共振形コンバータ
【課題】 入力及び負荷の変動に対して出力を一定に保つなどの制御が可能な共振形コンバータを提供する。
【解決手段】 直流電源に接続された第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2との第一の直列回路と、一方の接合点が前記第一の直列回路の接続点に接続された、それぞれインダクタL1,L2とコンデンサC3,C4からなる二つの直列共振回路で構成される並列回路と、前記2つの直列共振回路の電流を整流するダイオードブリッジD3〜D6と、前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサC5と、前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように構成してある事を特徴とする共振形コンバータ。
【解決手段】 直流電源に接続された第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2との第一の直列回路と、一方の接合点が前記第一の直列回路の接続点に接続された、それぞれインダクタL1,L2とコンデンサC3,C4からなる二つの直列共振回路で構成される並列回路と、前記2つの直列共振回路の電流を整流するダイオードブリッジD3〜D6と、前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサC5と、前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように構成してある事を特徴とする共振形コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に使用される共振形コンバータ及びその制御方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータではスイッチング素子のターンオン、ターンオフ時にノイズと電流・電圧の重なりによる電力損失が発生する。この問題点の改善手段として、各種の共振形コンバータが研究されてきた。共振形コンバータの代表的なものに直列共振形コンバータがある。このコンバータの原形は回路例を図10に示すように良く知られたものである。これをある条件のもとで動作させると前記問題点の改善がなされるが、入力電圧変動、負荷変動の条件下で出力を制御する場合、全ての動作点では改善が難しい。
【0003】
図11は図10に示した回路の入力電圧が高く、出力電圧が低い場合の動作波形例である。図11でaは共振回路の電流、bはハイサイド側のD1の電流、cはローサイドのコンデンサC2,ダイオードD2,及び第二のスイッチ素子Q2の合計電流、dは第二のスイッチ素子Q2の電圧である。なお、C1,D1は第一のスイッチ素子Q1の寄生要素、C2,D2は第二のスイッチ素子Q2の寄生要素である。
【0004】
図11で時間t0にてスイッチ素子Q2がターンオン、第一のスイッチ素子Q1がターンオフし、共振電流irはコンデンサCrを放電する方向(矢印と逆方向)に増加して行く、コンデンサCr及びインダクタLrの共振により共振電流irは減少に転じ、t1でゼロとなるが、コンデンサCrの放電が続き、共振電流irは逆(矢印)方向に増加する。この時第二のスイッチ素子Q2のオン電圧がダイオードD2の順電圧より高いと、ダイオードD2が導通する。t2で第一のスイッチ素子Q1がターンオンし、第二のスイッチ素子Q2がターンオフする。この瞬間にダイオードD2の逆リカバリー電流と、コンデンサC2の充電電流が流れ、スイッチング損失が大きく、ノイズ発生の原因となる。いわゆる進み位相で、ゼロボルトスイッチング(以下「ZVS」という。)も難しい状態になる。t3で再び次のサイクルに移行するが、この際にも同様な問題が発生する。
【0005】
この対策についても多くの提案がされている(一例として、特許文献1参照)。コンデンサ電圧クランプ形直列共振コンバータがある。図12はその一例を示すもので、図13は動作波形例である。なお、図12、図13を用いて動作を説明する。図12でコンデンサC1,C2、ダイオードD1,D2はスイッチ素子Q1,Q2の寄生要素を示している。図13でaはインダクタLrの電流、bはコンデンサCrの電圧、cはコンデンサC1、ダイオードD1及びスイッチ素子Q1の合計電流、dはスイッチ素子Q1の電圧である。
【0006】
t0でスイッチ素子Q1がターンオフする。トランスの励磁電流によりコンデンサC1の充電、コンデンサC2の放電が短時間に行われ、スイッチ素子Q1の電圧は入力電圧にスイッチ素子Q2の電圧はゼロボルトになる。その時点でスイッチ素子Q2をターンオンさせることでZVSとなる。その後コンデンサCrとインダクタLrの共振により、コンデンサCrが放電されt1でゼロボルトになり、ダイオードD4が導通する。インダクタLrの電圧が出力電圧とトランスの巻数比で決る電圧に固定されるので、インダクタLrの電流は直線的に減少し、t2でゼロとなる。コンデンサCrの電圧はダイオードD4でクランプされているので、インダクタLrの電流はマイナス側には流れず、t2以降もゼロを保持するのでダイオードD2には電流が流れない。t3でスイッチ素子Q2がターンオフするとトランスの励磁電流によりコンデンサC2の充電、コンデンサC1の放電が短時間で行われ、スイッチ素子Q1の電圧はゼロボルトになる。その直後、スイッチ素子Q1をターンオンすることでZVSとなる。t4までは同様の動作となり、次のサイクルに移行する。この様にスイッチ素子Q1,Q2の切替え時、ボディダイオードに電流が流れないため、ボディダイオードの逆リカバリー電流によるスイッチング損失がなく、またZVSも容易である。
【0007】
ところで、直列共振形コンバータでは一サイクル毎に共振電流が出力される。図12ではコンデンサCrの充放電電流は入力電圧、出力電圧とインダクタLr、コンデンサCrによって決まるため、例えば出力電圧を一定値に制御している場合、軽負荷になると周波数を大幅に下げることになり、入力電圧、負荷の変動に対する動作周波数の変動幅が非常に大きくなる。動作周波数の大幅な変動はトランスのサイズを大きくしたり、出力の周波数特性を悪くするなどの問題を生む。
【0008】
動作周波数の変動を少なくする対策の例として前記特許文献1に紹介されている様な、直列共振回路と直列に並列共振回路を接続したものがある。図14にその一例を示す。図15は動作周波数の変動を少なくする原理を示したものである。図14の共振インダクタLpと共振コンデンサCpの並列回路が並列共振回路で、インダクタLrと直列に接続されている。その他は図12と同じである。並列共振回路の共振周波数fpはインダクタLrとコンデンサCrからなる直列共振周波数frより低く設定される。動作周波数が直列共振周波数frに近い値の場合は並列共振回路内の電流は小さく、直列共振回路の電流が共振コンデンサCpを介して流れ、図13とほぼ同様な動作となる。動作周波数が並列共振回路の共振周波数fpにほぼ等しくなると並列共振回路の電圧が急激に高くなり、直列共振回路にかかる電圧が制限され、直列共振回路の電流が小さくなる。つまり、一サイクルあたりの電力が少なくなり出力が低下する。動作周波数が直列共振周波数frに等しい場合が出力電力最高であるので、動作周波数を直列共振周波数frと並列共振回路の共振周波数fpの間で変化することにより出力を制御することが出来る。
【特許文献1】特開平3−103070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、動作周波数が並列共振回路の共振周波数fpに近づくと、並列共振回路内の電流が急激に増加する。加えて、並列共振周波数は低めに設定されるので共振インダクタLp、共振コンデンサCpのインダクタンス、キャパシタンスが大きくなり、最大通過電流が大きいことと重なり、共振インダクタLp,共振コンデンサCpは体積が大きな物となる。また軽負荷時に並列共振回路の電流が大きくなり、このため損失が増加し、効率が低下する。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、共振形コンバータ本来の利点である低損失、低ノイズの利点を生かしながら、制御時に遅れ位相を保ち、動作周波数の変動が少ないかつ各部位の電流が小さい直列共振形コンバータを提供するもので、電源装置の小型化、高性能化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の共振形コンバータは、直流電源に接続された第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子との第一の直列回路と、一方の接合点が前記第一の直列回路の接続点に接続された、第一のインダクタと第三のコンデンサからなる第一の直列共振回路と、第二のインダクタと第四のコンデンサからなる第二の直列共振回路で構成される並列回路と、交流端子の一方が前記並列回路の他方の接合点に接続され、交流端子の他方が前記直流電源の一端に接続され、前記二つの直列共振回路の電流を整流するダイオードブリッジと、前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサと、前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ前記第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように設定してある事を特徴とする。
【0012】
直流電源に接続された第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子との第一の直列回路と、一方の端子が前記直流電源のどちらか一方の端子に接続された第一及び第二の一次コイルと、二次コイルとを設けたトランスと、前記第一の直列回路の接続点と前記第一の一次コイルの他方の端子間に接続された第一のインダクタと第三のコンデンサとからなる第一の直列共振回路と、前記第一の直列回路の接続点と前記第二の一次コイルの他方の端子間に接続された第二のインダクタと第四のコンデンサからなる第二の直列共振回路と、前記二次コイルを入力とし、二次コイルを流れる電流を整流するダイオードブリッジと、前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサと、前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ前記第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように設定してある事を特徴とする。
【0013】
前記トランスは二脚又は三脚のコアの一脚に第一及び第二の一次コイルと前記一脚または他の一脚に二次コイルが巻回されたことを特徴とする。
また、第一のスイッチ素子が、第一のダイオード及び第一のコンデンサとそれぞれ並列に接続された第一の並列回路と、第二のスイッチ素子が、第二のダイオード及び第二のコンデンサとそれぞれ並列に接続された第二の並列回路とを有することを特徴とする。
また、前記第一及び第二のインダクタは、前記トランスの漏れインダクタンスをその一部又は全部としていることを特徴とする。
また、前記第一及び/又は第二のダイオード、並びに、前記第一及び/又は第二のコンデンサは前記第一及び/又は第二のスイッチ素子の寄生要素として有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、動作周波数fsを第一の直列共振回路の共振周波数fr1と第二の直列共振回路の共振周波数fr2との間で制御することにより、入力および負荷の変動に対して出力を一定に保つなどの制御が可能であり、周波数の変動範囲を狭くすることが出来る。特に後述する様に、fr1とfr2の中間点近くに存在する、出力が最低になる周波数fvとfr1とfr2の内低い方の共振周波数間で制御することにより、共振電流の加算されたものはスイッチング周期に対して遅れ位相となり、スイッチング素子のZVSが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明を実施するための最良の形態を示すものである。図1に示す共振形コンバータは、非絶縁型の共振形コンバータであって、第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2とを直列接続して第一の直列回路を構成し、直流電源Viに接続してある。第一のスイッチ素子SW1は第一のダイオードD1並びに第一のコンデンサC1とそれぞれ並列に接続し、第二のスイッチ素子SW2は第二のダイオードD2並びに第二のコンデンサC2とそれぞれ並列に接続してある。
【0016】
第一のインダクタL1と第三のコンデンサC3とで第一の直列共振回路を構成し、第二のインダクタL2と第四のコンデンサC4とで第二の直列共振回路を構成し、これらを並列に接続し、この並列回路の一方の接合点を第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2との接続点に接続してある。また、 本実施例に係る共振形コンバータでは、ダイオードブリッジD3,D4,D5,D6を備え、このダイオードブリッジD3〜D6の交流端子の一方を前記並列回路の他方の接合点に接続し、交流端子の他方を前記直流電源Viの一端に接続してある。また、ダイオードブリッジD3〜D6の直流端子をダイオードブリッジD3〜D6の出力を平滑する第五のコンデンサC5に接続してある。
【0017】
本実施例に係る共振形コンバータは、第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ第五のコンデンサの電圧を制御する回路を有する。第一の直列共振回路L1,C3の共振周波数をfr1とし、第二の直列共振回路L2,C4の共振周波数をfr2とし、fr1<fr2のように、fr1とfr2とを異なる値に設定してある。なお、fr1÷fr2=1.3〜3が好ましい。
【0018】
以上のように構成してある共振形コンバータは以下のように作用する。先ず、二つの直列共振回路は並列になっているので、これらの回路の電流の和が入力から出力される。動作周波数をfsとすると、fs=fr1の場合は第一のの直列共振回路L1,C3の電流が、第二の直列共振回路L2,C4の電流より大幅に大きく、出力は第一の直列共振回路L1,C3の特性が支配する。fs=fr2の場合は逆に第二の直列共振回路L2,C4の特性が支配することになる。動作周波数をfr1とfr2との間で変化させると第一、第二の直列共振回路の電流の振幅と位相差により出力が変化する。例えば、振幅がほぼ等しく位相差が180°になれば二つの直列共振回路の電流の和はゼロに近づくため、出力をほぼゼロに低下させることが出来る。この原理によれば入力変動、負荷変動に対して、出力電圧を一定に保つなどの制御が可能になる。
【0019】
図1には示してないが、出力電圧を検出し、出力電圧が一定となるように周波数を制御する制御回路部により制御した場合の波形例を図2、図3に示す。図2は入力電圧が低く、負荷電流が大きい場合で、動作周波数fsは第一の直列共振回路L1,C3の共振周波数fr1より少し高い値で動作している。図2のaは第一のインダクタL1の電流、bは第二のインダクタL2の電流、cはダイオードブリッジD3〜D6の入力電流、dは第一の並列回路SW1,D1,C1の合計電流、eは第一のスイッチ素子SW1の電圧波形を示している。
【0020】
図2図示aに比べbの振幅は極めて小さいため、cはほぼaに等しい状態で、出力は第一の直列共振回路L1,C3に支配されている。t0で第一のスイッチ素子SW1がターンオフする。共振回路の電流はスイッチングのタイミングに対して遅れ位相にあり、この電流が第一のコンデンサC1の充電と第二のコンデンサC2の放電を行う。t1で第二のコンデンサC2の放電が完了し、電圧がゼロになった後、第二のスイッチ素子SW2をターンオンすることでZVSとなる。t2で第二のスイッチ素子SW2をターンオフさせると共振電流は第二のコンデンサC2の充電、及ぶ、第一のコンデンサC1の放電を行う。第一のコンデンサC1の電圧がゼロになった直後、第一のスイッチ素子SW1をターンオンすることでZVSとなる。t4で次のサイクルに移行する。
【0021】
図3は入力電圧が高く、負荷電流が定格の10%時の波形である。a〜eは図2と同じ部位の波形を示している。動作周波数fsは高くなり、時間軸はより細かくなっている。aは動作周波数fsが共振周波数frより高い方向に変化しているので、図2の状態に比べ振幅が小さくなり、位相遅れが大きくなっている。bは動作周波数fsが第二の直列共振回路L2,C4の共振周波数fr2により近くなったので多少振幅が大きくなっているが、まだ進み位相である。aとbの振幅が近づき、位相差が180°に向かって大きくなりaとbの和であるcが減少し、出力電流の減少に対応している。cは遅れ位相にあり、ZVSについては図2と同様である。
【0022】
図4は入出力条件を固定し、動作周波数fsを変化させた場合の出力電圧を示したもので、動作周波数fsが第一の直列共振回路L1,C3の共振周波数fr1から高周波側に変化して行くと出力電圧は減少し、ある点から増加に転じ、第二の直列共振回路L2,C4の共振周波数fr2でまた最大値になることを示している。出力電圧が谷点となる周波数をfvとすると、fsがfvの低域側と高域側で制御が可能であるが、高域側は電流cが進み位相になりZVSの点で好ましくない。そこで、fr1<fs<fvの領域で制御することになる。
【0023】
この様に動作周波数fsを第一の共振周波数fr1と出力電圧が谷点となる周波数fv間で制御することにより、入力および負荷の変動に対して出力を一定に保つなどの制御が可能であり、周波数の変動範囲を狭くすることが出来る。図3に戻って、図3は動作周波数fsが出力電圧が谷点となる周波数fvに近づいた状態であるが、aの振幅は減少し、bの振幅はまだ小さい状態であり、回路の電流は出力電流に応じて小さくなっているので、既存技術による実施例のようにトランス、コンデンサなどサイズを大きくすることなく前記問題点の対策が可能となる。
【0024】
また、fs<fvで制御することで共振回路の合計電流は遅れ位相にあり、ZVSは容易でありスイッチング損失の低減、ノイズの低減が可能である。また、図4で分る様に動作周波数fsがほぼ出力電圧が谷点になる周波数fvに等しい条件では出力電圧をゼロ近くまで低下させることができるので、動作周波数fsを制御することで出力短絡まで保護することが可能である。
【0025】
以上の様に本発明によれば巻線部品やコンデンサを大きくすること無く、直列共振形コンバータの問題点の対策が可能であるほか、ZVS、出力過電流保護が容易にできるため、スイッチング電源装置の小型、低コスト、低ノイズ化に効果が発揮できる。
【0026】
図5は図1図示共振形コンバータの第一変形例を示すものである。この共振形コンバータは、以下の構成を有することに特徴を有する。先ず、一方の端子が直流電源Viの一方の端子に接続された第一及び第二の一次コイルN1,N2と、二次コイルN3とを設けたトランスTを備えてある。
【0027】
また、第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2とを直列接続して構成する第一の直列回路の接続点と第一の一次コイルN1の他方の端子間に接続された第一のインダクタL1と第三のコンデンサC3とからなる第一の直列共振回路と、前記第一の直列回路の接続点と第二の一次コイルN2の他方の端子間に接続された第二のインダクタL2と第四のコンデンサC4からなる第二の直列共振回路とを備えてある。また、二次コイルN3を入力とし、二次コイルN3を流れる電流を整流するダイオードブリッジD3,D4,D5,D6を備えてある。その他の構成については、図1図示実施形態とほぼ同様である。
【0028】
以上の構成より、トランスTの漏れインダクタンスを共振回路のインダクタL1,L2の全部又は一部とすることができる。なお、作用については、図1図示実施形態とほぼ同様であるため省略する。以下の変形例についても同様である。
【0029】
図6は図1図示共振形コンバータの第二変形例を示すものである。この共振形コンバータは、図5の変形例とほぼ同様であるが、この変形例はスイッチをMOSFET、Q1,Q2としていることに特徴を有する。また、第一及び第二のダイオードD1,D2、並びに、第一及び第二のコンデンサC1,C2はそれぞれMOSFET、Q1,Q2の寄生要素として有することにも特徴を有する。なお、第一及び第二のダイオードD1,D2、並びに、第一及び第二のコンデンサC1,C2をMOSFET、Q1,Q2の外部部品を使用しても良い。
【0030】
図7は図1図示共振形コンバータの第三変形例を示すものである。この共振形コンバータはトランスの出力をセンタータップ整流方式としたもので、出力電圧が低い場合に有効である。
【0031】
図8は前記第一乃至第三変形例に使用可能なトランスの構成の第一実施例を示す。このトランスは、三脚鉄心を有し、中央の一脚に二つの一次コイルN1,N2と二次コイルN3を巻回したもので、一次コイルN1,N2と二次コイルN3間の漏れインダクタンスを共振用として使用することができる。
【0032】
図9は前記第一乃至第三変形例に使用可能なトランスの構成の第二実施例を示す。このトランスは、三脚鉄心を有し、一端の第一脚に第一の一次コイルN1と二次コイルN3とを巻回し、他端の第二脚に第二の一次コイルN2を巻回したものである。中央の第三脚により第二の一次コイルN2と二次コイルN3間の漏れインダクタンスを調整できるので、本発明の様に共振周波数が異なる2つの共振回路を漏れインダクタンスで構成する場合は有効である。
【0033】
なお、図8及び図9に示すトランスは磁気回路・電気回路変換による等価回路にて本発明に有用であることが証明されるが。これらトランスは単なる実施例であり、例えば二脚鉄心の使用するなど、トランスの構成は問わない。また、本発明は図1乃至図7で説明した実施の形態に係る共振形コンバータに限定されるものではない。例えば、二次コイルを複数設け、多出力の電源装置に適用しても良い。また、スイッチ素子はMOSFETに限らず、IGBTやBiTrなどその他のスイッチ素子に適用できるものである。また、ハーフブリッジ回路をフルブリッジ回路にしたり、出力整流ダイオードをSRMOSに置き換えることなども可能である。また、トランスを有する場合、ZVSは共振電流の他、トランスの励磁電流の作用によることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、この様に動作周波数fsを第一の直列共振周波数fr1と出力電圧が谷点となる周波数fvとの間で制御することにより、ZCSなどの直列共振形コンバータの利点を活かしたまま、入力および負荷の変動に対して出力を一定に保つなどの制御が可能であり、周波数の変動範囲を狭くすることが可能となる他、スイッチング素子のZVSが容易であるなど、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の最良の実施形態の回路構成図である。
【図2】図1図示実施形態における全負荷時の動作波形図である。
【図3】図1図示実施形態における軽負荷時の動作波形図である。
【図4】図1図示実施形態における動作周波数を変化させた場合の出力電圧を示した図である。
【図5】第一変形例を示した回路構成図である。
【図6】第二変形例を示した回路構成図である。
【図7】第三変形例を示した回路構成図である。
【図8】本発明に係るトランスの第一実施例を示した構成図である。
【図9】同じくトランスの第二実施例を示した構成図である。
【図10】従来の共振形コンバータの一例を示す回路構成図である。
【図11】図10図示従来例における動作波形図である。
【図12】図10図示従来例とは別の従来例を示す回路構成図である。
【図13】図12図示従来例における全負荷時の動作波形図である。
【図14】上記従来例とは別の従来例を示す回路構成図である。
【図15】動作周波数の変動を少なくする原理を示す波形図である。
【符号の説明】
【0036】
Vi 直流電源
C1,C2,C3,C4,C5,Cr コンデンサ
Cp コンデンサ
L1,L2,Lr インダクタ
Lp インダクタ
SW1,SW2 スイッチ素子
Q1,Q2 MOSFET
T トランス
N1 コイル
N2 コイル
N3,N4 コイル
D1,D2,D3,D4,D5,D6 ダイオード
D3〜D6,DB ダイオードブリッジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に使用される共振形コンバータ及びその制御方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータではスイッチング素子のターンオン、ターンオフ時にノイズと電流・電圧の重なりによる電力損失が発生する。この問題点の改善手段として、各種の共振形コンバータが研究されてきた。共振形コンバータの代表的なものに直列共振形コンバータがある。このコンバータの原形は回路例を図10に示すように良く知られたものである。これをある条件のもとで動作させると前記問題点の改善がなされるが、入力電圧変動、負荷変動の条件下で出力を制御する場合、全ての動作点では改善が難しい。
【0003】
図11は図10に示した回路の入力電圧が高く、出力電圧が低い場合の動作波形例である。図11でaは共振回路の電流、bはハイサイド側のD1の電流、cはローサイドのコンデンサC2,ダイオードD2,及び第二のスイッチ素子Q2の合計電流、dは第二のスイッチ素子Q2の電圧である。なお、C1,D1は第一のスイッチ素子Q1の寄生要素、C2,D2は第二のスイッチ素子Q2の寄生要素である。
【0004】
図11で時間t0にてスイッチ素子Q2がターンオン、第一のスイッチ素子Q1がターンオフし、共振電流irはコンデンサCrを放電する方向(矢印と逆方向)に増加して行く、コンデンサCr及びインダクタLrの共振により共振電流irは減少に転じ、t1でゼロとなるが、コンデンサCrの放電が続き、共振電流irは逆(矢印)方向に増加する。この時第二のスイッチ素子Q2のオン電圧がダイオードD2の順電圧より高いと、ダイオードD2が導通する。t2で第一のスイッチ素子Q1がターンオンし、第二のスイッチ素子Q2がターンオフする。この瞬間にダイオードD2の逆リカバリー電流と、コンデンサC2の充電電流が流れ、スイッチング損失が大きく、ノイズ発生の原因となる。いわゆる進み位相で、ゼロボルトスイッチング(以下「ZVS」という。)も難しい状態になる。t3で再び次のサイクルに移行するが、この際にも同様な問題が発生する。
【0005】
この対策についても多くの提案がされている(一例として、特許文献1参照)。コンデンサ電圧クランプ形直列共振コンバータがある。図12はその一例を示すもので、図13は動作波形例である。なお、図12、図13を用いて動作を説明する。図12でコンデンサC1,C2、ダイオードD1,D2はスイッチ素子Q1,Q2の寄生要素を示している。図13でaはインダクタLrの電流、bはコンデンサCrの電圧、cはコンデンサC1、ダイオードD1及びスイッチ素子Q1の合計電流、dはスイッチ素子Q1の電圧である。
【0006】
t0でスイッチ素子Q1がターンオフする。トランスの励磁電流によりコンデンサC1の充電、コンデンサC2の放電が短時間に行われ、スイッチ素子Q1の電圧は入力電圧にスイッチ素子Q2の電圧はゼロボルトになる。その時点でスイッチ素子Q2をターンオンさせることでZVSとなる。その後コンデンサCrとインダクタLrの共振により、コンデンサCrが放電されt1でゼロボルトになり、ダイオードD4が導通する。インダクタLrの電圧が出力電圧とトランスの巻数比で決る電圧に固定されるので、インダクタLrの電流は直線的に減少し、t2でゼロとなる。コンデンサCrの電圧はダイオードD4でクランプされているので、インダクタLrの電流はマイナス側には流れず、t2以降もゼロを保持するのでダイオードD2には電流が流れない。t3でスイッチ素子Q2がターンオフするとトランスの励磁電流によりコンデンサC2の充電、コンデンサC1の放電が短時間で行われ、スイッチ素子Q1の電圧はゼロボルトになる。その直後、スイッチ素子Q1をターンオンすることでZVSとなる。t4までは同様の動作となり、次のサイクルに移行する。この様にスイッチ素子Q1,Q2の切替え時、ボディダイオードに電流が流れないため、ボディダイオードの逆リカバリー電流によるスイッチング損失がなく、またZVSも容易である。
【0007】
ところで、直列共振形コンバータでは一サイクル毎に共振電流が出力される。図12ではコンデンサCrの充放電電流は入力電圧、出力電圧とインダクタLr、コンデンサCrによって決まるため、例えば出力電圧を一定値に制御している場合、軽負荷になると周波数を大幅に下げることになり、入力電圧、負荷の変動に対する動作周波数の変動幅が非常に大きくなる。動作周波数の大幅な変動はトランスのサイズを大きくしたり、出力の周波数特性を悪くするなどの問題を生む。
【0008】
動作周波数の変動を少なくする対策の例として前記特許文献1に紹介されている様な、直列共振回路と直列に並列共振回路を接続したものがある。図14にその一例を示す。図15は動作周波数の変動を少なくする原理を示したものである。図14の共振インダクタLpと共振コンデンサCpの並列回路が並列共振回路で、インダクタLrと直列に接続されている。その他は図12と同じである。並列共振回路の共振周波数fpはインダクタLrとコンデンサCrからなる直列共振周波数frより低く設定される。動作周波数が直列共振周波数frに近い値の場合は並列共振回路内の電流は小さく、直列共振回路の電流が共振コンデンサCpを介して流れ、図13とほぼ同様な動作となる。動作周波数が並列共振回路の共振周波数fpにほぼ等しくなると並列共振回路の電圧が急激に高くなり、直列共振回路にかかる電圧が制限され、直列共振回路の電流が小さくなる。つまり、一サイクルあたりの電力が少なくなり出力が低下する。動作周波数が直列共振周波数frに等しい場合が出力電力最高であるので、動作周波数を直列共振周波数frと並列共振回路の共振周波数fpの間で変化することにより出力を制御することが出来る。
【特許文献1】特開平3−103070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、動作周波数が並列共振回路の共振周波数fpに近づくと、並列共振回路内の電流が急激に増加する。加えて、並列共振周波数は低めに設定されるので共振インダクタLp、共振コンデンサCpのインダクタンス、キャパシタンスが大きくなり、最大通過電流が大きいことと重なり、共振インダクタLp,共振コンデンサCpは体積が大きな物となる。また軽負荷時に並列共振回路の電流が大きくなり、このため損失が増加し、効率が低下する。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、共振形コンバータ本来の利点である低損失、低ノイズの利点を生かしながら、制御時に遅れ位相を保ち、動作周波数の変動が少ないかつ各部位の電流が小さい直列共振形コンバータを提供するもので、電源装置の小型化、高性能化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の共振形コンバータは、直流電源に接続された第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子との第一の直列回路と、一方の接合点が前記第一の直列回路の接続点に接続された、第一のインダクタと第三のコンデンサからなる第一の直列共振回路と、第二のインダクタと第四のコンデンサからなる第二の直列共振回路で構成される並列回路と、交流端子の一方が前記並列回路の他方の接合点に接続され、交流端子の他方が前記直流電源の一端に接続され、前記二つの直列共振回路の電流を整流するダイオードブリッジと、前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサと、前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ前記第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように設定してある事を特徴とする。
【0012】
直流電源に接続された第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子との第一の直列回路と、一方の端子が前記直流電源のどちらか一方の端子に接続された第一及び第二の一次コイルと、二次コイルとを設けたトランスと、前記第一の直列回路の接続点と前記第一の一次コイルの他方の端子間に接続された第一のインダクタと第三のコンデンサとからなる第一の直列共振回路と、前記第一の直列回路の接続点と前記第二の一次コイルの他方の端子間に接続された第二のインダクタと第四のコンデンサからなる第二の直列共振回路と、前記二次コイルを入力とし、二次コイルを流れる電流を整流するダイオードブリッジと、前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサと、前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ前記第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように設定してある事を特徴とする。
【0013】
前記トランスは二脚又は三脚のコアの一脚に第一及び第二の一次コイルと前記一脚または他の一脚に二次コイルが巻回されたことを特徴とする。
また、第一のスイッチ素子が、第一のダイオード及び第一のコンデンサとそれぞれ並列に接続された第一の並列回路と、第二のスイッチ素子が、第二のダイオード及び第二のコンデンサとそれぞれ並列に接続された第二の並列回路とを有することを特徴とする。
また、前記第一及び第二のインダクタは、前記トランスの漏れインダクタンスをその一部又は全部としていることを特徴とする。
また、前記第一及び/又は第二のダイオード、並びに、前記第一及び/又は第二のコンデンサは前記第一及び/又は第二のスイッチ素子の寄生要素として有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、動作周波数fsを第一の直列共振回路の共振周波数fr1と第二の直列共振回路の共振周波数fr2との間で制御することにより、入力および負荷の変動に対して出力を一定に保つなどの制御が可能であり、周波数の変動範囲を狭くすることが出来る。特に後述する様に、fr1とfr2の中間点近くに存在する、出力が最低になる周波数fvとfr1とfr2の内低い方の共振周波数間で制御することにより、共振電流の加算されたものはスイッチング周期に対して遅れ位相となり、スイッチング素子のZVSが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明を実施するための最良の形態を示すものである。図1に示す共振形コンバータは、非絶縁型の共振形コンバータであって、第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2とを直列接続して第一の直列回路を構成し、直流電源Viに接続してある。第一のスイッチ素子SW1は第一のダイオードD1並びに第一のコンデンサC1とそれぞれ並列に接続し、第二のスイッチ素子SW2は第二のダイオードD2並びに第二のコンデンサC2とそれぞれ並列に接続してある。
【0016】
第一のインダクタL1と第三のコンデンサC3とで第一の直列共振回路を構成し、第二のインダクタL2と第四のコンデンサC4とで第二の直列共振回路を構成し、これらを並列に接続し、この並列回路の一方の接合点を第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2との接続点に接続してある。また、 本実施例に係る共振形コンバータでは、ダイオードブリッジD3,D4,D5,D6を備え、このダイオードブリッジD3〜D6の交流端子の一方を前記並列回路の他方の接合点に接続し、交流端子の他方を前記直流電源Viの一端に接続してある。また、ダイオードブリッジD3〜D6の直流端子をダイオードブリッジD3〜D6の出力を平滑する第五のコンデンサC5に接続してある。
【0017】
本実施例に係る共振形コンバータは、第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ第五のコンデンサの電圧を制御する回路を有する。第一の直列共振回路L1,C3の共振周波数をfr1とし、第二の直列共振回路L2,C4の共振周波数をfr2とし、fr1<fr2のように、fr1とfr2とを異なる値に設定してある。なお、fr1÷fr2=1.3〜3が好ましい。
【0018】
以上のように構成してある共振形コンバータは以下のように作用する。先ず、二つの直列共振回路は並列になっているので、これらの回路の電流の和が入力から出力される。動作周波数をfsとすると、fs=fr1の場合は第一のの直列共振回路L1,C3の電流が、第二の直列共振回路L2,C4の電流より大幅に大きく、出力は第一の直列共振回路L1,C3の特性が支配する。fs=fr2の場合は逆に第二の直列共振回路L2,C4の特性が支配することになる。動作周波数をfr1とfr2との間で変化させると第一、第二の直列共振回路の電流の振幅と位相差により出力が変化する。例えば、振幅がほぼ等しく位相差が180°になれば二つの直列共振回路の電流の和はゼロに近づくため、出力をほぼゼロに低下させることが出来る。この原理によれば入力変動、負荷変動に対して、出力電圧を一定に保つなどの制御が可能になる。
【0019】
図1には示してないが、出力電圧を検出し、出力電圧が一定となるように周波数を制御する制御回路部により制御した場合の波形例を図2、図3に示す。図2は入力電圧が低く、負荷電流が大きい場合で、動作周波数fsは第一の直列共振回路L1,C3の共振周波数fr1より少し高い値で動作している。図2のaは第一のインダクタL1の電流、bは第二のインダクタL2の電流、cはダイオードブリッジD3〜D6の入力電流、dは第一の並列回路SW1,D1,C1の合計電流、eは第一のスイッチ素子SW1の電圧波形を示している。
【0020】
図2図示aに比べbの振幅は極めて小さいため、cはほぼaに等しい状態で、出力は第一の直列共振回路L1,C3に支配されている。t0で第一のスイッチ素子SW1がターンオフする。共振回路の電流はスイッチングのタイミングに対して遅れ位相にあり、この電流が第一のコンデンサC1の充電と第二のコンデンサC2の放電を行う。t1で第二のコンデンサC2の放電が完了し、電圧がゼロになった後、第二のスイッチ素子SW2をターンオンすることでZVSとなる。t2で第二のスイッチ素子SW2をターンオフさせると共振電流は第二のコンデンサC2の充電、及ぶ、第一のコンデンサC1の放電を行う。第一のコンデンサC1の電圧がゼロになった直後、第一のスイッチ素子SW1をターンオンすることでZVSとなる。t4で次のサイクルに移行する。
【0021】
図3は入力電圧が高く、負荷電流が定格の10%時の波形である。a〜eは図2と同じ部位の波形を示している。動作周波数fsは高くなり、時間軸はより細かくなっている。aは動作周波数fsが共振周波数frより高い方向に変化しているので、図2の状態に比べ振幅が小さくなり、位相遅れが大きくなっている。bは動作周波数fsが第二の直列共振回路L2,C4の共振周波数fr2により近くなったので多少振幅が大きくなっているが、まだ進み位相である。aとbの振幅が近づき、位相差が180°に向かって大きくなりaとbの和であるcが減少し、出力電流の減少に対応している。cは遅れ位相にあり、ZVSについては図2と同様である。
【0022】
図4は入出力条件を固定し、動作周波数fsを変化させた場合の出力電圧を示したもので、動作周波数fsが第一の直列共振回路L1,C3の共振周波数fr1から高周波側に変化して行くと出力電圧は減少し、ある点から増加に転じ、第二の直列共振回路L2,C4の共振周波数fr2でまた最大値になることを示している。出力電圧が谷点となる周波数をfvとすると、fsがfvの低域側と高域側で制御が可能であるが、高域側は電流cが進み位相になりZVSの点で好ましくない。そこで、fr1<fs<fvの領域で制御することになる。
【0023】
この様に動作周波数fsを第一の共振周波数fr1と出力電圧が谷点となる周波数fv間で制御することにより、入力および負荷の変動に対して出力を一定に保つなどの制御が可能であり、周波数の変動範囲を狭くすることが出来る。図3に戻って、図3は動作周波数fsが出力電圧が谷点となる周波数fvに近づいた状態であるが、aの振幅は減少し、bの振幅はまだ小さい状態であり、回路の電流は出力電流に応じて小さくなっているので、既存技術による実施例のようにトランス、コンデンサなどサイズを大きくすることなく前記問題点の対策が可能となる。
【0024】
また、fs<fvで制御することで共振回路の合計電流は遅れ位相にあり、ZVSは容易でありスイッチング損失の低減、ノイズの低減が可能である。また、図4で分る様に動作周波数fsがほぼ出力電圧が谷点になる周波数fvに等しい条件では出力電圧をゼロ近くまで低下させることができるので、動作周波数fsを制御することで出力短絡まで保護することが可能である。
【0025】
以上の様に本発明によれば巻線部品やコンデンサを大きくすること無く、直列共振形コンバータの問題点の対策が可能であるほか、ZVS、出力過電流保護が容易にできるため、スイッチング電源装置の小型、低コスト、低ノイズ化に効果が発揮できる。
【0026】
図5は図1図示共振形コンバータの第一変形例を示すものである。この共振形コンバータは、以下の構成を有することに特徴を有する。先ず、一方の端子が直流電源Viの一方の端子に接続された第一及び第二の一次コイルN1,N2と、二次コイルN3とを設けたトランスTを備えてある。
【0027】
また、第一のスイッチ素子SW1と第二のスイッチ素子SW2とを直列接続して構成する第一の直列回路の接続点と第一の一次コイルN1の他方の端子間に接続された第一のインダクタL1と第三のコンデンサC3とからなる第一の直列共振回路と、前記第一の直列回路の接続点と第二の一次コイルN2の他方の端子間に接続された第二のインダクタL2と第四のコンデンサC4からなる第二の直列共振回路とを備えてある。また、二次コイルN3を入力とし、二次コイルN3を流れる電流を整流するダイオードブリッジD3,D4,D5,D6を備えてある。その他の構成については、図1図示実施形態とほぼ同様である。
【0028】
以上の構成より、トランスTの漏れインダクタンスを共振回路のインダクタL1,L2の全部又は一部とすることができる。なお、作用については、図1図示実施形態とほぼ同様であるため省略する。以下の変形例についても同様である。
【0029】
図6は図1図示共振形コンバータの第二変形例を示すものである。この共振形コンバータは、図5の変形例とほぼ同様であるが、この変形例はスイッチをMOSFET、Q1,Q2としていることに特徴を有する。また、第一及び第二のダイオードD1,D2、並びに、第一及び第二のコンデンサC1,C2はそれぞれMOSFET、Q1,Q2の寄生要素として有することにも特徴を有する。なお、第一及び第二のダイオードD1,D2、並びに、第一及び第二のコンデンサC1,C2をMOSFET、Q1,Q2の外部部品を使用しても良い。
【0030】
図7は図1図示共振形コンバータの第三変形例を示すものである。この共振形コンバータはトランスの出力をセンタータップ整流方式としたもので、出力電圧が低い場合に有効である。
【0031】
図8は前記第一乃至第三変形例に使用可能なトランスの構成の第一実施例を示す。このトランスは、三脚鉄心を有し、中央の一脚に二つの一次コイルN1,N2と二次コイルN3を巻回したもので、一次コイルN1,N2と二次コイルN3間の漏れインダクタンスを共振用として使用することができる。
【0032】
図9は前記第一乃至第三変形例に使用可能なトランスの構成の第二実施例を示す。このトランスは、三脚鉄心を有し、一端の第一脚に第一の一次コイルN1と二次コイルN3とを巻回し、他端の第二脚に第二の一次コイルN2を巻回したものである。中央の第三脚により第二の一次コイルN2と二次コイルN3間の漏れインダクタンスを調整できるので、本発明の様に共振周波数が異なる2つの共振回路を漏れインダクタンスで構成する場合は有効である。
【0033】
なお、図8及び図9に示すトランスは磁気回路・電気回路変換による等価回路にて本発明に有用であることが証明されるが。これらトランスは単なる実施例であり、例えば二脚鉄心の使用するなど、トランスの構成は問わない。また、本発明は図1乃至図7で説明した実施の形態に係る共振形コンバータに限定されるものではない。例えば、二次コイルを複数設け、多出力の電源装置に適用しても良い。また、スイッチ素子はMOSFETに限らず、IGBTやBiTrなどその他のスイッチ素子に適用できるものである。また、ハーフブリッジ回路をフルブリッジ回路にしたり、出力整流ダイオードをSRMOSに置き換えることなども可能である。また、トランスを有する場合、ZVSは共振電流の他、トランスの励磁電流の作用によることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、この様に動作周波数fsを第一の直列共振周波数fr1と出力電圧が谷点となる周波数fvとの間で制御することにより、ZCSなどの直列共振形コンバータの利点を活かしたまま、入力および負荷の変動に対して出力を一定に保つなどの制御が可能であり、周波数の変動範囲を狭くすることが可能となる他、スイッチング素子のZVSが容易であるなど、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の最良の実施形態の回路構成図である。
【図2】図1図示実施形態における全負荷時の動作波形図である。
【図3】図1図示実施形態における軽負荷時の動作波形図である。
【図4】図1図示実施形態における動作周波数を変化させた場合の出力電圧を示した図である。
【図5】第一変形例を示した回路構成図である。
【図6】第二変形例を示した回路構成図である。
【図7】第三変形例を示した回路構成図である。
【図8】本発明に係るトランスの第一実施例を示した構成図である。
【図9】同じくトランスの第二実施例を示した構成図である。
【図10】従来の共振形コンバータの一例を示す回路構成図である。
【図11】図10図示従来例における動作波形図である。
【図12】図10図示従来例とは別の従来例を示す回路構成図である。
【図13】図12図示従来例における全負荷時の動作波形図である。
【図14】上記従来例とは別の従来例を示す回路構成図である。
【図15】動作周波数の変動を少なくする原理を示す波形図である。
【符号の説明】
【0036】
Vi 直流電源
C1,C2,C3,C4,C5,Cr コンデンサ
Cp コンデンサ
L1,L2,Lr インダクタ
Lp インダクタ
SW1,SW2 スイッチ素子
Q1,Q2 MOSFET
T トランス
N1 コイル
N2 コイル
N3,N4 コイル
D1,D2,D3,D4,D5,D6 ダイオード
D3〜D6,DB ダイオードブリッジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続された第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子との第一の直列回路と、
一方の接合点が前記第一の直列回路の接続点に接続された、第一のインダクタと第三のコンデンサからなる第一の直列共振回路と、第二のインダクタと第四のコンデンサからなる第二の直列共振回路で構成される並列回路と、
交流端子の一方が前記並列回路の他方の接合点に接続され、交流端子の他方が前記直流電源の一端に接続され、前記2つの直列共振回路の電流を整流するダイオードブリッジと、
前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサと、
前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ前記第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、
第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように設定してある事を特徴とする共振形コンバータ。
【請求項2】
直流電源に接続された第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子との第一の直列回路と、
一方の端子が前記直流電源のどちらか一方の端子に接続された第一及び第二の一次コイルと、二次コイルとを設けたトランスと、
前記第一の直列回路の接続点と前記第一の一次コイルの他方の端子間に接続された第一のインダクタと第三のコンデンサとからなる第一の直列共振回路と、
前記第一の直列回路の接続点と前記第二の一次コイルの他方の端子間に接続された第二のインダクタと第四のコンデンサからなる第二の直列共振回路と、
前記二次コイルを入力とし、二次コイルを流れる電流を整流するダイオードブリッジと、
前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサと、
前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ前記第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、
第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように設定してある事を特徴とする共振形コンバータ。
【請求項3】
前記トランスは二脚又は三脚のコアの一脚に第一及び第二の一次コイルと前記一脚または他の一脚に二次コイルが巻回されたことを特徴とする請求項2記載の共振形コンバータ。
【請求項4】
第一のスイッチ素子が、第一のダイオード及び第一のコンデンサとそれぞれ並列に接続された第一の並列回路と、第二のスイッチ素子が、第二のダイオード及び第二のコンデンサとそれぞれ並列に接続された第二の並列回路とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の共振形コンバータ。
【請求項5】
前記第一及び第二のインダクタは、前記トランスの漏れインダクタンスをその一部又は全部としていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の共振形コンバータ。
【請求項6】
前記第一及び/又は第二のダイオード、並びに、前記第一及び/又は第二のコンデンサは前記第一及び/又は第二のスイッチ素子の寄生要素として有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の共振形コンバータ。
【請求項1】
直流電源に接続された第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子との第一の直列回路と、
一方の接合点が前記第一の直列回路の接続点に接続された、第一のインダクタと第三のコンデンサからなる第一の直列共振回路と、第二のインダクタと第四のコンデンサからなる第二の直列共振回路で構成される並列回路と、
交流端子の一方が前記並列回路の他方の接合点に接続され、交流端子の他方が前記直流電源の一端に接続され、前記2つの直列共振回路の電流を整流するダイオードブリッジと、
前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサと、
前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ前記第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、
第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように設定してある事を特徴とする共振形コンバータ。
【請求項2】
直流電源に接続された第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子との第一の直列回路と、
一方の端子が前記直流電源のどちらか一方の端子に接続された第一及び第二の一次コイルと、二次コイルとを設けたトランスと、
前記第一の直列回路の接続点と前記第一の一次コイルの他方の端子間に接続された第一のインダクタと第三のコンデンサとからなる第一の直列共振回路と、
前記第一の直列回路の接続点と前記第二の一次コイルの他方の端子間に接続された第二のインダクタと第四のコンデンサからなる第二の直列共振回路と、
前記二次コイルを入力とし、二次コイルを流れる電流を整流するダイオードブリッジと、
前記ダイオードブリッジの出力を平滑する第五のコンデンサと、
前記第一のスイッチ素子と第二のスイッチ素子を双方同時にオフとなる短い期間を挟んで、交互にオン、オフさせるとともに、動作周波数を変化させ前記第五のコンデンサの電圧を制御する回路とを有し、
第一の直列共振回路の共振周波数と、第二の直列共振回路の共振周波数が異なる値になるように設定してある事を特徴とする共振形コンバータ。
【請求項3】
前記トランスは二脚又は三脚のコアの一脚に第一及び第二の一次コイルと前記一脚または他の一脚に二次コイルが巻回されたことを特徴とする請求項2記載の共振形コンバータ。
【請求項4】
第一のスイッチ素子が、第一のダイオード及び第一のコンデンサとそれぞれ並列に接続された第一の並列回路と、第二のスイッチ素子が、第二のダイオード及び第二のコンデンサとそれぞれ並列に接続された第二の並列回路とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の共振形コンバータ。
【請求項5】
前記第一及び第二のインダクタは、前記トランスの漏れインダクタンスをその一部又は全部としていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の共振形コンバータ。
【請求項6】
前記第一及び/又は第二のダイオード、並びに、前記第一及び/又は第二のコンデンサは前記第一及び/又は第二のスイッチ素子の寄生要素として有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の共振形コンバータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−68284(P2007−68284A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249136(P2005−249136)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]