説明

全方向圧力センサとキートップの間の力伝達用弾性スペーサ

【課題】キートップとセンサとの隙間を正確に管理できる全方向圧力センサとキートップの間に配置される力伝達用弾性スペーサを提供する。
【解決手段】本発明は、全方向圧力センサとキートップの間に配置される力伝達用弾性スペーサである。本発明では、力伝達用弾性スペーサは、全方向圧力センサに関連して支持されたリング状の厚い支持部分と、キートップの下面に当接する円形の厚い中央部分と、前記支持部分から前記中央部分を上方に向くように弾力的に支持して、前記サンサと前記キートップとの間に隙間を設けるためのリング状の薄い中間部分と、センサの圧力感知部に対向するように前記中間部分の下面に設けられた突起部分と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向圧力センサとキートップの間の力伝達用弾性スペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
上部からの圧力によって、ジョイスティックのような360度方向の検出をし、なおかつ押し圧によって、特定の方向に対し強さを与えることができるようなセンサを全方向圧力センサと呼称する。例えば、アップサイド株式会社:東京都中央区日本橋本町4−10−7トミヤマビル4FのVECTOR−PAD(ベクターパッド)が一例である。
【0003】
全方向圧力センサ10(以下、単にセンサと言うこともある)は、薄いコイン状であり、図1の断面図に示すように、基板12、シリコンゴム14、導電性ゴム16、銅電極18から構成されている。センサは、図1において、シリコンゴム14の上部から圧力を加えることで360度の方向データと圧力の強さに応じたアナログ電流出力を得る。その電流出力を専用IC(図示せず)によって、デジタルデータに変換する。センサ10は直径10mm、厚さ1.1mm程度の大きさであり、中には、0.2mm程度の空気層が導電性ゴム16と銅電極18の間にある。このセンサ10の上部らか圧力を加えるとこの空気層が変形する。このときの、導電性ゴム16と銅電極18をコンデンサーの両電極とした静電容量の変化を2次元的にとらえる。
【0004】
静電容量の変化は、電流変化として出力され、専用ICによって、デジタル電圧出力に変換される。結果として、図2に示すような出力が得られる。このような全方向圧力センサの特性は、0.3N程度からの圧力が検出できることである。つまり、非常に感度の良いセンサが実現できている。このような特性を利用して、全方向圧力センサは、携帯電話、デジタルカメラ、カーナビゲーションの入力装置部に用いられてきている。このセンサはコンピュータ用入力装置、例えば、ポインティングデバイスであるマウスに特に適している。しかしながら、本発明はコンピュータ用入力装置に限定されるものではない。
【0005】
このような全方向圧力センサは圧力の検出感度が非常に高いのが特徴である。そのため、センサに圧力を加えるために人間が直接指で触れる部分であるキートップをセンサに直接取付けることができない。
【0006】
すなわち、センサの大きさが約10ミリ程度の直径であり、指はそのセンサに直接圧力を伝えるには大きすぎる、
センサは、0.3Nつまり、約30g程度の荷重から検出ができ、そのため、キートップの荷重そのものがオフセットになってしまう、
センサの圧力感知部は、衝撃や摩耗、耐久性に弱い、等の理由による。
なお、センサとキートップの間には、約50マイクロメーターから300マイクロメーター程度の隙間が必要であった。
【0007】
すなわち、図3を参照して説明すると、センサ10のシリコンゴム14の上部表面から隙間を空けて上側ケース22の開口に配置されたキートップ20を支持しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来例では、図4に示すように、キートップ20は上側ケース22に支持されていた。すなわち、キートップ20は上側ケース22に取付けられているバネ26によって支持されていた。このため、キートップ20の円周部分の1箇所を人指し指で押すと、図5に示すように、バネ26が撓み、押された部分が下方に移動し、センサ10のシリコンゴム14に設けられた圧力感知部14a(なお、図1〜図3においては、説明および図示の便宜上省略している)を押し下げ、圧力が検出されていた。
【0009】
なお、ここで用いられているバネ26は、ステンレスをスパイラル状にしたものや、細いプラスチックなどで形成したものである。
【0010】
しかし、前述の従来例の構成では、量産時に、センサを固定している下側ケースと、キートップを支持している上側ケースとの間の寸法誤差のために、キートップの下部とセンサの上面との隙間は、正確に管理できなかった。この隙間が管理できないと、指で360度の圧力出力を得るときに、感度がまちまちに感じられることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、全方向圧力センサとキートップの間に配置される力伝達用弾性スペーサであって、全方向圧力センサに関連して支持されたリング状の厚い支持部分と、キートップの下面に当接する円形の厚い中央部分と、前記支持部分から前記中央部分を上方に向くように弾力的に支持して、前記サンサと前記キートップとの間に隙間を設けるためのリング状の薄い中間部分と、センサの圧力感知部に対向するように前記中間部分の下面に設けられた突起部分と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、キートップとセンサとの隙間を正確に管理できな全方向圧力センサとキートップの間に配置される力伝達用弾性スペーサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】全方向圧力センサの概略断面図である。
【図2】全方向圧力センサに加えられる力と出力の関係を示すグラフである。
【図3】全方向圧力センサとキートップの配置を示す概略断面図である。
【図4】キートップを上側ケースに支持する従来例の構造を示す概略断面図である。
【図5】図4に示す従来例の動作状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の力伝達用弾性スペーサを全方向圧力センサとキートップと共に示す概略断面図である。
【図7】本発明の力伝達用弾性スペーサを示す図であり、図7aはその平面図であり、図7bはその側面図である。
【図8】本発明の力伝達用弾性スペーサの動作状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、全方向圧力センサとキートップの間に配置される力伝達用弾性スペーサである。本発明では、力伝達用弾性スペーサは、全方向圧力センサに関連して支持されたリング状の厚い支持部分と、キートップの下面に当接する円形の厚い中央部分と、前記支持部分から前記中央部分を上方に向くように弾力的に支持して、前記サンサと前記キートップとの間に隙間を設けるためのリング状の薄い中間部分と、センサの圧力感知部に対向するように前記中間部分の下面に設けられた突起部分と、からなる。
【実施例1】
【0015】
図6は全方向圧力センサとキートップと共に本発明の力伝達用弾性スペーサを示す図である。図6において、図1を参照して説明したセンサ10と図3を参照して説明したキートップ20が示されている。本発明においては、センサ10とキートップ20との間に、キートップに加えられた力をセンサ10に伝達する力伝達用弾性スペーサ30(以下、単にスペーサと言うこともある)が設けられている。スペーサ30は、シリコンゴムで形成されており、シリコンゴムとしては、硬度が60度から40度程度のものを用いる。キートップ20は、スペーサ30の上に単に載置されるか、スペーサ30に接着または粘着テープで一体になっている。
【0016】
スペーサ30は、キートップからの力が加わったときほとんど変形しない円形の厚い中央部分30aと、この中央部分30aから外方に延びる、キートップからの力が加わったとき加わった力の方向に変形する、リング状の極めて薄い中間部分30bと、この中間部分からさらに外方に延びる、キートップからの力が加わったときほとんど変形しないリング状の厚い支持部分30cと、中央部分30aの下面に設けられたリング状の突起部分30dからなる。ここで、薄い部分、すなわち中間部分30bは、50マイクロンから200ミクロンであって、厚い部分、すなわち、中央部分30a、支持部分30cは、150ミクロンから400ミクロン程度の厚さがよい。
【0017】
支持部分30cは、センサ10を取付けているプレート10a上に配置されている。中間部分30bは中央部分30aに対して上方に向かい力を弾力的に働かせ、中央部分30aをキートップ20の下面に接触させている。この構造のため、センサ10とキートップ20との間に一定の隙間を維持できる。このことは、従来例では、前述したように、センサとキートップとの間の距離が上側ケースと下側ケースとの距離によって決められていたものであるが、それと比べて、隙間の間隔をはるかに正確に管理できるものである。また、スペーサ30の突起部分30dは、センサ10の圧力感知部14aと対向する位置に形成されている。
【0018】
図7には、スペーサの形状をよりよく理解するために、スペーサの各部分が示されている。なお、突起部分はスペーサの内側に形成されているので、図示していない。
【0019】
次に、図8に示すように、指28で、キートップ20の円周状の一箇所を押すと、キートップ20の押された部分に対応するスペーサ30の薄い中間部分30bが下方に変形し、突起部分30dがセンサ10の圧力感知部14を押すことになる。この結果、圧力が検出され、方向を含む信号として取り出される。なお、中間部分30bを厚く形成した場合、希望する対応する部分だけが押されないことになり、すなわち、それらの隣接部分も押されることになり、圧力が正しく検出されない。
【符号の説明】
【0020】
10 全方向圧力センサ
10a 全方向圧力センサを取付けているプレート
12 基板
14 シリコンゴム
14a シリコンゴムの圧力感知部
16 導電性ゴム
18 銅電極
20 キートップ
22 上側ケース
26 バネ
28 指
30 力伝達用弾性スペーサ
30a 力伝達用弾性スペーサの中央部分
30b 力伝達用弾性スペーサの中間部分
30c 力伝達用弾性スペーサの支持部分
30d 力伝達用弾性スペーサの突起部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全方向圧力センサとキートップの間に配置される力伝達用弾性スペーサであって、全方向圧力センサに関連して支持されたリング状の厚い支持部分と、キートップの下面に当接する円形の厚い中央部分と、前記支持部分から前記中央部分を上方に向くように弾力的に支持して、前記サンサと前記キートップとの間に隙間を設けるためのリング状の薄い中間部分と、センサの圧力感知部に対向するように前記中間部分の下面に設けられた突起部分と、を有することを特徴とする力伝達用弾性スペーサ。
【請求項2】
請求項1記載の力伝達用弾性スペーサにおいて、前記スペーサはシリコンゴムで形成されていることを特徴とする力伝達用弾性スペーサ。
【請求項3】
請求項1記載の力伝達用弾性スペーサにおいて、前記キートップは前記スペーサの上に載置され、又は前記キートップは前記スペーサと接着または粘着テープで一体になっていることを特徴とする力伝達用弾性スペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−81980(P2011−81980A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232167(P2009−232167)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(508047071)株式会社ブルーマウステクノロジー (5)
【Fターム(参考)】