説明

入退室管理システム

【課題】扉の旋解錠に係る機器の故障に結びつく特性の変化を検出して異常の予測を行う入退室管理システムを提供する。
【解決手段】入退室管理システムは、入退室が管理される区画の出入口を開閉する扉(1)を旋解錠する電気錠(2)が電気錠制御盤(4)により制御される入退室管理システムにおいて、上記扉が閉まったとき扉閉信号が発信され、上記電気錠の旋錠が完了したとき施錠信号が発信され、上記電気錠制御盤は、上記扉が閉められる度に、上記扉閉信号を受信した時点から上記旋錠信号を受信する時点までを計時して旋錠時間を求める施錠時間計測手段(12)と、所定の回数に亘る上記施錠時間の平均値を求める平均値算出手段(13)と、上記平均値が予め設定された閾値を超えるとき施解錠に係わる部分の異常を予測する異常予測手段(14)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビルやその各部屋への出入りが扉を旋解錠する電気錠を制御することにより管理される入退室管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マンションなどのビルでは入退室を管理するために、扉に設置された電気錠を電気的に旋解錠する入退室管理システムが普及している。そして、電気錠の内部機構の駆動部分の異常を自動的に判別し、故障内容に応じて、その内容を表示、報知することができ、電気錠の動作異常を検出する自己診断機能を有する電気錠システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−97107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電気錠の動作異常を検出し電気錠を新しいものに交換しても、扉の建て付けが悪い場合には、交換した電気錠が正常に動作せず、依然として旋解錠ができないという問題がある。このようなとき、扉の施解錠ができなくなるため、本来入退室が管理されてセキュリティが確保されている区画のセキュリティが低下するという問題が起こる。
また、システム全体で見ると扉閉を確認してから旋錠を開始するまでの時間を設定するためのノウハウが少ないときには、設定に要する時間が長引くという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、扉の旋解錠に係る機器の故障に結びつく特性の変化を検出して異常の予測を行う入退室管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る入退室管理システムは、入退室が管理される区画の出入口を開閉する扉を旋解錠する電気錠が電気錠制御盤により制御される入退室管理システムにおいて、上記扉が閉まったとき扉閉信号が発信され、上記電気錠の旋錠が完了したとき施錠信号が発信され、上記電気錠制御盤は、上記扉が閉められる度に、上記扉閉信号を受信した時点から上記旋錠信号を受信する時点までを計時して旋錠時間を求める施錠時間計測手段と、所定の回数に亘る上記施錠時間の平均値を求める平均値算出手段と、上記平均値が予め設定された閾値を超えるとき施解錠に係わる部分の異常を予測する異常予測手段と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る入退室管理システムの効果は、扉が閉まってから電気錠が旋錠されるまでの施錠時間を計測し、予め定めた閾値と比較することにより、施錠はできるが施解錠に係る部分が異常に至りそうなことを予測できるので、扉、電気錠および電気錠制御盤に対する予防保全を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明に係る実施の形態1による入退室管理システムの構成を示す構成図である。図2は、この発明に係る実施の形態1による入退室管理システムの制御で用いられる信号のタイミングチャートである。図3は、この発明に係る実施の形態1による電気錠制御盤の機能ブロック図である。
この発明に係る実施の形態1による入退室管理システムは、入退室が管理される区画、例えばビル全体、ビル内の各部屋などの出入口に配置される扉1、扉1を旋解錠する電気錠(E)2、出入口の出口側に配備されるカードリーダ(CR)3、電気錠2を制御する電気錠制御盤(IDC)4、ビル全体で入退室を管理する入退室管理盤(PC)5を備える。
【0009】
扉1は、電気錠2が解錠されているとき人が押すまたは引くことにより開けられ、押すまたは引く力が取り払われると図示しないドアクローザにより閉められる。扉1には、図2(a)に示すように、扉1が閉められて扉1が所定の範囲内に入ったとき扉開閉信号のレベルが「扉開」から「扉閉」に変化し、扉1が開けられて扉1が所定の範囲から外れたとき扉開閉信号のレベルが「扉閉」から「扉開」に変化する扉開閉センサ7が設けられている。なお、扉開閉信号のレベルが「扉開」から「扉閉」に変化したとき、扉閉信号が発信されたと称する。
【0010】
電気錠2は、電気錠制御盤4からの旋解錠出力により図示しないデッドボルトが突出または引き込まれることにより、扉1を旋解錠している。
電気錠2は、図2(b)に示すように、デッドボルトが引き込まれてデッドボルトの位置が所定の範囲内に入ったとき旋解錠信号のレベルを「旋錠」から「解錠」に変化し、デッドボルトが突出されてデッドボルトの位置が所定の範囲から外れたとき旋解錠信号のレベルを「解錠」から「旋錠」に変化する。なお、旋解錠信号のレベルが「解錠」から「旋錠」に変化したとき、旋錠信号が発信されたと称する。
【0011】
電気錠制御盤4は、図3に示すように、旋解錠出力を変化して電気錠2を旋解錠する電気錠旋解錠手段11、扉1の開閉の度に施錠時間を求める施錠時間計測手段12、所定の開閉回数毎に施錠時間の平均値を求める平均値算出手段13、平均値を求める度に施解錠に係わる部分の異常を予測する異常予測手段14、異常を予測するときに用いる閾値を更新する閾値更新手段15、求められた施錠時間の平均値および施錠時間の上限値が記憶される記憶手段16を有する。
【0012】
電気錠旋解錠手段11は、図2(c)に示すように、入退室管理盤5からの解錠指令に基づき旋解錠出力のレベルを「旋錠」から「解錠」に変化し、扉開閉センサ7からの扉開閉信号のレベルが「扉開」から「扉閉」に変化したとき所定の待機時間を経過した時点で旋解錠出力のレベルを「解錠」から「旋錠」に変化する。
【0013】
施錠時間計測手段12は、扉1が開閉される度に、図2に示すように、扉開閉信号のレベルが「扉開」から「扉閉」に変化した時点から、旋解錠信号のレベルが「解錠」から「旋錠」に変化した時点までを計時して旋錠時間を求め、記憶手段16に記憶する。
平均値算出手段13は、求められた所定の開閉回数の開閉での旋錠時間の平均値を求め、求めた平均値を記憶手段16に記憶する。
異常予測手段14は、求められた平均値が所定の閾値を超えたとき旋解錠に係わる部分の異常、例えば扉の建て付けの悪化、電気錠の劣化などを予測して異常の予測を発報する。
閾値更新手段15は、所定の開閉回数毎に、求められた旋錠時間の平均値に所定の係数、例えば1.4を乗算して得た値を現時点で設定されている閾値と比較し、施錠時間の平均値の1.4倍の値が現時点の閾値未満のときには施錠時間の平均値の1.4倍の値で閾値を更新する。
【0014】
なお、新たな電気錠制御盤4を既設の電気錠2または新規の電気錠2に設置するときには十分に大きな値の閾値を設定し、運用を開始することにより適切な閾値に更新するようにしている。
【0015】
カードリーダ3は、ビル内または部屋内への入退室が許可されている人の個人識別情報、例えば個人識別番号、バイオメトリックスなどを取り込み、入退室管理盤5に送る。
入退室管理盤5は、カードリーダ3から送られてきた個人識別情報に基づき個人認証を行って入退室の可否を判断する。そして、入退室管理盤5は、個人認証の結果、入退室を許可したとき解錠指令を電気錠制御盤4に送る。
また、入退室管理盤5は、管理を担当するビルに含まれる電気錠制御盤4から各扉1に係る旋錠時間の平均値を取り込み、それに基づいて各扉の旋解錠の部分の状態をまとめてビルオーナーに定期的または不定期に報告する。
【0016】
電気錠2は、デッドボルトが扉1側に設けられた図示しないストライクに突出することにより、扉1を旋錠しているが、扉1を支持している図示しない柱などの経時的な歪み、扉1の支持部の変形、電気錠2の取り付けの緩みなど色々な要因によりデッドボルトがストライクに競ったり、擦れたりすることにより、旋錠時間が長くなる。しかし、この段階ではまだ電気錠2の旋錠ができない訳ではないので、従来のように旋錠ができないことを検出しようとしてもこの段階では異常が発報されない。
【0017】
一方、この発明に係る実施の形態1による入退室管理システムでは、扉1が閉まってから電気錠2が旋錠されるまでの施錠時間を計測し、上述の段階を反映した閾値と比較することにより、施錠はできるが施解錠に係る部分が異常に至りそうなことを予測できるので、扉1、電気錠2および電気錠制御盤4に対する予防保全を施すことができる。
【0018】
また、異常の検出に用いる閾値を運用開始に当たっては大きめに設定し、運用することにより適切な値に収斂することができるので、運用をスムーズに開始できるとともに機差間の違いを別に考慮しなくても済む。
【0019】
実施の形態2.
図4は、この発明に係る実施の形態2による入退室管理システムの構成を示す構成図である。
この発明に係る実施の形態2による入退室管理システムは、実施の形態1による入退室管理システムが配備された複数のビルを情報センタ21により一元的に管理するシステムである。そして、情報センタ21には、各ビルの入退室管理盤5と通信回線22を介して接続されるサーバ23とサーバ23に接続されデータを格納されるデータベース24が配置されている。
サーバ23は、電気錠制御盤4を順次ポーリングして各扉1の旋錠時間を収集しデータベース24に格納しておく。
【0020】
また、サーバ23は、収集した旋錠時間を扉1の種類や設置環境などを因子とする区分に分類し、区分毎の扉1の施錠時間の平均値を算出してデータベース24に格納する。
このようにして格納された区分毎の扉1の施錠時間の平均値は、所定の係数を乗算するだけで、既設の電気錠2または新設の電気錠2に電気錠制御盤4を配備するときに、異常の予測をするための閾値として使用することができ、設定値の精度が向上するとともに設定の省力化を図ることができる。
【0021】
また、サーバ23は、算出された平均値に所定の係数、例えば1.5を乗算して得た上限値を用いて管理対象の扉1の旋錠時間を評価する。もし、管理対象の扉1の旋錠時間が、その扉1が含まれる区分に対する上限値を超えているときには、異常を予測してフィールドエンジニアに連絡する。このように情報センタ21から異常の予測に基づきフィールドエンジニアが現場で扉1などを確認できるので、予備保全を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る実施の形態1による入退室管理システムの構成を示す構成図である。
【図2】この発明に係る実施の形態1による入退室管理システムの制御で用いられる信号のタイミングチャートである。
【図3】この発明に係る実施の形態1による電気錠制御盤の機能ブロック図である。
【図4】この発明に係る実施の形態2による入退室管理システムの構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1 扉、2 電気錠(E)、3 カードリーダ(CR)、4 電気錠制御盤(IDC)、5 入退室管理盤(PC)、7 扉開閉センサ、11 電気錠旋解錠手段、12 施錠時間計測手段、13 平均値算出手段、14 異常予測手段、15 閾値更新手段、16 記憶手段、21 情報センタ、22 通信回線、23 サーバ、24 データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入退室が管理される区画の出入口を開閉する扉を旋解錠する電気錠が電気錠制御盤により制御される入退室管理システムにおいて、
上記扉が閉まったとき扉閉信号が発信され、
上記電気錠の旋錠が完了したとき施錠信号が発信され、
上記電気錠制御盤は、
上記扉が閉められる度に、上記扉閉信号を受信した時点から上記旋錠信号を受信する時点までを計時して旋錠時間を求める施錠時間計測手段と、
所定の回数に亘る上記施錠時間の平均値を求める平均値算出手段と、
上記平均値が予め設定された閾値を超えるとき施解錠に係わる部分の異常を予測する異常予測手段と、
を有することを特徴とする入退室管理システム。
【請求項2】
上記電気錠制御盤は、異常を予測するときに用いる上記閾値を上記平均値に基づいて更新する閾値更新手段を有することを特徴とする請求項1に記載する入退室管理システム。
【請求項3】
複数の上記電気錠制御盤から上記旋錠時間を収集するとともに、収集した上記旋錠時間から上記扉に係わる因子毎に区分された上記扉毎に平均値を算出するサーバを備えることを特徴とする請求項1または2に記載する入退室管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−274558(P2008−274558A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115926(P2007−115926)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】