説明

入れ子式カニューレの制御展開のための自動システム

カニューレ制御装置70は、プラットフォーム80と1つ以上のカニューレ制御ユニット40を利用する。各カニューレ制御ユニット40は、カニューレ30、カニューレ制御ユニット40及び/又はプラットフォーム80と関連する較正方向に対して特定の回転方向へカニューレ30を回転させるためにカニューレ30に機械的に接続される回転モータアセンブリ50、及び、カニューレ制御ユニット40及び/又はプラットフォーム80と関連する較正位置に対して特定の並進位置へカニューレ制御ユニット40を並進させるためにプラットフォーム80に機械的に接続される並進モータアセンブリ60を含む。装置70のカニューレ30は、特に同じ身体又は異なる身体の解剖領域内の多数の標的位置に正確に達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入れ子式カニューレが患者の任意の解剖領域内の複数の位置に達することを可能にする入れ子式カニューレの正確な展開及び制御に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲的処置の使用は、通常は観血的手術によって生じる外傷を伴わずに診断又は外科治療を可能にするその能力のために、近年増加している。低侵襲的外科処置は、以前は到達不可能であった解剖領域への安全なアクセスも可能にすることができる。
【0003】
低侵襲的外科処置で利用される典型的なツールは、硬質腹腔鏡装置、ロボット装置、又は制御用の操り人形様のひもを利用するスコープを含むことができる。これらの装置の各々はある程度の制限を課し、固有の欠点を持つ。例えば、硬質腹腔鏡装置は体内及び体外の両方で操作するための空間を必要とし得る。この空間要求は、多くの種類の手術において硬質腹腔鏡装置の使用を不可能にし得る。
【0004】
ロボット装置は、各関節角度の制御をモータに頼っているため、人体の奥まで達することができない。モータは身体の小さな解剖学的空間と比較して大きいことが多い。ロボット関節の数はロボットが通って達することができる環境の複雑性を制限する。ロボットは、特定方向において自由空間内の固定点に達することができるように自由度6であることが多い。解剖学的障害の追加は、残りの能動自由度を事実上削減する。追加モータは器用さを増すが、重量とサイズも増大する。例えば、自由度7を持つロボット装置は重いことが多く、滑らかに制御することがしばしば困難である。
【0005】
気管支鏡及び内視鏡など、操り人形様のひもによって制御されるスコープは、スコープの末端部の制御を操り人形ひもに頼っている。ロボット装置よりは細いものの、スコープの遠位端における1円弧のみの制御もまたかなりの制限である。さらに、操り人形様のひもの使用は装置半径のさらなる増加を必要とする。
【0006】
入れ子式カニューレは、モータとワイヤが不必要であり、なおかつこれらの小さな細い装置が人体構造の奥へ達することができるように、目的とする動きを入れ子式カニューレの構造に組み込むことによってこれらの制限を克服する。具体的には、入れ子式カニューレは通常、解剖学的"障害"を避けながら標的に達するように特殊な方法で構成される、複数の同心の事前に湾曲したポリマー又は超弾性管から作られる。各管は互いの内外にはめ込むことができ、回転させることもできる。管の相互作用と操作は、管の遠位端を所望の位置に配置するために医師によって利用されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、入れ子式カニューレの範囲及び再利用を拡大する各カニューレの独立回転及び並進に基づいて、入れ子式カニューレの連続運動、同時運動、又はその組み合わせを容易にする、入れ子式カニューレの新規で固有のモータ制御を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、プラットフォームと、少なくとも1つの、しかし通常は2つ以上のカニューレ制御ユニットとを利用するカニューレ制御装置である。各カニューレ制御ユニットは、カニューレ、カニューレ制御ユニット及び/又はプラットフォームと関連する較正方向に対して特定の回転方向へカニューレを回転させるためにカニューレに機械的に接続される回転モータアセンブリ、及び、カニューレ制御ユニット及び/又はプラットフォームと関連する較正位置に対して特定の並進位置へカニューレ制御ユニットを並進させるためにプラットフォームに機械的に接続される並進モータアセンブリを含む。
【0009】
本発明の第二の形態は、前の段落に記載のカニューレ制御装置と、カニューレ制御装置へ1つ以上のモータ駆動信号を選択的に適用するためにカニューレ制御装置と電気通信する1つ以上のモータコントローラとを利用するカニューレ制御システムである。各モータ駆動信号は、カニューレの計画された展開、特に身体(人又は動物)の解剖領域内のカニューレの計画された展開を示す。
【0010】
本発明の前述の形態及び他の形態、並びに本発明の様々な特徴及び利点は、添付の図面と併せて読まれる本発明の様々な実施形態の以下の詳細な説明からさらに明らかとなるだろう。詳細な説明と図面は、限定ではなく本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲は添付の請求項とその均等物によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】当該技術分野で周知のカニューレのペアを図示する。
【図1B】当該技術分野で周知のカニューレのペアを図示する。
【図2A】本発明にかかるカニューレ制御ユニットの実施形態例のブロック図の前面図を図示する。
【図2B】本発明にかかるカニューレ制御ユニットの実施形態例のブロック図の側面図を図示する。
【図3A】本発明にかかるカニューレ制御装置の実施形態例の側面図を図示する。
【図3B】本発明にかかるカニューレ制御装置の実施形態例の前面図を図示する。
【図4】図3A及び図3Bに図示されるカニューレ制御装置の2つの(2)操作図を図示する。
【図5】図3A及び図3Bに図示されるカニューレ制御装置の2つの(2)操作図を図示する。
【図6】本発明にかかるカニューレ制御システムの実施形態例を図示する。
【図7】本発明にかかる例示的なカニューレ制御法をあらわすフローチャートを図示する。
【図8】本発明にかかるカニューレの所定のセットの再利用を図示する。
【図9】本発明にかかるカニューレの所定のセットの再利用を図示する。
【図10】当該技術分野で周知の吸引カテーテルを図示する。
【図11】本発明にかかる例示的なカニューレ制御装置構成法をあらわすフローチャートを図示する。
【図12A】図11に示されるフローチャートに従うカニューレ制御装置の構成の様々な段階を図示する。
【図12B】図11に示されるフローチャートに従うカニューレ制御装置の構成の様々な段階を図示する。
【図13A】図11に示されるフローチャートに従うカニューレ制御装置の構成の様々な段階を図示する。
【図13B】図11に示されるフローチャートに従うカニューレ制御装置の構成の様々な段階を図示する。
【図14】図11に示されるフローチャートに従うカニューレ制御装置の構成の様々な段階を図示する。
【図15】図11に示されるフローチャートに従うカニューレ制御装置の構成の様々な段階を図示する。
【図16】図11に示されるフローチャートに従うカニューレ制御装置の構成の様々な段階を図示する。
【図17】図11に示されるフローチャートに従うカニューレ制御装置の構成の様々な段階を図示する。
【図18】図11に示されるフローチャートに従うカニューレ制御装置の構成の様々な段階を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、任意の種類のカニューレ、例えば図1に示される直線カニューレ20、図1に示される湾曲カニューレ21、又はらせんカニューレ(図示せず)などの、制御された展開に向けられる。本明細書でさらに説明される通り、本発明にかかる単一カニューレの制御された展開は、較正方向に対する特定の回転方向へのカニューレの回転を含む。代替的に又は同時に、本発明にかかる単一カニューレの制御された展開は、較正位置に対する特定の並進位置へのカニューレの並進を含む。
【0013】
本発明はさらに、入れ子式カニューレ、例えば図2に示される入れ子式カニューレ22及び23などの任意の配置の制御された展開に向けられ、それによってカニューレ23は、完全に入れ子になった状態("FNS")と多くの伸長された状態("EXS")の1つの中で回転可能であり、それらの間で移動可能である。本明細書でさらに説明される通り、本発明にかかる入れ子式カニューレの制御された展開は、較正方向に対する特定の回転方向への各カニューレの回転を含む。代替的に又は同時に、本発明にかかる入れ子式カニューレの制御された展開は、較正位置に対する特定の並進位置への各カニューレの並進を含む。
【0014】
実際には、各カニューレの構成と寸法は対応するカニューレ手術によって決まる。従って、本発明は、対応するカニューレ手術によって課される任意の制約又は任意の制限を超えて、各カニューレの構成及び寸法にいかなる制約又はいかなる制限も課さない。
【0015】
また、実際には、カニューレは様々な材料又は材料の組み合わせから作られることができ、形状記憶合金(例えばニチノール(登録商標))、及び/又は形状記憶ポリマー(例えばMemry Inc,of Bethel,Connecticut and MnemoScience GmbH of Aachen,Germanyから市販されているマイクロチューブ)を含むが限定はされない。ポリマーは一般に費用効果的な選択である。
【0016】
単一カニューレ又は入れ子式カニューレの展開を制御する上での本発明の前提は、図2Aに示されるX数のカニューレ制御ユニット40の利用であり、X≧1である。各カニューレ制御ユニット40は回転モータアセンブリ50と並進モータアセンブリ60を利用する。
【0017】
本発明の目的で、"回転モータアセンブリ"は、例えば図2Aに示される較正方向31に対して特定の回転方向へのカニューレ30の回転など、較正方向に対して特定の回転方向へカニューレ30を回転させるための、ギア、スクリュー、ベルト、スプロケット、エンコーダ、センサ、及び/又は他の適切な電気機械部品と併せて、任意のモータの独立構造配置として、本明細書で広く定義される。代替的に又は同時に、本発明の目的で、"回転モータアセンブリ"は、較正方向に対して特定の回転方向へカニューレ30を回転させるために外部モータに機械的に接続される、ギア、スクリュー、ベルト、スプロケット、エンコーダ、センサ、及び/又は他の適切な電気機械部品の任意の独立構造配置として、本明細書で広く定義される。本明細書に前述の通り、カニューレ30の構成及び寸法は対応するカニューレ手術によって決まる。
【0018】
また、本発明の目的で、"並進モータアセンブリ"は、例えば図2Bに示される順方向又は逆方向での較正位置32に対するカニューレ制御ユニット40の直線並進など、較正位置に対する特定の並進位置へ前進運動又は後退運動でカニューレ制御ユニット40を並進させるための、ギア、スクリュー、ベルト、スプロケット、エンコーダ、センサ、及び/又は他の適切な電気機械部品と併せて、モータの任意の独立構造配置として、本明細書で広く定義される。代替的に又は同時に、本発明の目的で、"並進モータアセンブリ"は、較正位置に対して特定の並進位置へ順方向又は逆方向でカニューレ制御ユニット40を並進させるために外部モータに機械的に接続される、ギア、スクリュー、ベルト、スプロケット、エンコーダ、センサ、及び/又は他の適切な電気機械部品と併せて、任意のモータの独立配置として、本明細書で広く定義される。
【0019】
カニューレ制御ユニット40の発明の原理のさらなる理解を容易にするために、図3Aは2つの(2)カニューレ制御ユニット40(1)及び40(2)を利用するカニューレ制御装置70の実施形態例を図示し、カニューレ制御ユニット40(1)のカニューレ30(1)は湾曲カニューレであり(例えば図1に示される湾曲カニューレ21)、カニューレ制御ユニット40(2)のカニューレ30(2)は直線カニューレである(例えば図1に示される直線カニューレ20)。
【0020】
カニューレ制御装置70はさらに、ベース81、及びベース81の長さに沿ってレール85を支持するためにベース81から上方へ伸びる2つの(2)対向壁82及び83を持つプラットフォーム80を利用する。レール85は、各カニューレ制御ユニット40の順方向又は逆方向を独立して、同時に、又はその組み合わせで容易にする任意の手段によって、カニューレ制御ユニット40の各並進モータアセンブリ60を貫通し、それに機械的に接続される。一実施形態において、各並進モータアセンブリ60は、カニューレ制御ユニット40と関連する較正位置に対して特定の並進位置へ順方向又は逆方向にレール85に沿ってその各カニューレ制御ユニット40を並進させるための独立内部モータを持つ(例えば、レール85に沿ってカニューレ制御ユニット40のエンコードベースライン位置)。代替的に又は同時に、別の実施形態において、各並進モータアセンブリ60の外部のモータはレール85を回転及び/又は並進させ、それによって同時にカニューレ制御ユニット40をレール85に沿って順方向又は逆方向に、カニューレ制御ユニット40と関連する較正位置に対して特定の並進位置へ並進させる(例えばサーボモータによって定められるベース81に対するエンコードベースライン位置)。
【0021】
各カニューレ30の近位端は各カニューレ制御ユニット40の回転モータアセンブリ50に任意の手段によって機械的に接続され、カニューレ30の遠位端は、前壁83のカニューレチャネル84を通してカニューレ30の制御された展開を容易にする方法で入れ子にされる。一実施形態において、各回転モータアセンブリ50は、各カニューレ制御ユニット40(例えばレール85に沿ったカニューレ制御ユニット40のエンコードベースライン方向)及び/又はプラットフォーム80(例えば図3Bに示されるカニューレチャネル84に対するベースライン方向86)と関連する較正位置に対して特定の較正位置へ各カニューレ制御ユニット40を回転させるための独立内部モータを持つ。代替的に又は同時に、別の実施形態において、カニューレ制御ユニット40の外部のモータは独立して力学的エネルギーを各回転モータアセンブリ50に与え、それによって各カニューレ制御ユニット40及び/又はプラットフォーム80と関連する較正位置に対して特定の方向位置へ各カニューレ制御ユニット40を回転させる。
【0022】
操作中、図3Aはカニューレ制御装置70の完全に入れ子になった状態を図示する。この入れ子になった状態において、カニューレ30(1)はカニューレチャネル84と関連する較正方向85に対して特定の回転方向へ予め較正されている。
【0023】
図4は、身体90の解剖領域内における図3Aに示されるカニューレ制御装置の完全に伸長された状態を図示する。この完全に伸長された状態において、各並進モータアセンブリ60は、標的92へ達するために身体90の解剖領域内の特定位置へ、カニューレチャネル84及び身体90の侵入点91を通してカニューレ30を伸ばすために駆動されている。図示の通り、カニューレ30(2)はカニューレチャネル84から伸長される際にその直線形状を維持し、カニューレ30(1)はカニューレ30(2)から伸長される際に較正方向86(図3B)に対して180°の回転方向においてその円弧形状を回復する。
【0024】
図5は、身体93の解剖領域内における図3Aに示されるカニューレ制御装置の部分的に伸長された状態を図示する。この部分的に伸長された状態において、各並進モータアセンブリ60は、標的95へ達するために身体93の解剖領域内の特定位置へ、カニューレチャネル84及び身体93の侵入点94を通してカニューレ30を並進させるために駆動される。図示の通り、カニューレ30(2)はカニューレチャネル84から伸長される際にその直線形状を維持し、カニューレ30(1)はカニューレ30(2)から伸長される際に較正方向86(図3B)に対して0°の回転方向においてその円弧形状を回復する。
【0025】
図3‐5は、本発明の顕著な利益を強調する本発明のカニューレ制御装置の単純な説明である。具体的に、モータアセンブリ50及び60の操作上の特質を考えると、図4に示されるカニューレ30がカニューレチャネル84から伸長される距離は、図5に示されるカニューレ30がカニューレチャネル84から伸長される距離よりも大きく、カニューレ30(1)の角度方向は図4及び図5に示される通り180°の差を持つ。これはカニューレの単一セットが、図4及び図5に示される通り、同じ身体内の多数の標的に、及び適切な殺菌を伴って異なる身体内の異なる標的に達するために、同じ入れ子状態から再利用されることができるという事実を強調する。
【0026】
カニューレ制御ユニット40の発明の原理のなおさらなる理解を容易にするために、図6は2つの(2)カニューレ制御ユニット40(3)及び40(4)を持つカニューレ制御装置100と1つ以上のモータコントローラ101を利用するカニューレ制御システムを図示する。本発明の目的で、"モータコントローラ"は、カニューレの計画された展開の実行中に本発明のカニューレ制御装置へモータ駆動信号(例えばセットポイント)を選択的に適用するように構造的に構成される任意の装置として、本明細書で広く定義される。
【0027】
例えば、モータコントローラ101は、この特定のカニューレの計画された展開の実行中にカニューレ制御ユニット40(3)のカニューレを展開する目的でカニューレ制御装置100に回転駆動信号と並進駆動信号の信号セット102を適用するように図6に示される。回転駆動信号に応じて、カニューレ制御ユニット40(3)の回転モータアセンブリ(図示せず)はそのカニューレを回転駆動信号によって示される較正方向に対して特定の回転方向へ回転させる。カニューレ制御ユニット40(3)のカニューレが直線形状を持つ場合、回転駆動信号はヌル値を持つか又は信号セット102から省略され得る。並進駆動信号に応じて、カニューレ制御ユニット40(3)の並進モータアセンブリ(図示せず)はそのカニューレを並進駆動信号によって示される較正位置に対して特定の並進位置へ並進させる。
【0028】
同様に、モータコントローラ101は、この特定のカニューレの計画された展開の実行中にカニューレ制御ユニット40(4)のカニューレを展開する目的でカニューレ制御装置100に回転駆動信号と並進駆動信号の信号セット103を適用するように図6に示される。回転駆動信号に応じて、カニューレ制御ユニット40(4)の回転モータアセンブリ(図示せず)はそのカニューレを回転駆動信号によって示される較正方向に対して特定の回転方向へ回転させる。カニューレ制御ユニット40(4)のカニューレが直線形状を持つ場合、回転駆動信号はヌル値を持つか又は信号セット103から省略され得る。並進駆動信号に応じて、カニューレ制御ユニット40(4)のカニューレの並進モータアセンブリ(図示せず)はそのカニューレを並進駆動信号によって示される較正位置に対して特定の並進位置へ並進させる。
【0029】
当業者は、例えば対応するカニューレ手術が、カニューレが身体の解剖領域内で並進されている際にカニューレより先に位置を維持する必要があるツールなどの挿入を要するときなど、カニューレが身体の解剖領域内で並進されている際にカニューレがその相対位置を維持する必要があるかもしれないことを理解するだろう。従って、代替的に、カニューレ制御ユニット40(3)及び40(4)のカニューレの回転は独立したままである一方、カニューレの並進は同時に実行される。具体的に、信号セット102はカニューレを特定の回転方向へ回転させるための回転駆動信号をあらわすことができる。比較して、信号セット103はカニューレを順方向に同時に並進させるための順方向並進信号と、カニューレを逆方向に同時に並進させるための逆方向並進信号をあらわすことができる。
【0030】
図7に示されるフローチャート110によってあらわされる本発明のカニューレ制御法の説明は、身体の解剖領域内でのカニューレの展開を含むカニューレ手術との関係において本明細書に記載される。フローチャート110のこれらの説明から、当業者は他の種類のカニューレ手術に本発明のカニューレ制御法を適用する方法を理解するだろう。
【0031】
具体的に、フローチャート110の段階S111は、カニューレ生成スキームとカニューレ選択スキームを包含する。生成スキームにおいて、段階S111は一般に、(a)身体の解剖領域の三次元画像の読み取り(例えばCT、超音波、PET、SPECT、MRI)、(b)三次元画像における特定の位置及び方向からの一連の円弧の生成、(c)点を通過する生成された一連の円弧を用いて侵入及び標的位置の間で身体を通る経路を計算するための、生成された一連の円弧の使用、(d)標的位置へ達するような構成及び寸法の1つ以上の同心テレスコープ管を生成するための、生成された一連の円弧及び計算された経路の使用、及び(e)カニューレ制御ユニットの回転モータアセンブリへの各カニューレの機械的接続、を組み込む。本発明の選択スキームにおいて、段階S111は一般に、(a)身体の解剖領域の三次元画像の読み取り、(b)侵入及び標的位置の間で身体を通る経路の計算、及び(c)標的位置に達するような構成及び寸法の事前に生成されたカニューレを持つ1つ以上のカニューレ制御ユニットの選択、を組み込む。
【0032】
例えば、次の表1は、図8に示される標的位置96へ達するため、及び図9に示される異なる標的位置97へ達するための4つの(4)入れ子式カニューレ24‐27の構成を列挙する。
【表1】

【0033】
上記の"伸長された長さ"は、包囲管を超えて伸長する長さをあらわす。従って中間湾曲管の全長は、カニューレガイドチャネル(例えば図3Aに示されるチャネル84)を通って達するために必要な長さを加えて、16mm+28.8mm=44.8mmに等しい。この実施例において、管の長さの変化は同じ管のセットが同じ身体又は異なる身体内の標的位置96から標的位置97へ達することを可能にする。
【0034】
スキームに関係なく、当業者は、直線カニューレが、管をその伸長可能な長さに従って前進及び後退させることを可能にする自由度1(1)を持つことを理解するだろう。比較して、湾曲カニューレは、管をその伸長可能な長さに従って前進及び後退させ、その半径に従って回転させることを可能にする自由度2(2)を持つ。側面に沿ってセンサ又はアクチュエータセットを持つ、又は特定方向を持つエンドエフェクタを備える直線管は、独自の方向を持つため、同様に自由度2を持つと見なされるはずである。好適には、湾曲カニューレは管の曲率に対応する長さしか前進されず、例えば180度の円弧の長さ=π半径である。
【0035】
再度図7を参照すると、フローチャート110の段階S112は、標的への侵入点を通して生成又は選択されるカニューレの制御された展開を包含する。具体的に、段階S112は一般に、(1)カニューレ制御装置の様々なモータアセンブリへの、身体の解剖領域を通る計画された経路を示すモータ駆動信号の選択的適用、(2)計画された経路の実行中にカニューレが展開されている際の、身体の解剖領域の画像空間内でのカニューレのレジストレーション、及び(3)身体の解剖領域を通る計画された経路からの任意のずれを補正するためにアブソリュートエンコーダ(例えばポテンショメータ)を介する画像空間内の各展開されたカニューレの絶対並進位置及び回転方向(当てはまる場合)のリアルタイム決定、を組み込む。
【0036】
図1‐9を参照して、当業者は、任意の種類のカニューレ手術のためのカニューレの計画された展開の実行中における、単一カニューレ又は入れ子式カニューレの正確な制御された展開を含むが限定はされない、本発明の様々な利益を理解するだろう。特に、カニューレは、同じ身体又は異なる身体の解剖領域内の多数の標的位置に正確に達することができる(例えば胸部、腹部、神経学的領域、心臓部及び血管領域)。
【0037】
さらに、当業者は、図1‐9に図示された本発明の発明の原理の概要に基づいて、任意の種類のカニューレ手術のために本発明のカニューレ制御装置を作成及び使用する方法を理解するだろう。特に、入れ子式カニューレの使用は、伸長された管にツール又は他の装置を通すことによって標的解剖領域へのアクセスを可能にするまでに拡張されることができる。代替的に、最内管自体がツールであるか、又は別の装置を含むことができる。例えば、(1)最内管は腹腔鏡手術などのための図10に示される吸引カテーテル28であることができ、(2)最内管は、入れ子状態から伸長されるときに画像装置が標的解剖領域内に位置するように、その末端に画像装置を持つことができ、(3)最内管は、例えばこれが光を標的解剖領域へ、及び/又は標的解剖領域から伝えるための光ファイバー線である場合などは、閉端を持つことができ、(4)最内管は必要に応じ実質的に又は完全に固体であることができる。
【0038】
図16及び図17に示される本発明にかかる2つの(2)カニューレ制御ユニット140(1)及び140(2)を持つカニューレ制御装置170の詳細な実施形態は、図11に示されるフローチャート120に従って本明細書に提供される。
【0039】
具体的に、フローチャート120の段階S121は各生成されたカニューレ130のためのアダプタ‐カニューレ組立を包含する。この実施形態において、段階S121は、生成されたカニューレ130の近位端が図12Aに示されるようにタブ‐ハブアダプタ131内にクサビ嵌合(friction−fitted)されることを含み、それによってカニューレ130の近位端は図12Bに示されるようにアダプタ131の裏面と同一平面になる。
【0040】
フローチャート120の段階S122は各カニューレ制御ユニット140のユニット組立を包含する。この実施形態において、段階S122は、アダプタ131が回転モータアセンブリ150内で"行き詰まり(dead ended)"になっていることを含み、例えばアダプタ131は図13Aに示されるように回転モータアセンブリ150の較正カラー151内にクサビ嵌合され、それによってアダプタ131の裏面が図13Bに示されるように較正カラー151の裏面と同一平面になっている。その後、段階122は、図14及び図15に示されるようにカニューレ130の遠位端がプレート141の送り孔を通して連続的に送り込まれ、そして図12B‐15に示されるように回転モータアセンブリ150のハブ152とギア153に送り込まれ、それによってカニューレ130とアダプタ131がセットスクリュー(図示せず)を介してプレート141に至るまでロックされることをさらに含む。
【0041】
カニューレ130とアダプタ131をプレート141にロックすることと併せて、サーボモータ154、回転エンコーダ155及びギア155を含むアセンブリ150の残りの部品が図14及び図15に示されるように組み立てられる。さらに、ねじ付アダプタ161、ギア162、サーボモータ163及びリニアエンコーダ164を含む並進モータアセンブリ160の部品が図14及び図15に示されるように組み立てられる。
【0042】
フローチャート120の段階S123は、図16及び図17に示されるように、ベース181と、その間にねじ付レール185を支持する対向する平行壁182及び183とを持つプラットフォーム180へのカニューレ制御ユニット140のプレートスタッキングを包含する。この実施形態において、段階S123は、図16及び図17に示されるように、カニューレ130(2)の遠位端がより大きな包囲管130(1)内に挿入され、管130(1)の遠位端がプラットフォーム180の出力送りになっていることを含む。段階S123は、図16及び図17に示されるようにねじ付レール185が並進モータアセンブリ160(1)及び160(2)に通され、図16及び図17に示されるように補助ガイド187がプレート141を通して挿入されることをさらに含む。
【0043】
その結果は、図16及び図17に示されるように、回転モータアセンブリ150(1)及び並進モータアセンブリ160(1)がプレート141(1)に機械的に接続され、回転モータアセンブリ150(2)及び並進モータアセンブリ160(2)がプレート141(2)にカニューレ130(1)及び130(2)の入れ子で固定される。
【0044】
操作中、図14‐17に示される回転モータアセンブリ150のサーボモータ154は、必要に応じてカニューレ130を回転させるために対応するカニューレ130の計画された展開の実行中にモータ駆動信号を受信し、図14‐17に示される並進モータアセンブリ160のサーボモータ163は、必要に応じてカニューレ130を並進させるために対応するカニューレ130の計画された展開の実行中に並進駆動信号を受信する。図示された実施形態において、並進モータアセンブリ160(1)及び160(2)は別個の並進駆動信号を介して独立して操作される。代替的に又は同時に、ねじ付レール185が回転可能であることを考えると、ねじ付レール185の回転は、カニューレ制御ユニット140(1)及び140(2)の両方を順方向又は逆方向に同時に並進させる。これはねじ付レール185を作動させるためにベース181がサーボモータ(図示せず)を組み込むことを必要とする。この実施形態はカニューレ130(1)及び130(2)の較正にとって特に有用である。
【0045】
1つの設計検討は、カニューレ130(2)が、より大きな包囲カニューレ130(1)よりも長くなければならず、カニューレ130(2)が、特定の回転方向に較正されなければならない末端における円弧を含むという事実である。カニューレ130(2)を較正する1つの方法は、図18に示されるように、周囲管130(2)がカニューレ130(2)の自然な円弧形状を妨げないような位置に並進可能プレート141を動かすことであり、そこでカニューレ130(2)の円弧は壁183のカニューレガイドチャネル184から外へ伸びる。図18に示されるようにレーザ光186がチャネル184に隣接して壁183に取り付けられることができ、又は別の較正構造が、整列された較正方向を規定するために使用されることができる。一実施形態において、カニューレ130(2)は較正方向へ手動で回転されることができ、そしてギア‐ハブ用のセットスクリューが締められることができ、方向オフセットがもしあればプログラムで保存される。第二の実施形態において、管130(2)はアセンブリ150(2)上に締め付けられ、較正方向186へサーボモータ157で駆動されることができ、方向オフセットがもしあればプログラムで保存される。
【0046】
本発明の様々な実施形態が図示され記載されているが、本明細書に記載の方法及びシステムは例示であり、様々な変更及び修正がなされてもよく、均等物は本発明の真の範囲から逸脱することなくその要素と置き換えられてもよいことが、当業者によって理解されるだろう。加えて、多くの変更は、その主要な範囲から逸脱することなく、本発明の教示を実体経路計画に適応させるためになされてもよい。従って、本発明は、本発明を実行するために考慮された最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、本発明は添付の請求項の範囲内にある全実施形態を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニューレ制御装置であり、
プラットフォームと、
少なくとも1つのカニューレ制御ユニットとを有し、各カニューレ制御ユニットが、
カニューレと、
前記カニューレ制御ユニットの少なくとも1つと前記プラットフォームとに関連する較正方向に対して特定の回転方向へ前記カニューレを回転させるために前記カニューレに機械的に接続される回転モータアセンブリと、
前記カニューレ制御ユニットの少なくとも1つと前記プラットフォームとに関連する較正位置に対して特定の並進位置へ前記カニューレ制御ユニットを並進させるために前記プラットフォームに機械的に接続される並進モータアセンブリとを含む、カニューレ制御装置。
【請求項2】
第一のカニューレ制御ユニットが、第一の回転モータアセンブリ内にクサビ嵌合されるアダプタをさらに含み、
第一のカニューレの近位端が前記アダプタ内にクサビ嵌合され、それによって前記第一のカニューレを前記第一の回転モータアセンブリに機械的に接続する、請求項1に記載のカニューレ制御装置。
【請求項3】
前記第一のカニューレ制御ユニットが並進可能プレートをさらに含み、
前記第一のカニューレの遠位端が前記並進可能プレートに送り込まれる、請求項2に記載のカニューレ制御装置。
【請求項4】
前記プラットフォームが各並進モータアセンブリに通されるレールを含み、それによって各並進モータアセンブリを前記プラットフォームに機械的に接続する、請求項1に記載のカニューレ制御装置。
【請求項5】
前記プラットフォームが、前記プラットフォームから少なくとも1つのカニューレの伸長を容易にするためのカニューレガイドチャネルを持つ前壁を含む、請求項1に記載のカニューレ制御装置。
【請求項6】
前記プラットフォームが、前記較正方向を定めるために前記前壁に取り付けられる較正機構をさらに含む、請求項1に記載のカニューレ制御装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのカニューレが、直線カニューレ、湾曲カニューレ、及びらせんカニューレの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のカニューレ制御装置。
【請求項8】
カニューレ制御システムであって、
プラットフォームと、
少なくとも1つのカニューレ制御ユニットとを含むカニューレ制御装置であって、各カニューレ制御ユニットが、
カニューレと、
前記カニューレ制御ユニットの少なくとも1つと前記プラットフォームとに関連する較正方向に対して特定の回転方向へ前記カニューレを回転させるために前記カニューレに機械的に接続される回転モータアセンブリと、
前記カニューレ制御ユニットの少なくとも1つと前記プラットフォームとに関連する較正位置に対して特定の並進位置へ前記カニューレ制御ユニットを並進させるために前記プラットフォームに機械的に接続される並進モータアセンブリとを含む、カニューレ制御装置と、
前記カニューレ制御装置へモータ駆動信号を選択的に適用するために前記カニューレ制御装置と電気通信する少なくとも1つのモータコントローラであって、前記モータ駆動信号は前記少なくとも1つのカニューレの計画された展開を示す、少なくとも1つのモータコントローラとを有する、カニューレ制御システム。
【請求項9】
第一のカニューレ制御ユニットが、第一の回転モータアセンブリ内にクサビ嵌合されるアダプタをさらに含み、
第一のカニューレの近位端が前記アダプタ内にクサビ嵌合され、それによって前記第一のカニューレを前記第一の回転モータアセンブリに機械的に接続する、請求項8に記載のカニューレ制御システム。
【請求項10】
前記第一のカニューレ制御ユニットが並進可能プレートをさらに含み、
前記第一のカニューレの遠位端が前記並進可能プレートに送り込まれる、請求項8に記載のカニューレ制御システム。
【請求項11】
前記プラットフォームが各並進モータアセンブリに通されるレールを含み、それによって各並進モータアセンブリを前記プラットフォームに機械的に接続する、請求項8に記載のカニューレ制御システム。
【請求項12】
前記プラットフォームが、前記プラットフォームから少なくとも1つのカニューレの伸長を容易にするためのカニューレガイドチャネルを持つ前壁を含む、請求項8に記載のカニューレ制御システム。
【請求項13】
前記プラットフォームが、前記較正方向を定めるために前記前壁に取り付けられる較正機構をさらに含む、請求項8に記載のカニューレ制御システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのカニューレが、直線カニューレ、湾曲カニューレ、及びらせんカニューレの少なくとも1つを含む、請求項8に記載のカニューレ制御システム。
【請求項15】
カニューレと、前記カニューレに機械的に接続される回転モータアセンブリと、プラットフォームに機械的に接続される並進モータアセンブリとを含むカニューレ制御ユニットにおいて、前記カニューレの展開を制御する方法であって、
前記カニューレ制御ユニットの少なくとも1つと前記プラットフォームとに関連する較正方向に対して特定の回転方向へ前記カニューレを回転させるように前記回転モータアセンブリを操作するステップと、
前記カニューレ制御ユニットの少なくとも1つと前記プラットフォームとに関連する較正位置に対して特定の並進位置へ前記カニューレ制御ユニットを並進させるように前記並進モータアセンブリを操作するステップとを有する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−502681(P2012−502681A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526599(P2011−526599)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053810
【国際公開番号】WO2010/032148
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】