説明

共振器の励起周波数の最適化

本発明は、燃焼機関の高周波点火の電源を制御するデバイス(2)に関し、このデバイス(2)は、燃焼機関の動作パラメータの測定信号を受信するためのインターフェース(21)、制御信号を出力するインターフェース(24)、測定信号と、生成される制御信号の周波数との関係を記憶するメモリモジュール(26)、生成される制御信号の周波数を、受信インターフェースにおいて受信される測定信号と前記記憶された関係とに基づいて決定するモジュール(25)、及び制御信号を決定した周波数で適用するモジュール(27)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、200Vよりも大きい電圧と1MHzよりも高い周波数による、共振器への電力供給、具体的には、制御点火に使用される共振器への電力供給に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のプラズマ点火に適用するために、共振周波数が1MHzよりも高い共振器がスパークプラグ部分に配置され、この共振器には通常200Vよりも大きい電圧が供給され、10Aよりも大きい電流が流れる。このような応用には、高い品質係数と高い電圧源を有する高周波共振器の使用が必要となり、電圧源の動作周波数は共振器の共振周波数に非常に近い。共振器の共振周波数と電圧源の動作周波数の差が小さいほど、共振器の増幅係数(共振器の出力電圧の入力電圧に対する比)が上がる。共振器の品質係数が高いほど、電圧源の動作周波数はその共振周波数に近くなければならない。
【0003】
製作公差、燃焼室内の温度又は冷却回路内の温度、又は共振器の部品のエージングドリフト等の多数のパラメータが共振周波数に影響する。これらのパラメータは、共振器の特定の部品と燃焼室とが近接していることにより、所定のスパークプラグコイルに対し更に大きな影響を及ぼす。従って、共振器の増幅係数を保証するのは難しい問題である。
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、この不利点を解決することである。本発明は従って、燃焼機関の高周波点火のための電源制御デバイスを提案し、本デバイスは、
− 燃焼機関から送られる動作パラメータの測定信号を受信するためのインターフェース、
− 制御信号用の出力インターフェース、
− 測定信号と、生成される制御信号の周波数との関係を記憶するメモリモジュール、
− 生成される制御信号の周波数を、受信インターフェースにおいて受信される測定信号とメモリモジュール内に記憶された関係との関数として決定するモジュール、及び
− 出力インターフェースにおいて、決定した周波数で制御信号を適用するモジュール
を備える。
【0005】
本発明は、高周波点火用電源にも関し、本電源は、
− 上述の電源制御デバイス、及び
− 制御デバイスの制御信号により制御されるスイッチを有する電源回路であって、このスイッチにより中間電圧が、制御信号によって決定された周波数で電源回路の出力に適用される電源回路
を備える。
【0006】
本発明は更に、点火システムにも関し、本システムは、
− 上述の電源、及び
− 1MHzよりも高い共振周波数を有する共振器であって、電源回路の出力部に接続され、2つの電極を備え、電源回路の出力部に高電圧レベルが印加された時に、2つの電極間にプラズマを生じさせることができる共振器
を備える。
【0007】
本発明の他の特徴と利点は、添付の図を参照した、例示を目的とする非限定的な本発明に関する下記の説明により明らかとなる。
【0008】
本発明は、燃焼機関の高周波点火のための電源制御デバイスを提案する。本制御デバイスでは、燃焼機関の動作パラメータの測定信号が考慮され、生成される点火制御信号の周波数が、測定信号と制御信号の周波数との記憶された関係の関数として決定される。
【0009】
制御信号の周波数をエンジンの動作パラメータの関数として適応させることにより、この周波数が、共振器の共振周波数に近い値に非常に正確に維持される。これにより、周波数のオープンループサーボ制御が発生する。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明による制御デバイス2を備える点火システム1を示す。制御デバイス2以外の、図示した点火システム1の要素の例は、欧州特許出願公開第1515594号明細書に詳細に記載されている。制御デバイス2は増幅器3に接続されている。増幅器は、MOSFET電力トランジスタ4のゲートに接続されている。トランジスタ4は、制御デバイス2から送られる制御信号により制御されるスイッチとして機能する。スイッチ4により、高電圧レベルを、制御信号により決定された周波数において、電極の端子間に適用することが可能となる。直列共振器5は、トランジスタ4のドレインとアースとの間に接続されている。共振器5は、インダクタ52に直列の抵抗器51と、コンデンサ54に平行な抵抗器53とを備える。抵抗器51と53は、具体的にはコンデンサ52及び54の不完全性により必要な、同等の抵抗器である。点火電極7及び8は、コンデンサ54の端子に接続されている。共振回路6は、中間電圧源とトランジスタ4のドレインとの間に接続されている。この共振回路6は、インダクタ61とコンデンサ62とを備える。
【0011】
図2は、本発明による制御デバイス2の実施例の概略図である。制御デバイス2は、燃焼機関から送られる動作パラメータの測定信号を受信するためのインターフェース21を備える。測定されるエンジンの動作パラメータには、エンジンオイルの温度、エンジン冷却液の温度、エンジントルク、エンジン速度、点火角度、吸気温度、マニホールド圧、気圧又は燃焼室内の圧力を考慮することができる。この種の測定は、当業者に周知の方法で行うことができる。
【0012】
有利には、制御デバイス2は更に、電源から送られる動作パラメータの測定信号を受信するためのインターフェース22を備え、このインターフェース22は、例えば電極端子における電圧の測定値、又は共振回路6に印加される中間電圧の測定値を受信する。
【0013】
制御デバイス2は、測定信号と、生成される制御信号の周波数との関係が記憶されるメモリモジュール26を備える。この関係は、予備試験の関数として確立される。メモリモジュール26は、前記関係を、固有の制御信号周波数を有する所定の測定信号に関連する関数の形で記憶することができる。例えば、一次関数又は多項式関数を、考慮するパラメータを変えながら、共振器における予備試験の結果の関数として推定することが可能である。メモリモジュールはまた、前記関係を、測定信号が入力される多次元テーブルの形で記憶することもできる。
【0014】
単純化されたバージョンでは、メモリモジュール26は、共振器5の近傍における温度測定値の関数と、電源の電気動作パラメータの測定値の関数として制御周波数が提供される関係を記憶する。この関係は、温度が共振器5の共振周波数に与える影響を確立する予備試験の関数として確立することができる。
【0015】
制御デバイス2は、生成される制御信号の周波数を、受信した測定信号の関数及びメモリモジュール26に記憶された関係の関数として決定するモジュール25を備える。制御信号の周波数は、モジュール25からモジュール27に送られ、これにより制御信号が前記周波数で出力インターフェース24に適用される。モジュール27は、例えば、当業者により適切な方法で選択されるクロック発振器である。
【0016】
プログラミングインターフェース23を設置して、前記関係を変えるための指示、又はメモリモジュール26に記憶された共振器のパラメータの受信及び実施を可能にすることができる。プログラミングインターフェース23は、具体的には、無線通信インターフェースであってもよい。このやり方では、メモリモジュール26に記憶された関係の更新を考慮できる。このやり方では、共振器の挙動に関する更に正確な情報が得られた場合、点火システムの動作を、情報の伝達後に最適化することができる。更に、プログラミングインターフェース23により、メモリモジュール26を、工場で測定した共振器5の電気パラメータ(例えば、共振周波数)の値に基づいてプログラミングすることが可能となる。バーコードを共振器5に連関させて、決定した電気パラメータの値をコード化し、このバーコードを読み取ることにより、共振器を制御デバイス2に接続する際にメモリモジュール26にこれらの値が入力されるようにすることができる。このやり方によれば、共振器5の製作公差は、生成される制御周波数の精度に対し何ら影響を与えない。
【0017】
燃焼機関の点火に適用される点火システムは、通常、周波数が1MHzよりも高い直列共振器5と、電極端子間に200Vよりも大きい電圧を印加する手段と、共振器の共振周波数の大きさの周波数を有する制御信号を発生させることができる制御デバイスとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による制御デバイスを内蔵した点火システムを示す。
【図2】本発明による制御デバイスの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機関の高周波点火のための電源制御デバイス(2)であって、
− 燃焼機関から動作パラメータの測定信号を受信するためのインターフェース(21)、
− 制御信号用の出力インターフェース(24)、
− 測定信号と、生成される制御信号の周波数との関係を記憶するメモリモジュール(26)、
− 生成される制御信号の周波数を、受信インターフェースにおいて受信される測定信号の関数とメモリモジュール内に記憶された関係との関数として決定するモジュール(25)、及び
− 出力インターフェースにおいて、決定した周波数で制御信号を適用するモジュール(27)
を備えることを特徴とする、制御デバイス(2)。
【請求項2】
受信インターフェース(22)が電源の動作パラメータの測定信号も受信する、請求項1に記載の電源制御デバイス(2)。
【請求項3】
メモリモジュール(26)に接続されたプログラミングインターフェース(23)を備え、前記インターフェースが、出力インターフェースに接続される共振器の電気パラメータの値を受信し、電気パラメータの値がメモリモジュール内に記憶されて前記記憶された関係に入力される、請求項1又は2に記載の制御デバイス(2)。
【請求項4】
記憶された電気パラメータの値が、出力インターフェース(24)に接続される共振器(5)において行われる測定によって得られる、請求項3に記載の制御デバイス(2)。
【請求項5】
測定信号が、エンジンオイルの温度、エンジン冷却液の温度、エンジントルク、エンジン速度、点火角度、吸気温度、マニホールド圧、気圧又は燃焼室内の圧力を含むパラメータ群の内から選択される、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の制御デバイス(2)。
【請求項6】
メモリモジュール(26)が前記関係を、入力として測定信号を有する多次元テーブルの形で記憶する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電源制御デバイス(2)。
【請求項7】
メモリモジュール(26)が前記関係を、所定の測定信号を有する固有の制御信号周波数に関連する関数の形で記憶する、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電源制御デバイス(2)。
【請求項8】
高周波点火用電源であって、
− 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電源制御デバイス(2)、及び
− 制御デバイス(2)の制御信号により制御されるスイッチ(4)を有する電源回路
を備え、
前記スイッチにより、中間電圧が、制御信号によって決定された周波数で電源回路の出力に適用される、高周波点火用電源。
【請求項9】
点火システムであって、
− 請求項8に記載の電源、及び
− 電源回路の出力部に接続され且つ2つの電極(7、8)を備える、共振周波数が1MHzよりも高い共振器(5)であって、電源回路の出力部に高電圧レベルが印加された時に、2つの電極間にプラズマを生じさせることができる共振器
を備える、点火システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−519404(P2009−519404A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545057(P2008−545057)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051298
【国際公開番号】WO2007/071867
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】