説明

共同配車システム

【課題】 共同配車という効率の良いシステムにおいて、システムに加盟する各グループの独自性を生かした営業を行うことを可能にする。
【解決手段】 顧客からの配車要求に応答し、第1検索手段13は、自社の車両データベース11にアクセスし、配車することができるタクシーの有無を検索し、配車できるタクシーの有るとき、自社のタクシーのうちから配車するべきタクシー16を予め定められる条件に基づいて選択する。端末装置18は、選択されたタクシー16に対して共用サーバ15を介して基地局20から配車指示信号を送信して顧客に配車する。自社に配車できるタクシーが無いとき、第2検索手段14が、他社の車両データベース11にアクセスし、他社のタクシーのうちから配車できるタクシーを検索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タクシーなどの移動車両の共同配車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばタクシーなどに代表される移動車両を顧客の配車要求に応じて配車するシステムは、従来複数のタクシー会社が加盟して共同配車センタを設立し、この共同配車センタを通じて配車が行われるように構成されている。図12は、共同配車センタ2を備える従来の共同配車システム1の一例を示す図である。従来のタクシーの共同配車システム1では、共同配車センタ2に顧客3からの配車要求を受注する電話4も集約して一括して受付け、受付けた配車要求に対して特に指定が無いときは、加盟しているタクシー会社の全車両のうちからたとえば配車要求のあった顧客の最寄りに位置する車両6を選択し、基地局5から無線電話によって当該車両6に指示を与えて配車する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の共同配車システム1では、顧客からタクシー会社の指定があったとき、また運転手の指定があったときには、顧客の指定に従って特定のタクシー会社を他と区別する形で配車指示をすることができる。また特に顧客からの指定が無いときであっても、顧客からの配車要求を受信する電話回線毎にタクシー会社をそれぞれ区別して振分け、配車要求を受信した電話回線に振分けられているタクシー会社の所属車両に配車指示をするようにしているシステムも有る。
【0004】
前述したようにタクシー会社毎に区別してそれぞれのタクシー会社に所属する車両が配車される場合も有るけれども、従来の共同配車システム1では多くの場合、タクシーから無線電話を通じて基地局に寄せられる空車および現在位置情報に基づいて、タクシー会社を区別することなく顧客の配車要求位置の最寄り車両が選択され、当該選択車両に対して配車指示が出される。また配車指示を出すべき車両の選択を人が行うので、顧客の配車要求位置から殆ど差異のない距離に複数の配車可能な車両が存在するようなとき、配車指示を与える車両の選択すなわちその車両の所属するタクシー会社の選択が、必ずしも公平に行われないことも生じうる。
【0005】
多々の分野において規制緩和が進み、たとえばタクシー業界においては料金でさえも自由化されようとしているのが現状であるけれども、従来の移動車両の共同配車システム1では、料金およびサービス等に会社の特徴を持たせ、その特徴に基づいて自社と他社とを差別化して会社毎の独自性を生かした営業を行うことが難しいという問題がある。
【0006】
また新たに共同配車センタを設立する場合、加盟各社はそれぞれ保有する顧客情報を開示し共有しなければならない。しかしながら自らが開拓した重要顧客の情報を開示共有することには、各社とも強い抵抗感を有しているので、共同配車センタを設立すること自体が困難な状況にある。
【0007】
本発明の目的は、共同配車という効率の良いシステムにおいて、システムに加盟する各グループの独自性を生かした営業を行うことを可能にする移動車両の共同配車システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、各々の車両運行単位に属する各車両から収集された動態情報を、車両の属する車両運行単位毎の車両グループに分けて管理する管理手段と、
車両運行単位毎に設けられ、顧客に関する情報がストアされる個別顧客マスタと、
車両運行単位毎に設けられ、顧客からの配車要求を受信する受信手段と、
受信手段によって受信された配車要求に対応する顧客情報を、配車要求を受注した車両運行単位の前記個別顧客マスタから検索する顧客検索手段と、
受信手段による配車要求の受信に応じて、該配車要求を満足する車両を、配車要求を受注した車両運行単位の車両グループより、顧客検索手段による検索結果および収集された動態情報に基づいて検索する第1検索手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明(1)に従えば、システムを共有することによって各車両運行単位相互間の配車応援依頼を行うという形で共同配車を行うけれども、自車両運行単位の重要な財産である個別顧客マスタを他車両運行単位に対して開示し共有することがないので、各車両運行単位の独立性が保たれる。このことによって、各車両運行単位は、車両運行単位毎に独立してその財産である個別顧客マスタを生かした営業活動を行うことが可能になる。
【0010】
また本発明(2)は、各車両運行単位に共通に設けられ、顧客に関する情報がストアされる共通顧客マスタを備え、
前記顧客検索手段は、
配車要求に対応する顧客情報を、配車要求を受注した車両運行単位の前記個別顧客マスタおよび共通顧客マスタから検索することを特徴とする。
【0011】
本発明(2)に従えば、システムを共有することによって各車両運行単位相互間の配車応援依頼を行うという形で共同配車を行うけれども、自車両運行単位の重要な財産である重要顧客に関する情報である個別顧客マスタを他車両運行単位に対して開示し共有することがないので、各車両運行単位の独立性が保たれる。一方重要顧客を除く残余の顧客情報は共通顧客マスタにストアされ、各車両運行単位は共通して共通顧客マスタを利用することができる。このことによって、各車両運行単位は、車両運行単位毎に独立してその財産である個別顧客マスタを生かした営業活動を行うことが可能であるとともに、共通顧客マスタを利用することによって、営業機会を失することなく一層多くの顧客からの配車要求に対して的確迅速に対応することが可能になる。
【0012】
また本発明(3)は、前記顧客検索手段は、
配車要求を受注した車両運行単位の前記個別顧客マスタにおいて対応する顧客情報が検索できなかった場合に、前記共通顧客マスタから対応する顧客情報を検索することを特徴とする。
【0013】
本発明(3)に従えば、自車両運行単位の個別顧客マスタに配車要求のあった顧客の顧客情報を見出せなかったとき、他車両運行単位と共有する共通顧客マスタを利用することができる。このことによって、各車両運行単位は、共通顧客マスタにストアされている顧客情報を利用することが可能になり、より広範囲の顧客マスタから顧客情報を得ることができるので、営業機会を失することなく一層多くの顧客からの配車要求に対して的確迅速に対応することが可能になる。
【0014】
また本発明(4)は、前記顧客検索手段は、
前記共通顧客マスタにおいて対応する顧客情報が検索できなかった場合は、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の個別顧客マスタから、対応する顧客情報を検索することを特徴とする。
【0015】
本発明(4)に従えば、各車両運行単位で共有する共通顧客マスタに配車要求のあった顧客の顧客情報を見出せなかったとき、他車両運行単位の個別顧客マスタを利用することができる。このことによって、各車両運行単位は、共通顧客マスタとともに他車両運行単位の個別顧客マスタにストアされている顧客情報をも利用することが可能になり、より広範囲の顧客マスタから顧客情報を得ることができるので、営業機会を失することなく一層多くの顧客からの配車要求に対して的確迅速に対応することが可能になる。
【0016】
また本発明(5)は、前記顧客検索手段は、
配車要求を受注した車両運行単位の前記個別顧客マスタにおいて対応する顧客情報が検索できなかった場合は、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の個別顧客マスタから、対応する顧客情報を検索することを特徴とする。
【0017】
本発明(5)に従えば、自車両運行単位の個別顧客マスタに配車要求のあった顧客の顧客情報を見出せなかったとき、他車両運行単位の個別顧客マスタを利用することができる。このことによって、各車両運行単位は、個別顧客マスタにストアされている顧客情報を相互に利用することが可能になり、より広範囲の顧客マスタから顧客情報を得ることができるので、営業機会を失することなく一層多くの顧客からの配車要求に対して的確迅速に対応することが可能になる。
【0018】
また本発明(6)は、前記第1検索手段において、
前記配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の個別顧客マスタの顧客情報が利用された場合、該個別顧客マスタの利用に対する課金情報を記憶する課金手段を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明(6)に従えば、車両運行単位毎の財産である個別顧客マスタが、他の車両運行単位に対して開示され、利用されることになるけれども、他車両運行単位による自車両運行単位の個別顧客マスタの利用に対しては相当の対価が支払われることになるので、必要に応じた情報だけの開示に留めることができるとともに、顧客情報を財産として有効活用することができる。
【0020】
また本発明(7)は、前記第1検索手段において、
前記配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の個別顧客マスタの顧客情報が利用された場合、予め定められた点数を、顧客情報を利用した車両運行単位に対して減算したときは、顧客情報を利用された車両運行単位に対して加算し、顧客情報を利用した車両運行単位に対して加算したときには、顧客情報を利用した車両運行単位に対して減算する点数付加手段を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明(7)に従えば、車両運行単位毎の財産である個別顧客マスタが、他の車両運行単位に対して開示され、利用されることになるけれども、他車両運行単位による自車両運行単位の個別顧客マスタの利用に対しては予め定められた点数が加算され、逆の場合には減算される。この加算または減算される付加点数合計の大小に応じ、たとえばシステムの維持費用の分担比率を定める等の運営を行うことによって、システム運営の公平性等が保たれるので、システム運営に対する各車両運行単位の協調態勢を実現することができる。このように、各車両運行単位間の個別顧客情報の利用に対して点数を付加し、点数の付加された結果をシステム維持費用の分担比率等に転化することによって、個別顧客情報の財産評価が可能となるので、必要に応じた情報だけの開示に留めることができるとともに、個別顧客情報を財産として有効活用することができる。
【0022】
また本発明(8)は、車両運行単位毎に設けられ、各々の車両運行単位に属する各車両の特徴情報がストアされる車両マスタを備え、
前記第1検索手段は、
配車要求を受注した車両運行単位の車両マスタおよび顧客検索手段による検索結果および収集された動態情報に基づいて、前記配車要求を満足する車両を検索することを特徴とする。
【0023】
本発明(8)に従えば、共同配車システムには各車両の特徴情報のストアされる車両マスタが備えられ、車両マスタを検索することによって配車要求のあった顧客のニーズに木目細かく対応して車両を選択し配車することが可能になる。
【0024】
また本発明(9)は、前記第1検索手段において配車要求を満足する車両が検索できなかった場合に、前記配車要求を満足する車両を、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の車両グループより、顧客検索手段による検索結果および収集された動態情報に基づいて検索する第2検索手段を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明(9)に従えば、自車両運行単位に属する車両グループのうちから、配車要求を満足する車両を見出すことができなかったとき、第2検索手段によって他車両運行単位に属する車両グループのうちから配車要求を満足する車両を検索することができる。このようにして、自車両運行単位に顧客の配車要求に対応できる車両が無いときであっても、他車両運行単位に配車応援依頼して顧客の配車要求に対する応答の信頼性を一層高めることができる。
【0026】
また本発明(10)は、前記第1検索手段において配車要求を満足する車両が検索できなかった場合に、前記配車要求を満足する車両を、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の車両グループより、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両マスタおよび顧客検索手段による検索結果および収集された動態情報に基づいて検索する第2検索手段を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明(10)に従えば、自車両運行単位に属する車両グループのうちから、配車要求を満足する車両を見出すことができなかったとき、第2検索手段によって他車両運行単位に属する車両グループのうちから配車要求を満足する車両を検索することができる。このようにして、自車両運行単位に顧客の配車要求に対応できる車両が無いときであっても、顧客のニーズにマッチした車両を指定して他車両運行単位に配車応援依頼して顧客の配車要求に対する応答の信頼性を一層高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明(1)によれば、システムを共有することによって各車両運行単位相互間の配車応援依頼を行うという形で共同配車を行うけれども、自車両運行単位の重要な財産である個別顧客マスタを他車両運行単位に対して開示し共有することがないので、各車両運行単位の独立性が保たれる。このことによって、各車両運行単位は、車両運行単位毎に独立してその財産である個別顧客マスタを生かした営業活動を行うことが可能になる。
【0029】
また本発明(2)によれば、システムを共有することによって各車両運行単位相互間の配車応援依頼を行うという形で共同配車を行うけれども、自車両運行単位の重要な財産である重要顧客に関する情報である個別顧客マスタを他車両運行単位に対して開示し共有することがないので、各車両運行単位の独立性が保たれる。一方重要顧客を除く残余の顧客情報は共通顧客マスタにストアされ、各車両運行単位は共通して共通顧客マスタを利用することができる。このことによって、各車両運行単位は、車両運行単位毎に独立してその財産である個別顧客マスタを生かした営業活動を行うことが可能であるとともに、共通顧客マスタを利用することによって、営業機会を失することなく一層多くの顧客からの配車要求に対して的確迅速に対応することが可能になる。
【0030】
また本発明(3)によれば、自車両運行単位の個別顧客マスタに配車要求のあった顧客の顧客情報を見出せなかったとき、他車両運行単位と共有する共通顧客マスタを利用することができる。このことによって、各車両運行単位は、共通顧客マスタにストアされている顧客情報を利用することが可能になり、より広範囲の顧客マスタから顧客情報を得ることができるので、営業機会を失することなく一層多くの顧客からの配車要求に対して的確迅速に対応することが可能になる。
【0031】
また本発明(4)によれば、各車両運行単位で共有する共通顧客マスタに配車要求のあった顧客の顧客情報を見出せなかったとき、他車両運行単位の個別顧客マスタを利用することができる。このことによって、各車両運行単位は、共通顧客マスタとともに他車両運行単位の個別顧客マスタにストアされている顧客情報をも利用することが可能になり、より広範囲の顧客マスタから顧客情報を得ることができるので、営業機会を失することなく一層多くの顧客からの配車要求に対して的確迅速に対応することが可能になる。
【0032】
また本発明(5)によれば、自車両運行単位の個別顧客マスタに配車要求のあった顧客の顧客情報を見出せなかったとき、他車両運行単位の個別顧客マスタを利用することができる。このことによって、各車両運行単位は、個別顧客マスタにストアされている顧客情報を相互に利用することが可能になり、より広範囲の顧客マスタから顧客情報を得ることができるので、営業機会を失することなく一層多くの顧客からの配車要求に対して的確迅速に対応することが可能になる。
【0033】
また本発明(6)によれば、車両運行単位毎の財産である個別顧客マスタが、他の車両運行単位に対して開示され、利用されることになるけれども、他車両運行単位による自車両運行単位の個別顧客マスタの利用に対しては相当の対価が支払われることになるので、必要に応じた情報だけの開示に留めることができるとともに、顧客情報を財産として有効活用することができる。
【0034】
また本発明(7)によれば、車両運行単位毎の財産である個別顧客マスタが、他の車両運行単位に対して開示され、利用されることになるけれども、他車両運行単位による自車両運行単位の個別顧客マスタの利用に対しては予め定められた点数が加算され、逆の場合には減算される。この加算または減算される付加点数合計の大小に応じ、たとえばシステムの維持費用の分担比率を定める等の運営を行うことによって、システム運営の公平性等が保たれるので、システム運営に対する各車両運行単位の協調態勢を実現することができる。このように、各車両運行単位間の個別顧客情報の利用に対して点数を付加し、点数の付加された結果をシステム維持費用の分担比率等に転化することによって、個別顧客情報の財産評価が可能となるので、必要に応じた情報だけの開示に留めることができるとともに、個別顧客情報を財産として有効活用することができる。
【0035】
また本発明(8)によれば、共同配車システムには 各車両の特徴情報のストアされる車両マスタが備えられ、車両マスタを検索することによって配車要求のあった顧客のニーズに木目細かく対応して車両を選択し配車することが可能になる。
【0036】
また本発明(9)によれば、自車両運行単位に属する車両グループのうちから、配車要求を満足する車両を見出すことができなかったとき、第2検索手段によって他車両運行単位に属する車両グループのうちから配車要求を満足する車両を検索することができる。このようにして、自車両運行単位に顧客の配車要求に対応できる車両が無いときであっても、他車両運行単位に配車応援依頼して顧客の配車要求に対する応答の信頼性を一層高めることができる。
【0037】
また本発明(10)によれば、自車両運行単位に属する車両グループのうちから、配車要求を満足する車両を見出すことができなかったとき、第2検索手段によって他車両運行単位に属する車両グループのうちから配車要求を満足する車両を検索することができる。このようにして、自車両運行単位に顧客の配車要求に対応できる車両が無いときであっても、顧客のニーズにマッチした車両を指定して他車両運行単位に配車応援依頼して顧客の配車要求に対する応答の信頼性を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、本発明の前提とする車両の共同配車システム10を示す系統図である。車両は、たとえば顧客を輸送するタクシーであり、車両の共同配車システム10として、各タクシー会社の間でタクシーを顧客に対して共同配車するシステムを例示する。
【0039】
共同配車システム10は、各車両運行単位であるタクシー会社に属する各タクシーから収集された動態情報を、タクシーの属するタクシー会社毎の車両グループに分けて管理する管理手段11と、タクシー会社毎に設けられ、顧客からの配車要求を受信する受信手段12と、受信手段12による配車要求の受信に応じて、配車要求を満足するタクシーを、配車要求を受注したタクシー会社の車両グループより、前記収集された動態情報に基づいて検索する第1検索手段13と、
第1検索手段13において配車要求を満足するタクシーが検索できなかった場合に、該配車要求を満足するタクシーを、配車要求を受注したタクシー会社以外のタクシー会社の車両グループより、収集された動態情報に基づいて検索する第2検索手段14とを備える。
【0040】
本実施の形態では、管理手段11は、共同配車システム10に加盟する各タクシー会社によって共用される共用サーバ15に設けられ、第1検索手段13a,13b,13nおよび第2検索手段14a,14b,14nは、各タクシー会社毎に設けられ共用サーバ15に接続されるとともに受信手段12が接続される端末装置18a,18b,18nにそれぞれ設けられる。ここで各タクシー会社A,B,Nに設けられる端末装置18a,18b,18nは、参照符号18a,18b,18nで示される3台のみを図示するけれども、共用サーバ15に接続される端末装置は共同配車システム10に加わるタクシー会社の数だけ設けられるので、3社に限定されるものではなく、3社を超える多数であっても良い。したがって、端末装置の参照符号の添字であるa,b,nは、端末装置が3台を超えて設けられても良いことを示している。
【0041】
共用サーバ15は、プログラムおよびデータを共有できるファイルサーバであり、また通信用のモデムなどの装置を共有できるコミュニケーションサーバでもある。共用サーバ15を介することによって、各タクシー会社に設けられる端末装置18a,18b,18nから管理手段11にアクセスして車両データを検索することができ、また端末装置18a,18b,18nからタクシー16に対して通信することもできるように構成される。
【0042】
管理手段11は、ランダムアクセス可能なメモリに、各タクシー会社に属する複数のタクシー16の現在位置と動態とを含む運転状況などについての車両データがストアされた車両データベースであり、前記車両データを各タクシー会社毎に区別して管理する。
【0043】
図2は、車両データベース11のストアの内容を示す図である。前記管理手段11である車両データベースには、タクシー16が属するタクシー会社の名称または識別記号21と、個々のタクシー16を識別する車番22と、個々のタクシー16の現在位置23を示す経度24および緯度25と、個々のタクシー16がどの方向に移動しているかを示す方位26と、タクシー16が顧客を輸送している状態である「実車」あるいは顧客を輸送していない状態である「空車」かの動態27およびその他の車両データがストアされる。車両データベース11にストアされる個々のタクシー16に関する車両データは、個々のタクシー16に備わる無線通信手段17bを通じて共用サーバ15に収集され、共用サーバ15は車両データベース11の当該タクシー16の車両データを刻々更新する。
【0044】
図1に戻って無線通信手段17a,17bは、たとえば無線電話機能をも備える無線送受信器によって実現される。基地局20に備わる無線通信手段17aとタクシー16に備わる無線通信手段17bとは、基地局20に設けられる通信アンテナ19を介して無線通信することができる。
【0045】
受信手段12は、顧客30から電話回線を通じて送信される配車要求を受信する電話機と、電話機で受信した信号を変換して端末装置18a,18b,18nに送る通信用モデムとを含む。
【0046】
本実施の形態における端末装置18a,18b,18nは、単なるデータ等の入出力を行うだけの装置ではなく、Central Processing Unit(CPU)を備えるマイクロコンピュータなどによって実現される処理装置である。端末装置18a,18b,18nには、顧客30からの配車要求に応答し、現に配車要求を受けているタクシー会社である自タクシー会社(以後、自社と略称することがある)に属するタクシーの車両データを検索し、配車要求を満足するタクシーを自社の車両グループより前記収集された動態情報に基づいて検索する第1検索手段13a,13b,13nと、第1検索手段13a,13b,13nにおいて配車要求を満足するタクシーが検索できなかった場合に、該配車要求を満足するタクシーを、配車要求を受注したタクシー会社以外のタクシー会社(以後、他社と略称することがある)の車両グループより、前記収集された動態情報に基づいて検索する第2検索手段14a,14b,14nとが備えられる。なお、端末装置および端末装置に備えられる各手段については、参照符号の添字a,b,nを省いて数字だけで総括的に示すことがある。
【0047】
第1検索手段13は、共用サーバ15を介して車両データベース11にアクセスし、車両データベース11のタクシー会社の識別記号21に基づいて自社に属するタクシーを識別しその車両データを検索することができる。第1検索手段13は、配車することができるタクシーの有無、すなわち車両データの動態27における「実車」と「空車」との別を判別し、「空車」のタクシーが存在するとき、「空車」のタクシーのうちから予め定める条件に従ってタクシーを選択し検索結果として出力する。
【0048】
配車するべきタクシーを選択するための予め定める条件には、現在位置23および方位26のデータに基づき、配車要求のあった顧客の最寄りに位置するタクシーであって、好ましくは顧客に対して近づく方向に移動しているなどが設定される。
【0049】
一方自社に属するすべてのタクシーが「実車」であるときには、配車することができるタクシー無しと出力する。なお第1検索手段13には、「空車」のタクシーについても、配車要求のあった顧客30の存在位置とすべての「空車」のタクシーの現在位置とが、たとえば5km以上離れている場合、顧客30への配車に長時間を要することになるので、配車することができるタクシー無しと出力するなどの条件を設定しておいても良い。
【0050】
第1検索手段13からの配車することができるタクシーを選択した結果の出力に応答し、端末装置18から配車要求のあった顧客30に関する情報と配車指示信号とが、当該選択結果で定まる車番のタクシーに対して共用サーバ15および基地局20を介して送信される。
【0051】
なお本実施の形態の共同配車システム10では、第1検索手段13によって配車することのできるタクシー無しと出力されたとき、顧客の配車要求を断るのではなく、第2検索手段14が、他社のタクシーについて識別記号21に基づいて他のタクシー会社毎に車両データを検索する。検索の結果、配車することのできるタクシーを見出したとき、第2検索手段14は、見出されたタクシーのうちから予め定める条件に適合するタクシーを選択し、端末装置18は、選択されたタクシー16に対して配車要求のあった顧客30に関する情報と配車指示信号とを共用サーバ15および基地局20を介して送信する。
【0052】
図3は、共同配車システム10によるタクシー配車の動作を説明するフローチャートである。図3に示すフローチャートを参照して、顧客30の配車要求に応じてタクシーを配車するまでの一連の動作を説明する。
【0053】
ステップa1では、たとえばタクシー会社Aが、電話回線を通じて顧客の配車要求を受信手段12によって受信する。ステップa2では、端末装置18aに備わる第1検索手段13aが、共用サーバ15を介して車両データベース11にアクセスし、タクシー会社Aの識別記号21が付された自社に属するタクシーの動態27を検索する。ステップa3では、第1検索手段13aが配車することができるタクシーが有るか否かを判断する。この判断結果が肯定であり配車できるタクシーが有るときステップa4に進む。ステップa4では、予め定められた条件に従って配車するべきタクシーを選択する。ステップa5では、第1検索手段13aの出力に応答し、端末装置18aは、選択されたタクシーに対して共用サーバ15および基地局20を介して配車指示信号を出力し、顧客30の元へタクシーを配車する。
【0054】
先のステップa3における判断結果が否定であり配車できるタクシーが無いとき、ステップa6に進む。ステップa6では、第2検索手段14aが他社たとえばタクシー会社Bに所属するタクシーの車両データを検索する。ステップa7では、第2検索手段14aが、タクシー会社Bに所属し配車できるタクシーが有るか否かを判断する。この判断結果が肯定であるときステップa8に進む。判断結果が否定であるときステップa6に戻り、タクシー会社B以外のさらに他のタクシー会社に所属するタクシーの車両データを検索することを繰返す。
【0055】
ステップa8では、第2検索手段14aが、予め定められた条件に従って配車すべき他社のタクシーを選択する。ステップa9では、端末装置18aは、選択されたタクシーに対して共用サーバ15および基地局20を介して配車指示信号を出力し、顧客30の元へタクシーを配車する。
【0056】
先のステップa5またはステップa9によってタクシーの配車指示が出力され、顧客の元へタクシーが配車されるとタクシーの共同配車システム10における一連の動作が終了する。
【0057】
このように、共同配車システム10では、システムを各タクシー会社の共用とすることができるので、システム導入費用を各タクシー会社で分担し経費を節減することができる。また共同配車システム10であるにも関らず各タクシー会社は、顧客からの配車要求を各タクシー会社毎に受付け、顧客からの配車要求に応じて自社に属するタクシーのうちから配車することができるので、タクシー会社毎に独立してその特徴を生かした営業活動を行うことが可能になる。
【0058】
また自社では顧客の配車要求に応ずることができない場合であっても、他のタクシー会社に対して配車の応援を依頼することができるので、顧客の配車要求に対しては確実に応ずるという顧客からの信頼を得ることができるとともに、相互に配車の応援依頼をすることによって、各タクシー会社とも配車要求需要のピークに対応するような多数のタクシーを保有しておく必要が無くなるので、固定費を削減することができる。
【0059】
図4は、本発明の前提とする共同配車システム35を示す系統図である。共同配車システム35は、共同配車システム10に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0060】
共同配車システム35において注目すべきは、前記第2検索手段14で検索されたタクシーに対して配車を行う配車手段36と、配車手段36によって配車が行われた場合、配車要求を受注したタクシー会社に対する課金情報と、配車を指示されたタクシーの属するタクシー会社による課金情報とを記憶する課金手段37と、前記課金手段37において記憶された課金情報に基づいて、タクシー会社間の課金を相殺する演算手段38とを備えることである。
【0061】
第2検索手段14から出力される他社の配車可能なタクシーの選択結果に応答し、端末装置18に備えられる配車手段36が、他社タクシーに対する配車指示信号を出力して配車を行う。配車手段36が他社タクシーの配車を実行する都度、配車手段36による配車指示信号に応答し、配車を実行した他社に対する課金情報が課金手段37にストアされる。
【0062】
また共用サーバ15には演算手段38が設けられ、演算手段38は、課金手段37によってストアされる課金情報を、予め定められた期間が経過する毎に、ストアされている各タクシー会社毎の課金情報を読出し、課金した対象である他社の課金情報と課金した対象である他社から自社に課金された課金情報とを、相殺するように演算する。
【0063】
課金は、自社のタクシーによって顧客の配車要求に応じることができず、他社のタクシーによる配車応援を依頼したことへの対価である。端末装置18に備わる課金手段37は、他社にタクシーの配車応援を依頼する毎に当該他社に課金処理を行い、その課金情報は課金手段37にストアされる。課金手段37による課金情報を、応援依頼元のタクシー会社毎に課金対象である他社別にストアした一例を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示すようにたとえばタクシー会社Aからタクシー会社Bに配車応援依頼したことによる課金情報である課金高は50,000円であり、逆にタクシー会社Bからタクシー会社Aに配車応援依頼したことによる課金高は35,000円である。演算手段38は、タクシー会社Aからタクシー会社Bに対する課金高と、タクシー会社Bからタクシー会社Aに対する課金高とを相殺するように演算する。すなわち、50,000円−35,000円=15,000円を演算し、タクシー会社Bからタクシー会社Aに対する課金高35,000円を相殺する。このような演算手段38によるタクシー会社間の課金高を相殺する演算は、1週間または1ヶ月のように予め定められた期間毎に実行され、演算実行後にはタクシー会社別の課金高は一旦消去されて新たに次の期間における課金高が課金手段37にストアされる。
【0066】
このようにして、タクシー会社Aからタクシー会社Bへ50,000円を支払い、逆にタクシー会社Bからタクシー会社Aへ35,000円を支払うという相互の支払いによって精算していたものを、タクシー会社Aからタクシー会社Bへ15,000円を支払うという1方向の支払いのみで精算し、タクシー会社Bからタクシー会社Aへの支払い業務を省くことができるので、精算業務を簡略化することができる。
【0067】
図5は、本発明の実施の第1形態である共同配車システム40を示す系統図である。本実施の形態の共同配車システム40は、共同配車システム35に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0068】
本実施の形態の共同配車システム40において注目すべきは、実施の第2形態における課金手段37に代えて端末装置18には、配車手段36によって配車が行われた場合、予め定められた点数を、配車要求を受注したタクシー会社に対して減算または加算し、配車を指示された車両の属するタクシー会社に対して加算または減算する点数付加手段41が備えられることである。
【0069】
本実施の形態では、タクシー保有台数などの会社の規模に応じてタクシー会社毎に基準点を予め定めて点数付加手段41に備わるメモリにストアされる。点数付加手段41は、ストアされている自社の点数を読出し、他社に配車応援依頼を出す毎にたとえば1点を読出した点数から減算し、他社からの配車応援依頼に応える毎に1点を自社の読出した点数に加算する。この点数付加結果は前記メモリに上書きしてストアされる。
【0070】
このような点数付加結果をたとえば1年毎に集計し、基準点を元にして配車応援依頼を出したマイナス点(減算)と配車応援依頼に応えたプラス点(加算)との合計点数を求め、この合計点数の大小に応じてたとえば共同配車システム40の維持費用の分担比率を定める等の運営を行うことによって、システム運営の公平性等が保たれるので、システム運営に対する各社の協調態勢を実現することができる。
【0071】
図6は、本発明の実施の第2形態である共同配車システム45を示す系統図である。本実施の形態の共同配車システム45は、共同配車システム10に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施の形態の共同配車システム45において注目すべきは、タクシー会社毎に設けられ、顧客に関する情報がストアされる個別顧客マスタ46と、前記受信手段12によって受信された配車要求に対応する顧客情報を自社個別顧客マスタ46から検索する顧客検索手段47とが、備えられることである。共同配車システム45に備わる第1検索手段13は、受信手段12による配車要求の受信に応じて、該配車要求を満足するタクシーを、自社に所属する車両グループより、顧客検索手段47による検索結果および収集された動態情報に基づいて検索する。
【0073】
図7は、個別顧客マスタ46のストアの内容例を示す図である。個別顧客マスタ46には、タクシー会社が顧客にタクシーを配車するときに必要とする顧客の電話番号53と、顧客名称54と、顧客の住所55と、顧客の所在地56を示す経度57および緯度58とがストアされる。図7ではタクシー会社Aについての個別顧客マスタ46aを例示するので、個別顧客マスタ46aにはタクシー会社Aの識別記号52として「A」が付与されている。しかしながら、各タクシー会社毎に自社の個別顧客マスタ46が設けられるときには、会社を識別する必要が無いので識別記号52は設けられなくても良い。
【0074】
本実施の形態の端末装置18には、顧客からの配車要求に応答し、自社の個別顧客マスタ46を検索し、配車要求のあった顧客の顧客情報を読出して出力する顧客検索手段47が備えられる。第1検索手段13は、顧客検索手段47によって検索された顧客情報に基づいて、自社のタクシーのうちから配車することができるタクシーを検索する。
【0075】
共同配車システム45では、前述のように各タクシー会社の重要な財産である個別顧客マスタ46を自社以外の他社に対して開示し共有することがないので、各タクシー会社の独立性が保たれ、各タクシー会社は、会社毎に独立してその財産である個別顧客マスタ46を生かした営業活動を行うことができる。
【0076】
図8は、本発明の実施の第3形態である共同配車システム60を示す系統図である。本実施の形態の共同配車システム60は、実施の第2形態の共同配車システム45に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0077】
本実施の形態の共同配車システム60において注目すべきは、共用サーバ15には、各タクシー会社に共通に設けられ、顧客に関する情報がストアされる共通顧客マスタ61を備えることである。ここで顧客マスタの使い分けは、たとえば個別顧客マスタ46には各タクシー会社にとって重要な顧客の情報がストアされ、共通顧客マスタ61には他社への開示が許容可能な顧客の情報がストアされるといったように行われる。
【0078】
端末装置18に備わる顧客検索手段47は、受信手段12によって受信された配車要求に対応する顧客情報を、個別顧客マスタ46および共通顧客マスタ61から検索する。この顧客検索手段47による顧客情報検索の順位は、特に限定されるものではなく、自社の個別顧客マスタ46において対応する顧客情報が検索できなかった場合に共通顧客マスタ61から対応する顧客情報を検索しても良く、また共通顧客マスタ61において対応する顧客情報が検索できなかった場合に自社の個別顧客マスタ46から対応する顧客情報を検索しても良い。
【0079】
このように、自社の個別顧客マスタ46に配車要求のあった顧客の顧客情報を見出せなかったとき、共用サーバ15を介して共通顧客マスタ61を利用することができる。したがって、各タクシー会社は、より広範囲の顧客マスタから顧客情報を得ることができるので、営業機会を失することなく一層多くの顧客からの配車要求に対して的確迅速に対応することが可能になる。
【0080】
図9は、本発明の実施の第4形態である共同配車システム65を示す系統図である。本実施の形態の共同配車システム65は、実施の第3形態の共同配車システム60に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0081】
本実施の形態の共同配車システム65において注目すべきは、端末装置18には課金情報をストアする課金手段37が備えられ、共用サーバ15には、各タクシー会社間の課金情報を相殺するように演算する演算手段38が備えられることである。
【0082】
本実施の形態の共同配車システム65においては、顧客検索手段47は、共通顧客マスタ61において配車要求のあった顧客に対応する顧客情報が検索できなかった場合は、他社の個別顧客マスタ46から、前記配車要求のあった顧客に対応する顧客情報を検索することができる。また顧客検索手段47は、自社の個別顧客マスタ46において配車要求のあった顧客に対応する顧客情報が検索できなかった場合は、他社の個別顧客マスタ46から、前記配車要求のあった顧客に対応する顧客情報を検索することも可能である。
【0083】
ただしこのようなシステムでは、各タクシー会社毎に備えられる個別顧客マスタ46は、各タクシー会社の重要な財産であるにも関らず他社に開示され利用されることになる。したがって、本実施の形態では、前記第1検索手段13において、自社の個別顧客マスタ46の顧客情報が他社に利用された場合、その個別顧客マスタ46利用の対価として利用した他社に対して課金され、その課金情報は課金手段37にストアされるように構成される。また共用サーバ15には、前記演算手段38が設けられるので、予め定められた期間毎に各タクシー会社間の課金情報を相殺するように演算することができる。
【0084】
なお本実施の形態の共同配車システム65の課金手段37に代えて、第1検索手段13において、自社の個別顧客マスタ46の顧客情報が他社に利用された場合、予め定められた点数を、顧客情報を利用した他社に対して減算し、顧客情報を利用された自社に対しては加算する点数付加手段41が設けられる構成の共同配車システムであっても良い。
【0085】
図10は、共同配車システム65によるタクシー配車の一連の動作を説明するフローチャートである。図10に示すフローチャートを参照して、共同配車システム65によるタクシーを配車するまでの一連の動作を説明する。
【0086】
ステップb1では、たとえばタクシー会社Aが、顧客の配車要求を受信手段12によって受信する。ステップb2では、端末装置18aに備わる顧客検索手段47aが、自社の個別顧客マスタ46aにアクセスし、配車要求のあった顧客情報を検索する。ステップb3では、自社の個別顧客マスタ46aに前記顧客情報が有るか否かが判断され、判断結果が肯定であるときステップb4へ進み、判断結果が否定であるときステップb5へ進む。
【0087】
ステップb4では、顧客検索手段47aによって検索された顧客情報に基づいて第1検索手段13aが、車両データベース11から自社の車両データを検索する。
【0088】
一方ステップb5では、自社個別顧客マスタ46aに前記顧客情報が存在しないので、顧客検索手段47aは共用サーバ15に対して他社の個別顧客マスタの利用依頼を出力する。ステップb6では、顧客検索手段47aは、他社の個別顧客マスタ46b,46nを検索する。この検索は次のように行われる。たとえば配車要求のあった顧客名称を検索キーワードとし、その顧客名称を含む他社の個別顧客マスタの存否を検索する。
【0089】
ステップb7では、前記顧客名称を含む他社個別顧客マスタが有るか否かが判断され、判断結果が肯定であるときステップb8に進む。ステップb8では、前記顧客名称を含むたとえばタクシー会社Bの個別顧客マスタ46bから詳細な顧客情報が検索される。ステップb9では、タクシー会社Aは、タクシー会社Bの顧客マスタ46bを検索して前記顧客に関する詳細情報を入手したので、タクシー会社Aの端末装置18aに備わる課金手段37aによってタクシー会社Bの端末装置18bに対して課金処理を実行し、ステップb4に進む。
【0090】
先のステップb7における判断結果が否定であるとき、ステップb10に進む。ステップb10では、自社および他社の個別顧客マスタ46a,46b,46nのいずれにおいても配車要求のあった顧客に関する顧客情報が存在しないので、顧客情報に関らず第1検索手段13aによって車両データベース11にアクセスし、自社の車両データを検索する。
【0091】
ステップb11以降の動作は、前述した共同配車システム10によるタクシー配車の一連の動作を説明する図3のフローチャートにおけるステップa3以降と同一であるので、説明を省略する。
【0092】
なお前述したように課金手段37にストアされた個別顧客マスタ46利用の対価である課金高を予め定められた期間が経過する毎に読出し、演算手段38によって課金した対象である他社の課金高と課金した対象である他社から自社に課金された課金高とを、相殺するように演算し、タクシー会社相互間の支払い業務を簡略化しても良い。
【0093】
このように、共同配車システム65では、各タクシー会社の財産である個別顧客マスタ46が他社にも開示されかつ共用されることになるけれども、他社による自社の個別顧客マスタ46の利用に対しては相当の対価が支払われることになるので、必要に応じた情報だけの開示に留めることができるとともに、顧客情報を財産として有効活用することができる。
【0094】
図11は、本発明の実施の第5形態である共同配車システム70を示す系統図である。本実施の形態の共同配車システム70は、共同配車システム10に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して説明を省略する。本実施の形態の共同配車システム70において注目すべきは、端末装置18には、前記個別顧客マスタ46と、配車要求のあった顧客に対応する顧客情報を、前記個別顧客マスタ46から検索する顧客検索手段47とが備えられ、共用サーバ15には、各タクシー会社に属するタクシーの車種および車色などの特徴情報が、各タクシー会社毎に区別してストアされる車両マスタ71が備えられることである。
【0095】
端末装置18に備わる第1検索手段13は、自社の車両マスタ71および顧客検索手段47による検索結果および収集された動態情報に基づいて、前記配車要求を満足するタクシーを検索する。すなわち顧客検索手段47によって個別顧客マスタ46から検索出力される配車要求のあった顧客の情報に基づいて、第1検索手段13は、自社に所属するタクシーについての車両マスタ71をまず検索し、顧客のニーズに対応する車種および車色などに該当するタクシーを抽出する。次いで車両データベース11を検索し、抽出されたタクシーについての実車あるいは空車の動態情報に従って配車することができるか否かを判定する。第1検索手段13によって配車することができるタクシーが有りとの検索結果が得られたとき、前述したように、端末装置18によって抽出されたタクシーに対して配車指示が行われる。
【0096】
第1検索手段13によって配車することができるタクシー無しとの検索結果が得られたとき、第2検索手段14が、車両データベース11にアクセスし、配車要求を満足するタクシーを、他社の車両グループより顧客検索手段47による検索結果および収集された動態情報に基づいて検索する。
【0097】
また本実施の形態では、第1検索手段13によって、配車要求を満足するタクシーを自社の車両マスタ71と車両データベース11とから検索することができなかったとき、第2検索手段14は、共用サーバ15を介して他社の車両マスタ71と車両データベース11とにアクセスし、配車要求を満足するタクシーを、顧客検索手段47による検索結果および収集された動態情報に基づいて検索することができる。
【0098】
このように自社および他社の車両マスタ71と車両データベース11とを検索可能とすることによって、自社において顧客のニーズに対応して配車できるタクシーが無いときであっても、顧客のニーズにマッチしたタクシーを指定して他社に応援依頼し配車することができる。したがって、配車要求のあった顧客のニーズに木目細かく対応してタクシーを選択し配車することが可能になり、顧客の配車要求に対する応答の信頼性を一層高めることができる。
【0099】
本発明の各実施形態に設けられる共用サーバ15は、管理手段11である車両データベース、演算手段38、共通顧客マスタ61および車両マスタ71のうちの1つもしくは2つ以上を備え、本発明の他の実施の形態である共同配車システムのサーバ装置を構成する。
【0100】
また本発明の各実施形態に設けられる端末装置18は、第1検索手段13、第2検索手段14、配車手段36、課金手段37、点数付加手段41、個別顧客マスタ46および顧客検索手段47のうちの1つもしくは2つ以上を備え、本発明のさらに他の実施の形態である共同配車システムの端末装置を構成する。
【0101】
以上のように、本実施の形態では、車両としてタクシーを例示したけれども、車両は、タクシーに限定されることなく、宅配貨物を集荷する車両などであっても良い。
【0102】
本発明は、以下の実施の形態が可能である。
(1)各々の車両運行単位に属する各車両から収集された動態情報を、車両の属する車両運行単位毎の車両グループに分けて管理する管理手段と、
車両運行単位毎に設けられ、顧客からの配車要求を受信する受信手段と、
受信手段による配車要求の受信に応じて、配車要求を満足する車両を、配車要求を受注した車両運行単位の車両グループより、前記収集された動態情報に基づいて検索する第1検索手段と、
第1検索手段において配車要求を満足する車両が検索できなかった場合に、該配車要求を満足する車両を、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の車両グループより、収集された動態情報に基づいて検索する第2検索手段とを備えることを特徴とする共同配車システム。
【0103】
共同配車システムを、該システムに加盟する各車両運行単位の共有システムとすることができるので、システム導入費用を各車両運行単位で分担し経費を節減することができる。各車両運行単位は、顧客からの配車要求を各車両運行単位毎に受付けることができ、顧客からの配車要求に応じて配車要求を受注した車両運行単位(以後、自車両運行単位と呼ぶことがある)に所属する車両のうちから配車するべき車両を選択し配車することができるので、車両運行単位毎に独立してその特徴を生かした営業活動を行うことが可能になる。また顧客の配車要求に対して応ずることができない場合、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位(以後、他車両運行単位と呼ぶことがある)に対して配車の応援を依頼することができるので、顧客の配車要求に対しては確実に応ずるという顧客からの信頼を得ることができるとともに、相互に配車の応援依頼をすることによって、各車両運行単位とも配車要求需要のピークに対応するような多数の車両を保有しておく必要が無くなるので、固定費を削減することができる。
【0104】
(2)前記課金手段において記憶された課金情報に基づいて、車両運行単位間の課金を相殺する演算手段とを備えることを特徴とする共同配車システム。
【0105】
備わる演算手段によって、配車の応援依頼を相互に行った車両運行単位間の課金高を相殺することができるので、各車両運行単位は、車両運行単位間で不要な金額を相互に授受する必要が無くなり、精算業務を簡略化することができる。
【0106】
(3)前記共同配車システムにおける、前記管理手段、前記個別顧客マスタ、前記顧客検索手段および前記第1検索手段のうち、少なくとも1つを備えることを特徴とする共同配車システムのサーバ装置。
【0107】
(4)前記共同配車システムに設けられる前記管理手段、前記個別顧客マスタ、前記顧客検索手段、前記第1検索手段、前記共通顧客マスタ、前記課金手段、前記点数付加手段、前記車両マスタ、前記第2検索手段および前記演算手段のうち、少なくとも1つを備えることを特徴とする共同配車システムのサーバ装置。
【0108】
共同配車システムにはサーバ装置が設けられ、サーバ装置には、前記管理手段、前記第1検索手段、前記第2検索手段、前記配車手段、前記課金手段、前記点数付加手段、前記個別顧客マスタ、前記共通顧客マスタ、前記顧客検索手段、前記車両マスタ、前記演算手段の群から選ばれる少なくとも1つが備えられる。このことによって、サーバ装置とともにサーバ装置に備えられる該手段をシステムに加盟する各車両運行単位によって共用することが可能になるので、システム導入費用を節減することができる。
【0109】
(5)前記共同配車システムにおける、前記個別顧客マスタ、前記受信手段、前記顧客検索手段および前記第1検索手段のうち少なくとも1つを備えることを特徴とする共同配車システムの端末装置。
【0110】
(6)前記共同配車システムに設けられる前記個別顧客マスタ、前記受信手段、前記顧客検索手段、前記第1検索手段、前記共通顧客マスタ、前記課金手段、前記点数付加手段、前記車両マスタ、前記第2検索手段および前記演算手段のうち、少なくとも1つを備えることを特徴とする共同配車システムの端末装置。
【0111】
共同配車システムには端末装置が設けられ、端末装置には、前記受信手段、前記第1検索手段、前記第2検索手段、前記個別顧客マスタ、前記顧客検索手段、前記管理手段、前記配車手段、前記課金手段、前記点数付加手段、前記共通顧客マスタ、前記車両マスタ、前記演算手段の群から選ばれる少なくとも1つが備えられる。このことによって、端末装置に備えられる該手段をシステムに加盟する各車両運行単位毎に使用することが可能になるので、顧客からの配車要求応答処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の前提とする車両の共同配車システム10を示す系統図である。
【図2】車両データベース11のストアの内容を示す図である。
【図3】共同配車システム10によるタクシー配車の動作を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の前提とする共同配車システム35を示す系統図である。
【図5】本発明の実施の第1形態である共同配車システム40を示す系統図である。
【図6】本発明の実施の第2形態である共同配車システム45を示す系統図である。
【図7】個別顧客マスタ46のストアの内容例を示す図である。
【図8】本発明の実施の第3形態である共同配車システム60を示す系統図である。
【図9】本発明の実施の第4形態である共同配車システム65を示す系統図である。
【図10】共同配車システム65によるタクシー配車の一連の動作を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の実施の第5形態である共同配車システム70を示す系統図である。
【図12】共同配車センタ2を備える従来の共同配車システム1の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0113】
10,35,40,45,60,65,70 共同配車システム
11 車両データベース
12 受信手段
13 第1検索手段
14 第2検索手段
15 共用サーバ
16 タクシー
18 端末装置
36 配車手段
37 課金手段
38 演算手段
46 個別顧客マスタ
47 顧客検索手段
61 共通顧客マスタ
71 車両マスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の車両運行単位に属する各車両から収集された動態情報を、車両の属する車両運行単位毎の車両グループに分けて管理する管理手段と、
車両運行単位毎に設けられ、顧客に関する情報がストアされる個別顧客マスタと、
車両運行単位毎に設けられ、顧客からの配車要求を受信する受信手段と、
受信手段によって受信された配車要求に対応する顧客情報を、配車要求を受注した車両運行単位の前記個別顧客マスタから検索する顧客検索手段と、
受信手段による配車要求の受信に応じて、該配車要求を満足する車両を、配車要求を受注した車両運行単位の車両グループより、顧客検索手段による検索結果および収集された動態情報に基づいて検索する第1検索手段とを備えることを特徴とする共同配車システム。
【請求項2】
各車両運行単位に共通に設けられ、顧客に関する情報がストアされる共通顧客マスタを備え、
前記顧客検索手段は、
配車要求に対応する顧客情報を、配車要求を受注した車両運行単位の前記個別顧客マスタおよび共通顧客マスタから検索することを特徴とする請求項1記載の共同配車システム。
【請求項3】
前記顧客検索手段は、
配車要求を受注した車両運行単位の前記個別顧客マスタにおいて対応する顧客情報が検索できなかった場合に、前記共通顧客マスタから対応する顧客情報を検索することを特徴とする請求項2記載の共同配車システム。
【請求項4】
前記顧客検索手段は、
前記共通顧客マスタにおいて対応する顧客情報が検索できなかった場合は、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の個別顧客マスタから、対応する顧客情報を検索することを特徴とする請求項2または3記載の共同配車システム。
【請求項5】
前記顧客検索手段は、
配車要求を受注した車両運行単位の前記個別顧客マスタにおいて対応する顧客情報が検索できなかった場合は、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の個別顧客マスタから、対応する顧客情報を検索することを特徴とする請求項1記載の共同配車システム。
【請求項6】
前記第1検索手段において、
前記配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の個別顧客マスタの顧客情報が利用された場合、該個別顧客マスタの利用に対する課金情報を記憶する課金手段を備えることを特徴とする請求項4または5記載の共同配車システム。
【請求項7】
前記第1検索手段において、
前記配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の個別顧客マスタの顧客情報が利用された場合、予め定められた点数を、顧客情報を利用した車両運行単位に対して減算したときは、顧客情報を利用された車両運行単位に対して加算し、顧客情報を利用した車両運行単位に対して加算したときには、顧客情報を利用した車両運行単位に対して減算する点数付加手段を備えることを特徴とする請求項4または5記載の共同配車システム。
【請求項8】
車両運行単位毎に設けられ、各々の車両運行単位に属する各車両の特徴情報がストアされる車両マスタを備え、
前記第1検索手段は、
配車要求を受注した車両運行単位の車両マスタおよび顧客検索手段による検索結果および収集された動態情報に基づいて、前記配車要求を満足する車両を検索することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の共同配車システム。
【請求項9】
前記第1検索手段において配車要求を満足する車両が検索できなかった場合に、前記配車要求を満足する車両を、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の車両グループより、顧客検索手段による検索結果および収集された動態情報に基づいて検索する第2検索手段を備えることを特徴とする請求項1または8に記載の共同配車システム。
【請求項10】
前記第1検索手段において配車要求を満足する車両が検索できなかった場合に、前記配車要求を満足する車両を、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両運行単位の車両グループより、配車要求を受注した車両運行単位以外の車両マスタおよび顧客検索手段による検索結果および収集された動態情報に基づいて検索する第2検索手段を備えることを特徴とする請求項8記載の共同配車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−310912(P2007−310912A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218946(P2007−218946)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【分割の表示】特願2001−383655(P2001−383655)の分割
【原出願日】平成13年12月17日(2001.12.17)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】