説明

共役ジエン重合体の製造方法

【課題】 イットリウム化合物を触媒とした、シス−1,4構造含有率の高い共役ジエン重合体の製造方法において、触媒活性を高め、高効率で共役ジエン重合体を製造する方法を提供する。
【解決手段】 (A)イットリウム化合物、(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物、並びに(C)周期律表第2族、12族及び13族から選ばれる元素の有機金属化合物、(D)アミン類から得られる触媒を用いて共役ジエン化合物を重合させることを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イットリウム化合物からなる重合触媒を用いた、シス−1,4構造含有率の高い共役ジエン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1,3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンの重合触媒に関して、従来より数多くの提案がなされており、その幾つかは工業化されている。例えば、シス−1,4構造含有率の高い共役ジエン重合体は、チタン、コバルト、ニッケル、またはネオジムの化合物と有機アルミニウムなどを組み合わせた触媒により製造されている。
【0003】
周期律表第3族元素を触媒とする共役ジエンの重合は公知であり、これまでに様々な重合方法が提案されてきた。例えば、特開平7−70143号公報(特許文献1)には、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)又はプラセオジム(Pr)と13族元素の有機金属化合物から構成される有機金属錯体が開示されている。
【0004】
特開平7−268013号公報(特許文献2)には、ネオジム、プラゼオジム、ジスプロシウム(Dy)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)およびイットリウムをアルキルアルミニウムおよびホウ素のトリアルキル誘導体と組み合わせた触媒系が記載されている。
【0005】
また、国際公開第2006/049016号パンフレット(特許文献3)には、嵩高い置換基を有するイットリウム化合物、非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物、および有機アルミニウムからなる触媒系が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−70143号公報
【特許文献2】特開平7−268013号公報
【特許文献3】国際公開第2006/049016号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、イットリウム化合物を触媒とした、シス−1,4構造含有率の高い共役ジエン重合体の製造方法において、触媒活性を高め、高効率で共役ジエン重合体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)イットリウム化合物、(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物、並びに(C)周期律表第2族、12族及び13族から選ばれる元素の有機金属化合物、(D)アミン類から得られる触媒を用いて共役ジエン化合物を重合させることを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法に関する。
【0009】
また、(D)成分のアミン類がアンモニア、炭素数1〜12のモノアルキルアミン、炭素数2〜24のジアルキルアミン、および炭素数2〜20の含窒素複素環化合物からなる群より選ばれる化合物であることを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法に関する。
【0010】
さらに、(A)成分が、下記の一般式で表される嵩高い配位子を有するイットリウム化合物であることを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法に関する。
【0011】
【化1】


但し、R,R,Rは水素、または炭素数1〜12の置換基を表し、Oは酸素原子を表し、Yはイットリウム原子を表す。
【0012】
上記(B)成分においては、非配位性アニオンがホウ素含有化合物であり、カチオンがカルボニウムイオンであることが好ましく、(C)成分が有機アルミニウム化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、イットリウム化合物を触媒とした、シス−1,4構造含有率の高い共役ジエン重合体を高効率で製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の触媒系の(A)成分であるイットリウム化合物として、イットリウムの塩や錯体を用いることができる。具体的には、三塩化イットリウム、三臭化イットリウム、三ヨウ化イットリウム、硝酸イットリウム、硫酸イットリウム、トリフルオロメタンスルホン酸イットリウム、酢酸イットリウム、トリフルオロ酢酸イットリウム、マロン酸イットリウム、オクチル酸(エチルヘキサン酸)イットリウム、ナフテン酸イットリウム、バーサチック酸イットリウム、ネオデカン酸イットリウム等のイットリウム塩や、イットリウムトリメトキシド、イットリウムトリエトキシド、イットリウムトリイソプロポキシド、イットリウムトリブトキシド、イットリウムトリフェノキシドなどのアルコキシド、トリスアセチルアセトナトイットリウム、トリス(ヘキサンジオナト)イットリウム、トリス(ヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(ジメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(テトラメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリスアセトアセタトイットリウム、シクロペンタジエニルイットリウムジクロライド、ジシクロペンタジエニルイットリウムクロライド、トリシクロペンタジエニルイットリウムなどの有機イットリウム化合物、イットリウム塩ピリジン錯体、イットリウム塩ピコリン錯体等の有機塩基錯体、イットリウム塩水和物、イットリウム塩アルコール錯体などが挙げられる。
【0015】
また、下記の一般式で表されるイットリウム化合物を用いることができる。
【0016】
【化2】

但し、R,R,Rは水素、または炭素数1〜12の置換基を表し、Oは酸素原子を表し、Yはイットリウム原子を表す。
【0017】
,R,Rの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、ビニル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−プロペニル基、アリル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、トルイル基、フェネチル基などが挙げられる。さらに、それらにヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボメトキシ基、カルボエトキシ基、アミド基、アミノ基、アルコキシ基、フェノキシ基などが任意の位置に置換されているものも含まれる。
【0018】
具体的には、トリス(アセチルアセトナト)イットリウム、トリス(ヘキサンジオナト)イットリウム、トリス(ヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(ジメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(トリメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(テトラメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(ペンタメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリス(ヘキサメチルヘプタンジオナト)イットリウム、トリスアセトアセタトイットリウムなどが挙げられる。
【0019】
本発明の触媒系の(B)成分である非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物において、非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレ−ト、テトラ(フルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレ−ト、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレ−ト、テトラ(トルイル)ボレ−ト、テトラ(キシリル)ボレ−ト、トリフェニル(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、トリス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボレ−ト、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレ−ト、テトラフルオロボレ−ト、ヘキサフルオロホスフェ−トなどが挙げられる。
【0020】
一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、フェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。
【0021】
カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンを挙げることができる。
【0022】
アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(i−プロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。
【0023】
ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、テトラ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン、テトラ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのアリ−ルホスホニウムカチオンを挙げることができる。
【0024】
イオン性化合物は、上記で例示した非配位性アニオン及びカチオンの中から、それぞれ任意に選択して組み合わせたものを好ましく用いることができる。
【0025】
中でも、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、トリフェニルカルボニウムテトラキス(フルオロフェニル)ボレ−ト、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、1,1'−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−トなどが好ましい。イオン性化合物は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
また、(B)成分として、アルモキサンを用いてもよい。アルモキサンとしては、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(−Al(R')O−)nで示される鎖状アルミノキサン、あるいは環状アルミノキサンが挙げられる。(R'は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はアルコキシ基で置換されたものも含む。nは重合度であり、5以上、好ましくは10以上である)。R'として、はメチル、エチル、プロピル、イソブチル基などが挙げられるが、メチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられる。
【0027】
それらの中でも、トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムの混合物を原料として用いたアルモキサンを好適に用いることができる。
【0028】
また、縮合剤としては、典型的なものとして水が挙げられるが、この他にトリアルキルアルミニウムが縮合反応する任意のもの、例えば無機物などの吸着水やジオ−ルなどが挙げられる。
【0029】
本発明における触媒系の(C)成分である周期律表第2族、12族、13族元素の有機金属化合物としては、例えば、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム等が用いられる。これらの化合物の内で好ましいのは、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムクロライド、アルキルマグネシウムブロマイド、ジアルキル亜鉛、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、アルキルアルミニウムジクロライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド等である。
【0030】
具体的な化合物としては、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ヘキシルマグネシウムクロライド、オクチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムアイオダイド、ヘキシルマグネシウムアイオダイドなどのアルキルマグネシウムハライドを挙げることができる。
【0031】
さらに、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジオクチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、エチルヘキシルマグネシウムなどのジアルキルマグネシウムを挙げることができる。
【0032】
さらに、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ジヘキシル亜鉛、ジオクチル亜鉛、ジデシル亜鉛などのトリアルキル亜鉛を挙げることができる。
【0033】
さらに、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムを挙げることができる。
【0034】
さらに、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどの有機アルミニウムハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキハイドライドなどの水素化有機アルミニウム化合物も挙げることができる。
【0035】
これらの周期律表第2族、12族、13族元素の有機金属化合物は、単独で用いることもできるが、2種類以上併用することも可能である。
【0036】
本発明における触媒系の(D)成分であるアミン類に特に制限はなく、種々のものを用いることができるが、中でもアンモニア、炭素数1〜12のモノアルキルアミン、炭素数2〜24のジアルキルアミン、および炭素数2〜20の含窒素複素環化合物からなる群より選ばれる化合物が好ましい。
【0037】
炭素数1〜12のモノアルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミンなどが挙げられる。
【0038】
炭素数2〜24のジアルキルアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルn−プロピルアミン、メチルイソプロピルアミン、エチルn−プロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジs−ブチルアミン、ジt−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミンなどが挙げられる。
【0039】
また、炭素数2〜24のジアルキルアミンは飽和環状アミンでもよく、例えば、アジリジン、メチルアジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、ピペリジン、ピペラジンなどが挙げられる。
【0040】
炭素数2〜20の含窒素複素環化合物としては、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ベンゾフタラジン、ナフトフタラジン、ピリドピラジン、ピラジノピラジン、ピリドピリミジン、ピラジノピリミジン、ピリドピリダジン、ピラジノピリダジン、ベンゾキノリン、ジベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、ジベンゾイソキノリン、ベンゾナフチリジン、ジベンゾナフチリジン、ベンゾキノキサリン、ジベンゾキノキサリン、ナフトキノキサリン、ナフトキノリン、ナフトイソキノリン、ジアザアントラセン、トリアザアントラセン、テトラアザアントラセン、ペンタアザアントラセン、ヘキサアザアントラセン、アクリジン、フェナジン、ベンゾアクリジン、ベンゾフェナジン、ナフトアクリジン、ナフトフェナジン、ベンゾキナゾリン、ナフトキナゾリン、イミダゾピリジン、イミダゾピラジン、ピリジノール、キノリノール、キナゾリノール、フタラジノール、ピリダジノール、ピリミジノール、ピラジノール、トリアジノール、アクリジノール、ナフチリジノール、キノキサリノール、ピロロピリジン、ピロロピリミジン、ピロロピラジン、ピロロピリダジンなどが挙げられる。
【0041】
(D)成分の添加量に特に制限はないが、通常、重合活性が最も高くなる量を用いる。また、これらは単独で用いることもできるが、2種類以上併用することも可能である。
【0042】
上記触媒を用いて共役ジエンの重合を行う際に、公知の分子量調節剤を用いることができる。特に水素、水素化金属化合物、または水素化有機金属化合物を用いるのが好ましい。
【0043】
水素化金属化合物としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、ボラン、水素化アルミニウム、水素化ガリウム、シラン、ゲルマン、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ナトリウムアルミニウムなどが挙げられる。
【0044】
また、水素化有機金属化合物としては、メチルボラン、エチルボラン、プロピルボラン、ブチルボラン、フェニルボランなどのアルキルボラン、ジメチルボラン、ジエチルボラン、ジプロピルボラン、ジブチルボラン、ジフェニルボランなどのジアルキルボラン、メチルアルミニウムジハイドライド、エチルアルミニウムジハイドライド、プロピルアルミニウムジハイドライド、ブチルアルミニウムジハイドライド、フェニルアルミニウムジハイドライドなどのアルキルアルミニウムジハイドライド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジブチルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド、メチルシラン、エチルシラン、プロピルシラン、ブチルシラン、フェニルシラン、ジメチルシラン、ジエチルシラン、ジプロピルシラン、ジブチルシラン、ジフェニルシラン、トリメチルシラン、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、トリフェニルシランなどのシラン類、メチルゲルマン、エチルゲルマン、プロピルゲルマン、ブチルゲルマン、フェニルゲルマン、ジメチルゲルマン、ジエチルゲルマン、ジプロピルゲルマン、ジブチルゲルマン、ジフェニルゲルマン、トリメチルゲルマン、トリエチルゲルマン、トリプロピルゲルマン、トリブチルゲルマン、トリフェニルゲルマンなどのゲルマン類などが挙げられる。
【0045】
これらの中でも、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライドが好ましく、ジエチルアルミニウムハイドライドが特に好ましい。
【0046】
触媒成分の添加順序は、特に、制限はないが、例えば次の順序で行うことができる。
【0047】
(1)不活性有機溶媒中、重合すべき共役ジエン化合物モノマーの存在下又は不存在下に(D)成分を添加し、(C)成分、(A)成分、(B)成分の順序で添加する。
【0048】
(2)不活性有機溶媒中、重合すべき共役ジエン化合物モノマーの存在下又は不存在下に(D)成分を添加し、(A)成分、(B)成分、(C)成分を任意の順序で添加する。
【0049】
(3)不活性有機溶媒中、重合すべき共役ジエン化合物モノマーの存在下又は不存在下に(D)成分を添加し、上述した分子量調節剤を添加した後、(A)成分、(B)成分、(C)成分を任意の順序で添加する。
【0050】
(4)不活性有機溶媒中、重合すべき共役ジエン化合物モノマーの存在下又は不存在に(A)成分を添加し、(C)成分、(D)成分と上述した分子量調節剤を任意の順序で添加した後、(B)成分を添加する。
【0051】
(5)不活性有機溶媒中、重合すべき共役ジエン化合物モノマーの存在下又は不存在に(B)成分を添加し、(C)成分、(D)成分と上述した分子量調節剤を任意の順序で添加した後、(A)成分を添加する。
【0052】
(6)不活性有機溶媒中、重合すべき共役ジエン化合物モノマーの存在下又は不存在下に(C)成分を添加し、(A)成分、(B)成分、(D)成分を任意の順序で添加した後、上述した分子量調節剤を添加する。
【0053】
また、各成分をあらかじめ熟成して用いてもよい。中でも、(A)成分と(C)成分を熟成することが好ましい。
【0054】
熟成条件としては、不活性溶媒中、重合すべき共役ジエン化合物モノマーの存在下又は不存在に(A)成分と(C)成分を混合する。熟成温度は−50〜80℃、好ましくは−10〜50℃であり、熟成時間は0.01〜24時間、好ましくは0.05〜5時間、特に好ましくは0.1〜1時間である。
【0055】
本発明においては、各触媒成分を無機化合物、又は有機高分子化合物に担持して用いることもできる。
【0056】
共役ジエン化合物モノマーとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−メチルペンタジエン、4−メチルペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエンを主成分とする共役ジエン化合物モノマーが好ましい。
【0057】
用いるモノマー成分は一種でもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
【0058】
ここで重合する共役ジエン化合物モノマーは、モノマーの全量であっても一部であってもよい。モノマーの一部の場合は、上記の接触混合物を残部のモノマーあるいは残部のモノマー溶液と混合することができる。共役ジエンの他に、エチレン、プロピレン、アレン、1−ブテン、2−ブテン、1,2−ブタジエン、ペンテン、シクロペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、オクテン、シクロオクタジエン、シクロドデカトリエン、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどのオレフィン化合物等を含んでいてもよい。
【0059】
重合方法は、特に制限はなく、1,3−ブタジエンなどの共役ジエン化合物モノマーそのものを重合溶媒とする塊状重合(バルク重合)、又は溶液重合などを適用できる。溶液重合での溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、上記のオレフィン化合物やシス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素等が挙げられる。
【0060】
中でも、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、あるいは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物などが好適に用いられる。
【0061】
重合温度は−30〜150℃の範囲が好ましく、0〜100℃の範囲が特に好ましい。重合時間は1分〜12時間の範囲が好ましく、5分〜5時間が特に好ましい。
【0062】
所定時間重合を行った後、重合槽内部を必要に応じて放圧し、洗浄、乾燥工程等の後処理を行う。
【0063】
本発明で得られる共役ジエン重合体は、シス−1,4構造を90%以上含有することが好ましく、92%以上含有することがさらに好ましく、96%以上含有することが特に好ましい。
【0064】
また、該共役ジエン重合体の[η]は、好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは1〜7、特に好ましくは1.5〜5の範囲である。[η]の値が大きすぎると加工性が悪くなり、[η]の値が小さすぎると諸物性に劣る。
【実施例】
【0065】
以下に本発明に基づく実施例について具体的に記載する。重合条件並びに重合結果については表1〜5にまとめて記載した。
【0066】
ミクロ構造は赤外吸収スペクトル分析によって行った。シス740cm-1、トランス967cm-1、ビニル910cm-1の吸収強度比からミクロ構造を算出した。
【0067】
固有粘度([η])は、ポリマーのトルエン溶液を使用して、30℃で測定した。
【0068】
(実施例1)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込み、溶液の温度を30℃とした後、ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)0.16mlおよびトリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(0.05mol/L)0.6mlを添加して40℃まで加温した。2分間攪拌したのち、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.43mol/L)0.14mlを添加して重合を開始した。40℃で25分重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液をエタノールに投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。重合結果を表1に示した。
【0069】
(実施例2)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の添加量を0.65mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表1に示した。
【0070】
(実施例3)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の添加量を0.16mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表1に示した。
【0071】
(実施例4)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の添加量を3.23mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表1に示した。重合体は全く得られなかった。
【0072】
(実施例5)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、n−プロピルアミンのトルエン溶液(0.2mol/L)を用い、添加量を0.04mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表2に示した。
【0073】
(実施例6)
n−プロピルアミンのトルエン溶液(0.2mol/L)の添加量を0.40mlとしたほかは、実施例5と同様に重合を行った。重合結果を表2に示した。
【0074】
(実施例7)
n−プロピルアミンのトルエン溶液(0.2mol/L)の添加量を2.00mlとしたほかは、実施例5と同様に重合を行った。重合結果を表2に示した。
【0075】
(実施例7)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、n−ブチルアミンのシクロヘキサン溶液(1mol/L)を用い、添加量を0.07mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表2に示した。
【0076】
(実施例9)
n−ブチルアミンのシクロヘキサン溶液(1mol/L)の添加量を0.32mlとしたほかは、実施例7と同様に重合を行った。重合結果を表2に示した。
【0077】
(実施例10)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、シクロヘキシルアミンのトルエン溶液(0.2mol/L)を用い、添加量を0.12mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表2に示した。
【0078】
(実施例11)
シクロヘキシルアミンのトルエン溶液(0.2mol/L)の添加量を0.24mlとしたほかは、実施例10と同様に重合を行った。重合結果を表2に示した。
【0079】
(実施例12)
シクロヘキシルアミンのトルエン溶液(0.2mol/L)の添加量を1.19mlとしたほかは、実施例10と同様に重合を行った。重合結果を表2に示した。
【0080】
(実施例13)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、ピペリジンのトルエン溶液(0.2mol/L)を用い、添加量を0.14mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表3に示した。
【0081】
(実施例14)
ピペリジンのトルエン溶液(0.2mol/L)の添加量を0.28mlとしたほかは、実施例13と同様に重合を行った。重合結果を表3に示した。
【0082】
(実施例15)
ピペリジンのトルエン溶液(0.2mol/L)の添加量を0.69mlとしたほかは、実施例13と同様に重合を行った。重合結果を表3に示した。
【0083】
(実施例16)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、ジn−ブチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)を用い、添加量を0.09mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表3に示した。
【0084】
(実施例17)
ジn−ブチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の添加量を0.18mlとしたほかは、実施例16と同様に重合を行った。重合結果を表3に示した。
【0085】
(実施例18)
ジn−ブチルアミントルエン溶液(1mol/L)の添加量を0.37mlとしたほかは、実施例16と同様に重合を行った。重合結果を表3に示した。
【0086】
(実施例19)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、ジベンジルアミンのトルエン溶液(1mol/L)を用い、添加量を0.06mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表3に示した。
【0087】
(実施例20)
ジベンジルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の添加量を0.12mlとしたほかは、実施例19と同様に重合を行った。重合結果を表3に示した。
【0088】
(実施例21)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、ピリジンのシクロヘキサン溶液(1mol/L)を用い、添加量を0.06mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表4に示した。
【0089】
(実施例22)
ピリジンのシクロヘキサン溶液(1mol/L)の添加量を0.15mlとしたほかは、実施例21と同様に重合を行った。重合結果を表4に示した。
【0090】
(実施例23)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、キノリンのトルエン溶液(0.5mol/L)を用い、添加量を0.07mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表4に示した。
【0091】
(実施例24)
キノリンのトルエン溶液(0.5mol/L)の添加量を0.18mlとしたほかは、実施例23と同様に重合を行った。重合結果を表4に示した。
【0092】
(実施例25)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、イソキノリンのシクロヘキサン溶液(0.5mol/L)を用い、添加量を0.07mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表4に示した。
【0093】
(実施例26)
イソキノリンのシクロヘキサン溶液(0.5mol/L)の添加量を0.18mlとしたほかは、実施例25と同様に重合を行った。重合結果を表4に示した。
【0094】
(実施例27)
ジエチルアミンのトルエン溶液(1mol/L)の代わりに、2−エチル−4−メチルイミダゾールのトルエン溶液(0.2mol/L)を用い、添加量を0.03mlとしたほかは、実施例1と同様に重合を行った。重合結果を表4に示した。
【0095】
(実施例28)
2−エチル−4−メチルイミダゾールのトルエン溶液(0.2mol/L)の添加量を0.11mlとしたほかは、実施例27と同様に重合を行った。重合結果を表4に示した。
【0096】
(実施例29)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込み、アンモニアガス1.0mlをガスタイトシリンジで注入した。溶液の温度を30℃とした後、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(0.05mol/L)0.6mlを添加して40℃まで加温した。2分間攪拌したのち、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.43mol/L)0.14mlを添加して重合を開始した。40℃で25分重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液をエタノールに投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。重合結果を表1に示した。
【0097】
(実施例30)
アンモニアガスの添加量を2.5mlとしたほかは、実施例29と同様に重合を行った。重合結果を表5に示した。
【0098】
(実施例31)
アンモニアガスの添加量を5.0mlとしたほかは、実施例29と同様に重合を行った。重合結果を表5に示した。
【0099】
(比較例1)
内容量1.5Lのオートクレーブの内部を窒素置換し、トルエン390ml及びブタジエン210mlからなる溶液を仕込み、溶液の温度を30℃とした後、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(2mol/L)1.5mlを添加し、毎分500回転で3分間攪拌した。次に、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオエート)のトルエン溶液(0.05mol/L)0.6mlを添加して40℃まで加温した。2分間攪拌したのち、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液(0.43mol/L)0.14mlを添加して重合を開始した。40℃で25分重合後、老化防止剤を含むエタノール溶液3mlを添加し、重合を停止した。オートクレーブの内部を放圧した後、重合液をエタノールに投入し、ポリブタジエンを回収した。次いで回収したポリブタジエンを80℃で3時間真空乾燥した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イットリウム化合物、(B)非配位性アニオンとカチオンとからなるイオン性化合物、(C)周期律表第2族、12族及び13族から選ばれる元素の有機金属化合物、並びに(D)アミン類から得られる触媒を用いて共役ジエン化合物を重合させることを特徴とする共役ジエン重合体の製造方法。
【請求項2】
(D)成分のアミン類がアンモニア、炭素数1〜12のモノアルキルアミン、炭素数2〜24のジアルキルアミン、および炭素数2〜20の含窒素複素環化合物からなる群より選ばれる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の共役ジエン重合体の製造方法。
【請求項3】
(A)成分が、下記の一般式で表される嵩高い配位子を有するイットリウム化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の共役ジエン重合体の製造方法。
【化1】


但し、R,R,Rは水素、または炭素数1〜12の置換基を表し、Oは酸素原子を表し、Yはイットリウム原子を表す。
【請求項4】
(B)成分の非配位性アニオンがホウ素含有化合物であり、カチオンがカルボニウムイオンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の共役ジエン重合体の製造方法。
【請求項5】
(C)成分が有機アルミニウム化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の共役ジエン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2008−248222(P2008−248222A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308177(P2007−308177)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】