説明

全方位撮影システム

【課題】カメラのリモート操作や方向を定めることなく、カメラを対象物に近づけるだけでカメラを中心とする全方位を撮影することができる全方位撮影システムを提供する。
【解決手段】両端開口を透明カバー14,16で水密に閉塞した筒状のハウジング12内の両端部分に第1の全方位カメラ20と第2の全方位カメラ22を、透明カバー14,16を透して全方位を撮影できるように配設する。さらに、ハウジング12内に配設された通信手段24により、第1及び第2の全方位カメラ20,22で撮像して得られるそれぞれの撮像信号を、カメラ全体を吊り下げ状態に支持するケーブル1802を通して外部へ伝送する。また、第1及び第2の全方位カメラ20,22の撮影方向を別々に照明する複数の照明灯26,28をハウジング12に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを中心とする全方位を撮影する全方位撮影システムに関し、さらに詳しくは、海や河川などの水中の撮影対象物及びマンホールや立坑などの空中の撮影対象物にカメラを近づけるだけで撮影対象物を撮影できる全方位撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海や河川、湖、ダム等の建設工事に際し、海中または水中でコンクリート打設箇所などの対象物を撮影するカメラとしては、ダイバーが照明付きの水中カメラを手で持ち、撮影対象物に水中カメラを近づけ、撮影対象物を水中カメラの撮影視野内に入れた状態で対象物を撮影する水中カメラが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
これに対して、プロペラ式推進機構を備える自航式の水中カメラ装置が知られている(特許文献2参照)。
かかる水中カメラ装置は通信ケーブルを通してリモートコントローラに接続され、この水中カメラ装置を水上に浮かべた船上から水中に投入し、船上に置かれたモニタに通信ケーブル及び通信装置を通して映し出される映像をみながらリモートコントローラで推進機構を操作することで、水中カメラ装置を撮影対象物に近づけるとともに撮影対象物を撮像カメラの撮影視野内に入れた状態で撮影対象物を撮影するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−265566号公報
【特許文献2】特開平11−119314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水中または海中で撮影対象となる物体を撮影するためには、水中カメラを撮影対象物に近づけ、かつ水中カメラを撮影対象物に向けなければならない。この場合、ダイバーが水中カメラを手で持って撮影対象物に近づくか、または、リモートコントローラを操作して水中カメラ装置を撮影対象物に近づける必要がある。
【0006】
しかしながら、上記のような水中カメラでは、撮影対象となる物体がダイバーの能力を越えた水深などにある場合にはダイバーが撮影対象物に近づくことができない。
また、自航式の水中カメラ装置の場合、撮影対象物の動きが速いと、リモートコントローラによる操作では水中カメラ装置を撮影対象物の動きに合わせて移動させることができず、撮影対象物を撮影することができない。
また、ダイバーが撮影対象物に近づくことで周辺に堆積の土砂が舞い上がることで水が濁り視界が悪化してしまい、鮮明な撮影映像を得ることができないという問題がある。
さらに、一方向の撮影しかできない水中カメラでは対象物が静止していても水流の変化によりカメラの位置がずれてしまい、その結果、対象物の正確な撮影ができなくなるという不具合がある。
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、カメラのリモート操作や方向を定めることなく、カメラを対象物に近づけるだけでカメラを中心とする全方位を撮影することができる全方位撮影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、全方位撮影システムであって、両端が開口された筒状のハウジングと、前記ハウジングの両端に前記開口が水密に閉塞されるようにそれぞれ固着され前記両端から離間する方向にドーム状に突出する第1及び第2の透明カバーと、前記ハウジングに接続され前記ハウジングを昇降可能に吊り下げる給電・通信兼用のケーブルを有するカメラ吊り下げ手段と、前記ハウジング内で前記第1の透明カバーに近接して配設され前記第1の透明カバーを透して全方位を撮影する第1の全方位カメラと、前記ハウジング内で前記第2の透明カバーに近接して配設され前記第2の透明カバーを透して全方位を撮影する第2の全方位カメラと、前記ハウジング内に配設され前記第1及び第2の全方位カメラで撮像して得られるそれぞれの撮像信号を前記ケーブルを通して前記ハウジング外へ伝送する通信手段と、前記ハウジングに設置され前記第1及び第2の全方位カメラの撮影方向を別々に照明する複数の照明灯とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に全方位撮影システムによれば、ハウジングの両端部分に透明カバーを透して全方位を撮影する全方位カメラをそれぞれ配設しているため、第1と第2の両方の全方位カメラを合わせた撮影視野は死角の無い球体状の全方位視野となる。このため、カメラのリモート操作や方向を定めることなく、海や湖などの水中またはマンホール等の空中においてカメラを対象物に近づけるだけでカメラを中心とする全方位を撮影することができる。しかも、ダイバー等の人手に頼ることなく、潜水不可能と想定される100m以上の深度でも問題なく撮影することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかる全方位撮影システムを水中(または海中)の対象物撮影に適用した場合の例を示す全体の構成図である。
【図2】本発明の全方位撮影システムにおける全方位カメラ部分の構成の一例を示す斜視図である。
【図3】本実施の形態における2台の全方位カメラ部分の内部構成を示す斜視図である。
【図4】図2に示す2台の全方位カメラの一方の全方位カメラ側から見た正面図である。
【図5】図2に示す2台の全方位カメラ部分を上面から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる全方位撮影システムの実施の形態について図1乃至図5を参照して詳細に説明する。
図1は、例えば湖に船10を浮かべ、この船10上から全方位撮影システムを構成するハウジングを含めた全方位カメラ部分を水中に吊り下げて、湖底におけるコンクリート打設の状態などを撮影する場合である。
この図1において、全方位撮影システムは、ハウジング12、第1及び第2の透明カバー14,16、カメラ吊り下げ手段18、第1の全方位カメラ20、第2の全方位カメラ22、通信手段24、第1及び第2の照明灯26,28、回転抑止板30、深度センサー32、ジャイロセンサー34、電源ユニット36、制御ユニット38、主電源40、照明灯制御ユニット42、サーバ48、GPS受信機54などを備える。
【0012】
ハウジング12は、両端が開口された円筒状を呈し、金属または合成樹脂材などから成形され、かつ耐圧構造を有している。
第1及び第2の透明カバー14,16は、ハウジング12の両端開口を水密に閉塞するもので、ねじなどによりハウジング12の両端に固着されている。また、この第1及び第2の透明カバー14,16は、ガラスやアクリル樹脂等の透明材料で成形され、ハウジング12の両端開口から離間する方向にドーム状に突出する形状を呈している。
カメラ吊り下げ手段18は、給電及び通信兼用のケーブル1802と、このケーブル1802を巻取り及び繰り出し可能に巻回する巻上機1804を有する。
ケーブル1802は、給電と通信を可能にした多芯ケーブルからなり、かつハウジング12及び第1及び第2の全方位カメラ20,22等を含むカメラ部分の吊り下げ重量に十分に耐え得る引っ張り強度を有している。なお、上記ケーブル1802の引っ張り強度を上げるために、ケーブル1802をワイヤーにより補強した構造にすることもできる。
【0013】
また、このようなケーブル1802は、船10上に設置された電動式の巻上機1804により、巻取り及び繰り出し可能に巻回されている。これにより、ハウジング12、第1及び第2の全方位カメラ20,22及び通信手段24、第1及び第2の照明灯26,28等を含めたカメラ全体を船10上から湖底に向けて吊り下げ状態に支持し、かつ昇降できるようになっている。
また、ハウジング12へのケーブル1802の結合位置は、第1及び第2の全方位カメラ20,22及び通信手段24、第1及び第2の照明灯26,28等を含めたハウジング12全体が水平状態にバランスされる点である。
【0014】
第1の全方位カメラ20は、ハウジング12内の一端側で第1の透明カバー14に近接して配設され、かつ第1の透明カバー14を透して全方位を撮影するもので、図5に示すように、180度以上の画角θを有するフリップレンズのような撮像レンズ2002と、図示省略した周知のCCD等の固体撮像素子などを備える。また、撮像レンズ2002は必要に応じてテレ・ワイド機能やパン・チルト機能を備え、これら機能は船10上の制御ユニット38からの指令信号によって制御されるようになっている。
【0015】
第2の全方位カメラ22は、ハウジング12内の他端側で第2の透明カバー16に近接して配設され、かつ第2の透明カバー16を透して全方位を撮影するもので、図5に示すように、180度以上の画角θを有するフリップレンズのような撮像レンズ2202と、図示省略した周知CCD等の固体撮像素子などを備える。また、撮像レンズ2202は必要に応じてテレ・ワイド機能やパン・チルト機能を備え、これらの機能は船10上の制御ユニット38からの指令信号によって制御されるようになっている。
なお、上記第1及び第2の全方位カメラ20,22で撮像される映像は、静止画像に限らず、動画であってもよい。
【0016】
通信手段24は、ハウジング12内に配設され、第1の全方位カメラ20及び第2の全方位カメラ22で撮像して得られるそれぞれの撮像信号を、ケーブル1802を通して船10上の制御ユニット38へ伝送するものである。
このような通信手段24は、例えば、第1及び第2の全方位カメラ20,22の各撮像レンズを通してそれぞれの固体撮像素子に撮像され、これら固体撮像素子から得られるそれぞれの撮像信号を相関2重サンプリングし、次いで適当なレベルにゲインアップし、さらにA−D変換する周知の画像処理部(図示省略)と、この画像処理部で変換された画像データを記憶する周知のメモリ(図示省略)と、このメモリに記憶された画像データをケーブル1802を通して制御ユニット38へ伝送する周知の送信部(図示省略)などを含んで構成される。
また、かかる通信手段24は、深度センサー32及びジャイロセンサー34で検出されたそれぞれの信号をケーブル1802を通して制御ユニット38へ伝送する機能をも備えている。
【0017】
第1の照明灯26は、第1の全方位カメラ20の撮影方向(ハウジング12の前方)をハウジング12の左右両側から照明するもので、水密構造に構成され、一対有している。これら一対の第1の照明灯26は、ハウジング12の左右の側部に支持ロッド2602により取り付けられている。
また、第2の照明灯28は、第2の全方位カメラ22の撮影方向(ハウジング12の後方)をハウジング12の左右両側から照明するもので、水密構造に構成され、一対有している。これら一対の第2の照明灯28は、ハウジング12の左右の側部に支持ロッド2802により取り付けられている。
【0018】
回転抑止板30は、ケーブル1802で水中に吊り下げられたハウジング12、第1及び第2の全方位カメラ20,22及び通信手段24、第1及び第2の照明灯26,28等を含むカメラ全体のケーブル1802を中心とする回転を抑止するもので、一対有している。この一対の回転抑止板30は、ハウジング12の開口間を結ぶ方向と直交するハウジング12の左右両側に、ハウジング12の左右両側から離間する方向に水平に延在して設けられている。
【0019】
深度センサー32は、ハウジング12、第1及び第2の全方位カメラ20,22及び通信手段24、第1及び第2の照明灯26,28等を含むカメラ全体の水中での吊り下げ深さを検出するもので、ハウジング12内に設置されている。
ジャイロセンサー34は、ハウジング12、第1及び第2の全方位カメラ20,22及び通信手段24、第1及び第2の照明灯26,28等を含むカメラ全体の水中での方位を検出するもので、ハウジング12内に設置されている。
【0020】
電源ユニット36は、船10上に設置された主電源40からケーブル1802を通して供給される電力を第1及び第2の全方位カメラ20,22、通信手段24、深度センサー32及びジャイロセンサー34に適合した電力に変換して供給するものである。この電源ユニット36はハウジング12内に設置されている。
【0021】
制御ユニット38は、例えばモバイルタイプのパーソナルコンピュータから構成されるもので、液晶表示部3802を有し、第1及び第2の全方位カメラ20,22から通信手段24及びケーブル1802を通して伝送されてくる画像データを表示信号に変換して液晶表示部3802にモニタ表示し、かつ通信手段24及びケーブル1802を通して伝送されてくる深度センサー32及びジャイロセンサー34の検出信号に基づいて上記ハウジング12を含むカメラ全体の吊り下げ深さ及び方位を液晶表示部3802に表示し、さらに第1及び第2の全方位カメラ20,22に対してテレ・ワイドやパン・チルトのための制御指令信号を送出する機能を備えている。
なお、制御ユニット38は、第1及び第2の全方位カメラ20,22からの撮像信号をA−D変換する周知の画像処理部と、この画像処理部で変換された画像データを記憶する周知の記憶部と、この記憶部に記憶された画像データ及びカメラの位置データ等をネットワーク50へ伝送する周知の通信処理部などを含み、これらは、CPUと、バスラインを介して接続されたROM、RAM、インタフェースなどよって構成される。
【0022】
主電源40は、ハウジング12内の電源ユニット36に電力を供給するもので、ケーブル1802を通して電源ユニット36に接続されている。この主電源40は、エンジン駆動式の発電機または商用電源を用いることで構成され、船10上に設置されている。
照明灯制御ユニット42は、主電源40から第1及び第2の照明灯26,28に供給される電力を制御し、かつ各照明灯をオンオフ制御するものである。照明灯制御ユニット42と第1及び第2の照明灯26,28との間はケーブル1802により接続されている。
【0023】
GPS受信機54は、これが受信した複数のGPS衛星からの電波を受信するまでの時間差に基づいて上記カメラ全体の現在の吊り下げ位置を計測するものである。このGPS受信機54で計測されたカメラ全体の現在の吊り下げ位置データは制御ユニット38に取り込まれるようになっている。
また、図1において、符号46は湖に浮かべた船10から水面近傍の水中に差し込んだ超音波式の深度センサーである。この深度センサー46は、水面から湖底までの深さを検出するもので、その検出信号は制御ユニット38に伝送され、水面から湖底までの深さを制御ユニット38の液晶表示部3802に表示できるように構成されている。
【0024】
サーバ48は、制御ユニット38に蓄積された画像データ(各種の検出データも含む)を取り込んで蓄積し、この蓄積された画像データをクライアント端末52からのデータ要求により配信するものであり、図1に示すように、制御ユニット38に通信回線38aを介して接続されている。ここで使用される通信回線38aは、電話回線や無線通信回線または専用の通信ケーブルなどから構成される。
また、サーバ48には、図1に示すように、インターネットやLAN等のネットワーク50を通して、パーソナルコンピュータからなる複数のクライアント端末52が接続されている。また、サーバ48は、制御ユニット38からの画像データ等を蓄積する周知のサーバメモリ、及びサーバメモリの画像データ等をネットワーク50を通してクライアント端末52に配信する周知の送信部などを含んでおり、これらは、CPUと、バスラインを介して接続されたROM、RAM、インタフェースなどを含むパーソナルコンピュータから構成される。
【0025】
次に、全方位撮影システムの動作について説明する。
例えば、湖底に打設されたコンクリートの打設状態を撮影する場合は、巻上機1804を動作させてケーブル1802を繰り出し、ハウジング12、第1及び第2の全方位カメラ20,22及び通信手段24、第1及び第2の照明灯26,28等を含むカメラ全体を水中に投入し、沈降させる。これと同時に、第1及び第2の全方位カメラ20,22を撮影モードに設定し、第1及び第2の全方位カメラ20,22で撮像された各撮像信号を通信手段24によりケーブル1802を通して船10上の制御ユニット38に伝送し、その撮影映像を液晶表示部3802に表示する。さらに、深度センサー32によりカメラ全体の水中での吊り下げ深さを順次測定し、その深さを制御ユニット38の液晶表示部3802に表示しながらカメラ全体を所定の深さまで沈めていく。さらに、カメラ全体の水中での方位をジャイロセンサー34で検出し、その方位を制御ユニット38の液晶表示部3802に表示する。また、カメラ全体の現在位置をGPS受信機54で検出し、カメラ全体の現在位置を制御ユニット38の液晶表示部3802に表示する。これにより、カメラ全体の水中での位置を確認することができる。
【0026】
そして、撮影対象とするコンクリートの打設場所が制御ユニット38の液晶表示部3802に映し出され、これにより、コンクリートの打設場所が捉えられたならば、照明灯制御ユニット42を操作して、第1及び第2の照明灯26,28を点灯し、かつこれらに供給される電力を制御することで、第1及び第2の照明灯26,28の明るさを調整し、コンクリートの打設場所を明確に撮影できる照度で照明する。これにより、撮影対象のコンクリート打設場所を鮮明かつ正確に撮影することができる。
この場合、液晶表示部3802には第1及び第2の全方位カメラ20,22で撮像された両方の画像が表示される。この2つの表示画像はハウジング12を含めたカメラ全体を中心とする360度の全方位を撮影した画像となる。したがって、カメラ全体の向きを変えることなしに、液晶表示部3802上の2つの表示画像を観察することで、撮影対象となる物体の存在及び物体の状況を迅速かつ容易に確認し把握することが可能になる。
【0027】
なお、本実施の形態においては、第1及び第2の全方位カメラ20,22の両方の撮影画像を液晶表示部3802に表示せずに、例えば撮影対象のコンクリート打設場所を撮影している方の全方位カメラの画像のみが液晶表示部3802に表示できるように制御ユニット38で画面の切り替えをすることも可能である。
【0028】
ここで、第1の全方位カメラ20における撮像レンズ2002及び第2の全方位カメラ22における撮像レンズ2202にフリップレンズを使用した場合、その画角は180度を超える大きさであるため、この撮像レンズで撮像された映像は、360度の円形領域を、その周辺を重点撮影した画像、すなわち全方位を撮影した画像とすることができる。これらの撮影画像データは制御ユニット38の記憶部に蓄積される。
【0029】
一方、各クライアント端末52はネットワーク50を通してサーバ48に接続されているため、クライアント端末52がネットワーク50を通してサーバ48にアクセスすることにより、サーバ48とクライアント端末52との間の通信回路が確立される。これに伴い、サーバ48に蓄積された画像データはネットワーク50を通してクライアント端末52に配信される。これにより、第1及び第2の全方位カメラ20,22の両方の撮影画像をクライアント端末52の表示部にリアルタイムに表示することができる。
【0030】
したがって、上記のような本実施の形態による全方位撮影システムによれば、ハウジング12内の両端部分に、画角が180度を超える大きさの撮像レンズを有する第1の全方位カメラ20と第2の全方位カメラ22を、それぞれの撮像レンズ2002,2202がそれぞれの透明カバー14、16を透して外方を向くように背中合わせに配設する構成にしたので、第1の全方位カメラと第2の全方位カメラ20,22を合わせた撮影視野は死角の無い球体状の全方位視野となる。その結果、カメラのリモート操作や方向を定めることなく、海や湖などの水中においてカメラを撮影対象物に近づけるだけでカメラを中心とする360度の全方位を撮影することができる。しかも、ダイバー等の人手に頼ることなく、潜水不可能と想定される100m以上の深度でも問題なく撮影することができる。
【0031】
また、本実施の形態によれば、ケーシングを耐水圧構造とし、照明灯26,28、深度センサー32、ジャイロセンサー34等を装備することで海、河川、湖やダム等の建設工事などにも利用することができる。
また、本実施の形態によれば、ハウジング12、第1及び第2の全方位カメラ20,22及び通信手段24、第1及び第2の照明灯26,28等を含むカメラ全体を中心に360度の全方位を撮影でき、しかも、カメラ全体はケーブル1802により水中に吊り下げ状態に支持するだけでよいため、従来のようなプロペラ式推進機構やその操作手段が不要になり、動きの速い対象物の撮影も確実に行うことができ、併せて水流の変化や対象物の移動によって位置、方向を変えて撮影を行う必要がなくなる。
【0032】
また、本実施の形態によれば、ハウジング12、第1及び第2の全方位カメラ20,22及び通信手段24、第1及び第2の照明灯26,28等を含むカメラ全体を降下させて撮影対象物に近づけるだけでよいため、撮影対象物周辺の土砂を舞い上げて水を濁らせたり、撮影視界を悪化させるおそれがない。
さらに、本実施の形態によれば、第1及び第2の全方位カメラ20,22での撮像画像や位置データ等を蓄積するサーバ48を備えているため、このサーバ48に蓄積されている第1及び第2の全方位カメラ20,22での撮像画像データをインターネット等のネットワーク50を通してクライアント端末52にリアルタイムに配信することができる。これにより、遠隔地から水中における対象物を認識し観察することができる。
【0033】
なお、本発明にかかる全方位撮影システムは、上記実施の形態に示す海、河川、湖やダム等の水中における撮影に限らず、マンホールや立坑などの空間内における対象物の撮影にも適用することができる。この空間での対象物撮影の場合は、制御ユニット38、主電源40、照明灯制御ユニット42、巻上機1804などは地上に設置されることになる。
また、本発明の全方位撮影システムは、上記実施の形態に示す構成のものに限らず、特許請求の範囲に記載した構成要件を逸脱しない範囲において、種々に変更し変形することができる。
【符号の説明】
【0034】
12 ハウジング
14 第1透明カバー
16 第2透明カバー
18 カメラ吊り下げ手段
1802 ケーブル
1804 巻上機
20 第1の全方位カメラ
22 第2の全方位カメラ
24 通信手段
26 第1の照明灯
28 第2の照明灯
30 回転抑止板
32 深度センサー
34 ジャイロセンサー
36 電源ユニット
38 制御ユニット
38a 通信回線
40 主電源
42 照明灯制御ユニット
48 サーバ
50 ネットワーク
52 クライアント端末
54 GPS受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口された筒状のハウジングと、
前記ハウジングの両端に前記開口が水密に閉塞されるようにそれぞれ固着され前記両端から離間する方向にドーム状に突出する第1及び第2の透明カバーと、
前記ハウジングに接続され前記ハウジングを昇降可能に吊り下げる給電・通信兼用のケーブルを有するカメラ吊り下げ手段と、
前記ハウジング内で前記第1の透明カバーに近接して配設され前記第1の透明カバーを透して全方位を撮影する第1の全方位カメラと、
前記ハウジング内で前記第2の透明カバーに近接して配設され前記第2の透明カバーを透して全方位を撮影する第2の全方位カメラと、
前記ハウジング内に配設され前記第1及び第2の全方位カメラで撮像して得られるそれぞれの撮像信号を前記ケーブルを通して前記ハウジング外へ伝送する通信手段と、
前記ハウジングに設置され前記第1及び第2の全方位カメラの撮影方向を別々に照明する複数の照明灯と、
を備えることを特徴とする全方位撮影システム。
【請求項2】
前記第1及び第2の全方位カメラの画角は180以上であることを特徴とする請求項1記載の全方位撮影システム。
【請求項3】
前記カメラ吊り下げ手段は、前記ケーブルを巻取り及び繰り出し可能に巻回する巻上機を有することを特徴とする請求項1または2記載の全方位撮影システム。
【請求項4】
前記ハウジングの両端の開口を結ぶ方向と直交する前記ハウジングの左右両側に該両側から離間する方向に延在して設けられ前記カメラ吊り下げ手段で吊り下げられた前記ハウジングの前記ケーブルを中心とする回転を抑止する複数の回転抑止板を有することを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の全方位撮影システム。
【請求項5】
前記ハウジング内に設けられ該ハウジングの水中または空中での吊り下げ深さを検出する深度センサーを更に備えることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の全方位撮影システム。
【請求項6】
前記ハウジング内に設けられ該ハウジングの水中または空中での方位を検出するジャイロセンサーを更に備えることを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の全方位撮影システム。
【請求項7】
前記ハウジング内に設けられ前記ケーブルを通して供給される電力を前記第1及び第2の全方位カメラ、前記深度センサー及び前記ジャイロセンサーに適合した電力に変換して供給する電源ユニットを更に備えることを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の全方位撮影システム。
【請求項8】
前記通信手段に前記ケーブルを介して接続され前記通信手段から伝送されてくる撮像信号を表示し、かつ前記ケーブルを通して伝送されてくる前記深度センサーの検出信号及び前記ジャイロセンサーの検出信号に基づいて前記ハウジング全体の吊り下げ深さ及び位置を表示する表示部を有し、さらに前記第1及び第2の全方位カメラに対して制御指令信号を送出する制御ユニットを備えることを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の全方位撮影システム。
【請求項9】
前記電源ユニットに前記ケーブルに接続された主電源から電力が供給されることを特徴とする請求項1乃至8に何れか1項記載の全方位撮影システム。
【請求項10】
前記照明灯に前記ケーブルを介して接続され、前記主電源から前記各照明灯に供給される電力を制御し、かつ前記各照明灯をオンオフ制御する照明灯制御ユニットを備えることを特徴とする請求項9記載の全方位撮影システム。
【請求項11】
前記制御ユニットに接続され前記制御ユニットに取り込まれた前記第1及び第2の全方位カメラの撮像信号をLAN等のネットワークを通してクライアント端末に配信するサーバを更に備えることを特徴とする請求項1乃至10に何れか1項記載の全方位撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220859(P2012−220859A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88749(P2011−88749)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】