説明

共焦点レーザ走査顕微鏡のピンホール

【課題】顕微鏡光学系の光学誤差の調整を容易に行う。
【解決手段】光源10と、走査装置S及び対物レンズ4を通る、空間的に限定された、好ましくは点状の照明光点によってプローブ5を照明する照明ビーム光路と、前記対物レンズ及び前記走査装置を通って検出ビーム光路に達するプローブ光を検知する検出ビーム光路とを備えるレーザ走査顕微鏡において、検出ビーム光路には、空間的に限定された検出光点へのプローブ光を1つの面に焦点調節する焦点調節手段が設けられており、この面には、調整可能なピンホールをシミュレーションするために、個々に読み取り可能な受光素子エレメントのマトリクス形式の配列が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ走査顕微鏡に関し、詳しくは、共焦点レーザ走査顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
図1はレーザ走査顕微鏡の形態の顕微鏡1の概略図を示している。この顕微鏡は、中間像Zについて共通の光学的インタフェースを有する顕微鏡ユニットM及び走査ユニットS、並びにデスキャン検出のための検出器D及び非デスキャン検出のためのもう1つの検出器NDDからなる。走査ユニットSは、直立顕微鏡の光電管にも接続でき、倒立顕微鏡の横側のアウトプットにも接続することができる。この顕微鏡ユニットMは、プローブ5を観察するための対物レンズ4とチューブレンズ9とを有している。レーザ10は励起光源として設けられており、そのレーザビームは出口後まず自由伝播し、音響光学的コンポーネント11、例えばAOTFを通り抜ける。レーザビームは、次にカップリング光学系12と光ファイバ13とを介して走査ユニットSの照明光路に接続される。レーザビームは、音響光学的コンポーネント11を用いてコントロールユニット2により停止することができる。
【0003】
走査ユニットSは、平行光学系16、傾斜ミラー17、走査対物レンズ22、スキャナ23、メインビームスプリッタ24を含む。検出光が通り抜けるセンターピンホールを備えるピンホール光学系29を介して、プローブから来るプローブ光が検出ユニットDに達する。補助ビームスプリッタ26により、このプローブ光はスペクトル分解されて結像光学系25を介して検出器31に向けられる。
【0004】
補足又は代替の方法として、この顕微鏡は、非デスキャン検出器NDDを装備することもできる。プローブ光は、好ましくは対物レンズ4の近くに配置されるNDDビームスプリッタ27を介して非デスキャン検出器NDDに達する。この非デスキャン検出器は、周知の方法で透過光においても使用することができる(図示されていない)。
【0005】
この種のレーザ走査顕微鏡は、独国特許出願公開第19702753A1号(特許文献1)の対象でもある。ここでは、共通のピンホール光学系の後ろにある個々の光路における多数の検出ピンホールが説明されており、これらの検出ピンホールは、直径が調整可能であり、さらに、使用されている顕微鏡光学系の光学誤差を調整するため、検出光路に対して軸方向及び横方向に制御されることにより移動可能に形成されている。
【0006】
光学系における欠点を調整するため、例えば適応光学系又は変形可能ミラー(欧州特許出願公開第929826B1号(特許文献2))など、その他の取付け部品もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第19702753A1号
【特許文献2】欧州特許出願公開第929826B1号
【特許文献3】米国特許出願公開第6028306号
【発明の概要】
【0008】
本発明に基づき、これらの修正が検出器自体の中で行われると、修正はより簡単になることが判明しており、このことは、例えば、有利には画像内容にも貢献する感応しやすいエリア部分だけが評価されるように、空間分解能のあるダイオードアレイ受光素子を形成することによって行われる。
【0009】
このことは、独立請求項の対象である。
好ましい発展形態は、従属請求項の対象である。
検出器マトリクスが設けられ、このマトリクスは、従来技術(直列に読み取られるCCD受光素子マトリクス)とは異なり、完全に読み取るのではなく(ポイントスキャナ用のこの取付け部品を使用できなくする基本的な時間的欠点)、個々のピクセルを個別に読み取ることができ、また選択的に一緒にまとめることもできる。
【0010】
アクティブなピクセルと非アクティブなピクセルとを適切に選択することによって、例えば非常に多様なピンホールも有利に再現することができる。
以下、Pinhole(英)とLochblende(独)の用語は実質的に同義的に用いられ、特に、それらの直径が調整可能なピンホールの意味で理解される。
【0011】
このために、受光素子は、ピンホール面への検出光路にセットされる。より大きなピンホールが必要な場合は、単純に、より多くのピクセルがまとめられる。すなわち、簡単にその他のピクセルを選択することができるので、ピンホールの調整も不要になる。
【0012】
同様に、検出スポットが常に円形とは限らないため、最適からの逸脱も、より良く表示することができる。
ピンホールによって切り取られた画像部分を別に検知して評価することにより、複雑な表示エラーも検知することができるか、又はこの部分を視覚化することもできる。
【0013】
これらを別々に観察することにより、周知の装置機能において、システムの光学誤差が計算上除外され、システムの解像度を向上させることができる。
さらに、様々なスポット形状により、例えば焦点面の上又は下にあるかどうかなど、焦点の設定も考えることができる。
【0014】
それぞれのセンサーが個々に読み取り可能であり、LSMにおいて用いられる、1μ秒より短い読み取り時間が実現可能である限り、検出器エレメントとしてダイオード、APD、PMT、又はその他の適合する素材を使用することができる。
【0015】
二色性ビームスプリッタによって別々に切り離された検出チャンネルに多数のピンホールを備えるレーザ走査顕微鏡においても、特に有利には、米国特許出願公開第6028306号(特許文献3)に説明されているように多数の点光源を備える同時照明装置においても、本発明は適用可能であり、本発明に基づくより多くの受光素子配列が、これまでピンホールがあった検出器の場所にセットされる。
【0016】
これらのピンホールは、発生する配光に個別調整することが可能であり、また、例えば、個別の調整に続いて、以下に説明されているような「オーバーサンプリング」モードなどに同期して変更することもできる。
【0017】
次に、本発明を図に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】レーザ走査顕微鏡の概略図。
【図2】受光素子マトリクスの評価のための例。
【図3】受光素子マトリクスの評価のための例。
【図4】受光素子マトリクスの評価のための例。
【図5】受光素子マトリクスの評価のための例。
【図6】受光素子マトリクスの評価のための例。
【図7】マトリクス状のAPD(アバランシェフォトダイオード)配列の読取り図。
【図8】PMT受光素子マトリクスの読取り。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図4〜図6は、マトリクス状に配置された、個々に読取り可能かつ同時切替え可能な受光素子Eと、このマトリクスに焦点を合わされたビームスポットSと、検出ビームと、アクティブになっている(読み取られる)検出マトリクスの受光素子EAと、を一緒に示した図である。
【0020】
図2では、ビームスポットSが、唯一の検出器エレメントEAをだけを読み取ることができる範囲及び位置にある。
マトリクス上のスポットSの位置は、例えば、個々のエレメントEを交互にオン/オフに切り替えることによって、実際の測定(走査プロセス)前に検知することができる。
【0021】
この方法で、上述の従来技術で説明されている複雑な修正が省略され、さらに正確な測定が可能となる。
図3では、より大きなスポットSを評価するため複数のエレメントEAがアクティブかつ読み取り可能になっており、これらのエレメントは、その作用において、ここでは図2よりも大きなピンホールをシミュレーションしている。図4には、円形から逸脱した楕円体のスポットSが示されているが、このスポットは、アクティブなエレメントEAが相応に楕円体に分布していることにより完全に読み取ることができる。
【0022】
従来の通常のピンホールは一般的に円形、四角形またはひし形の基本形状に限定されていたが、従来技術とは反対に、アクティブな受光素子エレメントの選択により、ほとんど任意にそれぞれのピンホール形状を選ぶことができる。
【0023】
受光素子マトリクスの残りのエレメントEが非アクティブになることにより、散光及びプローブのビーム集束に由来しないその他の不都合な光が抑制される。
この場合、アクティブなエレメントを適切に増加又は減少させることにより、走査画像を作るための走査プロセスを繰り返す直前にピンホールサイズを変更することができる。このことは、例えば、いわゆる「オーバーサンプリング」においてピンホールサイズを縮小する場合に用いられ、ここでは特に簡単な方法で実現することができる。
【0024】
もちろん、この「オーバーサンプリング」の代わりに、ピンホール直径を拡大するアンダーサンプリングも設定することができる。
本発明の強みはまさにその変動性にあり、その場合、機械的な調整エレメントを用いる必要がない。
【0025】
これまではピンホールの移動が上述のように複雑に行われていたが、図5に示されているように、以前にアクティブだった受光素子面Ealtは、Sの位置に合わせて、新しい受光素子面Eneuに簡単に移ることができる。
【0026】
このことは、様々なレンズ又は対物レンズを交換するような顕微鏡光学系の変更時に比較的頻繁に行われ、簡単な方法で調整可能であり、自動化することができる。
図6には、アクティブな受光素子分布EAの他に、この周りに集まっているさらなる受光素子分布EA1が示されている。このことは、スポットの寸法及び/又は形状を変化させる場合に有利であり得る。
【0027】
このケースは、焦点調節が一定しており、プローブのz調整が行われる場合に当てはまる。
この場合、形状又は寸法の変更から高さの情報を導き出すことができる。
【0028】
例えば、スポットSのエレメントEA1に光が当てられた場合、高さ修正(再焦点調節)の調整信号などを発信することができる。
図7には、内蔵回路I1の上に配置されたマトリクス状のAPD配列の実施例が示されており、この内蔵回路I1は、増幅回路I2及びカウンタ回路I3などのその他の回路と共に、例えば「相互接続」方式で接続することができる。
【0029】
I1は、例えば、個々の光子のカウンタとなることができ、このカウンタは、光子を受光した後の各APDを、各APDが内部のリセット回路によってリセットされる前に検知し、個々のAPDの信号(光子)を読み取って(数えて)、I2のルーター(リンカー)に転送する。I2では、個々に数えられた光パルスの調整可能な結合が行われ、これらの光パルスは、例えば、メインコンピュータの負荷軽減のため、及び評価ユニット(コンピュータ)AE方向への走査プロセスとの同期による画像合成のため、GPU(グラフィックプロセッサー)を介してI3に伝送される。
【0030】
図8には、図1〜図7と同じ方法で配置され、I/Uコンバーターと、A/Dで表されているADコンバーターとによって個々に読み取られる複数のPMTが示されている。
APDの代わりにマトリクス状に配置されたPMTを使用する場合は、APDとPMTとの直径比(APDは約150μm、PMT20mm)により、同業者によって可能な調整枠内において、光学的条件の変更(ビーム拡大)が必要であるのは当然のことである。
【符号の説明】
【0031】
1…顕微鏡、2…コントロールユニット、4…対物レンズ、5…プローブ、9…チューブレンズ、10…レーザ、11…音響光学的コンポーネント、12…カップリング光学系、13…光ファイバ、16…平行光学系、17…傾斜ミラー、22…走査対物レンズ、23…スキャナ、24…メインビームスプリッタ、25…結像光学系、26…補助ビームスプリッタ、29…ピンホール光学系、31…検出器、Z…中間像、M…顕微鏡ユニット、S…走査ユニット、D…デスキャン検出のための検出器、NDD…非デスキャン検出のためのもう1つの検出器、S…ビームスポット、EA…受光素子エレメント、E…個々のエレメント、Ealt…以前にアクティブだった受光素子面、Eneu…新しい受光素子面、EA1…アクティブな受光素子分布EAの周りに集まっている受光素子分布、I1…内蔵回路、I2…増幅回路、I3…カウンタ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々に読み取り可能な受光素子エレメントの、好ましくはマトリクス形式の二次元配列からなる、共焦点レーザ走査顕微鏡の調整可能なピンホール。
【請求項2】
光源と、
走査装置及び対物レンズを通る、空間的に限定された、好ましくは点状の照明光点によってプローブを照明する照明ビーム光路と、
前記対物レンズ及び前記走査装置を通って検出ビーム光路に達するプローブ光を検知する検出ビーム光路とを備えるレーザ走査顕微鏡において、
前記検出ビーム光路には、空間的に限定された検出光点へのプローブ光を1つの面に焦点調節する焦点調節手段が設けられており、前記面には、調整可能なピンホールをシミュレーションするために、個々に読み取り可能な受光素子エレメントの、好ましくはマトリクス形式の二次元配列が設けられている、レーザ走査顕微鏡。
【請求項3】
少なくとも2つの照明光点による同時多点走査装置と、
前記少なくとも2つの照明光点に割り当てられた、少なくとも2つの検出ビーム光路を備える検出器とを備える、請求項2に記載のレーザ走査顕微鏡。
【請求項4】
前記検出光点を検知する検出エレメントの第1のグループと、該グループの周囲に集められた検出エレメントの第2のグループとが設けられており、前記第2のグループによる光検知が、z焦点調節の調整信号又は焦点ぼけの状態を検知する評価信号を生成する、請求項2又は3に記載のレーザ走査顕微鏡。
【請求項5】
前記ピンホールの代わりに配置されている受光素子エレメントが個々に読み取られ、前記受光素子エレメント数n−1の前記信号の可変結合により、実質的に検出光点によって検出光が当てられる部分だけが検出されることを特徴とする、好ましくは請求項2〜4のいずれか一項に記載のレーザ走査顕微鏡における、調整可能なピンホールの作動方法。
【請求項6】
走査画像の作成後、検出された前記部分及び/又は読み取られた前記受光素子エレメント数及び前記ピンホールの寸法が縮小又は拡大され、少なくとももう1つの走査画像が、画像範囲の二次元走査により作成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
読み取られた前記受光素子エレメントの配置の形が検出光点の形に合わせられることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記LSMの作動条件の変更時に、好ましくは光学系の変更時に、又は最初の画像撮影前に、検出光を当てられた前記部分が前記受光素子エレメントの読取りによって検索され、次の検出のために少なくとも部分的に利用される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
光を当てられた前記部分の検索後、前記部分に共通の対称点又は共通の対称軸を有する検出エレメントグループが検出に利用される、請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記検出光点を検知する検出エレメントの第1のグループと、該グループの周囲に集められた検出エレメントの第2のグループとが設けられており、前記第2のグループによる光検知が、z焦点調節の調整信号又は焦点ぼけの状態を検知する評価信号を形成する、請求項5〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの照明光点による同時多点走査装置を備えるレーザ走査顕微鏡と、これらの前記2つの照明光点に割り当てられた、少なくとも2つの検出ビーム光路を備える検出器とが作動する、請求項5〜10のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−133368(P2012−133368A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282069(P2011−282069)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(506151659)カール ツァイス マイクロイメージング ゲーエムベーハー (71)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss MicroImaging GmbH
【Fターム(参考)】