説明

入場者案内システムおよび係員端末機

【課題】 特定顧客が来店した時にいち早く識別して、適切な応対を提供できる入場者案内システムを提供すること。
【解決手段】 取引を行うための施設1と、該施設1の入場口に設けた入場者情報読取手段8と、前記入場者の所持する媒体Mから前記入場者情報を読み取り、該読取結果に応じて特定の入場者であるか、一般の入場者であるかを識別して、それぞれ固有の報知出力を行う報知手段9,10を有する。
更に、前記入場口に位置する入場者の生体情報を採取可能な個人認識手段7と、該個人認識手段7の認識結果を保管する制御装置11を配し、少なくとも前記特定の入場者であるときには、前記個人認識手段7により生体情報を採り、前記読取結果に関連づけて前記制御装置11に記憶する。そして、前記特定の入場者である場合に、前記媒体Mの位置を追跡して監視し、前記処理を行う際に前記媒体Mの位置を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関等の営業店舗において、特定顧客来店の事実およびその顧客に関する情報を店員に通知するための入場者案内システムおよび係員端末機に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関の営業店舗において取引を行う場合に、顧客が持参した磁気カード等を自動取引装置に挿入し、この磁気カードに記録されている口座番号等を読み取る。この口座番号を基に重要顧客ファイルを検索して、口座番号が重要顧客のものであるかどうかが判定される。そして、ロビー担当者に重要顧客が来店していることが通知される(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、空港等の施設への入場者管理として次のような技術が開示されている。第1には空港入場者に対して所定のID情報が書き込まれたICカードを配布して、空港内の各所にこのICカードからID情報を読み取るICカードリーダを配置することで、空港内の入場者の移動軌跡データを管理センタで収集するものがある(例えば、特許文献2)。また第2の技術として、ユーザが携帯端末(携帯電話)を用いてチケット予約すると、携帯端末は電子チケットIDを受信するものがある。この携帯端末とGPSの地上制御局により位置を特定するものがある(例えば、特許文献3)。
【0004】
以上のように磁気カードやICカード、更には携帯端末を利用して取引を行うものがある。これらの媒体や機器内には顧客自身の個人識別情報が格納されており、この個人識別情報を読み取ることにより、重要顧客(以後、特定顧客又はVIPとも言う)であるか否か、更には顧客の移動軌跡や位置情報を把握している。特に金融機関では特定顧客が来店した場合、応接室で応対するなど一般客とは異なるサービスを提供する場合がある。
【特許文献1】特開平7−85185号公報(第3頁、段落0019〜0020)
【特許文献2】特開2002−117113号公報(第3頁、段落0006)
【特許文献3】特開2003−90738号公報(第6頁、段落0053〜第7頁、段落0058)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、磁気カード等の顧客保有媒体等から個人識別情報を読み取るまでは、特定顧客を識別することができない。即ち、来店した特定顧客が取引装置の操作を行うまでは、特定顧客としての扱いを享受することができない。また、特定顧客の「顔」や「氏名」等を係員が記憶している場合には来店と同時に識別できることになる。しかしながら、係員は特定顧客の「顔」を覚えるのには時間も掛かる。更に、特定顧客が多い金融機関ではそれらの顔情報を記憶できる係員は特技として扱われるくらい稀である。また、特定顧客の代理として、家族や社員が取引に来店する場合もあり、顔情報の記憶から特定顧客を識別するのは現実として困難である。
本発明は上記の問題点に鑑み創作されたものであり、特定顧客が来店した時にいち早く識別して、適切な応対を提供できる入場者案内システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、取引を行うための施設と、該施設の入場口に設けた入場者情報読取手段と、前記入場者の所持する媒体から前記入場者情報を読み取り、
該読取結果に応じて特定の入場者であるか、一般の入場者であるかを識別して、それぞれ固有の報知出力を行う報知手段を有する。その報知出力は少なくとも異なる文言、または声質の異なる音声出力とする。
【0007】
更に、前記入場口に位置する入場者の生体情報を採取可能な個人認識手段と、該個人認識手段の認識結果を保管する制御装置を配し、少なくとも前記特定の入場者であるときには、前記個人認識手段により生体情報を採り、前記読取結果に関連づけて前記制御装置に記憶する。そして、前記特定の入場者である場合に、前記媒体位置を追跡して監視し、前記処理を行う際に前記媒体位置を表示する。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、入場口を通過した時点で、特定の入場者であるか否かを識別し施設内に報知するので、係員が早期に把握でき、その後の対応への差別化が可能となる。更に、入場者の所在を追跡し、処理を行う際には待機位置が明瞭となるので対応が容易、かつスピードアップが可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に従って実施の形態を説明する。図1は本発明の入場者案内システムに使用される営業店舗の概略平面図であり、図2は本発明の入場者案内システムのブロック図である。
図において、1は施設としての営業店舗であり、金融機関の営業店である。2は窓口で対応する係員(テラーという)が操作する係員端末機としてのテラー端末機であり、窓口での取引を希望する利用者とテラーが対面して取引を行う際に操作するものである。このテラー端末機2は、取引入力部(キーボード)20と取引表示部(LCD)21及び制御部22で構成され、更には後述するスピーカから音声を発するためのマイクロホン23も接続されている。更に営業店舗1内には、入場者自身が取引を行う自動機群3が設置されている。4は来店した入場者が取引の受付をする受付端末機である。
【0010】
営業店舗1の入場口には入店ゲート5が設けられている。この入店ゲート5は入場者(以後、顧客とする)が外部より接近すると、これを検知してゲート(自動ドア)が開く。6は入場者情報読取手段としての第1のICタグリーダであって、顧客が所有している媒体Mに付加されている無線ICタグの情報を、入店ゲート5が開かれた瞬間から所定時間だけ、読み取るように制御される。7は個人認識手段としてのカメラであって、入店ゲート5を通過する顧客の生体情報としての顔映像を撮影するためのものである。8は入場者情報読取手段としての第2のICタグリーダであって、第1のICタグリーダ6が顧客情報を読み取ったあと、当該無線ICタグの位置を追跡するためのものである。媒体Mは図3に示すように無線ICタグが埋め込まれている。本実施例では通帳MpとキャッシュカードMcの一部に埋め込まれており、自動機群3においてもこの無線ICタグから口座情報等を読み取ることができる。
【0011】
本発明に利用するICタグは無線ICタグあるいはRFID(Radio Frequency IDentification System)タグ(tag)と呼ばれるものであって、電磁誘導型である。ICタグリーダ6又は8及びICタグの図示せぬアンテナにコイルを使用し、両者のコイル間に発生する誘導磁束による誘導電圧を利用して交信する。なお、通信距離の制約から、第2のICタグリーダ8については通信距離の比較的大きいマイクロ波方式であってもよいが、無線ICタグ側に複数の通信方式を搭載すると、価格増などの要因となるので電磁誘導型とする。よって、多くの情報システムが無線ICタグ技術を採用し、価格的な要因が除去できれば近未来において複数の通信方式が搭載されるはずであるので上記方式に限定するものではない。いずれにしても通信範囲8a内の無線ICタグと通信できればよい。
【0012】
9は報知手段としての音声発生器(以後、スピーカとする)であり、順番待ちしている顧客を呼び出す場合に「番号札××番でお待ちの○○様、2番の窓口までお越しください」などとアナウンスする。10は受付処理情報等を表示する報知手段としての表示板で、液晶表示器により構成され、文字情報や図柄をカラーで表示できる。また、順番待ちの顧客への誘導案内や特定顧客が来店した際に、視覚情報として特定の表示を行うことができる。この特定顧客来店表示の意味は金融機関の係員のみが理解できればよいので、利用者には意味不明なもののほうがよい。本実施の形態では、報知手段としてスピーカ9と表示板10により、音声と視覚で係員および顧客に情報を伝える。
【0013】
図1に示す営業店舗1について説明する。
101は自動化コーナであって、現金自動預払機(ATM)や通帳繰越発行機、両替機などの自動機群3が並んでいる場所であって、顧客自身の操作により金融取引を行えるところである。102はロビーであって、窓口での金融取引や相談を希望する顧客が立ち入り、取引順の来るのを待つ場所でありソファー103などが用意されている。104は係員操作スペースであって、金融機関側の係員や端末操作者(テラー)が位置し、各種の処理を行う場所である。105は窓口カウンタであって、前記ロビー102と係員操作スペース104を仕切る部位であり、この窓口カウンタ105を挟んで接客が行われる。テラー端末機2はこの窓口カウンタ105に設置されている。106は記帳台であって、取引を行う際に提示する各種帳票の保管および記載する筆記台である。
【0014】
次に図2に示す入場者案内システムについて説明する。
前述したテラー端末機2、自動機群3、受付端末機4、入店ゲート5、第1のICタグリーダ6、カメラ7、第2のICタグリーダ8、スピーカ9、表示板10は制御装置としての端末制御装置(ターミナルコントローラ:以後、TCとする)11により制御される。このTC11は専用通信回線12を介してホストコンピュータ13と接続されている。更にホストコンピュータ13は口座番号や預貯金残高及び顔貌データ等の顧客情報を記憶する記憶装置14を有しており、取引が行われると、この記憶装置14内の顧客情報が検索,照合,更新される。
【実施例1】
【0015】
本発明の動作を図4に示すフローチャートにより説明する。なお、Sは動作ステップを示し、入場者としての特定顧客(Very Important Person,以後VIPとする)が来店した場合を中心に説明する。
S1.営業店舗1の外部から入店ゲート5に顧客が接近(矢印a)すると、図示しないセンサがこれを検出し、自動ドアを開く。このドアオープン信号はTC11に送信され、顧客の来店を把握する。
S2.TC11は第1のICタグリーダ6を作動させる。即ち、第1のICタグリーダ6が所定(250KHz以下の低周波から13.56MHz帯)の電磁波を発生させる。
S3.第1のICタグリーダ6が電磁波の範囲に存在する顧客の所有する取引媒体(キャッシュカードMc又は通帳Mp)の無線ICタグから顧客情報を読み取る。
【0016】
S4.入店ゲート5は読み取った顧客情報をTC11に送信する。TC11は受信した情報の中に特定顧客フラグ(以後、VIPフラグとする)が存在するか否かを解析する。なお、解析は入店ゲート5が行って、結果をTC11に送信することでも構わない。
S5.解析の結果、VIPフラグ有りのときにはステップS6に進め、VIPフラグ無しのときにはステップS7に進める。
S6.TC11はVIPフラグ有りのとき、所定の来店メッセージをスピーカ9より出力する。例えば、男性の声色で「いらっしゃいませ」と出力する。また、表示板10には図5に示すように表示枠10bを点滅表示する。この点滅動作は係員のみが理解する「VIP来店」を意味するものとする。
S7.TC11はVIPフラグ無しのとき、所定の来店メッセージをスピーカ9より出力する。例えば、女性の声色で「いらっしゃいませ」と出力する。なお、音声出力の内容については、少なくとも金融機関の係員のみが理解できればよいので、文言や声色を規定するものではなく、異なる文言でもよい。
【0017】
図5に示す表示板10の表示例について説明する。
この表示板10は大型画面10aであり、少なくとも取引待ちの顧客と係員から目視可能な位置に設けてある(1箇所に限定するものではない)。そして、VIPが来店すると表示枠10bが点滅する。また、処理待ちのVIPが存在すれば表示枠10cを点灯する。更には処理中のVIPが存在すれば表示枠10dを点灯する。図では処理待ちのVIPが2名、処理中のVIPが1名いる状態に、VIPが来店したことを表現している。なお、表示は点灯でも良いし点滅でもよく、待ち人数表示等でもよい。
【0018】
S8.一方、TC11はステップS4で顧客情報を解析すると同時に、カメラ7による顧客の「顔」映像の撮影指示を発する。このカメラ7の制御は、図示しない映像処理プログラムにより行われ、人体映像から顔画像を切り出す。
S9.TC11は受信した顧客情報に顔映像データを関連付けて記憶するとともに、ホストコンピュータ13に顧客情報(少なくとも口座番号)を送信する。
S10.ホストコンピュータ13では顧客情報に基づいて、預貯金残高情報等を検索して取引可能な口座であるか否かを確認する。取引不可のときにはその信号をTC11に返信する。取引可能であるときには、その信号と予め登録してある顔貌データをTC11に返信する。
【0019】
S11.TC11はホストコンピュータ13から受信した顔貌データを先の顧客情報に関連づけて格納する。この時点でTC11には、「VIPである」ことと、「撮影した顔映像データ」およびホストコンピュータ13に登録してあった「顔貌データ」が揃ったことになる。
S12.ホストコンピュータ13からの電文を受信したら、受付端末機4での受付処理が終了しているかどうかを確認する。第1のICタグリーダ6部を通過後、矢印bの方向に進み、受付端末機4で受付処理を行うはずである。また、不慣れな顧客や自動機群3にて取引を行う顧客は受付処理を行わない。
【0020】
S13.VIPであるにもかかわらず、受付端末機4で受付処理をしない場合があるので、TC11はテラー端末機2に係員の人的対応を指示する画面を表示する。この表示画面に撮影した顔映像を表示すれば、見誤ることはない。またロビー係員を配置していれば、その係員にテラーから口頭指示が行われる。例えば、VIPのところに進み出て、ロビー係員が用件を聞き出すことになる。
S14.VIPが来店の用件を伝えると、係員が対応する。例えば窓口処理であれば受付処理を行うこともできるし、自動機群3における取引が可能なものであれば、自動機群3の所に案内する。また、場合により応接室等に導かれる。
【0021】
S15.窓口における処理であれば、テラー端末機2よりVIPとしての受付処理を行う。例えば待ち時間3分以上の顧客の直後に順位を強制的に挿入するなどの処理を行う。この表示画面例を図6(a)に示した。図示するように処理待ちの顧客が5名存在し、最上位の顧客が10時15分に受付され、最後位の顧客が10時18分に受け付けている場合に、10時18分に来店したVIPは10時15分に来店したものとして、第3順位に挿入される。
【0022】
ここで、図6(a)について説明する。
図はテラー端末機2の取引表示部21に表示する画面例であって、斜線部2aは処理中又は待機中の画面内容である。VIPの来店が検出されると、TC11からVIP来店情報としてVIP来店表示2bが追加表示される。この表示は所定時間だけ点灯(又は点滅でもよい)される。そしてTC11は上記した順位でカメラ7が撮影した顔映像2cを表示する。このように表示することによりVIP来店表示2bと顔映像2cにより即座にVIPを特定する。
【0023】
ステップS12で受付端末機4にて受付処理が行われている場合を説明する。
S16.TC11はVIPであるか否かを判断する。VIPであればステップS15で説明したように、受付順位を繰り上げる。この場合には受付順位が採番されているので、通常の窓口に呼び出すと、当該VIPより早く受け付けた顧客にとって抜かされたという不満意識が生じるので、表示板10等への番号表示は行わずにテラーは顧客氏名等で呼び出す。
S17.VIPではない場合には受付順位に従って処理を行う。
【0024】
VIPに対する優遇処置は上記のように受付順位を変えることに限定されるものではない。例えば、取引処理をベテラン係員に対応させることにより確実にかつ短時間に処理させること、更には贈答品等を配布することなども考えられる。なお、他の顧客よりも優先的に順序を決定することは特開平10−187853号公報等により公知なので細部の説明は省略する。
【0025】
以上説明したように、入店ゲートを通過した時点で、VIPであるか否かを識別するので、その後の対応に差別化を行える。顧客にとっても自己申告することなく優遇処理が享受できるのでより親密感を増すことができる。
【実施例2】
【0026】
次に入店ゲートの通過時に撮影した顧客の顔映像とホストコンピュータから受信した顔貌データの類似性が低く、顧客不一致であると判断された場合を説明する。この場合は代理人による取引であることが一般的である。図7は実施例2のフローチャートであって、図1で示したフローチャートの説明に加え、テラー端末機に表示されるVIPの顔映像の扱いについて説明する。
【0027】
S21.前記したステップS11同様に、TC11はホストコンピュータ13から受信した顔貌データを格納する。この時点でTC11に「VIPである」、「撮影した顔映像データ」およびホストコンピュータ13に登録してあった「顔貌データ」が揃う。
S22.TC11は、「撮影した顔映像データ」と「顔貌データ」の特徴比較を行う。この比較動作は予め定めた画像解析技術により、眼,鼻,口の位置関係や顔型等により行われる。
S23.顔映像の解析、比較の結果が所定レベルの一致率であれば「VIP本人」と判定し、ステップS24に進め、所定レベル以下であれば「VIPの代理人」と判断してステップS27に進める。
【0028】
S24.来店した顧客がVIP本人であると判定したTC11は、取引受付情報に「特定顧客本人フラグ(以後、VIP本人フラグとする)を付加する。
S25.窓口でのテラー端末機4による取引処理により、VIP本人による取引の順番になるのを待つ。ここで、前述の優先処理が行なわれていれば一般顧客より早く呼び出されることになる。
S26.テラーはテラー端末機4を操作して、VIP本人の受付番号を指定入力すると、テラー端末機4の表示画面にVIP情報表示2dとホストコンピュータ13から受信した顔貌データ2eを画像合成して表示する。この表示例が図6(b)に示したようなものである。テラーは受付番号で呼び出すことなく、例えば「○○様、3番の窓口までお越しください」とマイクロホン23に呼びかけ、スピーカ9より音声案内する。このときに、画面表示されているVIPの顔映像に基づいてロビー102を目視で捜索する。呼び出されたVIPの顔と表示画像を目視で比較して、VIP本人であることを確認して取引を開始する。
【0029】
なお、氏名による呼出しやロビー102を目視で捜索しても、VIPの存在を把握できないときがある。このときテラーは、テラー端末機4を操作して、TC11内に記録されている来店時に撮影した「顔映像データ」を画像として表示させるようにする。このようにすると、帽子を被って来店したVIP、眼鏡をしている、または外している等の理由で外見では識別できないときなどに利用できる。このようにするとカメラ7よりの映像より先に記憶装置14の顔貌情報を利用するのでカメラ7の撮像画素数が少ないものでもよいという利点がある。
【0030】
S27.ステップS23にて「VIPの代理人」と判断した場合にTC11は、取引受付情報に特定顧客代理人フラグ(以後、VIP代理人フラグとする)を付加する。
S28.テラー端末機4による取引処理により、VIP代理人による取引の順番になるのを待つ。ここで、前述の優先処理が行なわれていれば一般顧客より早く呼び出されることになるのは前述の通りである。
S29.テラーはテラー端末機4を操作して、VIP代理人の受付番号を指定入力すると、テラー端末機4の表示画面にTC11内に記録されている来店時に撮影した「顔映像データ」が画像として表示される。テラーは受付番号で呼び出すことなく、例えば「○○様、3番の窓口までお越しください」とスピーカ9より案内する。このときに、画面表示されているVIP代理人の顔映像に基づいてロビー102を目視で捜索する。呼び出されたVIP代理人の顔と画像を目視で比較して、代理人であることを確認して取引を開始する。
【0031】
S30.テラーは代理人として顔映像情報を取引履歴に加えて格納するか否かの判断を行う。例えば、VIPの家族であり、かつ顔見知りである場合などは格納する必要はないが、把握できない代理人であるときなどには格納(入力操作)する。なお、高額出金又は満期前の定期解約などの取引内容によりTC11が自動判断して図6(c)に示したような画面表示2fを行い入力誘導する。表示枠2gには、テラーの問診により「ご友人」、「社員」等、更には代理人の氏名など入力してもよい。このように記録を残すことにより不正取引であったことが後日判明したときに経過追跡の参考になる。なお、TC11内の顔映像データは取引終了後、消去してよい。
【実施例3】
【0032】
実施例2ではVIPの存在と顔映像を表示することにより、VIPを識別することが可能である。しかしながら、大型店舗等においてロビー102が広い場合に目視で探すのは困難なときがある。テラーは操作卓からの視界内で捜索するので、見つけ出しにくい場合がある。本実施例3ではVIPの所在を監視し、どこで順番待ちをしているかを把握するものである。この監視手段としては、図1に記載している第2のICタグリーダ8により顧客の所有する媒体Mの移動を追跡するものである。
図8に示すフローチャートにより説明する。なお、第2のICタグリーダ8を図1に記載の下側より符号8イ、8ロ、8ハとして説明する。
【0033】
S31.顧客の所有している媒体Mの顧客情報から、入店ゲート5が読み取った顧客情報の中にVIPフラグが存在するか否かをTC11が判断する。
S32.VIPフラグが存在する場合には、追跡すべき媒体候補として決定し、少なくとも口座番号に対応して位置情報を付加する。入店ゲート通過時点では自動機群3による取引顧客の可能性があるので、位置情報は「自動化コーナ」とする。
S33.TC11は第2のICタグリーダ8を作動させる。ここでVIPが受付端末機4により受付処理を行うと、第2のICタグリーダ8イが媒体Mを検出する。即ち、図1に示す矢印bに向かって移動すると、第2のICタグリーダ8イの通信範囲8aに立ち入る、又は通過することにより媒体Mと通信が行われ、位置情報を「第2のICタグリーダ8イ」に変更する。
【0034】
S34.TC11は所定時間間隔(例えば、2秒)毎に媒体Mと通信が行われる。例えば、受付処理を行ったVIPが矢印cの方向に進み、ソファー103に座れば第2のICタグリーダ8イの通信範囲(図示の扇形の一点鎖線内)8aで待機していることになる。また、矢印dの方向に進み、記帳台104に向かえば第2のICタグリーダ8ロの通信範囲に入り、位置情報を「第2のICタグリーダ8ロ」に更新する。
このようにして、VIPがロビー102で待機していれば、そのVIPの口座番号(又は、受付番号でもよい)と第2のICタグリーダ8イ〜ハのいずれにて待機しているかをTC11が監視する。なお、位置情報の更新は、VIPに対する処理開始に先立ってテラー端末機4に対する受付番号の入力直後に実行してもよい。
S35.窓口でのテラー端末機4による取引処理により、VIP本人による取引の順番になるのを待つ。ここで、前述の優先処理が行なわれていれば一般顧客より早く呼び出されることになるのは前述した通りである。
【0035】
S36.テラーはテラー端末機4を操作して、VIP本人の受付番号を指定入力すると、テラー端末機4の表示画面にホストコンピュータ13から受信した「顔貌データ」を画像として表示する。この表示には、「南エリアのソファーにいます、○○様、本人です」などと表示し、待機位置を示す情報が付加される。テラーは受付番号で呼び出すことなく、例えば「○○様、3番の窓口までお越しください」とスピーカ9より案内する。このときに、画面表示されているVIPの顔映像に基づいてロビー102内の「南エリアのソファー」を目視で捜索する。
S37.呼び出されたVIPの顔と画像を目視で比較して、本人であることを確認して取引を開始する。
S38.取引の終了を意味する信号を受信したTC11は位置追跡監視を終了する。
【0036】
S39.ステップS35において、VIP本人による取引の順番になるのを待つ間、所定時間間隔(例えば、2秒)毎に媒体と通信が行われ、検出した位置情報を更新する。なお、媒体Mを検出できない場合には、「位置不明」として位置情報を更新する。これは第2のICタグリーダ8の通信範囲外で待機している場合、応接室や手洗いに入っている場合などである。いずれにしても、所定時間間隔で通信することにより、通信範囲内に戻れば位置情報が更新される。
【0037】
以上のように、待機場所が絞られているので、呼び出す場合にそのエリアを中心に視線を送り、音声ガイダンスに反応したVIPの顔と画面表示している画像と比較して、本人であることを確認できるので、顧客は「この金融機関のテラーは私を知っている」と思い、親近感を覚える。テラーにとっても、VIPの顔を記憶する必要がなくなるので、心理的な負担が軽減できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上の実施例は、特定顧客(VIP)の早期認識から待機位置追跡までを個別の実施例で記載したが、これに限定されない。全ての実施例を併用すること、または択一的に実施することなどが可能である。これらは営業店舗の大きさや日常の取引量などから適宜決めればよい。また、入場者情報読取手段として、特定顧客であることを媒体に埋め込まれた無線ICタグにより識別したが、カメラ撮影時に虹彩情報も採取することや受付端末機の操作時に指紋情報を採取するなどバイオメトリクス(生体)認証を併用すれば、よりセキュリテイを向上させたシステムを提供できる。
【0039】
本発明は金融機関の営業店舗における入場者案内システムとして記載したが、これに限定されない。即ち、上得意様の来店識別としてデパートやレストランに利用すればセールス商品の準備から店舗内の案内などに利用できる。特に所在追跡を行えば、興味をもたれた商品(コーナ)などを把握でき、個人セールスに利用できる。また、映写会場、劇場、及び列車内の指定座席への誘導など特定顧客を識別し、個別に案内すること、更には障害者カードにおいて同様に利用すれば特別介助などを早期に提供するなどが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の入場者案内システムに使用される営業店舗の概略平面図である。
【図2】本発明の入場者案内システムのブロック図である。
【図3】本発明の入場者案内システムに利用する媒体の斜視図である。
【図4】本発明の実施例1のフローチャートである。
【図5】本発明の表示板の表示例を示す説明図である。
【図6】本発明の係員端末機における画面表示例を示す説明図である。
【図7】本発明の実施例2のフローチャートである。
【図8】本発明の実施例3のフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1 施設(営業店舗)
2 係員端末機(テラー端末機)
4 受付端末機
5 入店ゲート
6 入場者情報読取手段(第1のICタグリーダ)
7 個人認識手段(カメラ)
8 入場者情報読取手段(第2のICタグリーダ)
9 音声発生器(スピーカ)
10 表示板
11 制御装置(端末制御装置:TC)
13 ホストコンピュータ
14 記憶装置
20 取引入力部
21 取引表示部
22 制御部
23 マイクロホン
M 媒体
Mp 通帳
Mc キャッシュカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引を行うための施設と、
該施設の入場口に設けた入場者情報読取手段と、
前記入場者の所持する媒体から前記入場者情報を読み取り、
該読取結果に応じて特定の入場者であるか、一般の入場者であるかを識別して、それぞれ固有の報知出力を行う報知手段を有すること特徴とする入場者案内システム。
【請求項2】
請求項1記載の入場者案内システムにおいて、
前記報知出力は少なくとも異なる文言、または声質の異なる音声出力である入場者案内システム。
【請求項3】
請求項1記載の入場者案内システムにおいて、
前記入場口に位置する入場者の生体情報を採取可能な個人認識手段と、
該個人認識手段の認識結果を保管する制御装置を配し、
少なくとも前記特定の入場者であるときには、前記個人認識手段により生体情報を採り、前記読取結果に関連づけて前記制御装置に記憶する入場者案内システム。
【請求項4】
請求項1記載の入場者案内システムにおいて、
前記入場者の要求する処理を行うための係員端末機を配し、
前記特定の入場者である場合に、前記媒体位置を追跡して監視し、前記処理を行う際に前記係員端末機に前記媒体位置を表示する入場者案内システム。
【請求項5】
請求項3記載の入場者案内システムにおいて、
入場者の生体情報を含む個人情報を記憶、管理する上位装置を配し、
該上位装置に記憶されている生体情報と採取した生体情報を比較し、一致するとき特定の入場者本人とし、不一致のとき代理人と識別する入場者案内システム。
【請求項6】
請求項4記載の入場者案内システムにおいて、
前記施設内には処理順位を表示可能な表示板を配し、
前記係員端末機と前記表示板に特定の入場者の入場を意味する表示を行う入場者案内システム。
【請求項7】
請求項5記載の入場者案内システムにおいて、
前記生体情報は利用者の顔映像であって、前記処理を行う際に前記係員端末機に表示する入場者案内システム。
【請求項8】
請求項7記載の入場者案内システムにおいて、
前記係員端末機における処理時には代理人の顔映像をも表示可能とし、処理結果に対応付けての記録要否を選択可能とした入場者案内システム。
【請求項9】
係員が取引処理するための取引入力部と取引表示部を有し、
特定の入場者に関する情報を前記取引表示部に一般の入場者と区別して表示することを特徴とする係員端末機。
【請求項10】
請求項9記載の係員端末機において、
前記取引入力部から特定の入場者に関わる取引指示入力があると、前記取引表示部に表示した取引入力画面に重ねて前記特定の入場者に関する情報を表示する係員端末機。
【請求項11】
請求項9記載の係員端末機において、
前記取引表示部に表示される特定の入場者に関する情報には、該入場者の顔映像が含まれる係員端末機。
【請求項12】
請求項11記載の係員端末機において、
前記特定の入場者の顔映像を取引に関連づけて記憶するための誘導画面を、前記取引表示部に表示する係員端末機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−18614(P2006−18614A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196181(P2004−196181)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】