説明

共役物の製造の改良または共役物の製造

小分子リガンドを、前記リガンドで標識化される分子に間接的に結合させるための方法であって、骨格分子であって、少なくとも一つの小分子リガンドが付着しているものを、標識化される分子に接触させるステップを含み、前記骨格分子と前記標識化される分子との間の結合を形成するために、前記骨格分子が前記標識化される分子上に存在するレシーバー部分、またはその場で形成されるレシーバー部分と反応性を有する基を有し、このようにして前記小分子リガンドを、前記標識化される分子に間接的に結合させる方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分子を間接的に標識化する方法、前記方法において有用な試薬およびキット、ならびに前記方法で製造される共役物に関する。
【背景技術】
【0002】
生体分子をラベルと共役させる必要性が、生物科学の研究、診断および医薬の領域において存在する。生体分子に付着するラベルは、蛋白質(たとえば、酵素、蛍光性蛋白質、ストレプトアビジン)、オリゴヌクレオチドおよび小分子リガンド(SMLs;singular SML)で通常分子量が1000未満のもの(たとえば、ビオチン、蛍光顔料、金属イオンキレート、光反応性基、ヨウ素化可能分子、感光性物質、消光剤、短ペプチドおよび医薬)を含む。常にではないが、通常共役反応に用いられるSMLsは、SMLが生体分子に付着するのを促進する反応(しばしばアミン反応[AR])基を有する。たとえば、フルオロセインは通常イソチオシアネート誘導体(FITC;フルオロセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate))またはN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)誘導体を用いて導入される。
【0003】
共役反応で用いられる活性化SMLsの大半はNHSエステルであり、それはたとえば生物学的pHにおいて容易にアミンに結合するという、多くの魅力的な特性を有する。これは強力で不可逆的なアミド結合を生じる。不利なことに、NHSエステルは保存中に分解しやすく、これは特に水分が製品に入ったときに起こりやすく、そして水溶液中では加水分解しやすい。SMLは反応性部分に関して一価であるため、いずれかの反応性基の欠如は共役反応に関与できるSMLの割合を減少させる。保存時の分解の可能性のため、および両立しない加水分解反応のために、一般的に相当に過剰なモル濃度のSMLが用いられている。多数の生体分子が複数のアミン官能基を有しているため、試験的実験は通常、条件を最適化し過剰な標識化を避けるために、モル濃度割合を変化させて、および/または反応時間を変化させて小規模で実施される。最終的には、相当に過剰なSMLを使用する必要性から、多量の非共役SMLおよび/または加水分解物が最終製品を不純物化することが避けられず、共役物の精製が必要となるだろう。
【0004】
NHSエステルが直面するいくつかの問題を回避する代替的な化学反応は、チオール介在型の分子共役を含む。チオール反応性(TR)SMLsは比較的安定であるが、商業的な入手可能性がより制限されており、多数の生体分子が固有の遊離チオールを欠如しているため、TR−SMLsは共役反応において使用される頻度がより少ない。チオールを生体分子に導入する方法は知られているが、チオール基を付加する操作は通常共役プロセスを技術的により複雑にする。商業的に入手可能なSMLsに見られる、チオール基と反応する官能基は、マレイミド、ヨードアセチル、ブロモアセチル、アジリジン、エポキシド、アクリロイル、およびチオールジスルフィド交換試薬(たとえば、ピリジルジスルフィド)を含む。
【0005】
本発明は特に、反応性SMLs、特にNHSエステル、および反応性官能基に関して一価である他のSMLsに関連する少なくともいくつかの問題を巧みに回避する共役物の製造方法に関する。これらの方法は、以下により十分に記載される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
典型的には、本発明において、一つ、二つまたはそれ以上の反応性SMLsでそれぞれ限定された容量のものが、複数の求核基を有する大きな骨格分子の溶液と好適な条件下で接触する。これらの基は同じタイプまたは多種のタイプであり得る。モル濃度の点からは、求核基はSMLsよりかなり過剰に存在し、求核基のある割合のみが反応する。残りの基は、したがって、複数の場所で、多数のチオール反応性(TR)官能基を骨格に付着させる他の分子(“活性化剤”)と接触する。得られた活性化SML-骨格分子共役物は、平均0−n個のSMLs(nは>0の数字)を含み、TR官能基に関しては多価である。ポリ−TR骨格分子は脱塩または分離によって精製し、その後生体pHに近いpHにおいて2−イミノチオラン塩酸塩の存在下で、アミン官能基を有する分子または生体分子(たとえば抗体)と架橋される。2−−イミノチオラン塩酸塩はその場で、骨格分子に共役をもたらすのに必要なチオール基を生体分子上に作る(国際公開第2007/068906号パンフレット参照)。
【0007】
第一の観点において、本発明は小分子リガンドを、前記リガンドで標識化される分子に間接的に結合させるための方法であって、
骨格分子であって、少なくとも一つの小分子リガンドが付着しているものを、標識化される分子に接触させるステップを含み、前記骨格分子と前記標識化される分子との間の結合を形成するために、前記骨格分子が前記標識化される分子上に存在するレシーバー部分、またはその場で形成されるレシーバー部分と反応性を有し、その結果、前記小分子リガンドが前記標識化される分子に間接的に結合する、方法を提供する。一つ(または複数の)小分子リガンド、骨格分子および標識化される分子の結合された組み合わせは、一般的に“共役物”と示される。
【0008】
好ましくは、骨格分子が標識化される分子上に存在するレシーバー部分、またはその場で形成されるレシーバー部分と反応性を有する複数の基を含む。好ましい実施の形態において、骨格分子が、標識化される分子上に存在するチオールレシーバー部分、またはその場で形成されるチオールレシーバー部分と反応する1つ以上(好ましくは複数の)のチオール反応性(“TR”)基を含む。
【0009】
好ましい一実施の形態において、レシーバー部分は、少なくとも一つの硫黄原子を含み、標的化される分子上に共有結合スルフヒドリル、またはチオール基を形成するために標識化される分子と反応するチオール生成剤(“TG”)の作用によって形成される標識化される分子として形成され、前記スルフヒドリル基はチオール生成剤によって供与された硫黄原子を含む。チオール化反応は、典型的にはアミン(特に一級アミン)またはヒドロキシル基のような求核基のチオール化を含む。標識化される分子のチオール化は、その場で国際公開第2007/068906号パンフレットに記載された技術を用いて実施するのがもっとも便利である。好ましいTGは、2−イミノチオラン塩酸塩(2−IT)(Traut‘s社の試薬として知られている)であり、これはたとえばポリペプチド(間接的に標識化される分子が通常含む)に存在するアミン基と反応できる。2−ITは完全な可溶性であり、一級アミンとpH7から10の範囲で反応する。従来の共役物形成反応においては、2−ITは約pH8で使用され、この条件下では2−ITは効率的かつ迅速に一級アミン、たとえばペプチド、ポリペプチドおよび蛋白質に存在するリジン残基、と反応する。一級アミンとの反応のために、2−ITは従来の値であるpH8よりも低いpHで反応するのが好ましいことが現在分かっている。したがって、2−ITを使用する際は、共役反応は好ましくはpH8よりも低いpH、好ましくはpH7.8、より好ましくはpH7.7未満で行われることが好ましい。好ましいpHの範囲は7.0−7.5である。チオールと、様々な種類のチオール反応性基との反応は、pH6.5から7.5の間で効率的に行われることから、競合する加水分解反応が望ましくない遊離チオールを産生する高pHで2−ITを使用するのは望ましくない。さらに、チオール反応性基は、一般的なマレイミド官能基の場合のように、塩基性pHで加水分解反応を受けやすく、またはチオールへの選択性の減少を示すだろう。
【0010】
チオール化ステップで使用する好適な緩衝液はリン酸緩衝液であり、特にリン酸ナトリウム、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)(HEPES)、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、重炭酸塩および他の緩衝液であってチオール生成剤と反応しないもの、またはTGと標識化される分子上の官能基との反応速度に比べて相対的に遅い速度で反応するものが好適である。したがって、リストは適切に遅い速度で反応するアミン含有緩衝液を含むことができる。
【0011】
最終的な共役反応混合物は、塩(たとえばNaCl)および他の無機または有機成分であって、直接的に反応に関与しないが、成分を安定化する好適な環境を提供したり、または他の方法で所望の反応を促進したり、たとえば容器の表面での損失を最小化するものを含むことができる。
【0012】
TGは反応性であるため、共役混合物中の他の求核基と反応可能である。水は弱い求核基であるが、高濃度で典型的に存在し、特にpH7を超えたpH値では、標識化される分子と共有結合しないチオール濃度を上昇させる。
【0013】
好ましくはTGはほとんど、または全く遊離チオール基を含まず、好適な水準はモル濃度の観点から5%未満、好ましくはモル濃度の観点から3%未満、より好ましくはモル濃度の観点から1%未満である。
【0014】
商業的供給源から得られる2−ITはかなりの量の遊離チオールを含み、遊離チオールは保存期間にわたっても産生される。遊離チオールは、標識化される分子上に骨格分子上のチオール反応性基のために形成されたものと競合し、そのため共役効率を低下させる。2−イミノチラン塩酸塩の場合は、ある供給者は遊離チオールの混入は’最大5%まで’と述べている。本明細書で記載される実施に用いられるバッチは、モル濃度の観点から約1%のチオール含有率と測定された。
【0015】
反応物のモル比率は、TG中に存在する可能性のある少量の遊離チオールが共役効率に大きな影響を与えないように、慎重に選択することが好ましい。
【0016】
2−ITは、チオールまたは保護化チオールを導入するために使用されるほとんどの分子よりも好適であり、大きな過剰モル濃度を使用する必要がない。NHS基を有するいくつかのアミン反応性ヘテロ二官能性試薬は、水溶液中での半減期が短く、迅速な加水分解を補うために大きな過剰モル濃度で使用される。典型的には、TGは適度な過剰量で用いられ、たとえば、標識化される分子中の全ての分子がチオール化されるように、標識化される分子上に存在する、たとえばアミンのような関連する化学官能基よりも10倍量である。しかしながら、好適なTG濃度を選択するにあたっては、使用者は溶液のpHに影響される、可能性のある反応速度について考慮しなければならない。固定されたpHでの好ましいTG濃度は、各種TG濃度の得られる共役物の性能に対する影響を調べることによって、予め決定されている。反応条件は間接的に標識化される分子を十分にチオール化することができるものであるが、分子の生物学的活性を害さないように、過剰なチオール化は回避されることが好ましい。同様に、過剰量の骨格分子が間接的に標識化される分子に付着してはならず、そうでない場合はこれは共役物の準最適な性能を導く。骨格分子は典型的には、間接的に標識化される分子との関係において、中程度、たとえば約5倍のモル濃度過剰量で存在するが、最適なモル比率は共役物が置かれる適用に依存するだろう。どんな特定な共役物の、任意の反応物の最適な比率は、最初の試験的反応を、たとえば低、中、高比率で行い、次に試行錯誤によって”微調整”して予め決定され得る。
【0017】
骨格分子は好ましくは、標識化される分子上に存在または形成されたレシーバー部分に対して反応性のある複数の反応性基を含む。このような基は最初から存在するか、または本発明に係る方法の一部として骨格分子に導入され得る。好都合なことに、骨格分子は小分子リガンド上に存在する官能基に対して反応性のある、複数の反応性基を含む。小分子リガンドに対して反応性のある反応性基は、標識化される分子上に存在または形成されるレシーバー部分に対して反応性のある反応性基と同種、または異なる種類であり得る。
【0018】
好ましい一実施の形態において、骨格分子は複数の求核基を含む。好ましい一実施の形態において、骨格分子はアミン基を含み、これは”活性化”剤と反応し、下記に詳細に説明するとおり、チオール反応性基を導入する。好ましい一実施の形態において、骨格分子は、小分子リガンドのいずれの結合の前に、少なくとも5kD、より好ましくは少なくとも10kD、およびもっとも好ましくは少なくとも20kDの分子量を有する。
【0019】
好ましい一実施の形態において、骨格分子は、天然または人工のポリマーを含む。好ましい一実施の形態において、ポリマーは複数の求核基を有する(または必要な求核基の数および種類を含むように変性され得る)。骨格分子は1種類の求核基を有することができ、また、蛋白質のようないくつかの天然生体分子に典型的に見られるような多種の求核基を有することができる。
【0020】
好ましいポリマーは、ポリペプチド、アミノ化デキストランまたは誘導化(たとえば、アミノ化)デキストラン、チオール化ポリマー、活性化ポリエチレングリコール、デンドリマー、活性化ビーズ、ナノ粒子または他の粒子を含む。特に好ましいポリマーはポリペプチド(たとえば、アミノ酸のポリマー)であり、それは多数及び多種の官能基(アミン、カルボキシル、フェノラート)を有し、SMLsおよび他の分子に付着するための複数の選択肢を提供することから魅力的である。いくつかの実施の形態において、オボアルブミンは(i)DMSOへの溶解性が非常に高く、疎水性SMLsのNHSエステルとの反応が、水性/有機混合物中でSMLまたはオボアルブミンの沈殿物なしで行われることを可能とすること、(ii)最適または最適に近い数の、反応に利用可能な遊離オンライン基(free online group)を有していること、から好ましい。他の好ましい骨格はデキストランまたは誘導化デキストラン(たとえば、アミノ化デキストラン)であり、これは適切な官能基を導入するのが容易で、大きさも広範囲にわたって入手可能だからである。目下の目的のために、“誘導化デキストラン”はデキストラン分子で、通常すべてではないものの、いくつかのポリマーの側鎖が代替的な部分、たとえばアミン基、アルコキシ基またはそのようなものに置換されている。
【0021】
小分子リガンドは好都合なことに、蛍光色素分子、発色団、ビオチン、アビジン、金属イオンキレート剤、光反応性基、ヨウ素化可能部分、光増感剤、消光剤、ペプチドおよび低分子量薬剤よりなる群から選択することができる。特に、使用され得るSMLsの反応性形態はNHSエステル、イソチオシアネート、トリアジン、スルホニル、クロリド、アジ化アシル、ハロゲン化アリル、アルデヒド、テトラフルオロフェニルエステル、イミドエステル、マレイミド、ハロアセチル誘導体およびヒドラジドを含む。上記リストは限定を意図するものではなく、他の官能基(たとえば一級アミン)を有するいずれのSMLで、適切な骨格分子に結合できるものを採用できる。好ましくは、SMLは蛍光顔料を含む。適切な蛍光顔料および他の分子の選択を以下に示すが、これも限定を意図するものではない:5−(および−6)−カルボキシフルオロセイン、5−(および−6)−カルボキシローダミン110、5−(および−6)−カルボキシローダミン6G、5−(および−6)−カルボキシテトラメチルローダミン、5−(および−6)−カルボキシ−X−ローダミン、5−カルボキシフルオロセイン(5−FAM)、5−カルボキシローダミン110、5−カルボキシローダミン6G、5−カルボキシテトラメチルローダミン、5−カルボキシ−X−ローダミン、6−((7−アミノ−4−メチルクマリン−3−アセチル)アミノ)ヘキサン酸、6−(フルオロセイン−5−カルボキシアミド)ヘキサン酸、6−カルボキシ−2”,4,4”,5”,7,7”−ヘキサクロロフルオロセイン、6−カルボキシ−4”,5”−ジクロロ−2”,7”−ジメチオキシフルオロセイン(JOE)、6−カルボキシフルオロセイン(6−FAM)、6−カルボキシローダミン110、6−カルボキシローダミン6G、6−カルボキシテトラメチルローダミン、6−カルボキシ−X−ローダミン、7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸、7−メチオキシクマリン、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 514、A
、lexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、Alexa Fluor 790、AMCA(7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸)、ATTO 390、ATTO 425、ATTO 465、ATTO 488、ATTO 495、ATTO 520、ATTO 532、ATTO 550、ATTO 565、ATTO 590、ATTO 594、ATTO 610、ATTO 611X、ATTO 620、ATTO 633、ATTO 635、ATTO 637、ATTO 647、ATTO 647N、ATTO 655、ATTO 680、ATTO 700、ATTO 725、ATTO 740、Bodipy色素、カスケードブルー、カスケードイエロー、Chromeo 488、Chromeo 494、Chromeo 546、Chromeo 642、Cy2 bis、Cy3 mono、Cy3.5 mono、Cy5 mono、Cy5.5 mono、Cy7 mono、DyLight 488、DyLight 549、DyLight 549、DyLight 649、DyLight 680、DyLight 800、フルオロセイン、HiLyte Fluor 488、HiLyte Fluor 555、HiLyte Fluor 647、HiLyte Fluor 680、HiLyte Fluor 750、IRDye 700DX、IRDye 800CW、IRDye 800RS、ルシファーイエロー、Marina Blue、オレゴングリーン488、Pacific Blue、Pacific Orange、PF−415、PF−488、PF−488−LSS、PF−500−LSS、PF−505、PF−510−LSS、PF−514−LSS、PF−520−LSS、PF−546、PF−555、PF−590、PF−610、PF−633、PF−647、PF−680、PF−700、PF−750、PF−780、PURETIME 14、PURETIME 20、PURETIME 22、PURETIME 325、ピレン(および関連アナログ)、ローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミンB(リサミンローダミン)、テトラメチルローダミン。他の有用なSMLsは、ビオチン、ビオチンの長鎖アナログ、イミノビオチンおよび、N1−(p−イソチオシアネートベンジル)−ジエチレントリアミン−N1,N2,N3,N3−四酢酸(DTTA)のようなキレート剤を含む。
【0022】
SMLを骨格に付着させることは、実質的にSMLの有効分子量を増加させる(典型的に100倍以上)が、共役反応を大きな生体分子で行うことは一般的でない。たとえば、免疫診断分野においてもっとも頻繁に使用されるラベルは西洋わさび由来の(Horseradish)ペルオキシダーゼ(HRP)であり、オボアルブミン骨格(40,000対46,000)と同様の大きさである。他の通常使用される高分子量ラベルはアロフィコシアニン(allo-phycocyanin)(Mr 105,000)、アルカリ性リン酸塩(Mr=160,000)および、フィコエリトリン(Mr=240,000)を含む。チオールの化学的性質は、特にこれらの反応に有用であることが分かった;ラベルがはじめにTR基(通常はマレイミド)で修飾され、他の生体分子が遊離チオールを導入するために修飾される。
【0023】
“チオール反応性”および“アミン反応性”という用語は本明細書中で適切な条件下で、それぞれチオール基(−SH)またはアミン基(特に一級アミン基 −NH2)と反応する部分または、より特定的には化学基を指定することを意図する。”チオール反応性”基は必ずしもチオール基のみとだけ反応するのではなく、“アミン反応性”基は必ずしもアミン基のみとだけ反応するのではないことに留意すべきである。特に、たとえば、pHや他のその時点で優位な環境因子に依存して、“チオール反応性”または“アミン反応性”のいずれかの傾向が他より現れていたとしても、化学基は“チオール反応性”および”アミン反応性”の両方であり得る。
【0024】
好ましい一実施の形態において、ヘテロ二官能性活性化試薬がチオール反応性基を骨格分子に導入するのに用いられる。好都合なことに、骨格分子は活性化試薬と反応可能な複数のアミン基を含む。アミン−およびチオール−反応性ヘテロ二官能性試薬の例は、N−スクシンイミジル3−(2ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、水溶液溶解性を高めるための延長スペーサーを有するSPDP変異体(LC−SPDP;LC=‘long chain’)および延長スペーサーおよびスルホ基を有するSPDP変異体(スルホ−LC−SPDP)、スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、スルホ−LC−SMPT、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(SMCC)、スルホ−SMCC、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、スルホ−MBS、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸塩(SIAB)、スルホ−SIAB、スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMBP)、スルホ−SMBP、N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、スルホ−GMBS、スクシンイミジル−6−((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサン酸塩(SIAX)、およびこの延長スペーサー形態SIAXX、スクシンイミジル4−(((ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(SIAC)、およびこの延長スペーサー形態(SIACX)、p−ニトロフェニルヨード酢酸塩(NPIA)を含む。
【0025】
間接的に標識化される分子は、興味のあるいずれの分子でもあり得るが、典型的にはからなり大きいだろう(分子量が少なくとも25kD、より典型的には少なくとも35kD、もっとも典型的には45kD)。特に、間接的に標識化される分子は、しばしば酵素のようなポリペプチド、または構造プロテイン、レセプターまたは細胞表面マーカー、または抗体または抗原結合断片またはこれらの変異体(Fv、Fab、scFv、単一ドメイン抗体、二重特異性抗体またはキメラ抗体またはこのようなもの)を含む。
【0026】
本発明の方法の一つ、二つまたはそれ以上の工程(典型的にはすべて)は、溶液中の一つ、二つまたはそれ以上(典型的にはすべて)の試薬を用いて行われる。溶液は完全な水性(つまり、溶液中で水が基本的に唯一の溶媒である)であり得、または一部が水性(つまり、溶液中に一つ以上の他の溶媒が存在し得る)であり得、またはすべて有機性(つまり、溶液中で基本的に唯一の溶媒が水ではない)であり得る。好ましくは、溶液は完全に、または一部が水性である。特に都合のよいものは、水とDMSOを任意の好ましい割合で含む溶液である。特に、リガンド、間接的に標識化される分子および骨格分子のそれぞれは、好ましくは溶液中で固相ではなく遊離しており、または支持体に固定されている。これは最適な反応速度論を与える。
【0027】
第二の観点から、本発明は第一の観点の方法のために使用する骨格分子を提供し、該骨格分子は一つ以上の付着した分子リガンドおよび、標識化される分子に存在し、またはその場で形成されるレシーバー部分に対して反応性のある一つ以上の基を含む。
【0028】
小分子は骨格に共有結合的(これは一般的に好ましい)または非共有結合的に結合できる。必要であれば、骨格分子に付着する二つ以上の異なる種類の小分子リガンドがあり得る(たとえば、二つの異なる蛍光色素分子、または一種類の蛍光色素分子およびビオチンおよび/またはストレプトアビジンなど)。
【0029】
骨格分子は好都合なことにレシーバー部分(それ自体が、好ましくは標識化される分子上に複数存在し、または形成され得る)に対して反応性の良い複数の基を含むことができる。
【0030】
典型的に、骨格分子は所望の反応性基を導入するために、たとえば活性化剤と接触した“活性化”状態であり得、該骨格分子はそのため典型的にSMCCのような活性化剤との反応の結果導入された基を含むことができる。
【0031】
一つ以上の小分子リガンドの付着および/または活性化の後に、骨格分子は未反応のSMLsまたはそれらの加水分解物を含む低分子量物質から分離でき、必要であれば、後続の共役反応または骨格分子の一時的または長期の保存により適した緩衝液中に置換できる。この交換および/または分離工程は当業者に公知のいずれの技術でも達成することができ、もっとも適切なものは、少なくとも一部は、合成スケールに通常依存するであろう。本発明者は商業的に入手可能な脱塩カラム(たとえば、GE Healthcare社製のSephadex G−25“NAP−5”カラムまたは“PD10”カラム)を用いた分離が適当であることを発見した。より大きなスケール(>100mg骨格)では、より大きな最大容量の空のガラスまたはポリプロピレンカラムを、乾燥粉末として別個に入手可能な、水和Sephadex G−25を用いて充填することができる。
【0032】
SMLsの付着および/または活性化の後に、骨格分子は保存目的のために、典型的には約50μlから約5mlまで、好ましくは約100μlから2mlまでの一定分量の凍結または凍結乾燥で便利に提供できる。好都合なことに、骨格分子はキットの一部として提供でき、該キットは本発明の方法の実施のために適用され、指定されている。
【0033】
好ましい骨格分子はオボアルブミンを含む。骨格分子は、好ましくは公知の、予め定められた平均数の付着した小分子リガンドを含む。骨格分子は追加的または代替的に、一分子当たり、公知の、予め定められた平均数の反応性基(好ましくはチオール反応性基)を含み、これは標識化される分子上のレシーバー部分との反応に用いられ得る。
【0034】
他の好ましい骨格分子はデキストランであり、これは容易にAR−SMLsと反応可能なアミノ化誘導体に変換され得る。さらに、分子サイズを必要に応じて変更でき(1000−2,000,000ダルトンの範囲のデキストランは商業的に入手可能である)、標識密度を変える必要なしに、骨格分子あたりのSMLsの数を変化するかなりの余地を提供する。これはある蛍光性SMLsにおいてかなりの価値を有し、これらの蛍光体は近接させられると消光を示す可能性がある(以下参照)。
【0035】
本発明で用いるデキストランは、典型的に40,000ダルトンまたはそれ以上である。仮にデキストランが球形であると考えられる場合は、容積(分子サイズ)の変化を伴う半径/表面積の変化は、標準の数学的方程式を用いて容易に決定することができる。たとえば、表面積の2倍の増加は、デキストランを150kDから450kDに変えることによって達成でき、40kDから500kDへ変化させることによる表面積の増加は5倍である。標識化される生体分子への一箇所の付着が望ましい場合は、より大きなデキストランを、より多くのSMLを導入するために使用できることが、上記の判断から明らかである。
【0036】
本発明の方法で使用するために、骨格分子は好ましくは溶液中に存在し、溶液は全部または一部が水性であり、通常は適切な緩衝液を含む。SMLとの反応では、溶液は好ましくは比較的濃縮されており、少なくとも10mgs/ml、より好ましくは少なくとも20mgs/ml、もっとも好ましくは40mgs/mlまたはそれ以上である。
【0037】
第三の観点から、本発明は本発明の方法の実施に使用するキットを提供する。該キットは前記で規定および/または記述した骨格分子および本発明の方法を実施するための使用説明書を含む。キットは好ましくは、2−イミノチオラン塩酸塩のようなチオール生成剤、および/または1つ以上の緩衝液を含む。キットの一つ以上の試薬成分は凍結乾燥形態で提供され得る。キットは選択的に1つ以上の以下のものを含む:1つ以上の小分子リガンド、1つ以上の骨格分子を活性化する活性化試薬、および1つ以上の標識化される分子。
【0038】
第四の観点から、本発明は共役物を提供し、該共役物は、間接的に標識化された分子と、前記間接的に標識化された分子に付着した少なくとも一つの骨格分子と、前記骨格分子に付着した少なくとも一つの小分子リガンドとを含む。有利なことに、共役物は本発明の第一の観点の方法で調製される。
【0039】
好ましくは、必須ではないが、少なくとも一つの小分子リガンドは骨格分子に共有結合的に付着している。好ましくは、必須ではないが、骨格分子は間接的に標識化された分子に共有結合的に付着している。好ましくは単数または複数の小分子リガンドと、骨格分子と、間接的に標識化される分子は、すべてこれまで定義および記述したものである。特に骨格分子は好ましくはオボアルブミンまたはアミノ化デキストランを含む。
【0040】
一実施の形態において、本発明は間接的に標識化された分子を含む共役物を提供し、前記分子は複数の骨格分子に付着し、それぞれの骨格分子は同様に少なくとも一つの小分子リガンドに付着している。
【0041】
他の一実施の形態において、本発明は間接的に標識化された分子を含む共役物を提供し、前記分子は一つの骨格分子に付着し、骨格分子に複数の小分子リガンド(同じでも異なっていてもよい)が付着している。
【0042】
好ましい実施の形態において、小分子リガンドは骨格分子への結合能力に関して一価である。
【0043】
本発明の一つの特徴は、骨格分子(特にチオール反応性骨格分子)が予め規定し、予め最適化された量の付着したSMLを有して合成され、その後標識化される生体分子にかたまって付着できることである。このようにして、本発明の方法は、ラベル(またはリガンド)の標識化される分子に対する割合、ラベルの正確な量、標識化の密度および分布を正確に制御することができる。有利なことに、SMLsの骨格媒介物を介しての組み込みは、一価の反応性SMLで直接生体分子を標識化するよりも、より簡単である。なぜなら(i)骨格分子の生体分子に対するモル割合が比較的低く、(ii)立体因子が物理的に接着可能な骨格分子の数を制限するように機能するからである。この生物学的共役物へのアプローチは、ラベル密度が予想以上に大きいこと、蛍光性SMLsの場合に過剰ラベルまたは消光を簡単に回避することを確実にする(“消光”とは複数の蛍光部分が近接して存在し、お互いが蛍光発光するのを妨げる現象をいう)。ほとんどの場合、最終共役物を精製する必要はない。なぜならTR基は典型的なNHSエステルよりもより安定しており、余剰な官能基はTR基の加水分解は、必ずしも骨格分子の接着を妨げることを意味しないため、poly−TR骨格は相当な過剰量を使用する必要がないからである。
【0044】
骨格分子アプローチは、共役物の設計と最適化に相当な柔軟性を与えることも可能にする。たとえば、それぞれ1つのSMLを有する3つの骨格分子の抗体への付着は、合計3つのSMLを導入する。同等に、3つのSML分子を有する1つの骨格分子の付着は、同等数のSMLを導入する。しかし、共役物は分子の観点からは明らかに同等でなく、共役物の特定の型の性能の優位性は、ある分析状況で明らかになるだろう。特定の適用に対しての最適化は、たとえば低、中および高密度のSMLを準備し、3つの濃度の標識化される分子と共役させ、9つの型の共役物を結果として生じさせることを含む。その後、最良の共役物を、特定の免疫測定法での成績に基づいて選択する。
【0045】
抗原の結合に続く洗浄工程を有する免疫測定法では、抗体共役物中に、未共役の骨格分子が少量存在することは、ほとんど重要でない。なぜなら過剰量は洗い流されるからである。しかし、未共役の骨格分子の存在が問題であると分かった時は、抗体/骨格分子のモル比率を遊離骨格分子の濃度が最小になるように選択できる。適用し得るラベル密度への何らかの制約に従って(たとえば、密度は消光効果、または骨格分子にその後結合する他の分子の場所をあける必要性によって制限される)、骨格分子当たりのSML密度が比較的大きいことも、これらの状況では好ましいであろう。
【0046】
しばしば共役反応に使用されるSMLであるビオチンに結合した骨格分子の場合、2つの選択肢の可能性がある。第一に、ビオチン化した骨格は結合構成要素(たとえば抗体)に共役され、その後抗原に非共有的に結合する。過剰のビオチン−骨格分子−抗体共役物を洗い流した後、ビオチンリガンドは、測定の容易な、ラベルを組み入れたストレプトアビジン共役物を採用する(たとえば、HRP)。ビオチンとストレプトアビジン分子は通常このように、分子同士を非共有的に結合する架橋を形成する。この種類の測定では、いずれの非共役ビオチン−骨格分子は洗浄工程で除去され、最終測定になんら及ぼすことはできない。
【0047】
第二の適用では、ビオチン化共役物のビオチン成分が、代わりに表面の共役物をストレプトアビジンが付着している場所へ向かわせるために用いられる。この種類の適用では、少量の非共役ビオチン骨格分子が、固定化ストレプトアビジンのためにビオチン−骨格分子−抗体共役物と競合することができ、したがって表面に補足される共役物を減少させることができる。これは検出感度の減少につながると予想されるかもしれない。しかし、本発明の方法は共役物を迅速に準備し、一般的に洗浄工程の必要なしに特定の適用に調整することができる。
【0048】
骨格分子アプローチは商業的に入手可能なすべての範囲のAR−SMLs、ほとんどはNHS−活性化SMLsを、1種類(または1を超える種類)のSMLが付着している大量のpoly−TR骨格分子の製造を通じて有効に使用できる。反応性SML(たとえばNHSエステル種)のいずれの種類内の構成要素も、本質的には同様の反応性を示すため、本発明の方法はその種類内のいずれの構成要素にも適用できる。多くのAR−SMLsとは異なり、SML−変性骨格分子上のTR基は比較的安定で、活性機能の損失への不安なしに、凍結乾燥形態で長期間保存可能である。
【0049】
本発明の一実施の形態において好ましくは、AR−SMLははじめにアミン含有骨格分子と反応する。特に好ましい実施の形態において、SMLのNHSエステル誘導体が使用される。骨格分子に組み込まれ得る反応性SMLの割合は、限定した量のSMLを骨格分子の濃縮溶液と反応させ、脱塩または透析によって骨格分子−結合および遊離形態に分離することによって、便宜的に予測することができる。保存中のSMLの分解の割合や、溶液中での加水分解の割合が通常知られていないという事実は、どれくらいのSMLが、比較的安価な骨格分子を用いてリガンドの特定濃度を達成するために必要か決定できるときは、ほとんど問題でない。
【0050】
好ましくは、骨格分子とNHSエステルとの反応の場合、約7.2のpHが加水分解を最小化するために用いられ、骨格分子は、競合する加水分解反応に逆らって、アミンを有するNHSエステルとの反応を促進するため比較的高濃度で用いられる。たとえば、骨格分子の濃度は、>10mg/mlが好ましく、>20mg/mlがより好ましく、>40mg/mlがさらにより好ましい。高濃度の骨格分子(たとえば、小容積)は、続いて行われる、興味のある生体分子に骨格分子を付着する前の脱塩または透析工程を促進する点でも有利である。
【0051】
当業者には、他のアミン反応性誘導体(たとえば、イソチオシアネート、トリアジン、スルホニルクロリド、アシルアジド、ハロゲン化アリール、アルデヒド、テトラフルオロフェニルエステルおよびイミドエステル)も、適切な条件下で、NHS誘導体の代わりに、SMLsをアミノ化骨格分子に結合させるために使用できる。TR−SMLs(マレイミド、ハロアセチル誘導体)もチオール化骨格分子と採用でき、たとえばデキストランまたはグリコプロテイン骨格の過ヨード酸塩処理から生じるものとして、SMLsまたはアミン含有SMLsのヒドラジド誘導体もアルデヒドに共役可能であることも明らかである。
【0052】
骨格分子上の接近可能なアミン官能基の総数が、付着可能なAR−SMLs上限数を設定する。励起および発光スペクトルが実質的に重なる蛍光性SMLsは、消光を受けやすく、より大きなストークシフトのものに比べてより小さな密度で組み込む必要があるだろう。より大量の蛍光性SMLsは、骨格分子のサイズを大きくする、またはアミン基の配置を最適化することによって消光効果なく適合させることができる。なぜなら蛍光発光の消光の程度は、分子間距離に関係しているからである(たとえば、より近い蛍光体は、より消光が生じやすいだろう)。より小さい骨格分子は、より大きな骨格分子に比べてより少ない蛍光体のスペースしかないが、生物学的活性を妥協せずにより多くの数のより小さな骨格分子を付着することができる。
【0053】
アミン(または他の可能性のある接着点)の割合のみが、SMLsとの反応において、TR官能基の付着を可能にする十分な基が残存することを確実にする。したがって、利用できるアミンの総数が骨格分子の選択または設計に重要な考慮点である。もし骨格分子上のアミンの総数が特定の適用に不十分な時は、異なる骨格分子を選択することができ、または反応中心の数または種類を変化させるために、骨格分子上の化学修飾反応を行うことができる。デキストランの場合は、すでに明らかにされた化学構造のものを、単純により大きな分子に適用できる。
【0054】
新規な官能基の導入方法は、化学文献に包括的に記載されている。カルボキシル基が骨格分子上に存在している場合、カルボジイミドの存在下でアミン含有分子と共役できる。ジアミン(またはポリアミド)との縮合は、新規の表面アミンを導入し、AR−SMLsに共役する可能性のある場所を提供する。適切なジアミンは、限定されるものではないが、エチレンジアミンおよび2,2−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)[EDBA]を含む。
【0055】
カルボキシメチルデキストランはジアミンを使用してアミン官能性を導入するための便利な開始点を提供する。ジアミンとモノアミンの組み合わせは、同時に表面アミンを導入し、デキストランの特性を変更させる便利な方法である。モノアミンはアミンの総数を制御し、および/または他の表面特性(たとえば、極性、疎水性または荷電群)を提供するために有効に使用できる。たとえば、カルボジイミド−介在性のエタノールアミンとの縮合物は、極性で、比較的非反応性のヒドロキシル基を導入し、付着したそれぞれの分子の一つの負電荷を除去する。同様に、グリシンアミド、アグマチンおよびタウリンもアミド(中性)、グアニジノ(正電荷を有する)およびスルホン酸(負電荷を有する)部分を、それぞれ、カルボジイミド−介在性縮合を通じて導入するのに使用できる。同様に、グリシンアミド、アグマチンおよびタウリンは、アミド(中性)、グアニジン(正電荷を有する)、およびスルホン酸(負電荷を有する)部分を、それぞれ、カルボジイミド−介在性縮合を通じて導入するのに使用できる。このような導入は共役物の非特異的結合を減らし、または、たとえば、蛍光性SMLsの蛍光特性に影響し/蛍光特性を向上するために、固定化されたSMLが存在する環境を変化させるのに使用できる。
【0056】
カルボン酸官能基は、TR−SMLs(たとえば、ヨードアセトアミド誘導体)との後続の反応のために、チオール基を導入するのに利用できる。カルボジイミド−介在性の過剰シスタミンの骨格分子との反応は、DTTまたは他の還元剤との処理によって放出され得る保護チオールを導入する。このようなカルボキシルの利用の利点の一つの可能性は、骨格分子上のアミン官能基が他の反応でもまだ利用可能なことである。この接近は、アミンの総数が限られている場合、および/または反応性SMLがTR誘導体としてのみ利用可能な場合に便利である。いずれの過剰チオールもモノマレイミドでキャップされ、またはホモ二官能性TR架橋剤(たとえば、ビスマレイミドヘキサン)(BMH)を用いてTR官能基を導入するのに利用される。
【0057】
この操作が、たとえばTR官能基をその後導入することを通じて、骨格分子の合成を完成させるのに十分な量のアミン基を残すと仮定すると、アミン基はまたはチオールを導入するのに利用できる。たとえば、アミンは、2−イミノチオラン塩酸塩と反応して遊離チオールを産生でき、またはN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(SATA)またはN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(SATP)と反応して、ヒドロキシルアミンと、またはジチオスレイトールのような還元剤での処理でチオールを放出するN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピネート(SPDP)と放出される保護化チオールを産生できる。骨格分子がアルデヒド官能基を有する場合、2−アセトアミド−4−メルカプト酪酸ヒドラジドが、必要なチオールを導入するのに使用できる。
【0058】
骨格分子が有するアミンが多すぎる場合、限定量の無水酢酸またはNHS−アセテートをこれらの基の割合を不可逆的にブロックするのに使用できる。スクシン酸無水物およびグルタル酸無水物もアミン官能基を除去し、それぞれの修飾アミンに一つのカルボキシル官能基を導入する。過剰アミンの可逆的なブロックはマレイン酸無水物または無水シトラコン酸で達成できる。
【0059】
したがって、化学修飾反応は新規の反応中心を導入するため、および/または骨格分子およびこれらから調製される共役物の物理化学的特性を、たとえば、検出シグナルの向上および非特異的相互作用を最小限にするために、変化するために使用できる。
【0060】
一度SMLが骨格分子と反応すると、好ましくは精製されていないそのままの混合物は、標識化される分子上に存在するレシーバー部分に反応性のある一つの基、または複数の基(たとえば、チオール反応性基)を導入する他の分子(“活性化剤”)と反応できる。NHSの化学的性質を、SMLを導入するのに使用する一つの利点は、同様の緩衝液条件を、その後、一端が(NHSエステルを介して)アミンと、他の一端がチオールと反応できるヘテロ二官能性基を用いて、チオール反応性基を導入するのに用いることができることである。多くのこのような試薬はNHS部分を有しており、たとえばスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシ塩酸塩[SMCC]は、マレイミド官能基が隣接脂肪族環で安定化されているため、特に好ましい。同様の化学反応性を有する他の試薬は、MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル);SIAB[スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸];GMBS[N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル];SIAX[スクシンイミジル6−((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサン酸塩;およびSIAC[スクシンイミジル4−(((ヨードアセチル)アミノ)メチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩を含む。いくつかの場合では、スルホン化アナログも使用可能であり(たとえば、スルホ−SMCC)、水溶液に非スルホン化形態のものより良好な溶解性を示す。
【0061】
骨格分子の調製に採用され、チオールが不存在の条件下では、ヘテロ二官能性試薬のNHS部位は選択的にアミンと反応し、TR官能基は骨格分子の表面に生じるようになる。得られたポリ−TR SML−骨格分子の組み合わせは、好ましくは脱塩または透析で精製され、即時に使用され、または、高効率の生体分子との単一ステップの共役反応を、国際公開第2007/068906号パンフレットに詳細に記載されている方法にしたがって行なうために、好ましくは2−ITおよび他の適切な添加剤と任意に組み合わせて凍結乾燥される。
【0062】
SMLの付着がNHSエステルの使用を含まない場合、チオール反応性官能基の付着の前にSML−骨格分子を脱塩または透析する必要があるだろう。これは高pHがほとんどの他のアミン反応性基との反応に必要であるからである。たとえば、イソチオシアネートは約pH9でもっとも効率的に反応する。これは、ほとんどのヘテロ二官能性試薬を用いてTR官能基を導入することにとって、理想的ではない。なぜなら‘チオール反応性’基は高pH値でアミンとも反応し、または非常に迅速に減少するからである。しかし、本発明の利点は、脱塩および透析工程が、サンプルの高濃度/小容量のために単純で、したがって異なる化学反応を、サンプルがそれぞれの工程で適切な緩衝液に置換される限り、SMLおよびTR官能基の付着に用いることができる。
【0063】
ポリ−TR SML骨格分子がどのように構築されるかに関わらず、最終適用に依存して、共役物が使用される前に過剰の反応性基を消す必要があるだろう。国際公開第2007/068906号パンフレットには、ポリペプチドラベル(たとえば、HRP、フィコエリトリン)に用いることができるいくつかの消失戦略が記載されている。たとえば、グリシンは2−イミノチオラン塩酸塩を攻撃するのに用いられ、したがって標識化される生物学的分子または、共役物が使用されるときに存在する他の生物学的分子のさらなるチオール化を止める。第二の効果として、低分子量チオールでこのように放出されたものは、TR官能基を不活性化することもできる。本発明において、二つの予測外の観察結果が、顔料標識化デキストラン骨格の場合、異なるやり方が好ましいであろうことを示唆した。第一に、国際公開第2007/068906号パンフレットに記載されているその場のチオール化アプローチにとって非常に好ましい高水準のSMCC修飾は、フルオロセイン化デキストラン骨格の蛍光発光の大きな減少に関係していることが分かった。第二に、ポリマレイミドフルオロセイン化デキストラン/抗体共役物と、チオール化表面との望ましくない反応を阻害するために、メルカプトエタノールを使用することは、抗体とその抗原への特定の結合に関係して蛍光発光を増大させることが分かった。蛍光発光の向上におけるチオールの阻害作用は、別の試験で骨格分子への直接的な効果として示され、チオールはSMCCから誘導されたマレイミドの蛍光性顔料の消光作用を明らかに示す。消光作用は溶液のイオン強度の減少(たとえば、水への希釈)、および10%DMSOの添加によって減少され、これは消光は、少なくとも一部が、疎水性相互作用に起因していることを示唆している。
【0064】
本発明において、グリシンとチオールの組み合わせは、共役反応を停止するために好ましい。特に好ましい一実施の形態において、組み合わされた試薬のpHは、チオールを保存するのに十分に低く(たとえば、ジスルフィドへの酸化を防ぐことによって)、緩衝能が十分に低く、そのため溶液が共役物混合物に添加されたとき、共役物混合物のもともとのpH近くが維持され、したがってTR官能基をブロックし、過剰な2−イミノチオラン塩酸塩を不活性化するのに好ましい条件を提供する。特に好ましい処方は、50mMグリシンでpH2.3であり、10mMチオールを含み、これは最終濃度としてグリシンおよびチオールをそれぞれ約5mMおよび1mMとなるように添加される。大量のチオールは、ジチオスレイトール、メルカプトエチルアミン、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、L−システインおよびメルカプトコハク酸を含むポリマレイミドフルオロセイン化骨格分子の蛍光発光を、60−100%増強することがわかった。カルボン酸基にも組み入れられるチオールは、特に有効であり、メルカプトコハク酸は優れた増強を示す。
【0065】
本発明は説明に役立つ実例、および以下の図を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は本発明の方法の主要工程を示す模式図である。第1段階(i)では、複数の官能基(Xおよび、任意的に、W)を有する骨格分子が限定量のSMLと接触し、いくつかのX官能基およびSML間に共有結合を形成する。典型的に、Xはアミン基である。Wは必要であればXに変換され得る基であり、または他の方法で使用され得る基であり、または全く利用されない基である。工程(ii)では、骨格分子−SMLは二官能性試薬(BFR)、典型的には、X−反応性およびチオール反応性(TR)官能基を有し、X官能基をTR官能基に変換するヘテロ二官能性試薬に接触させる。最終工程(iii)では、ポリ−TR 骨格分子−SML、チオール生成剤(典型的には2−イミノチオラン塩酸塩;2−IT)および標識化される生物学的分子(たとえば、抗体;Ab)がお互い同時に接触される。チオール生成剤は標識化される生物学的分子に作用し、アミン官能基を高疎水性チオールに変換し、それは単一工程の共役反応によって迅速にポリ−TR骨格と反応し抗体および骨格分子間の結合(したがって抗体とSMLの間接的結合)を生成する。過剰の反応性基は自動的に減少するが、これは国際公開第2007/068906号パンフレットに従った、適切な失活剤を用いて促進することができる。
【図2】図2は様々な量の”チオール生成剤”である2−イミノチオラン塩酸塩を用いて調製された共役物を用いた分析で検出された蛍光発光量(任意の蛍光発光単位)を示す棒グラフである。
【図3】図3は4つの棒グラフ(A−D)を示す。パネルAおよびBは、ウサギIgG−被覆マイクロタイタープレートと、オボアルブミン骨格の介在を通じて結合した、ビオチンで間接的に標識化されたヤギ抗ウサギIgGとを用いて、ELISAで測定された吸光度(405nm)を示す。パネルCおよびDは、ストレプトアビジン−被覆プレートで補足された同様の共役物を用いた分析で測定された吸光度(405nm)を示す。パネルAおよびCでは、分析は一定の抗体濃度を用いて行われ、パネルBおよびDでは、分析は一定の骨格分子濃度を用いて行われた。C6−C8はIgG、オボアルブミンを異なる比率で用いて形成された共役物を示し、C5はコントロール共役物(IgGなし)を示す。
【図4】図4はウサギIgG−被覆プレートと、オボアルブミン骨格分子の介在を通じて結合した、ビオチンで間接的に標識化されたヤギ抗ウサギIgGとを用いて、ELISAで測定された吸光度(405nm)を示す。共役物は、異なるビオチン濃度を用いて調製され(白丸−1mM;三角−3mM;黒丸−6mM;黒四角;ビオチンなし)、希釈範囲で試験された。
【図5】図5は図4で示されたのと同様の実験での吸光度(405nm)を示し、ここでは試験共役物は異なる活性化剤濃度を用いて調製された(ゼロ−黒四角;三角−5mM;白丸−10mM、黒丸−20mM)。
【図6】図6は固定量(100μg)の2つのポリ−マレイミドフルオロセイン化デキストラン(150kDaおよび400−500kDa)を用いて調製された、様々なヤギ抗ウサギ共役物を、ウサギIgGで被覆された(A−D)、またはウサギIgGなしの(E−F)ブラックポリスチレンプレートを使用して分析した時に得られた蛍光発光を示すグラフである。A、C、EおよびGは、150kDaデキストラン骨格分子のデータを示し、B、D、FおよびHは、400−500kDaのデキストラン骨格分子のデータを示す。AおよびB(およびこれらに関係するコントロールEおよびF)はデキストラン:抗体のモル比が1:1に固定され、BおよびD(およびこれらに関係するコントロールGおよびH)はデキストラン:抗体のモル比が3:1に固定されている。
【図7】図7は、凍結乾燥物質を水(コントロール;黒丸)に溶解、または200mM Hepes/1mMEDTA、pH7.0に溶解し、様々な試薬;1.43mMメルカプトエタノール/5mMグリシン(黒丸)、0.143mMメルカプトエタノール/5mMグリシン(白四角)、5mMグリシン(三角)または水(白丸)で処理した、固定量のポリマレイミドフルオロセイン化400−500kDaデキストラン骨格分子からの蛍光発光出力の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
実施例
実施例1.ポリ−マレイミド−フルオロセイン化−OVAの調製
pH7.2の100mMリン酸ナトリウム中の40mg/ml(約0.87mM;1ml)のオボアルブミン(OVA)(A5505;ロット 076K7045)を、限定量(オボアルブミンアミンに関して;1分子あたり20リジン、そのうち16は通常接近可能である;Batta PP,Int Biochem,23,1375−84,1991)である100μlのDMSOに溶解した22.5mM 5−(および6−)カルボキシフルオロセインスクシンイミジルエステル(分子プローブ C1311;ロット 25547W)と反応させた。25℃の暗所で30分経過後、さらに50μlのスルホ−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(sSMCC)を、DMSO中の200mMストックから添加して、sSMCCおよびオボアルブミンのそれぞれの最終濃度である8.7mMおよび約0.76mMを得た。さらに暗所で30分間インキュベーションした後、ポリ−マレイミド−フルオロセイン化−OVAのサンプルをSephadex G−25(PD10カラム;GE Hearlthcare社製)で脱塩し、pH5.8のリン酸ナトリウム10mMの中に入れた。125μlの一定量を、775μlのpH5.8リン酸ナトリウム緩衝液および100μlの33%トレハロースストック(トレハロース1gと水2mlから調製)で希釈した。一定量(100μl;250μl)のトレハロース/ポリ−マレイミド−フルオロセイン化−OVA混合物は、液体窒素上でパキッと凍り、国際公開第2007/068906号パンフレットに記載の方法に従って、凍結乾燥された。
【0068】
実施例2.被覆プレートの準備
96ウェル Maxisorpプレート(Nunc社製)を50μl/ウェルの精製IgG(20μg/ml)またはストレプトアビジン(5μg/ml)で4℃で少なくとも16時間被覆した。使用前に被覆プレートをpH8.0の50mM Tris/150M NaCl(TBS)で5回洗浄して、TBS中で0.1%BSA(ブロッカー)を用いて30−60分間ブロックした。ブロックされたプレートを、必要であればブロッカー中に希釈された共役物とともにインキュベーションする前に、TBSを用いて5回洗浄した。
【0069】
実施例3.ヤギ抗ウサギIgGのポリ−マレイミド−フルオロセイン化−オボアルブミンとの共役
pH7.5の200mM Hepes/1mM EDTA中の、50μlのヤギ抗ウサギIgG(1ml/ml)を、5μlの10mg/ml ポリ−マレイミド−フルオロセイン化−OVAと混合した(実施例1からの物質を25μlの水で再懸濁した後)。4つの11μlの混合物を、1μlの2−イミノチオラン塩酸塩とインキュベートし(濃度変化:8mM、4mM、2mMおよび0mM)、最終濃度667μM、333μM、167μMおよび0μMを得た。25℃で一晩インキュベーションした後、サンプルを50mM トリス/150mM NaCl/0.1% BSA(ブロッカー)中で1/100に希釈され、ウサギIgGで被覆されたMazisorp マイクロタイタンプレート上で、25℃で1時間インキュベートした(実施例2)。TBSで5回洗浄した後、Wallac Vicotr上で励起/発光設定を485/535nm、およびCWランプエネルギーの設定を11720にして読み込む(ウェル当たり1秒)前に、100μlのTBSをそれぞれのウェルに添加した。
【0070】
データを表2に示す。表2から分かるように、試験されたもっとも低濃度の2−ITはもっとも高濃度のものと同等に効果的であった。別の試験では、非常に高濃度の2−IT(最終濃度8mM)も、800μM 2−IT(データは示していない)に比べると、2−ITの調製中のチオールのコンタミおよび/または過剰のアミン修飾が原因の可能性がある共役効率のわずかな減少がみられるものの、なお効果的であった。したがって、2−ITは広範囲の濃度で使用可能である。2−ITが存在しないと、共役効率は低く、これはチオールが存在しないと、抗体は骨格分子上のTR官能基と遅い速度のみでしか(アミンを介して)反応しないからである。
【0071】
実施例4.ポリ−マレイミド−ビオチン−オボアルブミン骨格の製造
pH7.2の100mMリン酸ナトリウム中の40mg/ml(約0.87mM;125μl;5mg)のオボアルブミン(A5505;ロット 076K7045)を、6.25μlのDMSO中の60mM NHS−LC−ビオチンと反応させた。25℃で1時間経過後に、14μlのスルホ−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(sSMCC)をDMSO中の200mMストックから添加して、sSMCCおよびオボアルブミンの最終濃度19.3mMおよび約0.75mMをそれぞれ得た。25℃で1時間経過後、ポリ−マレイミド−ビオチン化−オボアルブミンを、Sephadex G−25(NAP−5カラム;GE Hearlthcare社製)で脱塩して、pH5.8のリン酸ナトリウム300mMの中に入れた。サンプルを60μlのpH5.8のリン酸ナトリウム緩衝液および40μlの33%トレハロースストック(トレハロース1gと水2mlから調製)で希釈した。一定量(100μl;250μl)のトレハロース/ポリ−マレイミド−フルオロセイン化−OVA混合物は、液体窒素上でパキッと凍った。
【0072】
実施例5.抗体の骨格に対する比率の最適化
一定量(10μl)のポリ−マレイミド−ビオチン−オボアルブミン骨格(実施例4)を、5μlのpH2.5の2M Hepes/10mM EDTA、5μlの1.1mg/ml 2−IT(8mMストック)および、変量(5μl、10μlまたは20μl;55μg、110μgまたは220μg)のヤギ抗ウサギIgG(11mg/ml)であって、モル比(骨格分子:抗体)(抗体のモル重量を150,000、骨格分子のモル重量を〜50,000と想定)を6.8:1(共役物6;C6)、2.43:1(C7)および1.7:1(C8)とするもの、とともに最終容量50μl(必要であれば水で埋め合わせる)で25℃で一晩インキュベートした。抗体のないコントロールの共役物も準備した(C5)。それぞれの共役物の一部をブロッカー中に1/10,000で希釈し(たとえば、一定の骨格細胞濃度を得るため)、他の一組の希釈物を0.1μl/mlに固定化された抗体濃度(共役物に依存して、1/10,000希釈またはそれ以上)を得るように調製した。サンプルを2つの分析で試験した。(i)ウサギIgGプレート使用のELISA。25℃で1時間インキュベートした後、プレートをTBSで洗浄して、ウェルを1/2,500ストレプトアビジン−HRP(Innova Biosciences #857−0005)で25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、HRPをABTS試薬(pH5.0の50mM酢酸ナトリウム中の1mM ABTS、試薬1mlあたり1μlのH22を含む)を用いて検出した。(ii)ストレプトアビジンプレートを用いた捕捉分析。25℃で1時間インキュベートした後、プレートをTBSで洗浄し、ウェルをプロテインA HRPとともに25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、捕捉化ヤギ抗体−骨格共役物に結合したプロテインA−HRPを、ABTS基板を用いて検出した。結果を図3に示す。
【0073】
パネルAに示されるように、ウサギIgG ELISAでは、共役物が固定濃度の抗体中に希釈された時は、骨格の抗体に対する比率が最も高いものが、最大シグナルを示す。ウサギIgG被覆ウェル上の共役物8(C8)への比較的中程度のシグナルは、抗体分子当たり、骨格単位の付着がより少ないことに起因すると思われる。コントロールウェル(被覆されていないIgG)への結合は全てのケースで低い。パネルBでは、固定された骨格分子濃度において、C7およびC6に比べて、C8でのより高い抗体濃度は、抗体分子当たりの骨格分子の数の少なさを補うだけではなく、全ての3つの共役物は、比較的高い吸光度を与える。固定抗体濃度を用いたストレプトアビジン分析(パネルC)は、パネルAで見られたのと逆の傾向であった。この観察結果は、(i)固定化ストレプトアビジンとの結合において、抗体共役物と競合する、遊離骨格の量が増大したこと、および(ii)Fc抗体ドメインのプロテインA−HRPとの結合相互作用を阻害する、抗体あたりの骨格単位の数が増大したこと、による共役物C8からC6への、一つの向上として説明するのがもっともふさわしい。しかし、C6は固定化ウサギIgGに効率的に結合するため(パネルA)(Fc領域を介さない)、遊離ビオチン化骨格の水準が、C6のストレプトアビジンプレートへの結合の低さを説明するのによりふさわいしい。実際、3つの共役物のSDSゲル(データは示していない)は、C6中の遊離骨格の優位な水準を明らかにし、その水準では骨格分子の抗体に対する比率は比較的高かった。ストレプトアビジン表面での骨格−抗体共役物の捕捉は、ただ一つの骨格と、一つの好ましい位置に置かれたビオチン分子を必要とするため、骨格分子の抗体に対する低いモル比率は、この種類の適用には好ましい。一方、ビオチン化骨格がストレプトアビジン系検出試薬の捕捉に使用された場合、骨格分子の抗体に対する比較的高いモル比率が、分析感度を高めるため好ましく、そしてこの状況下で、いずれの共役していない骨格を簡単に洗浄できる。これらのデータは、共役性能は分析形態に依存し、モル比率の単純な変化を、性能を最適化し、更なる精製の必要性なく共役物を作製するために使用できることを示している。
【0074】
実施例6.オボアルブミン骨格上のビオチン密度の最適化
pH7.2の100mMリン酸ナトリウム中の40mg/ml(約0.87mM;125μl;5mg)のオボアルブミン(A5505;ロット 076K7045)の一定量を、1.25μlのDMSO中のNHS−LC−ビオチン(Pierce 21335)(10mM、30mMまたは60mM)の3つの溶液のうちの一つ、またはDMSO溶液のみ(コントロール骨格)と反応させた。25℃で1時間経過後に、13.5μlのスルホ−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(sSMCC)をDMSO中の200mMストックから添加して、sSMCCおよびオボアルブミンの最終濃度17.9mMおよび約0.72mMをそれぞれ得た。25℃で1時間後、サンプル(151μl)を、Sephadex G−25(NAP−5カラム;GE Hearlthcare社製)で脱塩して、400μlのpH5.8の10mMリン酸ナトリウムの中に入れ、50μlのpH5.8のリン酸ナトリウム緩衝液および、50μlの33%トレハロースストック(トレハロース1gと水2mlから調製)を加えて、500μlとした。骨格分子のそれぞれの種類の5μlの一定量を、5μlのヤギ抗ウサギIgG(10mg/ml)、2μlのpH7.5の2M Hepes/10mM EDTA、6μlの水、および最後に2μlの2−IT(8mM)と混合した。25℃で一晩インキュベートした後、共役物をウサギIgGプレート上で、25℃で1時間インキュベートした(実施例2)。洗浄後、ウェルを1/10,000ストレプトアビジンHRPで25℃で1時間インキュベートして、実施例5に従ってABTS基板でHRP検出をする前に洗浄した。
【0075】
図4に見られるように、骨格分子上にビオチンが存在しない時は(四角)、バックグラウンド結合のみが見られた。1mM(白丸)、3mM(三角)または6mM(黒丸)のビオチンNHSエステルと調製された骨格分子から調整された共役物は、すべて1/10,000の共役物希釈において、かなりの結合を示したが、6mMビオチンと調製された共役物がもっとも大きな吸光度を示し、これはこの共役物が他の共役物より、より多くのストレプトアビジンHRPを捕捉できたからであろう。
【0076】
実施例7.sSMCC量の最適化
pH7.2の100mMリン酸ナトリウム中の40mg/ml(約0.87mM;125μl;5mg)のオボアルブミン(A5505;ロット 076K7045)の4つの一定量を、それぞれ1.25μlのDMSO中の60mMのNHS−LC−ビオチン(Pierce 21335)と反応させた。25℃で1時間経過後に、サンプルを13.5μlのスルホ−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(sSMCC)の3種類の濃度(200mM、100mMまたは50mM)のうちの一つ、またはDMSOのみと反応させて、sSMCCの最終濃度17.9mM、8.9mM、4.5mMおよび0mMをそれぞれ得た。25℃で1時間経過後、サンプル(151μl)を、Sephadex G−25(NAP−5カラム;GE Hearlthcare社製)で脱塩して、400μlのpH5.8の10mMリン酸ナトリウムの中に入れ、50μlのpH5.8のリン酸ナトリウム緩衝液および、50μlの33%トレハロースストック(トレハロース1gと水2mlから調製)を加えて、500μlとした。共役物が配置され、実施例6に記載されたとおりに、ELISAで分析された。
【0077】
図5に見られるように、sSMCCを欠如した骨格から調製された抗体共役物は、比較的低い吸光度を示した(四角)。少なくとも10mMのsSMCC濃度(白丸)が、最大吸光度値付近に到達するために必要であった。この吸光度は5mM sSMCC(三角)よりもかなり高い値であって、20mM sSMCC(黒丸)から得られたのと同等の値を示した。
【0078】
実施例8.イソチオシアネートSMLsを有する骨格分子の調製
pH9.2のリン酸ナトリウム中の40mg/mlオボアルブミンを、2.5mM フルオロセインイソチオシアネート(25mM DMSOストックから)と、暗所で25℃で3時間反応させた。サンプルを脱塩してpH7.2の100mMリン酸ナトリウムに入れ緩衝液を交換し、20mg/mlに調製した。sSMCCを、DMSO中の200mMストックから、最終濃度が10mMとなるように添加した。さらに25℃で1時間インキュベートした後、サンプルを脱塩して、pH5.8のリン酸ナトリウムに入れた。
【0079】
実施例9.アミノ化デキストラン骨格の製造
9A.アルデヒド誘導体を介して、デキストラン(水中80mg/ml;0.5ml)で分子量80,000(たとえば、1mM濃度)のものを、100μlの500mM 過ヨウ素酸ナトリウムと暗所で25℃で1時間反応させた。活性化デキストラン(0.6ml)を、Sephadex G−25(NAP−5カラム;GE Hearlthcare社製)で脱塩して、0.15M塩化ナトリウムに入れた(最終容量1.3ml)。pH9.2の150μlの重炭酸ナトリウム/10%(v/v)2,2−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)[EDTA]を添加して、25℃で30分経過後、得られたシッフ塩基を50mMのホウ素化水素ナトリウム(1M NaOHからの5Mストック)で減少させた。30分後、アミノ化デキストランをPD10カラムを用いて脱塩して、0.15M NaClに入れて、0.5ml分を採取した。アミン陽性の早期に溶出する高分子量物質(TNBSテストを使用;Bioconjugates techniques, GT Hermanson ISBN 0-12-342336-8,p112)を貯蔵した。貯蔵液中のアミン顔料は、1モルのデキストランあたり〜25モルであった。
【0080】
9B.カルボキシメチル(CM)誘導体を介して、5gのデキストラン(150kDまたは400−500kDa)に、新たに調製された50mlの1M ブロモ酢酸/2M NaOHを添加し、1分間しっかりと振動させ、25℃で24時間穏やかに混合した。CMデキストランをSephadex G−25カラム上で脱塩して、pH6.0(NaOHで調整)の50mM MESに入れた。pH6.0の50mM MES中の10mlのCM−デキストラン(〜67mg/ml)に、pH6.0の2mlの0.5M MES/2M エチレンジアミン、および1.3mlの1M EDC[1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩]を添加した。反応を25℃で16時間進め、得られたアミノ化デキストランをSephadex G−25カラム上で脱塩して、pH7.2の0.1M リン酸ナトリウムに入れた。アミン置換は、150kDaデキストラン1モル当たり〜17モルであり、400−500kDaデキストラン1モル当たり>61モルであった。
【0081】
実施例10.追加のアミンをオボアルブミン骨格に導入するためのカルボキシル官能基の修飾
pH6.0の50mM MES中の375μlのオボアルブミンを、pH6の50mM MES中の300μlの1M EDBAに添加した。75μlのEDCを、pH6の50mM MES緩衝液に添加した。オボアルブミンの架橋を防止するために過剰ジアミン(EDBA)を使用することで、カルボキシル(および、ひいてはアミンの導入)の転換度をEDC量を制限して調節する。100mM、20mMおよび4mM EDC(およびコントロール用の0mM)のストック濃度(最終濃度が、それぞれ10、2、0.4および0mM)を使用した。より大きなストック濃度は(500mMまたは1mM EDC)、より多くの数のアミンを導入したが、さらにsSMCCと反応したときに、沈殿したアミノ化骨格分子をもたらした。アミノ化骨格分子は、過剰ジアミン、EDCおよび反応副産物を除去するために、0.15M NaCl中で平衡化されたPD10上で脱塩された。脱塩化サンプルの最終量は1.25mlであった。TNBS試薬を用いたアミン含量の評価は、過剰ジアミン存在下の10、2および0.4mM EDCによる処理は、それぞれ、一つの骨格分子当たり、6、1および0個の新規アミン基を導入したことを示した。
【0082】
実施例11.ヨードアセトアミドとの反応のためのチオール化オボアルブミン骨格分子の製造
ジアミンEDBAをシスタミンに代えた以外は、実施例10に記載されているとおりに反応を開始した。25℃で一晩インキュベーションした後、サンプルをSephadex G25で脱塩して、pH8の100mMのリン酸ナトリウム中に入れた。125μlの40mg/ml DTTを添加して、室温で30分間インキュベートした後に、サンプルを脱塩して、pH7.2の100mMのリン酸ナトリウムに入れた。チオール化サンプルを、迅速に2−3倍の過剰モル(チオールに対して)のヨードアセチル−LCビオチン(Pierce 21333、ロットDG56028)と、暗所で25℃で3時間反応させて、脱塩してpH7.2の100mMリン酸ナトリウムに入れ、その後、他の骨格−SML分子で記載されたように(たとえば、実施例7)、さらなる工程を行なった。
【0083】
実施例12.ポリ−ヨードアセチル フルオロセイン化デキストラン(40kD)骨格分子の製造
pH7.2の100mMのリン酸ナトリウム中の、アミノデキストランで分子量40,000(1モル当たり、9.3モルのアミン)(分子プローブ、D1861)(40mg/ml;1mM)を、DMSO中の100μlの5−(および6−)カルボキシフルオロセインスクシンイミジルエステル(分子プローブC1311;ロット25547W)と、暗所で25℃で16時間反応させた。200μlの骨格分子を、さらにDMSO中の20μlの200mMのヨード酢酸NHSエステルと、暗所で25℃で1時間反応させた。220μlのサンプルをNAP−5カラム上で脱塩して、450μlのpH5.8の10mMのリン酸ナトリウム中に入れ、33%トレハロースストック(トレハロース1gと水2mlから調製)を加えて、500μlとした。ヤギ抗ウサギIgG(5mg/ml)との共役を、以下の順で混合して、8μlの水、6μlの骨格/緩衝液混合物[4μlの骨格+2μlのpH7.5の2M Hepes/10mM EDTA]、4μlのIgGおよび2μlの8mMの2−イミノチオラン塩酸塩、暗所で25℃で一晩反応させて行われた。
【0084】
実施例13.150kDおよび400−500kD ポリ−マレイミドフルオロセイン化デキストランで調製された共役物の比較。コントロールウェルの蛍光発光シグナルは、全ての4つの共役物(E,F,G,Hの棒)で低かった。
【0085】
アミノ化デキストラン(実施例2Bの記載に従って調製)(0.25ml)を、5−(および6−)カルボキシフルオロセインスクシンイミジルエステル(4.5μlのDMSO中の100mMストック)(最終濃度〜1.8mM)と反応させた。25℃で1時間後、スルホ−SMCC(7.5μlのDMSO中の200mMストック)(最終濃度=6mM)を添加した。ポリ−マレイミドフルオロセン化デキストラン(150kDaおよび400−500kDa)をSephadex G25カラム(PD10、GE Healthcare社製)上で脱塩して、pH5.6の10mMリン酸ナトリウムに入れた(溶出量 1.5ml)。さらに、2.55mlの水、0.45mlのトレハロース(1g+2mlの水)および22.5μlの2−イミノチオラン塩酸塩(80mMストック;最終濃度〜400μM)を添加した。それぞれのポリ−マレイミドフルオロセン化デキストラン(〜2.5mg デキストラン/ml)の一定量(40μl)を凍結乾燥した。
【0086】
ヤギ抗ウサギIgG(21.6mg/ml)を、1部のpH7.5の2M Hepes/10mM EDTAと、9部の水を混合して調製された希釈液を使用して、2.5mg/mlに希釈した(ストックX)。さらに、ストックXの1/3希釈を、0.8325mg/ml(ストックY)および0.277mg/ml(ストックZ)の溶液を得るために調製した。凍結乾燥ポリ−マレイミドフルオロセイン化 150kDa デキストランのバイアルを、40μlの抗体ストックX(たとえば、100μg抗体;1:1 抗体:デキストラン比)またはストックY(たとえば、33.3μg抗体;1:3 抗体:デキストラン比)で再構成された。凍結乾燥ポリ−マレイミド フルオロセイン化 400−500kDa デキストランのバイアルが、40μlの抗体ストックY(たとえば、33.3μg抗体;1:3 抗体:デキストラン比)またはストックZ(たとえば、11.1μg抗体;1:3 抗体:デキストラン比)で再構成した。5時間後に、共役物を、抗体に関して濃度を正常にするために、TBS/0.1% BSAを適切量を用いて、4μg/mlとなるように希釈した。
【0087】
共役物を、実施例3の記載に従って、ウサギIgG−被覆プレート(実施例2)で試験した。図6に見られるように、抗体:デキストランのモル比が1:1では、400−500kDaデキストラン共役物(棒B)から得られたシグナルは、150kDaデキストラン共役物(棒A)のシグナルの2倍以上であり、これはデキストラン1分子当たりの、より大きな表面積とより多くの数の付着顔料分子を反映している。この違いは、デキストラン骨格が3:1モル以上の場合は顕著さが減少するが、400−500kDaデキストランの蛍光発光シグナル(棒D)は、それでも、150kDaデキストラン(棒C)よりも非常に高い。小骨格分子の複数の接着(棒C;3:1 デキストラン:抗体比)は、400−500kDa骨格分子を、1:1 デキストラン:抗体比で調製したのと同様に大きなシグナルを有する共役物を与える。コントロールウェル上の蛍光発光シグナルは、全ての共役物で低かった(棒E,F,GおよびH)。
【0088】
実施例14.SMCCの消光効果
ポリアミド−フルオロセイン化デキストラン骨格分子(実施例13)のサンプルが、40μlのpH7.0の200mM Hepes/1mM EDTAまたは水(コントロール、pH5.8)に取り込まれた。Hepes緩衝液中に取り込まれたサンプルは、4μlの様々な試薬で処理された:pH2.3の1.43mMメルカプトエタノール/50mMグリシン;pH2.3の1.43mMメルカプトエタノール/50mMグリシン;pH7.5の50mMグリシン、または水。サンプルを、蛍光発光プレートリーダーの直線範囲に入るシグナルを示すように希釈した。結果を図6に示す。蛍光発光はメルカプトエタノールによって優位に増加し、プロセスは30分以内に完了した(最終濃度1.43mM)。より高い濃度は、さらに蛍光発光を上昇させなかった(図示なし)。最終濃度0.143mMは最大蛍光発光を示すのに不十分であり、安定したシグナルに達するまでに、少なくとも120分間かかった。低分子量チオールを放出する2−イミノチオラン塩酸塩の分解を促進するグリシンの添加も、蛍光発光を促進した。この促進は30分以内に完了したが、高濃度のメルカプトエタノールに比べて優位に顕著でなかった。pH5.8での蛍光発光の経時的変化はなく、中和pH値で、グリシンまたはメルカプトエタノールの不存在下では、蛍光発光のわずかな増加が5時間後に示され、これはマレイミド官能基のゆっくりとした分解によって説明されるであろう。なぜSMCCがポリマレイミド−フルオロセイン化骨格を消光するのか明らかでないが、消光効果は、2−イミノチオラン塩酸塩を不活性化させるメルカプトエタノール/グリシンの混合物を使用すること、および迅速に過剰のマレイミド官能基の消光効果を緩和させるチオールを用いた付加反応を通じて、容易に逆になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小分子リガンドを、前記リガンドで標識化される分子に間接的に結合させるための方法であって、
骨格分子であって、少なくとも一つの小分子リガンドが付着しているものを、標識化される分子に接触させるステップを含み、前記骨格分子と前記標識化される分子との間の結合を形成するために、前記骨格分子が前記標識化される分子上に存在するレシーバー部分、またはその場で形成されるレシーバー部分と反応性を有し、その結果、前記小分子リガンドを前記標識化される分子に間接的に結合させる、方法。
【請求項2】
前記骨格分子と前記標識化される分子との反応前に、少なくとも一つの小分子リガンドを前記骨格分子に付着させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小分子リガンドが前記骨格分子に共有結合的に付着している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記小分子リガンドが化学量論的に過剰な骨格分子に接触している、請求項2または請求項2に従属する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記小分子リガンドが前記骨格分子と反応する能力に関して一価である、請求項2,3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記小分子リガンドが前記骨格分子上に存在するアミン基と反応する、請求項2〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記小分子リガンドがN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体、イソチオチアネート誘導体、トリアジン、スルホニルクロリド、アシルアジド、ハロゲン化アリール、およびアルデヒド、テトラフルオロフェニルエステルまたはイミドエステルを含む、請求項2〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記小分子リガンドが蛍光色素分子、発色団、ビオチン、アビジン、金属イオンキレート剤、光反応性基、ヨウ素化可能部分、光増感剤、消光剤、ペプチドおよび低分子量薬剤よりなる群から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記低分子リガンドが、前記骨格への付着前に、1kD未満の分子量を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記低分子リガンドが、前記骨格への付着前に、0.6kD未満の分子量を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記骨格分子が、前記方法の実施前に、複数の求核基を含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記骨格分子が、前記方法の実施前に、複数の遊離アミン基を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記骨格分子がポリペプチド、アミノ化デキストラン、チオール化ポリマー、活性化ポリエチレングリコール、デンドリマー、および活性化ビーズまたはナノ粒子よりなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記骨格分子が、前記小分子リガンドの付着前に、少なくとも5kDの分子量を有する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記骨格分子が、前記小分子リガンドの付着前に、少なくとも10kDの分子量を有する、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記骨格分子が、前記小分子リガンドの付着前に、少なくとも20kDの分子量を有する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記骨格分子がオボアルブミン、デキストランまたは誘導化デキストランを含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記小分子リガンドの接着後、前記骨格分子が、前記標識化される分子上に存在するチオール基、またはその場で形成されるチオール基と反応する1つ以上のチオール反応性基を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
チオール基がチオール生成剤の作用によって前記標識化される分子上にその場で形成される、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、1つまたは複数の小分子リガンドが付着した前記骨格分子、前記標識化される分子、およびチオール生成剤の単一混合物中で接触させるステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記チオール生成剤が2−イミノチオラン塩酸塩を含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記標識化される物質がポリペプチドを含む、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記標識化される物質が酵素、抗体または抗原結合断片または抗体の変異体を含む、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
少なくとも一つの小分子リガンドの付着の前または後に、前記骨格分子を1つ以上の活性化試薬に接触させるステップを含み、前記活性化試薬は前記骨格分子と反応して、前記標識化される分子上のレシーバー部分に対して反応性を有する1つ以上の基を形成する、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記活性化試薬がヘテロ二官能性である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記活性化試薬と前記骨格分子との反応がチオール反応性基を前記骨格分子に導入し、チオール反応性基が続いて前記標識化される分子上に存在するチオール基、またはその場で形成されるチオール基と反応可能である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記活性化試薬が前記骨格分子上に存在するアミン基と反応する、請求項24,25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記活性化試薬がN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体を含む、請求項24〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記活性化試薬が、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸塩(“SMCC”)、m−マレイミドベンゾイル−ヒドロキシスクシンイミドエステル(“MBS”)、スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸塩(“SIAB”)、N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミドエステル(GMBS)、スクシンイミジル6−((ヨードアセチル)アミノ)ヘキサン酸塩(“SIAX”)、スクシンイミジル4−(((ヨードアセチル)アミノ)メチルシクロヘキサン−1−カルボン酸塩(“SIAC”)、およびこれらのスルホン酸化誘導体を含む群から選択される、請求項24〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記小分子リガンドが、前記リガンドを前記骨格分子に付着させるために、前記骨格分子上に存在する部分と反応する求核基を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記小分子リガンドがアミン基を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記骨格分子が前記小分子リガンドと反応する1つ以上のアルデヒド基を含む、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記間接的結合反応を終止させるために、グリシンとチオールを前記反応混合物に加えるステップをさらに含む、請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記グリシンと前記チオールが、25から100mMでpHが2.0〜2.6のグリシンと、5から25mMのチオールとを含む混合物として加えられる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれかに記載の方法における使用に適合した骨格分子であって、前記骨格分子は1つ以上の付着された小分子リガンド、および標識化される分子上に存在するレシーバー部分、またはその場で形成されるレシーバー部分に対して反応性を有する1つ以上の基を有する、骨格分子。
【請求項36】
前記1つまたは複数の小分子リガンドが前記骨格分子に共有結合的に付着している、請求項35に記載の骨格分子。
【請求項37】
付着された2つ以上の異なる小分子リガンドを有する、請求項35または36に記載の骨格分子。
【請求項38】
前記標識化される分子上に存在するチオール基、またはその場で形成されるチオール基との反応に適した1つ以上のチオール反応性基を含む、請求項35,36または37のいずれかに記載の骨格分子。
【請求項39】
オボアルブミン、デキストランまたは誘導化デキストランを含む、請求項35〜38のいずれかに記載の骨格分子。
【請求項40】
好ましくは部分的に、または高度に精製された、請求項35〜39のいずれかに記載の骨格分子の溶液を、少なくとも10mgs/mlの濃度で含む組成物。
【請求項41】
請求項35〜39のいずれかに記載の骨格分子を含む組成物であって、好ましくは部分的に、または高度に精製された、凍結乾燥形態の組成物。
【請求項42】
請求項1〜34のいずれかに記載の方法の実施において使用するためのキットであって、前記キットは請求項35〜39のいずれかに記載の骨格分子と、本発明に係る方法を実施するための説明書とを含む、キット。
【請求項43】
チオール生成剤をさらに含む、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
前記チオール生成剤が2−イミノチオラン塩酸塩を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
緩衝剤、1つ以上の小分子リガンド、1つ以上の活性化試薬および1つ以上の標識化される分子のうち、1つ以上をさらに含む、請求項42,43または44のいずれかに記載のキット。
【請求項46】
前記キットの少なくとも一つの試薬成分が、凍結乾燥形態および/または複数の一定分量として存在する、請求項42〜46のいずれかに記載のキット。
【請求項47】
骨格分子組成物を含み、前記組成物が前記組成物中のそれぞれの骨格分子に付着した公知の平均数の小分子リガンドを有する、請求項39〜43のいずれかに記載のキット。
【請求項48】
間接的に標識化される分子と、前記間接的に標識化される分子に付着された少なくとも一つの骨格分子と、前記骨格分子に付着された少なくとも一つの小分子リガンドラベルとを含む共役物。
【請求項49】
請求項1〜32のいずれかに記載の方法で調製された、請求項48に記載の共役物。
【請求項50】
前記小分子リガンドが前記骨格分子に共有結合的に付着し、かつ前記骨格分子が前記間接的に標識化される分子に共有結合的に付着している、請求項48または49に記載の共役物。
【請求項51】
前記骨格分子がポリペプチド、デキストランまたは誘導化デキストランを含む、請求項48〜50のいずれかに記載の共役物。
【請求項52】
前記骨格分子がオボアルブミンを含む、請求項48〜51のいずれかに記載の共役物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−529186(P2010−529186A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511730(P2010−511730)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050438
【国際公開番号】WO2008/152424
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(508174908)イノーバ・バイオサイエンシズ・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】INNOVA BIOSCIENCES LTD
【Fターム(参考)】