説明

入力装置

【課題】 特に、電極パターンを保護し且つ薄型化を実現できる入力装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 本実施形態における入力装置10は、基材30と、前記基材30の上面30aに形成された上部電極パターン13と、操作面を備え前記上部電極パターン13の上側に設けられる表面部材20と、前記基材30の下面30bに形成された下部電極パターン14と、前記下部電極パターン14の表面を被覆するハードコート膜22とを有して構成されることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力座標位置を検出可能な入力装置に係り、特に、電極パターンの保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1に示すように、静電容量式タッチパネルは、基材と、基材の上面に形成された上部電極パターンと、基材の下面に形成された下部電極パターンとを有して構成される。
【0003】
しかしながら下記の特許文献1に記載された発明では、液晶ディスプレイが配置される下部電極パターンの表面が露出した状態となっている。このため、下部電極パターンが、組立時による損傷を受けたり、電蝕(腐蝕)等を生じやすい状態となっていた。
【0004】
図4は、基材1の下面1aに形成された下部電極パターン2が、粘着層3を介してPET等のフィルム4により保護された従来の入力装置の部分分解断面図である。
【0005】
図4に示すフィルム4は例えば、PET基材の表面にハードコート処理が施された形態であり、約50μm〜150μm程度の厚みを有している。
【0006】
このため図4に示すように、下部電極パターン2をフィルム4により保護する形態では、入力装置全体が厚くなり薄型化を促進できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−97283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、電極パターンを保護し且つ薄型化を実現できる入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における入力装置は、
基材と、前記基材の上面に形成された上部電極パターンと、操作面を備え前記上部電極パターンの上側に設けられる表面部材と、前記基材の下面に形成された下部電極パターンと、前記下部電極パターンの表面を被覆するハードコート膜とを有して構成されることを特徴とするものである。
【0010】
これにより、上部電極パターン側を保護できるとともに、下部電極パターンを膜厚が薄く且つ硬度が高いハードコート膜により適切に保護することができ、上下電極パターンが保護された薄型の入力装置を実現できる。
【0011】
本発明では、前記ハードコート膜はUV硬化型コート材からなる塗膜であることが好ましい。これにより、薄く且つ均一な膜厚にてハードコート膜を形成することができる。
【0012】
また本発明では、前記上部電極パターンと電気的に接続される上部接続部、及び前記下部電極パターンと電気的に接続される下部接続部が夫々、前記基材の表面に形成されており、
前記ハードコート膜は前記下部接続部を避けて設けられる形態に出来る。これにより、下部電極パターンをハードコート膜にて被覆した後、下部接続部とフレキシブルプリント基板とを簡単且つ適切に接続することが出来る。
【0013】
また本発明では、前記上部電極パターンと電気的に接続される上部接続部、及び前記下部電極パターンと電気的に接続される下部接続部が夫々、前記基材の表面に形成されており、
前記下部接続部及び前記上部接続部にフレキシブルプリント基板が接続されており、
前記ハードコート膜は、前記下部接続部と接続された前記フレキシブルプリント基板の表面から前記下部電極パターンの表面にかけて形成される形態に出来る。
【0014】
これにより下部電極パターンの表面とともにフレキシブルプリント基板の表面もハードコート膜にて保護できるとともに、フレキシブルプリント基板と下部接続部間の接合強度を高めることができる。また、ハードコート膜の塗布工程を簡単にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の入力装置によれば、電極パターンを保護し且つ薄型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の入力装置の分解斜視図、
【図2】本実施形態の入力装置をY1−Y2方向に沿って切断した部分縦断面図、
【図3】(a)は、本実施形態の入力装置の一部を拡大して示す部分拡大縦断面図、(b)は、(a)とは異なる形態の部分拡大縦断面図、
【図4】従来の入力装置の問題点を説明するための部分分解縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態の入力装置10の分解斜視図、図2は本実施形態の入力装置をY1−Y2方向に沿って切断したときの部分縦断面図である。
【0018】
図1に示すように入力装置10は、表面部材(パネル)20、表面に電極パターンが形成されたセンサ基板21、ハードコート膜22、及びフレキシブルプリント基板23等を有して構成される。
【0019】
表面部材(パネル)20は、プレスチックやガラス基材で形成される。表面部材20の表面20aは操作面であり、表面部材20の下面20bには加飾層24が設けられ、図1に示すように、透光性の入力領域11と入力領域11の周囲を囲む着色された非透光性の非入力領域12とに区分けされている。
【0020】
本実施形態における入力装置10は、操作面である入力領域11を指で操作したときに入力領域内部に配置された上部電極パターン及び下部電極パターンと指の間で生じる容量変化に基づいて、指の操作座標位置を検出する静電容量式タッチパネルを構成する。
【0021】
図1,図2に示すように、センサ基板21は、基材30と、基材30の上面30aに形成された複数本の上部電極パターン13と、基材30の下面30bに形成された複数本の下部電極パターン14とを有して構成される。図1には、上部電極パターン13及び下部電極パターン14の一部のみが図示されている。
【0022】
各電極パターン13,14はいずれも基材表面にITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料でスパッタや蒸着により成膜される。また基材30は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の透明基材で形成される。
【0023】
図1に示すように上部電極パターン13はX−Y平面の例えばY1−Y2方向に沿って延出して形成され、且つ複数の各上部電極パターン13がX1−X2方向に間隔を空けて配置される。
【0024】
また図1に示すように各下部電極パターン14はX−Y平面の例えばX1−X2方向に沿って延出して形成され、且つ複数の各下部電極パターン14がY1−Y2方向に間隔を空けて配置される。
【0025】
また図1に示す上部電極パターン13の幅広電極部13aと下部電極パターン14の幅広電極部14aとは平面視にて重ならないように配置されている。
【0026】
また各上部電極パターン13のY2側の端部には、上部配線パターン(図示しない)が電気的に接続され、更に、各上部配線パターンの先端には上部接続部15が形成されている(図1,図2参照)。また、各上部配線パターン及び各上部接続部15はいずれも非入力領域12内に設けられる。各上部接続部15は非入力領域12のY2側領域12aの略中央部にX1−X2方向に間隔を空けて配列されている(図1参照)。
【0027】
また、各下部電極パターン14のX1側あるいはX2側の端部には下部配線パターン(図示しない)が電気的に接続されている。下部配線パターンは非入力領域12のX1側領域及びX2側領域からY2側領域12aにまで引き回され、各下部配線パターン16の先端には下部接続部17が形成されている。図1に示すように、各下部接続部17は、複数の上部接続部15が形成された中央部の両側端部に、X1−X2方向に間隔を空けて配列されている。
【0028】
図2に示すように、上部電極パターン13の上側に配置された表面部材20と、上部電極パターン13及び基材30との間には、例えば透明な(透光性の)アクリル樹脂系の接合層31が介在し、表面部材20と、上部電極パターン13及び基材30との間が接合されている。接合層31には、例えば、アクリル樹脂系粘着テープを用いることが出来る。
【0029】
また図2に示すように、液晶ディスプレイ32と間隔を空けて対向する下部電極パターン14の表面はハードコート膜22により被覆されている。本実施形態ではハードコート膜22は、入力領域11に形成されるため、透光性であることが必要である。
【0030】
ハードコート膜22は、下部電極パターン14の表面から基材30の表面(下面30b)にかけてスピンコート等により塗布された塗膜として構成できる。
【0031】
ハードコート膜22は、UV硬化型コート材からなる透明な塗膜であることが好適である。例えば、ハードコート膜22には、JSR(株)製のデソライト(DeSolite;DSM社の登録商標)無機有機ハイブリッドハードコートを使用することが出来る。ハードコート膜22を塗布した後、UV照射により硬化させることが出来る。
【0032】
またハードコート膜22は、JIS K 5400に基づく鉛筆硬度をH〜3H程度にすることが出来る。
【0033】
図1に示すように本実施形態では、ハードコート膜22の表面(下面)22aを平坦面に形成できる。そして、本実施形態では、ハードコート膜22の最大膜厚を数μm〜20μm程度に薄く形成することができる。
【0034】
図1に示すように、フレキシブルプリント基板23は、その先端(接続部15,17との接続側)が、中央部23aと、両側端部23b,23bとに分離している。フレキシブルプリント基板23の中央部23aには複数の第1接続部25が形成されており(図2には一つの第1接続部25のみを図示)、中央部23aが上部接続部15上に重ねられて、各第1接続部25と各上部接続部15とが電気的に接続されている。また、図2に示すように、フレキシブルプリント基板23の両側端部23bには複数の第2接続部26が形成されており(図2には一つの第2接続部26のみを図示)、両側端部23b,23bが入力装置10の下部接続部17下に重ねられて、各第2接続部26と各下部接続部17とが電気的に接続されている。
【0035】
またフレキシブルプリント基板23では、各第1接続部25及び各第2接続部26は、フレキシブルプリント基板23の表面に設置されたコネクタ35と、図示しない配線パターンを介して電気的に接続されている。
【0036】
本実施形態における入力装置10は、基材30と、基材30の上下に設けられた各電極パターン13,14と、露出する上部電極パターン13側を覆う表面部材20と、露出する下部電極パターン14を被覆するハードコート膜22とを有して構成される点に特徴的構成がある。
【0037】
これにより、上部電極パターン13を表面部材20により保護できるとともに、下部電極パターン14の表面を膜厚が薄く且つ硬度が高いハードコート膜22により適切に保護することが出来る。したがって本実施形態では、上下電極パターン13,14が保護された薄型の入力装置10を実現することが出来る。
【0038】
図4に示す従来の構造では、下部電極パターン側を表面がハードコート処理されたPET基材等のフィルム4で覆っており、入力装置の薄型化を適切に促進できなかったが、本実施形態では従来のフィルム4に比べて薄いハードコート膜22を下部電極パターン14の表面に塗布することで下部電極パターン14を適切に保護でき且つ入力装置10の薄型化を促進できる。
【0039】
図3(a)(図2と同じ箇所での部分縦断面図)に示すように、ハードコート膜22は、下部接続部17を避けて形成されてもよい。すなわち例えば、ハードコート膜22を図1に示す非入力領域12のY2側領域12aに形成しないようにすることができる。これにより、図3(a)に示すように、下部接続部17がハードコート膜22に覆われず露出した状態になる。したがって、図3(a)に示す形態では、下部電極パターン14をハードコート膜22により被覆した後、露出する下部接続部17とフレキシブルプリント基板23の第2接続部26とを適切且つ簡単に接続することができる。
【0040】
あるいは図3(b)(図2と同じ箇所での部分縦断面図)に示すように、下部接続部17とフレキシブルプリント基板23の第2接続部26とが接続された状態であり、ハードコート膜22は、フレキシブルプリント基板23の両側端部23bの表面から下部電極パターン14の表面にかけて形成されている形態とすることも可能である。
【0041】
これにより下部電極パターン14の表面とともにフレキシブルプリント基板23の表面の一部もハードコート膜22にて保護できる。しかも、フレキシブルプリント基板23の表面にハードコート膜22を重ねることで、フレキシブルプリント基板23の第2接続部26と下部接続部17間の接合強度を高めることができる。さらに塗布領域を高精度に画定せずともよく、ハードコート膜22の塗布工程を簡単にすることが可能になる。
【0042】
図2に示す実施形態では、1つの基材30の上下に各電極パターン13,14が形成された形態であったが、上部電極パターン13を形成する基材と、下部電極パターン14を形成する基材とを別々に用意し、各基材同士を接合した構成、あるいは、一枚の基材30の同一表面に、上部電極パターン13及び下部電極パターン14が形成され、前記基材30を各電極パターン13,14が外側を向くように折り曲げた構成等にすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 入力装置
11 入力領域
12 非入力領域
12a Y2側領域
13 上部電極パターン
14 下部電極パターン
15 上部接続部
17 下部接続部
20 表面部材(パネル)
21 センサ基板
22 ハードコート膜
23 フレキシブルプリント基板
25 第1接続部
26 第2接続部
30 基材
31 接合層
32 液晶ディスプレイ
35 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の上面に形成された上部電極パターンと、操作面を備え前記上部電極パターンの上側に設けられる表面部材と、前記基材の下面に形成された下部電極パターンと、前記下部電極パターンの表面を被覆するハードコート膜とを有して構成されることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記ハードコート膜はUV硬化型コート材からなる塗膜である請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記上部電極パターンと電気的に接続される上部接続部、及び前記下部電極パターンと電気的に接続される下部接続部が夫々、前記基材の表面に形成されており、
前記ハードコート膜は前記下部接続部を避けて設けられる請求項1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記上部電極パターンと電気的に接続される上部接続部、及び前記下部電極パターンと電気的に接続される下部接続部が夫々、前記基材の表面に形成されており、
前記下部接続部及び前記上部接続部にフレキシブルプリント基板が接続されており、
前記ハードコート膜は、前記下部接続部と接続された前記フレキシブルプリント基板の表面から前記下部電極パターンの表面にかけて形成される請求項1又は2に記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−170508(P2011−170508A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32386(P2010−32386)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】