説明

共役ジエン/モノオレフィンコポリマーを得るための触媒およびこれらのコポリマー

本発明は、共役ジエンと少なくとも1種のモノオレフィンとの共重合用の触媒系、該触媒系の製法、該触媒系を用いた、共役ジエンと少なくとも1種のモノオレフィンとのコポリマーの製法および該コポリマーに関連する。この触媒系は、(i) 以下の一般式(1)で表される有機金属錯体:(1) {[P(Cp)(F1)]Ln(X)(Lx)}p (ここで、Lnはランタニド原子を表し、これにはシクロペンタジエニル基(Cp)およびフルオレニル基(Fl)を含むリガンドが結合しており、これらの基は式:MR1R2のブリッジ(P)によって相互に結合しており、該式において、Mは第IVA族元素であり、またR1およびR2は独立に炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数6〜20のシクロアルキル基またはフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、これは塩素、フッ素、臭素またはヨウ素原子であり得、Lは随意の錯化分子、例えばエーテルを含み、かつ場合により実質的に錯化性の低い分子、例えばトルエンを含み、pは1以上の自然整数であり、xは0以上であり;および(ii) アルキルマグネシウム、アルキルリチウム、アルキルアルミニウム、グリニャール試薬、およびこれら成分の混合物からなる群に属する助触媒を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のモノオレフィンとを共重合するのに使用できる触媒系、この触媒系の製造方法、該触媒系の使用を含む、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のモノオレフィンとのコポリマーの製造方法、およびこのようなコポリマーに関するものである。本発明は、特に共役ジエンとα-オレフィンおよび/またはエチレンとの共重合に適用される。
【背景技術】
【0002】
遷移金属を主成分とする、チーグラーナッタ型の触媒系に対して、共役ジエンおよびモノオレフィンが異なった配位指数を示すために、共役ジエンと、モノオレフィン、例えばα-オレフィン(即ち、定義により、α-オレフィンではないエチレンとは異なり、少なくとも3個の炭素原子を含む)との共重合を実施することは、長い間困難であった。
1970年以来、バナジウムまたはチタンを主成分とするこのような触媒系によって、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエンと、プロピレン等のα-オレフィンとの交互コポリマーを製造することは公知である。これについては、例えば「Furukawa, J.の、交互コポリマー(Alternating Copolymers), Cowie, J.M.G.編; Plenum Press: N.Y., 1985, pp. 153-187」を参照することができ、この文献は、これらのコポリマーを得るための、バナジウムおよびアルミニウムの誘導体を主成分とする触媒系の使用について述べている。
これら触媒系の一つの主な欠点は、これらが極めて低い温度(約-70℃)にて製造する必要があり、またこれらが、また必然的に、-30〜-50℃なる範囲の同様な低い共重合温度の使用を伴うことにある。この共重合におけるより高い温度の使用は、これら触媒系の不活化および得られるコポリマーの分子量の低下をもたらす。
【0003】
改善された活性および交互の程度におけるより高い制御性によって、より高い分子量を示す、ブタジエンとプロピレンとの交互コポリマーを得るために、ドイツ特許明細書DE-A-270 6118は、バナジウムジアルコキシハライドとトリアルキルアルミニウムとを含む触媒系の使用を教示している。
バナジウムを主成分とするこれら触媒系の、主な欠点は、同様に共重合を低温にて行う必要があることである。
非-交互型の共役ジエン/α-オレフィンコポリマー、例えばブタジエン/プロピレンまたはブタジエン/エチレン/プロピレンコポリマーも、過去において製造されており、その共重合反応は、周囲温度よりも高い温度にて行われている。そのために、ハロゲン化トリアルキルアルミニウムおよびバナジウム誘導体を主成分とする均質触媒系(低いトランス-1,4ブタジエン単位の含有率を持つ、ブタジエン/エチレン/プロピレンターポリマーの製造に関連する、ドイツ特許明細書DE-A-253 4496およびDE-A-200 1367を参照のこと)またはチタンおよびホスゲンの誘導体(ランダムコポリマーの製造に関連する、文献:Furukawa, J.等, J. Polym. Chem. Ed. 1973, 11, p.629を参照のこと)、あるいはハロゲン化マグネシウム上に担持されたTiCl4を主成分とする触媒系(欧州特許明細書EP-A-171 025を参照のこと)の何れかを使用している。
【0004】
これら後者の担持された触媒系は、一方で得られるコポリマー中にゲルの生成をもたらし、また他方で挿入ブタジエンの、典型的には15%未満という、低いモル含有率をもたらすという、二重の欠点を持つことに気付くであろう。
式:Cp2MX2を満たす、元素周期律表第IV族元素の公知のメタロセンを含有する均質触媒系によって、ブタジエン/エチレン/プロピレンターポリマーを製造しようとの試みもなされている(国際特許明細書WO-A-88/04672および文献「Galimberti等, Makromol. Chem., 1991, 192:2591」を参照のこと)。
上記式:Cp2MX2の触媒系に関する主な欠点の一つは、ブタジエンが大幅に活性を制限し、また極少量でのみ挿入されるに過ぎないことである。このようにして得たコポリマーが、環状の単位(シクロペンタン単位)を含むことに気付くであろう。
欧州特許明細書EP-A-891 993は、炭素原子数2〜12のモノオレフィンと、少なくとも1種の共役ジエンモノマーとの共重合用の触媒系を提案しており、この触媒系は、以下の成分(a)および以下の成分(b)、(c)および(d)から選択される少なくとも1種の化合物を含む:
【0005】
(a) 以下の式:(Cp1-Z-Y)MX1X2または(Cp1Cp2-Z)MX1X2の何れか一方を満足する遷移属錯体(ここで、Mは以下の金属:Ti、Zr、Hf、Rn、Nd、Sm、Ruから選択される何れかの金属であり、Cp1およびCp2は各々シクロペンタジエニル、インデニルまたはフルオレニル基であり、Yは酸素、窒素、リンまたは硫黄原子を含むリガンドであり、ZはC、O、B、S、Ge、Si、Snまたはこれら原子の何れか一つを含む基であり、X1およびX2は各々ルイス塩基である、アニオン性または中性のリガンドを表す);
(b) 該遷移属錯体(a)の金属Mと反応して、イオン性の錯体を形成する化合物;
(c) 有機アルミニウム化合物;および
(d) アルミノキサン(aluminoxane)。
この文献:EP-A-891 993で得られるコポリマーは、低いモル含有率(10%未満)で、挿入された共役ジエンを含み、かつ該コポリマーは常に環状の単位(シクロペンタンおよびシクロプロパン型の)を含むことに気付くであろう。
【0006】
具体的にランタニド錯体を含み、また共役ジエンとα-オレフィンとの共重合を可能とする触媒系も、文献に報告されている。Kaulbach等は、Angew. Makromol. Chem., 1995, 226:101において、ブタジエン/オクテンまたはドデセンとネオジムオクトエート錯体との共重合を記載している。Visseaux M.等は、Macromol. Chem. Phys., 2001, 202:2485において、α-オレフィン/共役ジエン(ブタジエンまたはイソプレン)とランタニドアリル錯体との共重合を記載している。
これら触媒系の主な欠点の一つは、挿入されたα-オレフィンのモル含有率が、常に低く、20%未満であることにある。
更に、エチレンと共役ジエン、例えばブタジエンとを、重合媒体中にてその場で、助触媒によってアルキル化することのできる、ハロゲン化されたランタニド錯体により共重合することも公知である。そこで、本件出願と同一の出願人による、欧州特許明細書EP-A-1 092 731は、そのための触媒系を教示しており、該触媒系は、
・一方で、以下の式の何れかによって表される有機金属錯体:
【0007】
【化1】

【0008】
ここで、Lnは57〜71なる範囲内であり得る、原子番号を持つランタニド金属を表し、Xはハロゲン原子を表し、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素原子であり得、該式A'において、2つのリガンド分子Cp1およびCp2は、各々置換または無置換のシクロペンタジエニルまたはフルオレニル基からなり、これらは該金属Lnと結合しており、該式B'において、式:MR2(ここで、Mは、メンデレエフの元素周期律表の第IVa欄の元素であり、またRは炭素原子数1〜20のアルキル基である)で示されるブリッジPにより相互に結合した、2つの置換または無置換のシクロペンタジエニルまたはフルオレニル基Cp1およびCp2からなるリガンド分子は、該金属Lnと結合しており、また
・他方で、アルキルマグネシウム、アルキルリチウム、アルキルアルミニウム、グリニャール試薬およびこれら成分の混合物を含む群から選択される助触媒を含む。
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的は、上記諸欠点を取除く、新規な触媒系を提案することにあり、またこの目的は、驚いたことに、本出願人が以下の成分を含む触媒系が、共役ジエンと少なくとも1種のモノオレフィン、例えばα-オレフィンおよび/またはエチレンとのコポリマー、およびより具体的には少なくとも1種の共役ジエンと、炭素原子数3〜18の少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマーであって、30,000 g/モルを越える、または60,000 g/モルさえも越え得る、数平均分子量を持ち、しかも40%を越えるモル含有率の該共役ジエン由来の単位、および10%以上のモル含有率の該α-オレフィン由来の単位を含む、該コポリマーを得るのに使用できることを見出したことにより、達成される:
【0010】
(i) 以下の一般式(1)で表される有機金属錯体:
{[P(Cp)(F1)]Ln(X)(Lx)}p (1)
ここで、Lnは、原子番号57〜71なる範囲のランタニド原子を表し、これにはシクロペンタジエニル基Cpおよびフルオレニル基Flを含むリガンドが結合しており、これらの基は各々独立に、置換または無置換であり、また式:MR1R2のブリッジPによって相互に結合しており、該式において、Mはメンデレエフの元素周期律表の第IVa欄から選ばれる元素であり、またR1およびR2は同一または異なっており、各々炭素原子数1〜20のアルキル基、あるいはまた炭素原子数6〜20のシクロアルキル基またはフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、これは塩素、フッ素、臭素またはヨウ素原子であり得、Lは随意の錯化分子、例えばエーテルを含み、かつ場合により実質的に錯化性の低い分子、例えばトルエンを含み、pは1以上の自然整数であり、xは0以上であり;および
(ii) アルキルマグネシウム、アルキルリチウム、アルキルアルミニウム、グリニャール試薬、およびこれら成分の混合物からなる群に属する助触媒。
該有機金属錯体は、該助触媒によって、該重合媒体中で、その場にて活性化することができ、該錯体は、二重の機能、即ち金属-炭素結合を生成する機能および該重合媒体を精製する機能を持つ。
該有機金属錯体は、例えば以下の式(1a)で表されるものである:
【0011】
【化2】

【0012】
本発明の一態様に従えば、該有機金属錯体は、上記式において、pが2であり、かつ以下の式で表されるものである:
【0013】
【化3】

【0014】
同様に、好ましくは、該シクロペンタジエニル基Cpおよび該フルオレニル基Fl両者は、上記式の何れかにおいて、無置換のものであり、夫々式:C5H4およびC13H8を満足するものである。
本発明の上記特徴の何れか一つに関連して、同様に好ましくは、該ブリッジPは、式:SiR1R2を満足するものである。更に一層好ましくは、該置換基R1およびR2は、各々独立にアルキル基、例えばメチル基である。
本発明の上記特徴の何れか一つに関連して、同様に好ましくは、該有機金属錯体は、上記ランタニドLnが、ネオジムであるようなものである。
本発明の上記特徴の何れか一つに関連して、同様に好ましくは、該助触媒は、アルキルマグネシウム、例えばブチルオクチルマグネシウム、またはアルキルアルミニウム、例えば水素化ジイソブチルアルミニウムとアルキルリチウム、例えばブチルリチウムとの混合物であって、これらが該混合物において、実質的に化学量論的な量で存在するようなものである。
【0015】
本発明の上記特徴の何れか一つに関連して、同様に好ましくは、該モル比(助触媒/有機金属錯体)は5以下であり、従って上記の得られるコポリマーは、30,000g/モルを越える数平均分子量Mnを持つことができる。
更に一層好ましくは、該モル比(助触媒/有機金属錯体)は2以下であり、従って上記の得られるコポリマーは、60,000g/モルを越える数平均分子量Mnを持つことができる。
本発明による、上記触媒系の製造方法は、以下の諸工程を含むことを特徴とする:
a) 以下の諸工程に従って、上記有機金属錯体を製造する工程:(i) 以下の式(2)で表される水素化されたリガンド分子とアルキルリチウムとを反応させて、以下の式(3)を満足するリチウムエンを生成し;
【0016】
【化4】

【0017】
(ii) 錯化溶媒中で、上記塩と、式:LnX3(ここでXはハロゲン原子である)で表される該ランタニドの無水トリハライドとを反応させ;(iii) 該錯化溶媒を蒸発させ、次いで該工程(ii)において使用した溶媒よりも実質的に錯化性の低い溶媒中で、該工程(ii)において得た生成物を抽出し;および場合により(iv) 該工程(iii)において抽出された生成物を結晶化させて、該錯化溶媒が完全に除去されている、該有機金属錯体を得る;次いで
b) 上記工程a)において製造した、該有機金属錯体に、上記助触媒を添加する工程。
好ましくは、以下に列挙する条件の少なくとも一つが成立する:
・上記工程a)の(i)において使用する該アルキルリチウムは、ブチルリチウムであり、および/または
・上記工程a)の(ii)において使用する該錯化溶媒は、テトラヒドロフランであり、および/または
・上記工程a)の(iii)において使用する、実質的に錯化性の低い溶媒は、ヘプタン(事実上非-錯化性)またはトルエン(「適度な」錯化性)である。
好ましくは、この方法においては、該シクロペンタジエニル基Cpおよび該フルオレニル基Flが、両者共に無置換のものであり、夫々式:C5H4およびC13H8を満足する。
本発明の上記特徴の何れか一つに関連して、同様に好ましくは、該ブリッジPは、式:SiR1R2を満足する。
【0018】
更に一層好ましくは、この方法では、該置換基R1およびR2は、各々独立にアルキル基、例えばメチル基である。
本発明の上記特徴の何れか一つに関連して、同様に好ましくは、この方法では、該ランタニドLnはネオジムである。
上記特徴の何れか一つに関連して、同様に好ましくは、この方法では、該助触媒はアルキルマグネシウム、例えばブチルオクチルマグネシウム、またはアルキルアルミニウム、例えば水素化ジイソブチルアルミニウムとアルキルリチウム、例えばブチルリチウムとの混合物であって、これら成分は該混合物において、実質的に化学量論的な量で存在する。
上記特徴の何れか一つに関連して、同様に好ましくは、この方法では、該モル比(該助触媒のモル数/該有機金属錯体のモル数)は5以下であり、従って上記の得られるコポリマーが、30,000g/モルを越える数平均分子量Mnを持つように、該触媒系を利用することができる。
更に一層好ましくは、この方法においては、該モル比(助触媒/有機金属錯体)は2以下であり、従って上記の得られるコポリマーが、60,000g/モルを越える数平均分子量Mnを持つように、該触媒系を利用することができる。
【0019】
少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のモノオレフィンとのコポリマーを製造するための本発明の方法は、不活性炭化水素溶媒中で、該共役ジエンおよび該モノオレフィンの存在下で、前に定義したような触媒系の反応を含む。
好ましくは、この方法では、該コポリマーは、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン由来の単位、およびエチレン、α-オレフィンおよびビニル芳香族化合物からなる群に属する少なくとも1種のモノオレフィン由来の単位を含む。
有利には、上記特徴の何れか一つに関連して、この方法では、該コポリマーは、炭素原子数3〜18のα-オレフィン由来の単位を、10%以上のモル含有率で含み、あるいはまた該コポリマーは、エチレン由来の単位、および10%以上のモル含有率で、炭素原子数3〜18のα-オレフィン由来の単位を含む。
後者2つの何れかの場合において、この方法では、有利には、該共役ジエン由来の単位が、該コポリマー中に、40%を越える、好ましくは50%を越えるモル含有率で存在する。
有利には、上記特徴の何れか一つに関連して、この方法では、該共役ジエン由来の単位が、70%を越える、トランス-1,4-結合の含有率を持つ。
【0020】
有利には、上記特徴の何れか一つに関連して、この方法では、該モル比(助触媒/有機金属錯体)が5以下であり、従って該コポリマーの数平均分子量Mnは30,000g/モルを越える。
更に一層有利には、この方法では、該モル比(助触媒/有機金属錯体)が2以下であり、従って該コポリマーは、60,000g/モルを越える数平均分子量Mnを持つ。
本発明による、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種の、炭素原子数3〜18のα-オレフィンとのコポリマーは、前に定義したような共重合法によって得ることができ、また本発明によるこのコポリマーは、好ましくは以下に列挙する条件を同時に満たすようなコポリマーである:
・該コポリマーの数平均分子量は、60,000g/モルを越え、
・該コポリマーは、40%を越え、かつ90%以下のモル含有率で存在する、上記共役ジエン由来の単位、および60%未満かつ10%以上のモル含有率で存在する、上記α-オレフィン由来の単位を含み、
・該共役ジエン由来の単位は、70%を越えるトランス-1,4-結合体の含有率を有し、および
・該コポリマーは、環状単位を含まない。
【0021】
上記2つの特徴の何れか一方に関連する、本発明の有利な態様によれば、該コポリマーは、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエンおよびプロペン、ブテン、ヘキセンまたはオクテン等の、炭素原子数3〜18のα-オレフィンとのコポリマーからなる。
更に一層好ましくは、本発明によるコポリマーは、60%を越え、かつ80%以下のモル含有率で該共役ジエン由来の単位を、および40%未満かつ20%以上のモル含有率で上記α-オレフィン由来の単位を含む。
本発明の有利な変形によれば、該コポリマーは、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン、エチレンおよびプロペン、ブテン、ヘキセンまたはオクテン等の、炭素原子数3〜18のα-オレフィンとのターポリマーで構成される。
本発明のもう一つの特徴によれば、該コポリマーは、該α-オレフィン由来の単位各々が、該コポリマーの連鎖において、該または各共役ジエン由来の2つの単位間に挿入されており、結果として、該コポリマーの該単位は、これら全体として、実際上交互の規則的な分布(当業者には、「擬似-交互配列」としても知られている)を示す。
【実施例】
【0022】
上記の、並びにその他の本発明の特徴は、本発明の幾つかの態様に関する、以下の説明を読むことによって、より良く理解されるであろう。該態様は、公知技術を示す最後の2つの比較例と対比される、非-限定的な例として与えられるものである。
以下の実施例全ては、アルゴン雰囲気下で行われ、また使用した溶媒は、予めアルゴン気流中で3A分子篩によって乾燥した。スチレンと共に、液状のα-オレフィンは、CaH2またはNaH上で乾燥し、次いで蒸留した。
これら実施例において得たコポリマーの微細構造は、1H NMRおよび13C NMR技術を用いて決定した。この目的のために、「BRUKER DRX 400」分光装置を、該1H NMRについては400MHzにて、また13C NMRについては100.6MHzにて使用した。これら方法の説明に関する、添付された補遺を参照することができる。
ガラス転移点は、「Setaram DSC 131」装置を用いた、DSC(示差走査型熱量法)によって測定した。使用した温度プログラムは、10℃/分なる速度にて、-120℃から150℃まで温度を高めることに相当する。
【0023】
分子量Mnおよびその多分散性指数は、以下に記載するような装置を用い、また以下に記載する分析条件下で、サイズ排除型クロマトグラフィー法により測定した。以下の実施例において述べる分子量の値は、ポリスチレンに対して等価なものとして表されている。
装置:ウォーターズ(Waters)社の515 HPLC(ポンプ)およびIR 410(検出器)
カラム:「ウォーターズスティラゲル(Styragel) HR 4E」カラム+2「ウォーターズスティラゲルHR 5E」カラム
温度:T(カラム)=45℃;T(検出器)=40℃
溶媒:THF
溶出速度:1ml/分
標準物質:ポリスチレン(Mn:580〜3,150,000g/モル)
【0024】
実施例1:有機金属錯体:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xの合成
リガンド:Me2Si(C5H5)(C13H9)の合成
このリガンド:Me2Si(C5H5)(C13H9)(ここで、Meはメチル基を表す)は、文献(Alt等, J. Organomet. Chem., 1996, 506:63-71)に記載されている操作方法に従って、合成した。
塩:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]Li2(OC4H8)2の合成
12.1mLの1.6M BuLiを、周囲温度にて、2.8gのリガンド:Me2Si(C5H5)(C13H9)を150mLのTHFに溶解した溶液に添加する。この溶液を4時間撹拌し、次いでTHFを蒸発させる。得られる残渣を、真空条件下で乾燥し、次いで冷却条件下で、50mLのヘプタンで2回洗浄する。黄色固体を単離する。この固体の1H NMR分析を、「BRUKER 300MHz」分光計を用いて、THF-d8範囲で行った:δ(ppm単位の化学シフト)= 7.85 (d, J=8Hz, 2H, Fl), 7.77 (d, J=8Hz, 2H, Fl), 6.79 (dd, J=8Hz, 7Hz, 2H, Fl), 6.44 (dd, J=8Hz, 7Hz, 2H, Fl), 6.15 (m, 2H, Cp), 5.83 (m, 2H, Cp), 3.62 (THF), 1.78 (THF), 0.67 (s, 6H, SiMe2)。
得られたこの塩の構造は、[Me2Si(C5H4)(C13H8)]Li2(OC4H8)2である。
有機金属錯体:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xの合成
0.58g(2.3mmol)のNdCl3を、50mLのTHF中で還流しつつ、一夜撹拌する。0.82gの上記塩:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]Li2(OC4H8)2を50mLのTHFに溶解した溶液を、-20℃にて上記の生成する懸濁液に添加する。次いで、この生成する溶液を、周囲温度にて24時間撹拌する。該THFを蒸発させ、得られる残渣をトルエン中に取出す。塩(LiCl)を濾別し、式:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xの有機金属錯体を、該トルエンの蒸発によって回収する。
【0025】
実施例2:実施例1の有機金属錯体および様々な助触媒による、ブタジエンとエチレンとの共重合
エチレンとブタジエンとの共重合に関する、本発明による3つのテストを、エチレンのホモ重合に関する「コントロール」テストと共に、以下に記載する操作法に従って実施した。
300mLのトルエン、特定量xc(mg)の、実施例1で製造した、上記式:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xの有機金属錯体および本発明による助触媒で構成される溶液、次いでブタジエンのモル分率y(%)を持つ、エチレンとブタジエンとの混合物を、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。該反応器の内圧を、ブタジエンのモル分率yの維持が可能である場合には、約0.4MPa(4 bar)に維持した。この重合反応器の温度は、この重合のために、80℃に維持した。
反応時間t(分)の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得る。乾燥後に、m(g)の、モル分率z(%)にてブタジエン由来の単位を含むコポリマーを得る。
使用した助触媒は、ブチルオクチルマグネシウム(以下において「BOMAG」と略称する)またはブチルリチウム(BuLi)と水素化ジイソブチルアルミニウム(DiBAH)との、以下のようなモル比率の混合物であった:
ネオジム/BuLi/DiBAH = 1/10/10、およびネオジム/BOMAG = 1/20 (即ち、ネオジムに対して、助触媒20モル当量)。
これら4種の重合テストを、以下の表1に記載する:
【0026】
【表1】

【0027】
これらの結果は、テスト2-2〜2-4において得たエチレン/ブタジエンコポリマーが、20%を越えるモル分率zにて、ブタジエン由来の単位を含み、またこれらのブタジエン由来の単位に対するトランス-1,4単位のモル含有率が、90%を越えることを示している。
実施例3:実施例1の有機金属錯体および様々な助触媒による、ブタジエンとオクテンとの共重合
実施例3-1
10mLのトルエン、100mLのオクテン、35mgの実施例1において製造した錯体およびネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、該ネオジムに対して20モル当量の「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒で構成される溶液、次いで25mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間7.5時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は11.4gであった。このポリマーの分子量Mnは、11470g/モル(Ip指数=1.7)であった。ガラス転移点は-71.5℃であった。このコポリマーの、13C及び1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
オクテン= 32.0モル%およびブタジエン= 68.0% (1,2-ブタジエン=7.0%および1,4-ブタジエン=93.0%、その96.0%はトランス-1,4であった)。
【0028】
実施例3-2
10mLのトルエン、100mLのオクテン、37mgの実施例1において製造した錯体および該ネオジムに対して20モル当量の「BOMAG」助触媒で構成される溶液、次いで25mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間15時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成するコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は13.3gであった。このポリマーの分子量Mnは、8960g/モル(Ip指数=1.8)であった。ガラス転移点は-65.4℃であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
オクテン= 29.4モル%およびブタジエン= 70.6% (1,2-ブタジエン=16.3%および1,4-ブタジエン=83.7%、その97.5%はトランス-1,4であった)。
【0029】
実施例3-3
10mLのトルエン、100mLのオクテン、37mgの実施例1において製造した錯体および該ネオジムに対して5モル当量の「BOMAG」助触媒で構成される溶液、次いで25mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間15時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は13.1gであった。このコポリマーの分子量Mnは、30650g/モル(Ip指数=2.3)であった。ガラス転移点は-69.0℃であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
オクテン= 28.8モル%およびブタジエン= 71.2% (1,2-ブタジエン=10.3%および1,4-ブタジエン=89.7%、その96.6%はトランス-1,4であった)。
【0030】
実施例3-4
10mLのトルエン、100mLのオクテン、33mgの実施例1において製造した錯体および該ネオジムに対して2モル当量の「BOMAG」助触媒で構成される溶液、次いで25mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間15時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は6.8gであった。このコポリマーの分子量Mnは、67350g/モル(Ip指数=1.9)であった。ガラス転移点は-69.6℃であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
オクテン= 26.2モル%およびブタジエン= 73.8% (1,2-ブタジエン=10.1%および1,4-ブタジエン=89.9%、その93.8%はトランス-1,4体であった)。
【0031】
実施例3-5
200mLのトルエン、50mLのオクテン、30mgの実施例1において製造した錯体および該ネオジムに対して20モル当量の「BOMAG」助触媒で構成される溶液、次いで30mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間22時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は7.6gであった。このコポリマーの分子量Mnは、7120g/モル(Ip指数=2.0)であった。ガラス転移点は-64℃であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
オクテン= 13.7モル%およびブタジエン= 86.3% (1,2-ブタジエン=24.7%および1,4-ブタジエン=75.3%、その95.2%はトランス-1,4であった)。
【0032】
これらのテスト3-1〜3-5において得た結果は、これら生成したコポリマーが、10〜60%なる範囲の、オクテンを由来とする単位のモル含有率および90〜40%の範囲内の、ブタジエンを由来とする単位のモル含有率を持つことを示している。
ブタジエンを由来とするこれらコポリマーの単位が、常に70%を越える、トランス-1,4単位のモル含有率を持つことに気付くであろう。
更に、該テスト3-3および3-4は、使用したモル比(助触媒/有機金属錯体)が非常に低い(これらのテスト3-3および3-4に対して、該比は夫々5および2に等しい)ことから、比較的高い分子量Mn(夫々30,000および60,000を越える)を持つ、オクテン/ブタジエンコポリマーを、有利に生成することに気付くであろう。
【0033】
実施例4:実施例1の有機金属錯体および助触媒による、ブタジエンとヘキセンとの共重合
10mLのトルエン、100mLのヘキセン、39mgの実施例1において製造した錯体およびネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、該ネオジムに対して20モル当量の「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒で構成される溶液、次いで25mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間17時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は18.9gであった。このポリマーの分子量Mnは、17500g/モル(Ip指数=1.9)であった。ガラス転移点は-68.7℃であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
ヘキセン= 29.8モル%およびブタジエン= 70.2% (1,2-ブタジエン=7.5%および1,4-ブタジエン=92.5%、その95.0%はトランス-1,4であった)。
【0034】
実施例5:実施例1の有機金属錯体および助触媒による、ブタジエンとブテンとの共重合
100mLのトルエン、37mgの実施例1において製造した錯体およびネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、該ネオジムに対して20モル当量の「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒で構成される溶液、次いで25mLのブタジエンおよび25mLのブテンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間18時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は10.7gであった。このコポリマーの分子量Mnは、13200g/モル(Ip指数=1.9)であった。ガラス転移点は-74.6℃であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
ブテン= 18.6モル%およびブタジエン= 81.4% (1,2-ブタジエン=9.6%および1,4-ブタジエン=90.4%、その95.0%はトランス-1,4であった)。
【0035】
実施例6:実施例1の有機金属錯体および助触媒による、ブタジエンとヘキサデセンとの共重合
10mLのトルエン、100mLのヘキサデセン、32mgの実施例1において製造した錯体およびネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、該ネオジムに対して20モル当量の「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒で構成される溶液、次いで25mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間7時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥し、かつあらゆる残留ヘキサデセンを留去した後、収量は9.9gであった。このコポリマーの分子量Mnは、21530g/モル(Ip指数=1.8)であった。ガラス転移点は、極めて広い溶融温度範囲(Tf(ピーク点)=-9℃)のために測定不可能であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
ヘキサデセン= 21.8モル%およびブタジエン= 78.2% (1,2-ブタジエン=10.2%および1,4-ブタジエン=89.8%、その93.8%はトランス-1,4であった)。
【0036】
実施例7:実施例1の有機金属錯体および助触媒による、ブタジエンとプロペンとの共重合
450mLのトルエン、25mgの実施例1において製造した錯体およびネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、該ネオジムに対して20モル当量の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒で構成される溶液、30mLのブタジエンおよびT=80℃において、全圧力P=0.7MPa(7 bar)を達成するのに要する適量のプロピレンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。
反応時間15時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって、重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は7.3gであった。このコポリマーの分子量Mnは、9120g/モル(Ip指数=2.0)であった。ガラス転移点は-75.3℃であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):プロペン= 35.8モル%およびブタジエン= 64.2%、また1,2-ブタジエン=6.1%、1,4-ブタジエン=93.9%、その97.4%はトランス-1,4であった。
【0037】
実施例8:実施例1の有機金属錯体および助触媒による、ブタジエンとスチレンとの共重合
50mLのトルエン、50mLのスチレン、30mgの実施例1で製造した該錯体およびネオジムに対して20モル当量の「BOMAG」助触媒で構成される溶液、および25mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間14時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は46.4gであった。このコポリマーの分子量Mnは、25900g/モル(Ip指数=2.0)であった。ガラス転移点は+16℃であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
スチレン= 57モル%およびブタジエン= 43% (1,4-ブタジエン=100%、その100%がトランス-1,4であった)。
【0038】
実施例9:実施例1の有機金属錯体および助触媒による、ブタジエン、エチレンおよびオクテンのターポリマー化
10mLのトルエン、100mLのオクテン、37mgの実施例1において製造した錯体およびネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、該ネオジムに対して20モル当量の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒で構成される溶液、次いで25mLのブタジエンおよび最後に温度Tが80℃である場合に、該反応器内の全圧力P=0.45MPa (4.5 bar)を達成するような量のエチレンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の内圧を、0.45MPa (4.5 bar)に調節した。
反応時間3.5時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって重合を終了させ、次いで生成したターポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は25.7gであった。このターポリマーの分子量Mnは、13300g/モル(Ip指数=2.9)であった。ガラス転移点は、-78℃であった。このターポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
オクテン= 14.4モル%、エチレン=28.8モル%およびブタジエン= 56.8% (1,2-ブタジエン=5.7%および1,4-ブタジエン=94.3%、その99.3%はトランス-1,4であった)。
【0039】
比較実施例10:既知の有機金属錯体および助触媒による、ブタジエン/ヘキサンの共重合およびエチレン/ブタジエン/ヘキセンのターポリマー化
使用したこの触媒系は上記特許明細書EP-A-1 092 731に、エチレンとブタジエンとの共重合のために利用可能であるものとして記載されている、触媒系の一種である。
この触媒系は、式:[Me2Si(Me3SiC5H3)2]NdCl (ここで、Meはメチル基を表す)で表される有機金属錯体およびBuLi/DiBAH助触媒を含む。
この有機金属錯体は、具体的には1個のシクロペンタジエニル基と1個のフルオレニル基とを含む、本発明の有機金属錯体と異なり、2個の置換されたシクロペンタジエニル基を含むことに気付くであろう。
実施例10-1(ブタジエン/ヘキセンの共重合)
10mLのトルエン、100mLのヘキセン、42.3mgの上記式:[Me2Si(Me3SiC5H3)2]NdClで表される既知の錯体およびネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、該ネオジムに対して20モル当量の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒で構成される溶液、次いで30mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間28時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は5.0gであった。このコポリマーの分子量Mnは、5900g/モル(Ip指数=2.5)であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
ヘキセン= 11.6モル%およびブタジエン= 88.4% (但し、1,2-ブタジエン=5.3%および1,4-ブタジエン=94.7%であり、その94.5%がトランス-1,4であった)。
【0040】
本発明の実施例4(実施例1の有機金属錯体を用いた共重合)において得たブタジエン/ヘキセンコポリマーは、ヘキセン由来の単位のより高いモル含有率(本実施例10-1における僅か11.6%に比して、29.8%)を有し、また該実施例4に関連する該共重合の収量(18.9g)は、この比較実施例10-1における収量よりも著しく高いことに気付くであろう。
実施例10-2 (エチレン/ブタジエン/ヘキセンのターポリマー化)
10mLのトルエン、100mLのヘキセン、33mgの上記式:[Me2Si(Me3SiC5H3)2]NdClで表される既知の錯体およびネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、該ネオジムに対して20モル当量の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒で構成される溶液、次いで温度Tが80℃である場合に、該反応器内の全圧力P=0.4MPa (4 bar)を達成するような所定量のブタジエン/エチレン混合物を、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の内圧を、0.4MPa (4 bar)に調節した。
反応時間2時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって重合を終了させ、次いで生成したターポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は6.4gであった。このターポリマーの分子量Mnは、2600g/モル(Ip指数=1.5)であった。このターポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
ヘキセン= 0.8モル%、エチレン=76.0%およびブタジエン= 23.2% (但し、ここで1,2-ブタジエン=1.4%および1,4-ブタジエン=98.6%であり、その100%がトランス-1,4であった)。
ヘキセン由来の単位のモル含有率は極めて低く、1%未満であることに気付くであろう。
【0041】
比較実施例11:既知有機金属錯体および助触媒による、ブタジエン/ヘキセンの共重合
使用したこの触媒系は、上記特許明細書EP-A-1 092 731において、エチレンとブタジエンとを共重合するために利用可能であるものとして記載されている、触媒系の一つであった。
この触媒系は、式:[Me2Si(C13H8)2]NdCl (ここで、Meはメチル基を表す)で表される有機金属錯体およびBuLi/DiBAH助触媒を含む。
この有機金属錯体は、本発明の有機金属錯体とは異なり、2個のフルオレニル基を含むことに気付くであろう。
10mLのトルエン、100mLのヘキセン、28mgの上記式:[Me2Si(C13H8)2]NdClで表される既知の錯体およびネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、該ネオジムに対して20モル当量の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒で構成される溶液、次いで25mLのブタジエンを、アルゴン雰囲気下にある反応器内に、順次導入した。この重合反応器の温度を、80℃に調節した。
反応時間18時間の経過後、該反応器を冷却し、かつ脱気することによって重合を終了させ、次いで生成したコポリマーを、メタノール中での沈殿により得た。70℃、減圧下で乾燥した後、収量は0.5gであった。コポリマーの2つの画分が得られ(極めて低い収量)、その一方は低分子量Mn(1830g/モル、Ip=1.3)であり、他方は高分子量(91160g/モル、Ip=1.75)であった。このコポリマーの、13Cおよび1H NMRによる分析は、以下の通りであった(モル含有率):
ヘキセン= 1.8モル%およびブタジエン= 98.2% (但し、1,2-ブタジエン=12.8%および1,4-ブタジエン=87.2%であり、その68.6%がトランス-1,4であった)。
本発明の実施例4(実施例1の有機金属錯体を用いた共重合)において得たブタジエン/ヘキセンコポリマーは、ヘキセン由来の単位のより高いモル含有率(本実施例11における僅か1.8%に比して、29.8%)を有し、また該実施例4に関連する該共重合の収量(18.9g)は、この比較実施例11における収量よりも著しく高いことに気付くであろう。
【0042】
補遺
α-オレフィンとブタジエンとのコポリマーの、13C NMRおよび1H NMR分析
これらの分析に使用した機器は、BRUKER DRX 400分光装置であり、これらをプロトンについては周波数400MHzにて、また炭素に関しては周波数100.6MHzにて動作させた。分析用の溶媒は、重水素化テトラクロロエチレン(TCE)およびベンゼン(C6D6)の混合物であった。これらスペクトルは、温度90℃にて記録した。
1) 1H NMRによるコポリマーの分析
α-オレフィンとブタジエンとのコポリマーの1H NMRスペクトルの分析は、このコポリマーの組成(ブタジエンおよびα-オレフィンの含有率)、およびブタジエンの1,4-トランスと1,4-シス挿入同士の区別無しに、ブタジエンの1,2-および1,4-挿入間の比を明らかにすることを可能とする。
これらスペクトルを、該α-オレフィン(OIで表す)、1,2(V)または1,4(L)として挿入されたブタジエンに属する様々なプロトンの特性(スペクトル)線に対応する、5つのゾーン(S0-S4)に分割した(表1を参照のこと)。
【0043】
表1に規定した様々な領域の積分は、ブタジエンの全量(B=L+V)および1,2/1,4比の迅速な算出を可能とした:
・S3 = 2V即ちV = S3/2
・S4 = 2L + V即ちL = (S4 - S3)/2
従って、
B = S3/4 + S4/2 (ブタジエンの全量)
V/(V + L) = (S3/2)/(S3/4 + S4/2) (1,2として挿入されたブタジエンの含有率)
夫々、ヘキセン-ブタジエンおよびヘキサデセン-ブタジエンコポリマーと関連する2つのスペクトルは、1H NMRによって得たものであり、これら二種のコポリマー各々は、実施例1において製造した式:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xで示される有機金属錯体と、ネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒によって合成されたものである。以下の表1は、これらスペクトル上の線に関する帰属の詳細を与える:
【0044】
【表2】

【0045】
該コポリマー中のα-オレフィンの全量を得るためには、理論的には2つのゾーンS0またはS1の一方を使用することで十分であるが、様々な状況が起こり得る。
第一に、これらコポリマーの分子量が低い場合、飽和(ブチル、オクチルまたはイソブチル)鎖末端の特性スペクトル線は、S0-S1ゾーン内に見出され、このことはこのゾーンが、最早α-オレフィンの挿入率の特徴ではないことを意味する。この場合、該挿入率は、該コポリマーの13C NMRに基いて決定する必要があろう。
長鎖オレフィンの場合、または該α-オレフィンの含有率が、著しく高い訳ではない場合、該S0-線は弱過ぎて、該α-オレフィンの含有率を決定するために直接使用することができず、代わりに該S1-線またはこれら2つの線(S0 + S1)を使用すべきである。
最後に、幾つかの場合には、S0、S1およびS2表面積の分解能が貧弱であり、従ってこれらを別々に積分することができず、そのためα-オレフィンの挿入率は、これら表面積の総和を基にして決定されるであろう。
従って、様々な状況間で区別する必要がある。各計算は、上記した様々な状況の幾つかに適合させ、また得られる結果を異なる方法を用いて、確認することができる:
【0046】
第一の場合:S0のみを使用(比較的高い分子量)
・S0 = 3Ol およびその結果として、Ol = S0/3 (α-オレフィンの量)
第二の場合:S1のみを使用(長鎖オレフィンの場合)
・S1 = (2n - 3)Ol + 2V = (2n - 3)Ol + S3 (nは該α-オレフィンの炭素原子数)、従ってOl = (S1 - S3)/(2n - 3) (α-オレフィンの量)
第三の場合:(S0 + S1)を使用する。というのは、S0の信頼性が低い(α-オレフィン含有率が低いか、あるいは長鎖オレフィンの場合)か、あるいはS0およびS1が十分に解像されないからである。
・(S0 + S1) = 3Ol + (2n - 3)Ol + S3 = 2nOl + S3、従ってOl = ((S0 + S1) - S3)/2n (α-オレフィンの量)
第四の場合:(S1 + S2)を使用する。というのは、S1およびS2が十分に解像されないからである。
・(S1 + S2) = (2n - 3)Ol + S3 + 2S4 - S3/2 = (2n - 3)Ol + 2S4 + S3/2、従ってOl = ((S1 + S2) - 2S4 - S3/2)/(2n - 3) (α-オレフィンの量)
第五の場合:(S0 + S1 + S2)を使用する。
・(S0 + S1 + S2) = 2nOl + S3/2 + 2S4、従ってOl = ((S0 + S1 + S2) - S3/2 - 2S4)/2n (α-オレフィンの量)
コポリマーの組成は、上で算出されたブタジエンおよびα-オレフィンの量に基いて、容易に演繹することができる。
【0047】
2) 13C NMRによるコポリマーの分析
これらコポリマーの13C NMRスペクトル分析は、該コポリマーの微細構造のより正確な同定を可能とする。NMRによる、この微細構造の分析(即ち、「モノマー」単位、即ちブタジエンジアド(diads)またはトリアド(triads)、特に1,2/1,4-シスブタジエンおよび1,4-トランス-ブタジエンおよびα-オレフィンの様々な結合配列の定量)に基いて、該コポリマーの組成および該ブタジエンの1,4-挿入のシス/トランス比を明らかにすることが可能である。この分析は、各α-オレフィンにとって固有のものである。
我々は、様々なスペクトル線を帰属させるための方法全体を提示し、次いでヘキセン-ブタジエンコポリマーの組成を定量化することによって、該コポリマーの13C NMRスペクトル分析に関する詳細な説明を提供すべきものと決定した。他の全てのα-オレフィンに関しては、この提示は、より簡単なものであるが、利用する手順はヘキセンに関するものと同一である。
また、我々は、アルケン炭素ゾーン(低周波数場(low field))には注意を払うこと無しに、単に脂肪族炭素ゾーン(高周波数場(high field))を分析することで満足した。
この章において検討した全てのコポリマーは、比較的高い分子量を持ち、このことは、連鎖末端に対応するピークによって乱されるような、13C NMRスペクトルを持つことを回避することを可能とする。
【0048】
2.1) ヘキセン-ブタジエンコポリマー:
13C NMRを利用して、実施例1において製造した式:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xで示される有機金属錯体と、ネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒によって合成した、ヘキセン-ブタジエンコポリマーのスペクトルを得た。
(CH2)炭素の特性(スペクトル)線は、夫々(ポリブタジエンにおけるような)ブタジエン-ブタジエン結合内の1,4-シスおよび1,4-トランス位置に挿入されたブタジエン二重結合のα-位における27.83ppm(線4)および33.10ppm(線8)において、即座にそれと認めることができる。ポリブタジエンの1,2-位に挿入されたブタジエンの特性(スペクトル)線も、低含有率で、34.5および38.4ppmにおいて存在する。
一方で、ヘキセン-ヘキセン結合に関する特性シグナルは存在しない(ポリヘキセンにおけるHH結合の特徴である、41.17ppm(CH2)にはスペクトル線が無い)。
【0049】
従って、その他の同定されていないシグナルは、ヘキセンが孤立している(BHB)、ヘキセン-ブタジエン(HB)結合に相当するはずである。従って、この触媒を用いて得たエチレン-ブタジエンコポリマーの分析は、該ブタジエンが、本質的に1,4-トランス位置に挿入されていることを立証している。かくして、我々は、ブタジエンとα-オレフィンとのコポリマーにおける、この種の挿入が、発見可能であるものと予想することができる。
従って、我々は、1,4-トランスブタジエン/ヘキセン/1,4-トランスブタジエン(THT)結合に係る特性スペクトル線を見出すことを試みた。そのために、我々は、出発点として、エチレン-ブタジエンコポリマーに関して、実験室において決定した、トランス二重結合(T)の影響による増加を与えた、ヘキセン-エチレンコポリマーのEHE結合の化学シフトを用いた:
(α(トランス) = +2.84; β(トランス) = 0; γ(トランス) = -0.5; δ(トランス) = -0.15;およびε(トランス) = -0.04ppm)。
この手順は、以下のスキームAおよび表2に示されている。これは、該THT結合(表2)にとって特徴的なものである、8個の新たなシグナル(該スペクトルのスペクトル線1、2、5、6、9-12)の同定を可能とした。
スキームA: EHE結合からTHT結合への変化(使用した記号表記)
【0050】
【化5】












【0051】
【表3】

【0052】
このようにして、該ヘキセン-ブタジエンコポリマーのスペクトルに関する主なシグナル全てを、帰属させた。他の2つの強度の低いスペクトル線(線3および7)をも、該ブタジエンが1,4-シス(C)に挿入されているBHB結合に特徴的なものとして同定した。
この場合、炭素aおよびb'のみが、ブタジエンの挿入様式における変化によって影響され、その他は、その二重結合がシスであれ、トランスであれ、同一のシフトを持つ。実際に、シスおよびトランス二重結合による影響の増加は、後者のα-位置における炭素を除き、同等であることが、一般的に受容れられている。
シス二重結合(C)と隣接する炭素原子の化学シフトは、ポリブタジエンにおけるシスおよびトランス二重結合のα-位置におけるCH2間に観測される差(Δδ=5.15ppm)を推論することによって、THTについて決定したものに基いて得た。
以下の表3は、ヘキセン-ブタジエンコポリマーの炭素に関する(スペクトルに基く)全ての化学シフトを示す。
【0053】
【表4】

【0054】
該ヘキセン単位は、炭素H3(スペクトル線5)、H4(スペクトル線9)またはa'(スペクトル線10)を用いて定量化したが、これらの積分は他のもの(H1、H2:分岐の末端にあることから、完全な弛緩状態にない;様々なCH:NOE…)よりも信頼性が高い。その結果、H = A5 = A9 = A10 (またはこれら3つの平均)となる。
ブタジエンに関しては、1,4-シス(C)と1,4-トランス(T)挿入との間で区別する必要がある。該二重結合のα-位における全ての炭素を考慮すると、以下の結果が得られる:
・2T = 2T(CまたはT) + TH = 2T(CまたはT) + TH + HT (ブタジエン-ブタジエンおよびブタジエン-ヘキセンジアドにおけるTのα-位における炭素)
・2C = 2C(CまたはT) + CH = 2C(CまたはT) + CH + HC (Cのα-位における炭素)
これらスペクトル線を帰属させた後(上記表3を参照のこと)、これらの結果は以下のようになる:
・2T(CまたはT) = A8, TH + HT = “b'T + aT” = A6 + A11
・2C(CまたはT) = A4, CH + HC = “b'C + aC” = A3 + A7
従って、2T = A8 + A6 + A11および2C = A4 + A3 + A7および2(T + C) = 2L = A3 + A4 + A6 + A7 + A8 + A11
【0055】
従って、我々は、ブタジエン挿入の立体化学的特性と共に、該コポリマー中へのヘキセンの挿入割合を決定することができる:
ヘキセン含有率:H(H+L) = 2A10/(2A10+A3+A4+A6+A7+A8+A11) (L=1,4-ブタジエン);これは1H NMRから決定される1,2-位におけるブタジエンの挿入率τを考慮して補正する必要があり、結果として以下のようになる:H/(H+B) = 2A10/(2A10+(1/(1-τ))(A3+A4+A6+A7+A8+A11)) (= H/(H+L+V) = H/(H+(1/(1-τ))L))
ブタジエンの1,4-挿入:
該コポリマーのシス/シス+トランス比=(A4+A3+A7)/(A3+A4+A6+A7+A8+A11)
・該ブタジエン-ブタジエンジアドのシス/シス+トランス比= A4/(A4+A8)
・該ブタジエン-ヘキセンジアドのシス/シス+トランス比=(A3+A7)/(A3+A6+A7+A11)
2.2) プロピレン-ブタジエンコポリマー
13C NMRを利用して、実施例1において製造した式:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xで示される有機金属錯体と、ネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒によって合成した、プロピレン-ブタジエンコポリマーのスペクトルを得た。
我々は、様々なスペクトル線(以下の表4を参照のこと)を帰属させるために、上記と同様の手順を利用した。プロピレン単位の結合は観測されず、該プロピレン単位は、常に2つのブタジエン単位間で孤立していた。
記号表記については、以下のスキームBを参照のこと。
【0056】
【表5】

【0057】
スキームB:プロピレン-ブタジエンコポリマーのBPB結合に関する記号表記:

【0058】
【化6】

【0059】
これら帰属を基にして、我々は、該コポリマーの組成および微細構造を決定した:
・P = A6;
・2T = 2T(CまたはT) + TPおよび2C = 2C(CまたはT) + CP
(TPおよびCPは、非-配向性ジアド)
即ち、2(T+C)= 2T(CまたはT)+2C(CまたはT)+(TP+CP) = (A5-A6)+A3+2A6
また、その結果として、プロピレンの含有率は以下の通りである:
P/(P+L) = 2A6/(A3+A5+3A6) (L= 1,4-ブタジエン);これは1H NMRから決定される1,2-位におけるブタジエンの挿入率τを考慮して補正する必要があり、結果として以下のようになる:P/(P+B) = 2A6/(2A6+(1/(1-τ))(A3+A5+A6))。
ブタジエン挿入に関連して、以下のものを決定することは容易である:
・該ブタジエン-ブタジエンジアドのシス/シス+トランス比= A3/(A3+A5+A6)
・該ブタジエン-プロピレンジアドのシス/シス+トランス比=A2/(A2+A4)
2.3) ブテン-ブタジエンコポリマー
13C NMRを利用して、実施例1において製造した式:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xで示される有機金属錯体と、ネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒によって合成した、ブテン-ブタジエンコポリマーのスペクトルを得た。
このスペクトルの様々なスペクトル線の帰属を、以下の表5に記載する。ブテンは、実際上常に、1,4-トランス位において挿入された2つのブタジエン単位間で孤立(TBT)している。使用した記号表記については、側鎖アルキル基に相当する炭素B1およびB2を除き、上記プロピレンに関して使用したものと同一である。
【0060】
【表6】

【0061】
これら帰属を基にして、我々は、該コポリマーの組成および微細構造を決定した:
・B = A5= A7= A8 (またはこれら3つの平均)
・2T = 2T(CまたはT)+TB = A6+A5+A8および2C=2C(CまたはT)+CB = A3
即ち、2(T+C) = A3+A6+A5+A8
また、結果的に、ブテンの含有率は以下のようになる:
B/(B+L) = 2A7/(2A7+A3+A6+A5+A8) (L= 1,4-ブタジエン);これは1H NMRにより決定される1,2-位におけるブタジエンの挿入率τを考慮して補正する必要があり、結果として以下のようになる:B/(B+Bu) = 2A7/(2A7+(1/(1-τ))(A3+A6+A5+A8))。
ブタジエン挿入に関連して、以下のものを見出すことは容易である:
・該ブタジエン-ブタジエンジアドのシス/シス+トランス比= A3/(A3+A6)
・該ブタジエン-ブテンジアド中には、1,4-シスは存在しない。
2.4) オクテン-ブタジエンコポリマー
13C NMRを利用して、実施例1において製造した式:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xで示される有機金属錯体と、ネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒によって合成した、オクテン-ブタジエンコポリマーのスペクトルを得た。
このスペクトルの様々なスペクトル線の帰属を、以下の表6に記載する。オクテンは常に、1,4-トランス位において挿入された2つのブタジエン単位間で孤立(TOT)している。使用した記号表記を、以下のスキームCに示す。
スキームC:オクテン-ブタジエンコポリマーのTOT結合に関する記号表記
【0062】
【化7】















【0063】
【表7】

【0064】
これら帰属を基にして、該ポリマーの組成および微細構造を決定する:
・2O = A1+A5
・2T = 2T(CまたはT)+TO = A4+A3+A7および2C=2C(CまたはT)+CO = A2
即ち、2(T+C) = A2+A4+A3+A7
また、結果的に、オクテンの含有率は以下のようになる:
O/(O+L) = (A1+A5)/((A1+A5)+A2+A4+A3+A7) (L= 1,4-ブタジエン);これは1H NMRにより決定される1,2-位におけるブタジエンの挿入率τを考慮して補正され、結果として以下のようになる:O/(O+B) = (A1+A5)/((A1+A5)+(1/(1-τ))(A2+A4+A3+A7))。
ブタジエン挿入に関連して、以下のことが、見出される:
・該ブタジエン-ブタジエンジアドのシス/シス+トランス比= A2/(A2+A4)
・該ブタジエン-オクテンジアド中には、1,4-シスは存在しない。
2.5) ヘキサデセン-ブタジエンコポリマー
13C NMRを利用して、実施例1において製造した式:[Me2Si(C5H4)(C13H8)]NdCl(OC4H8)xで示される有機金属錯体と、ネオジム/BuLi/DiBAH=1/10/10なる比率の、「BuLi/DiBAH」混合物からなる助触媒によって合成した、ヘキサデセン-ブタジエンコポリマーのスペクトルを得た。
このスペクトルに関するスペクトル線の帰属を、以下の表7に記載する:












【0065】
【表8】

【0066】
オクテンを用いた場合と同様に、該ヘキサデセンは、常に1,4-トランス位に挿入された2つのブタジエン単位間で孤立している(THT)。その様々な帰属を基にして、以下のように結論付けることができる:
・2H = A1+A5
・2T = 2T(CまたはT)+TH = A4+2A6および2C=2C(CまたはT)+CH = A2
即ち、2(T+C) = A2+A4+2A6
また、結果的に、ヘキサデセンの含有率は以下のようになる:
H/(H+L) = (A1+A5)/((A1+A5)+A2+A4+2A6) (L= 1,4-ブタジエン);これは1H NMRにより決定される1,2-位におけるブタジエンの挿入率τを考慮して補正する必要があり、以下のようになる:H/(H+B) = (A1+A5)/((A1+A5)+(1/(1-τ))(A2+A4+2A6))。
ブタジエン挿入に関連して、以下のことが、見出される:
・該ブタジエン-ブタジエンジアドのシス/シス+トランス比= A2/(A2+A4)
・該ブタジエン-ヘキサデセンジアド中には、1,4-シスは存在しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエンと少なくとも1種のモノオレフィン、例えばα-オレフィンおよび/またはエチレンとのコポリマーを得るのに使用できる触媒系であって、以下の成分:
(i) 以下の一般式(1)で表される有機金属錯体:
{[P(Cp)(Fl)]Ln(X)(Lx)}p (1)
ここで、Lnは、原子番号57〜71なる範囲のランタニド原子を表し、これにはシクロペンタジエニル基Cpおよびフルオレニル基Flを含むリガンドが結合しており、これらの基は各々独立に、置換または無置換であり、また式:MR1R2のブリッジPによって相互に結合しており、該式において、Mはメンデレエフの元素周期律表の第IVa族元素であり、またR1およびR2は同一または異なっており、各々炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素原子数6〜20のシクロアルキル基またはフェニル基を表し、Xはハロゲン原子を表し、これは塩素、フッ素、臭素またはヨウ素原子であり得、Lは随意の錯化分子、例えばエーテルを含み、かつ場合により実質的に錯化性の低い分子、例えばトルエンを含み、pは1以上の自然整数であり、xは0以上であり;および
(ii) アルキルマグネシウム、アルキルリチウム、アルキルアルミニウム、グリニャール試薬、およびこれら成分の混合物からなる群に属する助触媒、
を含むことを特徴とする、触媒系。
【請求項2】
前記有機金属錯体が、以下の式(1a)で表されるものである、請求項1記載の触媒系。
【化1】

【請求項3】
前記有機金属錯体が、上記式において、pが2であり、かつ以下の式で表されるものである、請求項2記載の触媒系。
【化2】

【請求項4】
前記シクロペンタジエニル基Cpおよび前記フルオレニル基Flが、両者共に無置換のものであり、夫々式:C5H4およびC13H8を満足するものである、請求項1〜3の何れか1項に記載の触媒系。
【請求項5】
前記ブリッジPが、式:SiR1R2を満足するものである、請求項1〜4の何れか1項に記載の触媒系。
【請求項6】
前記置換基R1およびR2が各々独立に、アルキル基、例えばメチル基である、請求項5記載の触媒系。
【請求項7】
前記有機金属錯体が、前記ランタニドLnがネオジムであるようなものである、請求項1〜6の何れか1項に記載の触媒系。
【請求項8】
前記助触媒が、アルキルマグネシウム、例えばブチルオクチルマグネシウム、またはアルキルアルミニウム、例えば水素化ジイソブチルアルミニウムとアルキルリチウム、例えばブチルリチウムとの混合物であって、これら成分が該混合物において、実質的に化学量論的な量で存在するようなものである、請求項1〜7の何れか1項に記載の触媒系。
【請求項9】
(助触媒/有機金属錯体)モル比が5以下であり、従って生成するコポリマーが、30,000g/モルを越える数平均分子量Mnを持つように、該触媒系を利用することができる、請求項1〜8の何れか1項に記載の触媒系。
【請求項10】
(助触媒/有機金属錯体)モル比が2以下であり、従って生成するコポリマーが、60,000g/モルを越える数平均分子量Mnを持つように、該触媒系を利用することができる、請求項9記載の触媒系。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の触媒系の製造方法であって、以下の諸工程:
a) 以下の諸工程に従って、前記有機金属錯体を製造する工程:
(i) 以下の式(2)で表される水素化されたリガンド分子とアルキルリチウムとを反応させて、以下の式(3)を満足するリチウム塩を得る工程;
【化3】

(ii) 錯化溶媒中で、前記塩と、式:LnX3(ここでXはハロゲン原子である)で表される該ランタニドの無水トリハライドとを反応させる工程;
(iii) 前記錯化溶媒を蒸発させ、工程(ii)において使用した溶媒よりも実質的に錯化性の低い溶媒中で、工程(ii)において得た生成物を抽出する工程;および場合により
(iv) 工程(iii)において抽出された生成物を結晶化させて、前記錯化溶媒が完全に除去されている、前記有機金属錯体を得る工程;次いで
b) 工程a)において製造した前記有機金属錯体に、前記助触媒を添加する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
以下に列挙する条件:
-工程a)の(i)において使用する前記アルキルリチウムが、ブチルリチウムであり、および/または
-工程a)の(ii)において使用する前記錯化溶媒が、テトラヒドロフランであり、および/または
-工程a)の(iii)において使用する、前記実質的に錯化性の低い溶媒が、ヘプタンまたはトルエンである、
の少なくとも一つが成り立つ、請求項11記載の触媒系の製法。
【請求項13】
前記シクロペンタジエニル基Cpおよびフルオレニル基Flが、両者共に無置換のものであり、夫々式:C5H4およびC13H8を満足するものである、請求項11または12記載の触媒系の製法。
【請求項14】
前記ブリッジPが、式:SiR1R2を満足するものである、請求項11〜13の何れか1項に記載の触媒系の製法。
【請求項15】
R1およびR2が各々独立に、アルキル基、例えばメチル基である、請求項14記載の触媒系の製法。
【請求項16】
前記ランタニドLnが、ネオジムである、請求項11〜15の何れか1項に記載の触媒系の製法。
【請求項17】
前記助触媒が、アルキルマグネシウム、例えばブチルオクチルマグネシウム、またはアルキルアルミニウム、例えば水素化ジイソブチルアルミニウムとアルキルリチウム、例えばブチルリチウムとの混合物であって、これら成分が前記混合物において、実質的に化学量論的な量で存在するようなものである、請求項11〜16の何れか1項に記載の触媒系の製法。
【請求項18】
モル比(前記助触媒のモル数/前記有機金属錯体のモル数)が5以下であり、従って前記の生成するコポリマーが、30,000g/モルを越える数平均分子量Mnを持つように、前記触媒系を利用することができる、請求項11〜17の何れか1項に記載の触媒系の製法。
【請求項19】
前記(助触媒/有機金属錯体)モル比が2以下であり、従って前記生成するコポリマーが、60,000g/モルを越える数平均分子量Mnを持つように、前記触媒系を利用することができる、請求項18に記載の触媒系の製法。
【請求項20】
少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のモノオレフィンとのコポリマーを製造する方法であって、不活性炭化水素溶媒中で、前記共役ジエンおよび前記モノオレフィンの存在下で、触媒系の反応を行う工程を含み、前記触媒系が、請求項1〜10の何れか1項に記載のものであることを特徴とする、方法。
【請求項21】
前記コポリマーが、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン由来の単位、およびエチレン、α-オレフィンおよびビニル芳香族化合物からなる群に属する少なくとも1種のモノオレフィン由来の単位を含む、請求項20記載のコポリマーの製法。
【請求項22】
前記コポリマーが、炭素原子数3〜18のα-オレフィン由来の単位を、10%以上のモル含有率で含む、請求項21記載のコポリマーの製法。
【請求項23】
前記コポリマーが、共役ジエン由来の単位、エチレン由来の単位、および10%以上のモル含有率で、炭素原子数3〜18のα-オレフィン由来の単位を含む、請求項21記載のコポリマーの製法。
【請求項24】
前記共役ジエン由来の単位が、前記コポリマー中に、40%を越えるモル含有率で存在する、請求項22または23記載のコポリマーの製法。
【請求項25】
前記共役ジエン由来の単位が、70%を越える、トランス-1,4-結合の含有率を持つ、請求項20〜24の何れか1項に記載のコポリマーの製法。
【請求項26】
(助触媒/有機金属錯体)モル比が5以下であり、従って前記コポリマーの数平均分子量が30,000g/モルを越える、請求項20〜25の何れか1項に記載のコポリマーの製法。
【請求項27】
前記(助触媒/有機金属錯体)モル比が2以下であり、従って前記コポリマーの数平均分子量が、60,000g/モルを越える、請求項26記載のコポリマーの製法。
【請求項28】
少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種の炭素原子数3〜18のα-オレフィンとのコポリマーであって、前記コポリマーが、請求項20〜27の何れか1項に記載の方法に従って得ることができ、以下の条件を同時に満たすものであることを特徴とする、コポリマー:
-前記コポリマーの数平均分子量が、60,000g/モルを越え、
-前記コポリマーが、40%を越え、かつ90%以下のモル含有率で存在する、前記共役ジエン由来の単位、および60%未満かつ10%以上のモル含有率で存在する、前記α-オレフィン由来の単位を含み、
-前記共役ジエン由来の前記単位が、70%を越えるトランス-1,4-結合の含有率を有し、および
-前記コポリマーが、環式の単位を含まない。
【請求項29】
60%を越え、かつ80%以下のモル含有率で前記共役ジエン由来の単位を含み、および40%未満かつ20%以上のモル含有率で前記α-オレフィン由来の単位を含む、請求項28記載の、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマー。
【請求項30】
ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエンおよびプロペン、ブテン、ヘキセンまたはオクテン等の、炭素原子数3〜18のα-オレフィンとのコポリマーからなる、請求項28または29記載の、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマー。
【請求項31】
ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエンと、エチレンと、プロペン、ブテン、ヘキセンまたはオクテン等の、炭素原子数3〜18のα-オレフィンとのターポリマーからなる、請求項28記載の、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマー。
【請求項32】
前記α-オレフィン由来の単位各々が、前記コポリマーの連鎖において、前記または各共役ジエン由来の2つの単位間に挿入されていて、前記コポリマーの該単位が、全体として、実際上交互の規則的な分布を示す、請求項28〜31の何れか1項に記載の、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα-オレフィンとのコポリマー。

【公表番号】特表2007−501881(P2007−501881A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522929(P2006−522929)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008336
【国際公開番号】WO2005/028526
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(599105403)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (228)
【出願人】(505144326)トータル ペトロケミカルズ リサーチ フュリュイ (2)
【Fターム(参考)】