説明

共回り防止機能付拡張アンカー

【課題】コンクリートに確実かつ堅固に取り付けるアンカーとしての効果を維持することができる共回り防止機能付拡張アンカーを提供する。
【解決手段】コンクリートに穿孔した挿入穴に挿入される共回り防止機能付拡張アンカー1であって、円筒形状からなり、先端に断面が拡張可能な拡張部を有し、該拡張部よりも後端側の円筒形状内部に雌螺子部を有する拡張アンカー2と、径が小さい側から拡張アンカー2の拡張部に押し込まれて拡張部を押し広げるコーン状のスリーブ3と、拡張アンカー2の後端から挿入され、拡張アンカー2の雌螺子部と螺合する雄螺子部4aを有するボルト4と、を有し、拡張アンカー2の外周面に外方に突出するクサビ形状の凸状部5a〜5bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートに穿孔した挿入穴に挿入される共回り防止機能付拡張アンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンクリートに穿孔した挿入穴に挿入されるアンカーを用いて、部材をコンクリートに確実かつ堅固に取り付けるアンカーが用いられている。
【0003】
この種のアンカーとして、筒状部材102と芯部材103とボルト104とからなるコンクリート用アンカー101が従来から知られている(図6参照)。ここで、図6は、従来のアンカーを示す図である。このコンクリート用アンカー101の筒状部材102は、その長手方向において、略中央を境とした一方の側に対して、筒状部材102が拡開し得るように複数の溝状の切欠部102aを設けて形成されており、略中央を境とした他方の側に対して、ボルト104を螺入し得るように内側を螺刻して形成されている。芯部材103は、略三角錐状に形成されており、筒状部材102の切欠部102aを設けた側から嵌入させることによって、筒状部材102を拡開させることができるように構成されている。ボルト104は、鉄骨部材等をコンクリートの表面に固定させるために、コンクリートの中に埋設された筒状部材102に対して、螺合可能に形成されている。
【0004】
コンクリート用アンカー101を打ち込むには、まず、コンクリートに、コンクリート用アンカー101の筒状部材102の外径よりも若干大きな直径を有するアンカー取付用孔を穿設する。次に、筒状部材102の中に浅く芯部材103を嵌入させた状態で、芯部材103及び筒状部材102をアンカー取付用孔の中に挿入する。芯部材103がアンカー取付用孔の底部に到達したら、筒状部材102の端部を外側からハンマー等で打ち、筒状部材102の中の更に深くまで芯部材103を嵌入させる。すると、筒状部材102の切欠部102aが設けられた部分は拡開されて、アンカー取付用孔の壁面に対して加圧した状態で当接することになる。次に、ボルト挿通用孔を有する鉄骨部材をコンクリートの表面に当接させ、ボルト104をボルト挿通用孔を通して筒状部材102に螺入すれば、鉄骨部材をコンクリートに固定することができる(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−70177号公報(従来例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のコンクリート用アンカーでは、ボルトが錆びたりするとボルトと筒状部材が強固に引っ付いてしまい、この状態で筒状部材からボルトを取り外すためにボルトを回転させると、ボルトと同時に筒状部材も一緒に回ってしまうことにより、コンクリート用アンカーとアンカー取付用孔の間に隙間ができ、アンカー取付用孔の中でアンカー自体がぐらぐらな状態になって、コンクリートに確実かつ堅固に取り付けるアンカーとしても効果が減少してしまうことになる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、コンクリートに確実かつ堅固に取り付けるアンカーとしての効果を維持することができる共回り防止機能付拡張アンカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様に係るものは、円筒形状からなり、先端に断面が拡張可能な拡張部を有し、該拡張部よりも後端側の円筒形状内部に雌螺子部を有する拡張アンカーと、径が小さい側から拡張アンカーの拡張部に押し込まれて拡張部を押し広げるコーン状のスリーブと、拡張アンカーの後端から挿入され、拡張アンカーの雌螺子部と螺合する雄螺子部を有する螺子軸部と、を有し、拡張アンカーの外周面に外方に突出する凸状部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、拡張アンカーの外周面に外方に突出する凸状部が形成されているので、
拡張アンカーがコンクリートの内部にあるときは、凸状部がコンクリートに食い込んだ状態になり、螺子軸部を回転させて拡張アンカーから螺子軸部を取り外す場合でも拡張アンカーは回転せず、拡張アンカーがコンクリート内で堅固に取り付けられた状態を維持することができる。これにより、施工アンカーとしての効果を確実に維持することができる。
【0010】
本発明のうち第2の態様に係るものは、第1の態様に係る共回り防止機能付拡張アンカーであって、拡張アンカーとスリーブとを一体構成としてアンカーナットを構成していることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、拡張アンカーとスリーブとを一体構成としてアンカーナットを構成しているので、部品点数が減り、部品としての取り扱いがより一層便利となる。
【0012】
本発明のうち第3の態様に係るものは、第1または第2の態様に係る共回り防止機能付拡張アンカーであって、凸状部は、拡張アンカーの後端側の突出を先端側より大きくしていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、凸状部が拡張アンカーの後端側の突出を先端側より大きくしているので、拡張アンカーをコンクリートに穿孔した挿入穴に挿入する場合は凸状部の突出が小さい方から挿入穴に挿入されることとなり、挿入に際して拡張アンカーの外周面に形成された凸状部が障害にならず、スムーズに拡張アンカーをコンクリートに穿孔した挿入穴に挿入することができる。
【0014】
本発明のうち第4の態様に係るものは、第1〜3のいずれかの態様に係る共回り防止機能付拡張アンカーであって、凸状部は、拡張アンカーの周方向にそれぞれ位置を変えて複数形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、螺子軸部を回転させて拡張アンカーから螺子軸部を取り外す場合でも、拡張アンカーの周方向にそれぞれ位置を変えて複数形成されている凸状部が拡張アンカーの回転の大きな抵抗となり拡張アンカーが回転しなくなるので、拡張アンカーがコンクリート内で堅固に取り付けられた状態を維持することができる。これにより、拡張アンカーのアンカーとしての効果を確実に維持することができる。
【0016】
本発明のうち第5の態様に係るものは、第1〜4のいずれかの態様に係る共回り防止機能付拡張アンカーであって、凸状部は、拡張部よりも後端側に設けられたことを特徴とする。
【0017】
コンクリートに穿孔した挿入穴の径は通常拡張アンカーの径とほぼ同様であるため、拡張アンカーの先端に設けられた拡張部に凸状部を設けた場合には、拡張アンカーを挿入穴に挿入する際に、その拡張部に設けられた凸状部が抵抗になって拡張アンカーが挿入穴に挿入しにくい状態となるが、本発明によれば、凸状部が拡張部よりも後端側に設けられているので、拡張アンカーの先端部が挿入穴に挿入された後に凸状部が挿入穴に挿入されるため、拡張アンカーをコンクリートに穿孔した挿入穴にスムーズに挿入することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明の共回り防止機能付拡張アンカーによれば、拡張アンカーの外周面に凸状部が形成されているので、螺子軸部を回転させて拡張アンカーから螺子軸部を取り外す場合でも拡張アンカーが回転せず、拡張アンカーがコンクリート内で堅固に取り付けられた状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における共回り防止機能付拡張アンカーの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態における共回り防止機能付拡張アンカーの分解構造図である。
【図3】(a) 同共回り防止機能付拡張アンカーの側面図である。 (b) 同共回り防止機能付拡張アンカーの後端側から見た図である。
【図4】同共回り防止機能付拡張アンカーがコンクリートに設置される工程を示す図である。
【図5】同共回り防止機能付拡張アンカーをコンクリートに設置した状態の断面図である。
【図6】従来のアンカーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる共回り防止機能付拡張アンカーについて図面を参照にしながら説明する。図1は、本発明の一実施形態における共回り防止機能付拡張アンカーの斜視図である。
【0021】
図1に示すように、共回り防止機能付拡張アンカー1は、拡張アンカー2と、スリーブ3と、ボルト4(螺子軸部)とから構成され、拡張アンカー2の外周面に凸状部5a〜5d(5c及び5dについては図に表れていない)が設けられている。なお、本実施形態では、ボルト4を共回り防止機能付拡張アンカー1の構成の一部として説明するが、これに限らず、ボルト4自体を共回り防止機能付拡張アンカー1の構成要素としなくてもよい。
【0022】
拡張アンカー2は、円筒状の外形を有する筒状部材(長手方向の長さ60mm、外径21.6、先端側内径14mmで後端側内径16mm)から構成され、拡張アンカー2の先端側(スリーブ3が挿入される側)には、筒状部材の長手方向に向かう溝状の切欠部2aが4個設けられ、また拡張アンカー2の後端側(スリーブ3が挿入される側とは反対側)には、筒状の拡張アンカー2の内面に螺刻部である雌螺子部2b(図5参照)が設けられている。この切欠部2aは、後述するように、拡張アンカー2の先端側を拡張させるために設けたものである。このように、切欠部2aが形成された拡張アンカー2の部分により拡張部が構成されている。なお、本実施形態では、切欠部2aを略90度間隔の等間隔に4個が設けたが、これに限らず、略120度間隔で3個設けてもよく、拡張アンカー2の筒状端部を拡張する作用を奏するものであれば、拡張アンカー2の先端側(スリーブ3が挿入される側)に2個以上の任意の数だけ設けてもよい。また、切欠部2aを必ずしも等間隔に設ける必要はなく、任意の角度を挟みながら切欠部2aを設けてもよい。拡張アンカー2の雌螺子部2b(図5参照)は、ボルト4を拡張アンカー2に螺合させるために設けられている。拡張アンカー2は、金属製で表面がメッキ処理されている。なお、拡張アンカー2は、防錆性に優れたものであれば、メッキ処理を施さない金属(ステンレス鋼など)を用いてもよい。
【0023】
拡張アンカー2に設けられた凸状部5a、5b、5c、5dは、拡張アンカー2の雌螺子部2b(図5参照)が設けられた側の外周面に外方に突出するように形成されている(図1には表れていないが、5c、5dも設けられている)。凸状部5a〜5d(長手方向の長さ20mm、幅2mm)は、拡張アンカー2の外周面に設けられた凹部(長手方向の長さ20mm、幅2mm、深さ1mm)に嵌入され、先端(切欠部2aが設けられた側の端部)が拡張アンカー2の外周面とほぼ同一高さで、その先端から後端に向かうに従い(先端から長手方向の長さ5mmまで)徐々に突出を大きくし、後端側(先端から長手方向の長さ5mm〜20mm)では一定の高さ(1mm)に形成されている。ここで、上述した凹部(図示略)は、拡張アンカー2の後端から長手方向に一定間隔あけて設けられている。これにより、凸状部5a〜5dが浮き上がることを防止することができる。なお、本実施形態では、凸状部5a、5b、5c、5dを先端から長手方向に5mm(一定長さ)のところまで除々に突出を大きくし、そこからは一定の高さで構成させたが、これに限らず、拡張アンカー2の後端側の突出を先端側より大きくするように形成するものであれば、上記一定長さを5mm以外の長さにしてもよく、また、一定高さのところを無くして先端から後端まで徐々に突出を大きくさせてもよい。
【0024】
スリーブ3(長手方向の長さ30mm)は、円錐台形状ないし円錐形状(コーン状)をなしている。これにより、スリーブ3を拡張アンカー2内に打ち込んだときに、切欠部2aが広がり拡張アンカー2の先端部の断面を拡張させることができる。スリーブ3は、平坦な円形状の当接面3a(直径17mm)を有し、拡張アンカー2にスリーブ3を取り付けた状態でスリーブ3の当接面3aの中心と拡張アンカー2の挿入口の中心とがほぼ一致するように形成されている。スローブ3の直径は、スリーブ3の当接面3aから拡張アンカー2に向かい一定長さ(長手方向の長さ6mm)のところまで同一径で、それから拡張アンカー2に向かうに従って円形状断面の径が漸次縮小するように形成されている。スリーブ3は、金属製で表面がメッキ処理されている。なお、スリーブ3は、防錆性に優れたものであれば、メッキ処理を施さない金属(ステンレス鋼など)を用いてもよい。
【0025】
ボルト4(螺子軸部)は、雄螺子部4aと頭部4bとを有している。このボルト4は、後述するように、コンクリート壁7(図4参照)中に拡張アンカー2を埋設させた後、例えば、ボルト4の雄螺子部4aの径よりもわずかに大きい孔部が設けられた器具9(図5参照)をコンクリート壁7に固定するために用いられる。なお、本実施形態では、螺子軸部としてボルト4を用いたが、これに限らず、拡張アンカー2の雌螺子部2b(図5参照)と螺合する雄螺子部4aを有するものであれば、ボルト4以外のものでもよい。
【0026】
次に、共回り防止機能付拡張アンカー1の各部材の関係について説明する。図2は、本発明の一実施形態における共回り防止機能付拡張アンカーの分解構造図である。
【0027】
図2に示すように、スリーブ3は、その円錐台形状の径の小さい側から拡張アンカー2の先端側(切欠部2aが設けられた側)の端部から挿入され、図2のA方向に深く押し込まれるに従って、拡張アンカー2の切欠部2aが設けられた箇所はそれぞれ周の外方向に押し広げられる。
【0028】
また、ボルト4は、図2のB方向に拡張アンカー2の後端側(凸状部5a〜5dが設けられた側)の端部から挿入され、ボルト4の雄螺子部4aと拡張アンカー2内面に設けられた雌螺子部2b(図5参照)とが螺合する。そして、ボルト4の頭部4bは、拡張アンカー2をコンクリート内に埋設させた状態で、ボルト4の雄螺子部4aを拡張アンカー2の雌螺子部2bに螺合させることによって、コンクリート壁7に位置決めされた器具9(図5参照)をコンクリート壁7との間で挟着固定する(図4参照)。
【0029】
次に、共回り防止機能付拡張アンカーの構成について図3を参照にしながら説明する。ここで、図3(a)は本発明の一実施形態における共回り防止機能付拡張アンカーの側面図であり、図3(b)は同拡張アンカーを後端側からみた図である。
【0030】
拡張アンカー2とスリーブ3とボルト4の雄螺子部4aのそれぞれの長さ、並びに拡張アンカー2内面の雌螺子部2b(図5参照)の長さは、拡張アンカー2の先端側からスリーブ3が全て嵌入され、拡張アンカー2の後端側からボルト4が最大限度螺入された場合でも、スリーブ3とボルト4(図3では図示略)の先端が衝突しないように形成されている(図3(a)参照)。図3(b)において、拡張アンカー2の雌螺子部2bが設けられた側の外周面には外方に突出するクサビ形状の凸状部5a、5b、5c、5dが設けられている。拡張アンカー2の凸状部5a、5b、5c、5dは、上述したように、切欠部2aが形成された部分である拡張部と重なることがなく拡張部よりも後端側(雌螺子部2bが設けられた側)に設けられ,拡張アンカー2の後端側の突出長さを大きくしている。これにより、拡張アンカー2がコンクリート壁7等に埋設される場合には、共回り防止機能付拡張アンカー1の先端部が挿入穴8に挿入された後に凸状部5a、5b、5c、5dが挿入穴8に挿入される(図4参照)ので、共回り防止機能付拡張アンカー1をコンクリートに穿孔した挿入穴8にスムーズに挿入することができる。さらに、ボルト4を回転させて拡張アンカー2からボルト4を取り外す場合でも、コンクリート内では拡張アンカー2の凸状部5a、5b、5c、5dがコンクリートに食い込んだ状態になっているので、拡張アンカー2はコンクリート内で回転せず、拡張アンカー2がコンクリート壁7に対してぐらぐらならず、施工アンカーとしての効果を十分に発揮することができる。
【0031】
図3(b)に示すように、凸状部5a、5b、5c、5dは、拡張アンカー2の長手方向からみて切欠部2aと切欠部2aのほぼ中央に位置し、拡張アンカー2の外周面に周方向に沿ってそれぞれ略90度の間隔をおいて4個設けられている。なお、本実施形態では、上述したように、凸状部5a、5b、5c、5dを4個設けたが、これに限らず、拡張アンカー2の外周面に周方向に沿ってそれぞれ略120度間隔をおいて3個設けてもよく、ボルト4を回転させて拡張アンカー2からボルト4を取り外す場合に拡張アンカー2を回転しないようにすることができれば、凸状部5a、5b、5c、5dを4個以上(たとえば、8個や12個)設けてもよく、また凸状部5a、5b、5c、5dが設けられる間隔についても、必ずしも略等間隔である必要はない。
【0032】
次に、共回り防止機能付拡張アンカー1がコンクリートに設置される工程について説明する。ここで、図4は、本発明の一実施形態における共回り防止機能付拡張アンカーがコンクリートに設置される工程を示す図である。
【0033】
まず、図4(a)において、コンクリート壁7にドリル等で挿入穴8が開けられ、内部に溜まったコンクリート粉が綺麗に除去される。挿入穴8の径及び深さは、打ち込まれる拡張アンカー2及びスリーブ3の径と長さとに依存するが、挿入穴8の径は、打ち込まれる拡張アンカー2の径よりもわずかに大きい径が好ましく、また、挿入穴8の深さは、拡張アンカー2の長さより長く、スリーブ3を拡張アンカー2に挿入した状態での拡張アンカー2とスリーブ3の結合長さより短い長さであるが、拡張アンカー2の長さより少し長い長さが好ましい。図4(a)では、拡張アンカー2の先端部(切欠部2aが設けられた端部)からスリーブ3が押し込まれた状態で、拡張アンカー2が先端側(切欠部2aが設けられた側)からスリーブ3とともに挿入穴8に挿入されている。
【0034】
図4(b)において、拡張アンカー2は、ハンマー等の打ち込み棒(図示略)を使って挿入穴8に打ち込まれる。図4(b)では、スリーブ3の当接面3aが挿入穴8の底部8aに当接しているが、拡張アンカー2の後端側(拡張アンカー2の凸状部5a等が設けられた側)は、コンクリート壁7にまだ完全には打ち込まれていない状態である。この状態からさらに拡張アンカー2が打ち込まれると、スリーブ3は、拡張アンカー2の切欠部2aを広げることにより、拡張アンカー2の拡張部を周縁外方向へ押し広げ、挿入穴8内壁に対し加圧することになる。
【0035】
図4(c)において、拡張アンカー2は、コンクリート壁7に対して完全に打ち込まれ、
拡張アンカー2の後端面とコンクリート壁7が面一になっている。この状態では、スリーブ3により拡張アンカー2の拡張部が周縁外方向に押し広げられ、挿入穴8内壁へ十分な圧力で加圧されることにより、拡張アンカー2を挿入穴8にしっかり固定させている。なお、本実施形態では、拡張アンカー2の後端面とコンクリート壁7が面一になるところで拡張アンカー2の打ち込みを止めているが、拡張アンカー2の後端面が挿入穴8に少しに入り込む程度まで打ち込んでもよい。
【0036】
図4(d)において、例えば、雄螺子部4aの径よりもわずかに大きい孔部(図示略)を有する器具9をコンクリート壁7に固定するために、拡張アンカー2の雌螺子部2bと器具9の孔部とを一致させて、ボルト4の雄螺子部4aを器具9の孔部に通して拡張アンカー2内側の雌螺子部2bと螺合させることにより、器具9は頭部4bとコンクリート壁7とで挟着固定される。なお、図4(d)では、スリーブ3の全てが拡張アンカー2の内部に挿入されていないが、スリーブ3の全てが拡張アンカー2の内部に挿入されるようにしてもよい。
【0037】
次に、共回り防止機能付拡張アンカー1をコンクリート内に設置した状態について、図5を参照にして詳述する。ここで、図5は、本発明の一実施形態における共回り防止機能付拡張アンカーをコンクリートに設置した状態の断面図である。
【0038】
図5に示すように、拡張アンカー2は複数の切欠部2aが形成された部分である拡張部に嵌入されたスリーブ3とともに、コンクリート壁7に設けられた挿入穴8に完全に打ち込まれている。このように、スリーブの当接面3aと挿入穴8の底部8aとが当接し、コーン状のスリーブ3が拡張アンカー2の拡張部を周縁外方向へ押し広げているので、挿入穴8の内壁は拡張アンカー2の拡張部により十分な圧力で加圧され、拡張アンカー2がコンクリート壁7に強固に固定される。また同時に、拡張アンカー2の後端側に拡張アンカー2の外周面に外方に突出するように設けられた凸状部5a〜5d(図5において、5b及び5dは図示略)も挿入穴8に打ち込まれている。このように、各凸状部5a〜5dは、挿入穴8に対してクサビの役割は果たし、雄螺子部4aを回転させて拡張アンカー2からボルト4(螺子軸部)を取り外す場合でも、挿入穴8内で拡張アンカー2が回転してしまうことを防止することができる。なお、本実施形態では、凸状部5a〜5dを設けることにより、雄螺子部4aを回転させて拡張アンカー2からボルト4(螺子軸部)を取り外す場合に挿入穴8内で拡張アンカー2が回転しなくなるという説明をしているが、拡張アンカー2が挿入穴8内でぐらぐらになってアンカーとしての効果を維持できない状態にならない程度の回転であれば、挿入穴8内で拡張アンカー2が回転してもよい。
【0039】
さらに、孔部(図示略)を設けた器具9をコンクリート壁7に固定するために、拡張アンカー2の雌螺子部2bと器具9の孔部とを一致させ、ボルト4の雄螺子部4aを器具9の孔部に貫通させて拡張アンカー2の内面の雌螺子部2bと螺合させることにより、器具9が頭部4bとコンクリート壁7とで挟着固定される。
【0040】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。さらに本発明の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲の記載によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0041】
以下、本発明の変形例について説明する。
【0042】
(1) 本実施形態では、凸状部5a、5b、5c、5dを拡張アンカー2の雌螺子部2bが設けられた側の外周面に設けたが、これに限らず、拡張アンカー2の拡張部側の外周面に設けてもよい。すなわち、ボルト4を回転させて拡張アンカー2からボルト4を取り外す場合に拡張アンカー2が回転しないようにすることができれば、凸状部5a、5b、5c、5dを設ける拡張アンカー2の外周面の位置は問わない。
【0043】
(2) 本実施形態では、拡張アンカー2とスリーブ3とは分離可能な別部材から構成させたが、これに限らず、拡張アンカー2とスリーブ3とは分離が不可能な一体構成としてもよい。このように、拡張アンカー2とスリーブ3とを一体構成(アンカーナット)で構成すれば、部品点数が減り、部品としての取り扱いがより一層便利となる。
【0044】
(3) 本実施形態では、ボルト4を器具9の孔部を介し拡張アンカー2に螺合させるようにしたが、これに限らず、リング状のワッシャ(図示略)を設けて、そのリング状のワッシャ(図示略)を外挿させたボルト4を器具9の孔部を介し拡張アンカー2に螺合させるようにしてもよい。これにより、より安定した状態でコンクリート壁7に器具9を挟着固定することができる。
【0045】
1 共回り防止機能付拡張アンカー
2 拡張アンカー
2a 切欠部
2b 雌螺子部(螺刻部)
3 スリーブ
3a 当接面
4 ボルト
4a 雄螺子部
4b 頭部
5a〜5d 凸状部
7 コンクリート壁
8 挿入穴
9 器具



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートに穿孔した挿入穴に挿入される共回り防止機能付拡張アンカーであって、
円筒形状からなり、先端に断面が拡張可能な拡張部を有し、該拡張部よりも後端側の円筒形状内部に雌螺子部を有する拡張アンカーと、
径が小さい側から前記拡張アンカーの拡張部に押し込まれて前記拡張部を押し広げるコーン状のスリーブと、
前記拡張アンカーの後端から挿入され、前記拡張アンカーの雌螺子部と螺合する雄螺子部を有する螺子軸部と、を有し、
前記拡張アンカーの外周面に外方に突出する凸状部が形成されていることを特徴とする共回り防止機能付拡張アンカー。
【請求項2】
前記拡張アンカーと前記スリーブとを一体構成としてアンカーナットを構成していることを特徴とする請求項1記載の共回り防止機能付拡張アンカー。
【請求項3】
前記凸状部は、前記拡張アンカーの後端側の突出を先端側より大きくしていることを特徴とする請求項1または2記載の共回り防止機能付拡張アンカー。
【請求項4】
前記凸状部は、前記拡張アンカーの周方向にそれぞれ位置を変えて複数形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の共回り防止機能付拡張アンカー。
【請求項5】
前記凸状部は、前記拡張部よりも後端側に設けられたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の共回り防止機能付拡張アンカー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−127075(P2012−127075A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277841(P2010−277841)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(598132727)株式会社インテ (4)
【Fターム(参考)】