説明

入出力装置及び通話端末

【課題】エコーやハウリングの発生を抑制可能な入出力装置を提供する。
【解決手段】入出力装置は、スピーカと、マイクと、適応フィルタ回路と、制御回路と、を備える。スピーカは、受話信号に基づいて音声を出力する。マイクは、音声を収集することによって送話信号を生成する。適応フィルタ回路は、スピーカとマイクとの間の音声伝達特性を示す伝達係数と受話信号とから生成される擬似エコー信号と、マイク増幅回路によって増幅された送話信号と、に基づいて残留信号を生成する。制御回路は、スピーカ及びマイクの少なくとも一方をミュートさせる場合に、適応フィルタからの残留信号の出力を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、スピーカとマイクを備える入出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電話会議システムなどにおいてダブルトークが発生した時に、スピーカから出力される受話信号がマイクによって収音されることによって生じるエコーやハウリングの発生を抑えるために、適応フィルタ回路の係数系列の更新を停止する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の手法によれば、スピーカやマイクがミュートされることによってエコー径路が変動してしまった場合に、学習済みの係数系列が変更されることを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−48547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手法では、適応フィルタ回路の係数系列更新を停止しても、受話信号系列と係数系列との畳み込み積分演算によって生成される擬似エコー信号を送話信号から差し引いて出力する径路が残っている。そのため、擬似エコー信号が相手に送話されることによって、エコーやハウリングが発生するおそれがある。
ここに開示される技術の目的は、エコーやハウリングの発生を抑制可能な入出力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに開示される入出力装置は、スピーカと、マイクと、適応フィルタ回路と、制御回路と、を備える。スピーカは、受話信号に基づいて音声を出力する。マイクは、音声を収集することによって送話信号を生成する。適応フィルタ回路は、スピーカとマイクとの間の音声伝達特性を示す伝達係数と受話信号とから生成される擬似エコー信号と、マイク増幅回路によって増幅された送話信号と、に基づいて残留信号を生成する。制御回路は、スピーカ及びマイクの少なくとも一方をミュートさせる場合に、適応フィルタからの残留信号の出力を停止させる。
【発明の効果】
【0006】
ここに開示される技術によれば、エコーやハウリングの発生を抑制可能な入出力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る入出力装置のブロック図
【図2】第2実施形態に係る入出力装置のブロック図
【図3】第3実施形態に係る入出力装置のブロック図
【図4】第4実施形態に係る入出力装置のブロック図
【図5】第5実施形態に係る入出力装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.第1実施形態
(入出力装置1の構成)
図1は、第1実施形態に係る入出力装置1のブロック図である。入出力装置1は、スピーカとマイクを備えており、相手端末と双方向での音声信号のやり取りが可能な通話端末に好適に用いられる。このような通話端末は、図示しないが、相手端末から受話信号X(t)を受信する受信部と、入出力装置1から出力される送話信号Y(t)を相手端末に送信する送信部と、を備えていればよい。
【0009】
入出力装置1は、入力端子100と、スピーカ増幅回路101と、スピーカ102と、マイク103と、マイク増幅回路104と、適応フィルタ回路120と、出力端子108と、ミュート信号入力部114と、制御回路115と、を備える。
入力端子100には、受話信号X(t)が入力される。受話信号X(t)は、入力端子100からスピーカ増幅回路101及び適応フィルタ回路120のそれぞれに出力される。
【0010】
スピーカ増幅回路101は、入力端子100から出力された受話信号X(t)を増幅する。スピーカ増幅回路101は、増幅された受話信号X(t)をスピーカ102に出力する。ただし、スピーカ増幅回路101は、制御回路115から停止信号が入力された場合、受話信号X(t)の増幅及び出力を停止する。これによって、スピーカ102がミュートされている間、スピーカ102への受話信号X(t)の入力が停止される。
【0011】
スピーカ102は、スピーカ増幅回路101に接続される。スピーカ102は、スピーカ増幅回路101によって増幅された受話信号X(t)に基づく音声を出力する。
マイク103は、周辺から収集した音声に基づいて送話信号Y(t)を生成する。マイク103は、送話信号Y(t)をマイク増幅回路104に出力する。
マイク増幅回路104は、マイク103から入力された送話信号Y(t)を増幅する。マイク増幅回路104は、増幅した送話信号Y(t)を適応フィルタ回路120に出力する。ただし、マイク増幅回路104は、制御回路115から停止信号が入力された場合、送話信号Y(t)の生成及び出力を停止する。これによって、マイク103がミュートされている間、適応フィルタ回路120への送話信号Y(t)の入力が停止される。
【0012】
適応フィルタ回路120には、入力端子100から出力された受話信号X(t)とマイク増幅回路104から出力された送話信号Y(t)とが入力される。適応フィルタ回路120は、スピーカ102から出力され、かつ、マイク103によって収集された音声成分を送話信号Y(t)から除去する機能を有する。これによって、送話信号Y(t)におけるエコーやハウリングの発生が抑制されている。
【0013】
適応フィルタ回路120は、受話信号入力端子109と、受話信号記憶回路110と、係数記憶回路113と、積和演算回路112と、送話信号入力端子105と、減算回路106と、係数修正回路111と、送話信号出力端子107と、を備える。
受話信号入力端子109には、入力端子100から出力された受話信号X(t)が入力される。受話信号入力端子109は、受話信号X(t)を受話信号記憶回路110と係数修正回路111とに出力する。
【0014】
受話信号記憶回路110は、受話信号入力端子109から入力された受話信号X(t)を格納する。
係数記憶回路113は、スピーカ102とマイク103との間の空間における音声伝達特性を示す伝達係数を格納する。係数記憶回路113に格納された伝達係数は、係数修正回路111によって更新される。
【0015】
積和演算回路112は、受話信号記憶回路110に記憶された受話信号X(t)と係数記憶回路113に記憶された伝達係数との畳み込み積分演算を行うことによって、擬似エコー信号Z(t)を生成する。積和演算回路112は、生成した擬似エコー信号Z(t)を減算回路106に出力する。ただし、積和演算回路112は、制御回路115から出力される制御信号に応じて、擬似エコー信号Z(t)の生成を停止する。これによって、スピーカ102又は/及びマイク103がミュートされている場合、減算回路106への擬似エコー信号Z(t)の入力が停止される。
【0016】
送話信号入力端子105には、マイク増幅回路104から出力された送話信号Y(t)が入力される。送話信号入力端子105は、送話信号Y(t)を減算回路106に出力する。
減算回路106は、送話信号Y(t)から擬似エコー信号Z(t)を差し引くことによって、残留信号E(t)を生成する。これによって、スピーカ102から出力され、かつ、マイク103によって収集された音声成分が送話信号Y(t)から除去される。減算回路106は、残留信号E(t)を係数修正回路111及び送話信号出力端子107のそれぞれに出力する。
【0017】
ただし、上述の通り、マイク103がミュートされている場合、マイク増幅回路104から適応フィルタ回路120への送話信号Y(t)の入力は停止される。また、マイク103がミュートされている間、積和演算回路112から減算回路106への擬似エコー信号Z(t)の入力は停止される。従って、マイク103がミュートされている間、減算回路106には送話信号Y(t)及び擬似エコー信号Z(t)が入力されないため、減算回路106からは何の信号も出力されない。
【0018】
また、上述の通り、スピーカ102がミュートされている場合、積和演算回路112から減算回路106への擬似エコー信号Z(t)の入力は停止される。一方で、マイク103がミュートされていなければ、減算回路106には送話信号Y(t)が入力される。従って、スピーカ102のみがミュートされている間、減算回路106は、残留信号E(t)として送話信号Y(t)をそのまま出力することになる。
【0019】
このように、スピーカ102及びマイク103のいずれか一方がミュートされている場合には、擬似エコー信号Z(t)と送話信号Y(t)とに基づいて生成される残留信号E(t)の適応フィルタ回路120からの出力が停止されている。
係数修正回路111は、残留信号E(t)に基づいて、減算回路106の出力が最小になるように、スピーカ102とマイク103との間の伝達係数の更新値を算出する。係数修正回路111は、伝達係数の更新値を係数記憶回路113に格納する。これによって、スピーカ102とマイク103との間の伝達係数が変動した場合においても、送話信号Y(t)におけるエコーやハウリングの発生が抑制される。ただし、係数修正回路111は、制御回路115から出力される制御信号に応じて、伝達係数の更新値の算出を停止する。この場合、係数修正回路111は、伝達係数の更新値を係数記憶回路113に格納しない。
【0020】
送話信号出力端子107は、適応フィルタ回路120によって送話信号Y(t)から生成された残留信号E(t)や送話信号Y(t)を出力する。
出力端子108には、適応フィルタ回路120から出力される残留信号E(t)や送話信号Y(t)が入力される。出力端子108は、残留信号E(t)や送話信号Y(t)を外部機器などに出力する。
【0021】
ミュート信号入力部114には、スピーカ102のミュート操作を示すスピーカミュート信号が入力される。スピーカミュート信号は、ユーザがスピーカ102からの音声の出力を一時的に停止したい場合にリモコン(不図示)のスピーカミュートボタンを押下することによって生成される。また、ミュート信号入力部114には、マイク103のミュート操作を示すマイクミュート信号が入力される。マイクミュート信号は、ユーザがマイク103による音声の収集を一時的に停止したい場合にリモコンのマイクミュートボタンを押下することによって生成される。
【0022】
制御回路115には、ミュート信号入力部114からスピーカミュート信号又は/及びマイクミュート信号が入力される。制御回路115は、スピーカミュート信号に応じて、スピーカ増幅回路101を停止させるための停止信号をスピーカ増幅回路101に出力する。これによって、スピーカ102がミュートされる。制御回路115は、マイクミュート信号に応じて、マイク増幅回路104を停止させるための停止信号をマイク増幅回路104に出力する。これによって、マイク103がミュートされる。また、制御回路115は、スピーカ102又は/及びマイク103のミュート期間中は、係数修正回路111での係数系列の更新値演算を停止させるための制御信号を、係数修正回路111に出力する。さらに、制御回路115は、スピーカ102又は/及びマイク103のミュート期間中は、積和演算回路112での畳み込み積分演算を停止させるための制御信号を積和演算回路112に出力する。
【0023】
(作用及び効果)
(1)第1実施形態に係る入出力装置1において、適応フィルタ回路120は、スピーカ102及びマイク103のいずれか一方がミュートされている場合、擬似エコー信号Z(t)と送話信号Y(t)とに基づいて生成される残留信号E(t)の出力を停止する。具体的に、制御回路115は、スピーカ増幅回路101又は/及びマイク増幅回路104を停止させた場合、積和演算回路112における畳み込み積分演算も停止させる。
【0024】
従って、スピーカ増幅回路101又は/及びマイク増幅回路104の停止によってエコー径路が遮断された場合には、積和演算回路112と減算回路106により形成される径路が遮断される。そのため、スピーカ102がミュートされているにも関わらず送話信号Y(t)から擬似エコー信号Z(t)が差し引かれたり、マイク103がミュートされているにも関わらず符号反転された擬似エコー信号Z(t)が生成されたりすることを抑制できる。その結果、エコーやハウリングの発生を抑制することができる。
【0025】
(2)また、第1実施形態に係る入出力装置1において、制御回路115は、スピーカ増幅回路101又は/及びマイク増幅回路104を停止させた場合、係数修正回路111での係数系列の更新も停止させる。
従って、例えばスピーカ102のみがミュートされることによって、スピーカ102から出力された音声成分が送話信号Y(t)に含まれていない場合に、当該送話信号Y(t)に基づいて伝達係数が更新されることを抑制できる。そのため、スピーカ102のミュートが解除されたときに、学習済みの伝達係数に基づく適切な擬似エコー信号Z(t)を生成することができる。その結果、ミュートの解除後、迅速にエコーやハウリングを抑制することができる。
【0026】
2.第2実施形態
(入出力装置1の構成)
図2は、第2実施形態に係る入出力装置1のブロック図である。第2実施形態の第1実施形態との相違点は、制御回路115が積和演算回路112での畳み込み積分演算を停止させる代わりに、減算回路106における処理を停止させる点である。以下においては、当該相違点について主に説明する。
【0027】
制御回路115は、ミュート信号入力部114からスピーカミュート信号又は/及びマイクミュート信号が入力された場合、減算回路106における送話信号Y(t)から擬似エコー信号Z(t)を差し引く処理を停止させる。これによって、減算回路106は、送話信号入力端子105から送話信号Y(t)が入力される場合には送話信号Y(t)を残留信号E(t)としてそのまま通過させ、送話信号入力端子105から送話信号Y(t)が入力されない場合には何の信号も出力しない。
【0028】
(作用及び効果)
(1)第2実施形態に係る入出力装置1において、適応フィルタ回路120は、スピーカ102及びマイク103のいずれか一方がミュートされている場合、擬似エコー信号Z(t)と送話信号Y(t)とに基づいて生成される残留信号E(t)の出力を停止する。具体的に、制御回路115は、スピーカ増幅回路101又は/及びマイク増幅回路104を停止させた場合、減算回路106における送話信号Y(t)から擬似エコー信号Z(t)を差し引く処理を停止させる。
従って、上記第1実施形態と同様、スピーカ102がミュートされているにも関わらず送話信号Y(t)から擬似エコー信号Z(t)が差し引かれたり、マイク103がミュートされているにも関わらず符号反転された擬似エコー信号Z(t)が生成されたりすることを抑制できる。その結果、エコーやハウリングの発生を抑制することができる。
【0029】
(2)また、上記第1実施形態と同様、制御回路115によって係数修正回路111での係数系列の更新が停止されることによって、ミュートの解除後、迅速にエコーやハウリングを抑制することができる。
【0030】
3.第3実施形態
(入出力装置1の構成)
図3は、第3実施形態に係る入出力装置1のブロック図である。第3実施形態の第1実施形態との相違点は、適応フィルタ回路120が減算回路106の後段に出力遮断回路117を備える点である。以下においては、当該相違点について主に説明する。なお、本実施形態では、マイク103がミュートされる場面が想定されている。
【0031】
出力遮断回路117は、減算回路106と送話信号出力端子107及び係数修正回路111との間に配置される。出力遮断回路117は、制御回路115から停止信号が入力された場合、減算回路106から入力される信号の出力を停止する。これによって、マイク103がミュートされている間、残留信号E(t)の送話信号出力端子107及び係数修正回路111への出力が停止される。
【0032】
制御回路115は、ミュート信号入力部114からマイクミュート信号が入力された場合、出力遮断回路117からの出力を停止させるための制御信号を出力遮断回路117に出力する。これによって、減算回路106から出力される信号は、出力遮断回路117によって遮断される。
なお、本実施形態において、制御回路115は、マイク増幅回路104、積和演算回路112及び減算回路106の処理を停止させないため、減算回路106から出力遮断回路117に対して残留信号E(t)が出力されている。
【0033】
また、本実施形態において、制御回路115は、係数修正回路111の処理を停止させていないが、出力遮断回路117からの出力が一切停止されるため、係数修正回路111は、伝達係数の更新値を算出しない。その結果、マイク103がミュートされている間、係数記憶回路113に格納された伝達係数は保持される。
【0034】
(作用及び効果)
第3実施形態に係る入出力装置1において、適応フィルタ回路120は、マイク103がミュートされている場合、擬似エコー信号Z(t)と送話信号Y(t)とに基づいて生成される残留信号E(t)の出力を停止する。具体的に、制御回路115は、ミュート信号入力部114からマイクミュート信号が入力された場合、減算回路106から出力される信号を出力遮断回路117によって遮断させる。
【0035】
従って、上記第1実施形態と同様、マイク103がミュートされているにも関わらず残留信号E(t)が出力されることを抑制できるため、エコーやハウリングの発生を抑制できる。
また、係数修正回路111への残留信号E(t)の出力が遮断されるため、マイク103がミュートされている間、伝達係数の更新が停止される。従って、ミュートの解除後、迅速にエコーやハウリングを抑制することができる。
【0036】
4.第4実施形態
(入出力装置1の構成)
図4は、第4実施形態に係る入出力装置1のブロック図である。第4実施形態の第3実施形態との相違点は、適応フィルタ回路120が送話信号出力端子107の後段に出力遮断回路116を備える点である。以下においては、当該相違点について主に説明する。なお、本実施形態においても、マイク103がミュートされる場面が想定されている。
【0037】
出力遮断回路116は、送話信号出力端子107と出力端子108との間に配置される。出力遮断回路116は、制御回路115から停止信号が入力された場合、送話信号出力端子107から入力される信号の出力を停止する。これによって、マイク103がミュートされている間、残留信号E(t)の出力端子108への出力が停止される。
制御回路115は、ミュート信号入力部114からマイクミュート信号が入力された場合、出力遮断回路116からの出力を停止させるための制御信号を出力遮断回路116に出力する。これによって、減算回路106から出力される信号は、出力遮断回路116によって遮断される。
【0038】
なお、本実施形態において、制御回路115は、マイク増幅回路104、積和演算回路112及び減算回路106の処理を停止させないため、減算回路106から出力遮断回路116に対して残留信号E(t)が出力されている。
また、本実施形態において、減算回路106から係数修正回路111への径路は維持されており、制御回路115は、係数修正回路111の処理を停止させていない。そのため、マイク103がミュートされている間においても、係数修正回路111は、伝達係数の更新値の算出を継続する。
【0039】
(作用及び効果)
(1)第4実施形態に係る入出力装置1において、適応フィルタ回路120は、マイク103がミュートされている場合、擬似エコー信号Z(t)と送話信号Y(t)とに基づいて生成される残留信号E(t)の出力を停止する。具体的に、制御回路115は、ミュート信号入力部114からマイクミュート信号が入力された場合、送話信号出力端子107から出力される信号を出力遮断回路116によって遮断させる。
従って、上記第3実施形態と同様、マイク103がミュートされているにも関わらず残留信号E(t)が出力されることを抑制できるため、エコーやハウリングの発生を抑制できる。
【0040】
(2)また、係数修正回路111への残留信号E(t)の出力が遮断されないため、マイク103がミュートされている間においても、係数修正回路111は、伝達係数の更新値の算出を継続する。
従って、ミュート中においても伝達係数の学習機能を継続させることができる。そのため、ミュート中にスピーカ102及びマイク103の配置(すなわち、エコー径路)が変更された場合であっても、ミュートの解除後、迅速にエコーやハウリングを抑制することができる。
【0041】
5.第5実施形態
(入出力装置1の構成)
図5は、第5実施形態に係る入出力装置1のブロック図である。第5実施形態の第1実施形態との相違点は、適応フィルタ回路120が受話信号入力端子109の前段に入力遮断回路119を備える点である。以下においては、当該相違点について主に説明する。なお、本実施形態では、スピーカ102がミュートされる場面が想定されている。
【0042】
入力遮断回路119は、入力端子100と受話信号入力端子109との間に配置される。入力遮断回路119は、制御回路115から停止信号が入力された場合、入力端子100から入力される受話信号X(t)の出力を停止する。これによって、スピーカ102がミュートされている間、擬似エコー信号Z(t)及び残留信号E(t)の生成が停止される。
制御回路115は、ミュート信号入力部114からスピーカミュート信号が入力された場合、入力遮断回路119からの出力を停止させるための制御信号を入力遮断回路119に出力する。これによって、入力端子100から入力される受話信号X(t)は、入力遮断回路119によって遮断される。
【0043】
なお、本実施形態において、制御回路115は、マイク増幅回路104及び減算回路106の処理を停止させないが、受話信号記憶回路110への受話信号X(t)の入力が遮断されることによって積和演算回路112が機能しなくなる。そのため、減算回路106からは残留信号E(t)として送話信号Y(t)がそのまま出力される。
また、本実施形態において、制御回路115は、係数修正回路111の処理を停止させていないが、係数修正回路111への受話信号X(t)の入力が遮断されることによって係数修正回路111が機能しなくなる。そのため、係数修正回路111による伝達係数の更新は停止される。その結果、スピーカ102がミュートされている間、係数記憶回路113に格納された伝達係数は保持される。
【0044】
(作用及び効果)
第5実施形態に係る入出力装置1において、適応フィルタ回路120は、スピーカ102がミュートされている場合、擬似エコー信号Z(t)と送話信号Y(t)とに基づいて生成される残留信号E(t)の出力を停止する。具体的に、制御回路115は、ミュート信号入力部114から、スピーカミュート信号が入力された場合、入力端子100から入力される受話信号X(t)を入力遮断回路119によって遮断させる。
【0045】
従って、上記第1実施形態と同様、スピーカ102がミュートされているにも関わらず残留信号E(t)が出力されることを抑制できるため、エコーやハウリングの発生を抑制できる。
また、係数修正回路111への受話信号X(t)の入力が遮断されることによって、係数記憶回路113に格納された伝達係数を保持できる。従って、ミュートの解除後、迅速にエコーやハウリングを抑制することができる。
【0046】
(その他の実施形態)
本発明は上記の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、上記実施形態において、適応フィルタ回路120は、係数修正回路111を備えることとしたが、これに限られるものではない。適応フィルタ回路120は、係数修正回路111を備えず、係数記憶回路113は、伝達係数として固定値を記憶していればよい。この場合であっても、スピーカ102とマイク103との間の音声伝達特性の変動が小さい環境であれば、音質に対する影響は小さい。
【符号の説明】
【0047】
100 入力端子
101 スピーカ増幅回路
102 スピーカ
103 マイク
104 マイク増幅回路
105 送話信号入力端子
106 減算回路
107 送話信号出力端子
108 出力端子
109 受話信号入力端子
110 受話信号記憶回路
111 係数修正回路
112 積和演算回路
113 係数記憶回路
114 ミュート信号入力端子
115 制御回路
117 出力遮断回路
118 出力遮断回路
119 入力遮断回路
120 適応フィルタ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受話信号に基づいて音声を出力するスピーカと、
音声を収集することによって送話信号を生成するマイクと、
前記スピーカと前記マイクとの間の音声伝達特性を示す伝達係数と前記受話信号とから生成される擬似エコー信号と、前記マイク増幅回路によって増幅された前記送話信号と、に基づいて残留信号を生成する適応フィルタ回路と、
前記スピーカ及び前記マイクの少なくとも一方をミュートさせる場合に、前記適応フィルタからの前記残留信号の出力を停止させる制御回路と、
を備える入出力装置。
【請求項2】
前記適応フィルタ回路は、前記受話信号と前記伝達係数との畳み込み積分演算を行うことによって前記擬似エコー信号を生成する積和演算回路と、前記送話信号から前記擬似エコー信号を減算することによって前記残留信号を算出する減算回路と、を有し、
前記制御回路は、前記積和演算回路による畳み込み積分演算を停止させることによって、前記適応フィルタからの前記残留信号の出力を停止させる、
請求項1に記載の入出力装置。
【請求項3】
前記適応フィルタ回路は、前記受話信号と前記伝達係数との畳み込み積分演算を行うことによって前記擬似エコー信号を生成する積和演算回路と、前記送話信号から前記擬似エコー信号を減算することによって前記残留信号を算出する減算回路と、を有し、
前記制御回路は、前記減算回路による減算を停止させることによって、前記適応フィルタからの前記残留信号の出力を停止させる、
請求項1に記載の入出力装置。
【請求項4】
前記適応フィルタ回路は、前記受話信号と前記伝達係数との畳み込み積分演算を行うことによって前記擬似エコー信号を生成する積和演算回路と、前記送話信号から前記擬似エコー信号を減算することによって前記残留信号を算出する減算回路と、前記減算回路からの出力を遮断可能な出力遮断回路と、を有し、
前記制御回路は、前記出力遮断回路に前記減算回路からの出力を遮断させることによって、前記適応フィルタからの前記残留信号の出力を停止させる、
請求項1に記載の入出力装置。
【請求項5】
前記適応フィルタ回路は、前記受話信号と前記伝達係数との畳み込み積分演算を行うことによって前記擬似エコー信号を生成する積和演算回路と、前記送話信号から前記擬似エコー信号を減算することによって前記残留信号を算出する減算回路と、前記適応フィルタ回路への前記受話信号の入力を遮断可能な入力遮断回路と、を有し、
前記制御回路は、前記入力遮断回路に前記適応フィルタ回路への前記受話信号の入力を遮断させることによって、前記適応フィルタからの前記残留信号の出力を停止させる、
請求項1に記載の入出力装置。
【請求項6】
前記適応フィルタ回路は、前記残留信号と前記受話信号とに基づいて前記伝達係数を更新する係数修正回路を有する、
請求項2乃至5のいずれかに記載の入出力装置。
【請求項7】
相手端末と双方向での音声信号のやり取りが可能な通話端末であって、
前記相手端末から受話信号を受信する受信部と、
請求項1に記載の入出力装置と、
前記残留信号を前記相手端末に送信する送信部と、
を備える通話端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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