説明

入力器具、その制御方法、その制御プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体、ならびに、タッチパネル入力システム

【課題】タッチパネル表面に刺激電極を設けることなく、ユーザに触覚提示による操作感を提供する。
【解決手段】タッチパネル入力装置200に対して押圧、接触、または近接させて入力操作を行うための入力器具100において、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電を有する変位電圧印加部21および基準電極を有する基準電圧印加部22と、入力器具100による、タッチパネル入力装置200に対する入力操作により、刺激電極と、基準電極との間に、刺激電極に接触する皮膚の触覚を刺激するための電圧を印加する電圧制御部33を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は刺激電流の通電により触覚を提示する入力器具、その制御方法、その制御プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体、ならびに、タッチパネル入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタッチパネル入力装置では、キーボードのような機械的な動作がないため、ユーザが操作感を得にくいといった課題があった。すなわち、操作が実際にタッチパネル入力装置に受け付けられたのか否かが、ユーザにとって認識しにくいという課題があった。
【0003】
これに対して、タッチパネル入力装置のタッチパネル表面に透明電極層を設けて、ユーザが指でタッチパネルを押圧したときに、ユーザの指に通電し、電気的に刺激することによって、ユーザに擬似的なクリック感を感じせしめる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、従来、皮膚表面からの電気刺激によって、より多様な皮膚感覚を生成する触覚提示技術が知られている(例えば、非特許文献1)。
【0005】
そして、上記のような透明電極層を設けたタッチパネル入力装置において、よりリアリティのある操作感をユーザに与える技術としては、次のようなものがある。すなわち、所定電位に維持される電極を設けた器具を指に装着したユーザが、タッチパネルを押圧した場合、タッチパネル入力装置に設けられた透明電極層の電極に印加させる電位を時間とともに変化させてユーザの指に通電することで、接触感・押圧感といったリアルな皮膚感覚を与える技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−284909号公報(2000年10月13日公開)
【特許文献2】特開2005−31918号公報(2005年2月3日公開)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】梶本裕之、外3名、「皮膚感覚神経を選択的に刺激する電気触感ディスプレイ」、電子情報通信学会論文誌D−II、2001年1月、Vol.J84−D−II、No.1、p.120−128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来技術は、ユーザに電気的な刺激を与えるために、タッチパネルの表面において透明電極層を設けている。
【0009】
このため、タッチパネルの耐久性や、歩留まりが悪くなるという問題があった。
【0010】
また、透明電極層の電極等がタッチパネルの全面に露出しているため、意図しない箇所に電流が流れる可能性や、漏電が起きる可能性があった。
【0011】
とくに、近年では、携帯電話機において、タッチパネル入力装置が導入されている場合もある。そして、このような携帯電話機においては、通話の際には、タッチパネルをユーザの顔面に近づけるといった動作が想定される。つまり、通話の際に、上記のような漏電等の可能性のあるタッチパネル入力装置を、顔などの皮膚が敏感な部位に近づけることになってしまう。このため、このような利用態様の場合において、安全性の確保が望まれる。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、タッチパネル表面に刺激電極を設けることなく、ユーザに触覚提示による操作感を提供することのできる入力器具、その制御方法、その制御プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体、ならびに、タッチパネル入力システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る入力器具は、上記課題を解決するために、タッチパネルに対して押圧、接触、または近接させて入力操作を行うための入力器具において、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極および基準電極と、該入力器具による、前記タッチパネルに対する入力操作により、前記刺激電極と、前記基準電極との間に、前記刺激電極に接触する皮膚の触覚を刺激するための電圧を印加する電圧印加手段と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
本発明に係る入力器具の制御方法は、上記課題を解決するために、タッチパネルに対して押圧、接触、または近接させて入力操作を行うための入力器具の制御方法において、該入力器具による、前記タッチパネルに対する入力操作により、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極および基準電極の間に、前記刺激電極に接触する皮膚の触覚を刺激するための電圧を印加する電圧印加ステップを含むことを特徴としている。
【0015】
上記構成によれば、タッチパネルに対する入力操作を行うための入力器具が、当該入力器具による、タッチパネルに対して押圧、接触、または近接させることにより行われる入力操作により、前記刺激電極に接触する皮膚の触覚を刺激するための電圧を、前記刺激電極と、前記基準電極との間に印加する。
【0016】
この刺激電極および基準電極は、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした電極である。また、入力器具は、1以上の刺激電極を備える。
【0017】
これにより、入力器具は、タッチパネルに対する入力操作に応じて、刺激電流を、入力器具のユーザに対して通電することができる。
【0018】
この結果、タッチパネル表面に刺激電極を設けなくても、入力器具が、触覚提示による操作感をユーザに対して提供することができるという効果を奏する。
【0019】
また、タッチパネル側では、タッチパネル表面に刺激電極を設けなくてもよくなるので、タッチパネルが携帯電話機に組み込まれていたとしても、通話時に、刺激電極をユーザの顔面にさらすことがなく、安全性を確保することもできる。
【0020】
本発明に係る入力器具では、前記入力器具による、前記入力操作が行われたことを示す操作情報を、前記タッチパネルから取得する操作情報取得手段を備え、前記電圧印加手段は、前記操作情報取得手段が操作情報を取得したことに応じて、電圧の印加を行うことが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、入力器具は、入力操作が行われたことを示す操作情報を、タッチパネルから取得し、操作情報を取得したことに応じて電圧の印加を行うことができる。
【0022】
すなわち、入力器具は、タッチパネル上において入力操作が受け付けられたことに応じて、電圧の印加を行うことができる。
【0023】
この結果、入力器具は、ユーザに対して、入力操作が受け付けられたことを触覚提示することができる。つまり、ユーザは、入力器具による触覚提示により、入力操作が受け付けられたことを認識することができる。
【0024】
本発明に係る入力器具では、前記タッチパネルに対する入力操作の圧力の大きさを検知する1以上の圧力センサを備え、前記電圧印加手段は、前記圧力センサが検知した圧力の大きさに応じて、前記刺激電極に印加する電圧の変位パターンを変更することが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、圧力センサによって検知されたタッチパネルに対する入力操作の圧力の大きさに応じて、刺激電極に印加する電圧の変位パターンを変更することができる。
【0026】
この結果、入力操作の圧力に応じて、多様な触覚を提示することができるという効果を奏する。例えば、圧力の大小に応じて、刺激電極に印加する電圧の大小を変更することができる。
【0027】
本発明に係る入力器具では、前記刺激電極は、複数であり、前記圧力センサは、複数であり、前記複数の刺激電極と、前記複数の圧力センサとはそれぞれ対応しており、前記電圧印加手段は、前記圧力センサが検知した圧力の大きさに応じて、該圧力センサに対応する刺激電極に印加する電圧の変位パターンを変更することが好ましい。
【0028】
タッチパネルに対する入力操作の圧力の大きさは、入力器具の部位によって異なることが想定される。つまり、上記複数の圧力センサは、それぞれ異なる大きさの圧力を検知していることが考えられる。ここで、各刺激電極に均一に電圧の印加を行うと、上記圧力の相違を触覚としてユーザに提示することができない。
【0029】
上記構成によれば、圧力センサが検知した圧力に応じて、その圧力センサに対応する刺激電極に印加する電圧の変位パターンを変更することができる。
【0030】
この結果、部位によって異なる圧力の大きさに応じた触覚を、ユーザに提示することができるという効果を奏する。
【0031】
本発明に係る入力器具では、ペン型の胴体部を有し、該胴体部の一端に、入力操作を行うためのペン先部分を設け、該胴体部のユーザによって把持される位置に前記刺激電極を配備し、該胴体部において、前記刺激電極が配備された位置と、該胴体部の他端との間の位置に前記基準電極を配備してもよい。
【0032】
上記構成によれば、入力器具は、タッチパネルに対する入力操作の際に、ユーザにより、ペンを持つような状態で把持される態様にて使用される。
【0033】
タッチパネルに対する入力操作には、従来、ユーザがタッチペンや、スタイラスといったペン型の入力器具を用いて行うといった使用の態様があった。このような構成を採用することにより、入力器具は、タッチペン等による入力操作の態様において、触覚提示を行うことができる。
【0034】
本発明に係る入力器具では、ペン型の胴体部を有し、該胴体部の一端に、入力操作を行うためのペン先部分を設け、該ペン先部分に前記圧力センサを配備し、該胴体部のユーザによって把持される位置に前記刺激電極を配備し、該胴体部において、前記刺激電極が配備された位置と、該胴体部の他端との間の位置に前記基準電極を配備してもよい。
【0035】
上記ペン型に構成した入力器具において、上記のように、該ペン先部分に前記圧力センサを配備すれば、圧力に応じた触覚提示も可能である。
【0036】
本発明に係る入力器具では、ユーザの指先に装着するための指先部材と、ユーザの指に装着するための環状の部材とから構成され、前記指先部材において、ユーザの指に接触する側に、前記刺激電極を配備し、前記環状の部材において、ユーザの指に接触する部位に、前記基準電極を配備してもよい。
【0037】
上記構成によれば、入力器具は、タッチパネルに対する入力操作の際に、ユーザの指に装着される構成である。これにより、ユーザは、指先部材を装着した指先付近でタッチパネルを入力操作することができる。
【0038】
タッチパネルに対する入力操作は、従来、ユーザが指により行うという態様があった。上記構成により、ユーザが指でタッチパネルを入力操作する態様において、触覚提示を行うことができる。
【0039】
本発明に係る入力器具では、ユーザの指先に装着するための指先部材と、ユーザの指に装着するための環状の部材とから構成され、前記指先部材において、ユーザの指に接触する側に、前記刺激電極を配備し、かつ、ユーザの指に接触する側と反対側に、前記刺激電極に対応する前記圧力センサを配備し、前記環状の部材において、ユーザの指に接触する位置に、前記基準電極を配備してもよい。
【0040】
入力器具を、上記指先部材と、環状の部材とから構成した場合、上記のように、指先部材において、ユーザの指に接触する側と反対側に、前記刺激電極に対応する前記圧力センサを配備すれば、圧力に応じた触覚提示も可能である。
【0041】
なお、上記入力器具は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、入力器具が備えるコンピュータを上記各手段として動作させることにより上記入力器具をコンピュータにて実現させる入力器具制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0042】
本発明に係るタッチパネル入力システムは、上記課題を解決するために、操作面が設けられ、該操作面に対して押圧、接触、または近接する入力操作が行われたことを検出するタッチパネル入力装置と、前記タッチパネル入力装置の操作面に対して前記入力操作を行うための入力器具とを備えるタッチパネル入力システムにおいて、前記入力器具は、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極および基準電極を備え、前記タッチパネル入力装置は、前記刺激電極に通電するための電流を出力するための刺激電流出力手段と、操作面上における入力操作を検知したとき、前記刺激電流出力手段に電流を出力させる電流出力制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0043】
上記構成によれば、操作面に対して押圧、接触、または近接する入力操作が行われたことを検出するタッチパネル入力装置が、入力器具により、操作面に対する入力操作が行われたことを検知し、入力器具に備えられている、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極に通電する。
【0044】
この結果、タッチパネル入力装置の表面に刺激電極を設けなくても、入力器具が、触覚提示による操作感をユーザに対して提供することができるという効果を奏する。また、この触覚提示では、タッチパネル入力装置が、操作面に対する入力操作が行われたことを検知したことをユーザに示すこともできる。
【0045】
本発明に係るタッチパネル入力システムでは、前記入力器具は、前記タッチパネルに対する入力操作の圧力の大きさを検出し、検出した圧力の大きさを圧力信号として出力する1以上の圧力センサを備え、前記タッチパネル入力装置は、前記圧力センサが出力した圧力信号を取得するための圧力取得手段を備え、前記電流出力制御手段は、前記圧力取得手段が取得した前記圧力信号が示す圧力の大きさに応じて、前記刺激電流出力手段に出力させる電流の波形パターンを変更することが好ましい。
【0046】
上記構成によれば、圧力センサが検出した圧力の大きさに応じて、刺激電極に通電する電流の波形パターンを変更することができる。
【0047】
この結果、入力操作の圧力に応じて、多様な触覚を提示することができるという効果を奏する。
【0048】
本発明に係るタッチパネル入力システムでは、前記刺激電極は、複数であり、前記圧力センサは、複数であり、前記複数の刺激電極と、前記複数の圧力センサとはそれぞれ対応しており、前記電流出力制御手段は、前記圧力取得手段が、一の圧力センサについて取得した前記圧力信号が示す圧力の大きさに応じて、前記一の圧力センサに対応する刺激電極に印加する電圧の変位パターンを変更することが好ましい。
【0049】
上記構成によれば、圧力センサが検知した圧力に応じて、その圧力センサに対応する刺激電極に印加する電圧の変位パターンを変更することができる。
【0050】
この結果、部位によって異なる圧力の大きさに応じた触覚を、ユーザに提示することができるという効果を奏する。
【0051】
本発明に係るタッチパネル入力システムでは、前記タッチパネル入力装置は、携帯電話機に備えられたものであってもよい。
【0052】
上記構成は、従来技術と異なり、タッチパネル入力装置の操作面上に刺激電極を設けなくてもよい構成である。従って、タッチパネル入力装置が備えられた携帯電話機を用いて、ユーザが通話する場合に、携帯電話機を顔面付近に近づけても、刺激電極をユーザの顔面にさらすことにはならない。この結果、安全性を確保することができるという効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係る入力器具は、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極および基準電極と、該入力器具による、タッチパネルに対する入力操作により、前記刺激電極と、前記基準電極との間に、前記刺激電極に接触する皮膚の触覚を刺激するための電圧を印加する電圧印加手段と、を備えた構成である。
【0054】
また、本発明に係る入力器具の制御方法は、入力器具による、タッチパネルに対する入力操作により、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極および基準電極の間に、前記刺激電極に接触する皮膚の触覚を刺激するための電圧を印加する電圧印加ステップを含む方法である。
【0055】
この結果、タッチパネル表面に刺激電極を設けなくても、入力器具が、触覚提示による操作感をユーザに対して提供することができるという効果を奏する。
【0056】
そして、本発明に係るタッチパネル入力システムは、上記課題を解決するために、操作面が設けられ、該操作面に対して押圧、接触、または近接する入力操作が行われたことを検出するタッチパネル入力装置と、前記タッチパネル入力装置の操作面に対して前記入力操作を行うための入力器具とを備えるタッチパネル入力システムにおいて、前記入力器具は、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極および基準電極を備え、前記タッチパネル入力装置は、前記刺激電極に通電するための電流を出力するための刺激電流出力手段と、操作面上における入力操作を検知したとき、前記刺激電流出力手段に電流を出力させる電流出力制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0057】
この結果、タッチパネル入力装置の表面に刺激電極を設けなくても、入力器具が、触覚提示による操作感をユーザに対して提供することができるという効果を奏する。また、この触覚提示では、タッチパネル入力装置が、操作面に対する入力操作が行われたことを検知したことをユーザに示すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係るタッチパネル入力システムを構成する入力器具およびタッチパネル入力装置の概略構成について示したブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るタッチパネル入力システムの利用態様の一例について説明した概略図である。
【図3】入力器具の外観の一例について示す図である。
【図4】指先部材の断面の概略構成について示した模式図である。
【図5】圧力検知部の詳細を示す図である。
【図6】変位電圧印加部の詳細を示す図である。
【図7】設定モードマッピング情報の一例について説明した図である。
【図8】圧力モード情報について説明したグラフであり、(a)は、「圧力モード0」について示しており、(b)は、「圧力モード1」について示している。
【図9】電流出力波形テンプレート情報の一例について説明したグラフであり、(a)〜(d)は、それぞれ「出力レベル0」〜「出力レベル3」の出力波形パターンを表している。
【図10】タッチパネル入力システムの処理の流れについて示したフローチャートである。
【図11】タッチパネル入力システムの処理の流れの変形例について示したフローチャートである。
【図12】本発明の他の実施形態に係るタッチパネル入力システムを構成する入力器具およびタッチパネル入力装置の概略構成について示したブロック図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るタッチパネル入力システムの他の利用態様について例示した概略図である。
【図14】ペン型入力器具の外観の一例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図11に基づいて説明すると以下の通りである。
【0060】
(タッチパネル入力システムの利用態様)
先ずは、図2を参照しながら、本実施形態に係るタッチパネル入力システム500の利用態様について説明する。図2は、本実施形態に係るタッチパネル入力システム500の利用態様の一例について説明した概略図である。
【0061】
図2に示すとおり、タッチパネル入力システム500は、入力器具100と、タッチパネル入力装置200とが、配線150によって接続された構成である。
【0062】
入力器具100は、タッチパネル入力装置200が備えるタッチパネル部60への入力操作に用いられるものである。
【0063】
タッチパネル入力装置200は、タッチパネル部60の画面上にアイコン等の画面表示を行うとともに、ユーザの入力操作を受け付け、そして、受け付けた操作に基づいて、各種の動作を行うものである。
【0064】
ここでいう動作とは、アプリケーションの起動や、コピー・アンド・ペースト等をはじめとする特定機能の実行のことをいう。たとえば、ユーザは、入力器具100によってタッチパネル部60の表示部に表示されたアイコン等をタッチすることで、タッチしたアイコンに関連づけられているアプリケーションの起動を行うことができる。
【0065】
図2に示すように、入力器具100は、入力操作の際、ユーザの人差し指に装着される。そして、ユーザは、人差し指に装着した入力器具100を用いて、タッチパネル入力装置200が備えるタッチパネル部60に対して入力操作を行う。この入力操作には、タッチパネル部60に対する押圧によって行われるものや、接触または近接によって行われるものが含まれる。
【0066】
また、入力器具100は、ユーザの入力操作に応じて、ユーザに対し、タッチパネル部60に指がぶつかったような感触や、タッチパネル部60を押圧しているかのような感触を与えることができる。
【0067】
ここで、図3を用いて、入力器具100の装着の態様について説明すると次のとおりである。図3は、入力器具100の外観の一例について示す図である。
【0068】
図3に示すとおり、入力器具100は、ユーザの人差し指3に装着されている。入力器具100は、指先部材100Aと、環状部材(環状の部材)100Bとから構成される。
【0069】
指先部材100Aには、ユーザに刺激電流を通電するための刺激電極が設けられている。指先部材100Aは、装着された際、人差し指3の手のひら側を、先端の部分から第1関節にかけて被覆する。また、指先部材100Aは、人差し指3の先端部の形状にあわせてやや湾曲した、略楕円の形状に形成されている。しかしながら、このような指先部材100Aの形状は、飽くまで一例であり、これに限られず、人差し指3にフィットするような形であれば適宜変更が可能である。
【0070】
環状部材100Bには、刺激電極に対応する、一定の電位を印加可能な基準電極が設けられている。刺激電極および基準電極の詳細については後述する。そして、環状部材100Bは、指輪型の形状に形成されており、人差し指3の付け根周辺に装着される。また、基準電極は、環状部材100Bにおいて、ユーザの指に接触する部位に配備される。
【0071】
指先部材100Aと、環状部材100Bとは、固定部材4によって、ユーザの人差し指3に固定される。
【0072】
固定部材4は、指先部材100Aをユーザの人差し指3に固定するとともに、刺激電極を、ユーザの皮膚に接触させた状態を保持可能にするためのものである。
【0073】
よって、入力操作の際には、専ら指先部材100Aの先端部分D1によって、タッチパネル部60に対する押圧、または、接触等が行われることになる。
【0074】
(入力器具およびタッチパネル入力装置の概略構成)
次に、図1を参照しながら、本実施形態に係る入力器具100およびタッチパネル入力装置200の概略構成について説明する。図1は、本実施形態に係るタッチパネル入力システム500を構成する入力器具100およびタッチパネル入力装置200の概略構成について示したブロック図である。
【0075】
(入力器具の概略構成)
まず、入力器具100の概略構成について説明すると次のとおりである。図1に示すように、入力器具100は、指先部材100Aと、環状部材100Bとから構成されている。そして、指先部材100Aは、圧力検知部(圧力センサ)11、変位電圧印加部(刺激電極)21、主制御部30、電圧変位部40、および外部インターフェース(以降、I/Fと称する)41を備える。また、環状部材100Bは、基準電圧印加部(基準電極)22を備える。
【0076】
はじめに、指先部材100Aの構成から説明すると次のとおりである。
【0077】
圧力検知部11は、指先部材100Aの表面上において、タッチパネル部60に接する側に設けられており、タッチパネル部60への入力操作の際における押圧の大きさを検知するものである。圧力検知部11は、押圧の大きさを検知するための圧力センサを複数備える。なお、圧力センサは、検知した圧力の大きさを示す圧力信号を生成して、主制御部30に出力する。なお、圧力検知部11の詳細については後述する。
【0078】
変位電圧印加部21は、ユーザの人差し指3に通電し、触覚を生じさせるためのものである。電圧変位部40により所定の電圧を印加することができる複数の刺激電極を備える。なお、変位電圧印加部21の詳細については後述する。
【0079】
主制御部30は、指先部材100Aにおける各種構成を統括的に制御するものである。プログラムされた処理をマイクロプロセッサ等の処理装置により実行することで実現可能である。なお、主制御部30の詳細については後述する。
【0080】
電圧変位部40は、主制御部30の制御により、変位電圧印加部21における電位を変位させるものである。
【0081】
外部I/F41は、配線150を接続するためのインターフェースである。入力器具100は、外部I/F41に接続された配線150を介してタッチパネル入力装置200と接続され、電流および制御信号の入出力を行う。
【0082】
続いて環状部材100Bの構成について説明すると次のとおりである。
【0083】
基準電圧印加部22は、基準となる所定の電圧が維持される基準電極を備える。本実施形態では、一例として、基準電圧印加部22を、接地端子(GRD)として構成している。
【0084】
(指先部材の断面の構成)
次に、図4を参照しながら、指先部材100Aの構成について説明する。図4は、指先部材100Aの断面の概略構成について示した模式図である。以下、既に説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0085】
圧力検知部11は、圧力センサP1〜P9を備える。図4に示すように、圧力検知部11が備える圧力センサP1〜P9は、タッチパネル入力装置200が備えるタッチパネル部60と接触する側に配備される。
【0086】
刺激電極E1〜E9と、圧力センサP1〜P9とは、それぞれ対応付けられている。例えば、刺激電極E1と、圧力センサP1とが対応付けられている。この対応付けを示す対応情報を、例えば、各種データを記憶するための記憶部(図示せず)に記憶しておいてもよい。
【0087】
変位電圧印加部21は、刺激電極E1〜E9を備える。図4に示すように、変位電圧印加部21が備える刺激電極E1〜E9は、ユーザの人差し指3に指先部材100Aが装着されたとき、ユーザの人差し指3に接する側の表面上に露出する態様で設けられる。ここで、人差し指3との接触抵抗を低減するため、刺激電極E1〜E9が露出している表面上に導電性ゲルを被覆してもよい。また、刺激電極E1〜E9は、絶縁層5によって、それぞれの導電部が絶縁されている。
【0088】
タッチパネル入力システム500では、圧力センサが押圧を検知したとき、対応する刺激電極に通電し、ユーザに触覚を提示する。例えば、圧力センサP1において圧力を検知したとき、対応する刺激電極E1に所定電圧の電流が出力される。タッチパネル入力システム500において、この対応付けがどのように用いられるかについて、詳しくは後述する。
【0089】
(圧力検知部の詳細)
次に、図5を参照しながら、圧力検知部11の詳細について説明する。図5は、圧力検知部11の詳細を示す図である。同図は、指先部材100Aを、圧力センサP1〜P9が設けられている側、すなわち、タッチパネル入力装置200が備えるタッチパネル部60との接触面側から見た平面図である。
【0090】
圧力センサP1〜P9は、指先部材100Aにおいて、ユーザの指に接触する面(側)と反対の面(側)に配備される。
【0091】
また、図示のとおり、圧力センサP1〜P9は、指先部材100Aにおいて、先端部分D1側に集中的に設けられている。これに対して、指先部材100Aにおいて、指の付け根寄りにあたる部分D2側には、圧力センサが設けられていない。これは、通常、タッチパネル部60への入力操作を行う場合には、人差し指3の先端部分で操作することが想定され、第1関節のあたりで、タッチパネル部60への入力操作を行うことは、考えにくいためである。このような圧力センサの配置により、先端部分D1周辺の圧力の変化を、より詳細に検知できるようになっている。
【0092】
(変位電圧印加部の詳細)
次に、図6を参照しながら、変位電圧印加部21の詳細について説明する。図6は、変位電圧印加部21の詳細を示す図である。同図は、指先部材100Aを、刺激電極E1〜E9が露出している表面側から見た平面図である。
【0093】
図示のとおり、刺激電極E1〜E9は、指先部材100Aにおいて、先端部分D1に集中的に設けられている。これに対して、指先部材100Aにおいて、指の付け根寄りにあたる部分D2には、圧力センサが設けられていない。このような配置になっているのは、前述の圧力センサの配置と同様の理由からである。
【0094】
また、刺激電極E1〜E9は、対応する圧力センサP1〜P9が設けられている位置の裏側にあたる位置に配置される。つまり、刺激電極E1の裏側には、圧力センサP1が配置されている構成である。この構成により、圧力センサP1が圧力を検知したとき、裏側にある刺激電極E1に通電されることになる。この制御は、主制御部30によって実行されるが、その制御については、後に詳しく説明する。
【0095】
(入力器具が備える主制御部の詳細)
次に、再び図1を参照しながら、入力器具が備える主制御部30の詳細について説明する。図示のように、主制御部30は、圧力情報出力部31、操作位置取得部(操作情報取得手段)32、および電圧制御部(電圧印加手段)33を備える。
【0096】
圧力情報出力部31は、圧力検知部11が出力する圧力信号を受信し、受信した圧力信号から圧力情報を生成して、外部I/F41を介して、生成した圧力情報をタッチパネル入力装置200に出力するものである。
【0097】
操作位置取得部32は、外部I/F41を介して、タッチパネル入力装置200から出力される操作位置情報を取得するものである。
【0098】
電圧制御部33は、操作位置取得部32が操作位置情報を取得したことに応じて、電圧変位部40に対して、外部I/F41を介してタッチパネル入力装置200から電流供給を受けるよう制御する。また、電圧制御部33は、電圧変位部40に、供給された電流を変位電圧印加部21に出力するための電圧制御を行わせる。
【0099】
電圧制御部33の制御により、刺激電極に出力される刺激電流は、100〜500μ秒幅のパルスを最大1〜3mA程度、パルス周波数は、10〜400Hz程度となるように制御される。電圧制御部33は、刺激電流を出力するための電圧の変位パターンを制御する。
【0100】
また、電圧制御部33は、圧力センサP1〜P9が、それぞれ刺激電極E1〜E9に対応付けられている場合、圧力を検知した圧力センサに対応付けられている刺激電極に電流を出力するよう制御する。なお、電圧制御部33が、このような制御を行うために、圧力情報出力部31は、圧力を検知した圧力センサを識別する情報を記憶部(図示せず)に記憶しておくようにしてもよい。つまり、電流制御の際、電圧制御部33が、記憶されている圧力センサの識別情報を読み出して、該圧力センサに対応する刺激電極を特定してもよい。
【0101】
(触覚提示の仕組み)
なお、ここで、刺激電極での通電による触覚提示の仕組みについて説明する。まず、人間の指が触覚を感じる仕組みについて説明すると以下のとおりである。人間が指先に振動を受けた場合、皮膚と垂直な方向に伸びる神経が刺激される。また、人間が指先に圧力を受けた場合、皮膚と平行な方向に伸びる神経が刺激される。
【0102】
このため、指先において、皮膚と垂直な方向に伸びる神経を刺激すれば、指先に振動を感じさせることができる一方、皮膚と平行な方向に伸びる神経を刺激すれば指先に圧力を感じさせることができる。
【0103】
この2種類の神経を選択的に刺激するには次のような刺激電流を流せばよいことが分かっている。まず、皮膚と垂直な方向に伸びる神経を刺激するには、外部から指先に入ってくる方向の刺激電流を流せばよい。そして、皮膚と平行な方向に伸びる神経を刺激するには、逆に、指先から外部からに出ていく方向の刺激電流を流せばよい。
【0104】
そして、刺激電流のパルス幅、周波数が感じる圧力等の大小が、これらの触覚に影響することがわかっている。本実施形態では、このような人間の指が触覚を感じる仕組みに従い、刺激電極での通電を行うことで触覚提示を行う。
【0105】
(タッチパネル入力装置の概略構成)
次に、引き続き図1を参照しながら、タッチパネル入力装置200の概略構成について説明すると次のとおりである。同図に示すように、タッチパネル入力装置200は、タッチパネル部(タッチパネル)60、記憶部70、主制御部80、電流出力部(刺激電流出力手段)90、および外部I/F91を備える。
【0106】
タッチパネル部60は、画面表示および入力操作のユーザインタフェースを提供するものであり、表示部61と、操作位置検出部(タッチパネル、操作面)62とが一体となった構成となっている。
【0107】
表示部61は、画像データを表示するための表示画面を有しており、主制御部80から画像データを受信し、受信した画像データに基づいてその表示画面に画像を表示するものである。表示部61は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等の表示デバイスを用いることができる。
【0108】
操作位置検出部62は、タッチ位置を検出するための操作面を備えており、検出したタッチ位置に応じた操作位置信号を出力するものである。操作位置検出部62は、タッチ位置を検出する手法としては、例えば、マトリクス・スイッチ、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式、および、対象物の画像を検出する方式(光センサ方式)などが挙げられる。
【0109】
また、操作位置検出部62は、検出する操作面上のタッチ位置は、操作面上の2次元座標として表されるものであってもよい。
【0110】
記憶部70は、各種データおよびプログラムを記憶するものである。記憶部70は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、ROM,RAM等により構成することができる。記憶部70に記憶されるデータ詳細については後述する。
【0111】
主制御部80は、タッチパネル入力装置200における各種構成を統括的に制御するものである。主制御部80の機能は、例えばRAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリなどの記憶素子に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行することによって実現される。なお、主制御部80の詳細については後述する。
【0112】
電流出力部90は、主制御部80の制御により、電圧を調整し、入力器具100に出力するための刺激電流を出力するものである。
【0113】
外部I/F91は、配線150を接続するためのインターフェースである。タッチパネル入力装置200は、外部I/F41に接続された配線150を介して入力器具100と接続され、刺激電流および制御信号の入出力を行う。
【0114】
(タッチパネル入力装置が備える記憶部の詳細)
次に、記憶部70の詳細について説明する。記憶部70には、電流制御部(電流出力制御手段)83が、電流出力部90の制御を行うための情報が記憶されている。
【0115】
記憶部70に記憶されている情報には、設定モードマッピング情報、圧力モード情報、および電流出力波形テンプレート情報が含まれる。
【0116】
設定モードマッピング情報は、操作位置検出部62の操作面、すなわちタッチパネル上の領域のうち、操作位置の検出に応じて、刺激電流の出力を行うべき領域について規定する情報である。また、どのような刺激電流の出力を行うかは、圧力モード情報に規定されている。設定モードマッピング情報では、その領域について何れの“圧力モード”で刺激電流の出力を行うべきかについて規定される。
【0117】
圧力モード情報は、圧力情報が示す圧力の大きさと、出力すべき刺激電流の出力波形パターンとを対応づけている情報である。出力波形パターンは、電流出力波形テンプレート情報によって規定されている。出力波形パターンは、“出力レベル”によって規定される。
【0118】
電流出力波形テンプレート情報は、時系列と、出力すべき電流のパルス波形とを対応付けている情報である。別の観点からみれば、電圧制御部33が、刺激電流の出力を制御するための電圧の変位パターンを示している。
【0119】
(設定モードマッピング情報、圧力モード情報、および電流出力波形テンプレート情報の詳細)
続いて、図7〜9を参照しながら、設定モードマッピング情報、圧力モード情報、および電流出力波形テンプレート情報についてより詳細に説明する。
【0120】
図7は、設定モードマッピング情報の一例について説明した図である。図8は、圧力モード情報について説明したグラフである。また、図9は、電流出力波形テンプレート情報の一例について説明したグラフである。
【0121】
まず、図7を参照しながら、設定モードマッピング情報について説明する。同図において、最も外側の長四角形で示される領域は、操作位置検出部62の入力操作を受け付ける操作面の領域に対応している。さらにいえば、この領域は、表示部61の表示領域にも対応している。
【0122】
そして、その領域の内側には、3行、3列、計9個の長四角形群で示される領域6が示されている。この領域6は、表示部61において表示されるボタン(例えば、数字ボタン)の形を表している。
【0123】
つまり、図7に示す設定モードマッピング情報は、表示部61において表示されるボタン、すなわち領域6に対しての入力操作を検出したとき、刺激電流の通電を行い、ユーザに操作感を与えるための設定を示している。
【0124】
図7において、領域6には、電流制御部83が「圧力モード1」に準拠して、刺激電流の出力を行うことを示す符号「1」が設定されている。すなわち、この領域6において操作を操作位置検出部62が検出している場合、タッチパネル入力装置200は、入力器具100に対して刺激電流の出力を行う。
【0125】
また、図7において、領域6以外の領域7には、電流制御部83が、「圧力モード0」に準拠して、刺激電流の出力を行わないことを示す符号「0」が設定されている。
【0126】
すなわち、この領域7において操作を操作位置検出部62が検出していても、タッチパネル入力装置200は、入力器具100に対して刺激電流の出力を行わない。
【0127】
設定モードマッピング情報のデータ構造の具体例としては、操作面上の位置を示す2次元の座標データと、圧力モードとを対応付けておくものが挙げられる。
【0128】
操作面上の入力操作位置が(x、y)というような2次元座標で表される場合、例えば、設定モードマッピング情報において、原点(0,0)について、圧力モード「0」を対応付けておくことができる。このようなデータ構造は、飽くまで一例であり、設定モードマッピング情報のデータ構造は、操作位置検出部62の操作面上の座標、または、表示部61の座標と、圧力モードとが対応付けられているようなものを当業者が適宜定義することができる。
【0129】
続いて、図8を参照しながら、圧力モード情報について説明する。図8の(a)は、「圧力モード0」の場合の、圧力値と、出力レベルの対応を示している。図示のとおり、「圧力モード0」においては、いずれの圧力値に対しても「出力レベル0」が設定されている。このとき、刺激電流の出力は行わない。
【0130】
また、図8の(b)は、「圧力モード1」について示している。図示のとおり、圧力の大きさに応じて、段階的に出力レベルが規定されている。図8の(b)によると、圧力値K1以上、K2未満のときには、「出力レベル1」で刺激電流の出力は行われる。また、圧力値K1未満のときは、「出力レベル0」が対応付けられており、このとき刺激電流の出力は行わない。また、圧力値K2以上、K3未満のときには、「出力レベル2」で刺激電流の出力は行われる。そして、圧力値K3以上のときには、「出力レベル3」で刺激電流の出力は行われる。
【0131】
続いて、図9を参照しながら、電流出力波形テンプレート情報について説明する。図9の(a)〜(d)は、それぞれ「出力レベル0」〜「出力レベル3」の出力波形パターンを表している。
【0132】
図9の(a)が示す「出力レベル0」は、刺激電流の出力は行わない“出力レベル”であるので、パルス電流の波形は示されていない。
【0133】
図9の(b)が示す「出力レベル1」は、負のパルス電流と、正のパルス電流とが交互に出力される波形パターンを示している。
【0134】
また、図9の(c)が示す「出力レベル2」では、まず1つの負のパルス電流が出力され、それから3つの正のパルス電流が出力されるというパターンが繰り返されている。
【0135】
そして、図9の(d)が示す「出力レベル3」では、まず1つの負のパルス電流が出力され、続いて8つの正のパルス電流が出力されるというパターンが繰り返される。
【0136】
「出力レベル1」から「出力レベル3」にかけて、各パルス電流の間隔は短くなっており、単位時間当たりにより多くのパルス電流が出力されるような設定になっている。
【0137】
また、これらの出力レベルの波形パターンは、前述の“触覚提示の仕組み”で説明した内容に従って、所望の触覚を提示できるように定めることができる。
【0138】
(タッチパネル入力装置が備える主制御部の詳細)
次に、図1を参照して、タッチパネル入力装置200が備える主制御部80の詳細について説明する。主制御部80は、操作位置出力部81、圧力情報取得部(圧力取得手段)82、電流制御部83を備える。
【0139】
操作位置出力部81は、操作位置検出部62が出力した操作位置信号から、操作位置情報を生成し、生成した操作位置情報を、外部I/F91を介して入力器具100に出力するものである。
【0140】
圧力情報取得部82は、操作位置出力部81が、操作位置情報を生成したことに応じて、外部I/F91を介して、入力器具100から圧力情報を取得し、取得した圧力情報を電流制御部83に転送するものである。
【0141】
電流制御部83は、圧力情報取得部82から転送される圧力情報と、さらに操作位置出力部81が生成した操作位置情報とに基づいて、電流出力部90を制御して入力器具100に供給する電流の制御を行うものである。具体的には、電流制御部83は、記憶部70に記憶されている設定モードマッピング情報、圧力モード情報、および電流出力波形テンプレート情報を読み出して、読み出した各種情報に基づいて、電流出力部90における電流の出力を制御する。
【0142】
具体的には、電流制御部83は、操作位置情報が示す操作位置が、刺激電流を出力すべき領域に対する操作か否かを、設定モードマッピング情報を参照して判定する。判定の結果、刺激電流を出力すべき領域に対する操作であった場合、電流制御部83は、設定モードマッピング情報に設定されている「圧力モード」を参照し、圧力情報が示す圧力値から、出力レベルを決定する。
【0143】
そして、電流制御部83は、出力レベルに規定される出力波形パターンの刺激電流を電流出力部90が出力するよう制御する。
【0144】
電流出力部90は、電流制御部83の制御に応じて、指定された出力波形パターンの刺激電流を、外部I/F91を介して入力器具100に出力する。
【0145】
(タッチパネル入力システムの処理の流れ)
次に、図10を参照しながら、タッチパネル入力システム500の処理の流れについて説明する。図10は、タッチパネル入力システム500の処理の流れについて示したフローチャートである。
【0146】
処理を開始すると、入力器具100およびタッチパネル入力装置200は、共に待機状態となる(S11、S21)
ここでは、入力器具100によりタッチパネル入力装置200が備えるタッチパネル部60に対する操作入力が行なわれるのを待機する。ユーザによって、指先部材100Aが、操作位置検出部62に対して押圧されると、入力器具100では、圧力検知部11が備える圧力センサが圧力を検知する(S12)。圧力センサは、検知した圧力の大きさを示す圧力信号を圧力情報出力部31に出力する。
【0147】
一方、タッチパネル入力装置200では、タッチパネル部60上の入力操作を検知したかを判定する(S22)。すなわち、操作位置出力部81が、操作位置検出部62から、操作位置信号を取得したかを判定する。
【0148】
タッチパネル入力装置200では、操作位置出力部81が、操作位置検出部62から、操作位置信号を取得していない場合(S22においてNO)、再び待機状態にもどる(S21)。
【0149】
一方、タッチパネル入力装置200において、操作位置出力部81が、操作位置検出部62から、操作位置信号を取得している場合(S22においてYES)、操作位置出力部81は、操作位置情報を生成し、外部I/F91を介して、操作位置情報を入力器具100に出力する(S23)。そして、入力器具100では、操作位置取得部32が、操作位置情報を取得すると、圧力情報出力部31が、圧力検知部11が出力した圧力信号に基づいて、圧力情報を生成し、生成した圧力情報を、外部I/F41を介してタッチパネル入力装置200に出力する(S13)。圧力情報取得部82は、入力器具100が出力する圧力情報を外部I/F91を介して取得する(S24)。
【0150】
次に、タッチパネル入力装置200では、電流制御部83が、操作位置情報と、圧力情報とに対応した出力レベルの電流波形パターンを電流出力部90に出力させる(S25)。これにより、タッチパネル入力装置200から、入力器具100に対して刺激電流が出力される。タッチパネル入力装置200は、入力器具100に対する電流の出力が終了すると(S26)、待機状態に戻る(S21)。
【0151】
一方、入力器具100では、電圧変位部40が、タッチパネル入力装置200から供給される電流を受ける(S14)。そして、入力器具100では、変位電圧印加部21が、圧力を検知した圧力センサに対応する刺激電極における電位を制御して、刺激電極から電流を出力する(S15)。そして、入力器具100は、電流の出力が終了したら(S16)、待機状態に戻る(S11)。
【0152】
上記処理において、入力器具100が、圧力を検知しており、タッチパネル入力装置200が、タッチパネル部60上の入力を検知している場合に、タッチパネル入力装置200において、入力器具100が生成した圧力情報と、タッチパネル入力装置200が生成した操作位置情報との組合せに基づいた動作を行うことが可能である。
【0153】
圧力情報と、操作位置情報との組合せに基づいた動作とは、圧力情報と、操作位置情報との組合せに、1以上の動作を割り当てておき、その組合せに割り当てられた動作を行うことである。例えば、タッチパネル入力装置200において特定箇所を操作したことを示す操作位置情報を取得していた場合であって、圧力情報が所定値以上の圧力の大きさを示す場合に、アプリケーションの起動を行うといった場合が挙げられる。
【0154】
また、入力器具100が検知した圧力情報が所定の値以上を示していれば、タッチパネル入力装置200が検知した操作位置情報が同じであっても、タッチパネル入力装置200において、異なる動作を行ってもよい。そして、入力器具100が生成した圧力情報が同じ値を示していても、タッチパネル入力装置200が生成した操作位置情報が異なる位置を示していれば、タッチパネル入力装置200において、異なる動作を行ってもよい。
【0155】
(作用・効果)
以上のように、本実施形態に係る入力器具100は、タッチパネル入力装置200に対して押圧、接触、または近接させて入力操作を行うための入力器具100において、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極E1(〜E9)を有する変位電圧印加部21および基準電極を有する基準電圧印加部22と、入力器具100による、タッチパネル入力装置200に対する入力操作により、刺激電極E1(〜E9)と、基準電極との間に、刺激電極E1(〜E9)に接触する皮膚の触覚を刺激するための電圧を印加する電圧制御部33を備えたことを特徴とする。
【0156】
この結果、タッチパネル部60の表面に刺激電極を設けなくても、入力器具100が、触覚提示による操作感をユーザに対して提供することができるという効果を奏する。
【0157】
(処理の流れの変形例)
次に、図11を参照しながら、タッチパネル入力システム500の処理の流れの変形例について説明する。図11は、タッチパネル入力システム500の処理の流れの変形例について示したフローチャートである。
【0158】
この変形例では、入力器具100が、圧力を検知している一方で、タッチパネル入力装置200が、タッチパネル部60上の入力を検知していない場合において、タッチパネル入力装置200を、圧力情報に基づいて動作させることについて説明する。圧力情報に基づいて動作させるとは、圧力情報が示す圧力の大きさに応じて、アプリケーションの起動や、特定機能の実行を行うことである。例えば、圧力情報が示す圧力の大きさが所定値以上であれば、タッチパネル入力装置200は、電源OFF等の動作を行ってもよい。
【0159】
まず、処理を開始すると、入力器具100およびタッチパネル入力装置200は、共に待機状態となる(S31)。ここで、タッチパネル入力装置200は、入力器具100の圧力センサが圧力を検知しているか否かを判定する(S32)。この判定は、タッチパネル入力装置200の圧力情報取得部82が、入力器具100から圧力情報を取得できたか否かによって判定される。
【0160】
圧力情報取得部82は、入力器具100から圧力情報を取得できていれば、「圧力センサが圧力を検知している」と判定し、入力器具100から圧力情報を取得できていなければ、「圧力センサが圧力を検知していない」と判定する。
【0161】
入力器具100の圧力センサが圧力を検出していれば(S32においてYES)、タッチパネル入力装置200は、操作位置出力部81が、操作位置信号から、操作位置情報を生成しているかを判定する(S33)。
【0162】
そして、操作位置出力部81が、操作位置情報を生成していなかった場合(S33においてNO)、タッチパネル入力装置200は、入力器具100から取得した圧力情報に基づいて動作して(S34)、待機状態に戻る(S31)。すなわち、入力器具100は、タッチパネル部60に対する入力操作を行う器具としてではなく、圧力情報を出力することにより、タッチパネル入力装置200の機能を動作させる入力デバイスとして動作する。ここで動作とは、例えば、アプリケーションの起動等の機能を実行することを言う。
【0163】
一方、操作位置出力部81が、操作位置情報を生成していた場合(S33においてYES)、タッチパネル入力装置200は、入力器具100から取得した圧力情報と、操作位置出力部81が生成した操作位置情報とに基づいて動作(例えば、アプリケーションの起動)して(S35)、待機状態に戻る(S31)。なお、タッチパネル入力装置200は、S35において、前述のS25のように、入力器具100に、刺激電流の供給を行ってもよい。
【0164】
(タッチパネル入力システムの構成の変形例)
以下において、本タッチパネル入力システム500の構成の好ましい変形例について説明する。
【0165】
(各電極について)
以上の説明では、刺激電極E1〜E9と、基準電極とを区別していたが、これに限られず、刺激電極と、基準電極とは互いに同様の電極を用いることができる。例えば、刺激電極E1〜E9のうち、1つの刺激電極に印加される電圧を、基準電圧とし、この基準電圧が印加される刺激電極を基準電極とする構成も可能である。
【0166】
(配線について)
配線150が、刺激電極と同数の複数の電流供給線により構成される場合は、タッチパネル入力装置200から、各刺激電極に対して、選択的に電力供給可能になっていてもよい。すなわち、刺激電極には、専用の電流供給線が割り当てられていてもよい。例えば、刺激電極E1〜E9に対して、電流供給線L1〜L8(図示せず)がそれぞれ割り当てられている場合には、タッチパネル入力装置200から、刺激電極E1に対して、電流供給を行うには、電流供給線L1を介して行うように構成されていてもよい。この場合、入力器具100において、電圧制御部33を省略してもよい。
【0167】
また、1本の電力供給線により、タッチパネル入力装置200から、入力器具100に対して電流供給を行い、入力器具100側において、電流供給を行う刺激電極を制御してもかまわない。
【0168】
さらには、入力器具100と、タッチパネル入力装置200とを配線150によって接続しない構成も可能である。この場合、圧力情報出力部31は、タッチパネル入力装置200に圧力情報を出力しなくてもよく、入力器具100は、圧力検知部11が圧力を検出したら、検出された圧力の大きさに応じて、変位電圧印加部21に対する電圧制御を行う。
【0169】
(圧力センサおよび刺激電極の構成変更例)
圧力センサP1〜P9と、刺激電極E1〜E9とは、指先部材100Aにおいて、表と裏で対応するように配置されていたが、この配置に限られない。また、圧力センサP1〜P9と、刺激電極E1〜E9とは、一対一に対応していたが、これに限られず、一圧力センサに対して、複数の刺激電極が対応していてもよく、その逆もまた同様である。そして、圧力センサP1〜P9のうち、複数の圧力センサからなる組合せと、刺激電極E1〜E9のうち、複数の刺激電極からなる組合せとが対応していても良い。これらの対応関係は、適宜組合せおよび変更が可能である。
【0170】
例えば、圧力センサP1〜P9と、刺激電極E1〜E9とがそれぞれ個々に対応しており、圧力センサP1、P2の組合せに対して、刺激電極E1〜E3の組合せが対応していてもよい。この場合において、圧力センサP1のみが圧力を検知していたときは、対応する刺激電極E1のみが刺激電流の供給を受ける。また、圧力センサP1およびP2が、圧力を検知していたときは、対応する組合せである刺激電極E1〜E3に刺激電流が供給される。
【0171】
(タッチパネル入力装置の変形例)
また、タッチパネル入力装置200では、操作位置検出部62が検出する操作位置に応じて、圧力モードを決定してもよい。また、タッチパネル入力装置200は、圧力検知部を備えていてもよく、例えば、操作面にユーザの指が触れる瞬間と、ユーザの指が操作面から離れる瞬間とを検出し、それぞれに別の圧力モードを設定してもよい。また、タッチパネル入力装置200は、携帯電話機の入力部として備えられているものであってもよい。
【0172】
〔実施形態2〕
次に本発明の他の実施形態について、図12に基づいて説明すると以下の通りである。図12は、本実施形態に係るタッチパネル入力システム500Tを構成する入力器具100Tおよびタッチパネル入力装置200Tの概略構成について示したブロック図である。
なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した図1と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0173】
前記の実施形態では、タッチパネル入力装置200から、入力器具100に対して出力する刺激電流の出力波形をタッチパネル入力装置200において決定していた。これに対して、本実施形態では、入力器具100Tにおいて、上記出力波形を決定する構成を実現している。
【0174】
(相違点について)
まず、図12について、入力器具100Tおよびタッチパネル入力装置200Tに関し、図1と相違している点を、それぞれ説明すると次のとおりである。
【0175】
入力器具100Tについての相違点は、主制御部30において、圧力情報出力部31の替わりに、電流パターン情報出力部31Aを備える点、および記憶部50をさらに備える点である。
【0176】
タッチパネル入力装置200Tについての相違点は、主制御部80において、圧力情報取得部82の替わりに、電流パターン情報取得部82Aを備える点である。
【0177】
(入力器具における相違点の各部詳細について)
次に、入力器具100Tにおける相違点の各部詳細について以下に説明する。
【0178】
記憶部50は、図1に示すタッチパネル入力装置100が備える記憶部70と同様のものである。また、記憶部50に記憶されている情報には、設定モードマッピング情報、圧力モード情報、および電流出力波形テンプレート情報が含まれる。
【0179】
電流パターン情報出力部31Aは、変位電圧印加部21に出力する刺激電流の波形パターンを決定し、タッチパネル入力装置200Tに対して、決定した波形パターンの刺激電流の供給を指示するものである。
【0180】
具体的には、電流パターン情報出力部31Aは、操作位置取得部32が、タッチパネル入力装置200Tから、操作位置情報を取得すると、圧力検知部11から圧力情報を取得して、記憶部50に記憶されている情報を参照しつつ、刺激電流の波形パターンを決定する。刺激電流の波形パターンの決定は、すでに説明した手法により行うことができる。そして、電流パターン情報出力部31Aは、決定した刺激電流の波形パターンを示す電流パターン情報を生成し、外部I/F41を介してタッチパネル入力装置200Tに対して出力する。
【0181】
(タッチパネル入力装置における相違点の詳細について)
次に、タッチパネル入力装置200Tにおける相違点の詳細について以下に説明する。
【0182】
電流パターン情報取得部82Aは、入力器具100Tが備える電流パターン情報出力部31Aから出力される電流パターン情報を取得して、取得した電流パターン情報を電流制御部83に転送する。これにより、電流パターン情報を取得した電流制御部83が、入力器具100Tに出力するための刺激電流を制御する。
【0183】
〔実施形態3〕
(ペン型入力器具)
次に本発明のさらに別の実施形態について、図13に基づいて説明すると以下の通りである。図13は、本実施形態に係るタッチパネル入力システム500の他の利用態様について例示した概略図である。図13に示すように、入力器具をペン型入力器具100Pとして構成してもよい。
【0184】
図14を用いて、本実施形態に係るペン型入力器具100Pの詳細について説明する。図14は、ペン型入力器具100Pの外観の一例について示す図である。図示のとおり、ペン型入力器具100Pは、ペンのような形状をしており、ユーザがペンのように把持した態様にて使用できるような胴体部F1を有する。ペン型入力器具100Pは、タッチパネル入力装置200に対する操作の際には、タッチペンのように、ペンの先端部分F4を、タッチパネル部60に押圧させるような態様により用いられる。
【0185】
また、ペン型入力器具100Pでは、変位電圧印加部21が、ユーザがペン型入力器具100Pの胴体部F1を把持した場合における、その把持部分(把持される位置)F2に配備される。言い換えれば、変位電圧印加部21は、ユーザがペン型入力器具100Pを把持した場合に、親指、人差し指、および中指が、胴体部F1と接触する位置付近に配備される。また、ペン型入力器具100Pでは、基準電圧印加部22は、ユーザがペン型入力器具100Pを把持した場合に、親指および人差し指の間の部分と、胴体部F1が接触する位置(刺激電極が配備された位置と、胴体部の他端との間の位置)F3付近に配備される。また、ペン型入力器具100Pの先端部分(ペン先部分)F4には圧力検知部11が配備される。
【0186】
なお、ペン型入力器具100Pのそれ以外の構成は、図1を用いて示した入力器具100の構成と同様である。
【0187】
以上のような構成により、次のような処理動作が可能となる。まず、ペンの先端部分F4を、タッチパネル部60に押圧させると、圧力検知部11が、圧力を検知して、圧力信号を出力する。そして、圧力情報出力部31が、圧力信号に基づいて圧力情報を生成する。
【0188】
その一方で、タッチパネル入力装置200が備える操作位置検出部62が、押圧を検知し、操作位置信号を出力する。そして、操作位置出力部81が、操作位置検出部62が出力した操作位置信号から、操作位置情報を生成し、生成した操作位置情報をペン型入力器具100Pに出力する。
【0189】
そして、ペン型入力器具100Pでは、操作位置情報を取得したことに応じて、圧力情報出力部31が圧力情報をタッチパネル入力装置200に出力する。
【0190】
それから、タッチパネル入力装置200では、圧力情報取得部82が、ペン型入力器具100Pから圧力情報を取得して、電流制御部83に転送する。電流制御部83が、操作位置情報と、圧力情報とに基づいて、刺激電流の波形パターンを決定し、電流出力部90を制御して、刺激電流をペン型入力器具100Pに対して出力させる。
【0191】
ペン型入力器具100Pでは、電圧制御部33が、電圧変位部40を制御して、タッチパネル入力装置200から出力される刺激電流を、圧力を検知した圧力センサに対応する刺激電極に出力させる。そして、刺激電極から、基準電極への通電により、ペン型入力器具100Pは、ユーザに対して触覚を提示することができる。
【0192】
このように、ペン型の入力器具においても、タッチパネル表面に刺激電極を設けることなく触覚提示による操作感を提供することが可能になる。また、圧力の大きさに応じて、より多くの電流を刺激電極から出力するようにすれば、ユーザは、刺激電流による触覚提示により、どれくらいの筆圧で操作を行っているかを認識することができる。
【0193】
(その他の変形例)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0194】
また、上記では、入力器具100およびタッチパネル入力装置200の各ブロック、特に入力器具100の主制御部30が備える圧力情報出力部31、操作位置取得部32、および電圧制御部33を備える、ならびにタッチパネル入力装置200の主制御部80が備える操作位置出力部81、圧力情報取得部82、電流制御部83を、CPUを用いてソフトウェアによって実現する例について説明した。
【0195】
すなわち、入力器具100およびタッチパネル入力装置200は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである入力器具100およびタッチパネル入力装置200の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記入力器具100およびタッチパネル入力装置200に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0196】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0197】
また、入力器具100およびタッチパネル入力装置200を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。また、入力器具100およびタッチパネル入力装置200の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明によれば、タッチパネル表面に刺激電極を設けることなく、ユーザに触覚提示による操作感を提供することができる。従って、広くタッチパネル入力器具等に適用することができる。
【符号の説明】
【0199】
3 人差し指
5 絶縁層
D1 先端部分
E1〜E9 刺激電極
F1 胴体部
F2 把持部分(把持される位置)
F3 接触する位置(刺激電極が配備された位置と、胴体部の他端との間の位置)
F4 先端部分(ペン先部分)
P1〜P9 圧力センサ
11 圧力検知部(圧力センサ)
21 変位電圧印加部(刺激電極)
22 基準電圧印加部(基準電極)
30 主制御部
31 圧力情報出力部
31A 電流パターン情報出力部
32 操作位置取得部(操作情報取得手段)
33 電圧制御部(電圧印加手段)
40 電圧変位部
50 記憶部
60 タッチパネル部(タッチパネル)
61 表示部
62 操作位置検出部(タッチパネル、操作面)
70 記憶部
80 主制御部
81 操作位置出力部
82 圧力情報取得部(圧力取得手段)
82A 電流パターン情報取得部
83 電流制御部(電流出力制御手段)
90 電流出力部(刺激電流出力手段)
100 入力器具
100A 指先部材
100B 環状部材(環状の部材)
100T 入力器具
150 配線
200 タッチパネル入力装置
200T タッチパネル入力装置
500 タッチパネル入力システム
500T タッチパネル入力システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルに対して押圧、接触、または近接させて入力操作を行うための入力器具において、
生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極および基準電極と、
該入力器具による、前記タッチパネルに対する入力操作により、前記刺激電極と、前記基準電極との間に、前記刺激電極に接触する皮膚の触覚を刺激するための電圧を印加する電圧印加手段と、を備えたことを特徴とする入力器具。
【請求項2】
該入力器具による、前記入力操作が行われたことを示す操作情報を、前記タッチパネルから取得する操作情報取得手段を備え、
前記電圧印加手段は、前記操作情報取得手段が操作情報を取得したことに応じて、電圧の印加を行うことを特徴とする請求項1に記載の入力器具。
【請求項3】
前記タッチパネルに対する入力操作の圧力の大きさを検知する1以上の圧力センサを備え、
前記電圧印加手段は、前記圧力センサが検知した圧力の大きさに応じて、前記刺激電極に印加する電圧の変位パターンを変更することを特徴とする請求項1または2に記載の入力器具。
【請求項4】
前記刺激電極は、複数であり、
前記圧力センサは、複数であり、
前記複数の刺激電極と、前記複数の圧力センサとはそれぞれ対応しており、
前記電圧印加手段は、前記圧力センサが検知した圧力の大きさに応じて、該圧力センサに対応する刺激電極に印加する電圧の変位パターンを変更することを特徴とする請求項3に記載の入力器具。
【請求項5】
ペン型の胴体部を有し、
該胴体部の一端に、入力操作を行うためのペン先部分を設け、
該胴体部のユーザによって把持される位置に前記刺激電極を配備し、
該胴体部において、前記刺激電極が配備された位置と、該胴体部の他端との間の位置に前記基準電極を配備したことを特徴とする請求項1または2に記載の入力器具。
【請求項6】
ペン型の胴体部を有し、
該胴体部の一端に、入力操作を行うためのペン先部分を設け、該ペン先部分に前記圧力センサを配備し、
該胴体部のユーザによって把持される位置に前記刺激電極を配備し、
該胴体部において、前記刺激電極が配備された位置と、該胴体部の他端との間の位置に前記基準電極を配備したことを特徴とする請求項3または4に記載の入力器具。
【請求項7】
ユーザの指先に装着するための指先部材と、ユーザの指に装着するための環状の部材とから構成され、
前記指先部材において、ユーザの指に接触する側に、前記刺激電極を配備し、
前記環状の部材において、ユーザの指に接触する部位に、前記基準電極を配備したことを特徴とする請求項1または2に記載の入力器具。
【請求項8】
ユーザの指先に装着するための指先部材と、ユーザの指に装着するための環状の部材とから構成され、
前記指先部材において、ユーザの指に接触する側に、前記刺激電極を配備し、かつ、ユーザの指に接触する側と反対側に、前記刺激電極に対応する前記圧力センサを配備し、
前記環状の部材において、ユーザの指に接触する位置に、前記基準電極を配備したことを特徴とする請求項3または4に記載の入力器具。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の入力器具を動作させる入力器具制御プログラムであって、前記入力器具が備えるコンピュータを前記の各手段として機能させるための入力器具制御プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の入力器具制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】
操作面が設けられ、該操作面に対して押圧、接触、または近接する入力操作が行われたことを検出するタッチパネル入力装置と、
前記タッチパネル入力装置の操作面に対して前記入力操作を行うための入力器具とを備えるタッチパネル入力システムにおいて、
前記入力器具は、
生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極および基準電極を備え、
前記タッチパネル入力装置は、
前記刺激電極に通電するための電流を出力するための刺激電流出力手段と、
操作面上における入力操作を検知したとき、前記刺激電流出力手段に電流を出力させる電流出力制御手段と、を備えることを特徴とするタッチパネル入力システム。
【請求項12】
前記入力器具は、
前記タッチパネルに対する入力操作の圧力の大きさを検出し、検出した圧力の大きさを圧力信号として出力する1以上の圧力センサを備え、
前記タッチパネル入力装置は、
前記圧力センサが出力した圧力信号を取得するための圧力取得手段を備え、
前記電流出力制御手段は、前記圧力取得手段が取得した前記圧力信号が示す圧力の大きさに応じて、前記刺激電流出力手段に出力させる電流の波形パターンを変更することを特徴とする請求項11に記載のタッチパネル入力システム。
【請求項13】
前記刺激電極は、複数であり、
前記圧力センサは、複数であり、
前記複数の刺激電極と、前記複数の圧力センサとはそれぞれ対応しており、
前記電流出力制御手段は、前記圧力取得手段が、一の圧力センサについて取得した前記圧力信号が示す圧力の大きさに応じて、前記一の圧力センサに対応する刺激電極に印加する電圧の変位パターンを変更することを特徴とする請求項12に記載のタッチパネル入力システム。
【請求項14】
前記タッチパネル入力装置は、携帯電話機に備えられたものであることを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の記載のタッチパネル入力システム。
【請求項15】
タッチパネルに対して押圧、接触、または近接させて入力操作を行うための入力器具の制御方法において、
該入力器具による、前記タッチパネルに対する入力操作により、生体の皮膚に接触させた状態を保持可能にした1以上の刺激電極および基準電極の間に、前記刺激電極に接触する皮膚の触覚を刺激するための電圧を印加する電圧印加ステップを含むことを特徴とする入力器具の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−250750(P2010−250750A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102155(P2009−102155)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】