説明

内在化機能を有する抗体の高処理スクリーニングの方法

【課題】細胞中に内在化されるリガンドを特定する方法を提供する。
【解決手段】脂質、前記脂質と結合した親水性ポリマー、および前記親水性ポリマーと結合した金属キレート基を含む金属キレート脂質組成物を提供する。該金属キレート脂質とリガンドを接触させることを含む、細胞にエフェクターを配送する方法において、前記金属キレート基は、エピトープタグ、及び前記金属キレート脂質と結合したエフェクターと、キレート結合を形成することができる。前記リガンドは前記エピトープタグを含み得、前記細胞は特異的に前記リガンドと結合し、場合によって前記リガンドを内在化し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンドと結合し、これを内在化する細胞を特定する方法に関する。さらに本発明は、リガンドを内在化させることができるレセプターを特定する方法およびリガンド内在化の調節物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最初のヒトゲノム配列決定プロジェクトの実質的な完了とともに、多様なDNA配列の生物学的機能の決定に多大な関心が向けられてきた。本研究(しばしば“ゲノム機能学”と称される)はゲノム分析の新しい局面の典型である。特に、ゲノム機能学は、ゲノム構造学によって提供される情報および試薬を使用することによって、遺伝子の機能を評価するために包括的な(遺伝子全体のまたはシステム全体の)実験的アプローチを開発および応用することに関連する。本研究は、典型的には、得られた結果の統計分析およびコンピュータ解析を伴う高処理または大規模実験方法を特徴とする。
【0003】
ゲノム機能学的アプローチにおける基本的戦略の1つは、生物学的研究の範囲を、単一遺伝子またはタンパク質を研究することから全ての遺伝子またはタンパク質を系統的態様で一度に研究することに拡張することである。コンピュータ生物学は、前記分野において重要で幅広い役割を果たすであろう。ゲノム構造学はデータ管理を特徴とするが、一方、ゲノム機能学は特に重要な情報を求めてデータセットを掘り出すことを特徴とする。ゲノム機能学は、配列と機能の間のギャップを急速に縮小し、生物学的システムの動態に対して新規な解釈を得るために、きわめて有望である。
【0004】
遺伝子の重要なクラスの1つには、細胞表面分子およびレセプターをコードするものが含まれる。レセプターは典型的にはリガンドと結合し、シグナルを細胞内に伝達する(シグナリング)。これにより細胞の成長、細胞の複製、細胞の死などを含む(ただしこれらに限定されない)多数の生物学的機能がもたらされる。他のレセプターは特定の分子の細胞外から細胞質への移動(エンドサイトーシスまたは内在化(internalization))を仲介する。エンドサイトーシスはまた、レセプターシグナリングを仲介する重要なメカニズムである。種々の細胞タイプが、定量的および定性的に異なる表面レセプターを有し、レセプター発現パターンは、細胞および/または組織の発育および/または分化、および/または疾病の発生および/または進行とともに劇的に変化するであろう。
【0005】
前記レセプターの特定および特異的なレセプターリガンドの開発は、レセプターの機能およびレセプター発現の時間的場所的パターンの決定に関する研究を可能にするであろう。例えば、前記のリガンドを用いて、薬剤曝露時または疾患の発生時における種々の細胞タイプのレセプター発現パターンを明らかにすることができる。さらに、細胞特異的レセプターリガンド、より好ましくは内在化機能を有する細胞に特異的なレセプターリガンドを用いて、例えば治療のために薬剤またはマーカーを細胞表面または細胞質内に誘導することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リガンドと結合し、これを内在化する細胞を特定する方法を提供する。さらに本発明は、リガンドを内在化させることができるレセプターを特定する方法およびリガンド内在化の調節物質をスクリーニングする方法を提供する。
ある実施態様において本発明は、細胞内に内在化されるリガンドを特定する方法を提供する。前記方法は以下の工程を含む。i)リガンドに非共有結合させたエフェクター(例えばレポーター)と、前記細胞とを接触させる工程;ii)前記リガンドから前記レポーターを分離し、さらに分離したレポーターを前記細胞の表面から取り除く工程;iii)レポーターが細胞内に存在する場合は、前記細胞内の前記レポーターを検出する工程。ここで細胞内のレポーターの存在は、リガンドが内在化機能を有するレセプターと結合し、内在化されたことを示す。ある実施態様では、前記接触工程は、エピトープタグを含むリガンドと細胞を接触させる工程、及び前記エピトープタグと結合する成分部分を含むレポーターと前記細胞を接触させる工程を含む。好ましい実施態様では、前記リガンドは、細胞表面レセプターと結合するリガンドである。好ましいリガンドには、ペプチド(例えばscFv、Fv、Fab、モノクローナル抗体、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子など)、核酸、炭水化物、糖類などが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいペプチドリガンドは、コンビネーション化学合成(combinatorial chemical synthesis)またはファージディスプレーライブラリーを用いて(例えば繊維状ファージを用いて)組換えによって生成される。
【0007】
ある種の好ましい実施態様では、前記エフェクター(例えばレポーター)は、エピトープタグ(例えばHis−タグ、Flag−タグ、HA−タグ、myc−タグ、DYKDDDDK(配列番号:1)エピトープなど)によってリガンドに非共有結合している。前記エフェクターがレポーターの場合、好ましいレポーターには、酵素、比色標識、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、リポソーム、または標識含有リポソームが含まれるが、これらに限定されない。ある種の特に好ましい実施態様では、前記エピトープタグはヘキサヒスチジン(His6)タグで、前記リポーターは、脂質またはリポソームに結合されてあるHis6タグと結合する試薬(例えばニトリロトリ酢酸(NTA))を含むリポソームである。ある種の特に好ましい実施態様では、前記脂質またはリポソームとの結合は典型的には金属キレート結合(例えばNi(2+)キレート結合)による。別の好ましい実施態様では、前記リガンドは抗体であり、前記エピトープタグは、プロテインAとの共有結合を介して前記抗体と結合される。
【0008】
本発明の方法で使用される好ましい細胞には、植物細胞、動物細胞および細菌細胞が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい細胞には哺乳類細胞、より好ましくは正常または病理学的ヒト細胞(例えば癌細胞)が含まれる。ある実施態様では、前記細胞は、1つまたは2つ以上のレセプターを過剰発現する細胞、および/または異種レセプターを発現または過剰発現する細胞である。
前記方法はさらに、前記細胞内に内在化されたリガンドを単離する工程を含む。ある実施態様では、前記“単離”工程は、細胞によって内在化されたリガンドのアミノ酸配列を決定する工程か、または前記リガンドをコードする核酸配列を決定する工程を含みうる。
【0009】
別の実施態様では、本発明はリガンドの内在化について細胞をスクリーニングする方法を提供する。前記方法は好ましくは下記工程を含む:i)内在化されることが判明しているリガンドと非共有結合させたレポーターと、細胞とを接触させる工程;ii)前記リガンドから前記レポーターを分離し、分離したレポーターを前記細胞表面から取り除く工程;iii)前記細胞内のレポーターの存在が、前記リガンドが前記細胞に内在化されたことを示す、前記レポーターが前記細胞内に存在する場合に前記細胞内のレポーターを検出する工程。もっとも一般的には、細胞内にリガンドが内在化されるということは、細胞がリガンドに対するレセプターを表出し、前記レセプターが内在化機能を有するレセプターであることを示している。前記方法はさらに、リガンドを内在化させた細胞からリガンドを内在化させていない細胞を単離する工程を含むことができる。
【0010】
特に好ましい実施態様では、リガンドは、リガンドライブラリーの構成要素(member)である。好ましいライブラリーは少なくとも1000、より好ましくは少なくとも10000、もっとも好ましくは少なくとも100000の異なる構成要素を含む。好ましいリガンドには、ペプチド(例えばscFv、Fv、Fab、モノクローナル抗体、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子など)、核酸、炭水化物、糖類などが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいペプチドリガンドは、コンビネーション化学合成またはファージディスプレーライブラリーを用いて(例えば繊維状ファージを用いて)遺伝子組換えによって生成される。
【0011】
ある好ましい実施態様では、エフェクター(例えばレポーター)は、エピトープタグ(例えばHis−タグ、Flag−タグ、HA−タグ、myc−タグ、DYKDDDDK(配列番号:1)エピトープなど)によってリガンドに非共有結合している。前記エフェクターがレポーターの場合、好ましいレポーターには、酵素、比色標識、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、リポソーム、または標識含有リポソームが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいある実施態様では、前記エピトープタグはヘキサヒスチジン(His6)タグで、前記リポーターは、脂質またはリポソームに結合されている、His6タグと結合する試薬(例えばニトリロトリ酢酸(NTA))を含むリポソームである。別の好ましい実施態様では、前記リガンドは抗体であり、前記エピトープタグは、プロテインAとの共有結合を介して前記抗体と結合される。特に好ましい細胞は茲に記載されている。
ある種の実施態様では、前記方法はさらに、前記細胞内に内在化されるリガンドを単離する工程を含む。前記リガンドの配列を決定するか、または前記リガンドをコードする核酸の配列を決定することができる。前記方法はさらに、再度内在化機能を有するレセプターに付せんを付ける(tag)ために、またはこれを単離するために細胞を標識リガンドと接触させることを含む。
【0012】
さらに別の実施態様では、本発明は内在化機能を有するレセプターを特定する方法を提供する。前記方法は下記工程を含む:i)リガンドに非共有結合させたレポーターと、細胞とを接触させる工程;ii)前記リガンドから前記レポーターを分離し、分離したレポーターを前記細胞表面から取り除く工程;iii)前記細胞内のレポーターの存在が、前記リガンドが内在化機能を有するレセプターと結合し、内在化されたことを示すことを特徴とする、前記レポーターが前記細胞内に存在する場合に前記細胞内のレポーターを検出する工程;iv)レポーターと結合した前記細胞内リガンドを特定するか、または回収する工程;及びv)前記リガンドと結合したレセプターを特定する工程。特に好ましい実施態様では、前記レセプターは、アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫組織化学を含む方法(ただしこれらに限定されない)によって特定される。前記方法は、さらに、前記内在化機能を有するレセプターの認証特性(identity)を内在化機能を有するレセプターのデータベースに入力することを含む。
【0013】
さらに本発明は、細胞内へのリガンドの内在化を調節する能力について薬剤をスクリーニングする方法を提供する。前記方法は好ましくは下記工程を含む:i)前記細胞によって内在化されることが判明しているリガンドに非共有結合させたレポーターと、細胞とを接触させる工程;ii)細胞をテスト薬剤と接触させる工程;iii)リガンドからレポーターを分離し、分離したレポーターを細胞表面から取り除く工程;及びiv)低濃度の前記テスト薬剤と接触したときに前記細胞によって内在化されるレポーターの量と、前記テスト薬剤と接触した細胞によって内在化されたレポーターの量との間の差異が、前記テスト薬剤が前記細胞による前記リガンドの内在化を調節することを示すことを特徴とする、前記レポーターが細胞内に存在する場合に前記細胞内のレポーターを検出する工程。好ましい実施態様では、前記低濃度のテスト薬剤とは、テスト薬剤が存在しないものである。好ましいテスト薬剤には有機小分子が含まれる。ある種の実施態様では、前記テスト薬剤は抗体またはペプチドを含むが、一方、ある実施態様では前記テスト薬剤は核酸、抗体またはペプチドを含まない。
【0014】
また別の実施態様では、前記方法は、細胞を第一の濃度のテスト薬剤と接触させる工程;ii)前記細胞に内在化することが判明しているリガンドに非共有結合させたレポーターと、細胞とを接触させる工程;iii)リガンドからレポーターを分離し、分離したレポーターを細胞表面から取り除く工程;iv)細胞内のレポーターを検出して、細胞によって内在化されたレポーター/リガンド構築物の量を表示する第一の測定値を得る工程;v)前記細胞を、前記第一の濃度よりも高い第二の濃度の前記薬剤と接触させる工程;vi)工程ii)〜iv)を繰り返して、第二のより高濃度の薬剤による影響を受けた細胞によって内在化されたレポーター/リガンド構築物の量を表示する第二の測定値を得る工程;及びvii)前記第一の測定値と前記第二の測定値が異なる場合は、前記薬剤が前記細胞内で前記リガンドの内在化を調節しているとする、前記第一の測定値と前記第二の測定値を比較する工程。
【0015】
ある種の好ましい実施態様では、第一の低濃度テスト薬剤の濃度はゼロである(すなわちテスト薬剤は存在しない)。好ましいテスト薬剤には有機小分子が含まれる。ある実施態様では、テスト薬剤は抗体またはペプチドを含むが、一方、ある実施態様では前記テスト薬剤は核酸、抗体またはペプチドを含まない。
さらに別の実施態様では、本発明は、本発明の方法(例えば内在化レセプターについて細胞をスクリーニングする方法)で使用される構築物を提供する。好ましい構築物は、エフェクター(例えばレポーター)とエピトープタグを介して非共有結合したリガンドを含む。好ましい構築物では、前記リガンドには、ペプチド(例えばscFv、Fv、Fab、モノクローナル抗体、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子など)、核酸、炭水化物、糖類などが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいペプチドリガンドは、コンビネーション化学合成によってまたはファージディスプレーライブラリーを用いて(例えば繊維状ファージを用いて)組換えによって生成される。
【0016】
ある好ましい構築物では、エフェクター(例えばレポーター)は、エピトープタグ(例えばHis−タグ、Flag−タグ、HA−タグ、myc−タグ、DYKDDDDK(配列番号:1)エピトープなど)によってリガンドに非共有結合している。エフェクターがレポーターの場合、好ましいレポーターには、酵素、比色標識、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、リポソーム、または標識含有リポソームが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいある種の実施態様では、前記エピトープタグはヘキサヒスチジン(His6)タグで、前記リポーターは、脂質またはリポソームに結合されている、His6タグと結合する試薬(例えばニトリロトリ酢酸(NTA))を含むリポソームである。別の好ましい実施態様では、前記リガンドは抗体であり、前記エピトープタグは、プロテインAとの共有結合を介して前記抗体と結合される。ある好ましい実施態様では、前記構築物はリガンドに対して多価である。
【0017】
本発明はまた、本発明の方法で使用されるリガンドライブラリーを提供する。好ましいライブラリーは、本明細書に記載するような複数の構築物を含み、前記ライブラリーの構成要素は各々リガンドおよびエピトープタグを含み、前記リガンドはライブラリーの構成要素間で多様な変化を有し、さらに前記エピトープタグは前記ライブラリーの構成要素間で一定である。前記ライブラリー構成要素のリガンド/エフェクター(例えばレポーター)成分は前もって組み立てられるか、またはそれらが(例えば細胞の存在下で)一緒に結合されるときに組み立てられる。好ましいライブラリーは少なくとも105の種々のリガンドを含む。
【0018】
さらに別の実施態様では、本発明は、内在化機能を有するレセプターについて細胞をスクリーニングするキットを提供する。好ましいキットは本明細書に記載したような構築物または構築物ライブラリーを含む。好ましいキットはさらに、リガンドを内在化させる細胞を特定する目的、または細胞によって内在化されたリガンドを特定する目的で前記ライブラリーを使用することについて説明する指示物をさらに含む。
さらにまた別の実施態様では、本発明は、細胞によるリガンドの結合および内在化を検出する方法を提供する。前記方法は下記工程を含む:i)リガンドに非共有結合させたエフェクター(例えばレポーター)と、細胞とを接触させる工程;ii)細胞と結合しないエフェクター部分を取り除く工程;iii)細胞表面と結合し前記細胞によって内在化されたリガンドの総量を示す第一の読みを得るために、細胞と結合したレポーターを検出する工程;iv)前記レポーターをリガンドから分離し、分離したレポーターを細胞表面から除去する工程;v)内在化されたリガンド量を示す第二の読みを得るために、細胞に残存するレポーターを検出する工程;及びvi)細胞表面に結合しているリガンド量を示す差を得るために、第二の読みを第一の読みから差し引く工程。いくつかの事例では、前記接触工程の後で、例えば細胞の温度を低下させる(典型的には4℃)ことによって、または細胞を有効量の代謝阻害剤(例えばアンヒドログルコースまたはアジ化ナトリウム)で処理することによって、内在化プロセスの進行を停止させることが有利である。
【0019】
ある種の実施態様では、接触工程は、エピトープタグを含むリガンドと細胞を接触させ、さらに細胞をエピトープタグと結合する成分部分を含むレポーターと接触させることを含む。好ましい実施態様では、前記リガンドは、細胞表面レセプターと結合するリガンドである。好ましいリガンドには、ペプチド(例えばscFv、Fv、Fab、モノクローナル抗体、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子など)、核酸、炭水化物、糖類などが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいペプチドリガンドは、コンビネーション化学合成またはファージディスプレーライブラリーを用いて(例えば繊維状ファージを用いて)遺伝子組換えによって生成される。
【0020】
ある種の好ましい実施態様では、エフェクター(例えばレポーター)は、エピトープタグ(例えばHis−タグ、Flag−タグ、HA−タグ、myc−タグ、DYKDDDDK(配列番号:1)エピトープなど)によってリガンドに非共有結合される。前記エフェクターがレポーターの場合、好ましいレポーターには、酵素、比色標識、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、リポソーム、または標識含有リポソームが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい実施態様の1つでは、前記エピトープタグはヘキサヒスチジン(His6)タグで、前記リポーターは、例えば金属キレート結合(例えばNi(+2)キレート結合)を介して脂質またはリポソームに結合されているHis6タグ(例えばニトリロトリ酢酸(NTA))と結合する試薬を含むリポソームである。別の好ましい実施態様では、前記リガンドは抗体であり、前記エピトープタグは、プロテインAまたはプロテインGとの共有結合を介して前記抗体と結合される。
【0021】
本発明の方法で使用される好ましい細胞には、植物細胞、動物細胞および細菌細胞が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましい細胞には哺乳類細胞、より好ましくは正常または病理学的ヒト細胞(例えば癌細胞)が含まれる。ある種の実施態様では、前記細胞は、1つまたは2つ以上のレセプターを過剰発現する細胞、および/または異種レセプターを発現または過剰発現する細胞である。
本発明はまた、ステロールを含み、エピトープタグ(好ましくはヘキサヒスチジンタグ)と金属キレート結合を形成することができる金属キレート脂質を提供する。より好ましくは、コレステロール共役NTA金属錯体を含む金属キレート脂質が提供される。
【0022】
本発明はまた、脂質、親水性ポリマーおよび前記親水性ポリマーと結合したキレート基を含む金属キレート脂質を提供する。好ましくは、本発明は、末端に結合した金属キレート基を含むポリ(エチレングリコール)−脂質共役物を提供する。より好ましくは、ポリ(エチレングリコール)−脂質と、エピトープタグ(例えばオリゴヒスチジンタグ)とのキレート結合を形成することができる末端に付加された金属キレート基とを含む、前記共役物が提供される。特定の実施態様では、ポリ(エチレングリコール)−脂質はポリ(エチレングリコール)−共役DSPEであり、キレート基はNTAである。
【0023】
本発明はまた、金属キレート脂質を含む組成物を提供し、ここで該金属キレート脂質は、脂質、親水性ポリマー、および、前記親水性ポリマーと結合されており、エピトープタグとキレート結合を形成することができるキレート基を含む。本発明はさらに前記細胞と、(i)金属キレート脂質及び(ii)リガンドを接触させることを含む、細胞にエフェクターを配送する方法であって、前記金属キレート脂質(i)が、脂質、親水性ポリマー、およびキレート基を含有し、ここで前記キレート基は、前記親水性ポリマーと結合しており、かつ、エピトープタグ、及び前記金属キレート脂質と結合したエフェクターと、キレート結合を形成することができることを特徴とし、前記リガンド(ii)が前記エピトープタグを含み、ここで前記細胞は特異的に前記リガンドと結合し、場合によって前記リガンドを内在化することを特徴とする、前記方法を提供する。前記組成物は、好ましくはリポソームを含み、前記リポソームは前記金属キレート脂質および前記エフェクターを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
定義
“ポリペプチド”、“オリゴペプチド”、“ペプチド”および“タンパク質”という用語は、本明細書では互換的に用いられアミノ酸残基ポリマーを指す。前記用語は、1つまたは2つ以上のアミノ酸残基が天然に存在するアミノ酸の対応する人工的類似体であるアミノ酸ポリマーにも、天然に存在するアミノ酸ポリマーと同様に適用される。前記用語はまた、ポリペプチドを構成するアミノ酸を連結する従来のペプチド結合に関する変種も含む。タンパク質にはまた糖タンパク質(例えばヒスチジン富裕糖タンパク質(HRG)、ルイスY抗原(LeY)など)も含まれる。
【0025】
“核酸”または“オリゴヌクレオチド”という用語は、本明細書では共有結合によって一緒に連結された少なくとも2つのヌクレオチドを指す。本発明の核酸は一本鎖または二本鎖で、一般的にはホスホジエステル結合を含むが、いくつかの事例では下記に概略するように、また別の、例えば以下の骨格をもつ核酸類似体が含まれる:ホスホルアミド(Beaucage et al.(1993) Tetrahedron 49(10):1925およびその中の参考文献;Letsinger (1970) J. Org. Chem. 35:3800; Sprinzl et al.(1977) Eur. J. Biochem. 81:579; Letsinger et al.(1986) Nucl. Acids Res. 14:3487; Sawai et al.(1984) Chem. Lett. 805; Letsinger et al.(1988) J. Am. Chem. Soc. 110:4470; Pauwels et al.(1986) Chemica Scripta 26:1419)、ホスホロチオエート(Mag et al.(1991) Nuvleic Acids Res. 19:1437; 米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briu et al.(1989) J. Am. Chem. Soc. 111:2321)、o−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein, "Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach", Oxford University Press)、並びにペプチド核酸骨格および結合(Egholm (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:1895; Meier et al.(1992) Chem. Int. Ed. Engl. 31:1008; Nielsen (1993) Nature, 365:566; Carlsson et al.(1996) Nature 380:207)。他の類似体核酸には以下が含まれる:陽イオン性骨格をもつもの(Dency et al.(1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6097)、非イオン性骨格をもつもの(米国特許第5,386,023号; 同5,637,684号; 同5,602,240号; 同5,216,141号; 同4,469,863号; Letsinger et al.(1988) J. Am. Chem. Soc. 110:4470; Letsinger et al.(1994) Nucleoside & Nucleotide 13:1597; ACS Symposium Series 580, "Carbohydrate Modifications in Antisens Research"(Chapter 2 and 3), Ed. Y.S. Sanghui and P. Dan Cook; Mesmaeker et al.(1994) Bioorganic & Medicinal Chem. Leet. 4:395; Jeffs et al.(1994) J. Biomolecular NMR 34:17; Tetrahedron Lett. 37:743(1996))、および非リボース骨格(以下の文献に記載されたものを含む:米国特許第5,235,033号および同5,034,506号並びにACS Symposium Series 580, "Carbohydrate Modifications in Antisens Research"(Chapter 6 and 7), Ed. Y.S. Sanghui and P. Dan Cook)。1つまたは2つ以上の炭素環式糖を含む核酸もまた前記核酸の定義内に含まれる(例えば以下の文献を参照されたい:Jenkins et al.(1995) Chem. Soc. Rev. pp169-176)。いくつかの核酸類似体が文献(C. Rawls & E. News June 2, 1997 pages 35)に記載されている。リボース−リン酸骨格の上述の改変は、また別の成分部分(例えば標識)の付加を促進するために、またはそのような分子の生理学的環境における安定性および半減期を高めるために実施することができる。
【0026】
本明細書で用いられるように、“残基”という用語は、天然、合成または改変アミノ酸を指す。
本明細書で用いられるように、“抗体”という用語は、実質的に免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメントによってコードされた1つまたは2つ以上のポリペプチドから成る。認定されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子が、多数の免疫グロブリンの可変領域遺伝子とともに含まれる。軽鎖はカッパまたはラムダのどちらかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類され、前記は順次IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE免疫グロブリンクラスをそれぞれ規定する。
典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造ユニットは四量体を含むことが判明している。各四量体は同一な2対のポリペプチド鎖で構成され、各対は1つの“軽”鎖(約25kD)および1つの“重”鎖(約50−70kD)を有する。各鎖のN−末端は、約100から110またはそれ以上のアミノ酸であって主として抗原認識に必要な可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれ前記の軽鎖および重鎖を指す。
【0027】
抗体は完全な免疫グロブリンとして存在するか、または種々のペプチダーゼの消化によって生じた性状が明らかな多数のフラグメントとして存在する。したがって例えば、ペプシンは、ヒンジ領域内のジスルフィド結合の下部で抗体を消化して、F(ab)´2を生じる。F(ab)´2は、軽鎖がVH−CH1とジスルフィド結合によって結合されたFabの二量体である。F(ab)´2は穏やかな条件下で還元されてヒンジ領域内のジスルフィド結合が破壊され、それによって(Fab)´2二量体はFab´単量体に変換される。前記Fab´単量体は本質的にはFabでヒンジ領域の一部分を有する(他の抗体フラグメントについてのさらに詳細な記述は以下の文献を参照されたい:"Fundamental Immunology, W.E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1993))。
【0028】
種々の抗体フラグメントが完全な抗体の消化という観点から定義されるが、前記のFab´フラグメントは、化学的にまたはリコンビナントDNA手法を用いてde novoに合成できることは当業者には理解されよう。したがって、本明細書で用いられるように抗体という用語はまた、完全な抗体の改変によって製造されるか、またはリコンビナントDNA手法を用いてde novoに合成された抗体フラ
グメントも含む。好ましい抗体には、単鎖抗体(単一のポリペプチド鎖として存在する抗体)、より好ましくは単鎖Fv抗体(sFvまたはscFv)が含まれる。後者では、可変重鎖および可変軽鎖が一緒に(直接またはペプチドリンカーを介して)結合され連続したポリペプチドが生成されている。前記単鎖Fv抗体は共有結合によって連結されたVH−VL異種二量体であり、VHおよびVLコード配列(直接連結されてあるか、またはペプチドコードリンカーによって連結されてある)を含む核酸から発現させることができる(Huston et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883)。VHおよびVLは単鎖ポリペプチドとして互いに連結されているが、VHドメインおよびVLドメインは非共有結合によって結合されてある。繊維状ファージの表面で発現された最初の機能性抗体分子は単鎖Fv(scFv)であったが、また別の発現手法も成功した。例えば、Fab分子は、鎖の一方(重鎖または軽鎖)がg3キャプシドタンパク質と融合され、相補鎖が可溶性分子としてペリプラズムに搬出される場合、ファージ上でディスプレーさせることができる。前記2つの鎖は同じレプリコンでコードされても、または異なるレプリコンでコードされてもよいが、重要な点は、各Fab分子内の前記2つの抗体鎖は翻訳後に合体し、二量体は、前記鎖の一方と例えばg3pとの結合を介してファージ粒子内に取り込まれるということである(例えば米国特許第5,733,743号を参照されたい)。前記scFv抗体および他の多くの構造物が当業者に知られているが、後者は、天然の状態では凝集しているが、化学的に分離させた抗体のV領域由来軽鎖および重鎖ポリペプチドを、抗原結合部位の構造と実質的に同様な三次元構造に折り畳まれた分子に変換されてある(例えば米国特許第5,091,513号、第5,132,405号および第4,956,778号を参照されたい)。特に好ましい抗体には、ファージ上でディスプレーされた全てが含まれるべきである(例えば、scFv、Fabおよびジスルフィド結合により連結されたFvである(Reiter et al.(1995) Protein Eng. 8:1323-1331))。
【0029】
本明細書で用いられるように、“特異的に結合する”とは、生物学的分子(タンパク質、核酸、抗体など)についていう場合は、異種分子集団(例えばタンパク質および他の生物学的物質)内の生物学的分子の存在を決定することができる結合反応を指す。したがって、指定の条件下で(例えば抗体の場合のイムノアッセイ条件または核酸の場合のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で)、特定のリガンドまたは抗体はその固有の“標的”分子と結合し、サンプルに存在する他の分子と顕著な量では結合しない。
“リガンド”という用語は、別の分子と特異的に結合および/または搬送されるか、または可能な分子を指す。好ましいリガンドには、ペプチド、核酸、炭水化物、糖、ホルモンなどが含まれるが、ただしこれらに限定されない。リガンドとリガンドが結合する分子とは結合対を形成し、前記結合対において各構成要素は他方の構成要素に対してリガンドとみなされる。結合対の明白な例には、抗体/抗原、抗体/ハプテン、酵素/基質、酵素/インヒビター、酵素/補助因子、結合タンパク質/基質、担体タンパク質/基質、トランスポータータンパク質/基質、レクチン/炭水化物、レセプター/ホルモン、レセプター/調節物質、ポリヌクレオチドの相補鎖、タンパク質/核酸リプレッサー(インダクター)、レセプター/ウイルスなどが含まれる。
【0030】
本明細書における“ナノ粒子”とは、エフェクター(例えば検出可能なレベルの、薬剤、サイトトキシン、等)と複合可能またはエフェクターを含有可能な“担体“を指す。好ましいナノ粒子はリガンドとの(直接またはリンカーを介した)非共有結合または切断可能な共有結合を備える。
【0031】
“エフェクター”とは、任意の分子または分子の組合せであって、その活性を細胞内に内在化させることが所望されるものを指す。エフェクターには標識、サイトカイン、酵素、増殖因子、転写因子、薬などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“レポーター”とは、検出可能なシグナルを提供するエフェクターである(例えば検出可能な標識である)。ある種の実施態様では、前記レポーターは、それ自体は検出可能なシグナルを提供する必要はないが、その後すぐに検出可能な標識と結合することができる成分部分を単に提供するだけでよい。
“調節する”という用語は、リガンドの内在化の調節に関して用いられるときは、内在化されるリガンドの総量、および/または内在化速度のアッピレギュレーションまたはダウンレギュレーションを指す。ある種の実施態様では、特にリガンドの流出がアッセイされないか、または制御されない場合には、調節はリガンドの流出速度を変化させることによって発生し、細胞によるリガンド取込みの正味速度または正味量に影響を与えることができる。
【0032】
“テスト薬剤”という用語は、所望の活性(例えば細胞によるリガンドの内在化を調節する能力または変化させる能力)についてスクリーニングされるべき任意の薬剤を指す。“テスト組成物”は、場合によって適切な担体中の任意の分子または分子混合物であろう。“テスト細胞”という用語は、本発明の方法が適用される任意の細胞を指す。
“有機小分子”という用語は、一般的に製薬で用いられる有機分子に匹敵するサイズを有する分子を指す。前記用語では生物学的巨大分子(例えばタンパク質、核酸など)は除外される。好ましい有機小分子のサイズは約5000Daまで、より好ましくは2000Daまで、もっとも好ましくは約1000Daまでの範囲である。
【0033】
“検出する”という用語は検出または定量を意味する。
“キレート結合”という用語は、エフェクターと電子対ドナーとの間の結合であって、前記電子対ドナーと金属イオンとの間で誘引力を生じる、前記電子対ドナーと前記金属イオンの配位部位との間の相互作用を伴うものを指す。
“リポソーム”という用語は、両親媒性脂質で構成された自己封入層(self-enclosed layer)を含むナノ粒子を指す。典型的には、前記の層は、疎水性部分および親水性部分を含む分子によって形成された二重層で、疎水性部分は水性媒体中で結合して前記層の内側部分を形成し、一方、親水性部分は媒体と接触状態にある。前記層は内部を取囲んでこれを封入し、前記内部は、全体的にまたは部分的に水相、固体、ゲル、気相または非水性液を含むことができる。エフェクター、例えばレポーターはリポソームの前記内部、脂質層内に含まれているか、または前記脂質層の外側表面に結合されてあってもよい。
【0034】
本発明は、細胞内に内在化されるリガンドを特定する方法、またはリガンドを細胞内に内在化させることができる内在化機能を有するレセプターを特定する方法を提供する。前記方法は、リガンドの精製を必要とすることなく、エフェクター(例えばレポーター分子など)を含有するナノ粒子に非共有結合的に(例えばエピトープタグを介して)リガンドを結合させることを含む。精製を必要としないので、ナノ粒子に結合させたリガンドにテスト細胞を曝露する前でも後でも、細胞結合および内在化を高処理態様で容易にアッセイすることができる。
【0035】
一般的には、前記方法は、リガンド(例えばコンビナトリアルライブラリーで生成されたリガンド)と非共有結合させたエフェクター(例えばレポーター)を提供することを必要とする。前記エフェクター/リガンドを、“テスト”細胞“(例えばリガンドを内在化させる能力についてアッセイされるべき細胞)と接触させる。エフェクター/レポーターを前記リガンドから分離し、分離したレポーターを前記細胞の表面から除去する。好ましい実施態様では、前記レポーター/エフェクターは前記細胞内で検出され、前記レポーター/エフェクターが細胞内に存在するということは、前記リガンドが内在化されたことを示す。より一般的には、リガンドの内在化は、前記細胞が、前記リガンドと結合する内在化機能を有するレセプターをディスプレーしていることを意味する。前記方法はさらに、例えば診断または治療を目的として、リガンドを内在化させた細胞を特定および/または単離することを含むことができる。この場合、前記細胞は、患者の組織標本または体液標本、例えば血液、尿、唾液または組織生検にそのような細胞が存在するか否かを決定するための病理学的細胞(例えば癌細胞)である。別の例では、DNAのトランスフェクションの結果としてその表面に内在化機能を有するエピトープを発現する、遺伝子工学により操作された細胞が検出および単離されるであろう。表面に結合したエフェクターは、細胞の完全性を保護する細胞保全条件下で分離され除去されるので、単離された細胞の維持および増殖が可能で、安定なトランスフェクタントの有用なクローンを得ることができる。
【0036】
別の実施態様では、本発明は、内在化機能を有するレセプターを特定する方法を提供する。好ましい実施態様では、前記方法は、内在化されたリガンドを例えば上記で述べた方法にしたがって特定することを必要とする。前記内在化されたリガンドを細胞から回収および/または特定する。続いて、前記回収および/または特定したリガンドを用いて、前記リガンドを内在化させたレセプターを、例えばin situで標識するか、またはアフィニティー精製することによって特定することができる。
さらに別の実施態様では、本発明の方法を用いて、リガンドを内在化させる細胞の能力を調節する薬剤をスクリーニングすることができる。好ましい実施態様では、前記方法は、本明細書に記載するようにリガンドの内在化についてスクリーニングすることを必要とする。この場合、細胞をエフェクター/リガンド構築物と接触させる前に、または接触させている間に、それら細胞をスクリーニングされるべき薬剤と接触させる。例えばテスト薬剤を低濃度で含むか、またはテスト薬剤を含まない陰性コントロールと比較したとき、テスト薬剤と接触させた細胞によるリガンド内在化の差異は、前記テスト薬剤が問題のリガンドの内在化を調節する(例えば増加または減少させる)ことを示す。
【0037】
本発明はまた、細胞によるリガンドの結合および内在化を検出する方法を提供する。前記方法は以下のi)からvi)の工程を含む:i)リガンドと非共有結合させたエフェクター(例えばレポーター)と細胞を接触させ;ii)細胞と結合していないエフェクターの部分を取り除き;iii)細胞と結合したレポーターを検出し、細胞表面と結合し前記細胞によって内在化されたリガンドの総量を示す第一の測定値を得て;iv)前記レポーターをリガンドから分離し、分離したレポーターを細胞表面から除去し;v)細胞内に残存するレポーターを検出し、内在化されたリガンド量を示す第二の測定値を得て;vi)第二の測定値を第一の測定値から差し引き、細胞表面に結合しているリガンド量を示す差を得る。
【0038】
リガンドに非共有結合したエフェクターの提供
好ましい実施態様では、本発明の方法は、リガンドに非共有結合させた(典型的には“ナノ粒子”と複合体を形成させるか、またはナノ粒子内に局在化させる)エフェクターを利用する。ある種の実施態様では、エフェクターは切断可能な共有結合によってリガンドと結合させることができる。
エフェクターと共役させるためのリガンド
実質的にいずれのリガンドも本発明の方法で使用するために適している。特に好ましい実施態様では、本発明の方法はペプチドを利用するが、一方、核酸、糖、種々の炭水化物、脂質および任意の有機分子をリガンドとして用いることが可能である。
【0039】
ある種の実施態様では、単リガンドを用いて、リガンドを内在化させることができる細胞および/またはレセプターを特定することができる。他の実施態様では、マルチリガンドを用いて、内在化機能を有するレセプターおよび/または特定の細胞によって内在化されるリガンドを特定することができる。特に好ましい実施態様では、前記リガンドは、多数の異なるリガンドを含むライブラリー(時にコンビナトリアルライブラリー(combinatorial libraries)と称される)の成分として提供される。多数の異なるリガンドを含む大きなリガンドライブラリーを使用することによって、特定の細胞によって内在化されるリガンドを特定できる可能性が高まる。
【0040】
好ましいライブラリーは、少なくとも2個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも10個、もっとも好ましくは少なくとも100個、または少なくとも1000個の異なるリガンドを含む。さらに大きなライブラリーも可能であり、しばしば好ましい。そのような大きなライブラリーは少なくとも10000個の異なるリガンド、好ましくは少なくとも100000個の異なるリガンド、または少なくとも約1000000個もしくはそれ以上のリガンドすら含む。
コンビネーションペプチドライブラリーを製造する方法は当業者には周知である。前記ペプチドライブラリーは化学的に合成するか、または核酸発現ライブラリーによって製造することができる。コンビナトリアルライブラリーの構築における最初の研究は化学的なペプチド合成を中心とした(Furka et al.(1991) Int. J. Peptide Protein Res. 37:487-493; Houghton et al.(1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:5131-5135; Geysen et al.(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002; Fodor et al.(1991) Science 251:767)。
【0041】
しかしながら、リコンビナントDNA技術を用いてペプチドライブラリーを作製する方法が極めて一般的になりつつある。したがって、例えばファージディスプレーライブラリーなどの使用によって、単鎖抗体ライブラリーまたは他のペプチドリガンドライブラリーの作製が可能である。前記のような大きなライブラリーを発現させるために、ポリペプチドまたは抗体フラグメント遺伝子がファージの表面タンパク質(pIII)をコードする遺伝子に挿入され、ポリペプチド−pIII融合タンパク質が前記ファージの表面でディスプレーされる(McCafferty et al.(1990) Nature, 348:552-554; Hoogenboom et al.(1991) Nucleic Acids Res. 19:4133-4137)。前記遺伝子は、pIIIタンパク質から所望のように前記ペプチドを分離することを可能にする酵素切断部位を含むことができる。
【0042】
タンパク質をコードする核酸は1つまたは2つ以上の領域で高度な縮退を有し、それによって文字通り数千のペプチドライブラリーを提供することができる(例えば米国特許第5,198,346号、第5,096,815号、第4,946,778号などを参照されたい)。100000個または1000000個すら越える異なる構成要素を含むライブラリーが構築された(例えば以下の文献を参照されたい:Yang & Craik (1998) J. Mol. Biol., 279:1001-1011)。
ファージディスプレー法はペプチドライブラリーの唯一の作製方法ではない。ファージ以外のベクターを用いて大きなペプチドライブラリーを作製することが可能である。
【0043】
ある種の実施態様では、本発明で利用されるリガンドは“ランダムに”作製されるが、別の実施態様ではリガンドはペプチド“リード”の周辺に多様性を構築することを含むことができる。このアプローチでは、特定のペプチド配列(リード)から開始される。前記リードは、上記で述べたような他のランダムペプチドアプローチによって選択されたもの(例えばファージアプローチによるもの)であってもよい。続いて、前記リードペプチドのコード配列をベースにしたオリゴヌクレオチド群をin vitro(例えばDNA自動合成装置により)で合成する。前記オリゴヌクレオチド群の各構成要素はオリジナル配列から一定の度合いで変化する。リードの供給源には以下が含まれる:(1)例えばファージディスプレーライブラリーで作製された、準ランダムペプチド;(2)天然リガンド遺伝子に由来する小型ペプチドをコードするDNA;(3)多様性を導入するために小型ペプチドコードDNAフラグメントをシャフリングしたもの(例えば米国特許第6,132,970号、第6,117,679号、第6,096,548号を参照されたい);(4)ペプチド多様性の細胞間生成及び機能しうる転写トランスアクチベーターの再構築を通じたペプチド−タンパク質相互作用の検出に関する、他のペプチド多様性及び特徴の供給源に由来するペプチドリード(例えば以下を参照されたい:Field & Song, (1989) Nature 340(6230):245-246);および(6)構造的に拘束されている特定分子の骨格の周囲に構築された多様なペプチド(例えば以下の文献を参照されたい:Yang & Craik (1998) J. Mol. Biol., 279:1001-1011)。
【0044】
選択したランダムペプチドベクターを多様化させるためのさらに別のアプローチは、回収ベクタープールまたはサブセットの突然変異誘発を必要とする。スクリーニングによって特定した、ベクターで形質転換したリコンビナントホスト細胞をプールし単離する。細胞を例えば亜硝酸、ギ酸、ヒドラジンで処理することによって、またはミューテーター株(例えばmutD5)(例えば以下の文献を参照されたい:Schaaper (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:8126-8130)を使用することによって、ベクターDNAまたはベクターDNAの一部分に突然変異を誘発する。前記の処置によって多様な変異がベクターDNAに生じる。前記可変性ペプチドをコードする配列を含むセグメントを、場合によって前記可変性領域に接する部位に特異的な制限ヌクレアーゼで切断して単離し、続いて無傷のベクターDNAで再クローニングすることができる。また別には、前記のランダムペプチドコード配列を再クローニングすることなく前記突然変異誘発ベクターを用いてもよい。
【0045】
さらにまた、低ストリンジェント条件下でポリメラーゼ連鎖反応を用い、選択したペプチドのコード配列に誤ったヌクレオチド変化を取り込ませることによって、選択ペプチドを多様化させることができる(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);米国特許第4,683,202号、第4,683,195号および第4,965,188号を参照されたい)。文献(Leung et al.(1989) Technique 1:11-15)に記載されたプロトコルは、ヌクレオチド比率を変更し、さらにマンガンを添加して変異頻度を顕著に高めている。
【0046】
さらにまた、強力な突然変異誘発を用い、(リードとはほとんどまたは全く相違をもたないペプチドを生成するとともに)前記リードとは極めて多数の相違を有する多数のペプチドを生成することができる。別のアプローチでは、ペプチド内のただ1つのアミノ酸置換が所望され、その目的は、結合を失わせるかまたは顕著に結合を改善する多数の単一アミノ酸変化を見つけることである。例えば、あるアプローチは4つのヌクレオチド混合物を合成することを含む。前記混合物の各々は、4つのヌクレオチドの1つを85%で含み、他の3つのヌクレオチドはそれぞれ5%で含む。したがって、固相化学合成時に各位置で“正確な”ヌクレオチドが取り込まれる確率は85%で、他の3つのヌクレオチドが取り込まれる確率は15%(各々については5%の確率)である。したがって、平均すれば100塩基の長さのオリゴヌクレオチドを合成する場合、平均的分子でヌクレオチド配置の85%が正確で(すなわちリード配列とマッチし)、配置の15%が、オリジナル配列と比較して不正確なヌクレオチドを取り込んでいるであろう。選択した不正確取込み基準に対応して、生成された種々のオリゴヌクレオチド混合物は、例えば97%1%1%1%不正確取込み様式に従うことによって出発コア配列に極めて類似し、また例えば55%15%15%15%不正確取込み様式に従うことによってリード配列から平均して顕著に異なるであろう。
【0047】
上記に述べたアプローチは単なる例示である。他のペプチドライブラリーの作製も当業者にはよく知られている(例えば以下の文献を参照されたい:5,010,175; Furka (1991) Int. J. Pept. Prot. Res., 37:487-493; Houghton et al.(1991) Nature 354:84-88など)。
本発明の方法で使用されるリガンドはペプチドリガンドに限定されない。エフェクター/レポーターと非共有結合することができるかぎり、実質的にはいずれのリガンドも用いることができる。さらにまた、リガンドが特定のエフェクター/レポーターと非共有結合により結合することができるように、例えば特定のペプチドエピトープ用いてリガンドを誘導することができる。適切な非ペプチドリガンドには、核酸(RNAもしくはDNAまたはその類似体)、糖、炭水化物、脂質、小型の有機分子などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0048】
コンビネーション化学合成ライブラリーの範囲はペプチド合成以外にも拡張されてきた。ポリカルバメートおよびN−置換グリシンライブラリーが合成され、構造的にペプチドに類似するが、強力なタンパク分解耐性、吸収および薬理学的動態特性を有する化学物質を含むライブラリーが作製された(Cho et al. (1993) Science 261:1303-1305; Simon et al.(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:9367-9371)。さらにまた、ベンゾジアゼピン、ピロリドンおよびジケトピペラジンライブラリーが合成され、コンビネーション化学の範囲が拡大され複素環物質も含まれるようになった(Bunin et al. (1992) J. Am. Chem. Soc. 114:10997-10998; Murphy et al. (1995) J. Am. Chem. Soc. 117:7029-7030; Gordon et al.(1995) Biorg. Medicinal Chem. Lett. 5:47-50)。
化学的および/または生物学的合成方法(多数の化学的に作られた“ビルディングブロック”を組み合わせることによる)によって、極めて複雑で多様性を有するライブラリーを作製することができる。例えば、ある研究者は、100個の互換性を有するビルディングブロックを系統的に組み合わせて混合することによって、理論的には1億個の四量体化合物または100億個の五量体化合物が合成されることを観察した(Gallop et al.(1994) 37(9):1233-1250)。
【0049】
既知のコンビネーション化学ライブラリーには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ペプトイド(PCT公開番号WO91/19735、1991年12月26日);ランダムバイオオリゴマー(PCT公開番号WO92/00091、1992年1月9日);ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号);ダイバーソマー(diversomer)、例えばヒダントイン、ベンゾジアゼピンおよびジペプチド(Hobbs et al.(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909-6913);ビニローグポリペプチド(Hagihara et al.(1992) J. Amer. Chem. Soc.114:6568);ベータ−D−グルコース骨格を有する非ペプチド性模造ペプチド(Hirschmann et al.(1992) J. Amer. Chem. Soc. 114:9217-9218);小型化合物ライブラリーと同様な有機合成(Chen et al.(1994) J. Amer. Chem. Soc. 116:2661);オリゴカルバメート(Cho et al.(1993) Science 261:1303);および/またはペプチジルホスホネート(Campbell et al.(1994) J. Org. Chem. 59:658)(概括的には以下の文献を参照されたい:Gordon et al.(1994) J. Med. Chem. 37:1385);核酸ライブラリー(Strategene Corp.);ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許第5,539,083号を参照されたい);抗体ライブラリー(例えば以下を参照されたい:Vaughn et al.(1996) Nature Biotechnology 14(3):309-314; PCT/US96/10287);炭水化物ライブラリー(Liang et al.(1996) Science 274:1520-1522; 米国特許第5,593,853号);および小型有機分子ライブラリー[例えばベンゾジアゼピン(Baum (1993) C&EN, Jan. 18, p.33)、イソプレノイド(米国特許第5,569,588号)、チアゾリジノンおよびメタチアザノン(米国特許第5,549,974号)、ピロリジン(米国特許第5,525,735号および第5,519,134号)、モルホリノ化合物(米国特許第5,506,337号)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ピリミジンジオン(米国特許第6,025,371号)]など。
【0050】
コンビナトリアルライブラリーを調製する装置は市販されている[例えば357MPS、390MPS(Advanced Chem Tech; Louisville KY.);Symphony(Raini; Wobun, MA);433A(Applied Biosystems; Foster City, CA);9050Plus(Millipore; Bedford, MA)]。
液相化学合成のために周知の多数の自動システムもまた開発されている。 前記システムには以下のような自動化ワークステーションが含まれる(ただしこれらに限定されない):武田薬品工業(株)(大阪)が開発した自動合成装置およびロボットアームを用いる自動システム(ザイメート(Zymate)II(Zymark Corporation; Hopkinton, Mass).;オルカ(Orca)(ヒューレットパッカード;Palo Alto, CA)、前記は研究者による手動合成操作に類似するものである)およびベンチャーTMプラットフォーム(初めから終わりまで576から9600の同時反応を進行させることができる超高速処理合成装置(Advanced ChemTech, Inc.; Louisville, KY))。上記の装置のいずれも本発明での使用に適している。本明細書で述べたように前記装置を操作することができるように、(必要な場合には)前記装置に加えるべき改変の特性およびその実施は当業者には明白であろう。さらに、コンビナトリアルライブラリー自体も多数市販されている(ComGenex; Princeton, N.J.;Asinex; Moscow, Ru;Tripos, Inc.; St. Louis, MO;ChemStar, Ltd; Moscow, Ru;3D Pharmaceuticals; Exton, PA;Martek Biosciences; Columbia, MDなど)。
【0051】
エフェクター/ナノ粒子組合わせ
好ましい実施態様では、リガンドはエフェクターに非共有結合されている。前記結合は直接的結合であっても、エフェクターを“搬送する”担体(例えばナノ粒子)との結合であってもよい。本明細書で用いられるように、エフェクターとは、その活性を細胞内に内在化させることが所望される任意の分子または分子の組合せを指す。エフェクターには、例えば標識、サイトカイン、酵素、成長因子、転写因子、核酸、薬などの分子が含まれるが、ただしこれらに限定されない。エフェクターとして特に適切な薬は、細胞毒性抗癌剤である。細胞毒性抗癌剤の例は、アンタサイクリン(例えばドキソルビシン)、ツルニチニチソウのアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン)、ホレート類似体(例えばメトトレキセート、エダトレキセート)、ヌクレオチド類似体(例えばアラビノシルシチジン、アザチミジン)、白金錯体(例えばシスプラチン、カルボプラチン)、およびアルキル化剤(例えばニトロソウレア、メルファラン、シクロホスファミド)である。
【0052】
特に好ましい実施態様では、エフェクターは検出可能な標識を含む。本発明の使用に適した検出可能な標識には、分光測定的、光化学的、電気化学的、生化学的、免疫化学的、磁気的、電気的、光学的、または化学的手段によって検出できる任意の組成物が含まれる。本発明で有用な標識には、標識ストレプトアビジン共役物で染色されるビオチン、磁性ビーズ[例えばダイナビーズ(Dynabeads)(登録商標)]、蛍光染料[例えばフルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など(Haugland (1996) "Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals", 6th Ed., Molecular Probes, Eugene, Oregon, USA)]、放射性標識(例えば3H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAで一般的に使用されるその他の酵素)、および比色標識、例えば金コロイド(例えば直径サイズが40−80mmの金粒子は高い効率で緑色光を散乱させる)または着色ガラスもしくはプラスチック(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズが含まれる。前記の標識の使用を開示する特許には、米国特許第3,817,837号、第3,850,752号、第3,939,350号、第3,996,345号、第4,277,437号、第4,275,149号および第4,366,241号が含まれる。
【0053】
蛍光標識が好ましい。なぜならば、蛍光標識は非常に強いシグナルを提供し、バックグラウンドは低いからである。さらにまた、蛍光標識は迅速な走査方法により高い分解能および感度で光学的に検出することができる。望ましくは、蛍光標識は約300nm、好ましくは約350nm、より好ましくは約400nmを越える光を吸収するべきで、通常は吸収した光の波長よりも約10nm以上の波長を放出する。結合させた染料の吸収および放出特性は未結合染料とは異なることは特記されるべきである。したがって、染料の種々の波長レンジおよび特性をいうときは、任意の溶媒中の未結合染料についてではなく使用されている染料を示すことを意図している。
【0054】
検出可能なシグナルはまた、化学発光源および生物発光源によっても提供される。化学発光源には、化学反応によって電子的に励起され、続いて検出可能なシグナルとして機能するか、または蛍光受容体にエネルギーを供与する光を放出することができる化合物が含まれる。また別には、ルシフェリンをルシフェラーゼまたはルシゲニンと一緒に用いて生物発光を提供することができる。
スピン標識は、不対電子対をもつレポーター分子によって提供され、前記は電子スピン共鳴(ESR)分光法によって検出することができる。典型的なスピン標識には、遊離有機ラジカル、遷移金属錯体(特にバナジウム、銅、鉄およびマンガン)などが含まれる。典型的なスピン標識にはニトロオキシド遊離ラジカルが含まれる。
【0055】
蛍光標識は、単一の有機分子種に限定されることは無く、無機分子、有機および/または無機分子の多分子混合物、結晶、ヘテロポリマーなども含まれることは理解されよう。したがって、例えば、シリカの殻に封入されたCdSe−CdSの核−殻ナノクリスタルを生物学的分子との結合を目的として容易に製造することができる(Bruchez et al.(1998) Science 281:2013-2016)。同様に、強い蛍光を発する量子小片(硫化亜鉛キャップドセレン化カドミウム)を生物分子に共有結合させて、超高感度の生物学的検出のために用いられた(Warren and Nie (1998) Science, 281:2016-2018)。
他の好ましい標識には放射性標識が含まれる。放射性標識をナノ粒子に導入し、続いて前記ナノ粒子をエフェクターに非共有結合させる。例えば、同位元素125I、131I、99mTc、67Ga、111In、14C、3H、35Sおよび14Pが放射性標識として一般的に用いられる。例えば67Ga、111Inのような放射性金属イオンを、IDA、NTAなどとの混合キレート型としてエピトープタグに非共有結合させることができる。放射性標識の検出方法は当技術分野では周知である。
【0056】
磁性ビーズもまた別の好ましい検出可能標識である。細胞と適合する多様な磁性ビーズが当技術分野で知られている。例えばPCT特許出願PCTWO90/01,295号、米国特許第4,101,435号、第5,262,176号、第4,698,302号、第5,069,216号およびWeissleder et al., Radiology, 175:489-493(1990)を参照されたい。磁力感度が強化されたサブミクロンサイズのポリマー被覆生物適合磁性ビーズが米国特許第5,411,730号(Kirpotin, Chan, Bunn)に記載されている。前記ビーズは典型的には磁鉄鉱または超常磁性酸化鉄を含み、5nm(超磁性ビーズ)から数ミクロンのサイズを有する。1つまたは2つ以上のリガンドを非共有結合または切断可能な共有結合によって前記ビーズに結合させる。磁性ビーズをリガンド(例えば抗体)と結合させる技術は一般的に知られている(Weissleder et al.(1992) Radiology, 182:381-385)。細胞とのインキュベーションの後で、内在化されなかったビーズ(表面結合ビーズを含む)を、例えば洗浄することによって細胞から分離し除去する。リガンドを内在化させることができる細胞、したがって前記リガンドと結合した磁性ビーズを内在化させた細胞は、磁力測定によって検出することができる。また別には、磁場を用いて(例えばハイグラディエント磁性分離(Miltenyi Biotech AG)によって)細胞を分離する。磁性ビーズの生体適合性により、分離されたリガンド内在化細胞は生命力を有し、その後の研究または医療的使用のために、例えば細胞培養として生かしておくことができる。
【0057】
2種類以上のリガンドを非共有結合または切断可能な共有結合によりエフェクター(例えばレポーターまたはレポーターを搬送するナノ粒子)に結合させることができ、したがって同じ細胞バッチで多数のタイプのリガンドの内在化について細胞を同時に選別および検出することが可能なことは理解されよう。
ある種の実施態様では、エフェクター(例えばレポーター/エフェクター)はリガンドに非共有結合により直接連結され、一方、他の実施態様では、前記エフェクターはナノ粒子内に含まれるか、および/またはナノ粒子と複合体を形成し、前記ナノ粒子がリガンドと非共有結合で連結される。本明細書で用いられるように、ナノ粒子とは、エフェクターと複合体を形成するか、またはエフェクターを含有することができ、さらにリガンドに非共有結合を提供することができる任意の“担体”である。
【0058】
“ナノ粒子”として広範囲の物質が適切で、これらには多孔性ミクロビーズ(例えば孔制御ガラス)、脂質とリポソーム、種々のポリマー、種々のデンドリマーなどが含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切なリポソームには、小型の単層小胞、大型の単層小胞および多層小胞を含む(ただしこれらに限定されない)種々のリポソームが含まれる。リポソームを生成する種々の技術が文献に記載されている。前記技術には加圧押出し、洗剤透析、脱水−再水和、逆相蒸発、リモートローディング、超音波処理および他の方法が含まれるが、ただしこれらに限定されない(例えば以下の文献を参照されたい:New(1990) Preparation of Liposomes. In: R.R.C. New (ed.) Liposomes: A Practical Approach. I.R.L. Press, Oxford, pp.33-10413)。また別には、エフェクター分子と脂質で単純に複合体を形成させることができる。
【0059】
さらに別の実施態様では、エフェクターは、種々のポリマー(例えば薬剤の担体として用いられるもの)などと結合される。適切なポリマーの例にはポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記物質はまた、薬剤の制御放出の実施に有用な生物分解性ポリマーと結合させてもよい。適切なポリマーには、ポリ酢酸、ポリグリコール酸、ポリ酢酸とポリグリコール酸とのコポリマー、ポリエプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアシレートおよびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーが含まれる。
【0060】
さらに他の実施態様では、エフェクターは種々のデンドリマーと複合体を形成する。デンドリマーとは三次元の高度な秩序を有するオリゴマーおよび/またはポリマー化合物で、典型的にはコア分子またはイニシエーターと称されるものにオリゴマーおよび/またはポリマーを付加し、さらに陽性に荷電した外側表面を提供する反復連続反応によって形成される。前記デンドリマーは下記文献に記載されたように製造できる:PCT/US83/02052および米国特許第4,507,466号、第4,558,120号、第4,568,737号、第4,587,329号、第4,631,337号、第4,694,064号、第4,713,975号、第4,737,550号、第4,871,779号、第4,857,599号。
【0061】
典型的には、デンドリマーのポリカチオンはコア分子を構成し、前記コア分子上にポリマーが付加される。前記ポリマーはオリゴマーでもポリマーでもよく、前記は典型的には電荷を獲得できる末端基を含む。適切なコア分子は少なくとも2つの反応残基を含み、前記はオリゴマーおよび/またはポリマーとコア分子の結合に利用することができる。前記反応性残基の例は、とりわけヒドロキシル、エステル、アミノ、イミノ、イミド、ハライド、カルボキシル、カルボキシハライド、マレイミド、ジチオピリジルおよびスルフヒドリルである。好ましいコア分子は、とりわけアンモニア、トリス−(2−アミノエチル)アミン、リジン、オルニチン、ペンタエリスリトールおよびエチレンジアミンである。前記残基の組合せもまた他の反応残基と同様に適切である。
【0062】
エフェクター/ナノ粒子とリガンドとの非共有結合
好ましい実施態様では、リガンドはエフェクターおよび/またはエフェクターを含むナノ粒子に非共有結合される。前記非共有結合は、イオン性相互作用、配位結合(例えばキレート結合)および/または水素結合および/または疎水性相互作用などの手段による。特に好ましい実施態様では、前記非共有結合はエピトープタグの手段による。
本明細書で用いられるようにエピトープタグとは、抗体または他の結合パートナーによって特異的に認識される分子または分子の領域を指す。したがって、例えばエピトープ/抗体相互作用で認識されるエピトープの他に、エピトープタグはまた、他の結合分子によって認識される“エピトープ”(例えばレセプターと結合するリガンド)、他のリガンドと結合してヘテロダイマーまたはホモダイマーを形成するリガンド、2から8個のヒスチジン残基を有するオリゴヒスチジン配列(例えばNi−NTAと結合したHis6)などを含む。
【0063】
エピトープタグは当業者には周知である。さらにまた、多様なエピトープタグに特異的な抗体が市販されている。前記には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):DYKDDDDK(配列番号:1)エピトープに対する抗体、c−myc抗体(シグマ(Sigma, St. Louis)から入手できる)、HNK−1炭水化物エピトープ、HAエピトープ、HSVエピトープ、His4、His5およびHis6エピトープ(Hisエピトープ特異抗体(例えばQiagen)で認識される)など。さらに、エピトープ付随タンパク質のためのベクターも市販されている。したがって、例えばpCMV−Tag1ベクターは、哺乳類細胞で遺伝子を発現させるためにデザインされたエピトープ付随ベクターである。pCMV−Tag1ベクターに挿入される標的遺伝子は、FLAG(登録商標)エピトープ(N−末端、C−末端または内部付せん用)、C−mycエピトープまたはFLAG(N−末端用)とc−myc(C−末端用)の両方を用いて付せんを付けることができる。
【0064】
特に好ましい実施態様では、リガンドにはヒスチジンエピトープ(His6)タグの付せんを付けることができる。前記タグは、キレーター基のCu、Ni、ZnまたはCo錯体と結合する。好ましいキレーター基には、イミノ二酢酸(IDA)およびニトリロ三酢酸(NTA)誘導体が含まれる。His6タグと結合する特に好ましい錯体はNi−NTAで、前記はエフェクターおよび/またはエフェクターを含むナノ粒子と容易に結合される(例えば実施例1を参照されたい)。
エフェクター/ナノ粒子の重要な事例の1つはリポソームである。リポソームは数百または数千のエフェクター分子(例えばレポーター)を含むことができる。前記によって本発明の方法の感度を高めることができる。リポソームの作製方法および種々の物質(例えばエフェクター、特にレポーター)をロードする方法は、当分野では公知で、種々の文献に記載されている(例えば以下を参照されたい:Liposome Technology, Ed. G. Gregoriadis, vol.I-III, CRC Press, Boca Raton, Florida, 1993; D. Lasic (1993) Liposomes: From Physics to Applications. Elsvier, Amsterdam, 575pp)。リガンドが結合したリポソームはある種の細胞と結合および/または内在化されることが判明している(Park et al.(1997) Adv. Pharmacology, 40:399-435)。本発明のエフェクター/リガンド構築物を生成するために、例えばNTA−およびIDA−共役脂質を含むリポソームを用いることができる。
【0065】
脂質小胞に取り込ませることができる金属キレート脂質共役物は、以下の文献に概括的に記載されている:米国特許第4,707,453号(Wagner et al.)。高い安定性を有する金属キレートと異なり、本発明は、好ましい実施態様では、中等度(または低い)安定性を有し、さらに典型的には例えばNTA−またはIDA−基の場合のように前記金属よりも配位部位が少ない金属錯体を生じるキレート脂質共役物を用い、それによって、錯体中の金属イオンの錯体配位圏が不完全となり、金属と前記リガンドのエピトープタグとの間で金属キレート結合の形成を可能にする。前記のようなキレート結合は、強い金属結合力を有する、一般的に使用される細胞保全性キレーター/金属結合薬剤、例えばジエチレントリアミンペンタアセテート(DTPA)のエチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)の作用によって容易に分離させることができる。
【0066】
好ましい実施態様では、前記脂質は、ヘキサヒスチジンエピトープとNTAもしくはIDAまたは他のキレート基との間で金属キレート結合を形成することができるように共役される。典型的には、これら共役物は、中間体、N−(5−アミノ−1−カルボキシアルキル)−イミノ二酢酸を用いて調製される(例えば米国特許第5,047,513号を参照されたい)。そのようなNTA脂質およびIDA脂質の例は、N−(5−(1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−スクシニルアミド)−1−カルボキシペンチル)イミノ二酢酸(DOGS−NTA)(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabama, USA)、1−(N,N−ジカルボキシメチルアミノ)−3,6−ジオキサオクチル−2,3−ジステアリルグリセリルエーテル(IDA−TRIG−DSGE)(Northern Lipids, Inc., Vancouver, Canada)、1,2−ジ−O−ヘキサデシル−sn−グリセロ−3−(1´−(2´−(R)−ヒドロキシ−3´−N−(5−アミノ−1−カルボキシペンチル)−イミノ二酢酸(DHGN)(Barklis et al.(1997) EMBO J., 16:1199-1213)、Nα,Nα−ビス(カルボキシメチル)−Nε−((1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミド)−スクシニル)−L−リジン(NTA−DPPE)、およびNα,Nα−ビス(カルボキシメチル)−Nε−(N,N−ジオクタデシル)スクシニル)−L−リジン(NTA−DODA)(Schmitt et al.(1994) J. Amer. Chem. Soc., 116:8485-8491)であるが、ただしこれらに限定されない。エピトープタグ(例えばHis−タグ)とキレート結合を形成できる金属キレート基と連結されたステロール(例えばコレステロール)を含む脂質が、本発明で提供される。
【0067】
リポソームエフェクター/ナノ粒子を作製するために特に好ましい脂質は、疎水性脂質部分、前記脂質部分と結合した親水性ポリマー、および前記親水性ポリマーと結合したキレート基を含む金属キレート脂質である。前記疎水性脂質部分はリポソームの脂質層内に吸収されてあり、細胞と接触している間、金属キレート脂質とリポソームとの結合を維持することができる“固定装置”として機能する。前記のような疎水性部分の例は、一般にリポソームを生成するために用いられるタイプのもので、すなわち以下のものである:リン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミン;ステロイド、例えばコレステロール;糖脂質;スフィンゴリピド;長鎖モノ−およびジアルキルアミン;長鎖ジアルキルカルボン酸またはエステル;ポリヒドロキシアルコール(例えばグリセロール)のエステルなど。キレート基は、好ましくはエピトープタグ(例えばヘキサヒスチジンタグ)と結合する基である。前記のような基の例は、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、およびそれらのC−置換誘導体で、遷移金属イオン(例えばNi、Co、CuおよびZnの二価イオン)と錯体を形成してあるものである。親水性ポリマーは、典型的にはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリオキサゾリンまたはその置換誘導体、ポリアクリル酸、アミド、N−置換アミドまたはそのエステル、ポリメタクリル酸、N−置換アミドアミドまたはそのエステル、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリ(オキシアルキレン)、ポリグリセロール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、水溶性多糖類、ポリ(アンヒドログルコース)、ポリアスパルトアミド、または親水性ペプチド配列である。脂質−親水性ポリマー共役物はリポソーム成分として一般的に知られている(例えば、米国特許第5,631,018号、第5,395,619号、第5,013,556号、第4,534,899号を参照されたい)。
【0068】
前記ポリマーは典型的には約400から約2000000ダルトンの分子量を有する。適切なポリマーの分子量の範囲は、前記ポリマーを構成するモノマー単位の分子量に左右され、前記ポリマーは4つ以上、好ましくは5つ以上、もっとも好ましくは少なくとも6つのモノマーユニットを含むことができる。特定の理論に拘束されないが、エピトープタグに向かってキレート基が自由に接近できるようなポリマー鎖の自由運動のためには、ポリマーの鎖の長さは典型的には、運動セグメントの長さと等しいかまたはそれを越えるであろうと考えられる。前記のセグメントは、可撓性親水性ポリマーの場合は典型的には4から6モノマーユニットまたはそれ以上を含む。
【0069】
金属キレート基は、好ましくはエピトープタグ(好ましくはヘキサヒスチジンタグ)と結合する基である。前記のような基の例は、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、およびそれらのC−置換誘導体で、遷移金属イオン(例えばNi、Co、CuおよびZnの二価イオン)と錯体を形成してあるものである。前記の脂質−ポリマー−キレート基共役物を調製するために、ポリマー鎖を形成する1つまたは2つ以上の結合物が反応性化学基を有する脂質−ポリマーから始めることができる。前記反応性化学基は、例えばカルボン酸、カルボン酸活性エステル(例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、混合無水物、イソチオシアネート、アミン、チオール、ハロイドアルキル、アルファ−ハロイドアルカノイル、塩化シアヌル、N−マレイミジル、カルボニル、ヒドラジド、アジド、またはヒドロキシルアミノ基である。前記反応基は当業者には公知である(例えば以下の文献を参照されたい:Hermanson (1996) Bioconjugate Techniques. Academic Press, New York, 785pp.)。
【0070】
好ましい実施態様では、前記キレート基は、メチレン基の1つに官能化アルキル置換基を有するニトリロ三酢酸基を用いて結合されている(例えば米国特許第5,047,513号を参照されたい)。前記官能化置換基は典型的には(C2−C6)−アルキルであり、ポリマーの反応基と反応する官能基、例えばアミノ、チオールまたはヒドロキシ基を有する。NTA−官能化ポリマーの製造方法は例えばPCT出願PCT/US97/18104(Seed et a.)、WO98/15293を参照されたい。イミノ二酢酸基は、例えばニトリロ三酢酸のカルボキシル基の1つをポリマーのアミンまたはヒドロキシル基と共役させるか、またはポリマーのアミノ基とアルカリ性媒体中のブロモ酢酸との間の反応によって結合させる。ある実施態様では、本発明は、エピトープタグとキレート結合を形成することができる金属キレート基が末端に結合されてあるポリ(エチレングリコール)−脂質共役物を提供する。約300から約50000の分子量、好ましくは約500から約20000、もっとも好ましくは約1000から約5000の分子量を有するポリ(エチレングリコール)が適切である。
【0071】
リポソームを生成するために一般的に使用される脂質、例えばジ(C10−C22)アルキル−(またはアルケニル−)ホスファチジルエタノールアミン、ジ(C10−C22)アルキル−(またはアルケニル−)ホスファチジン酸、ジ(C10−C22)アルキル−(またはアルケニル−)ホスファチジルグリセロール、ジ(C10−C22)アルキル−、アルケニル−、アルカノイルまたはアルケノイル、グリセロール、スフィンゴリピド、グリコホスホリピド、ステロール、それらの誘導体の他に、合成脂質“固定装置”、例えばジ(C10−C22)アルキル−(またはアルケニル−)アミン、もしくは同様なアルカノイルアミドが適している。脂質−ポリマー−キレーター共役物は、リポソーム形成の前または後で、リポソーム−脂質の0.1から50モル%、好ましくは0.5から10モル%、もっとも好ましくは0.5から5モル%の量で、(予め生成されてあるたリポソームと一緒にインキュベートすることによって)リポソームの脂質マトリックスに取り込まれる。特定の実施態様では、ポリ(エチレングリコール)−脂質はポリ(エチレングリコール)−共役DSPEで、キレート基はNTAである。
【0072】
エフェクターリポソームにエピトープ結合基(例えば金属キレート基)を、脂質−ポリマー−エピトープ結合基共役物の形態で備えつけることによって、いくつかの新規で有利な利点が提供される。ポリマーに結合させたエピトープ結合基は、リポソームの表面から十分に離れてあり、さらにポリマー鎖の可撓性のために、巨大分子(例えばリコンビナントタンパク質)内のエピトープタグとアクセスし易く、それにより本発明の方法の感度が改善される。重要なことには、脂質−ポリマー−NTA−Ni共役物はミセルとして水性媒体に溶解し、前記共役物とリポソームとを単に水性緩衝液中で一緒にインキュベートするだけでエフェクター(例えばサイトトキシンまたはレポーター)が未だロードされていない予備生成中のリポソームに“捕捉”させることができる。
【0073】
エフェクターリポソームと一緒にインキュベートした後、リポソームに捕捉された脂質−ポリマー−NTA−Ni2+共役物のエピトープ(例えばヘキサヒスチジン)タグ結合活性は極めて良好に保存されていたということは、本発明の驚くべき発見であった。前記は、ヘキサヒスチジンエピトープタグを有する抗HER2scFv抗体の存在下で、前記のリポソームに含まれるサイトトキシンがHER2−レセプター含有細胞に選択的に内在化されることによって証明された(下記実施例4を参照されたい)。リポソームの表面から離れた位置で(例えばポリマーのスペーサーによって)エピトープ結合基が結合しているリポソームは、ポリマー誘導脂質の前記リポソームへの同時包含を可能にした。前記ポリマー誘導脂質は、リポソームの凝集を減少させ、リポソームの細胞へのバックグラウンド結合(非特異的結合)を減少させ、さらに身体に適用されたとき、血液循環内のリポソームの長期存続を延長し(米国特許第5,013,556号)、in vivoで“テスト”細胞とエフェクター/リガンド構築物とのより良好な結合を提供する。典型的には、凝集を減少させるためには総脂質の0.1から0.9モル%の量の脂質−親水性ポリマー共役物で十分であり、一方、血液循環中での長期存続性の延長のためには総脂質の1から20モル%の濃度が要求される(米国特許第5,013,556号)。ポリマースペーサーを介して結合させたエピトープ結合基(例えばNTA)を使用することによって、エフェクター(例えばサイトトキシン、ドキソルビシン)をリポソームにローディングしてエフェクターリポソームを得ることが顕著に改善されるという予期せぬ結果が得られた(実施例4を参照されたい)。
【0074】
ある種の実施態様では、エフェクターはリガンドに共有結合によって結合させることができるが、ただし前記結合は容易におよび/または特異的に切断できることが条件である。好ましくは、前記切断は、細胞の構造的完全性が保存され、切断の過程でまたは切断の結果として内在化されたエフェクター(例えばレポーター)が細胞から離脱することがないような条件下で発生する。前記切断可能な結合は当業者には周知である。例えば、ある実施態様では、核酸制限部位またはプロテアーゼ認識部位を含むリンカーは、適切なエンドヌクレアーゼまたはプロテアーゼを用いて容易に切断することができる。
【0075】
他の切断可能なリンカーも当業者にはよく知られている(例えば米国特許第4,618,492号、第4,542,225号および第4,625014号を参照されたい)。前記リンカー基から薬剤を遊離させる方法には、例えば光感受性結合の照射および酸触媒加水分解が含まれる。切断可能なリンカーの例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):エナミン、ヒドラゾン、オキサゾリジン、ケタール、アセタール、炭酸のオルトエステル、チオエステル、2−アルキルもしくは2,3−ジアルキル置換マレイン酸の置換ヘミエステルおよびヘミアミド、およびpH3から6の生理学的な水溶液中で加水分解により分離するビニルエーテル;pHおよび塩濃度について生理学的条件下にある水溶液中でチオ開裂剤(システイン、メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、トリス−カルボキシメチルメチルホスフィンなど、典型的には0.1から10mMの濃度)の存在下で分離するジスルフィド結合;pH7から9の水性生理的緩衝液中で塩基触媒または酵素触媒加水分解によって切断されるエステル結合;および光分解反応によって切断される結合、例えば2−ニトロベンジル誘導体(Haugland (1996) Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals. Molecular Probes, Inc., Eugene, OR. 6th Ed.)。
【0076】
細胞とリガンド/エフェクターとの接触
好ましい実施態様では、1つまたは2つ以上の“テスト”細胞(例えばリガンドを内在化させる能力についてスクリーニングされるべき細胞)を、リガンドと非共有結合させたエフェクター(例えばレポーター)と接触させる。1つの細胞がしばしば多数の異なるリガンド/エフェクターの組合せと接触させられるであろう。接触は、典型的には、前記細胞がリガンドを内在化させることができる条件下で、すなわち内在化機能を有するレセプターが機能を発揮できる条件下で実施される。哺乳類細胞の場合には、わずかに高い温度で(30から40℃)生理的に均衡させた塩および細胞栄養物を含む水溶液中で接触させることが好ましい。典型的には、細胞を培養状態でリガンド/エフェクター構築物と接触(インキュベート)させるが、前記のような接触は急性/新鮮調製物に由来する細胞の場合である。
【0077】
前記のような接触は典型的にはex vivoで達成されるが、ある種の実施態様では、接触はin vivoで実施してもよいことは理解されよう。特に、米国特許第6,068,829号は選択された器官にin vivoで帰巣する分子を特定する方法を開示している。前記方法は、生物にリガンドライブラリーをトランスフェクトし、特定の組織に局在するリガンドを特定することを含む。前記特許はしたがって不均質なリガンドと細胞をin vivoで接触することの実現可能性を示している。
特に好ましい実施態様では、リガンドおよびエフェクターはエピトープタグを介して結合される。前記のような実施態様では、(リガンドとエフェクター間の)非共有結合の形成および細胞とリガンド/エフェクター構築物との接触は、容易に単一の工程にまとめることができる。例示すれば、実施例1では、NTA−リポソーム(すなわち表面結合Ni−NTA基を有するリポソーム)(0.5から1mMの総リン脂質)の接触は、(His)6含有リガンド(約20μg/mL)とともに細胞を100μLの組織培養液(10%FCS補充)中で37℃で4時間インキュベートすることによって実施された。前記のような条件下では、リガンドはエフェクターと非共有結合を形成し細胞内に内在化された。
【0078】
実質的に任意の細胞を本発明の方法で用いることができる。そのような細胞には真核細胞および原核細胞の両方が含まれる。細菌細胞、真菌細胞、藻類細胞、植物細胞、動物細胞も全て本発明の方法に十分に適している。特に好ましい実施態様では、細胞は、脊椎動物細胞、より好ましくは哺乳類細胞もっとも好ましくはヒトの細胞である。細胞はex vivoで培養されてあっても、新鮮な調製物から得られたものでも、組織培養のものでも、またはin vivoの組織のものでもよい。高処理スクリーニングで用いる場合は、培養細胞がもっとも好ましい。
【0079】
リガンドからエフェクターの分離
好ましい方法では、リガンドを内在化させるために十分な時間、リガンド/エフェクター構築物を細胞と接触させた後、非共有結合を解離させることによって前記エフェクターをリガンドから分離させる。前記は、当業者に周知の多数の任意の方法によって実施される。前記のような非共有結合を破壊する方法には、解離因子および/または解離剤、例えば熱、酸、カオトロピズム誘発薬剤、高塩、キレート剤などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。特に好ましいものは細胞保全的方法で、この場合、細胞の完全性が保存され、分離後、内在化されたリガンドおよび/またはエフェクターは本質的に細胞内に残留する。エフェクターおよびリガンドが、(例えばNi−NTA基とHis6−エピトープタグ間の)金属キレート結合によって連結されている場合、前記解離剤は、好ましくは二価遷移金属イオンと結合する試薬、例えばEDTA(典型的には0.2から5mMの低濃度)、弱い金属錯体形成試薬、例えばイミダゾール(高濃度、典型的には100から300mM)、またはジチオール化合物、例えば2,3−ジメルカプトスクシネート(典型的には0.2から10mM)で、中性生理学的緩衝食塩水中で実施される。金属イオン(例えばNi2+)の結合に対してリガンド−リポソームキレート結合と競合することによって、前記解離剤は金属イオンの結合を奪い、前記結合の崩壊をもたらす。ある好ましい実施態様では、実施例1に示したように細胞表面結合リポソーム/リガンド複合体を分離し、分離したリポソームは細胞を3から4回解離緩衝液で洗浄することによって除去した。解離緩衝液は、前記の場合は生理学的リン酸緩衝食塩水(2mMのMgCl2、2mMのCaCl2、および1mMのEDTAを含む)または250mMのリン酸緩衝イミダゾール(pH7.4)である。内在化リポソーム/リガンド複合体は解離緩衝液がアクセスすることができないので、内在化リポソームは細胞内に残留し、その存在および内在化されたリガンド/リポソーム構築物の量を示す検出可能なシグナルを提供する。
【0080】
分離工程は、遊離させたエフェクターを細胞から洗い流すことができるように、ナノ粒子を破壊することによってエフェクター(例えばレポーター)をナノ粒子から遊離させることを含む。ナノ粒子がリポソームの場合、前記遊離緩衝液はリポソーム脱安定化因子を含むことができる。化学的または物理的因子(例えばpH4から6での短時間曝露、チオ開裂剤、中等度の温度(42から45℃)または光による)によってリポソームから被包化薬剤の遊離が開始されることについては当技術分野では公知である(例えば以下の文献を参照されたい:Gerasimov et al.(1995) Vesicles, Ch. 17, p.679-746; Kirpotin et al. (1996) FEBS Lett., 388:115-118)。ナノ粒子(例えばリポソーム)を破壊することによって、エフェクターがリガンドから分離されたとき、リガンドは両親媒性共役物(例えば脂質−または脂質−親水性ポリマー共役物)の形態で存在することができ、その場合リガンドとエフェクターとの間の非共有結合は疎水性相互作用によるものである。
【0081】
リガンドとエフェクター間の切断可能な共有結合もまた細胞保全的態様で破壊することができる。例えば、カルボニルヒドラゾン結合は、レポーター(例えばリポソーム)または磁性ナノ粒子と結合したカルボキシ酸ヒドラジド基と、リコンビナントタンパク質/ペプチドリガンド中に創出されたN−末端のセリンまたはスレオニンの過ヨウ素酸酸化によって生成されるケトンまたはアルデヒド基との間に形成される。酸性水性環境下では(pH3から6)、前記結合は加水分解されてレポーターを遊離させる。
【0082】
内在化されたリガンドの検出
内在化されたリガンドは、当業者に周知の方法に従って検出される。リガンドは直接(例えば種々の精製技術により)検出することができるが、好ましい実施態様では、リガンドはリガンドに結合した(または付随した)エフェクター分子を検出することによって検出される。エフェクターがレポーター(検出可能な標識)である場合は、エフェクターは同種の標識を検出するために典型的に用いられる方法によって検出される。したがって、エフェクターが放射性核種である場合は、検出は、例えばシンチログラフィーまたはオートラジオグラフィーの手段による。エフェクターが比色タグである場合には検出は光学手段による。エフェクターが蛍光タグである場合は、検出は、例えば蛍光測定法、フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡による。エフェクターが磁性粒子のときは、検出は磁力測定による。
エフェクターがサイトトキシンであるときは、内在化の検出は細胞死亡率の測定を必要とする。逆に、エフェクターが増殖因子またはマイトジェンの場合は、検出は細胞の増殖または分裂の検出を必要とする。
【0083】
リガンド内在化のためのアッセイは、好ましくは陰性コントロールと比較して、内在化されたエフェクター由来のシグナルを検出できる場合は典型的には陽性として記される。好ましい実施態様では、陽性の結果が記録されるためには、内在化の“テスト”アッセイと(通常は陰性の)コントロールとの間の相違は、提供されたデータに適した任意の統計検査[例えばt検定、自由度分析(ANOVA)、セミパラメーター法、非パラメーター法(例えばWilcoxon Mann-Whitney Test; Wilcoxon Signed Ranks Test; Sign Test; Kruskal-Wallis Testなど)]を用いて調べたとき統計的に有意である(例えば80%を越える、好ましくは約90%を越える、より好ましくは約98%を越える、もっとも好ましくは約99%を越える信頼度レベルである)。もっとも好ましい“陽性”アッセイは、陰性コントロールとは少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍、もっとも好ましくは少なくとも4倍、または10倍すら相違する。
【0084】
種々のリガンドの内在化性能に関してそれらリガンド間のより正確な比較が実施できるように、検出には内在化リガンドの定量的測定(定量)を含むことができる。エフェクター分子(例えばサイトフェクチン、酵素、蛍光、光の吸収、放射能活性または磁性物質)の定量方法は当業者には公知である(例えば以下の文献を参照されたい:Spector et al."Cells. A Laboratory Manual, vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988)。
【0085】
内在化機能を有するレセプターの特定
上記に述べたアッセイはまた、(例えば以前には知られていなかった)内在化機能を有するレセプターを特定するためにも用いることができる。好ましい実施態様では、そのような方法は、内在化されたリガンドを上述の方法にしたがって特定することを伴う。内在化されたリガンドは細胞から回収されおよび/または特定される。続いて、回収および/または特定されたリガンドを用いて、前記リガンドを内在化させたレセプターを特定することができる。
内在化されたリガンドを回収する方法は当業者には周知である。前記方法は、細胞を溶解し標準的な精製方法を実施して、標識された(エフェクター結合)リガンドを単離することを含む。細胞に由来する分子の精製方法は当業者には周知である。典型的な精製方法には、ゲル電気泳動、陰イオン交換クロマトグラフィー[例えばモノ−Qカラム(Pharmacia-LKB, Piscataway, New Jersey, USA)]、または逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。標準的な技術に関する概論については以下を参照されたい:
Methods in Enzymology, vol.182: Guide to Protein Purification, M. Deutscher, ed. (1990), p619-626。
【0086】
また別には、細胞を溶解した後、リガンドをエフェクターから分離し、続いて前記リガンド上のエフェクターを用いてアフィニティークロマトグラフィーによりリガンドを回収することができる。したがって、例えばリガンドがHis6タグを用いてアフィニティータグを付されている場合、前記リガンドは、Ni−NTAアフィニティーカラム、Ni−NTAゲル、またはNi−NTA共役磁性ビーズによって回収することができる(例えば以下を参照されたい:QIA express(登録商標)Detection and Assay Handbook, Qiagen)。
【0087】
リガンドを内在化させる細胞の検出
エフェクター(例えばレポーターまたはナノ粒子)をリガンドから分離させる工程の後で、本発明の方法を用いてリガンドを内在化させる細胞を検出するとき、細胞内のリガンドの存在は当業者に公知の任意の手段によって検出できる(上記の“内在化されたリガンドの検出”の項を参照されたい)。ある種の好ましい実施態様では、前記検出方法は、個々の細胞の検査を必要とする。そのような方法の例には以下が含まれる:蛍光性レポーターの場合はフローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡法、放射性核種のレポーターの場合はオートラジオグラフィーなど。
【0088】
細胞内に内在化されたリガンドの検出は、リガンドの内在化が検出できない細胞からリガンドを内在化させる機能を有する細胞を単離することを必要とする。エフェクター(例えばレポーターまたはナノ粒子)のリガンドからの分離に続いて、前記リガンドを内在化させる細胞は、例えば蛍光性レポーターの場合は蛍光活性化細胞分類(FACS)によって、またはレポーターが磁性ビーズの場合はハイグラディエント磁性分離によって単離できる。続いて前記単離細胞を精査して、例えば研究、工業的または医療目的に利用する。
本方法の特に好ましいある実施態様は、患者から得た身体組織または液体サンプル中の悪性細胞の検出を含む。この場合には、悪性細胞に選択的に内在化されるリガンドが用いられる。本明細書および同時係属中の米国特許第09/249,529号に記載されているように、例えば抗体(例えばscFv)を悪性細胞または他の病理学的細胞への特異的内在化のために選択し、本発明にしたがって患者の身体組織または液体サンプル中の病理学的細胞の検出および/または選別のために用いることができる。
【0089】
細胞によるリガンドの結合および内在化の検出
本発明の方法はまた、細胞によるリガンドの表面結合および内在化の両方の検出に用いることができる。好ましい実施態様では、本方法は、細胞をリガンド/エフェクター(例えばリガンド/レポーター)構築物と接触させ、細胞と結合しなかった前記構築物部分(すなわち表面に結合せず細胞によって内在化もされなかった構築物)を除去し、さらに細胞と結合しているレポーターを検出し、細胞表面に結合したリガンドおよび細胞内に内在化されたリガンドの総量を示す第一の読みを得ることを含む。レポーターの細胞非結合部分の除去は、好ましくは、非解離条件下で細胞を除去することによって達成されるリガンド/レポーター構築物の除去による。前記非解離条件は、例えばリン酸緩衝食塩水、緩衝塩溶液(リンゲル、ハンクス溶液)、細胞培養液、または解離剤を含まない他の生理学的媒体を用いることによる。したがって、前記解離剤の非存在下では、細胞表面結合リガンド/エフェクター構築物は細胞上に完全なままで残留し、細胞に付随する全リガンドの第一の測定値を提供するエフェクターから検出されるシグナルに寄与するであろう。
【0090】
続いて、表面結合リガンド/エフェクター構築物のエフェクターをリガンドから分離し、分離したエフェクターを細胞表面から、例えばNTA−Ni−His6−結合リガンド/エフェクターの場合には本明細書に記載したように二価金属イオン結合剤を含む生理学的緩衝液で細胞を洗浄することによって除去する。続いて、細胞内に残留するレポーターを、内在化されたリガンド/エフェクター構築物量の第二の測定値を提供することによって検出する。第一の測定値と第二の測定値との間の差異は、細胞表面に結合したが内在化されなかったリガンドの量に一致する。いくつかの事例では、第一の測定値を得る前に、細胞を崩壊させることなく内在化プロセスを停止させることが好ましい。前記は、細胞を代謝抑制剤(例えばアンヒドログルコースまたはアジ化ナトリウム)で処理するか、または(10℃未満、典型的には約0から4℃に)温度を下げる(氷上で冷却する)ことによって容易に実施できる。
【0091】
内在化の調節因子のスクリーニング
本発明の方法はまた、リガンドの内在化を調節する薬剤のスクリーニングに用いることができる。好ましい実施態様では、前記方法は本明細書で述べたようにリガンドの内在化についてスクリーニングすることを含み、この場合、細胞をエフェクター/リガンド構築物と接触させる前、および/またはその間、および/またはその後で前記細胞をスクリーニングされるべきテスト薬剤と接触させる。例えば濃度の低いテスト薬剤を含むかまたはテスト薬剤を含まない陰性コントロールと比較したとき、テスト薬剤と接触した細胞によるリガンドの内在化における差異は、前記テスト薬剤が対象のリガンドの内在化を調節する(例えば増加または低下させる)ことを示す。内在化されるリガンドの増加は、テスト薬剤が内在化をアップレギュレートすることを示し、一方、内在化されるリガンドの減少は、テスト薬剤が内在化をダウンレギュレートすることを示す。
【0092】
アッセイの持続時間にしたがって、前記の増減は、内在化されるリガンドの全リガンドにおける増減または内在化速度(すなわち単位時間当たりの内在化されるリガンド量)における増減を表す。さらに別の実施態様では、内在化のタイムコースを変化させる能力について、前記リガンドをスクリーニングすることができる。
調節物質の活性のアッセイは典型的には陽性のスコアとして記される。この場合、テスト薬剤が存在する場合に観察される活性とコントロール(通常は陰性コントロール)との間に差異が存在し、この場合、好ましくは前記差異は統計的に有意である(例えば80%を越える、好ましくは約90%を越える、より好ましくは約98%を越える、もっとも好ましくは約99%を越える信頼度レベルである)。もっとも好ましい“陽性”アッセイは、陰性コントロール(テスト薬剤が存在しないか、またはより低い濃度で存在するもの)とは少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍、もっとも好ましくは少なくとも4倍、または10倍すら相違する。
【0093】
高処理スクリーニング
本発明の方法は高処理スクリーニングに極めて適切である。特にエピトープタグを用いてリガンドがエフェクターに連結される場合は、前記アッセイは本質的に、リガンドおよび/またはエフェクターの複雑な精製を必要としない“単工程”様式で実施される。実施例1に示すように、対象細胞をリガンドおよびエフェクターと適切な“インキュベーション”条件下で一緒にするだけで十分である。リガンドはエフェクターと結合し、細胞が対応する内在化機能を有するレセプターを有する場合は、前記リガンドは結合されているエフェクター(例えば標識)とともに細胞内に内在化される。
本発明の方法で用いられる細胞を、リガンドおよび/またはただ1つのテスト薬剤と一度に接触させる必要は無い。反対に、高処理スクリーニングを促進するために、ただ1つの細胞を少なくとも2つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも10、もっとも好ましくは少なくとも20、少なくとも50、または少なくとも100個のリガンドまたはテスト薬剤と接触させることができる。細胞が陽性スコアを示したら、活性を有するテスト薬剤、または内在化リガンドが特定されるまで、続いてサブセットの前記リガンドまたはテスト薬剤を用いてテストすることができる。
【0094】
種々のレポーター遺伝子生成物のための高処理アッセイは当業者には周知である。例えば、マルチウェルを有するフルオリメーターが市販されている(例えば、Perkin-Elmer)。他の高処理スクリーニングシステムも市販されている(例えば、Zymark Corp., Hopkinton, MA; Air Technical Industries, Mentor, OH; Beckman Instruments, Inc., Fullerton, CA; Precision Systems, Inc., Natick, MAなど)。前記システムは、典型的には、全サンプルおよび試薬のピペット操作、液体分注、設定時間でのインキュベーション、およびアッセイに適した検出装置でのマイクロプレートの最終的読み取りを含む全工程が自動化されている。前記の構成組み立てが可能なシステムは、高処理性能および迅速な開始とともに高度の融通性およびカスタマイズ性を提供する。前記システムの製造業者は、種々の高処理のための詳細なプロトコルを提供している。したがって、例えばザイマーク社(Zymark Corp.)は、遺伝子転写、リガンド結合などの調節を検出するスクリーニングシステムを記載した技術広報誌を提供している。
高処理スクリーニングは、当業者に公知の多数の様式で実施することができる。好ましい実施態様では、高処理スクリーニングはマイクロタイタープレート様式を利用する(例えば96ウェル様式、480ウェル様式、960ウェル様式など)
【0095】
エフェクターの細胞内配送
ある種の実施態様では、本発明は、エフェクターを細胞内に配送する組成物を提供する。前記組成物は以下の(i)および(ii)を含む:(i)疎水性脂質部分、前記脂質部分と結合した親水性ポリマー、および前記親水性ポリマーと結合したキレート基(ここで前記キレート基は金属イオンと錯体を形成しエピトープタグと結合する)を含む金属キレート脂質、および(ii)前記エピトープタグを含むリガンド(ここで前記エピトープタグは少なくとも2つの隣り合うヒスチジン残基(ヒスチジンタグ)を含む)。さらに、前記組成物ではエフェクターは前記金属キレート脂質と結合している。前記タグは、好ましくは6つの隣接するヒスチジン残基を含む(ヘキサヒスチジンタグ)。好ましい組成物は、金属キレート脂質とエフェクターがリポソーム内に含まれるものである。本明細書に記載したいずれのエフェクターおよび/またはリガンドも適切である。前記エフェクターは、例えばレポーター、サイトトキシン、薬または核酸である。前記リガンドは典型的にはタンパク質、炭水化物、核酸、または小有機分子である。リガンドは天然でも合成でもよい。好ましいタンパク質リガンドは、抗体(例えば免疫グロブリンおよびそのフラグメント)の抗原結合配列を含むもので、天然または組換えによって生成されたもので単鎖フラグメントを含む。前記リポソームはさらに脂質−ポリマー共役物、特に脂質−ポリ(エチレングリコール)共役物を含むことができる。前記リポソームでは、金属キレート脂質は典型的には0.1モル%から50モル%、好ましくは0.2モル%から10モル%を構成する。場合によって、前記脂質ポリマー共役物(金属キレート基を含まない)はリポソーム脂質の20モル%まで含まれてあってもよい。
【0096】
内在化機能を有するリガンドおよび/またはレセプターのデータベース
ある種の実施態様では、本発明の方法はさらに特定された内在化機能を有するレセプターを内在化レセプター特定データベースに収めること、および/またはそのようなデータベースにリガンド内在化の調節物質を収めることを含む。データベースという用語は情報を記録しさらに情報を取り出す手段を指す。好ましい実施態様では、前記データベースはまた、保存された情報の分類および/または検索のための手段を提供する。前記データベースは以下を含む(ただしこれらに限定されない)任意の都合のよい媒体を含むことができる:ペーパーシステム、カードシステム、機械システム、電子システム、光学システム、磁気システム、またはその組合せ。好ましいデータベースには電子(例えばコンピュータ支援)データベースが含まれる。データベースの保存および操作で使用されるコンピュータシステムは当業者には周知で、“パーソナルコンピュータシステム”、メーンフレームシステム、ネット間またはネット内連絡拠点(distributed nodes on an inter- or intra-net)、特殊化ハードウェアに保存されたデータまたはデータベースなどが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0097】
キット
別の実施態様では、本発明は、本明細書に記載した方法を実施するための材料を含むキットを提供する。ある好ましい実施態様では、前記キットは、エフェクター(例えばレポーター)とエピトープタグを介して非共有結合されたリガンドを収納する容器を含む。前記キットは、1つのタイプのリガンドを含む“単一”構築物、または多数の異なるリガンドを提供する構築物ライブラリーを含むことができる。また別には、エフェクター(例えばレポーターまたはナノ粒子)は、(別々の容器の)1つまたは2つ以上のリガンドと一緒に提供することができる。それによって提供された指示および特定の用途に合わせて、前記エフェクターおよびリガンドを使用者が混合したとき、エフェクター/リガンド構築物が生成されるであろう。
【0098】
前記キットは場合によって、本発明の方法を実施するための他の装置および/または試薬を含むことができる。前記の試薬および装置には、マイクロタイタープレート、細胞、緩衝液、蛍光標識検出用フィルター、高処理ロボットシステムでアッセイを実施するために必要なソフトウェアなどが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
さらに、キットは、本発明の方法のための一般的な指示および/または固有のプロトコルを提供する指示物を含むことができる。前記指示物は典型的にはタイプまたは印刷されたものを含むが、ただしそのようなものに限定されない。前記の指示を保存し、さらに前記指示を最終使用者に伝達することができるいずれの媒体も本発明に包含される。前記媒体には、電子保存媒体(例えば磁性ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えばCDROM)などが含まれるが、ただしこれらに限定されない。前記媒体には、前記の指示物を提供するインターネットのサイトのアドレスを含むことができる。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は例示であって、本発明の請求の範囲を制限しようとするものではない。
実施例1
金属キレートリポソームを用いる抗体の内在化をモニターする新規なアッセイ

抗体および抗体フラグメントは、多様な薬剤(例えば薬、遺伝子、毒素または放射性核種)を抗原発現細胞に配送することができる。細胞内部への前記抗体フラグメントのエンドサイトーシスは多くの場合、前記治療薬の治療効果を高めることができる。薬のデリバリールートとしてのレセプター仲介エンドサイトーシスの主要な利点は、治療薬剤がレセプターを過剰発現している標的細胞に特異的に配送され、それによって効能が高められ、一方、全身的毒性は減少させることができるということである。例えば、抗ErbB2抗体を用いて、ドキソルビシン含有リポソーム(Park et al.(1995) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 92:1327-1331)、またはシュードモナス外毒素(イムノトキシン)(King et al.(1996) Semin Cancer Biol 7:79-86)が腫瘍細胞の内部に誘導された。
【0100】
免疫反応によって生成される抗体の大半は、エンドサイトーシスを惹起するような態様ではレセプターと結合しない(Hurwitz et al.(1995) Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 92:3353-3357)。したがって、所望の反応を惹起させることができる抗体についてスクリーニングできることが所望される。リガンドおよび抗体の細胞内内在化をモニターするもっとも一般的な方法は、タンパク質の放射性標識を必要とし、さらに表面結合抗体を分離させるために低pH緩衝液(通常はグリシン−HCl、pH2.8)を用いる。しかしながら、いくつかの研究室の報告は、いくつかの事例では前記緩衝液は抗原−抗体複合体を部分的に分離させるだけで、したがって内在化実験に多くの不正確さをもたらすことを示唆した(Matzku et al.(1990) Br. J. Cancer Suppl. 10:1-5; Tsaltas and Ford (1993) Immunol. Invest. 22:1-12)。
【0101】
また別には、抗体をNHS−SS−ビオチンによりビオチン付加し、生細胞とともにインキュベートすることができる。還元剤による細胞表面結合抗体のビオチン基の特異的還元後に、イムノブロッティングによって内在化を定量することができる(Liu et al.(1998) Cancer Res. 58:4055-4060)。しかしながら、前記方法の正確さもまた細胞表面結合抗体からビオチンを完全に除去できるか否かによって左右される。これらの方法のまた別の欠点は、これら方法は、内在化についてスクリーニングされるべき種々の抗体の数を制限させるような各リガンドタンパク質の困難な標識を必要とするということである。さらにまたタンパク質の直接標識は、しばしば抗体またはリガンドの結合活性の低下をもたらす。さらに、前記方法で細胞表面から物質を除去するために要求される厳しい条件は細胞の生存能力に影響を及ぼすであろう。
【0102】
本実施例では、“キレート化リガンド内在化アッセイ”(CLIA)(Chelated Ligand Internalization Assay) と称する新規な内在化アッセイを報告する。リポソームを(His)6付せん付きタンパク質と結合できるNi2+−NTA−脂質を用いて製剤化した。NTA含有リポソームに蛍光染料をロードし、多数の異なる(His)6含有抗レセプター抗体フラグメントまたは(His)6付せん付きプロテインAと複合体を形成した完全な抗体と混合した。プロテインAとは弱く結合する抗体の場合、代わって抗体Gを用いてもよい。EDTAを用いて細胞表面結合複合体からリポソームを穏やかに除去してから、scFv/リポソーム/レセプター複合体を蛍光顕微鏡または蛍光測定法によって検出した。前記複合体の細胞取込みは、scFvの特異性とともに抗体フラグメントの内在化誘発能力に依存し、検出には<50000レセプター/細胞を必要とする。本アッセイにはほんの微量の抗体フラグメントが必要なだけで、さらにまた、抗体フラグメントを発現している大腸菌の未精製の粗上清を用いて実施した。
【0103】
方法
リポソームの調製:リポソームは、1−パルミトイル−2−オレオイル−ホスファチジルコリン(POPC)およびコレステロール(6:4モル比)並びに種々の量のNTA−DOGS(Avanti Lipids)(0.5から5モル%のPOPC)から、35mMの8−ヒドロキシピレン−1,3,5−トリスルホン酸ナトリウム塩(HPTS)(Molecular Probes Inc., Oregon, USA)を含む溶液(pH7.0)(NaClで浸透圧を280nmol/kgに調整)中で脂質フィルムの水和によって調製される。いくつかの事例では、前記リポソームは、1,2−ジステアロイル−ホスファチジルコリン(DSPC)をPOPCの代わりに用いて作製し、親油性蛍光標識DiIC18(3)−DSおよびDiIC8(5)−DS(リポソームリン脂質の0.1−1モル%)をHPTSの代わりに用い、同じ結果を得た。前記の事例では、水和は、5から20mMの4−(N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジノ)エチルスルホン酸ナトリウム塩(HEPES)でpH7.2から7.4に緩衝させた140mMのNaCl水溶液中で55から60℃で実施される。水和後、文献(Kirpotin et al.(1997) Biochemistry 36:66-75)の記載にしたがって2つの0.1μmのポリカーボネートメンブレン(Corning)から膜押出しによってリポソームを形成する。続いて非被包化HPTSを架橋デキストランビーズ(セファデックスG−25)(Pharmacia Amersham, New Jersey, USA)上でのゲルろ過によって分子した。
【0104】
ScFvの発現と精製:scFv、C6.5(抗HER2)(Schier et al.(1995) Immunotechnology 1:73-81)およびF5(抗HER2)(PCT/US99/07395)を発現ベクターpUC119mycHis(Schier et al.(1995) Immunotechnology 1:73-81)でクローニングし、大腸菌TG1で発現させた。簡単に記せば、0.75Lの培養液(100μg/mLのアンピシリンおよび0.1%のグルコースを含む2×TY)に一晩培養を1/100で接種した。前記培養をA600で0.9まで増殖させ、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度0.5mMとなるように添加して発現を誘発した。続いて前記培養を30℃でさらに4時間インキュベートした。
【0105】
細胞を遠心分離(4000×g、20分)によって採集し、ペレットを100μg/mLのデオキシヌクレアーゼを含むペリプラズム抽出緩衝液(PPB)(30mMトリス、2mMのEDTA、20%シュクロース、pH8)に再浮遊させ、氷上で30分インキュベートした。細菌を5000×gで20分遠心分離してペレットにした。前記ペレットを浸透圧ショック緩衝液(5mMのMgSO4)に再浮遊し、さらに20分氷上でインキュベートした。前記細菌を沈澱させ(7000×g、20分)、さらにPBB分画およびMgSO4分画の上清を一まとめにし、10000rpmで30分4℃で遠心分離して清澄にした。得られた溶液をPBSで透析した(4LのPBS(pH8)で2回液交換)。固定金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)(Qiagen)で精製し、続いて架橋デキストランゲルエクスクルージョンPD10カラム(Pharmacia Amersham, New Jersey, USA)で脱塩して全分子を精製した。タンパク質濃度を分光光度法により280nmでの吸収(A280)から求めた(1cmのキュベットで1mg/mLのタンパク質溶液について1.4の吸収値を用いた)。
【0106】
マイクロタイタープレートで誘発する場合は、100μg/mLのアンピシリンおよび0.1%のグルコースを含む2×TY、150μLを有するウェルに、scFvを含むプラスミドをもつ大腸菌TG1の一晩培養を接種した。培養をA600で約1まで増殖させ、IPTGを最終濃度1mMに添加してscFvの発現を誘発した。細菌を30℃で一晩増殖させ、遠心分離で細胞を除去し、scFvを含む上清30μLを内在化アッセイに直接用いた。
【0107】
プロテインA−(His)6共役物の調製:二価性試薬、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ−MBS;Pierce)を用いて、プロテインAを(His)6含有ペプチドCGGGHHHHHH(配列番号:2)に共役させた。2mgのプロテインAをPBS中の0.2mgのスルホ−MBSで室温で1時間処理した。未反応のスルホ−MBSをゲルろ過で除去し、続いて前記タンパク質をPBS中の2mgの(His)6含有ペプチドで室温で1時間処理し、未反応ペプチドをゲルろ過で除去した。
【0108】
アッセイ方法:ヒト乳癌細胞SKBR3、SKOV3、BT474、MCF7、MDA−MB−453、MDA−MB−468(米国菌培養収集所、ATCC)を、10%のウシ胎児血清(FCS)を補充したATCC推奨培養液タイプを用いて80から90%の融合密度まで増殖させ、標準的方法でトリプシン処理によって採集した。細胞を96ウェルのプレートに10000細胞/ウェルで播種し、37℃で一晩インキュベートした。次の日、NTAリポソーム(総リン脂質0から1mM)を、100μLの組織培養液(10%FCS補充)中の(His)6含有リガンド(別に指定しない場合は20μg/mL)とともに細胞と4時間インキュベートした。誘発大腸菌の培養上清をアッセイに用いるときは、10%血清を含む65μLの細胞培養液およびNTA−リポソームを35μLの上清と混合した。モノクローナル抗体((His)6−タグを含まない)の内在化をテストするために、10μg/mLのプロテインA−(His)6を用いて、40μg/mLのヒト化リコンビナント抗HER2モノクローナルIgG、HERCEPTIN(Genentech, Inc., California, USA)と複合体を形成した。非内在化リポソーム/リガンド複合体のリポソームを細胞表面から剥がすために、細胞を170μLのPBS(2mMのMgCl2、2mMのCaCl2、および1mMのEDTAを含む)または250mMのリン酸緩衝イミダゾール(pH7.4)で3から4回洗浄した。460/530nmでRC4マイクロフルオリメーター(BIOTEK)で蛍光を読み取る前に、細胞を50μLの0.01MのNaOHで溶解した。
【0109】
細胞表面の結合の測定:細胞は標準的な技術を用いてトリプシン処理によって採集した。前記F5を3組ずつ、V字型のウェルを有する96ウェルプレートで1×105細胞と表示の濃度で2時間インキュベートした。細胞との結合は室温で、総容積200μLのPBS(2%FCSおよび0.1%アジ化ナトリウムを含む)中で実施した。200μLのPBSで2回洗浄した後、結合scFvを100μL(10μg/mL)のFITC標識抗FLAGモノクローナル抗体M1(Sigma)を添加して検出した。室温で30分インキュベートした後、細胞を2回洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドを含むPBSに再懸濁した。蛍光は、ファックソート(FACSort; Becton-Dickinson)を用いフローサイトメトリーで測定し、平均蛍光(F)はセルケスト(Cellquest)ソフトウェア(Becton-Dickison)を用いて計算し、バックグラウンド蛍光を差し引いた。
【0110】
結果
リポソーム製剤:リポソームは0、0.5、2および5モル%のNTA−脂質を用いて製剤化し、C−末端(His)6タグを含むように組換え操作を施した抗ErbB2scFv抗体(F5)を用いSKBR3腫瘍細胞への内在化についてテストした。4時間の内在化反応の後、細胞をPBS中の1mMEDTAで洗浄し、さらに前記細胞を塩基中で溶解し、マイクロフルオリメーターで蛍光の読みを得た。シグナル強度は、調べた範囲では高NTA−脂質組成物で劇的に増加した(図1)。内在化は、scFvがhis−タグを含まないとき、またはリポソームをNTA含有脂質無しで製剤化したときには生じなかった(図2)。前記アッセイの有用性を完全長のモノクローナル抗体にまで広げるために、二価性試薬スルホ−MBSを用いてプロテインAをペプチドCGGGHHHHHH(配列番号:2)と共役させた(前記試薬は前記ペプチド内のチオール基をプロテインAの第一アミンと架橋させる)。SDS−PAGE分析で約10kDaの分子量の明瞭なシフトが示されたことによって明らかなように、プロテインA1分子につき多数のペプチドが共役できることが確認された(データは示されていない)。SKBR3細胞をプロテインA−(His)6および抗ErbB2モノクローナル抗体ヘルセプチンと一緒にインキュベートしたとき、NTA−リポソームは特異的にエンドサイトーシスにより内在化された(図2)。プロテインA−(His)6またはヘルセプチン単独ではNTA−リポソームの取込みは増加せず、内在化はヘルセプチン/プロテインA−(His)6複合体によって仲介されることを示した(図2)。
【0111】
アッセイの最適化:反応でリポソーム濃度を高めることの影響を、抗ErB2scFv抗体(F5)または無関係の抗体(SKBR3細胞で発現しない血管抗原と結合する)を用いて調べた。リポソームの細胞による取込みは反応中のリポソーム濃度に比例した。調べた0から800μMのリン脂質範囲では、非特異的な抗体はバックグラウンド以上にはリポソームを内在化させなかった(図4)。
アッセイの感度:アッセイの感度は、SKBR3細胞で異なるエピトープに対する種々の濃度の抗体を用いてテストした(図4)。F5scFv抗体(抗ErB2抗体)のみが複合体の内在化をもたらした。興味深いことには、無関係の抗体(4G7)および非内在化抗ErbB2抗体(C6.5)は、NTA−リポソームの内在化を仲介しなかった(図5)。この結果は、F5およびC6.5の内在化について共焦点顕微鏡分析によって我々が得た以前の結果と一致する。SKBR3細胞でF5scFvを用いたアッセイの検出レベルは精製抗体1μg/mL以下であった。
【0112】
アッセイは抗体の精製を必要としない:(His)6−タグとリポソーム上のNTAとの特異的相互反応のゆえに、本アッセイは未精製scFvの使用を可能にし、多数のscFv分子を内在化についてアッセイできるはずである。これをテストするために、可溶性scFvの発現を96ウェル培養プレートで大腸菌から誘発し、前記上清を5モル%NTAリポソームを用いてSKBR3生細胞上で活性をテストした。以前の実験(結果は示されていない)によれば、SKBR3細胞は50%の細菌培養上清でも24時間まで耐えられることが示された。F5scFvを発現している大腸菌の上清を、10%の血清および抗生物質を500μMのNTAリポソームとともに含有する細胞培養液で1:3に混合し、SKBR3生細胞とインキュベートした。結果は、同様な特性を有する20μg/mLの精製scFvを用いて得られた結果と同様であった(図6)。
【0113】
腫瘍細胞の抗体内在化プロフィール:EGFRに対するscFv抗体(C10)を用いて乳癌細胞株群を分析した(図7)。細胞株MD−MDA468およびEGFRをトランスフェクトしたCHO細胞のみが顕著な量のNTA−リポソームを内在化させた。本アッセイの特異性は、MD−MDA468およびEGFRをトランスフェクトしたCHOにC10が内在化されることによって実証された。EGRFトランスフェクトCHO細胞への蛍光NTAリポソームの取り込みは非トランスフェクト細胞のそれの165倍であった。
【0114】
F5内在化についてのプロフィールは、F5抗体を用いてFACSで測定したとき、ErbB2の細胞表面発現とほぼ相関していた(図8)。しかしながら、細胞株SKOV3は、その細胞表面ErbB2発現レベルから期待されるようなリポソームの取込みを示さなかった。前記細胞株への貧弱なErB2の内在化は以前にも報告された(Kirpotin et al.(1997) Biochemistry 36:66-75)。同じ細胞株群への全取込みをF5−リポソーム(この場合、抗体は切断できない結合を介して脂質と共有結合されてある)を用いて決定したとき、FACSによるF5scFv結合に関する矛盾の存在は不明瞭になった。これはおそらく細胞表面結合F5−リポソームによるものであり、したがって、切断できない共有結合がリガンドとエフェクターの間に存在するとき、本アッセイは内在化を有効に測定することができない。
【0115】
実施例2
リポソームとリガンドのエピトープ仲介非共有結合共役のための
脂質−NTA共役物
6−(1,2−ジパルミトイルグリセロール−3−スクシニル)アミド−2−(N,N−ジカルボキシメチルアミノ)−ヘキサン酸ニッケル塩(DPGS−NTA−Ni)
6−アミノ−2−(N,N−ビス−カルボキシメチルアミノ)ヘキサン酸(I)をN(イプシロン)−CBZ−リジンおよびブロム酢酸から文献(Schmitt et al.(1994) J. Amer. Chem. Soc. 116:8485-8491)にしたがって合成した。ただし、カルボベンゾキシ保護基の除去は4MのHBr/氷酢酸混合物中で一晩実施し、ヒドロブロミドとして(I)を回収した。
1,2−ジパルミトイル−3−スクシニル−rac−グリセロール(II)は、1,2−ジパルミトイル−グリセロール、無水コハク酸、および4−ピロリジノピリジンから文献(Silvius & Leventis (1987) Biochemistry 26:3297)にしたがって調製した。
【0116】
DPG−NTA−Ni(III):335mg(0.5mmol)の(II)を2.5mLのクロロホルム無水物および1.25mLのジメトキシエタン無水物に溶解した。攪拌しながら、66mg(0.575mmol)のN−ヒドロキシスクシンイミドを添加し、続いて0.6mLのクロロホルム中の108mg(0.525mmol)のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の溶液を添加した。室温で4時間攪拌した後、沈澱した尿素をろ過し、ロ液を減圧下で乾燥させた。前記乾燥残留物を1mLのクロロホルムおよび3mLのメタノール無水物の混合物に懸濁し、さらに250mgの(I)のヒドロブロミドを添加し、続いて0.35mL(5mmol)のトリエチルアミンを加えた。前記混合物を50℃にし、浮遊した固形物を溶解させ、さらに室温で一晩攪拌した。前記混合物を10mLのクロロホルムで希釈し、40mLの50%メタノール水溶液(0.5MのNaClを含む)で3回洗浄した。クロロホルム層を0.26%の硫酸第一ニッケル6水和物の水溶液とともに振盪し、硫安無水物上で乾燥させ、さらに真空下で乾燥させた。前記乾燥残留物を2mLのヘキサンに溶解し、GF/Cガラス繊維フィルター(Whatman)でろ過した。ヘキサンを蒸発させて0.334g(理論的収量66%)の生成物を灰色の固体として得た。前記はヘキサンおよびクロロホルムに容易に溶解する。TLC:Rf0.16(シリカ;CHCl3−MeOH−H2O=65:25:4)。意図した構造であることはPMRによって確認された。
【0117】
6−(コレステリル−スクシニル)アミノ−2−(N,N−ビス−カルボキシメチルアミノ)−ヘキサン酸ニッケル塩(Chol−NTA−Ni)(IV)
化合物(III)について記載した方法と同じ方法で、244mgのコレステリルヘミスクシネート(Sigma Chemical Co., USA)をN−ヒドロキシスクシンイミドおよびDCCと反応させ、さらに化合物(I)のヒドロブロミドと反応させた。硫酸第一ニッケルの添加に際して、緑色のペーストが生成された。前記ペーストを数回クロロホルム−メタノール混合物(容積で5:1)で抽出した。前記抽出物を硫安無水物上で乾燥させ、GF/Cガラス繊維フィルターでろ過し、真空中で乾燥させた。119.5mg(理論的収量30%)の緑色の固形物が得られ、前記はクロロホルムに容易に溶解して青緑色の溶液を生じる。TLC:Rf0.12(シリカ;CHCl3−MeOH−H2O=65:25:4)。意図した構造であることはPMRによって確認された。
【0118】
6−(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロホスホリル−エタノールアミノカルボニル)ポリ(オキシエチレン)−(オキシカルボニル)アミノ−2−(N,N−ビス−カルボキシメチルアミノ)−ヘキサン酸ニッケル塩(DSPE−PEG−NTA−Ni)(V)
分子量が3400のポリ(エチレングリコール)から調製した198mg(0.0445mmol)のジステアロイルホスファチジルエタノールアミノカルボニル−ポリ(エチレングリコール)−プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS−PEG−DSPE;Shearwater Polymers, Alabama, USA)を、1mLのエタノール無水物および0.5mLのクロロホルム無水物の混合物に溶解し、さらに0.5mLのエタノール無水物および0.15mL(1.08mmol)のトリエチルアミンの混合物中の(I)のヒドロブロミド40.8mg(0.120mmol)の溶液と混合し、60℃で2時間攪拌した。前記反応混合物を乾燥させ、0.14MのNaCl水溶液の3mLに溶解した。前記混合物を15500×gで5分遠心分離して清澄にし、さらに透明な上清を真空中で乾燥させた。残留物を2.5mLの0.144MのNaClに溶解し、pHを1NのNaOHで6.8に調節し、0.12mLの1MのNiSO4を添加した。架橋デキストランビーズ(セファデックスG−75;Pharmacia Amersham, USA)の13mLのカラムで0.144MのNaClを溶離液として用いて前記溶液でクロマトグラフィーを実施した。ボイド容積(合計4mL)で出現する分画を集め、一晩凍結乾燥して乾燥させた。前記凍結乾燥固形物を2mLのエタノール無水物および0.2mLのクロロホルムの混合物で抽出し、不溶物質を遠心分離で除去し、透明な溶液を真空中で乾燥させた。残留物を0.1mLのクロロホルムを含む2mLのエタノールに再度溶解し、前記溶液を遠心分離(15.5×g、5分)によって清澄にし、さらに真空中で乾燥させた。青色の固形物をクロロホルム−メタノール混合物(容積で60:40)に溶解した。水に溶解した場合淡青色の溶液を生じた。意図した構造であることはPMRで確認した。
【0119】
リポソームへの製剤化:化合物III、IV、Vをリポソーム脂質の0.5モル%、1モル%、2モル%または5モル%の量で、POPCおよびコレステロール(3:2のモル比)から調製した、蛍光レポーターHPTSを含有する小さな単層のリポソームに製剤化し、HER2過剰発現SKBR−3細胞およびヘキサヒスチジンタグをもつリコンビナント抗HER2scFv(F5)を用いて、上記実施例1で述べたようにCLIAアッセイでテストした。結果は、DOGS−NTA−Niを用いた実施例1で述べた結果と同様であった。
【0120】
実施例3
Ni−NTA−PEG−DSPEおよびHis付せん付きscFv抗体を
用いた細胞毒性リポソームの細胞内デリバリー
DSPC、コレステロール、メトキシポリ(エチレングリコール)−DSPE誘導体(PEG(2000)−DSPE、PEG分子量2000;Avanti Polar Lipids, Alabama, USA)および化合物V(Ni−NTA−PEG−DSPE)(モル比=3:2:0.05:0.06)の脂質組成を有するリポソームを、脂質フィルム水和法(lipid film hydration)およびポリカーボネートトラックエッチング処理膜(polycarbonate track-etched membrane)(0.1μm、10回)押出し法を0.25Mの硫安水溶液中で55℃で実施して調製した。架橋デキストランビーズ(セファデックスG−75;Pharmacia, New Jersey, USA)を用いてゲルクロマトグラフィーを実施して、未被包化硫安を除去し、5%デキストロース、5mMモルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH5.5、NaOHで調節)に移した後、リポソームを10mg/mLの二酒石酸ビノレルビン溶液USP(Glaxo Wellcome, USA)と混合してモル比5:1の薬剤/脂質とし、55℃で30分インキュベートした。非被包化ビノレルビンを上記のようにゲル−クロマトグラフィーで除去した。典型的には>80%の薬剤が、前記のようにして得られたNi−NTA−PEG−DSPE含有リポソームに被包化されたままであった。コントロールリポソームは、Ni−NTA−PEG−DSPEの代わりにPEG−DSPEを用いて調製した。共有結合4G7含有リポソームは、ビノレルビン付加コントロールリポソームを両親媒性リンカーと共役させた4G7共役物、マレイミド−PEG−DSPEとともにインキュベートして調製した(米国特許第6,210,707号(Papahadjopoulos et al.))。血管内皮増殖因子(VEGF)レセプターを発現しているウシの内皮細胞(BEND−3)を、遊離(すなわち非被包化)ビノレルビン0.03から90μg/mLまたは、ヘキサヒスチジンタグおよび末端システイン基を有する内在化(機能を有する)抗VEGFRscFv抗体0.02mg/mLを含む、もしくは含まないNi−NTA−PEG−DSPEリポソームに被包化したビノレルビンを含有する増殖培養液中でインキュベートした。前記細胞を前記薬剤を含まない増殖培養液でさらに72時間ポストインキュベートし、細胞の生存度を通常のテトラソリウム(MTT)アッセイで決定した。細胞毒性中央値用量(IC50)(すなわち、未処理コントロールの50%まで細胞生存度を減少させる用量)は以下のとおりであった:遊離ビノレルビン、0.67μg/mL;4G7scFvを含まないNi−NTA−PEG−DSPEリポソーム中のビノレルビン、>100μg/mL(IC50に達せず);コントロールリポソーム+4G7scFv、<100μg/mL(IC50に達せず);共有結合4G7を含むリポソーム中のビノレルビン、2.5μg/mL;Ni−NTA−PEG−DSPEリポソーム+4G7scFv、1.4μg/mL。したがって、レセプター特異的scFvがヘキサヒスチジンタグを介して結合したNi−NTA−PEG−DSPE含有リポソームによって、血管上皮細胞にビノレルビンが特異的に配送されることが観察された。
【0121】
実施例4
Ni−NTA−PEG−DSPEリポソームおよびヘキサヒスチジン
付せん付き抗体による癌細胞へのメトトレキセートの誘導配送
文献(Szoka and Papahadjopoulos (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:4134-4178)に記載された逆相蒸発法によって、DSPC、コレステロールおよびPEG(2000)−DSPE(モル比、3:2:0.025)並びにN−4−ヒドロキシエチル−ピペラジノ−エチルスルホン酸(HEPES)ナトリウム塩(pH7.2)の10mM緩衝溶液中のメトトレキセートナトリウム溶液(100mg/mL)からメトトレキセート含有リポソームを調製した。溶離液として20mMのHEPES、144mM塩化ナトリウム(HBS緩衝液)を用いてゲル−クロマトグラフィーによって非被包化メトトレキセートを分離した。リポソームのリン脂質1mmol当たり150±7mgのメトトレキセートを含む生成されたリポソームを、HBS緩衝液に溶解したNi−NTA−PEG−DSPEとともにリポソームのリン脂質の2モル%の量でインキュベートした(55℃、30分)。リポソームから薬剤の漏出は前記インキュベーション中には検出されなかった。4G7scFv含有、非含有の前記リポソームおよび遊離メトトレキセートの毒性中央値用量(IC50)は、実施例3に記載したようにBEND3細胞培養で決定し、以下のとおりであった:遊離メトトレキセート、>90μg/mL(IC50に達せず);抗体を含まないNi−NTA−PEG−DSPEリポソーム中のメトトレキセート、>90μg/mL(IC50に達せず);ヘキサヒスチジン付せん付き4G7scFv存在下でのNi−NTA−PEG−DSPEリポソーム中のメトトレキセート、9μg/mL。したがって予め生成したメトトレキセートリポソームへのNi−NTA−PEG−DSPEの取込みによって、ヒスチジン付せん付き抗体を含む内在化され得る構築物を形成するメトトレキセート含有リポソームが得られた。
【0122】
実施例5
種々のNi−NTA脂質を含むリポソームへの細胞毒性薬剤の付加
リポソーム中のNi−NTA脂質の性質は、トランスメンブレングラディエント法によるサイトトキシンノ被包化効率に予期せぬ影響を示した。0.25Mの硫安を捕捉したリポソームを以下の組成を有する脂質マトリックスを用いて調製した:DSPC、コレステロール(Chol)およびPEG−DSPE(モル比、3:2:0.03)、調製物A;DSPC、Chol、PEG−DSPEおよびNi−NTA−DOGS(モル比、3:2:0.03:0.06)、調製物B;およびDSPC、Chol、およびNi−NTA−PEG−DSPE(化合物V)(モル比、3:2:0.03:0.06)、調製物C。リポソームを5%デキストロース、5mMのMES−N緩衝液(pH5.5)(MES−デキストロース)に入れた後、ビノレルビン(VNR)またはドキソルビシン(DOX)を、リポソームのリン脂質1mmol当たり150mgの薬剤のインプット薬剤/脂質比で前記リポソームとインキュベートした(55℃、30分)。リポソームを氷上で冷却し、さらに、MES−デキストロース緩衝液を用いてゲル−クロマトグラフィーで非被包化薬剤を分離した。リポソームのリン脂質の濃度は、リポソームの酸性消化後にモリブデート−アスコルビン酸法によって分光光度法で決定した。リポソームの薬剤の濃度は、80%メタノール水溶液(ビノレルビン、370nmでの吸収)または70%イソプロパノール−0.1M塩酸水溶液(ドキソルビシン、485nmでの吸収)中にリポソームを溶解した後、標準曲線との比較によって分光光度法で決定した。ローディング効率はローディングのために添加した全薬剤に対する被包化薬剤の百分率として算出した。結果を表1に示す。
【0123】
【表1】

【0124】
Ni−NTA−脂質の性質は、脂質水和媒体の直接除去による被包化(例えば逆相蒸発)にほとんど影響を及ぼさない(HPTS、MTX)。しかしながら直接除去は、ほぼ定量的な被包化を提供するグラディエント法と比較して非効率的である(MTXローディング効率は28.7から29.5%)。したがって、予期に反して、ポリマー結合NTA脂質のみが、有利なトランスメンブレングラディエント様式の方法によって薬剤の効率的なローディングを提供した。
本明細書に示した実施例および実施態様は単なる例示であって、種々の改変および変更が当業者によって提唱されるであろうが、それらは本発明の範囲内に包含されることは理解されよう。本明細書に引用した全ての刊行物、特許および特許出願は参照により本明細書に含まれる。
【0125】
関連出願の相互引用
本出願は、USSN60/241279(2000年10月18日出願)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)の優先権を主張する。
連邦政府の研究開発補助により達成された発明の権利に関する記載
本研究は、米国国防省乳癌研究プログラム(Department of Defense Breast Cancer Research Program)グラント番号DAMD17-94-J-4433およびDAMD17-98-1-8189によって部分的に補助された。合衆国政府は本発明に関して一定の権利を有する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、His6エピトープタグを有する細胞内在化リガンドの存在下におけるリポソームの細胞中への内在化に対する、前記リポソーム内Ni−NTA−脂質の影響を示す。被包化蛍光マーカーを含む小さな単層リポソームを、0.5モル%(四角)、2モル%(ダイアモンド)または5モル%(丸)のNTA−脂質(DOGS−NTA−Ni(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL))(リポソームリン脂質のモル%として測定)を含む脂質マトリックスを用いて調合し、C−末端(His)6−タグを含むように人工操作を施した抗ErbB2scFv抗体(F5)の20μg/mLを用いて、ErbB2発現腫瘍細胞への内在化についてテストした。4時間の内在化反応の後、細胞を1mMのEDTAを含む生理食塩水で洗浄し、塩基中で溶解し、ミクロフルオリメーターで蛍光の読みを得た。
【図2】図2はCLIAアッセイの特異性を示す。SKBR3腫瘍細胞をNTA−リポソーム(5モル%のNi−NTA−DOGS)および(His)6−タグのない抗ErbB2抗体F5、または非内在化抗ErbB2抗体(C6.5)とともに、またはscFv非存在下でインキュベートした。また別に、NTA−DOGS脂質無しで調製した蛍光標識リポソームとともに、(His)6−タグを含むF5scFvを一緒にインキュベートした。4時間の内在化反応の後、細胞を1mMのEDTAを含む生理的緩衝食塩水で洗浄し、塩基中で溶解し、ミクロフルオリメーターで蛍光の読みを得た。
【図3】図3は、プロテイン−A−(His)6化学共役物を用いた、CLIAによるモノクローナル抗体の内在化をモニターしたものである。SKBR3細胞を、(His)6タグをもつ抗ErbB2抗体F5、抗ErbB2モノクローナル抗体ヘルセプチン(Herceptin)、プロテインA−(His)6単独、またはヘルセプチンとプロテインA−(His)6との混合物とともにインキュベートした。4時間の内在化反応の後で、細胞を塩基中で溶解し、ミクロフルオリメーターで蛍光の読みを得た。
【図4】図4は、CLIAアッセイでのリポソーム濃度の影響を示す。20μg/mLの抗ErbB2抗体F5とともに(四角)またはその非存在下で(丸)、被包化した蛍光マーカーを含む種々の濃度のNi−NTA−リポソームとともにSKBR3細胞をインキュベートした。4時間の内在化反応の後で、細胞を1mMのEDTAを含む生理的緩衝食塩水で洗浄し、塩基中で溶解し、細胞に結合したリポソーム脂質量をミクロフルオリメーターでの蛍光の読みから決定した。
【図5】図5は、CLIAアッセイにおける抗体濃度の影響を示す。種々の濃度の抗ErbB2抗体F5(実線と丸)、コントロール抗体(四角)、または無抗体(点線、丸)および2モル%のNi−NTA−DOGSを含むNTA−リポソームとともにSKBR3細胞を一緒にインキュベートした。4時間の内在化反応の後で、細胞を1mMのEDTAを含む生理的食塩水で洗浄し、塩基中で溶解し、ミクロフルオリメーターで蛍光の読みを得た。
【図6】図6は、CLIAアッセイにおける培養上清の使用を示す。scFv抗体C10、非内在化scFv抗体C6.5、抗ErbB2scFv抗体F5を発現している大腸菌の培養上清、またはscFvを発現していない大腸菌の培養上清をNTA−リポソームと一緒に用い、SKBR3細胞を同時にインキュベートした。4時間の内在化反応の後、細胞を1mMのEDTAを含む生理的緩衝食塩水で洗浄し、塩基中で溶解し、ミクロフルオリメーターで蛍光の読みを得た。
【図7】図7は、抗EGFRscFv抗体による腫瘍細胞の分析を示す。抗EGFR抗体C10を蛍光標識NTAリポソームとともに、種々の量のEGFR:SKBR3、SKOV3、BT474、MCF7、MD−MBA453、MD−MDA468、CHO−EGFR、またはCHOを発現している細胞株上で一緒にインキュベートした。取り込みは全細胞タンパク質に対して標準化した。
【図8】図8は、フローサイトメトリーによる抗ErbB2蛍光染色の比較、共有結合させたリポソームの取込み、およびCLIAアッセイを示す。腫瘍細胞を抗ErbB2scFv抗体F5とインキュベートし、FITC標識抗FLAG抗体で検出し、フローサイトメトリーで蛍光を定量した。また別には、被包化蛍光マーカーHPTSを含むリポソームに共有結合させたF5scFvを含むイムノリポソームと腫瘍生細胞をインキュベートした。CLIAアッセイは、F5scFvおよびNTA−リポソームとの同時インキュベーションによって実施した。リポソームの蛍光はミクロフルオリメーターで読み取った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質、前記脂質と結合した親水性ポリマー、および前記親水性ポリマーと結合した金属キレート基を含む金属キレート脂質組成物。
【請求項2】
前記金属キレート基がエピトープタグとキレート結合を形成することができる請求項1の金属キレート脂質組成物。
【請求項3】
前記金属キレート基がニトリロ三酢酸(NTA)である請求項1の金属キレート脂質組成物。
【請求項4】
前記金属キレート基がイミノ二酢酸(IDA)である請求項1の金属キレート脂質組成物。
【請求項5】
前記親水性ポリマーがポリ(エチレングリコール)を含む請求項1の金属キレート脂質組成物。
【請求項6】
前記脂質がジステアロイル−グリセロホスホリル−エタノールアミン(DSPE)を含む請求項1の金属キレート脂質組成物。
【請求項7】
6−(1,2−ジパルミトイルグリセロール−3−スクシニル)アミド−2−(N,N−ジカルボキシメチルアミノ)−ヘキサン酸(DPGS−NTA)を含む金属キレート組成物。
【請求項8】
6−(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロホスホリル−エタノールアミノカルボニル)ポリ(オキシエチレン)−(オキシカルボニル)アミノ−2−(N,N−ビス−カルボキシメチルアミノ)−ヘキサン酸(DSPE−PEG−NTA)を含む金属キレート組成物。
【請求項9】
6−(コレステリル−スクシニル)アミノ−2−(N,N−ビス−カルボキシメチルアミノ)−ヘキサン酸(Chol−NTA)を含む金属キレート組成物。
【請求項10】
ステロール、前記ステロールと結合した親水性ポリマー、および前記親水性ポリマーと結合した金属キレート基を含む金属キレート組成物。
【請求項11】
前記ステロールがコレステロールであり、前記金属キレート基がニトリロ三酢酸(NTA)である請求項10の金属キレート組成物。
【請求項12】
前記キレート基がエピトープタグとキレート結合を形成することができる請求項1の金属キレート脂質組成物;
細胞と結合し、さらに場合によって該細胞によって内在化されることを特徴とする、前記エピトープタグを含むリガンド;及び
前記金属キレート脂質組成物に結合しているエフェクター
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項13】
前記脂質がリポソームを含むこと;及び、
前記リポソームが、前記フェクターを含有するか、または前記エフェクターと複合体を形成すること
を特徴とする請求項12の組成物。
【請求項14】
前記親水性ポリマーがポリ(エチレングリコール)を含む請求項12の組成物。
【請求項15】
前記脂質がDSPEを含む請求項12の組成物。
【請求項16】
エピトープタグを介してエフェクターと非共有結合されたリガンドを含有することを特徴とする、内在化レセプターについて細胞をスクリーニングするための構築物。
【請求項17】
前記リガンドがペプチドである請求項16の構築物。
【請求項18】
前記リガンドが、scFv、Fv、Fab、モノクローナル抗体、サイトカイン、酵素、ホルモンおよび増殖因子から成る群から選択される請求項16の構築物。
【請求項19】
前記リガンドがファージディスプレーライブラリーで生成されるリガンドである請求項16の構築物。
【請求項20】
前記ファージディスプレーライブラリーが繊維状ファージを用いる請求項19の方法。
【請求項21】
前記エフェクターが、His−タグ、Flag−タグ、HA−タグ、myc−タグおよびDYKDDDDK(配列番号:1)エピトープから成る群から選択されるエピトープタグによって前記リガンドと非共有結合されている請求項16の構築物。
【請求項22】
前記エフェクターが、酵素、比色標識、蛍光標識、化学発光標識、放射性標識、ナノ粒子およびリポソームから成る群から選択される請求項16の構築物。
【請求項23】
前記エピトープタグがヘキサヒスチジン(His6)タグであり、前記レポーターがニトリロ三酢酸(NTA)脂質またはイミノ二酢酸(IDA)脂質を含有するリポソームである請求項16の構築物。
【請求項24】
前記リガンドが抗体であり、前記エピトープタグが、プロテインAまたはプロテインGとの共有結合を介して前記抗体と結合される請求項16の構築物。
【請求項25】
前記構築物が前記リガンドに対して多価である請求項16の構築物。
【請求項26】
内在化機能を有する細胞を特定するか、または細胞によって内在化されたリガンドをスクリーニングするためのキットであって、請求項16〜25のいずれかに記載の構築物のライブラリーを収納する容器を含むことを特徴とする、前記特定またはスクリーニング用キット。
【請求項27】
リガンドを内在化させる細胞を特定する用途、または細胞によって内在化されたリガンドを特定する用途で前記ライブラリーを使用することについて説明する指示物をさらに含む請求項26のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−270148(P2007−270148A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78868(P2007−78868)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【分割の表示】特願2002−536414(P2002−536414)の分割
【原出願日】平成13年10月17日(2001.10.17)
【出願人】(500027932)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (39)
【Fターム(参考)】