説明

共重合体およびその製造方法

【課題】基材表面に任意の生体分子を固定化可能な共重合体を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)


(式中、R1〜R11は所定の炭化水素基を示し、Yはp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドを示す。)で示される共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体およびその製造方法に係り、特に、化学工学,生命工学,環境,医療などの分野に広く使用される酵素センサ,免疫センサ,表面プラズモン共鳴バイオセンサ,水晶振動子マイクロバランスバイオセンサ,DNAチップ,分子プローブ,金コロイドなどにおいて金を材料とする基材に生体分子を固定化する際に好適に使用される共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液などの生体成分,工場からの排水,食品などに含まれる特定の物質を、生物が有する高い物質認識能力を利用して特異的に検出・測定するセンサが各種研究・開発されている。このようなセンサでは、生体分子であるタンパク質やDNAなどがセンサチップに固定化されており、この生体分子と測定対象物質との特異的な反応や相互作用を電気化学的あるいは光学的手法で観測することで、測定対象物質を検出したり濃度を測定したりすることが可能となる。
【0003】
一般に、このような生体分子を用いたセンサをバイオセンサという。バイオセンサは、生体分子が固定化されたセンサチップをセンサ素子として備えており、この生体分子と測定対象物質との特異的な反応や相互作用を電流や光の信号に変換することで、測定対象物質を高い感度で検出したり、測定対象物質の濃度を高い精度で測定したりすることが可能となる。
【0004】
具体的なバイオセンサとしては、例えば食品や血清などの試料中の果糖(フルクトース)濃度を測定する果糖濃度センサが挙げられる(例えば、特許文献1)。この果糖濃度センサは、フルクトースを還元する酵素の一種であるフルクトース・デヒドロゲナーゼ(FDH)が作用電極の表面に固定化されており、メディエータとしてコバルト・フェナトロリン錯体を備えている。
【0005】
フルクトースの測定は、この作用電極を測定バイアル中の試料に浸漬することにより行われる。作用電極の表面に固定化されたFDH(酸化型)と試料中のフルクトースが酸化還元反応を起こして、酸化型のFDHから還元型のFDHに変換する。この還元型のFDHは更に酸化型のコバルト・フェナントロリン錯体と反応して、還元型のコバルト・フェナントロリン錯体が生じる。この還元型のコバルト・フェナントロリン錯体が作用電極の表面で酸化されることで、電極に電流が流れる。従って、この電流値を測定することで、試料中のフルクトース濃度を定量的に測定することが可能となっている。
【0006】
このように、バイオセンサは、測定対象物質と特異的に相互作用する生体分子(上記の例では、FDH)を利用しているため、測定対象物質以外の他の物質による測定への影響が少なく、高い感度で目的とする物質を測定することが可能となっている。
【0007】
ところで、この果糖濃度センサは、金を材料とした金電極で作用電極が構成されており、FDHの固定化にはチオール化合物が用いられている。そして、金電極とチオール化合物のチオール基の間で形成される金‐システアミン結合を介して、金電極の表面にFDHが固定化されている。このような上記果糖濃度センサでは、金‐システアミン結合を介してFDHが電極表面に固定化されているため、金電極の表面に緻密な単分子層を比較的簡便に作製することが可能となっている。
【0008】
しかしながら、上記のような従来のセンサでは、生体分子が上記チオール化合物を介して電極表面に単に固定化されているに過ぎないため、試料中の生体成分が電極への非特異的に吸着しやすいという不都合があった。ここで非特異的吸着とは、試料中のタンパク質やDNAといった生体成分が電極の表面と相互作用を起こして吸着する現象である。このような非特異的吸着により電極表面に生体成分が吸着すると、電極表面に固定化された生体分子と測定対象物質との電極表面近傍での特異的な反応や相互作用が阻害されたり、電極表面でのメディエータの酸化還元反応が阻害されたりといった現象が発生する。この結果、測定時間の経過に伴って測定値が減衰したり、測定値にノイズが多くなったりして、測定対象物質を正確に測定することが困難となるという不都合があった。
【0009】
更に、非特異的吸着により電極表面に生体成分が吸着するため、1度測定に使用したセンサチップを再度利用する場合には、前回の測定で吸着した生体成分の汚染により試料中の測定対象物質を正確に測定することが困難となる。
このため、電極表面を洗浄するなどの処理が必要となり、測定に手間がかかるといった不都合があった。また、洗浄により固定化生体成分が脱離してセンサ感度が低下するといった不都合もあった。
一方で、測定のたびに新規のセンサチップを使用する場合には、測定にかかるコストが高くなる。
【0010】
従って、かねてから、金を材料とする基材の表面に生体分子を固定化することが可能であり、且つ、試料中の生体成分が基材表面へ非特異的に吸着することを効率的に防止することが可能な材料の開発が望まれていた。
【0011】
ところで、本発明の発明者らは、先にホスホリルコリン類似基を有する単量体を構成単位とした重合体を創出している(例えば、特許文献2)。このような重合体は、ホスホリルコリン類似基を分子内に備えている。ホスホリルコリン類似基は、細胞膜の構成成分であるリン脂質が有するホスホリルコリン基と類似する官能基であり、このような官能基を分子内に有する重合体は、細胞膜と同様にタンパク質や血球といった生体成分との相互作用が極めて弱く、これらの生体成分の吸着や変性を抑制する性質を有する。
【0012】
更に、このホスホリルコリン類似基を有する単量体と共重合する他の単量体の性質により、得られる共重合体はさまざまな特性を有することが知られている。
そして、このような重合体は医療用コーティング材料や化粧品材料、あるいはコンタクトレンズの素材等として、幅広い分野において使用されている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−227811号公報
【特許文献2】特許第2870727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、ホスホリルコリン類似基を有する重合体であって、センサチップの金属基材に生体分子を固定化可能な特性を備えるとともに、基材表面への生体成分の非特異的吸着を効率的に防止することが可能という両方の性質を備えるものについては、未だに開発されていなかった。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、酵素センサ,免疫センサ,表面プラズモン共鳴バイオセンサ,水晶振動子マイクロバランスバイオセンサといった各種バイオセンサのセンサチップに対して好適に使用される共重合体であって、センサチップなどの金属基材に生体分子を固定化できるとともに、生体成分の基材への非特異的吸着を効率的に防止することが可能な共重合体および該共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、上記課題は、請求項1の共重合体によれば、下記一般式(1)
【化7】

(式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R及びRは同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、Yはp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドを示し、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R10は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R11は水素またはメチル基であり、
l,m,nは全構成単位中の各構成単位の割合を示し、lは0.70から0.87,mは0.03から0.20,nは0.10から0.27の範囲であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から1,000,000の範囲である。)で示される共重合体により解決される。
【0017】
この場合、請求項2のように、前記共重合体が、下記一般式(2)
【化8】

(式中、l,m,nは全構成単位中の各構成単位の割合を示し、lは0.70から0.87,mは0.03から0.20,nは0.10から0.27の範囲であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から1,000,000の範囲である。)で示される共重合体であると好適である。
【0018】
また、上記課題は、請求項3の共重合体の製造方法によれば、少なくともホスホリルコリン類似基および活性エステル基を分子内に含む下記一般式(3)
【化9】

(式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R及びRは同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、Yはp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドを示し、Rは水素またはメチル基を示し、l,oは全構成単位中の各構成単位の割合を示し、lは0.70から0.87,oは0.13から0.47の範囲である。)で示される合成中間体に、下記一般式(4)
【化10】

(式中、R10は炭素数1〜4の2価の炭化水素基である。)で示される化合物を反応させて、前記活性エステル基のうち一部の側鎖をチオール基含有側鎖に変換する工程を備えると好適である。
【0019】
この場合、請求項4の共重合体の製造方法のように、下記一般式(5)
【化11】

(式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R及びRは同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Rは水素またはメチル基である。)で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)と、下記一般式(6)
【化12】

(式中、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、Yはp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドを示し、Rは水素またはメチル基である。)で示される活性エステル基含有単量体(a2)を重合させて、前記合成中間体を製造する工程を更に備えると好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の共重合体によれば、金含有基材を有するセンサチップなどに適用した場合に、金含有基材の表面に任意の生体分子を固定化できるとともに、試料中の生体成分が基材表面へ非特異的に吸着することを効率的に防止することが可能となる。このように、本発明の共重合体をセンサチップなどへ適用した場合には、電極表面などへ生体成分が非特異的に吸着することによる測定値の減衰といった現象を効率的に防止することができる。従って、測定対象物質を正確に検出したり、測定対象物質の濃度を正確に測定したりすることが可能となる。
【0021】
また、試料中の生体成分が金含有基材の表面に吸着しにくいため、1度使用したセンサチップの再利用が容易であり、測定のたびに新規のセンサチップを使用する必要を低減することが可能となる。従って、測定にかかるコストを低減することが可能となる。
【0022】
また、本発明の製造方法によれば、このような共重合体を、ホスホリルコリン類似基含有単量体と活性エステル基含有単量体の2種類の単量体成分を用いて製造することができる。このように、本発明の製造方法によれば、2種類の単量体成分を用いて比較的簡単な方法により共重合体を合成することが可能であるため、共重合体の合成する際に要する原料のコストを低く抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の共重合体について説明する。なお、以下に説明する材料,器具,条件などは本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0024】
本発明の共重合体は、ホスホリルコリン類似基と、任意の生体分子とウレタン結合を形成する活性エステル基と、金と吸着するチオール基と、を分子内に有する共重合体(以下、共重合体(A)という)である。この共重合体(A)は、特に金を材料とする基材(以下、金含有基材)に生体分子を固定化する際に好適に使用される。
【0025】
具体的には、本発明の共重合体は、下記一般式(1)
【化13】

(式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R及びRは同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、Yはp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドを示し、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R10は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R11は水素またはメチル基であり、
l,m,nは全構成単位中の各構成単位の割合を示し、lは0.70から0.87,mは0.03から0.20,nは0.10から0.27の範囲であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から1,000,000の範囲である。)で示される共重合体である。
【0026】
本発明の共重合体(A)はチオール基を分子内に有している。このチオール基は、金との間で非共有結合性の金‐チオール結合を形成する。この金‐チオール結合により、共重合体(A)は金含有基材の表面に吸着して、自己組織化した安定な表面層を形成する。
【0027】
また、共重合体(A)は活性エステル基を分子内に有している。共重合体(A)の活性エステル基は、タンパク質やDNAといった生体分子のアミノ基と反応して、ウレタン結合を形成する。詳細には、タンパク質のN末端側のアミノ基や、リシン,アルギニンといった塩基性アミノ酸の側鎖のアミノ基や、DNAの5'末端をアミノ基で修飾したアミノ修飾DNA断片のアミノ基などとウレタン結合を形成する。
このように、本発明の共重合体(A)は、チオール基および活性エステル基を分子内に備えているため、金含有基材の表面に適用した場合には、金含有基材の表面にタンパク質などの生体分子を固定化することが可能となる。
【0028】
更に、本発明の共重合体(A)はホスホリルコリン類似基を分子内に有している。このホスホリルコリン類似基は、生体膜の構成成分の1つであるリン脂質極性基(ホスホリルコリン基)と類似した構造をしているため、優れた生体適合性を示し、生体成分との相互作用が極めて小さい。
すなわち、このようなホスホリルコリン類似基を側鎖に有する重合体で表面処理された金表面は、生体膜表面と同様に表面にホスホリルコリン類似基が配向している。このためタンパク質やDNAなどの生体分子との相互作用が極めて弱く、これらの有機物が金表面に吸着することを抑制すると考えられる。
【0029】
また、ホスホリルコリン類似基は、リン酸基のマイナス電荷とコリン類似基のプラス電荷が分子内で打ち消しあうため、電気的に中性な官能基として挙動する。従って、生体内の特定のイオンなどと相互作用を起こしにくく、これらのイオンが静電的に結合することが防止されると考えられる。
【0030】
このように、本発明の共重合体(A)は、分子内にホスホリルコリン類似基を有しているため、タンパク質やDNAなどの生体成分との相互作用が弱い。従って、金含有基材の表面に適用した場合には、金含有基材の表面にタンパク質などの生体分子を固定化するとともに、金含有基材の表面に生体成分が吸着することを防止することが可能となる。
【0031】
上記共重合体(A)は、分子内にホスホリルコリン類似基を有するホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)と、分子内に活性エステル基を有する活性エステル基含有単量体(a2)と、分子内にチオール基を有するチオール基含有単量体(a3)と、を構成単位とする共重合体であることが好ましい。
【0032】
上記共重合体(A)の構成単位の一つであるホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)としては、細胞膜の構成成分であるリン脂質が有するホスホリルコリン基と類似した性質を有するホスホリルコリン類似基を側鎖として備え、且つ、分子内に重合性の(メタ)アクリロイル基を有する単量体が挙げられる。
【0033】
具体的には、下記一般式(5)で示される化合物が好適に使用される。
【化14】

(式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R及びRは同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Rは水素またはメチル基である。)
【0034】
このような化合物としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリルおよび/またはアクリルを意味する、以下同じ意味で使用する。
なお、上記化合物は、使用に際して単独若しくは混合物として用いることができる。
このうち、入手が特に容易などの理由から、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート{=2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンともいう(以下、MPC)}が好適である。
【0035】
また、上記共重合体(A)は、活性エステル基含有単量体(a2)を構成単位として更に備えている。活性エステル基含有単量体(a2)としては、タンパク質やDNAなどのアミノ基とウレタン結合を形成する活性エステル基を有し、且つ、分子内に重合性の(メタ)アクリロイル基を有する単量体が挙げられる。
【0036】
具体的には、下記一般式(6)で示される化合物が好適に使用される。
【化15】

(式中、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、Yはp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドを示し、Rは水素またはメチル基である。)
【0037】
このような化合物としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−p−ニトロ安息香酸エステル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−p−ニトロ安息香酸エステル、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−p−ニトロ安息香酸エステル、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−p−ニトロ安息香酸エステル、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−p−ニトロ安息香酸エステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル等が挙げられる。
なお、上記化合物は、使用に際して単独若しくは混合物として用いることができる。
このうち、入手が特に容易などの理由から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−p−ニトロ安息香酸エステル(以下、MNB)が好適である。
【0038】
更に、上記共重合体(A)は、チオール基含有単量体(a3)を構成単位として更に備えている。チオール基含有単量体(a3)としては、金の表面に吸着する性質を有するチオール基を有し、且つ、分子内に重合性の(メタ)アクリロイル基を有する単量体が挙げられる。
【0039】
具体的には、下記一般式(7)で示される化合物が好適に使用される。
【化16】

(式中、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R10は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R11は水素またはメチル基である。)
【0040】
このような化合物としては、例えば、2−[(2−メルカプトエチル)カルボニルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−メルカプトプロピル)アミノカルボニルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[(4−メルカプトブチル)カルボニルオキシエチル](メタ)アクリレート、3−[(2−メルカプトエチル)カルボニルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3−メルカプトプロピル)カルボニルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(4−メルカプトブチル)カルボニルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、4−[(2−メルカプトエチル)カルボニルオキシ]ブチル(メタ)アクリレート、4−[(3−メルカプトプロピル)カルボニルオキシ]ブチル(メタ)アクリレート、4−[(2−メルカプトブチル)カルボニルオキシ]ブチル(メタ)アクリレート、5−[(2−メルカプトエチル)カルボニルオキシ]ペンチル(メタ)アクリレート、5−[(3−メルカプトプロピル)カルボニルオキシ]ペンチル(メタ)アクリレート、5−[(4−メルカプトブチル)カルボニルオキシ]ペンチル(メタ)アクリレート、6−[(2−メルカプトエチル)カルボニルオキシ]ヘキシル(メタ)アクリレート、6−[(2−メルカプトプロピル)カルボニルオキシ]ヘキシル(メタ)アクリレート、6−[(3−メルカプトブチル)カルボニルオキシ]ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、上記化合物は、使用に際して単独若しくは混合物として用いることができる。
このうち、入手が特に容易などの理由から、2−[(2−メルカプトエチル)カルボニルオキシ]エチル(メタ)アクリレート(2−MEE)が好適である。
【0041】
一般式(1)乃至一般式(3)で示される各単量体(a1)乃至(a3)は、いずれも(メタ)アクリロイル基を分子内に有している。このため、他の(メタ)アクリロイル基との重合体の形成が容易であり、重合開始剤の濃度や反応時間といった条件を調整することで、所望の重量分子量を有する重合体を比較的容易に合成することができる。
【0042】
共重合体(A)としては、原料の入手容易性などの理由により、特に、ホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)としてMPC、活性エステル基含有単量体(a2)としてMNB、チオール基含有単量体(a3)として2−MEEの組み合わせにより合成される共重合体が好ましい。具体的には、下記一般式(2)
【化17】

(式中、l,m,nは全構成単位中の各構成単位の割合を示し、lは0.70から0.87,mは0.03から0.20,nは0.10から0.27の範囲であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から1,000,000の範囲である。)で示される共重合体が好ましい。
【0043】
本発明の共重合体(A)は、上記一般式(1)や一般式(2)に示される構造単位を分子内に有する共重合体であればよく、従って三元共重合体に限定されない。すなわち、上記単量体(a1)乃至単量体(a3)の他に、他の単量体を構成単位として備える四元以上の共重合体であってもよい。他の単量体としては、上記単量体(a1)乃至単量体(a3)と同様に、(メタ)アクリロイル基を有する単量体であることが好ましい。
例えば、他の単量体として疎水性側鎖を有する単量体を選択した場合、金含有基材の表面に形成される表面層は分子内や分子間で疎水性側鎖どうしが疎水性相互作用により密に凝集したものとなる。従って、金含有基材の表面への生体分子の接触頻度が更に低下するため、非特異的吸着をより効率的に防止することが可能となる。
【0044】
本発明の共重合体(A)において、共重合体の全構成単位中のホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)の含有割合は、モル分率(すなわち、l/l+m+n)で0.70〜0.87であればよく、特に0.72〜0.85の範囲が好ましい。ホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)のモル分率が0.70以下では、共重合体の溶解性の点より好ましくない。
一方、ホスホリルコリン類似基含有単量体のモル分率が0.87以上では、ホスホリルコリン基が密であり、生体分子を結合して固定化する際に生体分子の接触を妨げるため好ましくない。
【0045】
また、共重合体(A)の全構成単位中の活性エステル基含有単量体(a2)の含有割合は、モル分率(すなわち、m/l+m+n)で0.03〜0.20であればよく、特に0.05〜0.18の範囲が好適である。活性エステル基含有単量体(a2)のモル分率が0.03以下では、金基材の表面に固定化される生体分子の量が少なくなるため、センサチップのセンシング能力が低くなり好ましくない。
一方、活性エステル基含有単量体(a2)のモル分率が0.20以上では、全体的な疎水性が高まるため、生体分子が共重合体(A)に効率的に結合しにくくなり、生体分子の固定化量が多くなりにくいという理由により好ましくない。また、活性エステル基間の自然な架橋反応進行により共重合体が不溶となりやすいため好ましくない。
【0046】
更に、共重合体(A)の全構成単位中のチオール基含有単量体(a3)の含有割合は、モル分率(すなわち、n/l+m+n)で0.10〜0.27であればよく、特に0.12〜0.25の範囲が好適である。チオール基含有単量体(a3)のモル分率が0.10以下では、金基材の表面に固定化される共重合体(A)の量が少なくなるため、固定化される生体分子が金基材から脱落しやすくなり好ましくない。
一方、チオール基含有単量体(a3)のモル分率が0.27以上では、チオール基間の酸化架橋反応が進行するため、共重合体が不要になりやすく好ましくない。
【0047】
また、共重合体(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000〜1,000,000であればよい。より好ましくは100,000〜800,000である。重合体の重量平均分子量が10,000より少ないと、極性溶媒への溶解度が大きくなり、金基材の表面に吸着した共重合体(A)が脱離しやすくなるため好ましくない。一方、重量平均分子量が1,000,000より多いと、極性溶媒への溶解性が低下しすぎることがあるため好ましくない。
【0048】
本発明の共重合体(A)の種類としては、ランダム共重合体,ブロック共重合体,グラフト共重合体など、公知の重合体のいずれであってもよい。各単量体の重合は、溶液重合,乳化重合,懸濁重合等の公知の方法を用いて行われる。この際、必要に応じて重合系を、窒素,アルゴン等の不活性ガスで置換して、あるいはこの不活性ガスの雰囲気下において重合を行われるとよい。
【0049】
重合に際しては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−アゾビス(2−アミジノプロピル)二塩酸塩、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2 −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート等が挙げられる。特に、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)あるいは2,2−アゾビスイソブチロニトリルが好適である。
【0050】
これらのラジカル重合開始剤は単独で用いても混合物で用いてもよい。また、重合開始剤には各種レドックス系の促進剤を用いても良い。重合開始剤の使用量は、単量体組成物100重量部に対して0.05〜3.0重量部が好ましい。反応温度は40〜80℃が好ましく、特に50〜70℃が好適である。
ラジカル重合開始剤の種類や濃度、反応時間や反応温度などを適便選択することにより、所望の重量平均分子量を有する共重合体(A)を得ることが可能となる。
また、重合体の精製は、再沈殿法,透析法,精密濾過法,限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
【0051】
本発明の共重合体(A)を製造する方法としては、単量体(a1)乃至単量体(a3)の3種類の単量体を混合して重合反応を行わせる方法がある。具体的には、まず単量体(a1)乃至単量体(a3)をそれぞれ適当量秤量して溶媒に溶解させ、所定の重合開始剤の存在下で適当な温度,気圧条件の下で所定時間反応させることにより、本発明の共重合体(A)を合成することが可能である。
【0052】
しかしながら、このような方法では、共重合体合成のために異なる3種類の単量体を用意する必要があり、原料のコストが高くなる。
そこで、本発明では、まずホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)と活性エステル基含有単量体(a2)からなる共重合体(以下、合成中間体という)を合成して、その後で、分子内にチオール基及びアミノ基を有する炭素数1〜4の化合物(以下、システアミン類という)を溶液に混合して、活性エステル基と反応させる。そして、この反応により、活性エステルのうちの一部をチオール基含有側鎖に変換する。
【0053】
具体的には、まずホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)と活性エステル基含有単量体(a2)を、上述した重合開始剤から選択される適当な重合開始剤の存在下、適当な温度条件で反応させて2種類に単量体から構成される合成中間体(下記反応式(I)の一般式(3)で示される共重合体)を合成する。
【0054】
続いて、反応溶液中にシステアミン類(下記反応式(I)の一般式(4)で示される化合物)を適当量加えて、下記反応式(I)に示す反応工程を行う。この反応により、合成中間体を構成する活性エステル基含有ユニットの一部とシステアミン類のアミノ基が反応して、両者の間で安定な共有結合が形成される。その結果、ホスホリルコリン類似基,活性エステル基およびチオール基の3種類の官能基を分子内に含む共重合体(A)(下記反応式(I)の一般式(1)で示される化合物)が生成するとともに、アルコール(下記反応式(I)の一般式(8)で示される化合物)が生成する。
【化18】

(式中、l,m,n,oは全構成単位中の各構成単位の割合を示し、lは0.70から0.87,mは0.03から0.20,nは0.10から0.27,oは0.13から0.30の範囲かつo=m+nであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から1,000,000の範囲である。)
【0055】
このような2段階の合成反応を採用することで、ホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)および活性エステル基含有単量体(a2)という2種類の原料を単量体として、目的とする本発明の共重合体(A)を合成することが可能となる。従って、共重合体(A)を合成する際に要する原料のコストを低く抑えることができる。
また、合成中間体にシステアミン類を混合して反応させるという比較的簡単な反応により、合成中間体を目的とする共重合体(A)に変換することができるため、共重合体(A)の合成に要する手間が少なくすむ。
【0056】
なお、上記システアミン類としては、アミノメタンチオール、2−アミノエタンチオール、3−アミノプロパンチオール、4−アミノブタンチオール等が挙げられる。このうち、入手容易性などの理由により、2−アミノエタンチオール(HNCSH、システアミンともいう)が好ましい。
【0057】
上記共重合体(A)を溶解する溶媒としては、水、各種緩衝溶液、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルオキシド、アセトニトリル、ジオキサン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。また、2種類以上の溶媒を混合した混合溶媒を使用することも可能である。混合溶媒としては、上記溶媒のうち有機溶剤と水との混合物等が挙げられる。
このうち特に、溶解性の観点から、メタノール、エタノール、イソプロパノールといったアルコール類が好ましい。
【0058】
共重合体(A)は、前述したように金含有基材の表面に金‐チオール結合により吸着している。金含有基材としては金を含有する基材であればよく、純金や金合金などが挙げられる。金合金は、コバルト,ニッケル,鉄などの金属と金との合金である。金含有基材の形態としては、表面に共重合体(A)を吸着できればどのような形態でもよく、例えば金メッキや金箔などが挙げられる。
【0059】
本発明の共重合体(A)を金含有基材へ吸着させる際に、事前に金含有基材の表面を研磨したり、洗浄したりするなどして有機物等を取り除いておくことが好ましい。
金含有基材の表面を研磨する方法としては、目の細かいサンドペーパーで研磨したり、アルミナ粉末やダイヤモンドペーストなどを不織布などに含ませて金含有基材の表面を擦ったりする方法により行われる。
【0060】
金含有基材の表面を洗浄する方法としては、例えばPiranha溶液(30%硫酸と過酸化水素水を約3対1で混合した溶液)に5〜30分間浸漬することで行うことが好ましい。更に、金含有基材を浸漬した溶液に超音波を印加しつつ洗浄を行うと、金含有基材の表面をより清浄に洗浄することが可能となる。洗浄後は、脱イオン水や純粋などで洗浄溶液を洗い流す。
【0061】
本発明の共重合体(A)の金含有基材への吸着は、共重合体(A)を溶解した溶液を金含有基材の表面に塗布したり、金含有基材を溶液に浸漬したりするなどの方法により行われる。金含有基材の表面に接触した共重合体(A)は、金とチオール基との間で形成される非共有結合性の金‐チオール結合により金の表面に自発的に吸着して、自己組織化した表面層を形成する。なお、金含有基材への共重合体(A)の接触時間は、約5〜30分程度で十分であるが、例えば2〜5時間行うことで、配向性の高い表面層を形成することが可能となる。このようは配向性の高い表面層では、活性エステル基が金含有基材の表面から外方に向かって整列しているため、生体分子とウレタン結合を起こしやすく、生体分子の固定化が容易である。
【0062】
金含有基材へ共重合体(A)を吸着させた後、水などの溶媒で金含有基材の表面を洗浄して遊離の共重合体(A)を除去する。洗浄後は水などの溶媒中に浸漬した状態で保存することが可能である。また、必要に応じて金含有基材表面を乾燥させて保存することもできる。この場合、大気中で自然乾燥させたり、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で乾燥させたりすることで行われる。
【0063】
金含有基材へ共重合体(A)を吸着させた後、所望の生体分子を固定化する工程が行われる。生体分子の種類は、後述するように検出・測定する対象となる目的物質に応じて選択する。例えば、グルコースを検出・測定するグルコースセンサの場合は、グルコースオキシダーゼである。その他、抗体やDNAなどの所望の生体分子を、目的に応じて適宜選択して固定化することが可能である。
【0064】
金含有基材への生体分子の固定化は、水やリン酸緩衝液などの溶液中で、共重合体(A)を吸着させた金含有基材と生体分子を接触させることで行われる。反応温度としては、4〜40℃が好ましく、特に4℃が好適である。この反応温度は、結合させる生体分子の特性に応じて適宜選択されるが、一般に、4℃以下では共重合体(A)の活性化エステル基と生体分子のアミノ基との反応が起こりにくく、40℃以上では、活性化エステル基の安定性から好ましくない。活性化エステルの安定性と反応性の観点から、反応温度は4℃程度が好ましい。
【0065】
また、pHの条件としては、pH7.0〜8.5が好ましく、特にpH7.6〜7.8が好適である。pHが7.0以下では活性化エステル基と生体分子のアミノ基との反応が進行しにくく、pHが8.5以上では、活性化エステル基が自然に加水分解するため好ましくない。
【0066】
(センサチップ)
次に、本発明の共重合体(A)をセンサチップに適用した場合について、図を参照しながら説明する。図1は本発明の共重合体が適用されたセンサチップの上面斜視図、図2は本発明の共重合体が適用されたセンサチップの横断面を示した模式図である。図1に示すように、本発明のセンサチップ1は、シラノール基含有基材としてのガラス基板3と、金含有基材としての金電極5を主要な構成要素としている。
なお、本実施形態では、ガラス基板3と金電極5を有するセンサチップの例について記載しているが、本発明のセンサチップは電極としての用途に限定されない。例えば、後述する表面プラズモン共鳴(SPR)法におけるセンサチップのように電極以外の用途であってもよく、シラノール基含有基材および金含有基材の両方を備えたセンサチップであればどのようなセンサチップであってもよい。
【0067】
センサチップ1の形状は、バイオセンサの分野において一般的に使用される公知の形状である。すなわち、図1に示すように、ガラス基板3は矩形状をした平板部材であり、その表面中央部には方形形状をした金電極5が配設されている。本実施形態において、金電極5はセンサチップの作用電極として機能している。金電極5の厚さは約50nmで、ガラス基板3の背面に設けられた図示しないリードと接続されており、電極表面に存在する生体分子やメディエータの酸化還元反応によって生じる電流を図示しない測定装置に導出することが可能となっている。
また、図2に示すように、金電極5の表面には共重合体(A)が吸着している。
【0068】
本発明の共重合体(A)は、上記一般式(3)で示されるチオール基含有単量体(a3)由来のチオール基を分子内に有している。上述したように、チオール基は金含有基材と金‐チオール結合により吸着する性質を有する。従って、共重合体(A)は金含有基材の表面に吸着する性質を有している。以下に、共重合体(A)と金含有基材との吸着反応を、図を示して説明する。
【0069】
図3は金含有基材の表面での金原子と共重合体(A)のチオール基との吸着反応を示す説明図である。図2に示すように、この共重合体(A)のチオール基は、金含有基材の金原子との間で非共有結合性の金‐チオール結合を形成する(図中点線で示した結合)。この金‐チオール結合により、共重合体(A)は金電極5の表面に吸着して、自己組織化した安定な表面層を形成する。
【0070】
また、共重合体(A)は、上記一般式(2)で示される活性エステル基含有単量体(a2)由来の活性エステル基を分子内に有している。上述したように、活性エステル基はアミノ基を有する生体分子とアミド結合により結合する性質を有する。従って、共重合体(A)は金含有基材の表面に生体分子を固定化する性質を備えている。以下に、共重合体(A)と生体分子との結合反応を、図を示して説明する。
【0071】
図4は金含有基材の表面での共重合体(A)と生体分子の結合反応を示す説明図である。この図に示すように、共重合体(A)の活性エステル基は、タンパク質やDNAといった生体分子7のアミノ基と反応して、ウレタン結合を形成する。詳細には、タンパク質のN末端側のアミノ基や、リシン,アルギニンといった塩基性アミノ酸由来の側鎖のアミノ基や、DNAの5'末端をアミノ基で修飾したアミノ修飾DNA断片のアミノ基などとウレタン結合を形成する。
従って、本発明の共重合体(A)は、金含有基材を有するセンサチップに適用した場合に、金含有基材の表面にタンパク質などの生体分子7を固定化することが可能となる。
【0072】
更に、本発明の共重合体(A)は、上述したようにチオール基と活性エステル基を分子内に有しているため、上述のように生体分子をセンサチップの金属表面に固定化することが可能である。更に、共重合体(A)は分子内にホスホリルコリン類似基を有している。このホスホリルコリン類似基は、上述したように生体成分との相互作用が小さいため、生体成分の金含有基材への非特異的吸着を効率的に防止することができる。
【0073】
本発明の共重合体(A)は、このような性質を備えているため、化学工学,生命工学,環境,医療などの幅広い分野において、金を材料とする基材の表面に生体分子を固定化する用途に用いることが可能である。
具体的な用途としては、例えば、酵素センサ,免疫センサ,表面プラズモン共鳴バイオセンサ,水晶振動子マイクロバランスバイオセンサといった各種バイオセンサやDNAチップ,分子プローブ,金コロイドなどが挙げられる。
【0074】
酵素センサは、酵素反応を利用したセンサである。一般的に、酵素は特定の基質とのみ反応する基質特異性を有している。このため、酵素をセンサ素子として利用することで、特定の物質を高感度に検出・測定することが可能になる。
酵素センサの具体例としては、先に挙げた果糖(フルクトース)濃度センサ,グルコースセンサ,尿素センサなどが挙げられる。
【0075】
グルコースセンサは、酵素としてグルコースオキシダーゼを用いて、血液や食品などの試料中のグルコースを検出・測定するセンサである。グルコースオキシダーゼは、基質であるグルコースを酸化してグルコノラクトンと過酸化水素を生成する。グルコースセンサは、この酸化反応の過程で減少する酸素の量、あるいは増加する過酸化水素の量を酸素電極などで直接モニタリングすることで、試料中のグルコース濃度を測定する。
あるいは、測定溶液中にベンゾキノンなどのメディエータを加えておき、過酸化水素とメディエータとの間で酸化還元反応を生じさせ、生成する酸化型のメディエータを電極で還元することによりメディエータ濃度を測定する。そして、測定されたメディエータ濃度から、試料中のグルコース濃度を測定することも可能である。
【0076】
尿素センサは、酵素としてウレアーゼを用いて、尿などの試料中の尿素を検出・測定するセンサである。ウレアーゼは、基質である尿素を加水分解して炭酸とアンモニアを生成する。尿素センサは、アンモニアの増加に伴う水素イオン濃度の減少を、pHメータなどでモニタリングすることにより、試料中の尿素濃度を測定する。あるいは、上述のグルコースセンサと同様に、メディエータを介して間接的に尿素濃度を測定する。
【0077】
本発明の共重合体(A)は、上記各種酵素のアミノ基とウレタン結合により結合する一方、センサの素子であるセンサチップの基材である金含有基材と金‐チオール結合により吸着する。従って、各種の酵素を金含有基材の表面に固定化することが可能となる。
【0078】
また、免疫センサは、抗体の抗原認識能を利用したセンサである。抗体は、特定の抗原を認識して特異的に結合する性質を有している。このため、免疫センサとして利用することで、特定の物質を高感度に検出・測定することが可能となる。
【0079】
免疫センサは、測定対象となる抗体である免疫グロブリンを検出素子として固定化した構造を備えている。免疫グロブリンは、抗原のエピトープと結合する領域である可変ドメインと、それ以外の定常領域とから構成される。本発明の共重合体(A)は、主として定常領域のアミノ基とウレタン結合する。
免疫センサでの測定対象の検出方法としては、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用した方法や、水晶振動子マイクロバランス(QCM)を利用した方法など、公知の方法で検出することが可能である。
【0080】
表面プラズモン共鳴(SPR)法は、金などの光反射性の高い薄膜を蒸着したプリズムにレーザ光を照射して、レーザ光の入射角を変化させて反射光強度の減衰をモニタリングすることで、薄膜表面で起こる反応を検出する方法である。
【0081】
水晶振動子マイクロバランス(QCM)法は、金などの電極を配した水晶振動子の電極表面に物質が付着すると、付着量に応じて共振周波数が変化する現象を利用して、試料中の所定の物質を検出したり、濃度を測定したりする方法である。
【0082】
上記いずれの方法でも、本発明の共重合体(A)を介して金の表面にモノクローナル抗体を担持させ、所定の抗原と反応させることで、試料中の所定の分子を高精度で検出したり、濃度を測定したりすることが可能となる。
【0083】
DNAチップは、金などの基材の表面に所定のDNA断片が結合したマイクロアレイを複数備えた基板である。DNAチップは医療,化学,生命工学などの幅広い分野で利用される。
例えば、発がん性遺伝子を検出するDNAチップでは、発がん性遺伝子と相補的な塩基配列を有するプローブDNAを本発明の共重合体(A)を介して電極としての金含有基材の表面に結合しておく。そして、血液などの試料をDNAチップに接触させて、目的遺伝子をコードするDNAとプローブDNAをハイブリダイズさせる。更に、二本鎖DNAにインターカレートする酸化還元物質をDNAチップに導入する。試料中に目的遺伝子が含まれる場合には、目的遺伝子をコードするDNAとプローブDNAとが相補的に結合するため、酸化還元物質がインターカレートされるため、電極表面での酸化還元物質の濃度が低くなる。
【0084】
一方、試料中に目的遺伝子が含まれない場合には、目的遺伝子をコードするDNAとプローブDNAとが相補的に結合しないため、酸化還元物質がインターカレートされず、電極表面の酸化還元物質の濃度が上記ハイブリダイズする場合と比較して高くなる。
従って、電極で酸化還元物質の濃度を測定することで、目的遺伝子の有無やその含有量を測定することが可能となる。
【0085】
DNAチップは、このような発ガン性遺伝子や肥満遺伝子などの遺伝子解析や、遺伝子組み換え作物などの検査、目的遺伝子をターゲットとした薬剤のスクリーニングといった目的に幅広く使用される。
その他、本発明の共重合体(A)は、分子プローブや金コロイドなどの金を材料とする基材に生体分子を固定化する目的で使用することも可能である。
すなわち、本発明の共重合体(A)の用途は上記各種バイオセンサに限定されず、金を材料とする基材に生体分子を固定化するあらゆる用途に適用することが可能である。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例を用いて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、以下に説明する材料,部材,配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
本例では、共重合体(A)を構成する単量体のうち、ホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)として2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(以下、MPC)、活性エステル基含有単量体(a2)として2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−p−ニトロ安息香酸エステル(以下、MNB)、チオール基含有単量体(a3)として2−[(2−メルカプトエチル)カルボニルオキシ]エチル(メタ)アクリレート(以下、2−MEE)を構成単位とする、上記一般式(2)に係る共重合体を使用した。
また、生体分子としてグルコースオキシダーゼを固定化したグルコースセンサに、この共重合体(A)を適用した例について説明する。
【0087】
(共重合体(A)の合成例)
共重合体(A)の合成は、MPCとMNBとのモル比が80:20の中間体を合成し、その後に、この中間体にシステアミンを反応させることで行った。
具体的には、まず、粉末状のMPC(日本油脂株式会社製)を2.4g、MNB0.89gを、エタノールを重合溶媒として1.0mol/lとなるように溶解して、30mlの反応溶液を作成した。
【0088】
続いて、この反応溶液を100mlの三口フラスコに入れて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(関東化学株式会社製)を0.5mMとなるように溶解させたのち、溶液中にアルゴンガスを200ml/minで10分間導入してアルゴン置換を行った。その後、反応溶液をオイルバス中で65℃、5時間反応させることで、中間体(MPC−MNB二元共重合体)を合成した。
【0089】
上記合成反応の後、MPC−MNB二元共重合体を含む溶液20ml中に、粉末状のシステアミン塩酸塩(東京化成株式会社製)を10mmol/lとなるように溶解させて、4℃、12時間反応させることで、MPC−MNB二元共重合体の活性エステル基(p−ニトロフェニルエステル基)とシステアミンのアミノ基を反応させた。
【0090】
上記合成反応で得られた反応溶液50mlを、阻止分子量3,500の120ml透析チューブ(PIERCE社製、SnakeSkin、Pleated Dialysis Tubing)に入れ、純水(電気抵抗率2×10Ω・cm)5000mlを入れたガラス容器中に浸漬してマグネチックスターラーを用いて25℃で48時間撹拌して透析を行い、反応溶液中の未反応の単量体であるMPC,MNBと、システアミン、および重合開始剤を除去した。
続いて、0.1Nの塩酸2mlを添加した純水5000mlを入れたガラス容器中で、25℃で72時間撹拌して再度透析を行った。その後、透析チューブから試料を回収して200ml用凍結乾燥用フラスコに入れ、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、FDU−1100)で48時間真空状態にて凍結乾燥を行うことで溶媒を除去して淡黄色の粉末を乾燥重量で1.2g得た。
【0091】
上記合成例で得られた共重合体(A)について、1)ホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)構造単位のモル分率、2)活性エステル基含有単量体(a2)構造単位のモル分率、3)チオール基含有単量体(a3)構造単位のモル分率の測定を行った。
1)〜3)共重合体(A)中の各単量体構造単位のモル分率については、仕込み組成中のモル分率と、合成した重合体中のモル分率の両方を算出した。共重合体(A)中のモル分率は、リンの定量試験により算出した。
その結果、各単量体構成単位のモル分率は、単量体(a1):単量体(a2):単量体(a3)=80:10:10であった。
【0092】
続いて、重量平均分子量(Mw)を測定した。重量平均分子量(Mw)は、得られた共重合体(A)をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定することで行った。カラムとしてAWM−H(東ソー株式会社製)、溶出溶媒として0.15mol/lリン酸緩衝液、標準試料としてポリエチレングリコール(東ソー株式会社製、TSK Standard)を溶解した0.15mol/lのリン酸緩衝液を使用した。重量平均分子量(Mw)の計算は、日本分光社製クロマトデータ処理用プログラム JASCO−BORWINを使用した。カラムに試料50μlを充填し、溶出溶媒を流速0.5ml/minで連続導入して測定を行った。
その結果、重合平均分子量(Mw)は、4.0×10であった。
【0093】
更に、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))を測定した。分子量分布についても、上記Mwの測定と同様に、GPCにより測定した。数平均分子量については、上述の重量平均分子量と同様にGPCより測定した。
その結果、分子量分布は2.4であった。
【0094】
(共重合体(A)の金含有基材への吸着)
上記合成例で得られた共重合体(A)を、グルコースセンサのセンサチップ上に形成された金含有基材表面に吸着させた。
センサチップは、矩形状のガラス基板の表面の一区画に、厚さ約50nmの金で形成された基材が積層した構造となっているものを使用した。
まず、上記合成例で得られた粉末状の共重合体(A)を95%エタノールに溶解した。続いて、このエタノール溶液を入れたガラス容器中に、金含有基材領域が完全に浸るようにセンサチップを浸漬して、25℃,5分間で吸着反応を行った。
反応の後、センサチップをエタノール溶液中から引き上げて、金含有基材の表面を純水で洗い流すことにより洗浄を行い、未反応の共重合体(A)を除去した。
【0095】
(生体分子の金含有基材への固定化)
続いて、金含有基材へ共重合体(A)を吸着させたセンサチップに、生体分子であるグルコースオキシダーゼを反応させることで、金含有基材表面へグルコースオキシダーゼを固定化した。
まず、pH7.4の0.15mMリン酸緩衝液にグルコースオキシダーゼ(シグマ社製)を1mg/mlとなるように混合して、酵素溶液を作成した。続いて、共重合体(A)を金含有基材の表面に吸着させたセンサチップをこの酵素溶液に浸漬して、pH7.6、反応温度4℃で24時間反応させた。反応の後、0.15mMリン酸緩衝液でセンサチップの表面を洗浄して、未反応のグルコースオキシダーゼをセンサチップ表面から除去した。
【0096】
(グルコースセンサの性能試験)
作成したグルコースセンサチップを電流測定器にセットし、グルコース濃度0〜500mMまで変化させた溶液中にセンサチップを浸漬して、電流測定器で電流値を測定した。その結果、グルコース濃度と電流値との間に良好な直線性が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の共重合体が適用されたセンサチップの上面斜視図である。
【図2】本発明の共重合体が適用されたセンサチップの横断面を示した模式図である。
【図3】金含有基材の表面での金原子と共重合体(A)のチオール基との吸着反応を示す説明図である。
【図4】金含有基材の表面での共重合体(A)と生体分子の結合反応を示す説明図であるである。
【符号の説明】
【0098】
1 センサチップ
3 ガラス基板
5 金電極
7 生体分子
A 共重合体(A)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R及びRは同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、Yはp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドを示し、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R10は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R11は水素またはメチル基であり、
l,m,nは全構成単位中の各構成単位の割合を示し、lは0.70から0.87,mは0.03から0.20,nは0.10から0.27の範囲であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から1,000,000の範囲である。)
で示される共重合体。
【請求項2】
前記共重合体が、下記一般式(2)
【化2】

(式中、l,m,nは全構成単位中の各構成単位の割合を示し、lは0.70から0.87,mは0.03から0.20,nは0.10から0.27の範囲であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から1,000,000の範囲である。)
で示される共重合体であることを特徴とする請求項1記載の共重合体。
【請求項3】
少なくともホスホリルコリン類似基および活性エステル基を分子内に含む下記一般式(3)
【化3】

(式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R及びRは同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Rは水素またはメチル基を示し、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、Yはp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドを示し、Rは水素またはメチル基を示し、l,oは全構成単位中の各構成単位の割合を示し、lは0.70から0.87,oは0.13から0.47の範囲である。)
で示される合成中間体に、
下記一般式(4)
【化4】

(式中、R10は炭素数1〜4の2価の炭化水素基である。)
で示される化合物を反応させて、前記活性エステル基のうち一部の側鎖をチオール基含有側鎖に変換する工程を備えることを特徴とする共重合体の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(5)
【化5】

(式中、R1は炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R及びRは同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Rは水素またはメチル基である。)
で示されるホスホリルコリン類似基含有単量体(a1)と、
下記一般式(6)
【化6】

(式中、Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を示し、Yはp−ニトロフェニル基またはN−ヒドロキシスクシンイミドを示し、Rは水素またはメチル基である。)
で示される活性エステル基含有単量体(a2)を重合させて、前記合成中間体を製造する工程を更に備えることを特徴とする請求項3記載の共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−321829(P2006−321829A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143606(P2005−143606)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(592057341)
【出願人】(505046190)株式会社AIバイオチップス (12)
【Fターム(参考)】