生存との知られる正相関であるT細胞優勢の証拠を示した(Hadden JW. Int’l J Immunopharmacol 11/12:629−644,1997)。
【0090】
重要なことには、B細胞およびT細胞の領域に関連するリンパ節の変化がT細胞およびB細胞の浸潤を反映する腫瘍の変化と相関した場合、高度の相関関係がT細胞(p.<0.01)およびB細胞(<0.01)および全リンパの存在(p.<0.001)について得られる(図5)。同様に、これらの変化は病理基準および臨床基準による腫瘍の減少と相関する。これらの発見は、腫瘍の反応がリンパ節の変化と直接に且つ正に相関すること、および腫瘍の反応が従属変数のようにリンパ節の変化を反映することを示す。免疫系が全般にどのように機能するかについての知見(Roitt I,Brostoff J,Male D. Immunology J B Lippincott Co,Phila,Pa.,1989)と併せて、これらの発見およびサイトカイン遺伝子による下記の腫瘍トランスフェクション(Maass Gら、Proc Natl Acad Sci USA,1995,92:5540−5542)は、NCMプロトコルがリンパ節のレベルで未だ同定されていない腫瘍抗原に対して該患者に免疫付与することを示す。誰も自己腫瘍抗原による免疫を反映するリンパ節の変化についての証明をこれまで提示しなかった。これは、本発明が遠隔転移の緩解を得る作用においてこれまで無効なまたは効果に乏しい腫瘍抗原を用いて免疫を誘発できることを確認する。
【0091】
(実施例2)
前述したINCAN研究の臨床学的、病理学的および生存のデータのさらなる分析は、自身の自己腫瘍抗原に対する癌患者の免疫および得られる腫瘍の免疫緩解に関するため、本発明の性質により多くの洞察を与える。図6は、NCMプロトコル(IRX−2)による治療が48ヶ月目の生存の増加(p<0.01)に関連することを示す。図7は、完全応答(CR)および部分応答(PR)(>50%の腫瘍減少)の該患者が微応答(MR)(<50%だが、>25%の腫瘍減少)または無応答(NR)()の患者より良好な生存率を有する(p<0.01)という点で、臨床応答が生存を決定することを示す。図8は、強い病理応答の患者(6〜9の指標)が弱い病理応答(<6)の患者より良いことを示す(p<0.02)。図9は、単一の変数としての腫瘍へのリンパ浸潤が生存を予測する(p<0.01)ことを示す。最後に、病理応答に対する臨床応答の関係のカイ二乗分析は極めて有意な関係を示し(p<0.01)、両応答が相互におよび生存に強調的に関連することを示すため、臨床応答、免疫緩解パラメータ、および生存に相関するデータの統計三角測量を提供する。このような関係はヒトの癌の免疫治療について決して示されなかった。
【0092】
(実施例3)
二人の患者は頭頸部のリンパ腫を治療された。含まれる患者は該プロトコルに参加することに同意した頭頸部癌の患者であった。
【0093】
治療前に、該患者は前腕の皮下に0.1 mlのNCMで皮膚試験し、その領域は印を付け、24時間後に該試験は読み取られた。該試験は、誘発および紅斑が3 mm以上である場合に陽性とみなされた。
【0094】
(症例1)
患者は、左顎下腺領域に腫瘍が存在する3ヶ月の前歴をもち他の症状はないことを提示する23歳の男性であった。緊急治療室で、彼は深いレベルに部分固定された一貫して堅い直径約6.5 cmの左顎下三角のリンパ節腫脹を有することが見出された。他の健康診断は正常であった。切開生検はホジキン・リンパ腫を示した。該病変はECIIA期であった。NCMの一周期治療が施され、リンパ節腫脹が直径1 cmのサイズに減少する微応答が得られた。NCM治療が病変の60%を示した後に得られる生検報告は、正常なリンパ球の浸潤を示し、残りの新生組織形成(40%)は壊死を示した。生存する腫瘍細胞は見出されなかった。
【0095】
この後、患者は頸部に3600ラドの放射線治療を受けた。該患者は現在無病である。
【0096】
(症例2)
患者は82歳の男性であり、有痛性の中頸部腫瘤である二ヶ月の前歴および10 kgの体重減少を提示した。健康診断で、該患者は右口蓋扁桃に腫瘍を提示し、これは約4x3 cmまで肥大し、扁桃腺の中心に潰瘍があった。頸部で、右顎下リンパ節は約2x2 cmを測定し、レベルIIおよびレベルIIIのリンパ節の腫瘤は約5x5cmであった。他の試験は正常であった。扁桃腺および頸部のリンパ節の一つの切開生検は、中等度の明確な混合の非ホジキン・リンパ腫であることを証明した。
【0097】
該患者は二周期のNCMを受け、その終わりに扁桃腺および頸部リンパ節腫脹に直径1 cmの減少が観察された。NCM治療後の病理報告は、生存腫瘍が20%、断片化および壊死が30%、ならびに正常なリンパ球の浸潤が50%であることを示した。
【0098】
該患者は6周期間の化学治療(CHOP)、次いで4600ラドの全用量で外部放射線治療(RT)を施された。彼はRTの8ヶ月後に後頭部のレベルに副腎過形成を再発した。該患者は頸部疾患の徴候の3ヵ月後に亡くなった。
【0099】
(実施例4)
臨床的にIB1期、IB2期およびIIA期である未治療の初期子宮頸癌を患う10人の患者は、局所リンパ周辺注射のNCM(10日の連日注射)で治療された後、21日目に広範子宮全摘術で治療された。本発明のNCM治療を開始する一日前に、患者は300 mg/mの単回IV用量のCYを受容した。INDOまたはイブプロフェンおよび硫酸亜鉛は1日目から21日目まで経口投与された。臨床応答および病理応答、毒性および無病生存率が評価された。
【0100】
全ての患者がNCMを治療を完了し、応答および毒性について評価された。臨床応答は患者の50%に見られた(3人が部分応答(PR)、2人が微応答(MR)(>25%<50%の減少))。7人の患者は手術を受けた。病理学的に腫瘍断片化に関連する腫瘍の減少は5人の症例で見出された。腫瘍に浸潤する細胞型は、リンパ球、形質細胞、好中球、マクロファージおよび好酸球を含む、むしろ混成の様式であった。治療は、注射中の軽度の疼痛および少量の出血ならびにINDOに対する胃の不耐性を除いて、十分に耐えられるものであった。24ヶ月のフォロー・アップで、9人の患者は無病であった。
【0101】
これまで未公開の本研究は、腫瘍周辺のNCMが初期の未治療の子宮頸癌において免疫媒介性腫瘍応答を誘起することを示す。
【0102】
(実施例5)
原発性肝細胞癌から肝転移した二人の患者は脾臓内NCM(1回または3回の注射)で治療した。該プロトコルは、さもなければ、H&NSCC、子宮頸部、またはリンパ腫の症例について先述した通りであった。一人の進行性肝細胞癌患者は断層撮影により確認される部分応答を有した。組織像は利用できない。もう一人は手術により確認される部分応答を有した。組織試験は、腫瘍の減少、断片化、およびリンパ浸潤を示した。
【0103】
(実施例6)
陰茎の扁平上皮癌(ヒト・パピローマ・ウイルスが関係する)の4患者は上述したようなNCMプロトコルで治療し;4人全員が臨床的に部分応答し、外科標本はH&NSCC癌患者に特徴的な腫瘍減少および断片化およびリンパ浸潤を示した。
【0104】
(実施例7)
(天然サイトカイン混合物の用量および頻度)
10日の注射プロトコルは20日の注射プロトコルと比較された。両側注射は片側注射と比較され、一連の用量が比較された。生存に有意な活性は74〜1310単位のIL−2当量(ELISA、R&D Systemsにより測定される)から観察され、ピークは100〜233単位であった(図9)。両側注射は有効であり、同側リンパ節の切開を受けた1人の再発患者では、対側注射が用いられ、良好な応答が得られた。この観察は、腫瘍抗原が対側節にも存在しうることを示すため、両側注射が好まれる。20日注射プロトコルは臨床応答および生存率の点で有効であったが、外科標本は10日片側プロトコル(34%領域)または10日両側プロトコル(33%領域)より少ないリンパ浸潤(17%領域)を示した(p<.05)。同等な腫瘍減少応答とともに少ないリンパ浸潤は抗体媒介性免疫応答が関与することを示す。なぜなら、これらの応答はリンパ球媒介性応答(即ち、細胞障害性T細胞)より効果が低いと考えられるためであり、20日注射プロトコルはより多くの労働および費用を伴い、100単位のIL−2当量または部位を用いる10日両側注射プロトコルが最適と考えられる。
【0105】
図10は24ヶ月での全生存率について本発明のNCMの一連の用量を図解する。約100〜233国際単位のIL−2当量で生存率に最適な影響を及ぼし、約16単位では効果が無く、約1310単位では効果が弱い。
【0106】
(非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の役割)
INDOはシクロオキシゲナーゼI&IIの両方に作用する最も強力なNSAIDであるが、より強い胃腸毒性を有する。セレコキシブ(Celebrex(登録商標))およびロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))等の新しいCoxIIインヒビターは弱い胃腸毒性を有すると考えられる。少数の患者におけるINDOの代わりの該二剤の使用は、臨床基準および病理基準によりならびに生存率により測定されると、より弱い応答を生じた。Vioxx(登録商標)の場合、全7人の患者は1週間の治療後に胃炎の臨床的徴候を有した。子宮頸癌患者では、イブプロフェンがNSAIDとして使用され、良好な応答が得られた。これらの観察に基づいて、INDOが好ましいが、セレブレックスまたはイブプロフェンは、INDOが耐容性でない場合、代用できる。Vioxx(登録商標)は推奨されない。経口プロスタグランジン類似体の有無を問わず、プリロセック(Prilosec)または他のプロトン・ポンプインヒビターは胃炎の予防として推奨されるが、ヒスタミンH2遮断薬は指標と考えられない。
【0107】
(CYと併用したNSAIDの役割)
4人の患者において、不活性と考えられる用量(図10、15単位カラムを参照)のNCMがINDOおよびCYと併用して付与された。生存は観察されなかったが、2患者は微応答(<50%だが、>25%の腫瘍縮小)を有し、4人全員が腫瘍の減少および断片化ならびにリンパ浸潤とともに腫瘍標本に中等度の病理変化を示した(表IVを参照)。INDOは数人の患者でリンパ浸潤および腫瘍減少を増大し得る(Panje,1981およびHirsch,ら.,1983を参照)が、H&NSCCの有用な治療として臨床的に承認されてない。同様に、この用量のCYはH&NSCCで臨床的に活性であるとみなされていない。INDOおよびCYの単独の活性は腫瘍応答の規模および種類において意外と考えられる。INDOおよびCYは他形態の免疫治療での使用に相乗的な組み合わせとして考えられる。
【0108】
最近、低用量の組換えIL−2がH&NSCC患者で転移の再発を遅らせ平均生存時間を上昇させることが報告された(DeStefani,ら.,2002,and Valenteら、1990を参照)。先行技術の研究において、臨床応答は観察されず、より弱い腫瘍の変化(腫瘍緩解のないリンパ浸潤)が観察された。それにもかかわらず、rIL−2はCY&INDOと作用してさらに臨床応答を誘発し生存率を向上し得る。NCMに単独でまたは共同で存在するものに対応する他の天然または組換えのサイトカインも潜在的に活性である。例えば、IL−1、IFN−δ、TNF−α、IL−6、IL−8、GM−CSF、G−CSF、IL−12、およびそれらの組み合わせ等のサイトカインは天然または組換えの形態で使用され得る。
【0109】
(表IV:CYおよびINDO(±NCM))
【0110】
【表4】
(実施例8)
(予後における皮内皮膚試験の役割)
本発明者らは、NCMに対して陰性の皮内皮膚試験の患者が一人の患者に基づいて弱い臨床応答を示すことを以前に示唆した。本発明者らは、現在、一連の皮膚試験に陰性の患者を累積し、該患者が実施例7で見られる有意なNCMを含まないCY&INDOの組み合わせに類似する変化を示すことを見出す。10人の患者(フアレス病院からの4人を含む)は本発明のNCMで陰性の皮膚試験を有し(即ち、NCMに反応しない)、NCMならびにCYおよびINDOで治療された。これらの患者は、弱い臨床応答、少ない腫瘍の減少および断片化、ならびに低い生存率(20%)を有した(表Vを参照)。従って、これらの観察は、INDOおよびCYがNCMなしに著しい活性を有するという実施例7からの結論を裏付ける。重要なことには、これらは、該皮膚試験が生存率の改善に関係する強い臨床応答および病理応答を予測するために重要であることを確認する。その上、陰性の皮膚試験は、放射線治療の有無を問わず、手術に対する患者の応答不能を予測する。NCM皮膚試験はH&NSCCの治療結果を予測するために有効に用いられ得る。以前、ジニトロクロロベンゼン(DNCB)を用いた皮膚試験はH&NSCCの予後的意義を示したが、感作を要する煩雑な手順により、臨床的にもはや用いられていない。NCM皮膚試験は簡便な24時間の試験を提供する。
【0111】
興味深いことに、これらの患者は二群に分類された。表VIbの一群では、応答が特に弱く、生存者はいなかった。表VIaの他方の群では、該患者は、陰性のNCM試験を治療後に陽性に変化させ、プロトコルの患者と同様な臨床応答および病理応答ならびに生存率を示した(表VIBを参照)。
【0112】
これらの患者の一人は手術不可能と考えられる腫瘍を有し、陰性の試験を陽性に変えることが示され、第二の治療により臨床的におよび病理基準により該腫瘍を減少でき、術後の生存率を延ばすことができた(>7年)。NCMを用いた皮膚試験陰性患者のこの前治療は応答割合を増加し得る。NCMおよびサイモシンα1は機能も予測され得る(公開された米国出願第20030124136号を参照)。陰性のNCM皮膚試験は単球の障害を反映し、天然または組換えの形態の単球活性サイトカインを用いた治療は単独でまたはこれらの組み合わせで有用であることが予測される。これらは、GM−CSF、M−CSF、IFN−δ、IL−1、IL−6、IL−8、IL−12およびその他を含むが、これらに限定されない。
【0113】
(表V:陰性のNCM皮膚試験の患者)
【0114】
【表5】
(表VI:ALFペプチドに対する血清IgG)
【0115】
【表6】
(表VIB:LLHペプチドに対する血清IgG)
【0116】
【表6B】
(表VIC:オブアルブミンに対する血清IgG)
【0117】
【表6C】
(実施例9)
(本発明の使用についての他の予後指標)
従来、H&NSCCの転帰についての予測因子はほとんどなかった。リンパ球数、IgEおよびIgAのレベルまたは栄養が示唆され、記載する通り、DNCB皮膚試験が用いられていた。化学治療(5FU&CISPLATINUM)では、臨床応答は大半の患者で術前に生じるが、平均生存時間および全生存率は本質的に影響されない。従って、免疫応答は、H&NSCC癌患者を治療しまたは延命するための放射線治療の有無を問わず、手術能力に関係するらしい。実施例で提示されるデータは、本発明の使用が、術後の残存腫瘍を有する者の転移の再発を延ばし、臨床応答の規模に関係する方法で生存率を上昇させ、腫瘍の減少、断片化およびリンパ浸潤の定量により評価されるように腫瘍を攻撃する免疫の強度を増加させることを示す。これらの観察は生存率をさらに向上するために本発明の重要な改良を指摘している。
【0118】
(重症免疫不全症の患者において)
リンパ球数の少ない患者では、弱いまたは欠如したNCM皮膚試験、洞組織球増殖症、弱い病理応答、再治療および免疫応答の観察が徴候である。
微臨床応答または無臨床応答の患者において:
これらの患者は転移の再発の危険性が高いため、理論的に本発明のNCMを用いた術後治療から恩恵を受けるであろう。該患者で観察される腫瘍拒絶応答に対する特異反応について現在利用できる試験がない場合、米国特許第6,482,389号に記載される三つ組みの試験とともに追跡検査は、本発明のNCMを用いた再治療の頻度を決定する助けとなるであろう。
【0119】
(再発患者において)
二つの完全応答を含む有意な応答は、本発明のNCMを用いて再治療された患者で観察された。これは再治療に応答できなかった天然および組換えのIL−2を用いた以前の結果と対照的である。従って、本発明は患者の転移の再発を治療するのに有効である。
【0120】
(実施例10)
(放射線治療または化学治療のような他の治療と本発明の併用)
IV期H&NSCC癌の患者は、放射線治療の追加に関わらず、III期疾患の患者と比べて著しく生存率が低下した(10〜20%対30〜50%)。放射線治療は該患者のTリンパ球数を長期間減少させることがよく知られている。T細胞の数および機能に及ぼす放射線治療の負の影響に関わらず、本発明のNCMで治療されたIV期疾患の患者はIII期疾患の患者と同様に行った。従って、治療影響はIV期患者で比較的大きく、これは、免疫治療およびサイトカイン治療が極小の腫瘍でより良く機能するという現在の定説に相反する。本発明は放射線治療の影響を増強することも示唆される。同様に、陰茎SCC癌の4患者において、本発明のNCMが使用された後、5FUおよびシスプラチナ(cysplatinum)ならびに第二周期の本発明のNCMで化学治療した。臨床的な腫瘍の減少が初期の免疫治療でおよび化学治療で観察され、手術から得た腫瘍の検査は免疫緩解の持続を示した。本発明のNCM、続いて5FUおよびシスプラチナを用いた化学治療で治療された他のH&NSCC患者は同じ結果を示した。これらの観察は、本発明のNCMが化学治療と併用できることを示す。
【0121】
(実施例11)
(NCMによる癌の樹状細胞欠損の相関関係についてのさらなる特徴決定)
リンパ節は5人のNCM治療患者および5人の未治療H&NSCC対照患者から単離され、細胞組成は樹状細胞の細胞表面マーカーのパネル(即ち、CD83、CD86およびCD68)を用いてフローサイトメトリーにより分析された。洞組織球増殖症(SH+)はCD68+、CD83+の蓄積に関係するが、CD86−DCには関係しない一方、顕著なSHでない者はCD83+細胞がほとんどない(図11)。本発明のNCM治療は未治療癌対照と比べてCD86+(CD68+CD83+と共存)細胞の数に5倍の増加をもたらし、これは「活性化」DC表現型への変換を示す。対照はNCM治療された癌患者と比べて未治療のH&NSCCである。
【0122】
洞組織球増殖症はCD68+CD83+CD86−骨髄樹状細胞(DC)の洞様内蓄積により特徴付けられ、本発明のNCMの効果的な使用は活性化成熟DCを示すCD86+細胞の5倍の増加に関連した。洞組織球増殖症は内因性腫瘍ペプチドを生じると推測される部分的に成熟したDCの蓄積を表すことが確認される。共刺激受容体(B7.1またはCD86)の発現とともに十分な成熟および活性化は、成熟時にこの欠損を直しT細胞への有効な抗原提示を可能にするための本発明のNCMの使用を反映する。本発明のNCMは洞組織球増殖症を逆行し、「未感作」T細胞の有効な免疫につながる。
【0123】
洞組織球増殖症が骨髄起源のDCの欠損および陰性のNCM皮膚試験により特徴付けられるという事実は、他の骨髄細胞の欠損を予測し、単球はこれらが連関する観察であることを示唆する(即ち、癌に対する宿主の免疫応答に重要な骨髄系列の欠損が存在する)。
【0124】
(実施例12)
(本発明を用いた外来性腫瘍抗原の投与)
(マウス)
該手順は、オブアルブミンまたはキーホール・リンペット・ヘモシアニン(KLH)のいずれかに共役させたT細胞ペプチド(ALF&LLH)(100μg@)としての前立腺特異的膜抗原(PSMA)でマウスを免疫することであった。単離された非共役ペプチドを用いた先の試みはマウスで成功しなかった。NCM(0.1 mL)は低用量のCY(400 μg/マウス)の次に両共役抗原とともに単回免疫として施された後、抗原なしでNCM(0.1 mL)を9日間連日注射し、一方、CpG、Alum、またはRibi−CorixaのアジュバントはOVA共役体とともに単回一次免疫であった。二回の追加免疫(共役体およびアジュバント)は21日目および28日目に各群のマウスに施された。T細胞ペプチドに対するDTHは最終追加免疫の9日後に測定され、血清は15〜21日目に屠殺して採取した。
【0125】
図12は個々のALFおよびLLHのペプチド(10 μg@)を用いて共役体を用いない皮膚試験に対するDTHの結果を示す。NCMは、両共役体を用いた免疫およびOVA共役体に対してAlumを用いた免疫の後、有意なDTH応答を誘起する。Alum、Ribi−Corixa、およびCpGはごく僅かな活性を示した。
【0126】
(血清抗体の結果)
血清は指示通り希釈し、ペプチド(ALFもしくはLLH)またはオブアルブミンのいずれかで被覆したマクロプレートのウェルに添加した。結果は5つのマウスの群について405の平均ODとして表される。データは表VIIに提示される。
【0127】
KLH共役体+NCMで免疫されたマウスはオブアルブミン抗体に対して陰性であったが、ペプチドに対して陽性であった。OVA共役体+NCMで免疫されたマウスはOVAおよび該ペプチドの両方の抗体に対して陽性であったが、OVA共役体+CpGで免疫されたマウスはOVAのみに陽性であった。これらの結果は、NCMにより、共役PMSAペプチドが、DTHおよび該ペプチドに特異的なIgG応答の両方を刺激するのに効果的になることを示すが、alum、Ribi−Corixa、およびCpGなどの他のアジュバントは不活性または活性に乏しかった。
【0128】
(ヒト)
進行性前立腺癌の3患者は、低用量のCY(300 mg/m2)ならびに連日のINDO(25 mg、一日三回)および9回のNCM(1 ml)の追加注射の後、NCM(1 ml−100単位IL−2当量)とともに非共役ALF&LLHペプチドを受容した。15日目に、NCMおよびペプチドの追加免疫が施された。1人の患者(#4)はこの計画でOVA共役ペプチドを受容した。遅延型過敏反応(DTH)は、24時間での紅斑のセンチメーターおよび持続時間を読み取る皮内皮膚試験により、NCM(0.1 ml)、ALF、LLH(10 μg)を用いて測定した。該結果は表VIIに提示する。
【0129】
(表VII:PSMAペプチド&NCMに対するDTH)
【0130】
【表7】
これらのデータは、NCM計画が進行性前立腺癌のヒトにおいて非共役および共役のPMSAペプチドに対するDTH反応を誘発するのに有効であることを示す。この結果は、単離ペプチドでは失敗した大半の先の試みの結果と異なる。
【0131】
本出願を通して、米国特許を含む、種々の刊行物は、著者および年および特許番号により参照される。該刊行物についての全引用は下記に列挙する。これらの刊行物および特許の開示は、本発明が属する技術の状態をより十分に記載するために、参照により本出願にそのまま組み込まれる。
【0132】
本発明は説明様式で記載されており、用いられた専門用語は限定よりむしろ記載の単語の性質にあることを意図することが理解されるべきである。
【0133】
明らかに、本発明の多数の修飾および変形が上記の教示に鑑みて可能である。従って、記載される発明の範囲内において、本発明は具体的に記載されるものと違う方法で実施され得ることが理解されるべきである。
【0134】
(参考文献)
(米国特許番号)
【0135】
【表8】
(刊行物)
【0136】
【表9】
【0137】
【表10】
【0138】
【表11】
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
【表14】
【0142】
【表15】
【0143】
【表16】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。
【請求項1】
本明細書に記載される発明。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【公開番号】特開2012−144579(P2012−144579A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−105898(P2012−105898)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2006−522764(P2006−522764)の分割
【原出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505401687)アイ アール エックス セーラピューティクス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105898(P2012−105898)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【分割の表示】特願2006−522764(P2006−522764)の分割
【原出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505401687)アイ アール エックス セーラピューティクス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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