説明

入浴介護装置

【課題】補助者の負担少なく入浴介護ができる入浴介護装置を提供する。
【解決手段】フットフレーム2に組み込まれた上下動装置3、フット側吊下げ部材8と、ヘッドフレーム1に連結されたヘッド側吊下げ部材17と、屈曲可能に構成された上半身受け部23と下半身受け部材24を有し、フット側吊下げ部材8およびヘッド側吊下げ部材17に連結された吊床が下降したときに、これを収容する浴槽と、を備え、上下動装置3により下半身受け部材24が下降したとき、ヘッド側吊下げ部材17及び上半身受け部材23が傾斜する、入浴介護装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人を寝たままで入浴させることのできる入浴介護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
寝たきりの人は自らで寝返りを打てないことが多く、このために血液循環が阻害され、床擦れが起こる。床擦れ(褥瘡)は寝たきりの人の健康状態を著しく悪化させるため、これを放置することはできない。このため、介護者は、2時間に一度程度の体位交換をしてやる必要があるが、これとともに定期的に入浴するなどして身体を常に清潔に保っておくことが望まれる。
【0003】
しかし、寝たきりの人を入浴させることは、体位変換以上に重労働であり、女性などの非力な介護者が寝たきりの人を入浴させることは困難である。このため、自力で寝起き動作ができない寝たきりの人については、訪問入浴サービスなど外部専門家にときおり依頼して、入浴させているというのが現状である。
【0004】
寝たきり患者の寝返りを補助する機能を備えた介護ベッド技術としては、例えば特許文献1の技術がある。また、寝たきり患者がベッド上でシャワーできる技術としては、例えば特許文献2の技術がある。
【0005】
特許文献1は、ベッドを円形のスライダに沿って、円周方向に自動的に回転させることにより患者の寝返りを可能としている。
【0006】
しかし、この技術にかかるベッドは、部分円形状の架台保持部材の上にスライダ部材を介して回転架台を載せ、更にその上にネット担架を載置した構造であり、ベッド本体を傾斜させる機構が大仕掛けとなる。
【0007】
特許文献2の技術は、ベッド上でシャワーが可能なベッド装置に関し、使用者が横たわれる長さと幅の床部を有し、その前後両端に立ち上がり部を有するベッドの本体と、ベッド本体の左右に取り付けられ、床部の左右と立ち上がり部の左右を水密的に囲み、浴槽を形成するための左右の側板と、ベッド本体を支え、床部がほぼ水平となった無傾斜状態から使用者の体重が使用者自身の下肢に感じられる程度に起き上がった傾斜状態まで移動可能にする支持手段とを有するものである。
【0008】
この技術にかかるベッド装置は、ベッド上でシャワーが可能であり、湯水を溜めて入浴させることも可能であるとされる。しかし、この技術にかかるベッド装置は、ベッド本体全体を台車に搭載された支持手段で下から持ち上げた構造であるので、大仕掛けな機構を必要とする。このため、ベッド装置が高価となり、また装置全体が大きくて複雑となるので、家庭で簡便に使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−168554号公報
【特許文献2】特開2003―79694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の課題を解決しようとするものであり、本発明の目的は、構造が簡単で、簡単に操作することができ、しかも寝たきりの人を入浴させるための介護労力を大幅に軽減できる入浴介護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための第1発明は、フットフレームと、ヘッドフレームと、前記フットフレームに組み込まれた上下動装置と、前記上下動装置に連結されたフット側吊下げ部材と、前記ヘッドフレームに連結されたヘッド側吊下げ部材と、上半身受け部材及び前記上半身受け部に連結された下半身受け部材を有し、前記上半身受け部材と前記下半身受け部材とが前記連結部位で屈曲可能に構成され、前記両受け部材の対向する一対の外側端部が前記フット側吊部材および前記ヘッド側吊下げ部材にそれぞれ連結された吊床と、前記吊床の下側に配置され、前記吊床が下降したときに、前記吊床を収容する浴槽と、を備え、前記フット側吊下げ部材を介して前記上下動装置により前記下半身受け部材が下降せられたとき、前記フットフレーム側の下半身受け部材端部と、前記ヘッドフレーム側のヘッド側吊下げ部材端部との間の直線距離が増加し、前記ヘッド側吊下げ部材及び前記上半身受け部材が、前記距離の増加が小さくなる方向に傾斜する、入浴介護装置である。
【0012】
上記構成では、フットフレーム側の上下動装置により吊床の下半身受け部材のみを浴槽側に下降させると、フットフレーム側の下半身受け部材端部と、ヘッドフレーム側のヘッド側吊下げ部材端部との間の直線距離が増加するとともに、直線距離の増加を補うように、ヘッド側吊下げ部材及び上半身受け部材が距離の増加が小さくなる方向に傾斜するので、上半身受け部材が角度をもって立ち上がった状態となる。すなわち、吊床の下半身受け部材のみを下降させるという簡便な手法で、首から上をお湯から出した状態で、身体全体が十分にお湯に浸かった状態とすることができる。このため、介護者または介助者に過大な負担を掛けることなくして、入浴中の溺れ事故を招くことなく、寝たままの人の身体全体を十分にお湯に浸けることができる。これにより、入浴によるリフレッシュ効果及びリラックス効果を高めることができる。
【0013】
第2発明は、上記第1発明の入浴介護装置において、前記下半身受け部材と、前記上半身受け部材とが、ヒンジを介して屈曲可能に連結されている構成とすることができる。
【0014】
この構成の入浴介護装置では、下半身受け部材と、上半身受け部材とをヒンジを介して連結することにより、簡便な構成で上半身受け部材を傾斜させることができる。
【0015】
第3発明は、上記第1発明または第2発明の入浴介護装置において、前記ヘッド側吊下げ部材は、ひも状部材である構成とすることができる。
【0016】
この構成の入浴介護装置では、簡便な構成でヘッド側吊下げ部材を傾斜させることができる。なお、ひも状部材は、1本のみであってもよく、2本以上であってもよい。ひも状部材の本数は、人が乗った状態の吊床を吊り下げるために必要とされる強度と、ひも状部材の材質や太さとの関係から、適宜決定される。
【0017】
第4発明は、上記第1〜第3発明のいずれかにかかる入浴介護装置において、前記吊床の幅方向に、柱状ユニットマットが複数配列されていることを特徴とする。
【0018】
ベッドマット部材として、柱状ユニットマットを用いると、柱状ユニットマットの相互間に水を通過させる隙間を形成することができる。よって、吊床をお湯に浸けるとき、又は吊床をお湯から上げるときにおける水抜き及び水切りが容易である。また、複数配列された柱状ユニットマットは、ランダムな圧縮反発力を与えるので、寝たきりの人の褥瘡を予防する効果がある。例えば断面形状を、円形、扁平形や、三角形、四角形、六角形などの多角形状とするなどし、異なった形状及び/又は異なった直径の柱状ユニットマットを組み合わせて用いることにより褥瘡予防効果を一層高めることができる。
【0019】
第5発明は、上記第4発明にかかる入浴介護装置において、前記吊床が、幅方向に多段階又は無段階に傾斜可能に保持されていることを特徴とする。
【0020】
この構成では、吊床をベッド幅方向(寝ている人の左右方向)に傾斜させることができるので、患者の体位変えの介助が容易となる。また本発明にかかる入浴介護装置の吊床に寝ている人を他のベッドに移し替えるときには、本件吊床を他のベッド側に傾ければよく、これにより寝たままの人を容易に他のベッドに移動させることができる。なお、他のベッドに寝ている人を本件吊床に移動させる場合には、本件吊床を他のベッドよりも僅かに低くなるように下げればよい。
【0021】
更にまた、本件入浴介護装置は、ベッドそのものとしても利用できるが、本件入浴介護装置の吊床をベッドとして利用する場合には、吊床を定期的に左右に傾けるという使い方ができる。これにより、体位の変換を促すことができ、褥瘡を予防する効果が得られる。
【0022】
第6発明は、上記第5発明にかかる入浴介護装置において、前記入浴介護装置が、前記吊床の幅方向の傾斜角度を制御する傾斜制御部材をさらに備える構成とすることができる。
【0023】
この構成においては、上記傾斜制御部材に、幅方向の傾斜角度を制御する機能に加えて、それ自身に幅方向への傾斜を駆動する駆動装置としての機能を持たせてもよい。
【0024】
第7発明は、上記第6発明の入浴介護装置において、前記浴槽の内がわ底部には、前記吊床が降下したときに、屈曲した状態の前記吊床を下方から支持する屈曲支持面が設けられていることを特徴とする。
【0025】
この構成であると、吊床が下降したときに、変形した吊床は常に下方の屈曲支持面で支持された状態となる。つまり、吊床重量と人体重量が加わった屈曲後の吊床が下方から確実に支持される。よって屈曲後の吊床の形状安定性が高まる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、寝たきりの人の入浴に伴う介護者負担を顕著に低減することのできる入浴介護装置を簡便な構造でもって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態1にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す斜視図であって、図1(a)は吊床の下降前を示す図であり、図1(b)は吊床の下降後を示す図である。
【図2】実施の形態1にかかる入浴介護装置の上下動装置の構造を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は実施の形態1にかかる入浴介護装置の吊床に柱状マットユニットを敷いた状態を示す平面概念図であり、図3(b)は図3(a)の断面図である。
【図4】実施の形態1にかかる入浴介護装置の浴槽部分を示す斜視図である。
【図5】実施の形態1にかかる入浴介護装置の使用形態を説明する模式図であって、図5(a)は吊床の下降前を示す図であり、図5(b)は吊床の下降後を示す図である。
【図6】実施の形態2にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す図であって、フットフレーム本体側の拡大斜視図である。
【図7】実施の形態3にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す図であって、フットフレーム本体側の拡大斜視図である。
【図8】実施の形態4にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す図であって、フットフレーム本体側の拡大斜視図である。
【図9】実施の形態5にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す図であって、フットフレーム本体側の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
〔実施の形態1〕
図1は、実施の形態1にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す斜視図であって、図1(a)は吊床の下降前、図1(b)は吊床の下降後を示すものであり、図2は、実施の形態1にかかる入浴介護装置の上下動装置の構造を示す斜視図である。本発明の入浴介護装置は、人が寝ころがる吊床部分と、浴槽部分と、吊床部分を吊り下げるフレーム部分と、を備えている。
【0030】
入浴介護装置は、ヘッドフレーム1と、フットフレーム2と、ヘッドフレーム1とフットフレーム2との間に配置された、上半身受け部材23と下半身受け部材24とを有する吊床と、浴槽(図示せず)と、を基本構成要素として構成されている。なお、図1では、図を見易くするために、上半身受け部材23及び下半身受け部材24上に配置されるベッドマットが省略して描かれている。
【0031】
(ヘッドフレーム)
図1に示すように、ヘッドフレーム1は、一対のスタンドフレーム11・11を有している。このスタンドフレーム11・11の足部側及び上部には、スタンドフレーム11・11相互を連結する、足部連結フレーム5及び上部連結フレーム4が設けられている。また、上部連結フレーム4には、ひも状の2つのヘッド側吊下げ部材17・17が、上部連結フレーム4を中心に回転可能な状態で連結されている。図1(a)では、ヘッド側吊下げ部材17・17は、重力によって下方に伸びた状態となっている。
【0032】
また、スタンドフレーム11は、パイプ(例えば、45φmm)で構成されている。また、足部連結フレーム5及び上部連結フレーム4は、スタンドフレーム11よりも小径のパイプ(例えば、20φmm)で構成されている。
【0033】
パイプの材質は特に限定されない。例えば、鉄、アルミニウム、チタン、ステンレス等の各種合金、プラスチックなどが使用できる。パイプ径やサイズも適宜設定すればよい。
【0034】
また、ヘッド側吊り下げ部材17の材料や形状は、吊床を吊り下げるのに十分な強度を有していれば特に限定されるものではない。例えば、化学繊維、天然繊維、金属繊維、ガラス繊維等により構成されたひも状部材を用いることができ、該ひも状部材の表面が防水性のカバー等により覆われていてもよい。ひも状部材の太さは、必要とする強度に応じて適宜設定される。
【0035】
(フットフレーム)
フットフレーム2は、上下動装置3を有しており、下半身受け部材24が、フット側吊下げ部材8、吊下げ連結具8aを介して上下動装置3に接続されて、上下動するように構成されている。なお、ヘッドフレーム1とフットフレーム2とを連結するヘッド−フット連結フレームが、例えば足部連結フレーム5あるいは上部連結フレーム4近傍等に設けられていてもよい。
【0036】
また、上下動装置3は、フットフレーム2に組み込まれており、図2に示すように、フットフレーム2に設けられた内部空洞51と、内部空洞51に設けられたウオームギア機構52とを備えている。ウオームギア機構52は、公知の構成を採用でき、例えば、ねじと、歯車と、モータと、を備える構成とすることができる。
【0037】
例えば、図2に示すように、内部空洞51にはウオームギア機構52のねじが設けられ、このねじの溝に対応させたウオームホイール歯車(図示せず)が設置され、ウオームホイール歯車はモータ(図示せず)で駆動する構成とすることができる。このモータによりウオームホイール歯車を順回転又は逆回転させることにより、フット側吊下げ部材8が上下方向に移動するので、フット側吊下げ部材8に吊下げられた吊床を上下に移動させることができる。
【0038】
また、フット側吊下げ部材8は、吊下げ連結具8aによってフットフレームの上下動機構3から距離Lだけ離隔されている。ここで、上下動機構3からの距離Lを、浴槽の外枠の厚みよりも大きく設定することにより、下半身受け部材24を浴槽内部にまで下降させることが可能となっている。
【0039】
また、吊下げ連結具8aと上下動装置3、フット側吊下げ部材8とフット側吊下げ連結具8aは、それぞれ、屈曲不可能に連結されている。
【0040】
(吊床)
吊床は、上半身受け部材23と、下半身受け部材24と、を有しており、上半身受け部材23と下半身受け部材24とが、ヒンジ28を介して、屈曲可能に連結されている。
【0041】
上半身受け部材23は、上半身側縦枠部材27aと、上半身側横枠部材22aと、上半身側縦枠部材27aと上半身側横枠部材22aとにより構成される枠内に載置された上半身側床部材26aとにより構成されている。また、下半身受け部材24は、下半身側縦枠部材27bと、下半身側横枠部材22bと、下半身側縦枠部材27bと下半身側横枠部材22bとにより構成される枠内に載置された下半身側床部材26bとにより構成されている。
【0042】
ここで、上半身受け部材23の外側端部がヘッド側吊下げ部材17に屈曲可能に連結されている。これに対し、下半身受け部材24の外側端部は、フット側吊下げ部材8と屈曲不可能に連結されている。
【0043】
図3を参照して、吊床の構造を説明する。図3(a)は実施の形態1にかかる入浴介護装置の吊床に柱状マットユニットを敷いた状態を示す平面概念図であり、図3(b)は図3(a)の断面図である。
【0044】
図3に示すように、本実施の形態にかかる入浴介護装置の吊床20は、上半身受け部材23と、下半身受け部材24と、両者の屈曲可能に連結するヒンジ(図3に図示せず)と、備えて構成されている。
【0045】
吊床20の縦枠は、屈曲を可能とするヒンジ28で連結された、上半身側縦枠部材27aと、下半身側縦枠部材27bと、からなり、吊床20の横枠は、上半身側横枠部材22aと、下半身側横枠部材22bと、からなる。また、吊床20の床面には、対向する両縦枠27a・27bの接合部分を結ぶ線を別け目として、2枚の床部材26a・26bが載置されている。
【0046】
床部材26a・26bは、浴槽に浸けて使用されるため、網状、穴あき板状等の、水が上下方向(重力方向)に自由に移動できる構造とすることが好ましい。本実施の形態では、上半身側床部材26aは網状、下半身側床部材26bは孔29が設けられた板状としている。
【0047】
また、図3(a)、(b)に示すように、上半身受け部材23及び下半身受け部材24により構成されるベッド床面には、断面円形(例えば直径100mm)の複数の柱状マットユニット25が、互いに間隔(2〜20cm程度の隙間)を空け、柱状マットユニット25の長さ方向がベッド幅方向に平行に敷かれている。柱状マットユニット25の材質は天然ゴム発泡体である。なお、受け部材ごとに、柱状マットユニット25をベッド長さ方向に平行に敷く構成であってもよく、両者の組み合わせであってもよい。
【0048】
天然ゴム発泡体らなる円柱状マットユニットは、患者の体重が架かると横方向に広がり円柱状マットユニット相互間が略平坦面となるので、その上に寝る患者に凸凹感などの違和感を殆ど与えない。また、円柱状であると、圧縮反発力に強弱変化があるので、患者の僅かな動きにより皮膚へのマッサージ効果が生まれ、これが褥瘡予防効果を発揮する。特に、複数の柱状マットユニットが互いに間隔を空けて敷かれた床面であると、上記皮膚マッサージ効果が都合よく発揮され、かつベッド床面の下方から上方への通気性が向上するため、衛生面と褥瘡予防の面の双方から好ましい。
【0049】
また、柱状マットユニットを互いに間隔を空けて敷かれた床面は、ベッド本体を浴槽に漬けたとき、湯水が柱状マットユニットの隙間を移動できるので都合がよい。また、乾燥しやすくすると共に、汚物が付着しにくくする目的からは、天然ゴム発泡体からなる柱状マットユニットの表面を、撥水性を有する樹脂フィルムなどのフィルムで覆い、または撥水コートするのがよい。また、円柱状マットユニットは取り外しが容易である。
【0050】
上記、柱状マットユニットの材質は、天然ゴム発泡体に限られず、例えばウレタンでもよい。また、天然ゴム等からなるケース内に気体やゲル、液体等が、1種又は複数種充填された構造であってもよい。また、柱状マットユニットの形状は、断面円形に限られず、楕円形、四角形、多角形、台形などであってもよい。また、円形と四角や三角形の柱状マットユニットなどを併用してもよい。また、高さや大きさを違えた柱状マットユニットを併用してもよい。
【0051】
下半身受け部材24とフット側吊下げ部材8との連結方法については、ベッド本体重量とこのベッドを利用する人の体重が合算された重量を安定して支えることができる方法であればよく、特段の制限はない。例えば溶接法やボルトナットでの締結によればよい。
【0052】
この一方、上半身受け部材23とヘッド側吊下げ部材17との連結方法については、ベッド本体重量とこのベッドを利用する人の体重が合算された重量を安定して支えることができ、且つ、ヘッド側吊下げ部材17が回転可能な方法であればよく、特段の制限はない。ヘッド側吊下げ部材17を上半身受け部材23の横枠22aに一周巻きつけた後に溶接する方法を用いることができる。また、ヘッド側吊下げ部材17と、ヘッドフレーム1の上部連結フレーム4との連結方法については、ヘッド側吊下げ部材17を上半身受け部材23と同様にすればよい。
【0053】
(浴槽部分)
次に、浴槽部分について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態1にかかる入浴介護装置の浴槽部分を示す斜視図である。
【0054】
浴槽30は、外枠34を有しており、外枠34の内がわ底部に、吊床を支持する屈曲支持面33が設けられている。また、屈曲支持面33は、下方に屈曲した屈曲部35を備えている。
【0055】
(使用形態)
次に、浴槽に吊床を下降させる場合の動作について、図1、5を用いて説明する。図5は、実施の形態1にかかる入浴介護装置の使用形態を説明する模式図であって、図5(a)は下降前を示す図であり、図5(b)は下降後を示す図である。図5(b)においては、人が使用した形態で示している。
【0056】
上下動装置3が駆動し、フット側吊下げ部材8が下方に下がると、フット側吊下げ部材8に吊り下げられた下半身受け部材24がこれに伴い下方に下がる(図1参照)。
【0057】
下半身受け部材24はフット側吊下げ部材8と、フット側吊下げ部材8は上下動装置3と、それぞれ屈曲不可能な状態で固定されているので、下半身受け部材24の下降が開始すると、下半身受け部材24のフットフレーム側端部と、ヘッド側吊下げ部材17のヘッド側スタンドフレーム11側端部と、の直線距離が増大する。この直線距離の増大を補うように、ヘッド側スタンドフレーム11とヘッド側吊下げ部材17とのなす角度、ヘッド側吊下げ部材17と上半身受け部材23とのなす角度がそれぞれ大きく、上半身受け部材23と下半身受け部材24とのなす角度が小さくなるように変化して、上半身受け部材23及びヘッド側吊下げ部材17が傾斜していく(図1(b)、5(b)参照)。
【0058】
ここで、上半身受け部材23と下半身受け部材24とを有する吊床の下面が屈曲支持面33に接するときには、吊床が屈曲部35を有する屈曲支持面33の形状に一致するように屈曲変形するように構成されている。
【0059】
下降が終了したときには、図5(b)に示すように、傾斜した上半身受け部材23に背中が当接し、下半身受け部材24に臀部が当接するとともに、足を乗せた状態となる。この状態では、上半身受け部材23が角度をもって立ち上がり、頭の位置を腰部などよりも高くすることができるので、頭部のみをお湯の外に出し、頭部以外の身体部分を全てお湯に浸けた状態となる。
【0060】
なお、浴槽30から吊床を引き上げる際には、上記と逆の動作を行えばよい。下半身受け部材24を上昇させると、ヘッド側吊下げ部材17及び上半身受け部材23は、吊床や吊床上の人に作用する重力によって、下降時とは逆向きに変形していく。
【0061】
また、本実施の形態に係る入浴介護装置は、上記で説明した部材以外の部材を設けることができることは勿論であり、例えばヘッドフレームやフットフレームの構造を補強するために、更にフレームを設けるのもよい。また、手すり、照明、可動テーブル等を設けてもよい。
【0062】
〔実施の形態2〕
図6は、本実施例の形態にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す図であって、フットフレーム側の拡大斜視図である。本実施の形態に係る入浴介護装置は、下半身受け部材24の床部材26bが網状であること、及び上下動装置3が組み込まれたフットフレーム2の構造が異なること以外は、上記実施の形態1と同様であり、その説明は省略する。
【0063】
本実施の形態に係る入浴介護装置のフットフレーム2は、一対のスタンドフレーム12・12を有しており、スタンドフレーム12・12には、それぞれ、レール溝16が形成されている。このレール溝16に、スタンド連結フレーム62が嵌入され、レール溝16に沿ってスタンド連結フレーム62が上下方向に滑動できるようになっている。スタンド連結フレーム62と上下可動フレーム部材63とはその交差部で連結固定されており、上下可動フレーム部材63の下端は足部連結フレーム5により固定され支持されている。
【0064】
上下可動フレーム部材63の上方には、上下可動フレーム部材63の揺れ動きを防止する補強部材として、上下可動フレーム部材63の上下動を障害しない軸受け(滑り対偶軸受け)を備えた上部連結フレーム4が設けられている。補強部材としての上部連結フレーム4としては、例えば図6に示すように、中央部分に半円形のアール部が形成された上部連結フレーム本体4aと、このアール部に対応する半円形のアール部を有する止め部材4bとで、上下可動フレーム部材63の軸を挟む方式を採用すればよい。なお、スタンドフレームのレール溝は例えばパイプ内側にレール溝部材を溶着することにより形成することができる。
【0065】
フットフレーム2の2つのスタンドフレーム12・12は、下半身受け部材24を有する吊床をベッド設置面から浮かせた状態で支える脚となる部分である。
【0066】
この構造であると、上下可動フレーム部材63が下方に縮むと、上下可動フレーム部材63の短縮に応じてスタンド連結フレーム62が下方に下がり、これと共に吊下げ部材8及び吊床の下半身受け部材24が下方に持ち下がる。この際、スタンド連結フレーム62両端の滑り部がレール溝16に嵌入されたスタンド連結フレーム62が上下可動フレーム部材63の上下動軌跡を安定化させる。よって、ベッド本体が無用に動揺することがない。
【0067】
すなわち、本実施の形態では、スタンド連結フレーム62と、上下可動フレーム部材63と、溝16と、が上下動装置を構成する。
【0068】
この下半身受け部材24の下降により、下半身受け部材24のフットフレーム側端部と、ヘッド側吊下げ部材のヘッド側スタンドフレーム側端部と、の直線距離が増大するが、実施の形態1と同様に、直線距離の増大を補うように、ヘッド側スタンドフレームとヘッド側吊下げ部材とのなす角度、ヘッド側吊下げ部材と上半身受け部材とのなす角度がそれぞれ大きく、上半身受け部材と下半身受け部材24とのなす角度が小さくなるように変化し、上半身受け部材及びヘッド側吊下げ部材が傾斜する。
【0069】
なお、この構造では、上下可動フレーム部材63はスタンド連結フレーム62により支持されているので、上部連結フレーム4は必須の部材ではない。
【0070】
また、本実施の形態のスタンドフレーム12・12、上部連結フレーム4、足部連結フレーム5は、上記実施の形態1と同様にすればよい。
【0071】
〔実施の形態3〕
図7は、実施の形態3にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す図であって、フットフレーム側の拡大斜視図である。本実施の形態に係る入浴介護装置の上下動装置は、U字状の大径のパイプ(45φmm、外幅1200mm、直線部の長さ1100mm)からなるスタンドフレーム12に、円柱状の小径パイプ(42φmm、長さ900mm)からなる足部13を摺動可能に嵌め合わせた構造であり、上下可動フレーム部材73の動作によってフット側吊下げ部材8を上下動させる構造を採用している。また、足部連結フレーム5近傍に、ヘッド−フット連結フレーム18が設けられている。この構造によっても、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0072】
〔実施の形態4〕
図8は、実施の形態4にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す図であって、フットフレーム本体側の拡大斜視図である。本実施の形態は、上記実施の形態2とは、上下可動フレーム部材の構造が異なる。実施の形態4で用いる上下可動フレーム部材83は、その上方を正逆回転させると、上下可動フレーム部材83の主軸83aが伸び縮みするようになっている。
【0073】
実施の形態4における上下可動フレーム部材83は、上下可動フレーム部材の主軸83aの下方が受け軸83bに螺合されており、主軸83aを正逆回転させると、主軸83aが前進し、または主軸83aが受け軸83bの中に進入する構造になっている。これにより、上下可動フレーム部材83の全長が伸長または短縮する。
【0074】
本実施の形態においては、主軸83aの回転を手動としてもよいが、好ましくはモータ駆動させる。
【0075】
〔実施の形態5〕
図9は、実施の形態5にかかる入浴介護装置の浴槽部分以外の構造を示す図であって、フットフレーム本体側の拡大斜視図である。本実施の形態は、下半身受け部材24を有する吊床の幅方向への傾斜を制御する傾斜制御部材15が、吊下げ部材8の肩部にピンを用いたヒンジ9を介して取り付けられていること以外は、上記実施の形態3と同様である。ここで、ヒンジ9を用いたのは、吊下げ部材8の回動を円滑に行わせるためである。また、傾斜制御部材15は、吊下げ部材8の両肩部にピンを用いたヒンジ9を介して取り付ける構造であってもよい。
【0076】
この構成では、吊床をベッド幅方向(寝ている人の左右方向)に傾斜させることができるので、患者の体位変えの介助が容易となる。また、入浴介護装置の吊床に寝ている人を他のベッドに移し替えるときには、本件吊床を他のベッド側に傾ければよく、これにより寝たままの人を容易に他のベッドに移動させることができる。
【0077】
ヘッドフレーム側では、次のような機構により、吊床をベッド幅方向に傾斜させる。ひも状のヘッド側吊下げ部材の数を1つとし、ひも状のヘッド側吊下げ部材と上半身受け部材とを、ユニバーサルジョイントにより連結するとともに、ヘッド側の2つのスタンドフレームのそれぞれに、上半身受け部材側に伸びた、上下動可能な支持部材を設ける。支持部材の一方を上方向、他方を下方向に移動させることにより、支持部材に保持された吊床(上半身受け部材)がベッド幅方向に傾斜する。
【0078】
また、この構成の入浴介護装置は、ベッドそのものとしても利用できるが、本件入浴介護装置の吊床をベッドとして利用する場合には、吊床を定期的に左右に傾けるという使い方ができる。これにより、体位の変換を促すことができ、褥瘡を予防する効果が得られる。
【0079】
また、傾斜制御部材15に、幅方向の傾斜角度を制御する機能に加えて、それ自身に幅方向への傾斜を駆動する駆動装置としての機能を持たせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上で説明したように、本発明は下半身受け部材と上半身受け部材とを有する吊床を吊下げ、フットフレーム側に連結された下半身受け部材のみを上下動させ、下半身受け部材の上下動に付随して上半身受け部材を傾斜させる構造を採用した。この構造であると、吊床の上下動や上半身受け部材の傾斜を簡単でコンパクトな駆動機構でもって実現することができる。また、ヘッド本体の下側に浴槽を配置することにより、寝たきり患者を寝たままで簡便に入浴させることができる入浴介護装置を廉価で提供することができる。よって、その産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0081】
1 ヘッドフレーム
2 フットフレーム
3 上下動装置
4 上部連結フレーム
4a 上部連結フレーム本体
4b 止め部材
5 足部連結フレーム
8 フット側吊下げ部材
8a 吊下げ連結具
9 ヒンジ
11 ヘッド側スタンドフレーム
12 フット側スタンドフレーム
15 傾斜制御部材
16 レール溝
17 ヘッド側吊下げ部材
18 ヘッド−フット連結フレーム
20 吊床
22a 上半身側横枠部材
22b 下半身側横枠部材
23 上半身受け部材
24 下半身受け部材
25 柱状マットユニット
26a 上半身側床部材
26b 下半身側床部材
27a 上半身側縦枠部材
27b 下半身側縦枠部材
28 ヒンジ
29 孔
30 浴槽
33 屈曲支持面
34 外枠
35 浴槽屈曲部
51 空洞
52 ウオームギア機構
62 スタンド連結フレーム
63 上下可動フレーム部材
63a 油圧シリンダ
80 湯水
82 スタンド連結フレーム
73 上下可動フレーム部材
83 上下可動フレーム部材
93 上下可動フレーム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フットフレームと、
ヘッドフレームと、
前記フットフレームに組み込まれた上下動装置と、
前記上下動装置に連結されたフット側吊下げ部材と、
前記ヘッドフレームに連結されたヘッド側吊下げ部材と、
上半身受け部材及び前記上半身受け部に連結された下半身受け部材を有し、前記上半身受け部材と前記下半身受け部材とが前記連結部位で屈曲可能に構成され、前記両受け部材の対向する一対の外側端部が前記フット側吊部材および前記ヘッド側吊下げ部材にそれぞれ連結された吊床と、
前記吊床の下側に配置され、前記吊床が下降したときに、前記吊床を収容する浴槽と、
を備え、
前記フット側吊下げ部材を介して前記上下動装置により前記下半身受け部材が下降せられたとき、前記フットフレーム側の下半身受け部材端部と、前記ヘッドフレーム側のヘッド側吊下げ部材端部との間の直線距離が増加し、
前記ヘッド側吊下げ部材及び前記上半身受け部材が、前記距離の増加が小さくなる方向に傾斜する、入浴介護装置。
【請求項2】
請求項1に記載の入浴介護装置において、
前記下半身受け部材と、前記上半身受け部材とが、ヒンジを介して屈曲可能に連結されている、
ことを特徴とする入浴介護装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の入浴介護装置において、
前記ヘッド側吊下げ部材は、ひも状部材である、
ことを特徴とする入浴介護装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の入浴介護装置において、
前記吊床の幅方向に、柱状ユニットマットが複数配列されている、
ことを特徴とする入浴介護装置。
【請求項5】
請求項4に記載の入浴介護装置において、
前記吊床は、幅方向に多段階又は無段階に傾斜可能に保持されている、
ことを特徴とする入浴介護装置。
【請求項6】
請求項5に記載の入浴介護装置において、
前記入浴介護装置は、前記吊床の幅方向の傾斜角度を制御する傾斜制御部材をさらに備える、
ことを特徴とする入浴介護装置。
【請求項7】
請求項6に記載の入浴介護装置において、
前記浴槽の内がわ底部には、前記吊床が降下したときに、屈曲した状態の前記吊床を下方から支持する屈曲支持面が設けられている、
ことを特徴とする入浴介護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−43014(P2013−43014A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184060(P2011−184060)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(511173745)
【Fターム(参考)】