説明

入力装置、入力制御方法及びプログラム

【課題】 無線部に対する、タッチパネルで発生するノイズの影響を抑制できるようにする。
【解決手段】 静電容量方式のタッチパネル(100)と、前記タッチパネルを交流駆動する交流駆動部(101)と、前記交流駆動部の動作を制御する制御手段(102)とを備え、前記制御手段は、前記交流駆動部によるタッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数に設定する第1のモードと、同駆動回数を前記第1の回数よりも少ない第2の回数に設定する第2のモードとのいずれかに切り替え可能であって、通常は前記第1のモードを選択する一方、所定の状態のときには前記第2のモードを選択する。たとえば、任意の無線部が動作状態のときに第2の回数を選択するようにすれば、タッチパネルの少ない駆動回数に呼応して、このタッチパネルで発生するノイズの影響を抑制することができ、無線部の誤動作を回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、入力制御方法及びプログラムに関し、特にタッチパネルを備えた入力装置、入力制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネル付電子機器の普及がめざましい。たとえば、スマートフォンと呼ばれる携帯電話機やタブレット型の電子機器の全てはタッチパネルを備えている。タッチパネルは、指先などのタッチを検出し、そのタッチ位置やタッチの仕方などの信号を発生する。タッチパネルの背面には液晶パネルなどの表示部が設けられており、その表示情報をタッチパネルを透して見ることができるようになっている。したがって、ユーザは、表示情報を見ながら“直感的”に画面上のボタンを押したり、あるいは、画面をスクロールしたりといった操作を行うことができる。
【0003】
タッチパネルには様々な方式があるが、特に静電容量方式のタッチパネルは、光の透過率や耐久性の点で他の方式よりも優れていることから、今日のタッチパネルの主流を占めつつある。しかし、一方で同方式のタッチパネルはノイズ耐性に劣るという弱点も抱えている。静電容量方式のタッチパネルの検出要素は、2枚の電極間に誘電体を挟み込んだ構造(この構造は等価的に1個のコンデンサとみなせる)を有しており、コンデンサの容量の変化からタッチの有無を検出する仕組みになっているが、筐体内外で発生するノイズの影響を受けてコンデンサの容量に変化が現れることがあるからである。このような容量変化は不本意な変化であり、タッチの誤検出につながるので、解決しなければならない技術課題である。
【0004】
静電容量方式のタッチパネルにおけるノイズ耐性向上技術としては、たとえば、タッチパネルの検出閾値を適正化するというものが知られている(特許文献1)。また、タッチパネルの電極構造を工夫するというものも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−061598号公報
【特許文献2】特開2010−282501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の公知技術(特許文献1、2)は、タッチパネルのノイズ耐性を向上できるという利点を有しているものの、一方でタッチパネル自身がノイズの発生源になり得るという視点に欠けている。このため、タッチパネルで発生したノイズの影響で、たとえば、機器に実装されている無線部が誤動作することがあった。
【0007】
そこで、本発明は、無線部に対するノイズの影響を抑制できるようにした入力装置、入力制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の入力装置は、静電容量方式のタッチパネルと、前記タッチパネルを交流駆動する交流駆動部と、前記交流駆動部の動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記交流駆動部によるタッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数に設定する第1のモードと、同駆動回数を前記第1の回数よりも少ない第2の回数に設定する第2のモードとのいずれかに切り替え可能であって、通常は前記第1のモードを選択する一方、所定の状態のときには前記第2のモードを選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数と、この第1の回数よりも少ない第2の回数のいずれかに選択できるので、たとえば、任意の無線部が動作状態のときに第2の回数を選択するようにすれば、タッチパネルの少ない駆動回数に呼応して、このタッチパネルで発生するノイズの影響を抑制することができ、無線部の誤動作を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の入力装置を適用する電子機器の構成図である。
【図2】タッチパネル4の概念構成図である。
【図3】タッチ部9の断面図である。
【図4】タッチ検出の原理説明図である。
【図5】タッチパネル5の駆動回数を示す図である。
【図6】制御部2のCPU6で実行される制御プログラムを示す図である。
【図7】二つの無線部A、Bを備える場合の改良フローを示す図である。
【図8】付記1の概念構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の入力装置を適用する電子機器の構成図である。この図において、電子機器1は、特にそれに限定されないが、たとえば、携帯電話機であり、この電子機器1は、少なくとも、制御部2と、表示部3と、静電容量方式のタッチパネル4と、無線部5とを備える。
【0012】
制御部2は、プログラム制御方式の制御要素であり、不揮発性且つ書き換え可能なメモリ(たとえば、フラッシュメモリ、ハードディスクまたはシリコンディスクなど)6にあらかじめ格納されているプログラムをコンピュータ(以下、CPU)7で実行することにより、この電子機器1に必要な様々な機能を実現する。
【0013】
表示部3は、たとえば、液晶ディスプレイパネルやELパネルなどの平面型二次元表示デバイスであり、制御部2から出力される様々な情報を表示する。
【0014】
タッチパネル4は、表示部3の表示画面とほぼ同じ平面サイズを有する二次元の透明なタッチデバイスであり、表示部3の画面の上に重ねて配置されている。なお、図では、表示部3に対してタッチパネル4を若干右下にずらして描いているが、これは図示の都合である。実際には両者は重なっており、ユーザは、表示部3の表示情報をタッチパネル4を透して見るようになっている。タッチパネル4の詳細については後で説明する。
【0015】
無線部5は、たとえば、電話用の無線送受信部、WiFi用の無線送受信部、Bluetooth用の無線送受信部、あるいは、GPS用の無線受信部であり、アンテナ8を介して各用途専用の周波数帯域の無線信号を送信し、または、受信する。なお、ここでは、電話、WiFi、Bluetooth及びGPSの4つの用途を示したが、これに限定されないことはもちろんである。他の用途の無線部であっても当然かまわない。また、ここでは、無線部5の数を一つとしたが、これにも限定されない。複数の無線部を備える態様であってもよい。以下、特に言及しない限り、説明を簡単にするために一つの無線部5を備えるものとする。
【0016】
次に、タッチパネル4の詳細について説明する。
図2は、タッチパネル4の概念構成図である。この図において、タッチパネル4は、表示部3の表示面とほぼ同じ平面サイズ(縦横の大きさ)のタッチ部9を備える。タッチ部9は、微小間隔で一様に配列された縦方向と横方向の各々複数本ずつの電極を備える、いわゆる相互静電容量(Mutual Capacitance)方式の構造を有している。なお、この図では、一定幅の長尺電極としているが、これに限定されない。たとえば、正方形や菱形またはその他の形を連ねた形状の電極であってもよい。
【0017】
ここで、タッチ部9の縦方向(図面の上下方向)をY軸方向、横方向(図面の左右方向)をX軸方向ということにし、縦方向に配列された各電極にY1〜Y8の符号を付すとともに、横方向に配列された各電極にX1〜X8の符号を付すことにする。
【0018】
なお、図示の電極本数(X、Y各々8本)は説明上の一例に過ぎない。タッチ部9の平面サイズにもよるが、実際には数百乃至数千本にも及ぶ。また、電極Y1〜Y8、X1〜X8を含むタッチ部9は透光性を有する素材で作られており、タッチ部9の裏面側に位置する表示部3の表示面に表示された任意の表示情報を、このタッチ部9を透して視認できるようになっている。
【0019】
図3は、タッチ部9の断面図である。この図において、タッチ部9は、表示部3の表示面に接して配置されたガラスや透明フィルム等の基部用透明板10と、その基部用透明板10の上に順次に積層配置されたX電極層11およびY電極層12と、そのY電極層12の上面に配置されたガラス(好ましくは強化ガラス)やアクリル等の保護用透明板13とを備える。なお、保護用透明板13にガラスや強化ガラスを使用した場合には、万一の破損事故に備え、ガラス破片の飛散防止用の保護膜(たとえば、保護用透明フィルム)をガラス表面に貼り付けておくことが望ましい。
【0020】
X電極層11は、透明な誘電体膜(たとえば、PET)14に微小間隔な多数の電極X1〜X8を形成したものであり、同様に、Y電極層12も透明な誘電体膜15に微小間隔な多数の電極Y1〜Y8を形成したものである。電極X1〜X8、Y1〜Y8は透明な導電素材、たとえば、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウム錫)などを蒸着または塗布もしくは印刷して形成されている。
【0021】
二つの電極層(X電極層11とY電極層12)は電極の配列方向を除き、いずれも同じ構造を有している。但し、図示のとおり、X電極層11とY電極層12は基部用透明板10の上に順次に積層配置されたものであって、図示の例では、X電極層11の上にY電極層12が位置しているから、Y電極層12の方が上層、つまり、タッチ部9の表面(タッチ面9a)に近い位置にある点で相違する。なお、この上下関係は逆であってもかまわない。すなわち、X電極層11が上層に位置していてもかまわないが、ここでは、図示の上下関係にある(X電極層11の上層にY電極層12が位置する)ものとして説明を続ける。
【0022】
再び図2に戻り、電極X1〜X8の一端側(図では上端側)にはX電極選択部16が接続され、同様に、電極Y1〜Y8の一端側(図では右端側)にはY電極選択部17が接続されている。これらのX電極選択部16およびY電極選択部17は、走査駆動部18からの走査信号に応答して電極X1〜X8と電極Y1〜Y8とを線順次に選択する。線順次の方法は、行(Y)単位や列(X)単位のいずれであってもよい。たとえば、行(Y)単位に各列(X)を選択してもよく、あるいは、列(X)単位に各行(Y)を選択してもよいが、ここでは後者の方法を採用することにする。すなわち、X電極選択部16およびY電極選択部17は、走査駆動部18からの走査信号に応答して、まず、第1列目のX電極(X1)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択し、次いで、第2列目のX電極(X2)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択し、・・・・、最後に、第8列目のX電極(X8)を選択しながら、その選択中に第1行目から第8行目までのY電極(Y1〜Y8)を順次選択する、という動作を延々と繰り返すことにより、線順次に電極X1〜X8と電極Y1〜Y8とを選択するものとする。なお、ここでは、順次選択方式で説明したが、これに限らない。たとえば、一つ飛ばしや複数本飛ばしなどの間引き的な選択方式であってもよい。
【0023】
X電極選択部16とY電極選択部17の枠内に描かれている8接点のロータリスイッチ16a、17aは、それらX電極選択部16とY電極選択部17の選択動作を模式化して示したものである。X電極選択部16は、ロータリスイッチ16aの接点を介して信号源19からの駆動信号(たとえば、数kHz〜十数kHz程度の交流矩形波)を選択電極(X1〜X1のいずれか)に供給する。また、Y電極選択部17は、選択電極(Y1〜Y1のいずれか)と、その時点でX電極選択部16によって選択されているX電極との間の静電容量を通過した駆動信号(信号源19から供給されたもの)をロータリスイッチ17aの接点を介して取り出し、タッチ判定部20に出力する。
【0024】
タッチ判定部20は、Y電極選択部17を介して取り出した駆動信号から不要な信号成分を取り除き、直流化した後、この直流信号と所定の判定閾値とを比較してタッチ部9へのタッチ操作の有無を判定し、その判定結果を制御部2に出力する。
【0025】
上記のとおり、信号源19は、たとえば、数kHz〜十数kHz程度の交流矩形波を駆動信号としてX電極選択部16に供給するが、この信号源19の動作は、制御部2からの指示でオンオフされるようになっており、したがって、オン期間中のみX電極選択部16に駆動信号が供給されるようになっている。
【0026】
図4は、タッチ検出の原理説明図である。(a)はタッチパネル5の最小検出単位(以下、セルという)を模式的に表したものであり、セル20は、Y電極21(図3のY1〜Y8の一つに相当)とX電極22(図3のX1〜X8の一つに相当)との間に誘電体23(図3の誘電体膜14に相当)を挟み込んだ構造を有している。
【0027】
(b)はセル20とその周辺回路を含む等価回路である。セル20は、等価的なコンデンサ24で表されている。コンデンサ24の一端(X電極22)は信号源25(図3の信号源19に相当)に接続されており、コンデンサ24の他端(Y電極21)は、電圧検出回路26と抵抗27からなる並列回路を介して信号源25に接続されている。電圧検出回路26と抵抗27は、図3のタッチ判定部20に含まれている回路要素である。
【0028】
信号源25(図3の信号源19)は、制御部2からのオン指示に応答して、数kHz〜十数kHz程度の交流矩形波Sg(駆動信号)を出力する。電圧検出回路26は、入力された信号の波高値を検出し、その検出電圧に基づいてタッチパネル5へのタッチの有無を判定する。なお、タッチとは厳密には指等によるタッチパネル5への“接触”のことをいうが、これに限定されない。微妙な距離を隔てて指先等がタッチパネル5に極接近した状態(いわゆるホバー状態)を含んでいてもよい。
【0029】
さて、信号源25からX電極22に交流矩形波Sgを印加すると、Y電極21には、この交流矩形波Sgと略相似形の信号が現れる。以下、この信号のことを検出信号Vdet(図4(b)参照)ということにする。なお、図示の検出信号Vdetは交流矩形波Sgと同じ矩形状を有しているが、これは図示の都合である。実際にはコンデンサ14の充放電時定数に対応した形状になる。
【0030】
ここで、非タッチ状態のときの検出信号Vdetの大きさ(波高値)をVaで表すことにすると、タッチパネル5に指先等をタッチしたときの検出信号Vdetの大きさは、Vaよりも小さいVbになる。これは、人体の容量分(図示のコンデンサ28)がセル20の容量分(コンデンサ24)に直列挿入されるからである。つまり、この状態では、コンデンサ24、28のそれぞれに電流I1、I2が流れるため、抵抗27の両端に現れる電位(検出信号Vdetの大きさ)が電流I2の分だけ減少するからである。したがって、検出信号Vdetの大きさは、タッチ状態と非タッチ状態で異なる値(Va>Vb)になるから、適切な閾値を用いることにより、タッチの有無を判定することができる。すなわち、以上の例であれば、VaとVbの間に位置する適切な閾値を設定し、検出信号Vdetの大きさがその閾値を下回ったときに「タッチ有り」を判定し、そうでなければ「タッチ無し」を判定することができる。
【0031】
以上のとおり、タッチパネル5のタッチ部9は、信号源25(図3の信号源19)からの駆動信号によって交流的に駆動されるうえ、しかも、タッチ部9は、電子機器1の筐体の一面の多くを覆って配置されているので、このタッチ部9は、他の回路(筐体内部に実装されている各種電子回路)に対するノイズ源となり得る存在である。とりわけ、筐体内に実装されている無線部5に対する影響は無視できない。無線部5の受信回路は、微弱な信号を受信できるようにするために高感度に設計されているからであり、タッチ部9で発生するノイズの影響を受けやすいからである。
【0032】
たとえば、無線部5が電話用の場合は、ノイズの影響で一時的に受信不可になることがある。または、WiFiやBluetooth用の場合は、データの再送要求が発生してデータの転送速度が低下する。あるいは、GPS用の場合は、一時的にGPS信号の受信が途絶して現在位置の把握が不可能になる。かかる不都合は、無線部5やアンテナ8の実装位置を工夫したり、十分なシールド対策を講じたりすることによってある程度抑制できるが、それにも限界がある。とりわけ、無線部5できわめて微弱な信号を受信しなければならないケース、たとえば、携帯電話基地局から遠く離れている場合や室内等で電波を受信する場合、あるいは、WiFi用のアクセスポイントやBluetooth機器から離れている場合などにおいては、たとえ、上記のような対策(実装位置の工夫やシールド対策)を講じたとしても、タッチパネル5からのノイズ影響は避けられない。
【0033】
以上の点に鑑み、本実施形態では、無線部5の動作を監視し、無線部5が動作(特に受信動作)している間は、タッチパネル5の駆動回数を少なくすることをポイントとする。このようにすれば、タッチパネル5の駆動回数が少なくなるので、それだけノイズの発生が減少し、無線部5に対する影響を回避または抑制することができる。
【0034】
ちなみに、無線部5の動作(特に受信動作)の検出は、以下のようにして行うことができる。
たとえば、電話用の無線部5の場合は、電話用の無線部5のデバイスが動作したことを判断することによって動作(特に受信動作)状態を検出することができる。
また、WiFi用の無線部5の場合は、WiFi用の無線部5のデバイスが動作したことを判断することによって動作(特に受信動作)状態を検出することができる。
また、Bluetooth用の無線部5の場合は、Bluetooth用の無線部5のデバイスが動作したことを判断することによって動作(特に受信動作)状態を検出することができる。
また、GPS用の無線部5の場合は、GPS用の無線部5のデバイスが動作したことを判断することによって動作(特に受信動作)状態を検出することができる。
【0035】
図5は、タッチパネル5の駆動回数を示す図である。この図において、上段は無線部5の動作状態を示しており、OFFは非動作、ONは動作を表している。なお、前記のとおり、タッチパネル5で発生するノイズは無線部5の受信動作に影響を与えるので、このONは受信動作を意味している。
【0036】
下段は、タッチパネル5の駆動回数を示しており、ここでは二つの駆動回数(通常駆動と間欠駆動)を例示する。第一の駆動回数(通常駆動)は無線部5の非動作状態(OFF)のときに適用するものであり、要するに、従来どおりの駆動回数である。ここでは、単位時間(t)当たりに4回の駆動を行うものとする。単位時間(t)は、二つの駆動回数(通常駆動と間欠駆動)を比較するための便宜的な共通の時間であって、その時間の値に特段の意味はない。また、第一の駆動回数(通常駆動)の値(ここでは4回)についても特段の意味はない。第二の駆動回数(間欠駆動)を上回っていればよく、より正確には、タッチパネル5のタッチ判定を誤りなく行うことができる適切な回数であればよい。
【0037】
また、ここでは“間欠”と表現したが、これにも特段の意味はない。間欠は、通常駆動に対して少ない駆動回数であることを意味しているにすぎない。第二の駆動回数(間欠駆動)は、同一の単位時間(t)当たりの第一の駆動回数(通常駆動)を下回っていればよい。どの程度下回ればよいかは一概に特定できない。実際上は、タッチパネル5のノイズ発生の大きさや頻度を考慮し、且つ、無線部5に与える影響の度合いを勘案して試行錯誤的に決定することになるが、ここでは、説明の都合上、第二の駆動回数(間欠駆動)を第一の駆動回数(通常駆動)の半分とした。つまり、単位時間(t)あたりの第二の駆動回数(間欠駆動)を2回とした。
【0038】
したがって、以上の例示によれば、無線部5が動作している間、タッチパネル5の駆動回数が2回に減らされるので、それだけノイズの発生が少なくなり、無線部5に対する影響を抑制できるという特有の効果を得ることができる。
【0039】
なお、ノイズ抑制の点から、第二の駆動回数(間欠駆動)は少ないほど好ましい。しかし一方で、少なすぎる駆動回数はタッチ検出の精度低下を招く恐れを否めないので、両者(ノイズ抑制とタッチ検出の精度)の妥協で適切な駆動回数を設定すべきである。
【0040】
図6は、制御部2のCPU6で実行される制御プログラムを示す図である。このフローは、制御プログラムの要部フローであり、特にタッチパネル5の駆動制御部分を抜粋し、模式化して示すものである。このフローでは、無線部5の動作判定を行い(ステップS1)。非動作(OFF)であれば、タッチパネル5を通常駆動し(ステップS2)、動作(ON)であれば、タッチパネル5を間欠駆動する(ステップS3)という処理を繰り返し実行する。先の図5で説明したとおり、通常駆動ではタッチパネル5を単位時間(t)あたり4回駆動し、間欠駆動ではタッチパネル5を単位時間(t)あたり2回駆動するので、無線部5が動作している間のタッチパネル5の駆動回数を減らし、それだけノイズの発生を少なくして、無線部5に対する影響を抑制することができる。
【0041】
以上の説明は、無線部5が一つの場合であるが、無線部5を複数備える場合にも発展させることができる。つまり、一つの場合は上述のとおり、タッチパネル5の駆動回数を第一の駆動回数(通常駆動)と第二の駆動回数(間欠駆動)で切り換えればよいが、無線部5を複数備える場合には、第二の駆動回数(間欠駆動)をさらに複数設定すればよい。たとえば、二つの無線部(便宜的に無線部Aと無線部B)を備える場合を想定すると、この場合には、無線部A用の第二の駆動回数と無線部B用の第二の駆動回数とを設定すればよい。以下、無線部A用の第二の駆動回数を「第A間欠駆動」、無線部B用の第二の駆動回数を「第B間欠駆動」ということにすると、たとえば、「第A間欠駆動」の回数を2回、「第B間欠駆動」の回数をそれよりも少ない1回としてもよい。
【0042】
図7は、二つの無線部A、Bを備える場合の改良フローを示す図である。このフローは、図6のステップS3に置き換わるものである。すなわち、ステップS1で無線部(無線部A、B)の動作(ON)を判定した場合に、その無線部が無線部Aであるか否かを判定し(ステップS4)、そして、無線部Aであれば、タッチパネル5を第A間欠駆動し(ステップS5)、無線部Aでなければ(言い換えれば無線部Bであれば)、タッチパネル5を第B欠駆動する(ステップS6)という処理を、図6のステップS3の代わりに入れたものである。
【0043】
このようにすれば、無線部Aが動作している間はタッチパネル5を単位時間(t)あたり2回駆動することができ、または、無線部Bが動作している間はタッチパネル5を単位時間(t)あたり1回駆動することができるから、二つの無線部A、Bのいずれが動作していても、その間のタッチパネル5の駆動回数を減らし、それだけノイズの発生を少なくして、無線部A、Bに対する影響を抑制することができる。
【0044】
ここで、第A間欠駆動の回数は2回、第B間欠駆動の回数は1回である。これらの駆動回数におけるタッチパネル5のノイズ発生は、当然ながら駆動回数が1回の第B間欠駆動の方が少ない。したがって、第B間欠駆動は、よりノイズの影響を受けやすい無線部に割り当てることが望ましい。
【0045】
3つ以上の無線部を有する場合も同様な考え方で対応することができる。すなわち、n個(nは3以上の整数)の無線部を備える場合は、n個の駆動回数を設定し、それらの駆動回数をn個の無線部にそれぞれ割り当てればよい。この場合、n個の駆動回数はそれぞれ対象となる無線部のノイズ耐性を考慮して適切に設定すればよい。たとえば、n個の駆動回数を同じ回数にしてもよいし、あるいは、全てを異なる回数にしたり、または、一部を異なる回数にしてもよい。
【0046】
なお、以上の説明では、電子機器1を携帯電話機としたが、これに限定されないことはもちろんである。要は、静電容量方式のタッチパネルと任意の無線部とを備えた電子機器であればよく、たとえば、パーソナルコンピュータ、情報端末、ゲーム機、電子辞書、電子ブックなどであってもよい。
【0047】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
図8は、付記1の概念構成図である。この図に示すように、付記1に記載の発明は、静電容量方式のタッチパネル100(図1、図2のタッチパネル4に相当)と、前記タッチパネルを交流駆動する交流駆動部101(図2の信号源19に相当)と、前記交流駆動部の動作を制御する制御手段102(図1の制御部2に相当)とを備え、前記制御手段は、前記交流駆動部によるタッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数に設定する第1のモードと、同駆動回数を前記第1の回数よりも少ない第2の回数に設定する第2のモードとのいずれかに切り替え可能であって、通常は前記第1のモードを選択する一方、所定の状態のときには前記第2のモードを選択することを特徴とする入力装置である。
付記1によれば、タッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数と、この第1の回数よりも少ない第2の回数のいずれかに選択できるので、たとえば、任意の無線部が動作状態のときに第2の回数を選択するようにすれば、タッチパネルの少ない駆動回数に呼応して、このタッチパネルで発生するノイズの影響を抑制することができ、無線部の誤動作を回避することができる。
【0048】
(付記2)
付記2に記載の発明は、さらに、無線部の動作/非動作を判定する判定手段を備え、前記所定の状態は、該判定手段で無線部の動作が判定されたときであることを特徴とする付記1に記載の入力装置である。
付記2によれば、無線部の動作/非動作に対応して、タッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を適正化するので、タッチ検出の精度維持と無線部の誤動作回避とを両立させることができる。
【0049】
(付記3)
付記3に記載の発明は、前記無線部は、電話用の無線部、近距離データ通信用の無線部または位置測位用の無線部であることを特徴とする付記2に記載の入力装置である。
付記3によれば、電話用の無線部、近距離データ通信用の無線部または位置測位用の無線部の誤動作を回避することができ。
【0050】
(付記4)
付記4に記載の発明は、静電容量方式のタッチパネルを交流駆動する交流駆動工程と、前記交流駆動工程の動作を制御する制御工程とを含み、前記制御工程は、前記交流駆動工程によるタッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数に設定する第1のモードと、同駆動回数を前記第1の回数よりも少ない第2の回数に設定する第2のモードとのいずれかに切り替え可能であって、通常は前記第1のモードを選択する一方、任意の無線部が動作状態のときには前記第2のモードを選択することを特徴とする入力制御方法である。
付記4によれば、付記1と同様に、タッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数と、この第1の回数よりも少ない第2の回数のいずれかに選択できるので、たとえば、任意の無線部が動作状態のときに第2の回数を選択するようにすれば、タッチパネルの少ない駆動回数に呼応して、このタッチパネルで発生するノイズの影響を抑制することができ、無線部の誤動作を回避することができる。
【0051】
(付記5)
付記5に記載の発明は、静電容量方式のタッチパネルと、前記タッチパネルを交流駆動する交流駆動部とを備えた入力装置のコンピュータに、前記交流駆動部によるタッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数に設定する第1のモードと、同駆動回数を前記第1の回数よりも少ない第2の回数に設定する第2のモードとのいずれかに切り替え可能であって、通常は前記第1のモードを選択する一方、任意の無線部が動作状態のときには前記第2のモードを選択する制御手段としての機能を与えるためのプログラムである。
付記5によれば、付記1の機能をプログラムの形で提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
2 制御部(制御手段、判定手段)
4 タッチパネル
5 無線部
7 CPU(コンピュータ)
19 信号源(交流駆動部)
100 タッチパネル
101 交流駆動部
102 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式のタッチパネルと、
前記タッチパネルを交流駆動する交流駆動部と、
前記交流駆動部の動作を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記交流駆動部によるタッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数に設定する第1のモードと、同駆動回数を前記第1の回数よりも少ない第2の回数に設定する第2のモードとのいずれかに切り替え可能であって、通常は前記第1のモードを選択する一方、所定の状態のときには前記第2のモードを選択することを特徴とする入力装置。
【請求項2】
さらに、無線部の動作/非動作を判定する判定手段を備え、前記所定の状態は、該判定手段で無線部の動作が判定されたときであることを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記無線部は、電話用の無線部、近距離データ通信用の無線部または位置測位用の無線部であることを特徴とする請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
静電容量方式のタッチパネルを交流駆動する交流駆動工程と、
前記交流駆動工程の動作を制御する制御工程とを含み、
前記制御工程は、前記交流駆動工程によるタッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数に設定する第1のモードと、同駆動回数を前記第1の回数よりも少ない第2の回数に設定する第2のモードとのいずれかに切り替え可能であって、通常は前記第1のモードを選択する一方、任意の無線部が動作状態のときには前記第2のモードを選択することを特徴とする入力制御方法。
【請求項5】
静電容量方式のタッチパネルと、前記タッチパネルを交流駆動する交流駆動部とを備えた入力装置のコンピュータに、
前記交流駆動部によるタッチパネルの単位時間当たりの駆動回数を第1の回数に設定する第1のモードと、同駆動回数を前記第1の回数よりも少ない第2の回数に設定する第2のモードとのいずれかに切り替え可能であって、通常は前記第1のモードを選択する一方、任意の無線部が動作状態のときには前記第2のモードを選択する制御手段としての機能を与えるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−178091(P2012−178091A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41232(P2011−41232)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】