説明

内側測定器の校正装置

【課題】シリンダーゲージ等の内側測定器の校正が容易な校正装置を提供する。
【解決手段】所定の間隔で設置された一対のジョウ2,3と、ジョウ2,3の間に設けられた、内側測定器を裁置するための台座4とを有する内側測定器の校正装置であって、台座4は軸溝41aを有する台座部41及び回転軸42aを有するステージ42を有し、もって回転軸42aを軸としたシーソー構造を有する校正装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリンダーゲージ等の内側測定器の校正が容易な校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内側測定器とは、シリンダーやリング等の内径を測るものであり、代表的なものとして図8に示すようなシリンダーゲージ50が挙げられる。このシリンダーゲージ50は、支持棒55の一端に設けられた測定部51と、他端に設けられ、測定部51の長さを表示するメーター56とを有する。測定部51は、支持棒55に対して垂直に突出した所定の長さを有するアンビル52と、アンビル52の反対側に突出して、アンビル52側に押すと引っ込んで離すと元に戻る性質を有する測定子53及びガイド54とで構成されている。測定子53はメーター56と直結しており、アンビル52と測定子53の先端間の長さ(測定部51の幅の長さ)がメーター56に表示されるようになっている。このシリンダーゲージ50を用いて例えばシリンダーの内径を測定する場合、シリンダーの内側にアンビル52及び測定子53の先端を当て、シリンダーゲージ50の傾きを微妙に変えながら測定部51の幅の長さが最小値を示す位置を探し、その時のメーター56の示す値をシリンダーの内径とする。このようなシリンダーゲージ等に代表される内側測定器は、測定部の長さとメーターに表示される値とが一致していなければならないため、基準器等の校正装置により校正を行う必要がある。
【0003】
内側測定器の従来の校正装置の一例として、特開平10-9803(特許文献1)は、図9に示すように、機台61上に固定した摺動基準体62と、リニアゲージ60により微動調節が可能な摺動基準体63とを有し、固定基準体62及び摺動基準体63にそれぞれ設けられた基準面64及び65に円弧状凹面66及び67が形成されている基準器を開示している。この基準器を用いて、例えばシリンダーゲージ50の校正を行う場合、円弧状凹面66及び67の間の幅を所定の値に予め固定しておいて、図10に示すように、シリンダーゲージ50の測定部51の両端(アンビル52及び測定子53の先端)をそれぞれ弧状凹面66及び67にセットし、シリンダーゲージ50の傾きを微妙に変えながら測定部51が示す最小値を求め、その最小値と円弧状凹面66及び67の幅の値とを比較することにより校正を行う。しかしながら、上記の基準器では、シリンダーゲージ50の測定部51が宙に浮いた状態で校正を行うため、シリンダーゲージ50の傾きを変える際の手ぶれ等により、測定部51の両端がぶれてしまい、測定部51の最小値を求めるのが難しい。
【0004】
【特許文献1】特開平10-9803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、シリンダーゲージ等の内側測定器の校正が容易な校正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、校正用の一対のジョウの間にシーソー構造を有する台座を設け、その上に内側測定器を裁置しながら校正を行うことにより、内側測定器の校正時のぶれを防止し、校正が容易になることを見出し、本発明に想到した。
【0007】
すなわち、本発明の内側測定器の校正装置は、所定の間隔で設置された一対のジョウと、前記ジョウの間に設けられた、内側測定器を裁置するための台座とを有し、前記台座は軸溝を有する台座部及び回転軸を有するステージを有し、もって前記回転軸を軸としたシーソー構造を有することを特徴とする。
【0008】
前記軸溝が円弧状の長溝又は直線状の長溝であるのが好ましい。前記ステージにV受けが設けられているのが好ましい。前記ステージは所定の角度に固定することができるのが好ましい。
【0009】
前記第1及び第2のジョウの前記内側測定器をセットする側の面の中央上部にテーパー状のガイド溝が設けられているのが好ましく、前記第1及び第2のジョウが前記ガイド溝を有するガイド部と、内側測定器をセットする測定部からなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の校正装置は、校正用の一対のジョウの間のベース上に設けられた、シーソー構造を有する台座の上に内側測定器を裁置しながら校正を行うので、内側測定器の校正時のぶれを防止でき、容易に校正を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[1] 内側測定器の校正装置
図1及び図2は、本発明の一実施例による内側測定器の校正装置1を示す。この校正装置1は、(1) 両端が固定子10及びメネジ部11を介して固定された一対のクランプ6a,6bと、(2) クランプ6a,6bの間に直方体状の下部が挿入され、平板状の上部に基準面2a,3aがそれぞれ設けられているジョウ2,3と、(3) ジョウ2,3の下部に挟まれているブロックゲージ5と、(4) ジョウ2,3間のクランプ6a,6bの上に設けられた台座4と、(5) メネジ部11に貫入され、ジョウ3を押圧子12を介して押圧するネジ棒13と、(6) クランプ6a,6bの両端を挟んで校正装置1を安定化させる土台14a,14bと、(7) 土台14aの側面に設けられた、校正作業中に手を置くための取手15とからなる。
【0012】
ジョウ2の下部は固定子10に当接しており、ジョウ3の下部は押圧子12を介してネジ棒13により押圧されている。これによりジョウ2,3はブロックゲージ5を挟んだ状態で両側から固定されるため、ジョウ2,3の基準面2a,3a間の長さはブロックゲージ5の長さと一致する。そのため校正対象であるシリンダーゲージの測定部の幅に合わせて適当な長さのブロックゲージ5を用いることにより、測定部分の長さが異なる種々のシリンダーゲージに対して校正を行うことができる。またジョウ2,3の基準面2a,3aの中央上部には、シリンダーゲージをスムーズに挿入するためのガイド溝21,31が設けられている。図3に示すように、シリンダーゲージの測定部の両端をそれぞれガイド溝21,31から挿入していくことにより、ガイド溝21,31の下部に位置するシリンダーゲージの校正を行う箇所に素早くかつ正確に導くことができる。また基準面2a,3aの幅を大きくとることにより、校正中に測定部53の両端が外れるのを防止できる。
【0013】
台座4は、図4に示すように、円弧状の長溝からなる軸溝41aを有する台座部41と、回転軸42aを有するステージ42とを備えている。ステージ42は
ステージ42の上面は平面状である。ステージ42の上面にゴム状の平板を設けても良い。ステージ42は回転軸42aを軸として輪転可能であり、かつ円弧状の軸溝41aに沿ってスライドすることができる。
【0014】
[2] 内側測定器の校正方法
図5及び図6は、校正装置1を用いてシリンダーゲージ50の校正を行っている状態を示す図である。シリンダーゲージ50の測定部51の両端がガイド溝21,31に沿うようにシリンダーゲージ50をジョウ2,3の間に挿入していき、測定部51を台座4のステージ42の上に裁置する。この時点で、シリンダーゲージ50の測定部51の両端は、ジョウ2,3の基準面2a,3aにおけるシリンダーゲージの校正を行う箇所(基準面2a,3aのガイド溝21,31が設けられていない中央下部)に位置している。
【0015】
シリンダーゲージ50の測定部51をステージ42の上に裁置した状態で、図5に示す矢印方向にシリンダーゲージ50の傾きを変えたり、支持棒55を軸としてシリンダーゲージ50を回転させることにより校正を行う。ステージ42は回転軸42aを軸としたシーソー構造を有するため、シリンダーゲージ50の傾きに合わせてステージ42の傾きを変えることができる。それにより、シリンダーゲージ50の傾きをスムーズに調節することができ、高精度な校正を容易に実現することができる。またシリンダーゲージ50の傾きを変えて校正を行う際、台座4の軸溝41aが円弧状の長溝になっているため、図6に示すように、ステージ42が測定部51の傾きの変化に合わせて追従することができる。
【0016】
ステージ42の上面が平面状になっているため、シリンダーゲージ50の支持棒55の回転方向の動きもスムーズに行うことができる。このように円弧状の軸溝41aを有する台座41にシーソー構造を有するステージ42を設け、その上にシリンダーゲージ50の測定部51を載せることにより、縦方向及び回転方向の位置調整を妨げることなく、ぶれを防止して高精度でかつ容易に校正を行うことができる。
【0017】
シリンダーゲージ50の傾きを変えて校正し、測定部51の長さが最小になった時点で、ステージ42の傾きをねじ等の固定手段(図示せず)により固定しても良い。それによりシリンダーゲージ50を支持棒55の回転方向に動かして校正を行う際に、シリンダーゲージ50の縦方向のぶれを防止し、より効率的な校正が可能になる。
【0018】
本発明の台座4は図4に示す上面が平面状のものに限らず、例えば図7に示すように、ステージ42の中央部にシリンダーゲージの測定部を嵌め込むためのV溝42bを設けても良い。それにより、シリンダーゲージの支持棒の回転方向のぶれを防止できる。また台座部41の長溝41aは、図4に示すような円弧状に限らず、例えば図7に示す直線状のものでも良い。ステージ42の回転軸42aの形状は図示の円筒状に限らず、かまぼこ状等でも良い。
【0019】
ジョウ2,3は、シリンダーゲージが挿入されてもジョウ2,3の幅が変わらないように、鋼等の高硬度の材料で作成される。そのため、ガイド溝21,31を容易に加工できるように、ジョウ2,3のガイド溝21,31が設けられている上部だけを別体にして、加工が容易な素材を用いても良い。
【0020】
図示の校正装置ではジョウ3を押圧部12で押圧することにより固定しているが、本発明はそれに限らず、マイクロメータ等の微調整用の装置をジョウ3に取り付け、ジョウ3の位置の微調整を可能にしても良い。
【0021】
本発明の校正装置は、上述したものに限らず、本発明の思想を逸脱しないものであれば、種々の構造を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例による内側測定器の校正装置を示す斜視図である。
【図2】図1の校正装置を示す断面図である。
【図3】図1の校正装置の使用状態を示す図である。
【図4】図1の校正装置の台座を部分拡大して示す斜視図である。
【図5】図1の校正装置の使用状態を示す図である。
【図6】台座を示す斜視図である。
【図7】図1の校正装置の使用状態を示す図である。
【図8】シリンダーゲージを示す図である。
【図9】従来の校正装置の一例を示す斜視図である。
【図10】従来の校正装置の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1・・・校正装置
2,3・・・ジョウ
4・・・台座
41・・・台座部
41a・・・軸溝
42・・・ステージ
42a・・・回転軸
42b・・・V溝
5・・・ブロックゲージ
6a,6b・・・クランプ
10・・・固定子
11・・・メネジ部
12・・・押圧子
13・・・ネジ棒
14a,14b・・・土台
15・・・取手
50・・・シリンダーゲージ
51・・・測定部
52・・・アンビル
53・・・測定子
54・・・ガイド
55・・・支持棒
56・・・メーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で設置された一対のジョウと、前記ジョウの間に設けられた、内側測定器を裁置するための台座とを有する内側測定器の校正装置であって、前記台座は軸溝を有する台座部及び回転軸を有するステージを有し、もって前記回転軸を軸としたシーソー構造を有することを特徴とする内側測定器の校正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内側測定器の校正装置において、前記軸溝が円弧状の長溝であることを特徴とする校正装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内側測定器の校正装置において、前記軸溝が直線状の長溝であることを特徴とする校正装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の内側測定器の校正装置において、前記ステージにV受けが設けられていることを特徴とする校正装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の内側測定器の校正装置において、前記ステージは所定の角度に固定することができることを特徴とする校正装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の内側測定器の校正装置において、前記第1及び第2のジョウの前記内側測定器をセットする側の面の中央上部にテーパー状のガイド溝が設けられていることを特徴とする校正装置。
【請求項7】
請求項6に記載の内側測定器の校正装置において、前記第1及び第2のジョウが前記ガイド溝を有するガイド部と、内側測定器をセットする測定部からなることを特徴とする校正装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate