説明

入力装置、情報端末、入力制御方法、および入力制御プログラム

【課題】無効領域とされる端部を含めたタッチパネルの操作性を向上させることが可能な入力装置等を提供する。
【解決手段】本入力装置は、タッチパネル11と、タッチパネル11への入力の座標を検知する座標取得部12と、検知された入力座標に対して補正処理を行う座標処理部15と、を備える。座標処理部15は、補正処理において、タッチパネル11の端部11eよりも内側に形成された補正領域D2内に入力された第1の座標を、タッチパネル11の端部11eに形成された入力無効領域D3と第1の座標との距離に基づいて、入力無効領域D3または補正領域D2内の第2の座標に補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置、情報端末、入力制御方法、および入力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを用いた入力装置が一般的に普及している。タッチパネルは直感的な入力操作を行うことができる便利なツールであるが、タッチパネルの端部では、ユーザの意思どおりに入力操作を行うことが困難である場合があった。例えば、タッチパネルが表面に配置された入力装置を持つ手などにより不用意にタッチパネルに触れてしまい、誤操作してしまうことがあった。
【0003】
これに対して、タッチスクリーンの枠周辺部を入力無効領域とすることで、誤動作を防止する技術が知られている(例えば。特許文献1参照)。また、タッチパネルの周端部での接触は無視するが、周端部で動きのある入力が検知されると、ジェスチャの一部として認識する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−039964号公報
【特許文献2】特開2009−217814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、無効領域が形成されるタッチパネルの端部への操作は基本的には無効とされてしまう。また、無効領域はあらかじめ設定されてしまっており、操作性が十分ではない。特許文献2の技術では、動きを伴わずタッチパネルの端部の1点をタッチする場合には、入力が無効とされてしまう。このように、端部を含めたタッチパネルの操作性が劣化することは避けられなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、無効領域とされる端部を含めたタッチパネルの操作性を向上させることが可能な入力装置、情報端末、入力制御方法、および入力制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の入力装置は、タッチパネルと、前記タッチパネルへの入力の座標を検知する座標検知部と、前記座標検知部により検知された入力座標に対して補正処理を行う座標処理部と、を備え、前記座標処理部が、前記補正処理において、前記タッチパネルの端部よりも内側に形成された補正領域内に入力された第1の座標を、前記タッチパネルの端部に形成された入力無効領域と前記第1の座標との距離に基づいて、前記入力無効領域または前記補正領域内の第2の座標に補正する。
【0008】
この構成によれば、タッチパネルの端部に形成された入力無効領域における誤動作を防止することができるとともに、補正領域を用いて入力無効領域への入力を補うことができる。したがって、無効領域とされるタッチパネルの端部を含めて、タッチパネルの操作性を向上させることが可能である。
【0009】
本発明の情報端末は、上記入力装置を備える。
【0010】
この構成によれば、タッチパネルの端部に形成された入力無効領域における誤動作を防止することができるとともに、補正領域を用いて入力無効領域への入力を補うことができる。したがって、無効領域とされるタッチパネルの端部を含めて、タッチパネルの操作性を向上させることが可能である。
【0011】
本発明の入力制御方法は、タッチパネルへの入力の座標を検知する座標検知ステップと、前記検知された入力座標に対して補正処理を行う座標処理ステップと、を有し、前記座標処理ステップでは、前記補正処理において、前記タッチパネルの端部よりも内側に形成された補正領域内に入力された第1の座標を、前記タッチパネルの端部に形成された入力無効領域と前記第1の座標との距離に基づいて、前記入力無効領域または前記補正領域内の第2の座標に補正する。
【0012】
この方法によれば、タッチパネルの端部に形成された入力無効領域における誤動作を防止することができるとともに、補正領域を用いて入力無効領域への入力を補うことができる。したがって、無効領域とされるタッチパネルの端部を含めて、タッチパネルの操作性を向上させることが可能である。
【0013】
本発明の入力制御プログラムは、上記入力制御方法の各ステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0014】
このプログラムによれば、タッチパネルの端部に形成された入力無効領域における誤動作を防止することができるとともに、補正領域を用いて入力無効領域への入力を補うことができる。したがって、無効領域とされるタッチパネルの端部を含めて、タッチパネルの操作性を向上させることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、無効領域とされる端部を含めたタッチパネルの操作性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態における入力装置の構成例を示すブロック図
【図2】本発明の第1の実施形態におけるタッチパネルの通常領域、補正領域、および入力無効領域の各領域を示す概略図
【図3】(A)〜(C)本発明の第1の実施形態における入力装置の把持による検出可能領域の変化例を示す図
【図4】本発明の第1の実施形態における補正処理のイメージを示す図
【図5】本発明の第1の実施形態におけるタッチパネルに形成される通常領域、補正領域、および入力無効領域の各領域の配置例を示す図
【図6】(A)〜(C)本発明の第1の実施形態における補正処理の前後における座標の変化例を示す図
【図7】本発明の第1の実施形態におけるタッチパネル上の座標と補正係数との関係の一例を示す図
【図8】本発明の第1の実施形態における入力装置の動作例を示すフローチャート
【図9】本発明の第2の実施形態における入力装置の構成例を示すブロック図
【図10】本発明の第2の実施形態におけるホバー検出領域の一例を示す図
【図11】本発明の第2の実施形態における入力装置の動作例を示すフローチャート
【図12】本発明の第2の実施形態における入力装置の構成例を示すブロック図
【図13】本発明の第2の実施形態における入力装置の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0018】
本実施形態の入力装置は、タッチパネルを用いた入力装置を広く含む。また、この入力装置は、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末など各種の携帯電子機器、携帯情報端末、カーナビゲーション装置、等の情報端末に搭載できる。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態における入力装置1の構成例を示すブロック図である。
入力装置1は、タッチパネル11、座標取得部12、把持判定部13、領域記憶部14、座標処理部15、制御部16、表示処理部17、表示部18、を有して構成される。
【0020】
タッチパネル11は、表示部18の画面に設けられており、内部メモリ、制御IC、センサ等を有する。また、タッチパネル11は、指やスタイラスペンを用いた入力を検知する。なお、タッチパネル11は、抵抗膜式のタッチパネルや静電容量式のタッチパネルなど、どのような方式であってもよい。ここでは静電容量型のタッチパネルを用いる場合を主に説明する。また、本実施形態では、2次元直交座標(xy座標)を検知する2次元タッチパネルであってもよいし、3次元直交座標(xyz座標)を検知する3次元タッチパネル(近接タッチパネル)であってもよい。
【0021】
ユーザの指やスタイラスペンなどの入力手段により入力されると、入力位置の近傍のセンサ出力(例えば、静電容量の変化量)は、その他の位置のセンサ出力よりも大きくなる。タッチパネル11は、センサ出力が所定値よりも大きくなったことで、タッチパネル11の表面(タッチパネル面)に接触していることや、タッチパネル11に入力手段が近接していることを検知する。
【0022】
また、タッチパネル11は、制御ICによりセンサ出力に対応する座標を入力座標として算出するとともに、センサ出力から接触面積を算出する。算出される入力座標は、xy座標またはxyz座標である。また、算出された座標および接触面積はタッチパネル11の内部メモリに格納される。
【0023】
また、図2に示すように、タッチパネル11には、タッチパネル11への入力座標を適切に処理するために、通常領域D1、補正領域D2、入力無効領域D3、が形成される。図2は、タッチパネル11上の各領域を示す概略図である。
【0024】
入力無効領域D3は、所定の条件を満たした場合にタッチパネル11の端部11eに形成され、この領域への入力が無効とされる領域である。補正領域D2は、所定の条件を満たした場合にタッチパネル11の端部11eよりも内側(タッチパネル11の中央側)に形成され、この領域への入力が補正される領域である。通常領域D1は、タッチパネル11への入力の座標に対して無効化や補正等の特別な処理が行われない領域である。また、通常領域D1および補正領域D2は、当該領域への入力を検知することが可能な検出可能領域D4となる。
【0025】
座標取得部12は、タッチパネル11から入力座標を読み出す(取得する)。つまり、座標取得部12は、タッチパネル11への入力の座標を検知(取得)する。
【0026】
把持判定部13は、ユーザが入力装置1を手で把持しているかどうかを判定する。把持判定方法としては、例えば以下の3つの方法が考えられる。
【0027】
(1)タッチパネル11によって左右方向(x方向)の両端部または上下方向(y方向)の両端部への入力が検知され、かつ、少なくとも一方の端部において所定範囲(所定面積)以上で入力が検知された場合、手で把持されているものと判定する。タッチパネル11の端部11eにおいて比較的広範囲で入力が検知された場合、ユーザの複数の指であると考えられることによる。
【0028】
(2)タッチパネル11によって左右方向(x方向)の両端部または上下方向(y方向)の両端部への入力が検知され、かつ、所定位置でのセンサ出力がその周囲よりも高い部分が複数検知された場合、手で把持されているものと判定する。タッチパネル11の端部11eにおいてセンサ出力が比較的高い部分は、ユーザの複数の指であると考えられることによる。
【0029】
(3)タッチパネル11が設けられた入力装置1の筐体表面又は背面でなく、筐体側面に別途センサを設ける。側面のセンサによりセンサ近傍に物体が検知されたとき、手で把持されているものと判定する。
【0030】
領域記憶部14は、タッチパネル11における補正領域D2が配置される位置および入力無効領域D3が配置される位置の座標情報等のパラメータをあらかじめ記憶する。例えば、タッチパネル11における各領域が後述する図5のように配置されるようなパラメータを保持している。なお、あらかじめ各領域のパラメータを保持せずに、座標処理部15がタッチパネル11の端部11eへの連続する入力座標のうちの最もタッチパネル11の内側の座標までを無効領域とするなど、動的に各領域の配置位置を設定するようにしてもよい。
【0031】
座標処理部15は、把持判定部13により把持されているものと判定された場合、領域記憶部14により記憶されたパラメータに示された配置位置に、入力無効領域D3および補正領域D2を形成する。
【0032】
また、座標処理部15は、入力無効領域D3が形成された状態で入力無効領域D3への入力が行われた場合、その入力を無効とする無効化処理を行う。つまり、座標処理部15は、無効化処理において、入力無効領域D3内に入力された第3の座標を無効とする。無効化処理では、座標処理部15は、入力無効領域D3への入力に応じて座標取得部12により取得された入力座標を、制御部16へ出力することを中止する。
【0033】
また、座標処理部15は、補正領域D2が形成された状態で補正領域D2への入力が行われた場合、その入力に係る入力座標を補正する補正処理を行う。補正処理では、座標処理部15は、補正領域D2への入力に応じて座標取得部12により取得された入力座標(第1の座標)を、入力無効領域D3と第1の座標との距離(つまりタッチパネル11の端部11eと第1の座標との距離)に基づいて、補正領域D2および入力無効領域D3の領域内の第2の座標に補正する。ここでは、入力無効領域D3と第1の座標との距離が短い程、前記タッチパネル11の端と第2の座標との距離が短くなるよう、補正処理を行う。このような補正処理により、補正領域D2への入力が入力無効領域D3側への入力のように拡張して扱われ、補正領域D2への入力を入力無効領域D3への入力と同様に扱うことができる。補正処理の詳細については後述する。
【0034】
また、座標処理部15は、通常領域D1への入力については、特別な処理を行わない。つまり、座標処理部15は、通常領域D1への入力に応じて座標取得部12により取得された入力座標を、そのまま制御部16へ出力する。なお、通常領域D1とは、入力無効領域D3および補正領域D2が形成されている場合には、これらの領域D2、D3以外の領域を指す。また、入力無効領域D3および補正領域D2が形成されていない場合(本実施形態では入力装置1が把持されていない場合)には、タッチパネル11上の全領域を指す。
【0035】
制御部16は、入力装置1の全体の動作を統括し、座標処理部15から出力された座標に基づいて、各種制御を行う。例えば、タッチ操作、ダブルタップ操作、ドラッグ操作、ピンチアウト操作(拡大操作)、ピンチイン(縮小操作)などの各種操作(ジェスチャ)に関する処理、各種アプリケーションの処理、などを行う。
【0036】
表示処理部17は、制御部16による各種制御に応じて、表示部18による表示に係る処理を行う。
【0037】
表示部18は、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置であり、表示処理部17の指示に従って、画面に各種情報を表示する。
【0038】
なお、座標取得部12、把持判定部13、座標処理部15、制御部16、および表示処理部17の機能は、専用のハードウェア回路で実現されてもよいし、CPUによるソフトウェア制御により実現されてもよい。
【0039】
次に、入力装置1の筐体の把持による検出可能領域D4の変化について説明する。
図3(A)〜(C)は、入力装置1の把持による検出可能領域D4の変化例を示す図である。
【0040】
把持判定部13により入力装置1を把持していると判定される前は、図3(A)に示すように、タッチパネル11の面全体が検出可能領域D4となっている。この状態でユーザが入力装置1を把持すると、図3(A)に示すように、ユーザの指FGが図中の左右端部に現れ、検出可能領域D4とxy平面において重複する。この状態が継続された場合には、指FGがタッチパネル11により検知され、誤入力が発生する可能性がある。
【0041】
把持判定部13により入力装置1の把持が検出されない場合には、図3(B)に示すように、検出可能領域D4の大きさは変化せず、図3(A)と同様である。
【0042】
一方、把持判定部13が入力装置1の把持を検出すると、座標処理部15が、入力無効領域D3および補正領域D2を形成する。すると、図3(C)に示すように、検出可能領域D4は入力無効領域D3を除いた領域に変化するので、検出可能領域D4の大きさは縮小される。これにより、入力装置1を把持するユーザの指FGによる誤入力を防止することができる。
【0043】
次に、補正処理の詳細について説明する。
【0044】
図4は、補正処理のイメージを示す図である。先に説明したように、補正領域D2および入力無効領域D3がタッチパネル11上に形成された状態で、ユーザが指等の入力手段により軌跡T1をタッチパネル11上で描くと、座標取得部12により軌跡T1の座標が取得される。座標処理部15は、軌跡T1のうち、通常領域D1に含まれる部分に対しては補正処理を行わず、補正領域D2に含まれる部分に対して補正処理を行う。この結果、軌跡T1は軌跡T2に補正され、軌跡T2が表示部18の画面に表示される。したがって、例えばポインタ表示としては軌跡T2が表示される。このように、入力無効領域D3への入力は無効とされるが、タッチパネル11の端部11eまで操作を行うことは可能である。
【0045】
図5はタッチパネル11に形成される各領域の配置例を示す図である。タッチパネル11の端部11eには、入力無効領域D3が形成される。図5では、タッチパネル11の周端部全体に渡って入力無効領域D3が形成されることを例示している。タッチパネル11の端部11eの内側の所定領域では、補正領域D2(D2A〜D2C)が形成される。補正領域D2Aはx方向の端部11eに隣接する領域である。補正領域D2Bはx方向に直交するy方向の端部11eに隣接する領域である。補正領域D2Cはx方向の端部11eおよびy方向の端部11eに隣接する領域である。補正領域D2よりも更に内側(タッチパネル11の中心部側)には、通常領域D1が形成される。
【0046】
本実施形態では、座標処理部15は、把持判定部13により入力装置1が把持されていると判定された場合に、補正領域D2および入力無効領域D3を形成する。これにより、把持されている場合に限り、無効化処理および補正処理を行うことで、誤入力の防止や操作性の劣化を改善することができ、さらに把持されていない場合には、通常の操作性を維持することができる。
【0047】
補正領域D2Aが形成された状態で補正領域D2Aに入力が行われた場合、図6(A)に示すように、x方向の端部11e側つまり入力無効領域D3側に入力座標が補正される。つまり、座標処理部15は、入力座標のx座標をタッチパネル11端に近づくように補正する。
【0048】
補正領域D2Bが形成された状態で補正領域D2Bに入力が行われた場合、図6(B)に示すように、y方向の端部11e側つまり入力無効領域D3側に入力座標が補正される。つまり、座標処理部15は、入力座標のy座標をタッチパネル11端に近づくように補正する。
【0049】
補正領域D2Cが形成された状態で補正領域D2Cに入力が行われた場合、図6(C)に示すように、xy方向の端部11e側つまり入力無効領域D3側に入力座標が補正される。つまり、座標処理部15は、入力座標のx座標およびy座標をタッチパネル11端に近づくように補正する。
【0050】
このように、座標処理部15は、タッチパネル11における第1の方向(x方向、y方向またはxy方向)の端部11e寄りに形成された補正領域D2(補正領域D2A、D2BまたはD2C)内に入力された第1の座標を、上記第1の方向の端部11eに形成された入力無効領域D3または第1の方向の端部11e寄りに形成された補正領域D2内の第2の座標に補正してもよい。これにより、入力無効領域D3への入力は無効とすることで誤入力を防止するとともに、補正領域D2A、D2B、またはD2Cを用いることで、第1の方向端部の入力無効領域D3への入力を代用することができる。
【0051】
座標処理部15は、補正処理において、例えば、補正前の座標すなわち座標取得部12により取得された入力座標に対して補正係数αを乗じることで、補正後の座標を求める。例えば、基準座標(0,0)が通常領域D1内に存在するものとすると、補正係数α>1である。補正係数α>1であることで、補正後の座標値は増加し、補正領域D2内の入力座標を入力無効領域D3内の座標に補正することができる。
【0052】
また、座標処理部15は、補正領域D2Aへの入力については、入力座標のx座標のみに補正係数αを乗じる。補正領域D2Bへの入力については、入力座標のy座標のみに補正係数αを乗じる。補正領域D2Cへの入力については、入力座標のx座標およびy座標に補正係数αを乗じる。
【0053】
図7はタッチパネル11上の座標と補正係数αとの関係の一例を示す図である。通常領域D1では、補正係数α=1で一定である。つまり、入力座標が制御部16へそのまま送られる。補正領域D2では、通常領域D1側から入力無効領域D3側に向かって、一定の変化量で補正係数αが増加している。入力無効領域D3では、補正処理は行われず、この領域への入力が無効とされる。
【0054】
例えば、通常領域D1内の基準座標と補正領域D2および入力無効領域D3の境界の座標との距離をB、通常領域D1内の基準座標と補正領域D2および入力無効領域D3の最も外側の座標(タッチパネル11端の座標)との距離をA、とする。図7の補正領域D2における補正係数αの例では、通常領域D1および補正領域D2の境界の座標で補正係数α=1、補正領域D2および入力無効領域D3の境界の座標で補正係数α=A/B、とされており、これらの間の座標では補正係数αが1〜A/Bで一定の変化量で変化している。
【0055】
このように、図7の例では、補正領域D2内では、入力無効領域D3側に向かうに従い、徐々に分解能を大きくしている。そして、補正領域D2の最も外側つまり入力無効領域D3との境界に達したときに、補正後の座標が、入力無効領域D3の最も外側の座標つまりタッチパネル11端の座標となるように、補正係数αが調整されている。徐々に分解能を大きくすることで、通常領域D1からの急激な座標変化を緩和し、なるべく自然な軌跡T2(図4参照)を描くことが可能となる。
【0056】
なお、図7に示すように補正係数αが変化することが望ましいが、補正領域D2の各座標において補正係数α(α>1)が不変となるようにしてもよい。また、補正係数を用いる代わりにあらかじめ補正前の座標と補正後の座標とを対応付けたパラメータが記憶されたマッピングテーブルを領域記憶部14に記憶しておき、このマッピングテーブルを補正処理に用いるようにしてもよい。
【0057】
次に、入力装置1の動作について説明する。
図8は入力装置1の動作例を示すフローチャートである。この動作を行う入力制御プログラムは、入力装置1内のROMに格納され、入力装置1内のCPUによって実行される。
【0058】
まず、座標取得部12が、タッチパネル11のセンサ出力に基づいて入力座標を取得する(ステップS11)。
【0059】
続いて、把持判定部13が、タッチパネル11のセンサ出力に基づいて、入力装置1がユーザにより把持されているかを判定する(ステップS12)。
【0060】
ステップS12において入力装置1の把持が検出されなかった場合、座標処理部15は、座標取得部12からの入力座標をそのまま制御部16へ出力する(ステップS13)。つまり、入力座標に対して無効化処理や補正処理などの特別な処理を行わない。なお、ここでは、入力無効領域D3および補正領域D2は形成されておらず、タッチパネル11の面全体にわたって、通常領域D1となっている。
【0061】
ステップS12において入力装置1の把持が検出された場合、座標処理部15は、各領域を形成する。つまり、タッチパネル11上に、通常領域D1、補正領域D2、および入力無効領域D3を形成する。そして、座標処理部15は、入力座標が入力無効領域D3内の座標であるか否かを判定する(ステップS14)。この入力座標は、例えば把持時に無意識にされた入力に相当する。
【0062】
ステップS14において入力座標が入力無効領域D3内の座標である場合には、座標処理部15は、入力座標を無効とする無効化処理を行う(ステップS15)。つまり、座標処理部15は、入力座標を制御部16へ出力せずに破棄する。
【0063】
ステップS14において入力座標が入力無効領域D3内の座標でない場合には、座標処理部15は、入力座標が補正領域D2内の座標であるか否かを判定する(ステップS16)。
【0064】
ステップS16において入力座標が補正領域D2内の座標である場合には、座標処理部15は、入力座標に対して補正処理を行い、その結果を制御部16へ出力する(ステップS17)。例えば、入力座標の集合が図4に示すような軌跡T1を描く場合、補正処理により軌跡T2のような座標の集合に変換する。この入力座標は、把持時に無意識にされた入力とは別に、意図的にされた入力に相当する。
【0065】
ステップS16において入力座標が補正領域D2内の座標でない場合には、座標処理部15は、入力座標をそのまま制御部16へ出力する(ステップS18)。つまり、入力座標に対して無効化処理や補正処理などの特別な処理を行わない。なお、ここでの入力座標は、通常領域D1内の座標となる。
【0066】
このような本実施形態の入力装置1によれば、入力装置1が把持されている場合には、タッチパネル11の端部11eへの誤入力による誤動作を防止することができる。特に、近年はタッチパネル11の狭額縁化(小型化)が進んでいるが、誤動作を防止することができる。一方、入力装置1が机上に置かれた状態など、ユーザに把持されていない場合には、入力無効領域D3や補正領域D2が設けられることがなく、タッチパネル11の操作性が損なわれることを防止できる。したがって、入力無効領域D3が形成されたタッチパネル11の端部11eを含めて、タッチパネル11の操作性を向上させることが可能である。
【0067】
(第2の実施形態)
図9は本発明の第2の実施形態における入力装置1Bの構成例を示すブロック図である。入力装置1Bにおいて、第1の実施形態で説明した入力装置1と同様の構成については、図1に示した入力装置1の各構成部の符号と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0068】
入力装置1Bは、タッチパネル11の代わりにタッチパネル21を備え、把持判定部13の代わりに状態判定部22を備える。
【0069】
タッチパネル21がタッチパネル11と異なる点は、タッチパネル21が3次元直交座標(xyz座標)を検知する3次元タッチパネルに限られている点である。ここでは、タッチパネル21が静電容量式のタッチパネルであることを例に説明するが、その他の方式のタッチパネルであってもよい。
【0070】
状態判定部22が把持判定部13と異なる点は、指やスタイラスペンなどの入力手段が後述するホバー状態であるか否かを判定する点である。なお、把持判定は状態判定部22により行われる。
【0071】
タッチパネル21のセンサ出力(例えば、静電容量の変化量)が第1の所定値以上である場合に、状態判定部22は、タッチパネル面21aに、指等の入力手段が接触または押下している状態(タッチ状態)であることを検出する。また、状態判定部22は、タッチパネル21のセンサ出力が第1の所定値よりも小さい所定条件を満たす場合に、タッチパネル面21aから若干離れた位置に、指等の入力手段が近接している状態(ホバー状態)であることを検出する。ホバー状態の方がタッチ状態よりもタッチパネル面21aから離れた状態にあるため、タッチパネル21のセンサ出力の大きさが小さくなる。
【0072】
なお、状態判定部22の機能は、専用のハードウェア回路で実現されてもよいし、CPUによるソフトウェア制御により実現されてもよい。
【0073】
図10はホバー状態およびタッチ状態の一例を示す図である。ここでは、ユーザの指FG1〜FG5が、指FG1から時間経過とともに指FG5へ移動している様子を示している。
タッチパネル面21aにタッチされた指FG3は、タッチ状態であることが検出される。図10では、タッチパネル面21aの位置を基準点とし、z=0としている。z座標は、タッチパネル面21a(xy平面)と直交する方向(z方向)の座標を示すものである。つまり、z=0であることが座標取得部12により取得された場合、状態判定部22は指FG3がタッチ状態であることを検出する。
【0074】
また、図10では、0<z≦zthであることが座標取得部12により取得された場合に、状態判定部22によりホバー状態であることが検出される。図10では、ホバー状態が検出される領域をホバー検出領域として示している。図10の例では、指FG2および指FG4がホバー状態であることが検出される。
【0075】
なお、図10に示したようにホバー検出領域をz方向において所定の幅を持つ領域とするのではなく、例えばz座標が0<z≦zthを満たす第2の所定値の場合にのみ、状態判定部22がホバー状態であることを検出するようにしてもよい。
【0076】
次に、入力装置1Bの動作について説明する。
図11は入力装置1Bの動作例を示すフローチャートである。この動作を行う入力制御プログラムは、入力装置1B内のROMに格納され、入力装置1B内のCPUによって実行される。なお、図11において、図8で説明したステップと同様のステップについては、説明を省略または簡略化する。
【0077】
ステップS12において入力装置1Bの把持が検出された場合、状態判定部22は、タッチパネル21への入力を行った指等の入力手段がホバー状態であるか否かを判定する(ステップS21)。ホバー状態であることが検出された場合、入力装置1Bは、ステップS14の処理に進む。
【0078】
ステップS12において入力装置1Bの把持が検出されなかった場合、または、ステップS21においてホバー状態であることが検出されなかった場合、入力装置1Bは、ステップS13の処理に進む。
【0079】
したがって、ホバー状態である場合に限って、座標処理部15が、タッチパネル21に補正領域D2および入力無効領域D3を形成し、入力座標に応じて入力無効化処理や補正処理を行うことになる。一方、ホバー状態でない場合には、仮にタッチ状態が検出された場合であっても、タッチパネル21の全体が通常領域D1のままであり、通常の入力操作を行うことが可能である。
【0080】
このように、座標処理部15は、タッチパネル21への入力におけるタッチパネル面21aと直交する方向(z方向)の座標が、タッチパネル21とは非接触の所定範囲であることを示す座標である場合に、入力無効領域D3および補正領域D2を形成する。
【0081】
ユーザが入力装置1Bを手で把持する場合には、入力装置1Bがホバー状態を検出する可能性が高くなるものと考えられる。本実施形態の入力装置1Bによれば、タッチパネル21の端部でのホバー状態が検出された場合にのみ、当該端部への入力の無効化処理および補正処理を行うことで、より把持している可能性が高い場合にのみ特別な処理を行うようにすることができる。また、入力装置1bの把持時のホバー状態の検出による誤入力を軽減することができる。一方、これ以外の場合には、通常の操作性を維持することができる。したがって、入力無効領域D3が形成されたタッチパネル21の端部を含めて、タッチパネル21の操作性を向上させることが可能である。
【0082】
(第3の実施形態)
本実施形態では、ユーザが入力装置1を把持することを想定していない。また、入力手段としてスタイラスペンを使用することを想定している。スタイラスペンの場合には、指等の比較的タッチ面積またはホバー面積(以下、入力面積ともいう)の大きな入力手段と比較すると、タッチパネル11のセンサ出力が小さく、タッチパネル11の端部11eでの不検知が発生しやすい。そこで、入力手段がスタイラスペンである場合には、第1の実施形態と同様に、入力無効領域D3および補正領域D2を形成し、必要時にタッチパネル11への入力の無効化処理および補正処理を行う。
【0083】
図12は本発明の第3の実施形態における入力装置1Cの構成例を示すブロック図である。入力装置1Cにおいて、第1の実施形態で説明した入力装置1と同様の構成については、図1に示した入力装置1の各構成部の符号と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0084】
入力装置1Cは、把持判定部13の代わりに入力手段判定部31を備える。
入力手段判定部31は、入力手段がスタイラスペンであるか否かを判定する。例えば、入力手段判定部31は、タッチパネル11により検知される入力面積、つまり座標取得部12により取得される入力座標群の広がりが所定範囲以下である場合に、スタイラスペンであるものと判定する。
【0085】
なお、入力手段判定部31の機能は、専用のハードウェア回路で実現されてもよいし、CPUによるソフトウェア制御により実現されてもよい。
【0086】
次に、入力装置1Cの動作について説明する。
図13は入力装置1Cの動作例を示すフローチャートである。この動作を行う入力制御プログラムは、入力装置1C内のROMに格納され、入力装置1C内のCPUによって実行される。なお、図13において、図8で説明したステップと同様のステップについては、説明を省略または簡略化する。
【0087】
ステップS11の後、入力手段判定部31が、タッチパネル11への入力を行った入力手段がスタイラスペンであるか否かを判定する(ステップS31)。入力手段がスタイラスペンでなく入力面積が比較的大きい指等である場合には、ステップS13の処理に進み、入力手段がスタイラスペンである場合には、ステップS14に進む。
【0088】
したがって、入力手段判定部31により入力手段がスタイラスペンであると判定された場合には、座標処理部15が、タッチパネル21に補正領域D2および入力無効領域D3を形成する。そして、入力座標に応じて入力無効化処理や補正処理を行うことになる。一方、入力手段が指である場合には、タッチパネル11の全体が通常領域D1のままであり、通常の入力操作を行うことが可能である。
【0089】
本実施形態の入力装置1Cによれば、スタイラスペンの場合には、タッチパネル11の端部11eへの入力の無効化処理を行うことで、タッチパネル11の不検知による誤操作を防止することができる。さらに補正処理を行うことで、入力無効領域D3とされるタッチパネル11の端部11eに至るまで入力操作をスムーズに行うことができる。一方、入力手段が指の場合には、通常の操作性を維持することができる。したがって、入力無効領域D3が形成されたタッチパネル11の端部11eを含めて、タッチパネル11の操作性を向上させることが可能である。
【0090】
本実施形態では、スタイラスペンを例示したが、タッチパネル11により検知される入力面積が比較的小さなものは、本実施形態で想定しているスタイラスペン等の入力手段に含まれる。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲で示した機能、または本実施形態の構成が持つ機能が達成できる構成であればどのようなものであっても適用可能である。
【0092】
また、本発明は、上記実施形態の機能を実現する入力制御プログラムを、ネットワークあるいは各種記憶媒体を介して入力装置に供給し、この入力装置内のコンピュータが読み出して実行するプログラムも適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、無効領域とされる端部を含めたタッチパネルの操作性を向上させることが可能な入力装置、情報端末、入力制御方法、および入力制御プログラム等に有用である。
【符号の説明】
【0094】
1、1B、1C 入力装置
11、21 タッチパネル
11e タッチパネルの端部
21a タッチパネル面
12 座標取得部
13 把持判定部
14 領域記憶部
15 座標処理部
16 制御部
17 表示処理部
18 表示部
22 状態判定部
31 入力手段判定部
D1 通常領域
D2、D2A、D2B、D2C 補正領域
D3 入力無効領域
D4 検出可能領域
FG、FG1〜FG5 指
T1 軌跡(補正前)
T2 軌跡(補正後)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルと、
前記タッチパネルへの入力の座標を検知する座標検知部と、
前記座標検知部により検知された入力座標に対して補正処理を行う座標処理部と、
を備え、
前記座標処理部は、前記補正処理において、前記タッチパネルの端部よりも内側に形成された補正領域内に入力された第1の座標を、前記タッチパネルの端部に形成された入力無効領域と前記第1の座標との距離に基づいて、前記入力無効領域または前記補正領域内の第2の座標に補正する入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入力装置であって、
前記座標処理部は、前記入力無効領域と前記第1の座標との距離が短い程、前記タッチパネルの端と前記第2の座標との距離が短くなるよう、前記補正処理を行う入力装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の入力装置であって、
前記座標処理部は、前記タッチパネルにおける第1の方向の端部寄りに形成された前記補正領域内に入力された前記第1の座標を、前記第1の方向の端部に形成された前記入力無効領域および前記第1の方向の端部寄りに形成された前記補正領域内の前記第2の座標に補正する入力装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の入力装置であって、更に、
当該入力装置が把持されているか否かを判定する把持判定部を備え、
前記座標処理部は、前記把持判定部により当該入力装置が把持されていると判定された場合、前記入力無効領域および前記補正領域を形成する入力装置。
【請求項5】
請求項4に記載の入力装置であって、
前記座標処理部は、前記タッチパネルへの入力における前記タッチパネルの面と直交する方向の座標が、前記タッチパネルとは非接触の所定範囲にあることを示す座標である場合に、前記入力無効領域および前記補正領域を形成する入力装置。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の入力装置であって、更に、
前記タッチパネルへ入力した入力手段がスタイラスペンであるか否かを判定する入力手段判定部を備え、
前記座標処理部は、前記入力手段判定部により前記入力手段が前記スタイラスペンであると判定された場合、前記入力無効領域および前記補正領域を形成する入力装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の入力装置であって、
前記座標処理部は、前記入力無効領域内に入力された第3の座標を無効とする無効化処理を行うとともに、前記補正処理を行う入力装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の入力装置を備える情報端末。
【請求項9】
タッチパネルへの入力の座標を検知する座標検知ステップと、
前記検知された入力座標に対して補正処理を行う座標処理ステップと、
を有し、
前記座標処理ステップでは、前記補正処理において、前記タッチパネルの端部よりも内側に形成された補正領域内に入力された第1の座標を、前記タッチパネルの端部に形成された入力無効領域と前記第1の座標との距離に基づいて、前記入力無効領域または前記補正領域内の第2の座標に補正する入力制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の入力制御方法の各ステップをコンピュータに実行させるための入力制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−88929(P2013−88929A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227261(P2011−227261)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】