説明

共鳴チャンバ、特に、液体生産物の低温殺菌装置用の共鳴チャンバ

共鳴チャンバ(1)は、長手閉じ形状を有する。このチャンバ(1)の壁(1.1, 1.2)にはマイクロ波発生装置が固定され、それらのアンテナ(3, 4)がチャンバ(1)の内部に向けられている。前記アンテナ(3)を備えるマイクロ波発生装置は、前記チャンバ壁(1.1)に固定され、前記アンテナ(4)を備えるマイクロ波発生装置は、共鳴チャンバの前記チャンバ壁(1.2)に固定されている。前記チャンバの壁(1.1)上のマイクロ波発生装置は、チャンバの反対側の壁に向かう正射影において、二つの隣接するマグネトロンのアンテナが生産物流導管(2)の両側に位置するように固定されている。第1列のマグネトロンのアンテナ(3)は、前記生産物通導管(2)の左右に交互に配置されている。第2列のマグネトロンのアンテナ(4)も同様に分配配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共鳴チャンバ、特に、液体及び半液体生産物、主として、食品産業、薬品産業、及びその他の工業分野における種々の濃度の液体、の低温殺菌装置用の共鳴チャンバに関する。本発明の装置において、低温殺菌のためにマイクロ波放射エネルギが使用される。
【背景技術】
【0002】
望ましくない微生物及びそれらの胞子の全てを全生産プロセスから除去することによって殺菌状態を維持することは、食品、化学、薬品、更に、生物培養の繁殖、などの多数の工業処理を行うために達成すべき条件である。使用される基材の純度、更に、様々な濃度の液体基材を含む生産物の純度、は、正しい結果を達成するための条件の一つである。多くの場合、もしも液体を含む、使用される基材の成分が正しく殺菌されていなければ、液体の成分が微生物の成長に有利になりうる。これらの危険を除去するために、更なるプロセス工学作業又は包装のために前記液体又は半液体又は基材を完全殺菌することを目的として、低温殺菌を使用することが必要である。
【0003】
液体又は半液体生産物の低温殺菌用の多くの方法及び装置が知られている。最も頻繁には、この処理は生産物を加熱することからなる。これには、そのような生産物を低温殺菌温度まで加熱するために、放射、更に、1GHz〜150GHzの範囲のマイクロ波放射線を使用する技術と機器が含まれる。
【0004】
プロセス工学条件によって生産物が加熱表面に接触することを許されない状況用に、超音波を使用する多くの解決構成が提案されている。本発明は、マイクロ波発生装置、特に、マグネトロンとして構成されるマイクロ波発生装置、を使用して、生産物、特に、流体を、加熱するための共鳴チャンバに関する。
【0005】
乾燥した及び液体状の生産物、特に、薬品及び食生産物を、高周波マイクロ波によって殺菌、低温殺菌する処理は、特許文献1から知られている。この公知の処理は、大きな物理的又は化学的変化をもたらすことによって生産物の品質を劣化させる可能性のある加熱処理抜きで行われる。この公知の処理において、生産物は、この生産物を短時間、原則として1分間以内で貫通するのに十分な周波数と強度のマイクロ波放射に晒される。この公知の解決構成において、典型的な用途に使用される適当な周波数は、100MHz〜110GHzであり、適当な強度は、約100MHz〜1.6百万ワット/cm2の範囲でなければならない。マイクロ波環境に生産物を晒す適当な時間は60秒間以下であり、この公知の解決構成によるより有利な時間は、0.001〜5秒間であり、最適な時間は1秒間以内である。
【0006】
この種の装置の別の公知の解決構成が、特許文献2に開示されている。この公知の解決構成のその最も単純な態様においては、システムの選択された領域の加熱を可能にするために、その表面上に単数又は複数の開口部を備えるように形成された導波体に沿って波が導かれる。そのカラムは、加熱される物質を導波体から分離するために、テフロン、ガラス、その他の十分に大きな損失率を有する適当な複合材或いはその他の絶縁材料から成るジャケットによって包囲されている。更に、このジャケットは、低誘電性材料から成るジャケットによって包囲され、このジャケットが更に金属ジャケットによって包囲されてそれら導波体を完全に閉じ込めている。スチールなどの適当な材料が使用される場合には、追加のジャケットを省略することができる。同様に、導波体を包囲する低伝導性のジャケットは、加熱対象物質の種類によっては、低伝導性の分離バリアとしての、空気やその他の気体カーテンなどの別の弱伝導性バリアに置き換えることができる。この公知の解決構成によれば、加熱マイクロ波システムは、マイクロ波放射源と、この放射源を内蔵するとともに、そこからのマイクロ波の放射を可能にし、かつ、その放射線導体からのマイクロ波放射の外部への漏れを防止し前記放射線導体を部分的に包囲する物質を含み、更に、加熱される材料のその領域への導入を許可しつつマイクロ波放射の逃げに対して保護するようにマイクロ波を反射する物質からその一部が形成されている導波体と、を有する。この公知の解決構成によれば、材料を加熱する方法は、マイクロ波放射を前記放射線導体に沿って流し、この放射線導体から放射線を、単数又は複数の位置において、低温殺菌対象材料に対して放出することからなる。流動する生産物を、燃焼の危険無く低温殺菌するための方法と装置の別の公知の解決構成が、特許文献3に記載されている。この公知の解決構成によれば、流体の温度を低温殺菌温度にまで漸進的に上昇させるためにマイクロ波加熱が採用される。流体を低温殺菌温度よりも数度低い温度にまで予熱することが有利である。この流体の予熱のために、加熱面と熱回収を利用することができる。この公知の解決構成において、低温殺菌/酵素的不活性化のための装置は、導入ユニットと、予熱ユニットとマイクロ波加熱ユニットとから構成されている。有利な構成において、前記予熱ユニットは、熱回収アセンブリと、表面加熱アセンブリとを含む。前記導入ユニットは、フルーツジュース、ミルク又は生物流体の濃縮物等の低温殺菌対象液体のための入口を有する。低温殺菌が、それらの生産物を燃やす危険無く、チャンバ内で行われることが重要である。前記装置は、流動する液体を、低温殺菌温度以下の温度にまで予熱するためのユニットと、予熱された液体を低温殺菌温度にまで加熱するためのマイクロ波ユニットとを備え、低温殺菌チャンバに取り付けられた前記マイクロ波ユニットによって、予熱済みの流動する液体に対して、この流動する液体を燃やすことのない温度にまで、マイクロ波エネルギを放出する。前記予熱の程度は、液体が低温殺菌温度に入ることから保護するものとされる。螺旋状に互いに接続された複数の波導体が前記マイクロ波加熱ユニット内に配置されており、これら導体はマイクロ波エネルギに対して透過性であり、かつ、その全体がマイクロ波ユニット内に収納されている。前記マイクロ波ユニットは、この解決構成において、少なくとも一つの高周波数マイクロ波放射源を含み、低温殺菌される液体が強力なマイクロ波放射の領域において一定の距離をカバーしている。特許文献4から知られている別の解決構成は、ルースな(loose)食品の低温殺菌及び殺菌の連続処理を開示している。その内部に耐熱/耐圧材料から成るウォームコンベアが配設されたチャンバの閉じられた空間が、高周波数発振器の電界内に置かれている。そしてこの閉じられた低温殺菌空間に粉末食品が導入され、圧力と、前記ウォームコンベアの加熱を受けながら移動される。同時に、粉末食品は、その食感価値を失うことなく、短時間連続処理によって、加熱、低温殺菌及び殺菌してもよい。特許文献5から知られている次の別の解決構成によれば、加熱される液体は、所定の速度でプラスチック導管内を流動する。この導管にはマイクロ波束が向けられる。前記液体の温度は、前記マイクロ波束が作用する導管部分内で上昇する。マイクロ波発生装置と前記液体流導管の部分はマイクロ波の流出を防止するチャンバ内に取り込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開公報WO2008/013449号
【特許文献2】オーストラリア特許第AU629348号
【特許文献3】国際公開公報WO96/36246号
【特許文献4】特許第202276号
【特許文献5】特開昭63−065251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明による装置は、流動する液体及び半液体を、加熱表面と接触することのない条件下で流す低温殺菌処理のパフォーマンスを最適化するために開発されたものである。この目的のために、液体導管を低温殺菌チャンバの中心部分に配置し、一方、マイクロ波発生装置のアンテナをチャンバの壁の両側に、液体流導管の片側において一方のマイクロ波発生装置のアンテナがチャンバ壁に配置され、その反対側の壁のチャンバの同じ高さに、他方のマイクロ波発生装置のアンテナが液体導管の他方側に位置するように配置することが提案される。このマイクロ波発生装置アンテナ対の上下には、もう一対のマイクロ波発生装置アンテナが位置しているが、但し、これは第1対のマイクロ波発生装置の反対側に位置している。これにより、マイクロ波低温殺菌において大幅な進歩が達成され、本発明の装置で低温殺菌された生産物の実験室試験によって、低温殺菌が予想外に大きく改善されたことが確認された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、共鳴チャンバ、特に、液体生産物の低温殺菌用装置のための共鳴チャンバは、マイクロ波に対して透過性の材料から形成される生産物流導管と、この導管を取り囲む流体密な(tight)金属エンクロージャとを有する。前記チャンバの壁には複数のマイクロ波発生装置が取り付けられ、それらのアンテナはチャンバの内部に向けられている。
【0010】
本発明によれば、前記チャンバは、前記マイクロ波発生装置が、前記チャンバ壁の両側に互いに交互に取り付けられ、一対のマイクロ波発生装置のこれら発生装置の二つのアンテナのそれぞれが、前記生産物流導管の同じ部分に位置していることを特徴としている。但し、両側の各アンテナ対の対称軸は一致せず、互いに対してシフトされている。本発明による一つの解決構成において、各アンテナ対の一方のアンテナは、前記生産物流導管の一方側に位置し、各アンテナ対の他方のアンテナは前記生産物流導管の他方側に位置している。
【0011】
本発明の好適な構成において、各対のマイクロ波発生装置アンテナは、前記生産物流導管に沿って同じ位置のレベルで共鳴チャンバ内に位置し、このマイクロ波発生装置アンテナは、前記生産物流導管壁の傍をそれに触れることなく通る。しかしながら、前記マイクロ波発生装置アンテナが前記生産物流導管壁断面の外縁に接触する構成も除外されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】共鳴チャンバの側面図である。
【図2】共鳴チャンバのA-A断面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に取り囲まれて図示されているように、一実施例における共鳴チャンバ1は、様々な濃度の液体生産物の低温殺菌用の装置の一部として機能するものであって、長手閉じ形状を有する。図2から理解されるように、前記形状のA-A断面は矩形である。但し、このことによって、例えば、円形の断面形状などの共鳴チャンバ1のその他の構成例が除外されるものではない。しかしながら、図面は、一例として、矩形断面A-Aを有する例を図示している。前記低温殺菌のための装置は、共鳴チャンバ内において前記流導管に生産物を供給し、低温殺菌後にそれを回収するための公知のシステムを備えているが、更に、生産物を低温殺菌前に予熱するための公知のシステムも備えることができる。
【0014】
図1及び図2は、前記共鳴チャンバの内部の、マイクロ波に対する透過性を有する材料としてのテフロンからなる生産物流導管2を図示している。この導管2の直径は30mmである。他の実施例として、前記導管2を異なる径のものとすることも可能である。図1及び図2の囲まれた部分は、前記導管を取り囲む共鳴チャンバ1のマイクロ波不透過性の金属ハウジングを示している。
【0015】
前記生産物流導管2の長手対称軸は、この実施例では、共鳴チャンバの長手対称軸と一致している。別の実施例ではこれらの軸は互いに一致する必要はない。前記共鳴チャンバ1の閉じられた空間を形成する壁1.1, 1.2, 1.3, 1.4は、金属材から形成されている。
【0016】
図1及び図2に図示されている実施例において、マイクロ波発生装置、即ち、マグネトロン、は、チャンバの壁1.1及び1.2に固定され、それらのアンテナ3, 4はチャンバ内部に向けられている。図1及び図2に示されるように、アンテナ3を有するマイクロ波発生装置はチャンバ壁1.1に固定され、一方、アンテナ4を有するマイクロ波発生装置は共鳴チャンバの壁1.2に固定される。図面の透明性を維持するために、完全なマグネトロンではなく共鳴チャンバの内部空間に配置されたアンテナが図示されている。
【0017】
図1及び図2は、チャンバの一方の壁1.1上のマイクロ波発生装置が、反対側の壁への正射影(orthogonal projection)において、二つの隣接するマグネトロンのアンテナが生産物流導管2の両側に位置するように固定されていることを図示している。従って、図1から理解されるように、第1列のマグネトロンのアンテナ3は、前記生産物流導管2の左側と右側とに交互に位置している。
【0018】
図1において、第2列のマグネトロンのアンテナ4は破線で図示され、これらは前記第1列のアンテナ3のそれと類似の間隔で、他方の反対側の壁1.2上に配置されている。図1から理解できるように、前記第2列のマグネトロンのアンテナ4は、前記生産物流導管2の左右の側に交互に位置している。
【0019】
前記アンテナ3, 4を備える各マグネトロン対は、前記第1列の一つのマグネトロンと、前記第2列の一つのマグネトロンとから構成されている。図1に図示の実施例において、一対のアンテナ3, 4は、共鳴チャンバの連続するポイントB, C, D, E, F, Gのそれぞれに位置している。即ち、第1列のアンテナ3が生産物流導管2の片側に位置し、第2列のアンテナ4が生産物流導管2のその反対側に位置している。図1及び図2において、ポイントB, C, D, E, F, Gのそれぞれの各両側のアンテナ対の対称軸は一致せず、互いに対してシフトされている。ポイントB, C, D, E, F, Gは、図1において、連続するアンテナ対の位置を例示するためにのみ図示されているのであって、この実施例では、それらの間隔は12cmに等しいが、これによってその他の実施例が限定されるものでなく、他の実施例ではこれらのポイントの間隔は異なったものでもよい。
【0020】
本発明の一つの有利な構成において、マイクロ波発生装置アンテナ3, 4の各対は、共鳴チャンバ1内において、前記生産物流導管2に沿って前記ポイントB, C, D, E, F, G, Hの同じレベルに位置する。マイクロ波発生装置のアンテナ3, 4は、前記生産物流導管2の壁の傍をそれに触れることなく通っている。但し、マイクロ波発生装置のアンテナ3, 4が生産物流導管2の壁の断面に対して接する位置を占める構成も除外されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴チャンバ、特に、液体生産物の低温殺菌用装置のための共鳴チャンバであって、マイクロ波に対して透過性の材料から形成される生産物流導管と、この導管を取り囲む流体密な金属エンクロージャとを有し、前記チャンバエンクロージャの壁には複数のマイクロ波発生装置が取り付けられ、それらのアンテナがチャンバの内部に向けられているものにおいて、
前記マイクロ波発生装置のアンテナ(3, 4)が、前記チャンバ(1)内において、交互に配置され、各対のマイクロ波発生装置アンテナ(3, 4)が前記生産物流導管(2)の同じ部分に位置しながら、両側の各アンテナ対(3, 4)の対称軸は一致せず、互いに対してシフトされ、各アンテナ対の一方のアンテナ(3)は、前記生産物流導管(2)の一方側に位置し、各アンテナ対の他方のアンテナ(4)は前記生産物流導管(2)の他方側に位置している。
【請求項2】
請求項1のチャンバであって、前記各対のマイクロ波発生装置アンテナ(3, 4)は、前記生産物流導管(2)に沿ったポイント(B, C, D, E, F, G, H)の同じレベルに位置している。
【請求項3】
請求項1のチャンバであって、前記マイクロ波発生装置アンテナ(3, 4)は、前記生産物流導管(2)の壁の傍を通っている。
【請求項4】
請求項1のチャンバであって、前記マイクロ波発生装置アンテナ(3, 4)は、前記生産物流導管(2)の壁の断面の外縁に接触している。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−501718(P2012−501718A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526002(P2011−526002)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/PL2008/000096
【国際公開番号】WO2010/027285
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(511059519)エンビオ・テクノロジー・エスピー・ゼット・オーオー (1)
【Fターム(参考)】