説明

入力装置および入力方法

【課題】 数字キーの押下によって入力された数字が特定され難い入力装置および入力方法を提供する。
【解決手段】 キー入力処理部112は、キー押下検知部14から数字キー識別情報を受け取ったとき、キー押下検知部14から受け取った数字キー識別情報が示す数字キーに対応する数値を、キー入力処理用記憶領域124に記憶される変換テーブル128から取得する。そして、変換テーブル128から取得した数値を、入力数値記憶部127に記憶される「入力数値」に加算し、キー押下検知部14から受け取った数字キー識別情報を、押下キーリスト記憶部126に記憶される「押下キーリスト」に設定する。キー押下検知部14から受け取った数字キー識別情報の中に、押下キーリスト記憶部126に記憶される「押下キーリスト」に設定されていない数字キー識別情報があるとき、上記処理を繰り返し、キー入力処理を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗証番号などの数値を入力するための入力装置および入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行の現金自動預け払い機(Automated Teller Machine;以下「ATM」という)で現金を引き出すとき、またはコンビニエンスストアもしくは量販店などで精算するとき、暗証番号を入力するための入力装置として、「0」〜「9」までの数字を並べたキーボード、あるいは数字キーを表示するタッチパネルなどの入力装置が用いられる。これらの入力装置は、キーの配置がいずれも似たような配置であり、後ろに並んでいる他の顧客あるいは店員から手や指の動きが見える状態にあると、入力した数字がわかってしまい、暗証番号の一部あるいは全部が知られてしまうという問題がある。
【0003】
図8は、従来の技術による数字キーのキー配置の例を示す図である。図8(a)は、ATMなどで用いられる数字キーの配置の一例であるキー配置91aを示す。キー配置91aは、最上段に左から「7」、「8」、「9」の数字キーが配置され、第2段目に左から「4」、「5」、「6」の数字キーが配置され、第3段目に左から「1」、「2」、「3」の数字キーが配置され、最下段の中央に「0」の数字キーが配置されている。
【0004】
図8(b)は、図8(a)に示したキー配置91aの数字キーの配置の左右を入れ換えたキー配置91bを示す。キー配置91bは、最上段に左から「9」、「8」、「7」の数字キーが配置され、第2段目に左から「6」、「5」、「4」の数字キーが配置され、第3段目に左から「3」、「2」、「1」の数字キーが配置され、最下段の中央に「0」の数字キーが配置されている。
【0005】
このように、ATMなどでは、タッチパネルに表示する数字キーの配列を左右反転あるいは上下反転させて表示し、数字キーが配置される位置と入力される数値との関連性を少なくしようとしているが、変化させる配置が限定されており、大きな効果があるとは言い難い。
【0006】
図8(c)は、メカニカルな数字キーで構成されるキー配置92を示す図である。キー配置92は、図8(a)に示したキー配置91aと同じキー配置であるが、暗証番号「2669」の入力を繰り返し行った結果、使用頻度の高い数字キーである「9」、「6」および「2」の数字キーが劣化したものである。このように、メカニカルな数字キーの場合、同じ暗証番号が繰り返し入力されると、押下される頻度の高い数字キーが早く劣化していくため、劣化具合から暗証番号が推測されやすくなるという問題がある。
【0007】
これらの問題の解決を図ろうとする第1の従来の技術として特許文献1に記載される暗証番号入力装置がある。この暗証番号入力装置は、フェイクポインタ、つまり複数の数字を同時に指示するためのポインタを用いる。フェイクポインタの形状と、フェイクポインタによって同時に選択される数字のうちどの位置の数字が入力すべき数字を表す数字であるかを示す情報とを含む秘密情報が、暗証番号とともに、事前にユーザに知らされる。ユーザは、このフェイクポインタを用いて暗証番号を入力する。フェイクポインタの位置を移動させることによって、フェイクポインタの範囲の一部がテンキーボードを逸脱したとき、逸脱した部分を逸脱した方向と反対側の位置に移動する。
【0008】
第2の従来の技術として特許文献2に記載される自動取引装置がある。この自動取引装置は、顧客センサによって左右の顧客の存在の有無および顧客との距離を検出し、検出結果に応じて操作ボタンを表示する位置を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−33924号公報
【特許文献2】特開2006−244104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
第1の従来の技術は、入力すべき数字の数字キーとその周辺の数字キーとからなる複数の数字キーを選択することによって、入力すべき数字を特定し難くするものであるが、暗証番号に加えて、フェイクポインタの形状、およびフェイクポインタで指定する複数の数字のうちどの位置が目的とする数字であるかを覚えておかねばならないという問題がある。
【0011】
第2の従来の技術は、表示ボタン全体の表示位置を変化させるものであり、周りの顧客の位置から見えにくくすることはできるが、完全に見えなくすることはできない。また、表示ボタン全体の中での個々の数字ボタンの配置は変化していないので、数字キーを押下した指の位置から押下された数字キーがいずれの数字キーであるかを推測可能であるという問題は残る。
【0012】
本発明の目的は、数字キーの押下によって入力された数値の特定を困難にする入力装置および入力方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、数値が割り振られた複数の数字キーを用いて複数の数値を選択する選択手段と、
選択手段によって選択された複数の数値を演算する演算手段と、
演算手段によって演算された演算結果の値を入力値として入力する入力手段とを含むことを特徴とする入力装置である。
【0014】
また本発明は、前記演算手段は、前記選択手段によって同時に選択された複数の数値を演算することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記複数の数字キーは、前記入力値を1〜9の整数の値にする2つの数字キーの組み合わせを、1〜9の各整数の値についてそれぞれ2通り以上とすることができる数の数字キーを含むことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記演算手段は、前記選択手段によって選択された数値を加算した値を演算結果とすることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記複数の数字キーは、3を少なくとも2つ含み、かつ0,1,2,4,5をそれぞれ2つ含むことを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記複数の数字キーは、横方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数値の差は1であり、かつ縦方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数値の差は2または1であることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記複数の数字キーは、互いに隣接する数字キーに表示される数値を加算した値である加算値が、互いに隣接する数字キーのそれぞれの境界部に表示されることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記複数の数字キーは、暗証番号を入力するために用いられることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、数値が割り振られた複数の数字キーを用いて複数の数値を選択する選択手段を有する入力装置で数値を入力する入力方法であって、
選択手段によって選択された複数の数値を演算する演算ステップと、
演算ステップで演算された演算結果の値を入力値として入力する入力ステップとを含むことを特徴とする入力方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、選択手段は、数値が割り振られた複数の数字キーを用いて複数の数値を選択する。演算手段は、選択手段によって選択された複数の数値を演算する。そして、入力手段は、演算手段によって演算された演算結果の値を入力値として入力する。すなわち、選択された複数の数値の演算結果を入力された数値とするので、たとえば数値を特定する数字キーの押下によって入力された数値の特定を困難にすることができる。
【0023】
また本発明によれば、前記演算手段は、前記選択手段によって同時に選択された複数の数値を演算するので、ユーザは、数値を同時に選択、たとえば同時に数字キーを押下するという簡単な操作で、特定され難い数値を入力することができる。
【0024】
また本発明によれば、前記複数の数字キーは、前記入力値を1〜9の整数の値にする2つの数字キーの組み合わせを、1〜9の各整数の値についてそれぞれ2通り以上とすることができる数の数字キーを含む。したがって、ユーザは、2つの数字キーを選択すればよく、また、手や指の動きで特定することができる2つの数字キーの組み合わせが増えるので、入力する数値の特定をより困難なものにすることができる。
【0025】
また本発明によれば、前記演算手段は、前記選択手段によって選択された数値を加算した値を演算結果とするので、ユーザは、簡単な演算である加算によって目的の数値を入力することができる。
【0026】
また本発明によれば、前記複数の数字キーは、3を少なくとも2つ含み、0,1,2,4,5をそれぞれ2つ含むので、2つの数値を選択することによって0〜9の整数を入力することができる。
【0027】
また本発明によれば、前記複数の数字キーは、横方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数値の差は1であり、かつ縦方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数値の差は2または1である。したがって、数字キーの並びを単純化することができ、ユーザが選択し易い数字キーの配置とすることができる。また、1〜9の整数については、互いに隣接する数字キーでの入力を可能とすることができる。
【0028】
また本発明によれば、前記複数の数字キーは、互いに隣接する数字キーに表示される数値を加算した値である加算値が、互いに隣接する数字キーのそれぞれの境界部に表示されるので、ユーザは、計算を行うことなく、加算値を参照することによって、目的の数値を入力するために押下すべき数字キーを選択して押下することができる。
【0029】
また本発明によれば、前記複数の数字キーは、暗証番号を入力するために用いられるので、ATM、コンビニエンスストア、あるいは量販店などで暗証番号を入力する入力装置として用いることができる。
【0030】
また本発明によれば、数値が割り振られた複数の数字キーを用いて複数の数値を選択する選択手段を有する入力装置で数値を入力するにあたって、演算ステップでは、選択手段によって選択された複数の数値を演算する。そして、入力ステップでは、演算ステップで演算された演算結果の値を入力値として入力する。すなわち、選択された複数の数値の演算結果を入力された数値とするので、たとえば数値を特定する数字キーの押下によって入力された数値の特定を困難にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態である入力装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】数字キー部13のキーレイアウトの例を示す図である。
【図3】PIN入力処理部111が処理するPIN入力処理の処理手順を示す図である。
【図4】キー入力処理部112が処理するキー入力処理の処理手順を示す図である。
【図5】暗証番号の入力によって劣化した数字キーの例を示す図である。
【図6】数字キー部13のキー構造の例を示す図である。
【図7】数字キー部13のキーレイアウトの他の例を示す図である。
【図8】従来の技術による数字キーのキー配置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の一実施形態である入力装置1の構成を示すブロック図である。入力装置1は、暗証番号を入力するための装置であり、ATM、コンビニエンスストア、あるいは量販店などで用いられる。入力装置1は、入力された暗証番号を、ユーザの認証を暗証番号によって行う他の装置に送信する。本発明に係る入力方法は、入力装置1で実行される。
【0033】
入力装置1は、入出力処理制御部11、記憶装置部12、数字キー部13、キー押下検知部14、画面表示部15、画面表示制御部16、演算処理部17、通信処理制御部18、通信処理回路部19、通信ケーブル接続端子20および電源回路部21を含んで構成される。
【0034】
入出力処理制御部11は、たとえば図示しない中央処理装置(Central Processing Unit;略称CPU)によって構成される。入出力処理制御部11は、暗証番号(Personal
Identification Number;以下「PIN」ともいう)入力処理部111およびキー入力処理部112を含む。PIN入力処理部111およびキー入力処理部112は、入出力処理制御部11が記憶装置部12に記憶されるプログラムを実行することによって実現される機能である。さらに、入出力処理制御部11は、記憶装置部12に記憶されるプログラムを実行することによって、キー押下検知部14、画面表示制御部16、演算処理部17および通信処理制御部18を制御する。
【0035】
PIN入力処理部111は、数字キー部13から入力される暗証番号の入力を行うPIN入力処理を実行する。キー入力処理部112は、数字キー部13から入力される数値の入力を行うキー入力処理を実行する。キー入力処理部112は、演算手段および入力手段である。数字キー部13、キー押下検知部14およびキー入力処理部112は、選択手段である。
【0036】
記憶装置部12は、たとえば半導体メモリ装置あるいはハードディスク装置などの記憶装置によって構成され、入出力処理制御部11によって実行されるプログラム、およびプログラムを実行するために必要な情報を記憶する。記憶装置部12に記憶される情報は、入出力処理制御部11によって書込みおよび読み出しが行われる。
【0037】
記憶装置部12は、PIN入力処理用記憶領域121およびキー入力処理用記憶領域124を含む。PIN入力処理用記憶領域121は、PIN入力処理部111が後述するPIN入力処理を実行するときに用いる情報を記憶する領域であり、PIN入力数記憶部122および入力番号記憶部123を含む。PIN入力数記憶部122は、暗証番号の桁の中で入力された数値の桁を表す「PIN入力数」を記憶する。入力番号記憶部123は、暗証番号として入力された番号を表す「入力番号」を記憶する。
【0038】
キー入力処理用記憶領域124は、キー入力処理部112が後述するキー入力処理を実行するときに用いる情報を記憶する領域であり、押下キー数記憶部125、押下キーリスト記憶部126、および入力数値記憶部127を含むとともに、変換テーブル128を記憶する。押下キー数記憶部125は、押下された数字キーの数を表す「押下キー数」を記憶する。押下キーリスト記憶部126は、押下された数字キーの一覧を表す「押下キーリスト」を記憶する。入力数値記憶部127は、押下された数字キーを変換テーブル128に従って変換した数値を表す「入力数値」を記憶する。変換テーブル128は、押下された数字キーからその数字キーが表す数値に変換するためのテーブルである。
【0039】
数字キー部13は、複数の数字キー、確定キーおよび取消キーなどの操作キーを含んで構成される。複数の数字キーは、複数の数値が個々の数字キーに1つずつ表示される数字キーであり、たとえば図2で詳述する複数の数字キーである。図2には、確定キーおよび取消キーは図示していない。数字キー部13に含まれる操作キーは、メカニカルな操作キーであってもよいし、タッチパネルなどに表示される画像の操作キーであってもよい。
【0040】
キー押下検知部14は、数字キー部13に含まれる数字キーのうち押下された数字キーを検知し、検知した数字キーを表す数字キー識別情報を入出力処理制御部11に送る。タッチパネルなどに表示される数字キーの場合、表示される数字キーに触れることが数字キーを押下することである。以下、数字キーを押下することを、数字キーを操作するともいう。数字キー識別情報は、たとえば各数字キーが配置される位置情報、あるいは各数字キーを識別するためのキー識別情報である。
【0041】
また、キー押下検知部14は、確定キーが押下されたことを検知したときは、確定キー情報を入出力処理制御部11に送り、取消キーが押下されたことを検知したときは、取消キー情報を入出力処理制御部11に送る。確定キーは、暗証番号の入力が完了したことを指示する操作キーであり、取消キーは、入力した暗証番号の取消しを指示する操作キーである。
【0042】
画面表示部15は、たとえば液晶ディスプレイなどによって構成され、画面表示制御部16から指示される情報を表示画面に表示する。画面表示制御部16は、入出力処理制御部11から受け取った情報を画面表示部15に送り、表示画面に表示するように画面表示部15を制御する。演算処理部17は、入出力処理制御部11から指示される演算を行い、演算結果を入出力処理制御部11に送る。
【0043】
通信処理制御部18は、通信処理回路部19を制御し、入出力処理制御部11から受け取る情報を通信処理回路部19に送り、通信処理回路部19によって、通信ケーブル接続端子20に接続される通信ケーブルを介して他の装置、たとえば販売時点情報管理(
Point of sale system;略称POS)ターミナルなどの端末装置に送信する。また、通信ケーブル接続端子20に接続される通信ケーブルを介して他の装置から送信される情報を通信処理回路部19によって受信し、受信した情報を入出力処理制御部11に送る。
【0044】
通信処理回路部19は、通信処理制御部18から受け取る情報を電気信号に変換し、変換した電気信号を通信ケーブル接続端子20に接続される通信ケーブルを介して他の装置に送信し、通信ケーブル接続端子20に接続される通信ケーブルを介して他の装置から送信されてくる電気信号を情報に変換し、変換した情報を通信処理制御部18に送る。
【0045】
通信ケーブル接続端子20は、たとえばユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus;略称USB)ケーブルを接続するためのコネクタであり、USBケーブルを介して、他の装置、たとえばPOSターミナルなどの端末装置に接続される。
【0046】
電源回路部21は、入出力処理制御部11、記憶装置部12、数字キー部13、キー押下検知部14、画面表示部15、画面表示制御部16、演算処理部17、通信処理制御部18および通信処理回路部19に電力を供給する電源である。通信ケーブル接続端子20に接続される通信ケーブルが、USBケーブルである場合、電源回路部21は、USBケーブルから供給される電力を受け、電源回路部21が、入出力処理制御部11、記憶装置部12、数字キー部13、キー押下検知部14、画面表示部15、画面表示制御部16、演算処理部17、通信処理制御部18および通信処理回路部19に供給するように構成してもよい。
【0047】
図2は、数字キー部13のキーレイアウトの例を示す図である。図2(a)は、数字キー部13のキーの配置の一例を示すキーレイアウト30を示す図である。キーレイアウト30では、13個の数字キーが縦方向および横方向にそれぞれ隣接して、縦方向に3段、および横方向に5列で配置されている。各数字キーには、中央部にそれぞれ数字が表示されている。ユーザが数字キーを押下すると、キー押下検知部14は、押下された数字キーを検知する。
【0048】
図2(a)に示したキーレイアウト30は、最上段に左から数字「5」が表示された数字キー、数字「4」が表示された数字キー、数字「3」が表示された数字キー、数字「4」が表示された数字キー、および数字「5」が表示された数字キーの5つの数字キーがこの順序で配置され、第2段目に左から数字「3」が表示された数字キー、数字「2」が表示された数字キー、数字「1」が表示された数字キー、数字「2」が表示された数字キー、および数字「3」が表示された数字キーの5つの数字キーがこの順序で配置され、第3段目に左側の第2番目から数字「0」が表示された数字キー、数字「1」が表示された数字キー、および数字「0」が表示された数字キーの3つの数字キーがこの順序で配置されている。第3段目の左から第1番目と第5番目には数字キーは配置されていない。
【0049】
図2(a)に示したキーレイアウト30では、「3」が表示された数字キーは3つ、「3」以外の数値が表示された数字キーはそれぞれ2つである。したがって、ユーザが数字キーを押下することによって選択可能な数値は、「0」および「1」から「5」までの自然数である。また、横方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数字の差は「1」であり、かつ縦方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数字の差は、第2段目中央の数字キーに表示される数字「1」と第3段目中央の数字キーに表示される数字「1」との差を除き、「2」であり、第2段目中央の数字キーに表示される数字「1」と第3段目中央の数字キーに表示される数字「1」との差は「0」である。
【0050】
図2(b)は、数字キー部13のキーの配置の他の例を示すキーレイアウト31を示す図である。キーレイアウト31は、各数字キーの中央部に表示される数字は、図2(a)に示したキーレイアウト30と同じであるが、互いに隣接する数字キーに表示される数字の値を加算した値である加算値が、互いに隣接する数字キーのそれぞれの境界部に表示されている。
【0051】
たとえば最上段については、左から第1番目の数字キーと第2番目の数字キーとの境界部には、第1番目の数字キーに表示された数字の値「5」と第2番目の数字キーに表示された数字の値「4」とを加算した値「9」が表示されている。また、最上段の左から第1番目の数字キーと第2段目の左から第1番目の数字キーとの境界部には、最上段の左から第1番目の数字キーに表示された数字の値「5」と第2段目の左から第1番目の数字キーに表示された数字の値「3」とを加算した値「8」が表示されている。
【0052】
ユーザは、図2(a)に示したキーレイアウト30に示される数字キーのうち、1つの数字キーのみを押下して、押下した数字キーに表示された数字の値を入力することもできるし、キーレイアウト30に示される数字キーのうち、複数の数字キー、たとえば2つの数字キーを同時に押下して、押下した2つの数字キーに表示された数字の値の和の値を入力することもできる。ユーザは、図2(b)に示したキーレイアウト31についても同様に数値を入力することができる。
【0053】
図2(b)に示したキーレイアウト31では、互いに隣接する数字キーに表示される数字の値を加算した加算値が境界部に表示されているので、ユーザは、2つの数字キーに表示されている数字を加算する計算を行うことなく、境界部に表示されている加算値を見るだけで、同時に押下すべき数字キーを特定することができる。
【0054】
図3は、PIN入力処理部111が処理するPIN入力処理の処理手順を示す図である。PIN入力処理は、PIN入力処理部111が入力された4桁の暗証番号を認識し、認識した暗証番号を他の装置、たとえばPOSターミナルなどの端末装置(以下「端末」ともいう)に送信する処理である。入力装置1の電源が投入され、動作可能になると、ステップA1に移る。
【0055】
ステップA1では、PIN入力処理部111は、PIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」、および入力番号記憶部123に記憶される「入力番号」を初期化する。「PIN入力数」は、暗証番号の桁の中で入力された数値の桁を表す情報であり、初期値は「0」である。「入力番号」は、暗証番号として入力された番号を表す情報であり、初期状態は、クリアされた状態、つまり何も記憶されていない状態である。
【0056】
ステップA2では、PIN入力処理部111は、画面表示部15に表示される画面表示を、暗証番号の入力を促すメッセージ、たとえば「ニュウリョクシテクダサイ」というメッセージを表示する画面表示に更新する。ステップA3では、キー入力処理部112は、図4に示すキー入力処理を実行する。ステップA4では、PIN入力処理部111は、入力無効であるか否かを判定する。キー入力処理部112から後述する入力無効が返されたとき、入力無効であると判定し、ステップA3に戻る。キー入力処理部112から入力無効が返されなかったとき、入力無効でないと判定し、ステップA5に進む。
【0057】
ステップA5では、PIN入力処理部111は、取消キーが押下されたか否かを判定する。キー入力処理部112から後述する取消キー押下情報が返されたとき、取消キーが押下されたと判定し、ステップA12に進む。キー入力処理部112から取消キー押下情報が返されなかったとき、取消キーが押下されなかったと判定し、ステップA6に進む。ステップA6では、PIN入力処理部111は、確定キーが押下されたか否かを判定する。キー入力処理部112から後述する確定キー押下情報が返されたとき、確定キーが押下されたと判定し、ステップA14に進む。キー入力処理部112から確定キー押下情報が返されなかったとき、確定キーが押下されなかったと判定し、ステップA7に進む。
【0058】
ステップA7では、PIN入力処理部111は、入力成功であるか否かを判定する。キー入力処理部112から後述する入力成功が返されたとき、入力成功であると判定し、ステップA8に進む。キー入力処理部112から入力成功が返されなかったとき、入力成功でないと判定し、ステップA3に戻る。
【0059】
ステップA8では、PIN入力処理部111は、PIN入力数が「4」であるか否かを判定する。PIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」が「4」であるとき、PIN入力数が「4」であると判定し、ステップA15に進む。PIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」が「4」でないとき、PIN入力数が「4」でないと判定し、ステップA9に進む。ステップA9では、PIN入力処理部111は、入力番号記憶部123に記憶される「入力番号」に、キー入力処理部112から返された入力数値を追加する。具体的には、入力番号記憶部123に記憶される「入力番号」の桁のうち、PIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」が示す値によって特定される桁の次の桁にキー入力処理部112から返された入力数値を追加する。
【0060】
ステップA10では、PIN入力処理部111は、PIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」に「1」を加算する。PIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」に「1」を加算することは、暗証番号の中の桁を入力された数値の桁にすることである。ステップA11では、PIN入力処理部111は、画面表示部15に表示される画面表示を、暗証番号のうちPIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」が示す桁に「*」を追加した暗証番号を表示する画面表示に更新して、ステップA3に戻る。
【0061】
ステップA12では、PIN入力処理部111は、PIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」、および入力番号記憶部123に記憶される「入力番号」を初期化する。ステップA13では、PIN入力処理部111は、画面表示部15に表示される画面表示を、クリアされた画面表示、つまり何にも表示しない画面表示に更新して、ステップA3に戻る。
【0062】
ステップA14では、PIN入力処理部111は、PIN入力数が「4」であるか否かを判定する。PIN入力数が「4」であるとき、4桁の暗証番号が入力されたことを示す。PIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」が「4」であるとき、PIN入力数が「4」であると判定し、ステップA16に進む。PIN入力数記憶部122に記憶される「PIN入力数」が「4」でないとき、PIN入力数が「4」でないと判定し、ステップA15に進む。ステップA15では、PIN入力処理部111は、エラー通知を行って、たとえばブザーを鳴らすことによってユーザにエラーを通知して、ステップA3に戻る。ブザーを鳴らすことによってユーザにエラーを通知する場合、入力装置1にブザーを鳴らす鳴動手段を設けておく。
【0063】
ステップA16では、PIN入力処理部111は、入力番号記憶部123に記憶される「入力番号」が示す番号を、入力された暗証番号として、通信処理制御部18に送り、通信処理回路部19によって、通信ケーブル接続端子20に接続される通信ケーブルを介して端末、たとえばPOSターミナルに送信する。ステップA17では、PIN入力処理部111は、画面表示部15に表示される画面表示を、消去された画面表示、つまり何にも表示しない画面表示に更新して、PIN入力処理を終了する。
【0064】
図4は、キー入力処理部112が処理するキー入力処理の処理手順を示す図である。キー入力処理は、キー入力処理部112が、押下された数字キーを認識し、認識した数字キーによって入力された数値を特定する処理である。図3に示したフローチャートのステップA3で実行されると、ステップB1に移る。
【0065】
ステップB1では、キー入力処理部112は、押下キー数記憶部125に記憶される「押下キー数」、押下キーリスト記憶部126に記憶される「押下キーリスト」および入力数値記憶部127に記憶される「入力数値」を初期化する。「押下キー数」は、押下された数字キーの数を表す情報であり、初期値は「0」である。「押下キーリスト」は、押下された数字キーの一覧を表す情報であり、初期状態は何も記憶されていない状態である。「入力数値」は、押下された数字キーを変換テーブル128に従って変換した数値を表す情報であり、初期値は「0」である。
【0066】
ステップB2では、キー入力処理部112は、キー操作を待つ、すなわち数字キー部13のいずれかの操作キーが押下されたことによる変化があるのを待つ。ステップB3では、キー入力処理部112にて、操作キーが押下されたことによる変化があったか否かを判定する。キー押下検知部14から数字キー識別情報、確定キー情報または取消キー情報を受け取ったとき、操作キーが押下されたことによる変化があったと判定し、ステップB4に進む。キー押下検知部14から数字キー識別情報、確定キー情報および取消キー情報のいずれをも受け取らなかったとき、操作キーが押下されたことによる変化がなかったと判定し、ステップB11に進む。
【0067】
ステップB4では、キー入力処理部112は、初めて押下された数字キーであるか否かを判定する。キー押下検知部14から受け取った数字キー識別情報の中に、押下キーリスト記憶部126に記憶される「押下キーリスト」に設定されていない数字キー識別情報があると、初めて押下された数字キーであると判定し、ステップB5に進む。キー押下検知部14から受け取った数字キー識別情報のすべてが、押下キーリスト記憶部126に記憶される「押下キーリスト」に設定されていると、初めて押下された数字キーでないと判定し、ステップB2に戻る。
【0068】
ステップB5では、キー入力処理部112は、確定キーが押下されたか否かを判定する。キー押下検知部14から確定キー情報を受け取ったとき、確定キーが押下されたと判定し、ステップB15に進み、キー押下検知部14から確定キー情報を受け取らなかったとき、確定キーが押下されなかったと判定し、ステップB6に進む。ステップB6では、キー入力処理部112は、取消キーが押下されたか否かを判定する。キー押下検知部14から取消キー情報を受け取ったとき、取消キーが押下されたと判定し、ステップB16に進み、キー押下検知部14から取消キー情報を受け取らなかったとき、取消キーが押下されなかったと判定し、ステップB7に進む。
【0069】
ステップB7では、キー入力処理部112は、押下キー数記憶部125に記憶される「押下キー数」に「1」を加算する。ステップB8では、キー入力処理部112は、キー押下検知部14から受け取った数字キー識別情報のうち、押下キーリスト記憶部126に記憶される「押下キーリスト」に設定されていない数字キー識別情報の1つを注目数字キー識別情報とし、注目数字キー識別情報が示す数字キーによって特定される数値を、キー入力処理用記憶領域124に記憶される変換テーブル128から取得する。演算ステップであるステップB9では、キー入力処理部112は、変換テーブル128から取得した数値を、入力数値記憶部127に記憶される「入力数値」に加算する。ステップB10では、キー入力処理部112は、注目数字キー識別情報を、押下キーリスト記憶部126に記憶される「押下キーリスト」に設定して、ステップB2に戻る。
【0070】
ステップB11では、キー入力処理部112は、押下されている数字キーが残っているか否かを判定する。押下されている数字キーが残っているとき、ステップB2に戻る。押下されている数字キーが残っていないとき、ステップB12に進む。キー入力処理部112は、押下されている数字キーが残っているか否かを、キー押下検知部14に問い合わせることによって判定する。具体的には、キー押下検知部14から、押下された後その押下された状態を維持している数字キーが残っていることを知らされると、押下されている数字キーが残っていると判定し、キー押下検知部14から、押下された後その押下された状態を維持している数字キーが残っていないことを知らされると、押下されている数字キーが残っていないと判定する。
【0071】
ステップB12では、キー入力処理部112は、押下キー数が「3」以上であるか否かを判定する。押下キー数記憶部125に記憶される「押下キー数」が「3」以上のとき、押下キー数が「3」以上であると判定し、ステップB13に進む。押下キー数記憶部125に記憶される「押下キー数」が「3」未満のとき、押下キー数が「3」以上でないと判定し、ステップB14に進む。
【0072】
ステップB13では、キー入力処理部112は、エラー通知を行って、たとえばブザーを鳴らすことによってユーザにエラーを通知して、入力は無効であることを表す入力無効を、PIN入力処理部111に返し、キー入力処理を終了する。入力ステップであるステップB14では、キー入力処理部112は、入力が成功したことを表す入力成功と、入力数値記憶部127に記憶される「入力数値」の値を入力数値とを、PIN入力処理部111に返し、キー入力処理を終了する。ステップB15では、キー入力処理部112は、確定キーが押下されたことを表す確定キー押下情報をPIN入力処理部111に返し、キー入力処理を終了する。ステップB16では、キー入力処理部112は、取消キーが押下されたことを表す取消キー押下情報をPIN入力処理部111に返し、キー入力処理を終了する。
【0073】
したがって、入力装置1は、図3に示したPIN入力処理、および図4に示したキー入力処理によって、押下された数字キーが1つの場合、押下された数字キーに表示された数値を入力された数値である入力値とすることができる。また、押下された数字キーが2つの場合、押下された2つの数字キーに表示された数字の和の値を入力された数値である入力値とすることができる。そして、入力された4つの入力値からなる暗証番号を特定し、特定した暗証番号を、ユーザの認証を行うPOSターミナルなどの端末装置に送信することができる。
【0074】
入力装置1は、図2(a),(b)に示したキーレイアウト30,31のように、数字キーを左右対称に配置しており、左側3列に配置される数字キーから2つの数字キーを押下するだけで、または右側3列に配置される数字キーから2つの数字キーを押下するだけで、「0」〜「9」までのすべての整数の数値を入力することができる。したがって、左利きのユーザでも右利きのユーザでも、同様に簡単に入力することができる。
【0075】
1つの数字キーのみを押下すること、および2つの数字キーを同時に押下することを併用することによって、指一本で「0」〜「9」までのすべての整数の数値を入力することができる。
【0076】
2つの数字キーを同時に押下して数値を入力する場合、数値を入力するための2つの数字キーの組み合わせは、数値「0」を除く、「1」〜「9」の整数の数値については、いずれも2通り以上の組み合わせが存在する。1つの数字キーのみを押下して数値を入力することを併用すれば、「0」についても、数字キーの組み合わせが複数ある。したがって、指一本で入力した場合でも、指の動きを見て入力している数値を推測することは、非常に困難である。
【0077】
「0」〜「9」の整数の数値を各数字キーに1つずつ割り当て、1つの数字キーで1つの数値を入力する従来の技術の場合、数字キーは、10個の数字キー必要である。これに対して、図2に示した例の場合は、数字キーは、「0」,「1」,「2」,「4」,「5」の各数値を2つずつ割り当て、かつ「3」の数値を3つ割り当てた13個の数字キーである。数字キーの組み合わせは、従来の技術では10通りであるが、図2に示した例では、数字キーを3個増やしただけで、合計90通りとなる。具体的には、1つの数字キーのみを押下する組み合わせは、131=13通りであり、2つの数字キーを同時に押下する組み合わせは、「5」が表示された数字キーを2つ押下する場合を除くので、13−1=77通りであり、合計90通りとなる。入力装置1は、従来の技術では数字キーの組み合わせが10通りであったものを、90通りとすることができ、セキュリティを格段に向上することができる。
【0078】
複雑な入力が苦手なユーザの場合、周りに誰も居ないので指の動きを悟られる心配がない場合、あるいは素早く入力したい場合は、ユーザは、「0」〜「5」の整数の数値については、1つの数字キーを選択して押下するだけで簡単に数値を入力することができる。また、人混みの中など周りに誰かが居るために、セキュリティを上げたい場合は、「0」〜「5」の整数の数値についても2つの数字キーの同時押しによって、セキュリティを向上することができる。すなわち、ユーザは、1つの数字キーを選択して押下するか、2つの数字キーを同時に選択して押下するかを使い分けることによって、セキュリティの調整をユーザ自身で行うことができる。したがって、ユーザは、計算の得手不得手、周囲に人が居るか否か、急いでいるか否かなどの状況に応じて柔軟に対応することができる。
【0079】
図5は、暗証番号の入力によって劣化した数字キーの例を示す図である。図5に示した例は、図2(a)に示したキーレイアウト30で、2つの数字キーを押下して、押下された数字キーに表示される数字の合計の値を入力値として入力する場合に、4桁の暗証番号「5555」を入力する例である。
【0080】
図5(a)は、最上段右端の数字キー「5」および第3段目左端の数字キー「0」を押下して、暗証番号の第1桁目の「5」を入力したときのキーレイアウト52aを示す。図5(b)は、最上段左から第2番目の数字キー「4」および第3段目中央の数字キー「1」を押下して、暗証番号の第2桁目の「5」を入力したときのキーレイアウト52bを示す。図5(c)は、第2段目左端の数字キー「3」および第2段目左から第2番目の数字キー「2」を押下して、暗証番号の第3桁目の「5」を入力したときのキーレイアウト52cを示す。図5(d)は、最上段中央の数字キー「3」および第2段目左から第4番目の数字キー「2」を押下して、暗証番号の第4桁目の「5」を入力したときのキーレイアウト52dを示す。
【0081】
図5(e)は、劣化した数字キーを有するキーレイアウト53を示す。図5(e)に示したキーレイアウト53は、図2(a)に示したキーレイアウト30の数字キーのうち、最上段左から第2番目の数字キー「4」、最上段中央の数字キー「3」、最上段右端の数字キー「5」、第2段目左端の数字キー「3」、第2段目左から第2番目の数字キー「2」、第2段目左から第4番目の数字キー「2」、第3段目左端の数字キー「0」、および第3段目中央の数字キー「1」が劣化した状態を示している。
【0082】
このように、図5に示した例では、図5(e)に示した8つの数字キー、具体的には、最上段左から第2番目の数字キー「4」、最上段中央の数字キー「3」、最上段右端の数字キー「5」、第2段目左端の数字キー「3」、第2段目左から第2番目の数字キー「2」、第2段目左から第4番目の数字キー「2」、第3段目左端の数字キー「0」、および第3段目中央の数字キー「1」が劣化する。すなわち、図6に示した例では、劣化する数字キーを8つの数字キーに分散することができる。したがって、劣化した数字キーに表示された数字の組み合わせから入力することができる数値は、「0」を除く「1」〜「9」の数値であり、暗証番号として入力された数値を推測することは非常に困難である。
【0083】
図6は、数字キー部13のキー構造の例を示す図である。図6(a)は、図2(b)に示したキーレイアウト31のキーの構造の一例であるキー構造60を示す図である。キー構造60は、互いに隣接する数字キーに表示される数字の値を加算した値である加算値を表示する境界部を、凹部形状にした例である。凹部形状の底部に、該凹部形状を挟んで互いに隣接する数字キーに表示される数字の値を加算した加算値が表示される。
【0084】
図6(b)は、図2(b)に示したキーレイアウト31のキーの構造の他の例であるキー構造61を示す図である。キー構造61は、互いに隣接する数字キーに表示される数字の値を加算した値である加算値を表示する境界部を、凸部形状にした例である。凸部形状の頂上部に、該凸部形状を挟んで互いに隣接する数字キーに表示される数字の値を加算した加算値が表示される。
【0085】
このように、互いに隣接する数字キーの境界部を凹部形状または凸部形状としているので、隣接する数字キーを同時に押下し易くすることができる。さらに、凹部形状の底部または凸部形状の頂上部に隣接する数字キーに表示された数字の加算値が表示されるので、計算が苦手なユーザでも、2つの数字キーの同時押下で、「0」を除く、「1」〜「9」の整数の数値の入力を簡単に行うことができる。
【0086】
図6(c)は、図2(b)に示したキーレイアウト31に、手や指の動きを周囲から見え難くするための覆いを設けたキー構造62である。覆いは、数字キーを押下するユーザが位置する側と反対側、ならびにキーレイアウト31の左側および右側の近傍に設けられる。
【0087】
上述した実施形態では、同時に押下された2つの数字キーに表示された数字の値を加算する演算を行っているが、減算する演算を行ってもよい。すなわち、上述した実施形態では、同時に押下された2つの数字キーに表示された数字の値を加算した値を入力した数値としたが、同時に押下された2つの数字キーに表示された数字の値を減算した値の絶対値を入力した数値とすることも可能である。
【0088】
図7は、数字キー部13のキーレイアウトの他の例を示す図である。図7は、同時に押下された2つの数字キーに表示された数字の値を減算した値の絶対値を入力した数値とするためのキーレイアウトの一例であるキーレイアウト63を示す。
【0089】
キーレイアウト63では、最上段に左から数字「6」が表示された数字キー、数字「2」が表示された数字キー、数字「5」が表示された数字キー、数字「2」が表示された数字キー、および数字「6」が表示された数字キーの5つの数字キーがこの順序で配置され、第2段目に左から数字「1」が表示された数字キー、数字「9」が表示された数字キー、数字「3」が表示された数字キー、数字「9」が表示された数字キー、および数字「1」が表示された数字キーの5つの数字キーがこの順序で配置され、第3段目に左側の第2番目から数字「0」が表示された数字キー、数字「1」が表示された数字キー、および数字「0」が表示された数字キーの3つの数字キーがこの順序で配置されている。第3段目の左から第1番目と第5番目には数字キーは配置されていない。
【0090】
図7に示したキーレイアウト63で「0」〜「9」の整数の数値を入力する場合、たとえば数字「0」が表示された数字キーと数字「1」が表示された数字キーとを同時に押下するときの組み合わせを「0−1」のように表すと、数値「0」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「0−0」、「1−1」、「2−2」、「3−3」、「5−5」、「6−6」および「9−9」の組み合わせがあり、数値「1」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「0−1」、「1−2」、「2−3」および「5−6」の組み合わせがあり、数値「2」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「0−2」、「1−3」および「3−5」の組み合わせがあり、数値「3」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「0−3」、「2−5」、「3−6」および「6−9」の組み合わせがあり、数値「4」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「1−5」、「2−6」および「5−9」の組み合わせがあり、数値「5」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「0−5」および「1−6」の組み合わせがあり、数値「6」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「0−6」および「3−9」の組み合わせがあり、数値「7」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「2−9」の組み合わせがあり、数値「8」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「1−9」の組み合わせがあり、数値「9」を入力する場合の数字キーの組み合わせは、「0−9」の組み合わせがある。
【0091】
同時に押下された2つの数字キーに表示された数字の値の演算として、減算を行う場合、キー入力処理部112は、図4に示したフローチャートのステップB9では、変換テーブル128から取得した数値を、入力数値記憶部127に記憶される「入力数値」から減算し、減算した値の絶対値を、入力数値記憶部127に記憶される「入力数値」に上書きして記憶する。
【0092】
また、同時に押下された数字キーに表示された数字の値の演算として、加算を行うか、減算を行うかを選択可能としてもよい。たとえば、数字キー部13をタッチパネルなどに表示されるキーによって構成するとき、キーレイアウトの近傍に演算切換キーを設け、演算切換キーを押下するたびに、図2(a)に示したキーレイアウト30と図7に示したキーレイアウト63とを切り換えて表示するようにしてもよい。
【0093】
同時に押下された2つの数字キーに表示された数字の値の演算として、加算を行うか、減算を行うかを切り換える場合、キー入力処理部112は、図4に示したフローチャートのステップB9では、図2(a)に示したキーレイアウト30を用いているときは、変換テーブル128から取得した数値を、入力数値記憶部127に記憶される「入力数値」に加算し、図7に示したキーレイアウト63を用いているときは、変換テーブル128から取得した数値を、入力数値記憶部127に記憶される「入力数値」から減算し、減算した値の絶対値を、入力数値記憶部127に記憶される「入力数値」に上書きして記憶する。
【0094】
また、上述した実施形態では、1つの数字キーのみが押下され、各数字キーに表示される数字の値をそのまま数値として入力することと、同時に押下される2つの数字キーに表示された数値の和の値を数値として入力することとを併用するものであるが、いずれかを選択することができるようにしてもよい。たとえば、数字キー部13をタッチパネルなどに表示されるキーによって構成するとき、キーレイアウトの近傍にキー数切換キーを設け、キー数切換キーを押下するたびに、1つの数字キーのみが押下され、各数字キーに表示される数字の値をそのまま数値として入力するか、同時に押下される2つの数字キーに表示された数字の和の値を数値として入力するか、またはこれらを併用するかを切り換えるとともに、どの入力方法に切り換えられているかを表す情報を、タッチパネルに表示するようにしてもよい。1つの数字キーのみが押下され、各数字キーに表示される数字の値をそのまま数値として入力する場合は、「0」〜「9」の整数を表示する10個の数字キーからなる従来の技術で用いられるキーレイアウト、たとえば図8(a)に示したキー配置91aをタッチパネルに表示する。
【0095】
また、各数字キーに表示される数字、および数字キーの配置が異なる複数のキーレイアウトを用意しておいて、その中から1つのキーレイアウトを選択することができるようにしてもよい。
【0096】
上述した実施形態では、入出力処理制御部11で実行されるプログラムは、記憶装置部12に記憶されているが、プログラムが記憶されるのは、記憶装置部12などの記憶装置に限定されるものではなく、入出力処理制御部11などのコンピュータで読取り可能な記録媒体に記録しておき、実行時に、この記録媒体から読み出して記憶装置部12に記憶させる構成であってもよい。記録媒体は、たとえば図示しない外部記憶装置としてプログラム読取装置を設け、そこに記録媒体を挿入することによって読取り可能な記録媒体であってもよいし、あるいは他の装置の記憶装置であってもよい。
【0097】
いずれの記録媒体であっても、記憶されているプログラムがコンピュータからアクセスされて実行される構成であればよい。あるいはいずれの記録媒体であっても、プログラムが読み出され、読み出されたプログラムが、記憶装置部12に記憶されて、そのプログラムが実行される構成であればよい。さらに通信ネットワークを介して他の装置からダウンロードされて記憶装置部12に記憶させてもよい。ダウンロード用のプログラムは、予め記憶装置部12に記憶しておくか、あるいは別な記録媒体から記憶装置部12にインストールしておく。
【0098】
本体と分離可能に構成される記録媒体は、たとえば磁気テープ/カセットテープなどのテープ系の記録媒体、フレキシブルディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクもしくはCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)/MO(Ma gneto Optical disk)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスクのディスク系の記録媒体、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系の記録媒体、またはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only
Memory)/フラッシュROMなどの半導体メモリを含む固定的にプログラムを担持する記録媒体であってもよい。したがって、本発明は、入力方法の各ステップを実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として提供することができる。
【0099】
このように、数字キー部13、キー押下検知部14およびキー入力処理部112は、数値が割り振られた複数の数字キーを用いて複数の数値を選択する。キー入力処理部112は、数字キー部13、キー押下検知部14およびキー入力処理部112によって選択された複数の数値を演算する。そして、キー入力処理部112は、キー入力処理部112によって演算された演算結果の値を入力値として入力する。すなわち、選択された複数の数値の演算結果を入力された数値とするので、たとえば数値を特定する数字キーの押下によって入力された数値の特定を困難にすることができる。
【0100】
さらに、キー入力処理部112は、数字キー部13、キー押下検知部14およびキー入力処理部112によって同時に選択された複数の数値を演算するので、ユーザは、数値を同時に選択、たとえば同時に数字キーを押下するという簡単な操作で、特定され難い数値を入力することができる。
【0101】
さらに、前記複数の数字キーは、前記入力値を1〜9の整数の値にする2つの数字キーの組み合わせを、1〜9の各整数の値についてそれぞれ2通り以上とすることができる数の数字キーを含む。したがって、ユーザは、2つの数字キーを選択すればよく、また、手や指の動きで特定することができる2つの数字キーの組み合わせが増えるので、入力する数値の特定をより困難なものにすることができる。
【0102】
さらに、キー入力処理部112は、数字キー部13、キー押下検知部14およびキー入力処理部112によって選択された数値を加算した値を演算結果とするので、ユーザは、簡単な演算である加算によって目的の数値を入力することができる。
【0103】
さらに、前記複数の数字キーは、3を少なくとも2つ含み、0,1,2,4,5をそれぞれ2つ含むので、2つの数値を選択することによって0〜9の整数を入力することができる。
【0104】
さらに、前記複数の数字キーは、横方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数値の差は1であり、かつ縦方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数値の差は2または1である。したがって、数字キーの並びを単純化することができ、ユーザが選択し易い数字キーの配置とすることができる。また、1〜9の整数については、互いに隣接する数字キーでの入力を可能とすることができる。
【0105】
さらに、前記複数の数字キーは、互いに隣接する数字キーに表示される数値を加算した値である加算値が、互いに隣接する数字キーのそれぞれの境界部に表示されるので、ユーザは、計算を行うことなく、加算値を参照することによって、目的の数値を入力するために押下すべき数字キーを選択して押下することができる。
【0106】
さらに、前記複数の数字キーは、暗証番号を入力するために用いられるので、ATM、コンビニエンスストア、あるいは量販店などで暗証番号を入力する入力装置として用いることができる。
【0107】
さらに、数値が割り振られた複数の数字キーを用いて複数の数値を選択する数字キー部13、キー押下検知部14およびキー入力処理部112を有する入力装置で数値を入力するにあたって、演算ステップでは、数字キー部13、キー押下検知部14およびキー入力処理部112によって選択された複数の数値を演算する。そして、入力ステップでは、演算ステップで演算された演算結果の値を入力値として入力する。すなわち、選択された複数の数値の演算結果を入力された数値とするので、たとえば数値を特定する数字キーの押下によって入力された数値の特定を困難にすることができる。
【符号の説明】
【0108】
1 入力装置
11 入出力処理制御部
12 記憶装置部
13 数字キー部
14 キー押下検知部
15 画面表示部
16 画面表示制御部
17 演算処理部
18 通信処理制御部
19 通信処理回路部
20 通信ケーブル接続端子
21 電源回路部
111 PIN入力処理部
112 キー入力処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値が割り振られた複数の数字キーを用いて複数の数値を選択する選択手段と、
選択手段によって選択された複数の数値を演算する演算手段と、
演算手段によって演算された演算結果の値を入力値として入力する入力手段とを含むことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記選択手段によって同時に選択された複数の数値を演算することを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記複数の数字キーは、前記入力値を1〜9の整数の値にする2つの数字キーの組み合わせを、1〜9の各整数の値についてそれぞれ2通り以上とすることができる数の数字キーを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記選択手段によって選択された数値を加算した値を演算結果とすることを特徴とする請求項3に記載の入力装置。
【請求項5】
前記複数の数字キーは、3を少なくとも2つ含み、かつ0,1,2,4,5をそれぞれ2つ含むことを特徴とする請求項4に記載の入力装置。
【請求項6】
前記複数の数字キーは、横方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数値の差は1であり、かつ縦方向に互いに隣接する2つの数字キーにそれぞれ表示される数値の差は2または1であることを特徴とする請求項5に記載の入力装置。
【請求項7】
前記複数の数字キーは、互いに隣接する数字キーに表示される数値を加算した値である加算値が、互いに隣接する数字キーのそれぞれの境界部に表示されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の入力装置。
【請求項8】
前記複数の数字キーは、暗証番号を入力するために用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の入力装置。
【請求項9】
数値が割り振られた複数の数字キーを用いて複数の数値を選択する選択手段を有する入力装置で数値を入力する入力方法であって、
選択手段によって選択された複数の数値を演算する演算ステップと、
演算ステップで演算された演算結果の値を入力値として入力する入力ステップとを含むことを特徴とする入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−221875(P2011−221875A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91794(P2010−91794)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】