説明

内分泌攪乱物質の検出法、キットおよびその使用法

【課題】本願発明は、内分泌攪乱物質の検出において、未知物質を測定することが可能であり、そして従来のレポータージーンアッセイ法よりも安価に実施でき、かつ長期間保存後にも高い精度で使用し得る、測定用キットを提供することを目的とする。
【解決手段】ホルモン受容体遺伝子発現ベクターと、当該性ホルモンの標的となる遺伝子のプロモーターを結合させた外来遺伝子を導入した細胞;培地;前記細胞を播種するためのプレート;プレートをシーリングする手段;および前記プレートを収納するための、ガス吹き込み口を備えたケース;を含む、内分泌攪乱物質の検出キットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内分泌攪乱物質をレポータージーンアッセイによって検出するための方法、キットおよび当該キットの使用法、ならびに測定における高感度測定を提供する。
【背景技術】
【0002】
内分泌攪乱物質、とりわけ性ステロイドホルモン系攪乱物質は、長期にわたり生物の生命活動、例えば卵形成、精子形成、雌性形質誘導、雄性形質誘導、骨形成、筋肉の発達、受精などの様々な機能を阻害するため、その存在が報告されて以来、大きな社会問題となっている。しかし、かかる物質は、これに接触した個体を直ちに死傷せしめるような毒性を有するのではなく、次世代、あるいは次次世代に影響を及ぼすことが多いため、個体における顕著な変化を観察することが困難である。
【0003】
そこで、内分泌攪乱物質を同定および評価するための様々な試験法が考案された。例えば、ダイオキシンなどの既知の性ステロイドホルモン系攪乱物質を測定するために、環境から水や土などの試料を採取し、披験試料溶液を調製して、ガスクロマトグラフィーなどの機器で分析する方法があるが、このような機械的な方法では既知の化合物の存否を確認することはできても、未知物質を測定・評価する術がないため、真実その環境が内分泌攪乱物質を含んでいないことを保証するものではないという課題があった。
【0004】
かかる課題を解決するため、性ステロイドホルモン受容体サブタイプを用いたレポータージーンアッセイ法がある。この方法は、
1)プレート播種フロー:性ステロイドホルモン受容体発現ベクターと、当該性ステロイドホルモンの標的となる遺伝子のプロモーターを結合させた外来遺伝子を導入した生細胞(製造法については、非特許文献1参照)を、培養フラスコ内でRPMI培地(8%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンin RPMI1640)でCOインキュベーター(37℃)下で培養する。生細胞がコンフルエントになった状態で培養を停止し、安全キャビネット内で培養生細胞を7.5×105個/wellとなるように96穴マイクロプレートに播種し、COインキュベーター(37℃)で一晩、前培養する。
2)試料前処理フロー:試料を採取した後、ろ過し、メタノールおよび蒸留水でコンディショニングした固相(例えば、Sep−Pack Plus PS−2、Waters)に流速10〜20ml/分で通水し、窒素気流下で乾燥したのち、ジクロロメタンで溶出する。これを窒素気流下で蒸発乾固し、DMSO(ジメチルスルホキシド)に転溶して、前処理を行う。
3)プレート曝露フロー:段階希釈した前処理後DMSO溶液(4μl)にRPMI培地(400μl)を加え、被検試料溶液を調整する。標準溶液(TCDD、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾーパラージオキシン)についても同様の操作を行い、標準試料溶液を調整する。安全キャビネット内で前培養したマイクロプレートに、披験試料溶液および標準試料溶液をそれぞれ2well(190μl/well)に分け、COインキュベーター内(37℃)で20〜24時間、細胞に曝露する。
4)プレート測定フロー:曝露後、培地を取り除き、ルシフェラーゼアッセイシステムにより誘導されたルシフェラーゼ活性(相対発光強度;RLU)をルミノメーターで測定する。:
のような複雑な手順を必要とする(通常フロー、非特許文献2参照)。
【非特許文献1】Bio Factors 20 (2004) 11-22
【非特許文献2】Analyst, 2003, 128, 486-492
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレポータージーンアッセイ法では、安全キャビネットをはじめとする高価な細胞培養施設が必要であるため、発展途上国などの十分に資金や設備を有しない地域での測定実施が困難であった。また、プレートへ播種後20〜24時間以内という使用期限を有するため、分析の都度播種操作が必要であった。このため、培養施設から遠隔地での使用が制限され、また、操作が煩雑かつ非効率的であった。さらに、従来のレポータージーンアッセイ法では、試料を採取した後、抽出操作や濃縮操作を含む前処理が必要であったが、かかる前処理操作も測定実施を遅延させ、非効率的なものとする一因であった。
【0006】
また、ある物質が内分泌攪乱作用を有するか否かは生物種によって異なる場合があり、これは例えば哺乳類の場合にはエストロゲン、アンドロゲンおよびプロゲスチンそれぞれに受容体が1種類ずつ存在するのに対し、魚類ではそれぞれに受容体が2種類(αおよびβ)が存在するためであると考えられる。そのため、魚類に対する性ステロイドホルモン系攪乱物質をアッセイする場合には少なくとも6種類(エストロゲン受容体α、エストロゲン受容体β、アンドロゲン受容体α、アンドロゲン受容体β、プロゲスチン受容体αおよびプロゲスチン受容体β)の受容体遺伝子それぞれについて生細胞を設計し、全ての生細胞についてアッセイを行う必要があるが、これは一層煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本願発明者らは、環境に内分泌攪乱物質が存在するか否かを検討するにあたって、特定の1種類のホルモンの受容体遺伝子を組み込んだ細胞を使用したレポータージーンアッセイ法では、総合的に評価できないことに鑑み、代表的なホルモン受容体の全てについて検討すること、例えば魚類については、エストロゲン受容体α、エストロゲン受容体β、アンドロゲン受容体α、アンドロゲン受容体β、プロゲスチン受容体αおよびプロゲスチン受容体β遺伝子をそれぞれ組み込んだ細胞を設計し、各細胞についてレポータージーンアッセイを行うことを見出した。
【0008】
また本願発明者らは、複数種類のホルモン受容体遺伝子についてのレポータージーンアッセイ法をキット化して提供するという着想に基づき鋭意研究した結果、測定を意図するホルモンの受容体遺伝子を導入した生細胞を各々予め設計して播種すること、生細胞を播種した後長期間保存可能なシーリングをプレートに施すことによって、上記問題が解決可能であることを見出した。
【0009】
従って、具体的には、本願発明は、
ホルモン受容体遺伝子発現ベクターと、当該ホルモンの標的となる遺伝子のプロモーターを結合させた外来遺伝子を導入した細胞;
培地;
前記細胞を播種するためのプレート;
プレートをシーリングする手段;および
前記プレートを収納するためのケース;
を含む、ホルモン系攪乱物質の検出キット、ならびに測定における高感度測定を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、複数のホルモン受容体遺伝子発現ベクターを導入した細胞を一度に提供することが可能であるため、内分泌攪乱物質の総合的な判断が可能である。また、生細胞の播種後長期間の保存が可能であるため、キットを作成した後、遠隔地に当該キットを運搬し、現地で最低限の設備で内分泌攪乱物質の測定・評価が可能である。しかも驚くべきことに、本願発明のキットは、長期保存後も高い測定精度を維持することが可能であった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の態様において、本願発明は、
ホルモン受容体遺伝子発現ベクターと、当該ホルモンの標的となる遺伝子のプロモーターを結合させた外来遺伝子を導入した細胞;
培地;
前記細胞を播種するためのプレート;
プレートをシーリングする手段;および
前記プレートを収納するためのケース;
を含む、内分泌攪乱物質の検出キットを提供する。
【0012】
好ましい態様において、ホルモン受容体遺伝子は性ステロイドホルモン受容体遺伝子、とりわけ魚類のエストロゲンα受容体遺伝子、エストロゲンβ受容体遺伝子、アンドロゲンα受容体遺伝子、アンドロゲンβ受容体遺伝子、プロゲスチンα受容体遺伝子およびプロゲスチンβ受容体遺伝子である。
【0013】
ホルモンの標的となる遺伝子のプロモーターは、種々のプロモーターを使用することができるが、例えば市販のベクター、例えばpMSG(ファルマシア)からLTRプロモーターを、例えばNhe IおよびHind IIIのような制限酵素を使用することによって得ることができる。ただし、ある種のプロモーターは特異的な転写因子との共存によってのみ発現する場合があるので、そのようなプロモーターを使用する場合には転写因子もしくは転写因子を含む細胞にプロモーターを導入する必要がある。
【0014】
外来遺伝子は、特に限定されないが、mRNAおよび発現したタンパク質の確認が容易なものが好ましい。好ましくは、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、βガラクシダーゼ、とりわけ好ましくはルシフェラーゼである。
【0015】
外来遺伝子が発現して生産されるタンパク質と結合することができるリガンドを、基質溶液としてキットに含めることもできる。基質溶液は、例えば外来遺伝子がルシフェラーゼである場合には、ルシフェリン溶液である。市販のアッセイキットを使用することもできる(例えば、ピッカジーン(東洋ビーネット株式会社)またはGloシステム(Promega))。
【0016】
ホルモンの標的となる遺伝子のプロモーターと、外来遺伝子は、常套の方法、例えば制限酵素を用いて、プロモーター部分と外来遺伝子との間に粘着末端を作成し、DNAリガーゼなどによって結合させることができる。
【0017】
ホルモン受容体遺伝子発現ベクターと、当該ホルモンの標的となる遺伝子のプロモーターを結合させた外来遺伝子を導入した細胞の詳細な設計および製造法は、これに限定されるものではないが、例えば特開2003−47473、特開2003−18987に記載されている。これらの文献の内容を出典明示により本明細書の一部とする。
【0018】
培地は、細胞の培養に好ましい培地であればどのようなものでも使用することができるが、例えばRPMI培地(8%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンin RPMI1640)、DMEM培地(デキストランチャコール処理5%ウシ胎児血清含有)が好ましい。
【0019】
プレートは、細胞を播種するために使用し、従って細胞の培養に使用し得るあらゆるプレートが意図される。例えば、16穴〜96穴マイクロプレートが好ましい。
【0020】
プレートをシーリングする手段とは、細胞を播種後、プレート内の培地および細胞を保護するための手段である。好ましいプレートをシーリングする手段には、ポリ塩化ビニリデンやポリエチレンのような合成樹脂フィルム、プレートシーリング材(例えば、TR100−S、Marsh(登録商標))が含まれる。
【0021】
ケースは、どのような大きさまたは材質のものでも使用することができるが、極力ガスをケース外に逃がさないため、金属またはプラスチック製、より好ましくはプラスチック製のものが好ましい。
【0022】
キットの製造法
ホルモン受容体遺伝子発現ベクターと、当該ホルモンの標的となる遺伝子のプロモーターを結合させた外来遺伝子を導入した細胞を、適当な培地に播種し、インキュベーター、好ましくはCOインキュベーター内で、適温、例えば25℃〜40℃、好ましくは37℃で、培養する。コンフルエントになった状態で培養を停止し、培養細胞が各ウェルおよびプレートについておよそ一定の個数となるように培養細胞をプレートに播種する。インキュベーター内で、適温で、例えば一晩、前培養する。インキュベーターからプレートを取り出し、培地を加える。プレートをシーリングし、プレートカバーをかぶせ、ケースに入れる。
【0023】
キットの使用法
プレートをプレートケースから取り出し、シーリングをはがし、COインキュベーター内等に入れ、安定化・再活性化を促す(例えば1〜2時間)。試料溶液を、再活性化したプレートに添加する。その後、COインキュベーター内等に入れ、例えば20〜24時間、細胞に試料溶液を曝露する。曝露後、培地を取り除き、外来遺伝子の基質溶液を加えて外来遺伝子の発現量を測定する。例えば外来遺伝子がルシフェラーゼの場合、ルシフェラーゼ基質を加えてルシフェラーゼ発現量(相対発光強度;RLU)をルミノメーターで測定する。試料溶液濃度は、得られたRLUからバックグラウンド(溶媒対照のRLU)を差し引く。
【0024】
本願発明のキットは、好ましくは常温で、例えば5日間、好ましくは10日間、より好ましくは20日間保存することができる。既知濃度のダイオキシン類混合溶液(DMSO溶液)を本願発明のキットを使用して上記方法でその濃度(例えばpg/ml)を定量した場合、これを通常フローで同じ方法で定量した場合と比較して、±50%、好ましくは±30%、より好ましくは±20%の差である。
【0025】
また別の態様において本願発明は、
細胞の再活性化を促す工程;
試料溶液を、再活性化した細胞を含むプレートに添加して、細胞に曝露する工程;および
外来遺伝子の基質溶液をプレートに添加して外来遺伝子の発現量を測定する工程;
を含む、本願発明のキットの使用法を提供する。
【0026】
細胞の活性化を促す方法は常套のものを採用し得るが、好ましくはCOガス雰囲気下に細胞を数時間、例えば1〜3時間、例えば1〜2時間置くことによって達成することができる。
【0027】
外来遺伝子の発現量を測定する方法は、外来遺伝子の性質に応じて当業者が通常採用し得る手段を用いることができる。例えば発現量を発光強度によって測定する場合、ルミノメーターを使用することができるが、より好ましい態様において、フォトンカウンターを使用することができる。
【0028】
ルミノメーターは発光量を測定するため通常のバイオアッセイにおいて広く使用されている測定機器であるが、極微弱な発光の場合には検出精度が得られないという課題があった。そこで本願発明者らはルミノメーターに代え、フォトンカウンターを使用することで極微弱な発光の場合であっても検出精度が得られることを見出し、しかもフォトンカウンターで検出した発光量が発光物質の濃度と極めて高い相関性を有することを見出した。これによって、環境から試料を採取した後、前処理を行うことなく、あるいは前処理を簡略化して、例えば試料をろ過するだけで、測定実施が可能となった。
【0029】
フォトンカウンターとは、測光法としてフォトンカウンティング方式を用いるあらゆる装置を意味する。光を検出するカメラ部分と測光を行う部分とが一体として設計されていても、別々の装置として設計されていてもよい。
【実施例】
【0030】
キットの製造および使用
1)プレート播種フロー:芳香族炭化水素受容体遺伝子と、4つのダイオキシン応答エレメント(DRE)を含む480bpフラグメントのマウスCYP1A1プロモーターを結合させたルシフェラーゼを導入した生細胞を、培養フラスコ(150cm)内でRPMI培地(8%ウシ胎児血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンin RPMI1640)でCOインキュベーター(37℃)下で培養する。コンフルエントになった状態で、7.5×105個/wellで96穴マイクロプレートに播種し、COインキュベーター(37℃)で一晩、前培養した。プレートをCOインキュベーターから取り出し、RPMI調整培地を100μl加えた。プレートシール(TR100−S Marsh(商標) BRAND)を貼り密着させ、プレートカバーを被せた。
2)ポータブルキットフロー: 1)の工程を、エストロゲン受容体β遺伝子、アンドロゲン受容体α遺伝子、アンドロゲン受容体β遺伝子、プロゲスチン受容体α遺伝子およびプロゲスチン受容体β遺伝子を導入した細胞の各々についても行い、各プレートをプレートケース(1400 CASE PERICAN(登録商標))に入れ、パージバルブを閉め、キットとした。常温で保存および運搬を行った。
3)プレート曝露フロー:プレートをプレートケースから取り出し、シーリングをはがし、COガスで再活性化(1〜2時間)を促した。被検液は、希釈段階にしたDMSO溶液(4μl)にRPMI培地(400μl)を加え調整した。標準試料溶液(TCDD)についても同様の操作を行い、被検試料溶液を調整した。被検試料溶液を2well(190μl/well)に分け、再活性化したプレートに入れた。さらに、COインキュベータ等にいれ、20〜24時間、細胞に曝露した。
4)プレート測定フロー:曝露後、培地を取り除き、ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社製)により誘導されたルシフェラーゼ活性(相対発光強度;RLU)をルミノメーター(Centro LB960;Berthold社製)で測定した。TCDD相当濃度は、得られたRLUからバックグラウンド(溶媒対照のRLU)を差し引いた。
【0031】
キットの精度プロファイル
調整した検出下限値算出用標準溶液をn=5で測定した検量線より定量し、測定量(毒性等量)の平均、標準偏差および変動係数(CV)を算出し、精度プロファイルを作図し、検出下限および定量範囲を図より読み取る。
分析値の変動係数(CV)を分析対象成分の濃度に対して図示した精度プロファイルと定義され、定量値の精度プロファイルのCVが30%を示す濃度を定量下限とする。CVが20%以下となる濃度範囲を定量範囲とし、最小濃度を定量下限値、最大濃度を定量上限とする。結果を下記表および図1に示す。
参考資料;ダイオキシン類に係る生物検定法マニュアル(排ガス、ばいじんおよび燃え殻)(環境省)平成18年3月
【表1】

【0032】
実測濃度による確認
ダイオキシン類混合溶液(DMSO溶液)及び排ガス、ばいじんおよび燃え殻の精製液(DMSO溶液)をポータブルプレートのフローに従ってn=5で定量し、測定量(毒性等量)及び通常フローでの数値「1」に対する比率を算出する。結果を下記表および図2に示す。
【表2】

【0033】
フォトンカウンターの使用
100nMの17α,20β−ジヒドロキシ−4−プレグネン−3−オン(DHP)で曝露したプロゲスチン受容体α遺伝子導入HEK293細胞の溶解物を、BSA細胞溶解バッファー(Promega)で1/10、1/50、1/250、1/1250および1/6250まで希釈し、各々について発光強度をフォトンカウンター(ARGUS−50/VIM、浜松ホトニクス)で測定した。結果を図3に示す。細胞溶液の希釈率の常用対数とフォトンカウンターで測定した発光強度の常用対数は直線の関係にあることが理解できる。
【0034】
また、10−2〜10−11Mのプロゲスチンで曝露したプロゲスチン受容体α遺伝子導入HEK293細胞の溶解物を、それぞれルミノメーター(Centro LB960、ベルトールド)およびフォトンカウンター(ARGUS−50/VIM、浜松ホトニクス)で測定した。結果を図4に示す。ルミノメーターでの測定結果は10−8M未満での検出精度が得られていないが、フォトンカウンターでは10−10〜10−11Mまで検出できた。また、検出可能濃度の最大値と最小値の差が、ルミノメーターの場合は7倍であるのに対して、フォトンカウンターでは82倍であり、フォトンカウンターのダイナミックレンジの広さが理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】キットの精度プロファイルを示す。■:通常1日、◇:キット1日、▲:キット5日、○:キット9日、□:キット14日、◆:キット14日。
【図2】キットの分析値を通常フローの場合と比較する。■:通常1日、◇:キット1日、△:キット5日、○:キット9日、□:キット14日、◆:キット14日。
【図3】フォトンカウンターを用いた連続希釈細胞溶解液の発光強度測定結果を示す。
【図4】プロゲスチン曝露細胞溶解液による、ルミノメーターとフォトンカウンターそれぞれの測定結果を示す。■:ルミノメーター、◆:フォトンカウンター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚類由来のエストロゲン受容体α、エストロゲン受容体β、アンドロゲン受容体α、アンドロゲン受容体β、プロゲスチン受容体αおよびプロゲスチン受容体β遺伝子をそれぞれ導入した細胞を用いて、各細胞についてレポータージーンアッセイを行うことを特徴とする、魚類に対する内分泌攪乱物質の測定方法。
【請求項2】
ホルモン受容体遺伝子発現ベクターと、当該ホルモンの標的となる遺伝子のプロモーターを結合させた外来遺伝子を導入した細胞;
培地;
前記細胞を播種するためのプレートおよびプレートカバー;
プレートをシーリングする手段;および
前記プレートを収納するためのケース;
を含む、内分泌攪乱物質の検出キット。
【請求項3】
さらに、外来遺伝子の発現を測定するための基質溶液を含む、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
ホルモンが、性ステロイドホルモンである、請求項2または3に記載のキット。
【請求項5】
性ステロイドホルモン受容体遺伝子が、魚類由来のエストロゲン受容体α、エストロゲン受容体β、アンドロゲン受容体α、アンドロゲン受容体β、プロゲスチン受容体αおよびプロゲスチン受容体β遺伝子である、魚類に対する内分泌攪乱物質を測定するための請求項4に記載のキット。
【請求項6】
外来遺伝子がルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼおよびβ−ガラクトシダーゼから選択される少なくとも1種由来の遺伝子である、請求項2〜5のいずれかに記載のキット。
【請求項7】
細胞の再活性化を促す工程;
試験溶液を、再活性化した細胞を含むプレートに添加して細胞に曝露する工程;および
外来遺伝子の基質溶液をプレートに添加して外来遺伝子の発現量を測定する工程;
を含む、請求項2〜6のいずれかに記載したキットの使用法。
【請求項8】
外来遺伝子の発現量の測定がフォトンカウンターによって行われる、請求項1または7に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−50203(P2009−50203A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219883(P2007−219883)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(591237331)株式会社日吉 (6)
【出願人】(503303466)学校法人関西文理総合学園 (26)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)
【Fターム(参考)】