説明

入退室検知センサ及び入退室検知方法

【課題】設置に係る手間やコストを抑えつつ、管理空間への進入又は退出を検知することが可能な入退室検知センサ及び入退室検知方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の入退室検知センサ10は、管理空間101と容器内空間34との気圧差に起因した伝播時間、流速、音速又は気温の変化に基づき、管理空間101への進入又は管理空間101からの退出を検知するから、管理対象部屋100の複数の出入口105からの進入又は退出を、1つの入退室検知センサ10で検知することができる。従って、従来のように管理空間の各所に複数の入退室検知センサを設置した場合に比べて、設置に係る手間やコストを抑えることができる。窓102やドア103から離れた位置に設置しても管理空間101への進入又は退出を検知できるから、従来の振動検知方式や接点方式の入退室検知センサに比べて設置場所の自由度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理空間への進入又は管理空間からの退出を検知する入退室検知センサ及び入退室検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の入退室検知センサとしては、窓やドアの振動を検知する振動検知方式のもの、窓と窓枠との間に備えたマグネットスイッチにより窓の開閉を検知する接点方式のもの、被検知体からの熱線を検知する熱線検知方式のもの、被検知体へ超音波を送波してその反射波を受波する超音波方式のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−106495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述した従来の入退室検知センサのうち、振動検知方式や接点方式のものは、入退室検知センサが設置されている窓やドアからの進入又は退出しか検知できない。また、熱線検知方式や超音波方式のものは、検知範囲が熱線検知センサや超音波センサの向いた方向に限定される。このため、管理空間への進入や退出を確実に検知するには、管理空間内の各所に複数の入退室検知センサを設置しなければならず、手間やコストがかかるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、設置に係る手間やコストを抑えつつ、管理空間への進入又は退出を確実に検知することが可能な入退室検知センサ及び入退室検知方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る入退室検知センサは、全ての出入口を閉じた状態で管理される管理対象部屋に設置可能な入退室検知センサにおいて、管理対象部屋の内側の管理空間と、その管理空間から区画された隔離空間との間を常時連絡し、管理空間と隔離空間との気圧差に応じて空気が流れる空気通過路を有した空間連絡部材と、空気通過路を通過する空気の流れに応じた検出信号を出力する流体検出手段と、流体検出手段の出力結果に応じて、出入口から管理空間内への進入又は管理空間内からの退出を検知するところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の入退室検知センサにおいて、流体検出手段は、空気通過路の少なくとも一部を挟んでその空気通過路の軸方向で対向した1対の超音波センサであるところに特徴を有する。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の入退室検知センサにおいて、一方の超音波センサを、空気通過路のうち管理空間に臨んだ開放口に対して間隔を開けた対向位置に保持するセンサ保持部を設け、開放口と一方の超音波センサとの間に管理空間内の空気を流動可能としたところに特徴を有する。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の入退室検知センサにおいて、空間連絡部材は、内側が空気通過路になった管構造をなし、センサ保持部は、空間連絡部材の一端から空気通過路の軸方向に沿って延びた先端に一方の超音波センサを保持した複数のセンサ保持アームで構成されたところに特徴を有する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1に記載の入退室検知センサにおいて、流体検出手段は、空気通過路を通過する空気の流体抵抗によって作動する可動部材と、可動部材の作動を電気信号に変換して出力する出力回路とからなるところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の入退室検知センサにおいて、空間連絡部材の一端に取り付けられて内側に隔離空間を有し、空気通過路との連絡部分以外が閉塞されたところに特徴を有する。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の入退室検知センサにおいて、空気通過路の一端には、管理対象部屋の内壁に管理空間側から差し込むことが可能な内壁連絡部が備えられ、内壁とその外側の外壁との間を隔離空間として空気通過路の一端を連絡可能としたところに特徴を有する。
【0012】
請求項8の発明に係る入退室検知方法は、全ての出入口を閉じた状態で管理される管理対象部屋への進入又は管理対象部屋からの退出を検知する入退室検知方法であって、管理対象部屋の内側の管理空間とその管理空間から区画された隔離空間との間を常時連絡した空気通過路を通過する空気の流れによって、出入口から管理対象部屋への進入又は管理対象部屋からの退出を検知するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1,5及び8の発明]
上記のように構成した請求項1及び8に係る発明によれば、出入口が開放されて管理対象部屋の内側の管理空間が管理対象部屋の外側と通じると、管理空間の気圧が変化して管理空間と隔離空間との間に気圧差が生じる。そして、管理空間と隔離空間との気圧が平衡状態になるまでの間に、空気が空気通過路を通って管理空間と隔離空間との間を出入りする。このとき、流体検出手段が空気通過路を通過する空気の流れに応じた検出信号を出力し、その出力結果に応じて、出入口から管理空間への進入又は管理空間からの退出を検知する。
【0014】
このように、本発明によれば、管理空間と隔離空間との気圧差に起因した検出信号により進入又は退出を検知するから、管理対象部屋の複数の出入口からの進入又は退出を1つの入退室検知センサで検知することができる。これにより、従来のように管理空間の各所に複数の入退室検知センサを設置した場合に比較して、設置に係る手間やコストを抑えることができる。また、本発明の入退室検知センサは、管理空間内であれば窓やドアから離れた位置に設置しても進入又は退出を検知できるから、従来の振動検知方式や接点方式の入退室検知センサに比べて設置場所の自由度が向上する。ここで、流体検出手段は、流体抵抗によって作動する可動部材の作動を出力回路で電気信号に変換して出力するように構成してもよい(請求項5の発明)。
【0015】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、空気通過路における空気の流速変化を、1対の超音波センサ間で超音波を送受波したときの伝播時間の変化として検出することができる。また、管理空間の気温変化を超音波の伝播時間又は伝播時間から算出される音速の変化として検出することができる。
【0016】
[請求項3の発明]
請求項3のように、空気通過路のうち管理空間に臨んだ開放口と、一方の超音波センサとの間に管理空間の空気が流動可能な構成にすると、管理空間の気温変化を超音波の伝播時間又は音速の変化として確実に検出可能となる。
【0017】
[請求項4の発明]
請求項4によれば、空気通過路の開放口と一方の超音波センサとの間の距離のばらつきが抑えられる。
【0018】
[請求項6の発明]
請求項6の発明によれば、管理対象部屋に隔離空間を別途設ける手間が省ける。
【0019】
[請求項7の発明]
請求項7の発明によれば、管理対象部屋の内壁と外壁との間を隔離空間として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1には、本発明に係る管理対象部屋100が示されている。管理対象部屋100は、建築物(例えば、ビルディング、一戸建て住宅、倉庫等)内の一室である。管理対象部屋100は、周囲を壁部によって囲まれており、それら壁部には、例えば、人が出入り可能な出入口105が複数設けられている。これら出入口105には、それぞれ窓102又はドア103が嵌め込まれており、それら窓102及びドア103を閉めることで管理対象部屋100の内側の管理空間101が外部(例えば、屋外)と隔離されるようになっている。この管理空間101に、本発明の入退室検知センサ10が設置されている。
【0021】
図2に示すように、入退室検知センサ10は、例えば専用のホルダー30によって管理対象部屋100の内壁面に固定されている。入退室検知センサ10は、両端開放の円筒構造をなし内部を空気が通過可能な筒形ボディ11と、その筒形ボディ11の両端部に保持されて、筒形ボディ11の軸方向(図2の上下方向)で対向配置された1対の超音波センサ20,20とを備える。
【0022】
図3に示すように、超音波センサ20は全体として扁平な円柱構造をなしている。超音波センサ20の後端部は側方に張り出してフランジ22を形成している。一方、超音波センサ20の前端部は前端面に向かって縮径した円錐台形状をなし、その前端面が超音波の送受波面21となっている。
【0023】
筒形ボディ11は、内側に計測流路12aを有する計測管部12と、計測管部12の下端部に一体形成されて内側に一方の超音波センサ20が収容保持されたセンサ収容部13とから構成される。計測流路12aの内径は、例えば、4[mm]となっており、センサ収容部13の内径は、計測流路12aの内径よりも大径となっている。また、図2に示すように、計測管部12の両開口縁は丸みを帯びるように面取りされている。
【0024】
筒形ボディ11のうち、管理空間101側に開放した端部からは、複数のセンサ保持アーム14,14が延設されている。センサ保持アーム14は、筒形ボディ11の周方向に例えば、互いに90度の間隔を開けて4つ設けられている。なお、図2及び図3には、筒形ボディ11の径方向で対向した2つのセンサ保持アーム14,14のみが示されている。
【0025】
詳細には、センサ保持アーム14は、筒形ボディ11(計測管部12)の周面から起立した壁体の外寄り部分を、計測管部12(計測流路12a)のうち管理空間101に臨んだ開放口12bから離れるように筒形ボディ11の軸方向(図2の上方向)に延ばした構造をなし、先端部にそれぞれ係止溝14aが形成されている。これら係止溝14aに超音波センサ20のフランジ22が係止されており、4つのセンサ保持アーム14が協働して1つの超音波センサ20を保持している。これにより、超音波センサ20が計測管部12の開放口12bに対して所定の距離だけ離した対向位置に保持されている。
【0026】
一方、センサ収容部13の内周面には、複数のセンサ保持片15が形成されている。センサ保持片15は、センサ収容部13の周方向に例えば、互いに90度の間隔を開けて4つ設けられている(図2及び図3には、径方向で対向した2つのセンサ保持片15,15だけが示されている)。センサ保持片15の先端部には、それぞれ係止溝15aが形成されている。これら係止溝15aに超音波センサ20のフランジ22が係止されており、4つのセンサ保持片15が協働して1つの超音波センサ20を保持している。これにより、超音波センサ20が、計測管部12のうち管理空間101に臨んだ開放口12bとは反対側の開放口12cに対して僅かに離した対向位置に保持されている。以下、超音波センサ20,20を区別する場合には、適宜、センサ保持アーム14に保持された方(管理空間101側)を「超音波センサ20A」といい、センサ保持片15に保持された方を「超音波センサ20B」という。
【0027】
ここで、1対の超音波センサ20,20間の距離は、例えば0.1[m]となっている。また、超音波センサ20Aは、超音波センサ20Bよりも、計測管部12から離して配置されており、超音波センサ20Aと計測管部12との間では管理空間101の空気が流動可能になっている。
【0028】
なお、超音波センサ20,20を筒形ボディ11に一体形成されたセンサ保持アーム14及びセンサ保持片15に保持させたことで、超音波センサ20,20間の距離及び、各超音波センサ20,20と計測管部12の開放口12b,12cとの間の距離のばらつきが抑えられ、製品間の性能のばらつきを抑えることができる。
【0029】
筒形ボディ11のうちセンサ収容部13には連結管31が接続されている。連結管31は漏斗構造をなしており、上部開口縁には全周に亘って段差部32が形成されている。この段差部32にセンサ収容部13の外周面が嵌合しかつ端面が突き当てられている。なお、本実施形態では、筒形ボディ11と連結管31とで本発明の「空間連絡部材」が構成されている。また、互いに連通した筒形ボディ11と連結管31の内部空間が本発明の「空気通過路」に相当する。
【0030】
連結管31の下端部にはバッファ容器33が接続されている。バッファ容器33は中空の箱形構造をなしており、その内側の容器内空間34(本発明の「隔離空間」に相当する)が、バッファ容器33を構成する壁部により管理空間101と隔離されている。また、バッファ容器33の上壁部には、取付孔33aが貫通形成されており、ここに連結管31の下端部が挿入されて嵌合固定されている。これにより、管理空間101と容器内空間34とが、筒形ボディ11及び連結管31の内部空間を介して連絡されている。ここでバッファ容器33は、気圧変化によって変形することのない材料(例えば、プラスチックや金属)で形成されており、容器内空間34の容積は、例えば、1[L](10−3[m])となっている。
【0031】
ところで、超音波センサ20,20は、図4に示すように電線35によって制御ユニット40に接続されている。超音波センサ20,20は、制御ユニット40に備えたコントロール部41からの送受切替信号によって制御され、一方が送波器になると他方が受波器になり、所定のタイミングでそれら送波器と受波器とが切り替えられる。そして、受波器としての超音波センサ20,20の検出信号が図示しない増幅回路を介してクロックカウンタ42に取り込まれている。
【0032】
クロックカウンタ42は、一方の超音波センサ20Aから発信した超音波を他方の超音波センサ20Bで受信する迄の時間(以下、適宜、「順方向伝播時間S1」という)と、他方の超音波センサ20Bから発信した超音波を一方の超音波センサ20Aで受信する迄の時間(以下、適宜、「逆方向伝播時間S2」という)とをカウントする。本実施形態のクロックカウンタ42の周波数は、例えば、1GHzである。つまり、クロックカウンタ42の検出精度は1[ナノ秒]である。
【0033】
クロックカウンタ42によって計測された超音波の順方向伝播時間S1及び逆方向伝播時間S2は、逐一メモリ43に記憶されると共に、演算処理部44に送信される。演算処理部44は、順・逆両方向の伝播時間S1,S2に基づいて、筒形ボディ11内を通過した空気の流速V、超音波の音速C、さらには気温Tを演算する。ここで、超音波センサ20,20の間の距離をLとした場合、流速V、音速C、気温Tは、以下の演算式によって求められる。
【0034】
V=(L/2)・(1/S1−1/S2)・・・・・(1)
【0035】
C=(L/2)・(1/S1+1/S2)・・・・・(2)
【0036】
T=(C−331.5)/0.6 ・・・・・(3)
【0037】
上記演算式により算出された流速V、音速C及び気温Tも、逐一メモリ43に記憶される。さらに演算処理部44では、新たにメモリ43に記憶された各データ(伝播時間S1,S2,流速V、音速C、気温T)と、それより以前に記憶された各データとを比較することで管理空間101への入退室の有無を判定し信号を出力する。
【0038】
制御ユニット40には、通信用のモデム(例えば、「T−NCU」)が内蔵された通信処理部45が備えられており、演算処理部44からの信号は、通信処理部45を通して例えば、警備会社の監視センターに送信されると共に、警報装置46(例えば、ブザー、ランプ)に送信される。なお、制御ユニット40は、管理空間101内に設置してもよいし、管理対象部屋100の外部に設置してもよい。
【0039】
本発明の入退室検知センサ10の構造は以上であって、以下動作を説明する。
入退室検知センサ10は、例えば、管理対象部屋100の全ての窓102及びドア103が閉められかつ、管理空間101から全ての人が退出した状態で起動される。すると、管理空間101とバッファ容器33の容器内空間34とが平衡状態となる所定の待機時間経過後に、超音波の送信が開始され、順・逆両方向の伝播時間S1,S2が計測される。そして、計測された各伝播時間S1,S2が逐一メモリ43に記憶されると共に、伝播時間S1,S2と上記関係式(1)〜(3)により、流速V、音速C、気温Tが算出され、これらもメモリ43に記憶される。そして、演算処理部44は、新たにメモリ43に記憶された各データと、過去に記憶された各データとを比較し、単位時間(例えば1秒)当たりの変化量が予め設定された基準範囲内か否かを判定する。
【0040】
ここで、全ての窓102及びドア103が閉鎖状態(図1の状態)に保持されている場合には、管理空間101内の気圧と容器内空間34の気圧も平衡状態に保持されるから、計測流路12aの内部で急激な空気の流れは起きない。また、管理空間101の気温も急激に変化することはない。従って、超音波センサ20,20間における伝播時間S1,S2の単位時間当たりの変化量は、ほぼ「0」となる。
【0041】
さて、図5に示すように、管理対象部屋100の何れかの窓102又はドア103が外部から不正に開かれ、その開放された出入口105によって管理空間101と管理対象部屋100の外部(例えば、屋外)とが通じると、外気の影響により管理空間101の気圧が変化し、管理空間101とバッファ容器33の容器内空間34との間に気圧差が生じる。
【0042】
すると、管理空間101と容器内空間34の気圧が再び平衡状態となるまでの間に、管理空間101と容器内空間34との間で空気の出入りが起こり、計測流路12a内に空気の流れが生じる。これにより、超音波センサ20,20間における超音波の伝播時間S1,S2及び流速Vの演算値が変化する。また、外気の影響で管理空間101の気温が変化し、その空気が超音波センサ20Aと計測管部12との間に流れ込むと音速C及び気温Tの演算値も変化する。
【0043】
そして各データ(伝播時間S1,S2,流速V、音速C及び気温T)の単位時間当たりの変化量が、予め設定された基準範囲を超えたと判定された場合には、管理空間101への不正な入退室有りとして、演算処理部44から信号が出力され、警報装置46が警報を発すると共に、監視センターに異常が通報される。
【0044】
より具体的に説明すると以下のようである。窓102又はドア103が開かれて出入口105が開放することにより、0.1秒間で10[Pa]という急激な気圧変化が起きたとすると、その0.1秒間に管理空間101と容器内空間34との間で10−7[m]の空気の出入りが起きる。このとき、内径4[mm]の計測流路12aを通過する空気の流速は、約7.95×10−2[m/秒]となる。また、超音波センサ20,20間の距離は0.1[m]なので、音速を340[m/秒]とすると、出入口105が開放する前の状態を基準とした伝播時間の変化量は次式の通り、
(7.95×10−2/340)×(0.1/340)≒7.0×10−8[秒]
即ち、約70[ナノ秒]となる。また、音速は0.1度C当たり0.06[m/秒]変化するので、出入口105が開放することで管理空間101の気温が0.1度C変化した場合には、出入口105が開放する前の状態を基準とした伝播時間の変化量は次式の通り、
(0.06/340)×(0.1/340)≒5.0×10−8[秒]
即ち、約50[ナノ秒]となる。
【0045】
なお大気圧は、通常時で約1000Pa程度、台風時で約5000Pa程度変化するが、これらは数時間単位での変化であり、上述したような0.1秒間で10[Pa]も変動するような急激なものではないから、大気圧の変化を出入口105が開放されたことによる気圧変化として誤検出する可能性は低い。また、季節や気候にもよるが、管理空間101と屋外の気温差は最大でも20度位なので、出入口105が全て閉じた状態では、管理空間101の気温が急激に変化することもない。従って、閉じた状態の管理空間101における気温変化を出入口105が開放されたことによる気温変化として誤検出する可能性も低い。
【0046】
このように、本実施形態によれば、管理空間101と容器内空間34との気圧差に起因した伝播時間、流速、音速又は気温の変化に基づき、管理空間101への進入又は管理空間101からの退出を検知するから、複数の出入口105からの進入又は退出を、1つの入退室検知センサ10で検知することができる。従って、従来のように管理空間の各所に複数の入退室検知センサを設置した場合に比べて、設置に係る手間やコストを抑えることができる。また、本実施形態の入退室検知センサ10は、窓102やドア103から離れた位置に設置しても管理空間101への進入又は退出を検知できるから、従来の振動検知方式や接点方式の入退室検知センサに比べて設置場所の自由度が向上する。また、超音波センサ20Aと計測流路12aの開放口12bとの間に空間を設けて、ここに管理空間101の空気が流動するようにしたから、管理空間101の気温変化やそれに伴う音速の変化をより確実に検出することができる。
【0047】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0048】
(1)上記実施形態では、筒形ボディ11をバッファ容器33に接続していたが、図6に示すように管理対象部屋100を構成する壁部の内壁110と外壁111との間に壁内空間112がある場合には、以下のようにしてもよい。即ち、連結管31の下端部に、前記バッファ容器33の代わりに「L」字形に屈曲したチューブ36(本発明の「内壁連絡部」に相当する)を接続し、そのチューブ36の他端部を内壁110に貫通形成された取付孔113に差し込んで、筒形ボディ11の内部空間と壁内空間112とを連絡させてもよい。このようにすれば、壁内空間112を本発明の「隔離空間」として利用することができる。本実施形態によっても上記実施形態と同等の効果を奏する。
【0049】
(2)上記実施形態では、超音波センサ20,20間で双方向で超音波を送受波していたが、一方向でのみ送受波してもよい。例えば、送信側の超音波センサ20A(20B)から送信された超音波が受信側の超音波センサ20B(20A)で受信されると同時に、再び送信側の超音波センサ20A(20B)から超音波を送信することを繰り返し、単位時間当たりに送信側の超音波センサ20A(20B)が超音波を送信する回数をモニターして、その変化を検出するようにしてもよい。また、超音波の伝播時間S1(S2)を毎回計時してその変化をモニターしてもよい。
【0050】
(3)上記実施形態では、1対の超音波センサ20,20を用いて流速変化と気温変化とを検出していたが、流速変化を検出するために1対の超音波センサを用い、気温変化を検出するために別の1対の超音波センサを用いてもよい。ここで、流速変化を検出するための構成としては、上記一実施形態に記載の構成(1対の超音波センサ20,20の間に計測流路12aを設け、計測流路12aの一端が管理空間101に開放し、他端が容器内空間34に連通した構成)とすればよい。また、温度変化を検出するための構成としては、例えば、管理対象部屋100の互いに対向した壁部にそれぞれ超音波センサ20,20を1つずつ設置して、管理空間101を横切って超音波が送受波されるようにすればよい。
【0051】
(4)入退室検知センサは、超音波センサ20,20に換えて以下のような構造を備えていてもよい。即ち、管理空間101と容器内空間34又は壁内空間112とを連通した筒形ボディ11の流路に、風圧を受けて回転可能な風車(本発明の「可動部材」に相当する)を設けておき、その風車の回転を回転検出回路(本発明の「出力回路」に相当する)で検出し電気信号にして制御ユニット40に出力するようにしてもよい。
【0052】
(5)超音波の伝播時間S1,S2をクロックカウンタ42以外の計時手段で計測してもよい。
【0053】
(6)入退室検知センサ10は、例えば、管理対象部屋100の天井面に設置してもよい。
【0054】
(7)入退室検知センサ10は、超音波センサ20,20が鉛直方向で対向するように縦向きに設置してもよいし、鉛直方向に対して斜めに交差するように傾けて設置してもよいし、水平方向で対向するように横向きに設置してもよい。
【0055】
(8)入退室検知センサ10は、管理空間101への不正な入退室を検知する防犯目的としてだけでなく、管理空間101に居る人の安否確認に利用することができる。
【0056】
(9)上記実施形態では、連結管31とバッファ容器33とを別部品としていたが、これらを一体形成してもよい。
【0057】
(10)入退室検知センサ10は、建築物に設けられた管理空間101だけでなく、例えば、自動車の車内空間に設置して車内への進入を検知させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る管理対象部屋の平断面図
【図2】入退室検知センサの側断面図
【図3】筒形ボディ及び接続管の側断面図
【図4】制御ユニットのブロック図
【図5】出入口が開放した状態の管理対象部屋の平断面図
【図6】他の実施形態(1)に係る入退室検知センサの側断面図
【符号の説明】
【0059】
10 入退室検知センサ
11 筒形ボディ(空間連絡部材)
12b 開放口
14 センサ保持アーム
20 超音波センサ
31 連結管(空間連絡部材)
33 バッファ容器
34 容器内空間(隔離空間)
36 チューブ(内壁連絡部)
100 管理対象部屋
101 管理空間
105 出入口
110 内壁
111 外壁
112 壁内空間(隔離空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ての出入口を閉じた状態で管理される管理対象部屋に設置可能な入退室検知センサにおいて、
前記管理対象部屋の内側の管理空間と、その管理空間から区画された隔離空間との間を常時連絡し、前記管理空間と前記隔離空間との気圧差に応じて空気が流れる空気通過路を有した空間連絡部材と、
前記空気通過路を通過する空気の流れに応じた検出信号を出力する流体検出手段と、
前記流体検出手段の出力結果に応じて、前記出入口から前記管理空間内への進入又は前記管理空間からの退出を検知することを特徴とする入退室検知センサ。
【請求項2】
前記流体検出手段は、前記空気通過路の少なくとも一部を挟んでその空気通過路の軸方向で対向した1対の超音波センサであることを特徴とする請求項1に記載の入退室検知センサ。
【請求項3】
一方の前記超音波センサを、前記空気通過路のうち前記管理空間に臨んだ開放口に対して間隔を開けた対向位置に保持するセンサ保持部を設け、前記開放口と前記一方の超音波センサとの間に前記管理空間内の空気を流動可能としたことを特徴とする請求項2に記載の入退室検知センサ。
【請求項4】
前記空間連絡部材は、内側が前記空気通過路になった管構造をなし、
前記センサ保持部は、前記空間連絡部材の一端から前記空気通過路の軸方向に沿って延びた先端に前記一方の超音波センサを保持した複数のセンサ保持アームで構成されたことを特徴とする請求項3に記載の入退室検知センサ。
【請求項5】
前記流体検出手段は、前記空気通過路を通過する空気の流体抵抗によって作動する可動部材と、
前記可動部材の作動を電気信号に変換して出力する出力回路とからなることを特徴とする請求項1に記載の入退室検知センサ。
【請求項6】
前記空間連絡部材の一端に取り付けられて内側に前記隔離空間を有し、前記空気通過路との連絡部分以外が閉塞されたバッファ容器を設けことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の入退室検知センサ。
【請求項7】
前記空気通過路の一端には、前記管理対象部屋の内壁に前記管理空間側から差し込むことが可能な内壁連絡部が備えられ、前記内壁とその外側の外壁との間を前記隔離空間として前記空気通過路の一端を連絡可能としたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の入退室検知センサ。
【請求項8】
全ての出入口を閉じた状態で管理される管理対象部屋への進入又は前記管理対象部屋からの退出を検知する入退室検知方法であって、
前記管理対象部屋の内側の管理空間とその管理空間から区画された隔離空間との間を常時連絡した空気通過路を通過する空気の流れによって、前記出入口から前記管理対象部屋への進入又は前記管理対象部屋からの退出を検知することを特徴とする入退室検知方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−219592(P2007−219592A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36227(P2006−36227)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】