説明

共重合体ならびにそれを用いたゴム組成物および空気入りタイヤ

【課題】低燃費性およびウェットグリップ性能のバランスに優れているゴム組成物を提供すること。
【解決手段】スチレンまたは1,3−ブタジエンの少なくとも1つと、アミノシリルスチレンとを共重合して得られ、重量平均分子量が100,000〜1,500,000である共重合体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン−ブタジエン−アミノシリルスチレン共重合体、ならびにそれを用いたゴム組成物および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年省資源、省エネルギー、加えて、環境保護の立場から排出炭酸ガスの低減の社会的要求が強まっている。自動車に対しても排出炭酸ガスの低減を目的として、自動車の軽量化・電気エネルギーの利用等の様々な対応策が検討されている。自動車の共通の課題として、タイヤの転がり抵抗改善による燃費性能の向上が必要とされており、更に自動車に対しては、走行時の安全性向上の要求も強まっている。これら自動車の燃費性能及び安全性は使用されるタイヤの性能に負うところが大きく、自動車用のタイヤに対しては、低燃費性、操縦安定性、耐久性の改善要求が強まっている。これらのタイヤ特性は、タイヤの構造・使用材料等種々の要素に左右されるが、特に路面に接するトレッド部分に用いるゴム組成物の性能が低燃費性・安全性・耐久性等のタイヤ特性への寄与が大きい。このため、タイヤ用ゴム組成物の技術的改良が多く検討・提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、タイヤトレッドゴムの性能として、低燃費性向上にはヒステリシスロスが小さいこと、ウェットグリップ性能向上にはウェットスキッド抵抗性が高いことが要求されている。しかしながら、低ヒステリシスロスとウェットスキッド抵抗性との関係は相反するものであり、一つだけの性能向上では問題点の解決は難しいのが現状である。タイヤ用ゴム組成物の改良の代表的な手法は、使用する原材料の改良であり、SBRやBRに代表される原料ゴムの構造の改良、カーボンブラック・シリカ等の補強充填剤、加硫剤、可塑剤等の構造や組成の改良が行われている。
【0004】
低燃費性とウェットグリップ性能のバランスを向上させるために、充填剤としてシリカが良く用いられるが、一方でシリカを用いた場合には混練りが難しく、シリカの良分散性や加工性が課題となっている。その改良方法として特許文献1ではゴム組成物にポリアルキレングリコールを配合し、加工性に優れるゴム組成物を得る方法が記載されている。しかし、当該技術においては分子量が1000以上のポリアルキレングリコールは常温で固体であるためゴム組成物のムーニー粘度が高くなる問題や、分子量が低い場合あるいは配合量が多い場合はゴム表面にブリードアウトして接着不良等が発生する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−3245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は低燃費性およびウェットグリップ性能のバランスに優れているゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スチレンまたは1,3−ブタジエンの少なくとも1つと、下記一般式(1)で示されるアミノシリルスチレンとを共重合して得られ、重量平均分子量が100,000〜1,500,000である共重合体である。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立にアミノ基または炭素数が1〜10の炭化水素基で、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、また少なくとも1つはアミノ基である。)
本発明に係る共重合体において好ましくは、共重合体におけるアミノシリルスチレン成分の含有量が0.05〜35質量%である。
【0010】
本発明は、ゴム成分が、前記共重合体を5質量%以上含むゴム組成物である。
本発明に係るゴム組成物において好ましくは、ゴム成分100質量部に対して、シリカを5〜150質量部含む。
【0011】
本発明は、前記ゴム組成物をトレッド部に用いた空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、低燃費性およびウェットグリップ性能のバランスに優れているゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態における空気入りタイヤの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<共重合体>
本明細書において「共重合体」はゴム成分に含まれる概念として記載する。
【0015】
本発明の一実施の形態において、共重合体はスチレンまたは1,3−ブタジエンの少なくとも1つと、下記一般式(1)で示されるアミノシリルスチレンとを共重合して得られる。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立にアミノ基または炭素数が1〜10の炭化水素基で、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、また少なくとも1つはアミノ基である。)
前記共重合体の重量平均分子量は100,000〜1,500,000である。重量平均分子量が100,000未満であると低燃費性が悪くなる傾向があり、1,500,000を超えると加工性が悪くなる。
【0018】
前記共重合体が、スチレンおよび前記一般式(1)で示されるアミノシリルスチレンとを共重合して得られた場合は、共重合体中のスチレン成分の含有量は80〜99.9質量%、アミノシリルスチレン成分の含有量は0.1〜20質量%が好ましい。
【0019】
前記共重合体が、1,3−ブタジエンおよび前記一般式(1)で示されるアミノシリルスチレンとを共重合して得られた場合は、共重合対中の1,3−ブタジエン成分の含有量は80〜99.9質量%、アミノシリルスチレン成分の含有量は0.1〜20質量%が好ましい。
【0020】
前記共重合体が、スチレン、1,3−ブタジエンおよび前記一般式(1)で示されるアミノシリルスチレンとを共重合して得られた場合は、共重合体中のスチレン成分の含有量は5〜60質量%、1,3−ブタジエン成分の含有量は40〜95質量%、アミノシリルスチレン成分の含有量は0.1〜20質量%が好ましい。
【0021】
(アミノシリルスチレン)
前記アミノシリルスチレンの一般式中のR1、R2、R3はそれぞれ独立にアミノ基または炭素数が1〜10の炭化水素基で、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。Rの炭素数が10を超えると、前記アミノシリルスチレンの合成が困難になるだけでなく、それを用いて得られる共重合体を含むゴム組成物の低燃費性およびウェットグリップ性能の改善効果が小さくなる傾向がある。またR1、R2、R3のうち少なくとも1つはアミノ基を含む。アミノ基を含まない場合は、それを用いて得られる共重合体を含むゴム組成物の低燃費性およびウェットグリップ性能の改善効果が小さくなる傾向がある。前記アミノシリルスチレンは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
前記共重合体におけるアミノシリルスチレン成分の含有量は0.05〜35質量%が好ましく、0.1〜20質量%がさらに好ましい。アミノシリルスチレン成分の含有量が0.05質量%未満であると、低燃費性およびウェットグリップ性能の改善効果が得られにくく、35質量%を超えると高コストになってしまう傾向がある。
【0023】
<共重合体の製造方法>
(重合方法)
前記共重合体の重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特にアミノシリル基の安定性の観点から溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
【0024】
溶液重合法を用いた場合には、溶媒中のモノマー濃度(スチレン、1,3−ブタジエンおよびアミノシリルスチレンの合計)は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が5質量%未満では、得られる共重合体の量が少なく、コストが高くなる傾向がある。また、溶媒中のモノマー濃度は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。溶媒中のモノマー濃度が50質量%をこえると、溶液粘度が高くなりすぎて撹拌が困難となり、重合しにくくなる傾向がある。
【0025】
(アニオン重合における重合開始剤)
アニオン重合を行う場合、重合開始剤としては特に制限はないが、有機リチウム化合物が好ましく用いられる。前記有機リチウム化合物としては、炭素数2〜20のアルキル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルーフェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられるが、これらの中で、入手容易性、安全性等の観点からn−ブチルリチウムまたはsec−ブチルリチウムが好ましい。
【0026】
(アニオン重合の方法)
前記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
【0027】
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、例えばブチルリチウムを重合開始剤とし、必要に応じてランダマイザーの存在下でスチレンおよび/または1,3−ブタジエンとアルコキシシリルスチレンをアニオン重合させることにより、目的の共重合体を得ることができる。
【0028】
(アニオン重合における炭化水素系溶剤)
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
(アニオン重合におけるランダマイザー)
また、前記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御、例えばブタジエンにおける1,2−結合、イソプレンにおける3,4−結合の増加など、あるいは共重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩類、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル当量未満では、添加効果が小さく、ランダム化しにくい傾向がある。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モル当量をこえると、モノマーの反応速度が大きく変化してしまい、逆にランダム化しにくくなる傾向がある。
【0030】
本発明の一実施の形態においては、この反応後に、必要に応じて、公知の老化防止剤や重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えることができる。
【0031】
<ゴム組成物>
(ゴム成分)
本発明の一実施の形態において、ゴム組成物のゴム成分は、前記共重合体を5質量%以上、特に10質量%以上含むことが好ましい。共重合体の配合量が5質量部未満であると低燃費性およびウェットグリップ性能の改善効果が得られにくい傾向がある。
【0032】
本発明の一実施の形態において、ゴム組成物のゴム成分としては、前記共重合体とともにジエン系ゴムを用いることが好ましい。ジエン系ゴムは、天然ゴムおよび/またはジエン系合成ゴムからなり、ジエン系合成ゴムとしては、たとえば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などがあげられる。中でも、グリップ性能および耐摩耗性をバランスよく示すことから、NR、BR、SBRが好ましい。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。
【0033】
(シリカ)
前記ゴム組成物は補強剤としてシリカを配合することが好ましい。前記シリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は50〜300m2/gであることが好ましく、特に80〜250m2/gであることが好ましい。チッ素吸着比表面積が50m2/g未満のシリカでは補強効果が小さく耐摩耗性が低下する傾向があり、300m2/gを超えるシリカでは分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し燃費性能が低下する傾向がある。
【0034】
また前記シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、5〜150質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。シリカの配合量が5質量部未満であると耐摩耗性が十分でない傾向があり、一方、シリカの配合量が150質量部をこえると、加工性が悪化する傾向がある。シリカは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(シランカップリング剤)
シリカを配合する場合、シランカップリング剤を併用しても良い。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシ
シリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィ
ド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどがあげられる。なかでも、補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記シランカップリング剤の配合量は、前記シリカ100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましい。シランカップリング剤の配合量が1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高く加工性が悪くなる傾向がある。また、シランカップリング剤の配合量は、前記シリカ100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。シランカップリング剤の配合量が20質量部をこえると、その配合量ほどのシランカップリング剤の配合効果が得られず、コストが高くなる傾向がある。
【0037】
(老化防止剤)
前記ゴム組成物は、老化防止剤を含むことができる。老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックスなどを適宜選択して使用することが可能である。
【0038】
(軟化剤)
前記ゴム組成物は、軟化剤を含むことができる。軟化剤としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、大豆油、パーム油、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、トール油、サブ、蜜ロウ、カルナバロウ、ラノリンなどのワックス類、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、などが挙げられる。軟化剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対してたとえば100質量部以下とされることが好ましく、この場合、該ゴム組成物がタイヤに使用された際のウエットグリップ性能を低下させる危険性が少ない。
【0039】
(加硫剤)
前記ゴム組成物は、加硫剤を含むことができる。加硫剤としては、有機過酸化物もしくは硫黄系加硫剤を使用できる。有機過酸化物としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン等を使用することができる。また、硫黄系加硫剤としては、たとえば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができる。これらの中では硫黄が好ましい。
【0040】
(加硫促進剤)
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことができる。加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能である。
【0041】
(加硫助剤)
前記ゴム組成物は、加硫助剤を含むことができる。加硫助剤としては、ステアリン酸、酸化亜鉛(亜鉛華)などを使用することができる。
【0042】
前記ゴム組成物には、その他の補強剤、各種オイル、可塑剤、カップリング剤などのタイヤ用または一般のゴム組成物用に配合される各種配合剤および添加剤を配合することができる。また、これらの配合剤、添加剤の含有量も一般的な量とすることができる。このようにして得られた本発明のゴム組成物は、低燃費性とウェットグリップ性能において優れたバランスを示すものである。
【0043】
<ゴム組成物の製造方法>
前記ゴム組成物は、従来公知の製造方法により製造することができ、その製造方法が限定されるものではない。たとえば、上記各成分をバンバリーミキサーや混練ロール等の混練機を用いて、通常の方法および条件で混練することによって製造することができる。
【0044】
<空気入りタイヤの構造>
本発明の一実施の形態において、空気入りタイヤ1の構造は、たとえば図1のタイヤ断面の右上半分に例示されるものである。タイヤ1は、トレッド7と、その両端からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール8と、各サイドウォール8の内方端に位置するクリンチ3およびリム上部に位置するチェーファー2とを備える。またクリンチ3、チェーファー2間にはカーカス5が架け渡されるとともに、このカーカス5のタイヤ半径方向外側に2枚のプライよりなるベルト層9が、またカーカス5の内側には、タイヤ内腔面をなすインナーライナー10が配される。該カーカス5は、カーカスコードを配列する1枚以上のカーカスプライから形成され、このカーカスプライは、トレッド7からサイドウォール8を経て、ビードコア6と、該ビードコア6の上端からサイドウォール方向に延びるビードエーペックス4との廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返され、折返し部によって係止される。
【0045】
空気入りタイヤ1は、トレッド7に前記ゴム組成物を用いている。
<空気入りタイヤの製造方法>
本発明の一実施の形態のゴム組成物をトレッド部に用いた空気入りタイヤ1は、前記ゴム組成物の配合成分を、たとえばバンバリーミキサーやニーダー等により130℃以上160℃以下で混練して、ゴム組成物の未加硫物を調製し、該未加硫物をカーカスの形状にあわせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤを得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0047】
<測定および同定方法>
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製GPC−8000シリーズの装置を用い、検知器として示差屈折計を用い、分子量は標準ポリスチレンにより校正した。
【0048】
(アミノシリルスチレンおよび共重合体の構造同定)
アミノシリルスチレンおよび共重合体の構造同定は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて測定した。
【0049】
<アミノシリルスチレンの合成>
(アミノシリルスチレン(1)、R1,R2=メチル基、R3=ジイソプロピルアミノ基)
十分に窒素置換した三つ口フラスコにマグネシウム(関東化学(株)製)690mmol、テトラヒドロフラン(THF、関東化学(株)製のテトラフドロフラン)120mLを加え、0℃で4−ブロモスチレン(関東化学(株)製)510mmolを1時間かけて滴下し、(4−ビニルフェニル)マグネシウムブロミドを得た。
【0050】
次いで、十分に窒素置換した三つ口フラスコにTHF180mL、ジメチルジクロロシラン(東京化成工業(株)製)460mmolを加え、0℃で(4−ビニルフェニル)マグネシウムブロミド510mmolのTHF溶液を1時間かけて滴下し、さらにリチウムジイソプロピルアミド n−ヘキサン−テトラヒドロフラン溶液(1M溶液、関東化学(株)社製)460mmolを1時間かけて滴下した。室温で一晩攪拌した後、蒸留精製することでアミノシリルスチレン(1)(C1627NSi)を得た。
【0051】
(アミノシリルスチレン(2)、R1,R2=エチル基、R3=ジイソプロピルアミノ基)
ジメチルジクロロシランの代わりにジエチルジクロロシラン(東京化成工業(株)製)を加える以外は、(1)と同様の処方によりアミノシリルスチレン(2)(C1831NSi)を得た。
【0052】
(アミノシリルスチレン(3)、R1,R2=メチル基、R3=ピロリジノ基)
十分に窒素置換した三つ口フラスコにTHF1000mL、ピロリジン(関東化学(株)製)460mmolを加え、n−ブチルリチウム(n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M溶液))460mmolを室温で1時間かけて滴下し、50℃で2時間攪拌してリチウムアミド溶液(1)を得た。
【0053】
次いで窒素置換した三つ口フラスコにTHF180mL、ジメチルジクロロシラン460mmolを加え、0℃で(4−ビニルフェニル)マグネシウムブロミド510mmolのTHF溶液を1時間かけて滴下し、さらにリチウムアミド溶液460mmolを1時間かけて滴下した。室温で一晩攪拌した後、蒸留精製することでアミノシリルスチレン(3)(C1421NSi)を得た。
【0054】
<共重合体の合成>
(共重合体(1))
窒素置換した200ml三つ口フラスコにn−ヘキサン100mL、テトラヒドロフルフリルアルコール(東京化成工業(株)製)10mmolを加え、0℃でn−ブチルリチウム(関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液)10mmolを加え、その後室温で1時間攪拌してランダマイザー溶液を得た。
【0055】
十分に窒素置換した耐熱容器にn−ヘキサン1500mL、スチレン100mmol、ブタジエン800mmol、アミノシリルスチレン(1)2.0mmol、ランダマイザー3mmol、n−ブチルリチウム0.5mmolを加えて、−20℃で24時間攪拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、最沈殿精製により共重合体(1)を得た。得られた共重合体は重量平均分子量380,000、アミノシリルスチレン成分含有量1.0質量%、スチレン成分含有量19質量%であった。
【0056】
(共重合体(2))
アミノシリルスチレン(1)を0.5mmol加える以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(2)を得た。得られた共重合体は重量平均分子量320,000、アミノシリルスチレン成分含有量0.2質量%、スチレン成分含有量19質量%であった。
【0057】
(共重合体(3))
アミノシリルスチレン(1)を10mmol加える以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(3)を得た。得られた共重合体は重量平均分子量500,000、アミノシリルスチレン成分含有量4.6質量%、スチレン成分含有量18質量%であった。
【0058】
(共重合体(4))
アミノシリルスチレン(1)の代わりにアミノシリルスチレン(2)を2.0mmol加える以外は、共重合体(1)と同様の処方により共重合体(4)を得た。得られた共重合体は重量平均分子量330,000、アミノシリルスチレン成分含有量1.1質量%、スチレン成分含有量19質量%であった。
【0059】
(共重合体(5))
アミノシリルスチレン(1)の代わりにアミノシリルスチレン(3)を2.0mmol加える以外は、共重合体(1)と同様の処方により共重合体(5)を得た。得られた共重合体は重量平均分子量360,000、アミノシリルスチレン成分含有量0.9質量%、スチレン成分含有量19質量%であった。
【0060】
(共重合体(6))
アミノシリルスチレン(1)を1.6mmolを加え、スチレンを加えない以外は、共重合体(1)と同様の処方により共重合体(6)を得た。得られた共重合体は重量平均分子量440,000、アミノシリルスチレン成分含有量1.0質量%であった。
【0061】
(共重合体(7))
アミノシリルスチレンを加えない以外は、共重合体(1)と同様の処方により共重合体(7)を得た。得られた共重合体は重量平均分子量300,000、スチレン成分含有量19質量%であった。
【0062】
共重合体(1)〜(7)の製造に用いた試薬と得られた共重合体について表1にまとめて示す。
【0063】
【表1】

【0064】
(注1)n−ヘキサン:関東化学(株)製
(注2)スチレン:関東化学(株)製
(注3)ブタジエン:東京化成工業(株)製の1,3−ブタジエン
(注4)関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
(注5)2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
<実施例1〜7、比較例1〜2>
表1に示す配合処方にしたがって、混練り配合し、各種供試ゴム組成物を得た。これらの配合物を170℃で15分間プレス加硫して加硫物を得て、これらについて以下に示す試験方法により低燃費性およびウェットグリップ性能を評価した。
【0065】
<評価項目および試験方法>
(低燃費性)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃でtanδを測定した。tanδの逆数の値について比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性であることを示している。
【0066】
(ウェットグリップ性能)
(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてグリップ性能を評価した。幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片を用い、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0〜70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能が高いことを示す。
【0067】
結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
以下に、実施例および比較例で用いた各種薬品について説明する。
(注6)NR:RSS#3
(注7)BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B
(注8)SBR:JSR(株)製のSL574
(注9)シリカ:テグッサ社製のウルトラシルVN3(チッ素吸着比表面積(N2SA)は175m2/g)
(注10)シランカップリング剤:テグッサ社製のSi69
(注11)老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
(注12)ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
(注13)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
(注14)硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
(注15)加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
(注16)加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
<評価結果>
表2に示すように、スチレンまたは1,3−ブタジエンの少なくとも1つと、アミノシリルスチレンとの共重合体を含んだ実施例1〜7のゴム組成物は、比較例1,2のゴム組成物に比べて、低燃費性とウェットグリップ性能のバランスに優れていた。
【0070】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 空気入りタイヤ、2 チェーファー、3 クリンチ、4 ビードエーペックス、5 カーカス、6 ビードコア、7 トレッド、8 サイドウォール、9 ベルト層、10 インナーライナー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンまたは1,3−ブタジエンの少なくとも1つと、下記一般式(1)で示されるアミノシリルスチレンとを共重合して得られ、重量平均分子量が100,000〜1,500,000である共重合体。
【化1】

(式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立にアミノ基または炭素数が1〜10の炭化水素基で、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、また少なくとも1つはアミノ基である。)
【請求項2】
前記共重合体におけるアミノシリルスチレン成分の含有量が0.05〜35質量%である請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
ゴム成分が、請求項1または2に記載の共重合体を5質量%以上含むゴム組成物。
【請求項4】
ゴム成分100質量部に対して、シリカを5〜150質量部含む請求項3に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項3または4に記載のゴム組成物をトレッド部に用いた空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−74310(P2011−74310A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229685(P2009−229685)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】