説明

内容量推定装置

【課題】容器内にある液体又は固体の内容量を正確に推定できる小型の内容量推定装置を提供する。
【解決手段】車両燃焼システム1は、気密タンク30が燃料タンク10内の気相部17に接続されており、加圧器20により、気相部17にシリンダ21から気体が押し込まれると、気相部17の圧力が変動して、気相部17と気密タンク30との間で気体を移動させようとする力が働くが、気相部17と気密タンク30との間に設けられたオリフィス41によって、この気体の移動が規制されて、気相部17の圧力と気密タンク10内の圧力とに圧力差ΔPmが生じ、この圧力差ΔPmを差圧センサユニット51によって測定する。そして、CPUによって、気体移送前の気相部17の圧力Pm1と、気体移送後に測定された圧力差ΔPmと、移送された気体量ΔVmと、に基づいて、燃料タンク10内の液量を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガソリン、液化ガス、又は、各種薬液などの液体、又は、樹脂ペレット、木質ペレット、又は、粉砕ガラスなどの固体を収容する容器内にある前記液体又は前記固体の内容量を推定する内容量推定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される内容量推定装置としての燃料残量検出装置は、容器としての燃料タンク内の燃料の液位(即ち、液面高さ)を検出する液位検出手段を有する。この液位検出手段としては、燃料液面上に浮かぶフロートの位置に応じて抵抗体上を摺動する接点を有し、抵抗体の両端に印加した電圧を分圧した電圧を接点に出力するような構成のものなどが一般に採用されている。そして、燃料残量検出装置は、液位検出手段の電気的特性、すなわち前記接点から出力される電圧に基づいて内容量としての燃料の残量を検出していた。
【0003】
しかしながら、このような燃料残量検出装置は、車両が傾斜したり、振動したりすることによって、車両の燃料タンク内の液面が変動するので、燃料タンク内の液面変動にフロートが追随してフロートの高さが変動し、そのため、燃料計の表示に誤差が生じてしまうという問題があった。また、車室空間の拡大化の要請などを背景に、車両内スペースの効率化が求められる車両などにおいては、車両内の隙間を利用して燃料タンクが搭載されることがあり、そのため、燃料タンクの形状が複雑になって、液面高さに基づいて燃料残量を正確に検出することが難しいという問題があった。そして、このような問題を解決する技術が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に提案されている燃料残量計測装置901は、図11に示すように、箱状のタンク本体903を有している。このタンク本体903の内側空間は、柔らかな袋状体905によって、燃料Fを収容する燃料貯留室907と、大気に連通する圧力調整室909と、に区画されている。さらに、燃料残量計測装置901は、圧力調整室909内へ空気を送出することで圧力調整室909内の圧力を上昇させる機能を果たす加圧器アッセンブリ913と、圧力調整室909内における気体の圧力に応じた圧力信号を出力する圧力計915と、制御装置と、を有している。加圧器アッセンブリ913は、流通路937を介して圧力調整室909と接続されたシリンダ927と、シリンダ927内を往復移動されるピストン925と、を有している。
【0005】
燃料残量計測装置901の制御装置は、加圧器アクチュエータによりピストンロッド923を介して、ピストン925をシリンダ927内で上方から下方に移動させて、圧力調整室909へ所定量の大気を押し込むとともに、この所定量の大気の押し込み前後での圧力調整室909の圧力を圧力計915によって測定する。そして、制御装置は、圧力調整室909に押し込んだ大気の量と、大気の押し込み前の圧力調整室909の圧力と、大気の押し込みによる圧力調整室909の圧力変化量と、に基づいて、ボイルの法則から圧力調整室909の容積を算出して、この圧力調整室909の容積をタンク本体903の容積から差し引いて、燃料貯留室907の容積、即ち、燃料Fの残量を検出していた。これにより、液面の変動や燃料タンクの形状の影響を受けることなく、燃料タンク内の燃料の残量を正確に検出することができた。
【0006】
また、燃料残量計測装置901においては、タンク本体903の内側空間を、袋状体905によって燃料貯留室907と圧力調整室909とに区画する構成であったが、例えば、液化石油ガス(LPG)などの液化ガスを燃料Fとする場合、袋状体905内で燃料Fが気化してしまう場合があるなど、燃料Fの残量を正確に検出することができないことがある。そのため、液化ガスを燃料Fとする場合等には、図12に示すように、袋状体905を備えずにタンク本体903に直接燃料Fを収容して、液相部を燃料貯留室907とし、気相部を圧力調整室909とした構成の燃料残量計測装置901Aを用いていた。
【0007】
そして、上述した燃料残量計測装置901Aでは、例えば、液化ガスを燃料Fとした場合など、燃料タンクの周囲の温度などの環境条件により圧力調整室909内の圧力が大きく変化し(例えば、液化石油ガスの場合、0.1MPa〜3MPa程度)、また、環境条件が一定の場合でも、燃料タンクに収容する液化ガスの種類等によって圧力調整室909内の圧力が変化するので、このような広範囲の圧力を測定できる圧力計を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−280920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、広範囲の圧力を測定できる圧力計は、一般的に分解能が低い(即ち、計測できる最小単位が大きい)ので測定精度が低く、また、大気の押し込み前後での圧力調整室909の圧力を測定して、これら圧力の差分から圧力調整室909の圧力変化量を検出すると、測定精度の低い値から圧力変化量を求めることになり、測定精度がさらに低くなってしまうという問題があった。また、圧力計の分解能が低いので、圧力調整室909の圧力変化量を求めるためには多量の大気を押し込む必要があり、大型のピストンやシリンダを備えた加圧器アッセンブリ913が必要となって、装置が大型化してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題に係る問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、容器内にある液体又は固体の内容量を正確に推定できる小型の内容量推定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、容器内にある液体又は固体の内容量を推定する内容量推定装置であって、前記容器と別体で設けられた気密タンクと、前記容器内の気相部と前記気密タンクとを接続する配管と、前記気相部に外部から気体を押し込むように又は前記気相部から外部に気体を引き出すように前記気体を移送可能に設けられた気体移送手段と、前記気体移送手段によって前記気体が移送されたときに、前記気相部と前記気密タンクとの間での気体の移動を規制可能な気体移動規制手段と、前記気相部の圧力と前記気密タンク内の圧力との圧力差を測定する圧力差測定手段と、前記気体が移送されるように前記気体移送手段を駆動するとともに、前記気体移送手段が駆動されることにより前記気体が移送される前の前記気相部の圧力、前記気体が移送された後に前記圧力差測定手段によって測定された前記圧力差、及び、前記気体移送手段によって移送された気体量、に基づいて前記内容量を推定する内容量推定手段と、を有していることを特徴とする内容量推定装置である。
【0012】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記気体移動規制手段が、前記配管に設けられ、前記気体が移送された後に少なくとも前記圧力差測定手段によって前記圧力差が測定されるまでの所定の圧力保持時間にわたり、前記気体が移送される前の前記気密タンク内の圧力を保持可能なように、前記気相部と前記気密タンクとの間での前記気体の移動の流量を制限する流量制限部材で構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記気体移動規制手段が、前記気相部と前記気密タンクとの間での前記気体の移動を許容する移動許容状態と、前記気体の移動を遮断する移動遮断状態と、を切替可能なように開閉制御される、前記配管に設けられた遮断弁と、前記気体移送手段によって前記気体が移送される前に、前記遮断弁を前記移動遮断状態に切り替える遮断弁切替手段と、で構成されている
ことを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載された発明において、前記気相部の圧力に応じた情報を測定する圧力情報測定手段を有し、前記内容量推定手段が、前記圧力情報測定手段によって測定された前記情報に基づいて、前記内容量の推定に用いるための前記気体が移送される前の前記気相部の圧力を検出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項1に記載された発明によれば、気密タンクが、容器と別体で設けられるとともに配管によって容器内の気相部に接続されており、気体移送手段によって、前記気相部に外部から気体を押し込むように又は前記気相部から外部に気体を引き出すように、前記気相部の外部の気体又は前記気相部の気体が移送されると、前記気相部の圧力が変化して、前記気相部と気密タンクとの間で気体を移動させようとする力が働くが、前記気相部と気密タンクとの間に設けられた気体移動規制手段によって、この気体の移動が規制されて、前記気相部の圧力と前記気密タンク内の圧力とに圧力差が生じ、この圧力差を圧力差測定手段によって測定する。そして、内容量推定手段によって、気体移送前の気相部の圧力と、気体移送後に圧力差測定手段によって測定された圧力差と、移送された気体量と、に基づいて、容器内にある液体又は固体の内容量を推定する。
【0016】
つまり、気体移送手段によって気体が移送されると、前記気相部の圧力が変化するものの、気体移動規制手段により前記気相部と気密タンクとの間の気体の移動が規制されて、気密タンクの圧力はすぐには変化せずに気体移送前の圧力(気体移送前の気密タンクの圧力と厳密に同一の圧力と、内容量の推定に支障が無い程度の小さい差異がある圧力とを含む)を保ち、これにより、前記気相部と気密タンクとの間に圧力差が生じるとともに、このときの圧力差は、前記気相部における気体移送前後の圧力変化量と等しく、この圧力差を圧力差測定手段によって測定する。
【0017】
請求項2に記載された発明によれば、気体移動規制手段が、前記気相部と気密タンクとを接続する配管に設けられ、気体移送後に少なくとも圧力差測定手段によって前記気相部と気密タンクとの間の圧力差が測定されるまでの所定の圧力保持時間にわたり、気体移送前の気密タンク内の圧力を保持可能なように、前記気相部と気密タンクとの間での前記気体の移動の流量を制限する流量制限部材で構成されている。つまり、気体移送手段によって気体が移送されると、前記気相部の圧力が変化するものの、流量制限部材により気体の移動の流量が制限されて、気密タンクの圧力はすぐには変化せずに少なくとも所定の圧力保持時間にわたり気体移送前の圧力を保ち、これにより、前記気相部における気体移送前後の圧力変化量と等しい圧力差が、前記気相部と気密タンクとの間に生じる。
【0018】
請求項3に記載された発明によれば、気体移動規制手段が、前記気相部と気密タンクとの間での気体の移動を許容する移動許容状態と、前記気体の移動を遮断する移動遮断状態と、を切替可能なように開閉制御される、配管に設けられた遮断弁と、気体移送手段によって気体が移送される前に、遮断弁を移動遮断状態に切り替える遮断弁切替手段と、で構成されている。つまり、前記気相部に気体が移送される前に、前記気相部と気密タンクとの間での気体の移動を遮断する移動遮断状態に切り替えることによって、当該気体が移送されると、前記気相部の圧力が変化するものの、遮断弁により気体の移動が遮断されて密閉された気密タンクは気体移送前の圧力を保ち、これにより、前記気相部における気体移送前後の圧力変化量と等しい圧力差が、前記気相部と気密タンクとの間に生じる。
【0019】
請求項4に記載された発明によれば、前記気相部の圧力に応じた情報を測定する圧力情報測定手段を有し、内容量推定手段が、圧力情報測定手段によって測定された前記情報に基づいて、容器の内容量の推定に用いるための、気体が移送される前の前記気相部の圧力を検出するように構成されている。つまり、内容量推定手段が、圧力情報測定手段によって測定された前記情報に基づいて検出した気体移送前の前記気相部の圧力を用いて容器内にある液体又は固体の内容量を推定する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載された発明によれば、気体移送手段によって気体が移送されると、前記気相部の圧力が変化するものの、気体移動規制手段により前記気相部と気密タンクとの間の気体の移動が規制されて、気密タンクの圧力はすぐには変化せずに気体移送前の圧力を保ち、これにより、前記気相部と気密タンクとの間に圧力差が生じるとともに、このときの圧力差は、前記気相部における気体移送前後の圧力変化量と等しく、この圧力差を圧力差測定手段によって測定するので、前記気相部の圧力と気密タンクの圧力との圧力差、即ち、前記気相部における気体移送前後の圧力変化量の範囲は、前記気相部の圧力の変化範囲より非常に小さく、そのため、圧力差を測定する圧力差測定手段における分解能を十分に高くすることができるとともに直接圧力差を測定して、測定精度を高めることができる。また、圧力差測定手段における分解能を高くすることで、圧力差が小さい場合でも検出が可能となり、気体移送手段によって移送される気体量を少なくでき、装置を小型化できる。
【0021】
請求項2に記載された発明によれば、気体移送手段によって気体が移送されると、前記気相部の圧力が変化するものの、流量制限部材により気体の移動の流量が制限されて、気密タンクの圧力はすぐには変化せずに少なくとも所定の圧力保持時間にわたり気体移送前の圧力を保ち、これにより、前記気相部における気体移送前後の圧力変化量と等しい圧力差が、前記気相部と気密タンクとの間に生じるので、簡易な構成で前記気相部と気密タンクとの間に圧力差を生じさせることができるとともに、圧力差を解消するための機構を設けることなく、時間経過により前記気相部と気密タンクとの間の圧力差を解消させることができる。
【0022】
請求項3に記載された発明によれば、前記気相部に気体が移送される前に、前記気相部と気密タンクとの間での気体の移動を遮断する移動遮断状態に切り替えることによって、当該気体が移送されると、前記気相部の圧力が変化するものの、遮断弁により気体の移動が遮断されて、気密タンクが密閉されて気体移送前の圧力を保ち、これにより、前記気相部における気体移送前後の圧力変化量と等しい圧力差が、前記気相部と気密タンクとの間に生じるので、前記気相部と気密タンクとの間の圧力差を確実に生じさせることができるとともに、圧力差が生じた状態を長時間保持できる。
【0023】
請求項4に記載された発明によれば、内容量推定手段が、圧力情報測定手段によって測定された前記情報に基づいて検出した気体移送前の前記気相部の圧力を用いて容器内の内容量を推定する。ボイルの法則等を用いて内容量を推定するためには、容器内の気相部の初期圧力(気体を移送する前の圧力)を用いる必要があるところ、容器の周囲温度などの環境条件の変化がない場合等においては、前記気相部の初期圧力はほぼ一定に保たれているので、当該初期圧力を予め測定するとともに装置内に保持するなどして、内容量の推定毎の前記気相部の初期圧力の測定を不要とすることができるが、上記環境条件等により気相部の初期圧力の変化がある場合には内容量の推定精度が低下してしまう。そして、本発明では、圧力情報測定手段によって、気相部の初期圧力に応じた情報を測定して、この情報に基づいて検出した気相部の初期圧力を内容量の推定に用いることができ、そのため、環境条件等により気相部の初期圧力が変化してしまう場合においても、内容量の推定精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態である車両燃料システムを示す構成図である。
【図2】図1の車両燃料システムの制御部の機能ブロック図である。
【図3】図2の制御部のCPUが実行する本発明に係る処理(内容量推定処理1)の一例を示すフローチャートである。
【図4】図1の車両燃料システムの変形例の構成を示す構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態である車両燃料システムを示す構成図である。
【図6】図5の車両燃料システムの制御部の機能ブロック図である。
【図7】図6の制御部のCPUが実行する本発明に係る処理(内容量推定処理2)の一例を示すフローチャートである。
【図8】図6の制御部のメモリに格納された気相部容積関係情報の一例を示すグラフである。
【図9】図6の制御部のメモリへの複数の気相部容積関係情報の格納状態を模式的に示す図である。
【図10】(a)は、液量推定装置が、加圧器に代えて、真空加圧ポンプを備えた構成を説明する図であり、(b)は、加圧器に代えて、遮断弁及びヒータを備えた構成を説明する図である。
【図11】従来の燃料残量検出装置を示す図である。
【図12】従来の他の燃料残量検出装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、本発明の内容量推定装置の第1の実施形態を備える車両燃料システムを、図1〜図4を参照して説明する。
【0026】
以下に説明する車両燃料システムは、車両に搭載されて、液化石油ガス(LPG)を当該車両の燃料Fとして収容する燃料タンクを備えるとともに、当該燃料タンク内の燃料Fの液量(内容量)を推定するシステムである。この車両燃料システムでは、液量を推定する際に燃料タンク内に気体を押し込むように移送することで燃料タンク内の圧力を上昇させ、気体を移送する前の燃料タンク内の圧力、気体移送前後での燃料タンク内の圧力上昇量、及び、移送された気体量に基づいて、燃料Fの液量を推定する。
【0027】
LPGなどの液化ガスを燃料Fとして収容した燃料タンク内では、周囲温度などの環境条件により圧力が0.1MPa〜3MPa程度まで変化するので、上述した従来の燃料残量検出装置などにおいてはこのような広範囲の圧力や、燃料タンク内の圧力上昇量(即ち、圧力変化量)を精度良く測定することが困難であり、液化ガスを燃料とした車両に用いるには不適当であった。そして、以下に説明する本発明の車両燃料システムは、液化ガスを燃料とした車両に適したものである。
【0028】
図1に示すように、車両燃料システム(図中、符号1で示す)は、容器としての燃料タンク10と、燃料タンク10内の燃料Fの液量を推定する内容量推定装置としての液量推定装置6と、を有している。
【0029】
燃料タンク10は、例えば、車両の床下などに配置されて、当該車両の燃料Fを収容する周知の車両部品であり、本実施形態においては、直方体の箱形状で容積100Lとなるように形成されている。燃料タンク10には、図示しない車両の燃料充填口に接続されて、燃料供給スタンドなどから供給される燃料Fを燃料タンク10内に流入させるための流入管11と、この流入管11を開放及び閉塞する、電磁弁で構成された流入弁12と、が設けられている。また、流入管11には、安全上取付が必要となる図示しない遮断バルブが設けられている。また、燃料タンク10には、図示しない内燃機関に燃料Fを供給するためのインジェクション装置等に接続されて、燃料タンク10内の燃料Fを当該インジェクション装置等に向けて流出させる流出管13と、この流出管13を開放及び閉塞する、電磁弁で構成された流出弁14と、が設けられている。なお、図1に示した燃料タンク10等の構成は一例であって、例えば、流入管11及び流出管13の燃料タンク10への接続箇所はシステム構成等に応じて適宜定められる。燃料タンク10内には、気化した燃料F等が収容される気相部17と、液体状の燃料Fが収容される液相部18と、が存在する。燃料タンク10内には、燃料Fが空の場合は気相部17のみ存在し、また、燃料Fが満量の場合でも若干の空間が設けられ、即ち、気相部17が存在する。
【0030】
この気相部17の容積は、当該気相部に移送された気体量と、気体が移送されることによる気相部17の圧力変化量との間に相関関係があり、例えば、一定の気体量を気相部17に押し込んだとき、気相部17の容積が大きいほど気相部の圧力変化量が小さく、気相部17の容積が小さいほど気相部17の圧力変化量が大きくなる。
【0031】
液量推定装置6は、気体移送手段としての加圧器20と、第1配管28と、気密タンク30と、第2配管38と、気体移動規制手段としてのオリフィス41と、圧力差測定手段としての差圧センサユニット51と、圧力情報測定手段としての気相部圧力センサ58と、制御部60と、を有している。
【0032】
加圧器20は、シリンダ21と、ピストン22と、ピストンロッド23と、アクチュエータ24と、圧力調整弁25と、を備えている。
【0033】
シリンダ21は、燃料タンク10に近接して配置されており、本実施形態においては、両端面部21a、21cが塞がれた円筒形状で容積2Lとなるように形成されている。シリンダ21は、第1配管28によって燃料タンク10に接続されている。第1配管28は、その一端28aが、燃料タンク10の側壁10bの上端に接続され、他端28bが、シリンダ21の下端面部21cに接続されている。つまり、シリンダ21は、燃料タンク10の上部、即ち、燃料タンク10内の気相部17(以下、単に気相部17という)に接続されている。これにより、シリンダ21には、気相部17と同じ気体が充填される。
【0034】
ピストン22は、シリンダ21の内部空間における横断面形状と同一となる円柱形状に形成されている。ピストン22は、シリンダ21内に収容されるとともに、その両端面22a、22bが、シリンダ21の両端面部21a、21cに平行で且つシリンダ21の軸方向(図1の上下方向)に移動可能に収容されている。ピストンロッド23は、一端がピストン22の上端面22aに固定され、他端がアクチュエータ24に支持されている。
【0035】
アクチュエータ24は、シリンダ21の上端面部21aの内面に設けられており、ピストンロッド23を突没することにより、ピストン22をシリンダ21の軸方向に移動させる。アクチュエータ24は、制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号によって駆動される。圧力調整弁25は、ピストン22に設けられた、上端面22aと下端面22bとを貫通する貫通孔22c内に設けられており、この貫通孔22cを開放及び閉塞する電磁弁で構成されている。圧力調整弁25は、制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号によって駆動される。
【0036】
アクチュエータ24によって、貫通孔22cが閉塞された状態でピストン22が下端面部21cに近づくように移動されると、シリンダ21内の気体が、第1配管28を通じて、燃料タンク10内の気相部17に押し込まれる。つまり、加圧器20は、シリンダ21内の気体をピストン22によって気相部17に押し込むように、シリンダ21内の気体を移送可能に設けられている。気相部17に押し込まれる気体量ΔVm(即ち、移送される気体量ΔVm)は、アクチュエータ24によるピストン22の移動距離に比例する。具体的には、ピストン22の下端面22bの面積に移動距離を乗じたものが気体量ΔVmとなる。このピストン22の移動距離は、燃料タンク10の容積及びシリンダ21の容積等に応じて予め定められている。本実施形態では、気相部17に押し込まれる気体量ΔVmが1.0Lとなるように上記移動距離が設定されており、この気体量ΔVmは後述するメモリ65に予め格納されている。このピストン22の移動距離、即ち、気相部17に押し込まれる気体量ΔVmについては、装置の構成等に応じて適宜定められているが、気相部17の圧力などに応じて可変としてもよい。また、圧力調整弁25によって貫通孔22cが開放されると、シリンダ21内におけるピストン22の上端面22a側と下端面22b側とが連通されてこれら両側の圧力差がなくなり、シリンダ21内の圧力が均一になる。
【0037】
気密タンク30は、燃料タンク10と別体で設けられ、当該燃料タンク10に近接して配置されており、本実施形態においては、直方体の箱形形状で容積1Lとなるように形成されている。気密タンク30は、第2配管38によって燃料タンク10に接続されている。この第2配管38は、その一端38aが、燃料タンク10の上壁10aの上端に接続され、他端38bが、気密タンク30の下壁30cに接続されている。つまり、気密タンク30は、燃料タンク10と別体で設けられるとともに、燃料タンク10の上部、即ち、気相部17に接続されている。これにより、気密タンク30には、気相部17と同じ気体が充填される。
【0038】
オリフィス41は、第2配管38の横断面と同形状の板状で、その中央部分に小径の貫通孔41aが設けられた部材であり、第2配管38に気体の流動方向に垂直(即ち、貫通孔41aの軸が流動方向に平行)になるように設けられている。オリフィス41は、貫通孔41aを通じて気体を流動させることにより、第2配管38に流れる気体の流量を制限する(即ち、気体の移動を規制する)。即ち、オリフィス41は、請求項中の流量制限部材に相当する。本実施形態において、オリフィス41は、規制流量が1000ccm(圧力差1気圧において、1000cc/分)のものを用いている。
【0039】
オリフィス41の構成については、気密タンク30が、少なくとも気相部17に気体が押し込まれた時点から後述の差圧センサユニット51により気相部17の圧力と気密タンク30の圧力との圧力差が測定されるまでの所定の圧力保持時間にわたり、気体押込前の圧力を保持していられるように、液量推定装置の構成などに応じて、規制流量が適宜定められる。本明細書において、「気体押込前の圧力(即ち、気体移送前の圧力)」とは、気体押込前の気密タンク30の圧力と厳密に同一の圧力と、気体押込前の気密タンク30の圧力と液量の推定に支障が無い程度の小さい差異がある圧力とを含む。または、オリフィス41を設けず、第2配管38自体が上記気体の流量を規制する流量規制部材として機能するように、第2配管38の内径を細く形成してもよい。
【0040】
差圧センサユニット51は、第1圧力室52と、第2圧力室53と、第1圧力室52と第2圧力室53を仕切るとともにこれら圧力室の圧力差に応じて変形するダイヤフラム54と、ダイヤフラムの変形量(即ち、圧力差)に応じた電気信号を出力する半導体歪みゲージ55と、などで構成されている。第1圧力室52は、管路56aを通じて燃料タンク10の側壁10bの上端(即ち、気相部17)に接続されており、第2圧力室53は、管路56bを通じて気密タンク30の側壁30bに接続されている。これにより、差圧センサユニット51は、気相部17の圧力と気密タンク30の圧力との圧力差(即ち、差圧)を測定する。差圧センサユニット51は、後述する制御部60(即ち、CPU62)に電気的に接続されており、測定した圧力差に応じた電気信号を制御部60に出力する。
【0041】
本実施形態において、差圧センサユニット51は、自律して周期的に圧力差を測定するものである。つまり、この差圧センサユニット51の測定周期が、上述した圧力保持時間の最大値となるので、オリフィス41は、少なくともこの測定周期にわたり、気体押込前の圧力を保持できるように構成される。また、差圧センサユニット51は、これに限定されるものではなく、制御部60からの要求に応じて圧力差を測定するものであってもよい。この場合、気体押込後に制御部60からの測定要求が差圧センサユニット51に出力されるまでの時間が上記圧力保持時間となる。
【0042】
気相部圧力センサ58は、例えば、半導体式の圧力センサなどで構成されて、燃料タンク10の上壁10aに設けられており、気相部17の圧力を測定する。本実施形態において、気相部圧力センサ58は、気相部17の圧力範囲である0.1MPa〜3MPaを50Pa単位で計測可能な分解能を有するものを用いている。また、気相部圧力センサ58は、気相部17の絶対圧力(真空を基準とした圧力)を測定できるものを用いる。または、液量の推定中の大気圧の変動が当該推定に影響ない程度に小さければ、ゲージ圧力(大気圧を基準とした圧力)を測定できる圧力センサを用いてもよい。気相部圧力センサ58は、後述する制御部60(即ち、CPU62)に電気的に接続されており、測定した気相部17の圧力に応じた電気信号を制御部60に出力する。気相部圧力センサ58は、自律して周期的に圧力を測定するものであるが、これに限定されるものではなく、制御部60からの要求に応じて圧力を測定するものであってもよい。
【0043】
制御部60は、図2に示すように、周知の組み込み機器用のマイクロコンピュータ61などで構成されている、このマイクロコンピュータ61は、中央演算処理装置(CPU)62と、ROM(Read Only Memory)63と、RAM(Random Access Memory)64と、メモリ65と、を備えている。
【0044】
CPU62は、車両燃料システム1における各種制御を司り、ROM63に記憶されている各種制御プログラムにしたがって本実施形態に係る制御を含む各種の処理を実行する。ROM63は、前記制御プログラムやこの制御プログラムに参照されるパラメータなどの各種情報を記憶している。特に、ROM63は、CPU62を、内容量推定手段、遮断弁切替手段などの各種手段として機能させるための制御プログラムを記憶している。そして、CPU62は、この制御プログラムを実行することで前述した各種手段として機能する。RAM64は、CPU62が各種の処理を実行する上において必要なデータ、プログラム等が適宜記憶される。メモリ65は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリなどの電源断となってもデータを保持できる不揮発性のメモリで構成されている。このメモリ65には、後述する内容量推定処理で用いられる数式やパラメータ(後述する圧力調整時間、圧力差測定待ち時間など)等の各種情報が記憶されている。
【0045】
また、マイクロコンピュータ61は、図示しないインタフェース部を備えている。このインタフェース部は、アクチュエータ24、圧力調整弁25、差圧センサユニット51、及び、気相部圧力センサ58のそれぞれと、CPU62と、を接続しており、これら間での各種信号の送受を可能としている。また、図示していないが、インタフェース部は、上述した流入弁12及び流出弁14と、CPU62と、をさらに接続しており、CPU62は、例えば、後述する内容量推定処理実行中は、流入管11及び流出管13を閉塞するように流入弁12及び流出弁14を制御して、燃料タンク10内の圧力が漏出しないようにするなど、必要に応じて、流入弁12及び流出弁14を制御して、流入管11及び流出管13を開放及び閉塞する。また、インタフェース部は、図示しない燃料計と、CPU62と、をさらに接続しており、CPU62は、推定した燃料Fの液量を当該燃料計に表示させる。
【0046】
次に、上述したCPU62が実行する本発明に係る処理(内容量推定処理1)の一例を、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0047】
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1に電源が供給されて制御部60のCPU62が動作を開始し、CPU62は、所定の初期化処理を実行する。そして、CPU62は、初期化処理が終了した後に、例えば、一定周期などの所定のタイミングで、図3のフローチャートに示すステップS105に進む。
【0048】
ステップS105では、ピストン22が、所定の押込前位置P1に移動するように、アクチュエータ24に制御信号を送出するとともに、ピストン22の貫通孔22cが開放されるように、圧力調整弁25に制御信号を送出する。そして、ステップS110に進む。
【0049】
ステップS110では、所定の圧力調整時間が経過するまで待つ。この圧力調整時間は、シリンダ21内の圧力が均一になるとともに、シリンダ21の圧力、気相部17の圧力、及び、気密タンク30の圧力が同一となるまでの待ち時間である。そして、圧力調整時間経過後に、貫通孔22cが閉塞されるように、圧力調整弁25に制御信号を送出する。そして、ステップS120に進む。
【0050】
ステップS120では、気相部圧力センサ58から出力された電気信号に基づいて、気相部圧力センサ58によって測定された気相部17の圧力Pm1を検出する。そして、ステップS130に進む。
【0051】
ステップS130では、ピストン22が、上記押込前位置P1より下端面部21c寄りに設定された押込後位置P2に移動するように、アクチュエータ24に制御信号を送出する。これにより、ピストン22は、押込前位置P1から押込後位置P2まで移動されて、シリンダ21内からピストン22の移動距離に応じた量の気体が押し出されるとともに、第1配管28を通じて気相部17に押し込まれる。つまり、加圧器20によって、気相部17にシリンダ21(即ち、気相部17の外部)から気体を押し込まれるように、シリンダ21内の気体が移送され、これにより、気相部17の圧力が上昇する。そして、ステップS140に進む。
【0052】
ステップS140では、加圧器20によって気相部17に気体が押し込まれた直後に、差圧センサユニット51から出力された電気信号に基づいて、差圧センサユニット51によって測定された気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmを検出する。そしてステップS150に進む。
【0053】
ここで、圧力差ΔPmについて考察する。気相部17と気密タンク30とが第2配管38を通じて接続されているので、加圧器20によって気相部17に気体が押し込まれる前の気密タンク30の圧力は、気相部17の圧力と同一になる。そして、気相部17に気体が押し込まれると、気相部17の圧力が上昇して、気相部17から第2配管38を通じて気密タンク30に気体が流れる。このとき、オリフィス41によって気体の流量が制限されて、気密タンク30では差圧センサユニット51によって圧力差ΔPmが測定されるまでの圧力保持時間にわたり気体押込前の圧力が保持される。そのため、気体が押し込まれた直後に差圧センサユニット51によって測定された圧力差ΔPmは、気体が押し込まれる前後の気相部17の圧力上昇量(即ち、圧力変化量)と同等のものとして取り扱うことができる。
【0054】
なお、本実施形態では、気相部17に気体が押し込まれた直後に差圧センサユニット51によって圧力差ΔPmを測定するものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、気相部17に気体が押し込まれた時点から、気密タンク30の圧力が気体押込前の圧力と異なる圧力に変化する程度に長い所定の検出時間を経過した後に差圧センサユニット51によって測定された圧力差ΔPmを検出し、そして、予備測定やシミュレーションなどによって予め作成した当該検出時間と気密タンク30の圧力変化との関係を示すデータテーブルなどを用いて、この圧力差ΔPmを補正するようにしてもよい。
【0055】
ステップS150では、メモリ65に格納されている、気相部17に押し込まれた気体量ΔVmを読み出す、即ち、気体量ΔVmを取得する。そして、ステップS160に進む。
【0056】
なお、本実施形態では、予め定められた気体量ΔVmをメモリ65から読み出すものであったが、これに限定されるものではない。例えば、ピストン22の移動距離を測定するとともに当該移動距離に応じた電気信号を出力するリニアエンコーダなどを別途設けて、このリニアエンコーダにより出力された電気信号に基づいて検出したピストン22の移動距離を用いて、気体量ΔVmを算出するなどしてもよく、本発明の目的に反しない限り、気体量ΔVmを取得する構成については任意である。
【0057】
ステップS160では、ステップS120で検出された気相部17の圧力Pm1と、ステップS140で検出された気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmと、ステップS150で取得された気体量ΔVmと、に基づいて、燃料タンク10の容積VTのうち気相部17に対応する部分の容積VA(以下、気相部容積VAという)を算出する。
【0058】
具体的には、気相部17に気体が押し込まれる前の気相部17の圧力をPm1、押し込まれた後の気相部17の圧力をPm2、押し込まれた気体量をΔVm、気相部17の容積をVAとすると、ボイルの法則から次の式が成立し、
Pm1×(VA+ΔVm)=Pm2×VA
VA=(Pm1×ΔVm)/(Pm2−Pm1)・・・(1.1)
そして、(1.1)式の分母は、気体が押し込まれる前後での圧力上昇量を示しており、この圧力上昇量は、気体が押し込まれた後の気相部17の圧力と気密タンク30の圧力との圧力差と同等であるので、
ΔPm=Pm2−Pm1・・・(1.2)
となり、これら(1.1)、(1.2)式から、
VA=(Pm1×ΔVm)/ΔPm・・・(1.3)
が導かれ、この(1.3)式を用いて、気相部容積VAを算出する。そして、ステップS170に進む。
【0059】
ステップS170では、燃料タンク10内の容積VTからステップS160で算出した気相部容積VAを差し引くことにより、当該燃料タンク10の容積VTのうち液相部18に対応する部分の容積VL(以下、液相部容積VLという)を算出し、この液相部容積VLを燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとする。そして、車両に搭載された図示しない燃料計に、液量VLを表示するための信号を送出する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
【0060】
上述したステップS130、S160、S170が、請求項中の内容量推定手段に相当する。
【0061】
次に、上述した車両燃料システム1における本発明に係る動作例について説明する。
【0062】
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1は動作を開始して、周期的(例えば、3分毎)に燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定を行う。この液量VLの推定において、まず、加圧器20のピストン22を所定の押込前位置P1に移動し、圧力調整弁25を開いてピストン22に設けられた貫通孔22cを開放して(S105)、シリンダ21内の圧力が均一になるとともに、シリンダ21、気相部17、及び、気密タンク30の圧力が同一となる圧力調整時間の経過を待ち、その後圧力調整弁25を閉じて貫通孔22cを閉塞する(S110)。この状態で、気相部17の圧力Pm1を検出する(S120)。そして、ピストン22を所定の押込後位置P2に移動させて、シリンダ21内の気体を気相部17に押し込む(S130)。そして、気体を押し込んだ直後に気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmを検出する(S140)。
【0063】
そして、メモリ65から気相部17に押し込んだ気体量ΔVmを取得し(S150)、気相部17に気体を押し込む前の圧力Pm1と、気体を押し込んだ直後の気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmと、気相部17に押し込んだ気体量ΔVmと、を用いて、ボイルの法則から燃料タンク10の気相部容積VAを算出し(S160)、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くことで液相部容積VLを算出して、この液相部容積VLを、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとして求めて、燃料計に表示する(S170)。
【0064】
次に、車両燃料システム1における燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定例を示す。
【0065】
燃料タンク10の容積VTが100Lであり、上述した内容量推定処理において、加圧器20による気体押込前の気相部17の圧力Pm1が1.00MPaとなり、そして、加圧器20によって1.0Lの気体を押し込んだ(即ち、気体量ΔVmが1.0L)直後の気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmが0.10MPaとなったものとする。
【0066】
このとき、気相部容積VAは、上記(1.3)式から、
VA=(1.00×1.0)/0.10
=10.0L
となり、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くと、液相部容積VL、即ち、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLは、
VL=100−10.0=90.0L
となる。このようにして、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLを推定する。
【0067】
以上より、本実施形態によれば、気密タンク30が、燃料タンク10と別体で設けられるとともに第2配管38によって燃料タンク10内の気相部17に接続されており、加圧器20によって、気相部17にシリンダ21から気体を押し込むように、シリンダ21の気体が移送されると、気相部17の圧力が変動して、気相部17と気密タンク30との間で気体を移動させようとする力が働くが、気相部17と気密タンク30との間に設けられたオリフィス41によって、この気体の移動が規制されて、気相部17の圧力と気密タンク30内の圧力とに圧力差ΔPmが生じ、この圧力差ΔPmを差圧センサユニット51によって測定する。そして、CPU62によって、気体移送前の気相部17の圧力Pm1と、気体移送後に差圧センサユニット51によって測定された圧力差ΔPmと、移送された気体量ΔVmと、に基づいて、燃料タンク10内の液量を推定する。
【0068】
つまり、加圧器20によって気体が移送されると、気相部17の圧力が変化するものの、オリフィス41により気相部17と気密タンク30との間の気体の移動が規制されて、気密タンク30の圧力はすぐには変化せずに気体移送前の圧力を保ち、これにより、気相部17と気密タンク30との間に圧力差ΔPmが生じるとともに、このときの圧力差ΔPmは、気相部17における気体移送前後の圧力変化量と等しく、この圧力差ΔPmを差圧センサユニット51によって測定するので、気相部17の圧力と気密タンク30の圧力との圧力差ΔPm、即ち、気相部17における気体移送前後の圧力変化量の範囲は、気相部17の圧力の変化範囲(0.1MPa〜3MPa程度)より非常に小さく、そのため、圧力差ΔPmを測定する差圧センサユニット51のレンジを低く(小さく)おさえ分解能を十分に高くすることができるとともに直接圧力差を測定して、測定精度を高めることができる。また、差圧センサユニット51における分解能を高くすることで、圧力差ΔPmが小さい場合でも検出が可能となり、加圧器20によって移送される気体量を少なくでき、装置を小型化できる。
【0069】
また、オリフィス41が、気相部17と気密タンク30とを接続する第2配管38に設けられ、気体移送後に少なくとも差圧センサユニット51によって気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmが測定されるまでの所定の圧力保持時間にわたり、気体移送前の気密タンク30内の圧力を保持可能なように、気相部17と気密タンク30との間での気体の移動の流量を制限するものとして構成されている。つまり、加圧器20によって気体が移送されると、気相部17の圧力が変化するものの、オリフィス41により気体の移動の流量が制限されて、気密タンク30の圧力はすぐには変化せずに少なくとも所定の圧力保持時間にわたり気体移送前の圧力を保ち、これにより、気相部17における気体移送前後の圧力変化量と等しい圧力差ΔPmが、気相部17と気密タンク30との間に生じる。そのため、簡易な構成で気相部17と気密タンク30との間に圧力差を生じさせることができるとともに、圧力差ΔPmを解消するための機構を設けることなく、時間経過により前記気相部17と気密タンク30との間の圧力差を解消させることができる。
【0070】
また、気相部17の圧力を測定する気相部圧力センサ58を有し、CPU62が、気相部圧力センサ58によって測定された気相部17の圧力に基づいて、燃料タンク10の液量の推定に用いるための、気体が移送される前の気相部17の圧力Pm1を検出する。ボイルの法則等を用いて液量を推定するためには、燃料タンク10内の気相部17の初期圧力(気体を移送する前の圧力)を用いる必要があるところ、燃料タンク10の周囲温度などの環境条件の変化がない場合等においては、気相部17の初期圧力はほぼ一定に保たれているので、当該初期圧力を予め測定するとともに装置内に保持するなどして、液量の推定毎の気相部17の初期圧力の測定を不要とすることができるが、上記環境条件等により気相部の初期圧力の変化がある場合には液量の推定精度が低下してしまう。そこで、CPU62が、気相部圧力センサ58によって測定された気体移送前の気相部17の圧力Pm1を用いて燃料タンクの液量を推定することにより、環境条件等により気相部17の気体押込前の圧力Pm1(即ち、初期圧力)が変化してしまう場合においても、液量の推定精度を確保することができる。
【0071】
本実施形態においては、燃料タンク10が直方体の箱形状に形成されたものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、上述した燃料タンク10に代えて、第1タンク部分101、第2タンク部分102からなる燃料タンク10Aを用いてもよい。第1タンク部分101と第2タンク部分102とには、それぞれ気相部17と液相部18があり、管路103によって気相部17同士が接続され、管路104によって液相部18同士が接続されている。本発明によれば、この燃料タンク10Aのように、複数のタンク部分に分割され、それぞれ気相部同士、液相部同士が接続された、複雑な形状の燃料タンクを用いた場合においても、当該燃料タンク内の燃料Fの液量VLを正確に推定することができる。また、加圧器20によって気体が移送されたときの気相部17の圧力変化が差圧センサユニット51の測定可能範囲内に収まる程度に、差圧センサ51の第2圧力室53や管路56bの容積を大きくして、気密タンク30を設けずに第2配管38と管路56bとを直接接続してもよい。この構成においては、第2圧力室53や管路56bが気密タンクとして機能する。
【0072】
(第2の実施形態)
以下、本発明の内容量推定装置の第2の実施形態を備える車両燃料システムを、図5〜図9を参照して説明する。
【0073】
図5に示すように、車両燃料システム(図中、符号2で示す)は、容器としての燃料タンク10と、燃料タンク10内の燃料Fの液量を推定する内容量推定装置としての液量推定装置7と、を有している。なお、第2の実施形態において、上述した第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0074】
液量推定装置7は、図5、図6に示すように、オリフィス41に代えて遮断弁42を有している以外は、第1の実施形態で示した液量推定装置6と同一の構成である。
【0075】
遮断弁42は、例えば、電磁弁などで構成されており、第2配管38に設けられて、その開閉によって第2配管38を開放又は閉塞するように動作する。つまり、遮断弁42は、弁開制御されることにより前記気体の移動を許容する移動許容状態に切り替え、弁閉制御されることにより前記気相部と前記気密タンクとの間での前記気体の移動を遮断する移動遮断状態に切り替える、ように構成されている。遮断弁42は、後述する制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号によって制御される。
【0076】
制御部60のマイクロコンピュータ61が備えるメモリ65には、図8に一例を示すように、気相部17の所定の圧力(押込前圧力)のときに所定の気体量(押込気体量)が気相部17に押し込まれた後の燃料タンク10内の気相部17の圧力変化量(即ち、圧力差ΔPm)と、そのときの燃料タンク10内のうち気相部17に対応する部分の容積(気相部容積)と、の関係を示す気相部容積関係情報Jが格納されている。この気相部容積関係情報Jは、例えば、予備計測やシミュレーションなどによって得られたグラフを示す関数やデータテーブルなどであり、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力毎及び押し込まれた気体量毎に、複数個設けられている。本実施形態では、図9に模式的に示すように、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力(押込前圧力)が0.10MPaから3.00MPaまで0.01MPa毎に、且つ、押し込まれた気体量(押込気体量)が0.1Lから1.0Lまで0.1L毎に、複数個の気相部容積関係情報Jが格納されている。
【0077】
次に、上述したCPU62が実行する本発明に係る処理(内容量推定処理2)の一例を、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0078】
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム2に電源が供給されて制御部60のCPU62が動作を開始し、CPU62は、所定の初期化処理を実行する。そして、CPU62は、初期化処理が終了した後に、例えば、一定周期などの所定のタイミングで、図7のフローチャートに示すステップT100に進む。
【0079】
ステップT100では、遮断弁42を開くように遮断弁42に制御信号を送信する。これにより、第2配管38が開放され気相部17と気密タンク30との接続が開かれて、気体の移動を許容する移動許容状態となる。ステップT105に進む。
【0080】
ステップT105では、ピストン22が、所定の押込前位置P1に移動するように、アクチュエータ24に制御信号を送出するとともに、ピストン22の貫通孔22cが開放されるように、圧力調整弁25に制御信号を送出する。そして、ステップT110に進む。
【0081】
ステップT110では、所定の圧力調整時間が経過するまで待つ。この圧力調整時間は、シリンダ21内の圧力が均一になるとともに、シリンダ21の圧力、気相部17の圧力、及び、気密タンク30の圧力が同一となるまでの待ち時間である。そして、圧力調整時間経過後に、貫通孔22cが閉塞されるように、圧力調整弁25に制御信号を送出する。そして、ステップT120に進む。
【0082】
ステップT120では、気相部圧力センサ58から出力された電気信号に基づいて、気相部圧力センサ58によって測定された気相部17の圧力Pm1を検出する。そして、ステップT125に進む。
【0083】
ステップT125では、遮断弁42を閉じるように遮断弁42に制御信号を送信する。これにより、第2配管38が閉塞され気相部17と気密タンク30との接続が閉じられて、前記気体の移動を許容する移動許容状態となり、気密タンク30が密閉される。そして、ステップT130に進む。
【0084】
ステップT130では、ピストン22が、上記押込前位置P1より下端面部21c寄りに設定された押込後位置P2に移動するように、アクチュエータ24に制御信号を送出する。これにより、ピストン22は、押込前位置P1から押込後位置P2まで移動されて、シリンダ21内からピストン22の移動距離に応じた量の気体が押し出されるとともに、第1配管28を通じて気相部17に押し込まれる。そして、ステップT140に進む。
【0085】
ステップT140では、加圧器20によって気相部17に気体が押し込まれた後に、差圧センサユニット51から出力された電気信号に基づいて、差圧センサユニット51によって測定された気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmを検出する。そしてステップT150に進む。
【0086】
ステップT150では、メモリ65に格納されている、気相部17に押し込まれた気体量ΔVmを読み出す、即ち、気体量ΔVmを取得する。そして、ステップT160に進む。
【0087】
ステップT160では、ステップT120で検出された気相部17の圧力Pm1と、ステップT140で検出された気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmと、ステップT150で取得された気体量ΔVmと、に基づいて、燃料タンク10の容積VTのうち気相部17に対応する部分の容積VA(以下、気相部容積VAという)を算出する。
【0088】
具体的には、気相部17に気体が押し込まれる前の当該気相部17の圧力Pm1(押込前圧力)と、気相部17に押し込まれた気体量ΔVm(押込気体量)と、によって特定される気相部容積関係情報Jに、圧力上昇量として上記圧力差ΔPmを当てはめることにより、この気相部容積関係情報Jから気相部容積VAを取得する。
【0089】
気相部容積VAの取得の一例を示すと、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力Pm1が1.00MPaで、気相部17に押し込まれた気体量ΔVmが1.0Lのとき、気相部容積関係情報Jとして、図8のグラフが特定され、そして、気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmが0.10MPaだったとすると、上記グラフから、気相部容積VAを12Lとして取得する。そして、ステップT170に進む。
【0090】
ステップT170では、燃料タンク10内の容積VTからステップT160で算出した気相部容積VAを差し引くことにより、当該燃料タンク10の容積VTのうち液相部18に対応する部分の容積VL(以下、液相部容積VLという)を算出し、この液相部容積VLを燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとする。そして、車両に搭載された図示しない燃料計に、液量VLを表示するための信号を送出する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
【0091】
上述したステップT130、T160、T170が、請求項中の内容量推定手段に相当し、ステップT125が、請求項中の遮断弁切替手段に相当する。また、遮断弁42及びCPU62が、請求項中の気体移動規制手段に相当する。
【0092】
また、上述した内容量推定処理2では、気相部容積関係情報Jを用いて気相部容積VAを取得するものであったが、これに限定されるものではなく、第1の実施形態の内容量推定処理1と同様に、(1.3)式を用いて気相部容積VAを算出するようにしてもよい。但し、本実施形態のように、気相部容積関係情報Jを用いることで、算出式より得られる計算値には含まれない誤差要因も考慮することができる。
【0093】
次に、上述した車両燃料システム2における本発明に係る動作例について説明する。
【0094】
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム2は動作を開始して、周期的(例えば、3分毎)に燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定を行う。この液量VLの推定において、まず、遮断弁42を開いたのち(T100)、加圧器20のピストン22を所定の押込前位置P1に移動し、圧力調整弁25を開いてピストン22に設けられた貫通孔22cを開放して(T105)、シリンダ21内の圧力が均一になるとともに、シリンダ21、気相部17、及び、気密タンク30の圧力が同一となる圧力調整時間の経過を待ち、その後圧力調整弁25を閉じて貫通孔22cを閉塞する(T110)。この状態で、気相部17の圧力Pm1を検出する(T120)。そして、遮断弁42を閉じて、気相部17と気密タンク30との接続を遮断し(T125)、ピストン22を所定の押込後位置P2に移動して、シリンダ21内の気体を気相部17に押し込む(T130)。そして、気体を押し込んだ後に気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmを検出する(T140)。
【0095】
そして、メモリ65から気相部17に押し込んだ気体量ΔVmを取得し(T150)、気相部17に気体を押し込む前の圧力Pm1と、気体を押し込んだ後の気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmと、気相部17に押し込んだ気体量ΔVmと、を用いて、気相部容積関係情報Jから燃料タンク10の気相部容積VAを取得し(T160)、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くことで液相部容積VLを算出して、この液相部容積VLを、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとして求めて、燃料計に表示する(T170)。
【0096】
次に、車両燃料システム2における燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定例を示す。
【0097】
燃料タンク10の容積VTが100Lであり、上述した内容量推定処理において、加圧器20による気体押込前の気相部の圧力Pm1が1.00MPaとなり、そして、加圧器20によって1.0Lの気体を押し込んだ(即ち、気体量ΔVmが1.0L)後の気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmが0.04MPaとなったものとする。
【0098】
このとき、気相部17に気体が押し込まれる前の当該気相部17の圧力Pm1が、1.00MPaであり、気相部17に押し込んだ気体量ΔVmが1.0Lであるので、気相部容積関係情報Jとして、図8に示すグラフが特定される。そして、このグラフに、気相部17の圧力上昇量としての圧力差ΔPmである0.04MPaを当てはめると、気相部容積VAが26Lとして取得される。そして、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くと、液相部容積VL、即ち、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLは、
VL=100−26=84L
となる。このようにして、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLを推定する。
【0099】
以上より、本実施形態によれば、気密タンク30が、燃料タンク10と別体で設けられるとともに第2配管38によって燃料タンク10内の気相部17に接続されており、加圧器20によって、気相部17にシリンダ21から気体を押し込むように、シリンダ21の気体が移送されると、気相部17の圧力が変動して、気相部17と気密タンク30との間で気体を移動させようとする力が働くが、気相部17と気密タンク30との間に設けられた遮断弁42によって、この気体の移動が規制されて、気相部17の圧力と気密タンク30内の圧力とに圧力差ΔPmが生じ、この圧力差ΔPmを差圧センサユニット51によって測定する。そして、CPU62によって、気体移送前の気相部17の圧力Pm1と、気体移送後に差圧センサユニット51によって測定された圧力差ΔPmと、移送された気体量ΔVmと、に基づいて、燃料タンク10内の液量を推定する。
【0100】
つまり、加圧器20によって気体が移送されると、気相部17の圧力が変化するものの、遮断弁42により気相部17と気密タンク30との間の気体の移動が規制されて、気密タンク30の圧力は変化せずに気体移送前の圧力を保ち、これにより、気相部17と気密タンク30との間に圧力差ΔPmが生じるとともに、このときの圧力差ΔPmは、気相部17における気体移送前後の圧力変化量と等しく、この圧力差ΔPmを差圧センサユニット51によって測定するので、気相部17の圧力と気密タンク30の圧力との圧力差ΔPm、即ち、気相部17における気体移送前後の圧力変化量の範囲は、気相部17の圧力の変化範囲(0.1MPa〜3MPa程度)より非常に小さく、そのため、圧力差ΔPmを測定する差圧センサユニット51における分解能を十分に高くすることができるとともに直接圧力差を測定して、測定精度を高めることができる。また、差圧センサユニット51における分解能を高くすることで、圧力差ΔPmが小さい場合でも検出が可能となり、加圧器20によって移送される気体量を少なくでき、装置を小型化できる。
【0101】
また、開閉制御されることにより気相部17と気密タンク30との間での気体の移動を許容する移動許容状態と、前記気体の移動を遮断する移動遮断状態と、を切替可能なように第2配管38に設けられた遮断弁42を有し、CPU62によって、加圧器20によって気体が移送される前に、遮断弁42を移動遮断状態に切り替えるように構成されている。つまり、気相部17に気体が移送される前に、気相部17と気密タンク30との間での気体の移動を遮断する移動遮断状態に切り替えることによって、当該気体が移送されると、気相部17の圧力が変化するものの、遮断弁42により気体の移動が遮断されて、気密タンク30が密閉されて気体移送前の圧力を保ち、これにより、気相部17における気体移送前後の圧力変化量と等しい圧力差ΔPmが、気相部17と気密タンク30との間に生じるので、気相部17と気密タンク30との間の圧力差ΔPmを確実に生じさせることができるとともに、圧力差ΔPmが生じた状態を長時間保持できる。
【0102】
また、気相部17の圧力を測定する気相部圧力センサ58を有し、CPU62が、気相部圧力センサ58によって測定された気相部17の圧力に基づいて、燃料タンク10の液量の推定に用いるための、気体が移送される前の気相部17の圧力Pm1を検出する。ボイルの法則等を用いて液量を推定するためには、燃料タンク10内の気相部17の初期圧力(気体を移送する前の圧力)を用いる必要があるところ、燃料タンク10の周囲温度などの環境条件の変化がない場合等においては、気相部17の初期圧力はほぼ一定に保たれているので、当該初期圧力を予め測定するとともに装置内に保持するなどして、液量の推定毎の気相部17の初期圧力の測定を不要とすることができるが、上記環境条件等により気相部の初期圧力の変化がある場合には液量の推定精度が低下してしまう。そこで、CPU62が、気相部圧力センサ58によって測定された気体移送前の気相部17の圧力Pm1を用いて燃料タンクの液量を推定することにより、環境条件等により気相部17の気体押込前の圧力Pm1(即ち、初期圧力)が変化してしまう場合においても、液量の推定精度を確保することができる。
【0103】
また、本実施形態においては、シリンダ21とピストン22とを備えた加圧器20を用いて、気相部17に押し込むようにシリンダ21内の気体を移送するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、ピストン22における、押込前位置P1を引出後位置P1とし、押込後位置P2を引出前位置P2として、ピストン22を引出前位置P2から引出後位置P1に移動させて、気相部17から引き出すように当該気相部17内の気体を移送するものであっても良い。
【0104】
または、上述した加圧器20に代えて、図10(a)に示すように、シリンダ21と、このシリンダ21と燃料タンク10とを接続する第1配管28に設けられた真空加圧ポンプ44と、からなる加圧器20Aを設けて、この加圧器20Aを制御部60により制御して、気相部17にシリンダ21内の気体を押し込んだり又は気相部17からその気体を引き出したりしてもよく、図10(b)に示すように、第1配管28に設けられた開閉弁45と、シリンダ21の側壁21b等に設けられたヒータ46と、からなる加圧器20Bを設けて、この加圧器20Bを制御部60により制御して、開閉弁45を閉じた状態でシリンダ21内の気体を加熱したのち開閉弁45を開いて、加熱により膨張した気体を気相部17に押し込んだりしてもよく、本発明の目的に反しない限り、気相部17に気体を押し込み又は気相部17から気体を引き出すように当該気体を移送するための構成については任意である。
【0105】
上述した各実施形態においては、気相部圧力センサ58を備えるものであったが、これに限定されるものではない。この気相部圧力センサ58に代えて、例えば、気相部17の温度を測定するとともに、当該温度に応じた電気信号を出力する温度センサなどを設けてもよい。この場合、予め気相部17の主成分となる気体の蒸気圧をメモリなどに格納しておき、この蒸気圧と気相部17の温度とによって気相部17の圧力を求めて、この圧力を用いて燃料タンク10の液量を推定する。つまり、気相部の温度は、その圧力と関係があり、即ち、気相部の圧力に応じた情報に相当する。これにより、気相部17が取りうる温度範囲は、一般的な温度センサによって十分な分解能を得られる程度に狭いので、測定精度を高めることができる。または、環境条件の変化が小さく、気相部17の圧力変化がない、又は、液量の推定に影響がない程度に小さい場合など、気相部圧力センサ58を設けずに、別途測定した気相部の圧力を予めメモリなどに記憶しておいても良い。
【0106】
上述した各実施形態は、車両に搭載され、液化ガスを収容するとともにその液量を推定する車両燃料システムを説明するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、工場や家庭などに設置され、灯油やガソリン、各種薬液などを収容するとともにその液量を推定する液量推定システムなどであってもよく、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用する装置及びシステムは任意である。また、液量の推定対象となる液体についても、液化石油ガスに限らず、例えば、窒素、酸素、アンモニアのなどの工業用途の液化ガス、又は、常温常圧で液状となる燃料(灯油、ガソリン等)、各種薬液等、本発明の目的に反しない限り、その種類は任意である。
【0107】
また、容器としてのタンク内の液量(内容量)の推定に限らず、例えば、ホッパーなどの容器内にある樹脂ペレット、木質ペレット、又は、粉砕ガラスなど粒状物や粉体等(以下、粒状物等という)の固体の内容量を測定するようにしても良い。この場合も、上述した本実施形態と同様に、容器内の気相部容積を算出して、容器の容積から気相部容積を差し引くことにより内容量を推定する。但し、粒状物等の固体はそれら間に空間が存在するため、当該空間が気相部容積に含まれることを考慮するとともに当該空間が粒状物等と共に占める体積を考慮して上述した各実施形態で示した内容量推定処理を適用することで、液量と同様に容器内の内容量を推定することができる。具体的には、所定空間内に粒状物等を満量充填したときに粒状物等のみが上記所定空間内で占める体積割合がX%で且つ粒状物等を除く空間が上記所定空間内で占める体積割合が(100−X)%となる場合に、この粒状物等が収容される容器の容積をV、気相部容積をVAとすると、粒状物等及びそれら間の空間が上記容器内で占める内容量VSは、次式により求めることができる。
VS=(V−VA)/(X/100)
【0108】
例えば、1.0m3の単位収容空間内に粒状物を満量充填したときに、当該粒状物が占める体積が0.8m3(80%)で且つ粒状物間の空間が占める体積が0.2m3(20%)となる場合に、この粒状物が収容される容器の容積を10.0m3とすると、上述した内容量推定処理を適用して気相部容積VAを求めたときに、気相部容積VAが9.2m3であれば、粒状物の内容量VSが容器の10分の1((10.0−9.2)/(80/100)=1.0m3)となり、気相部容積VAが6.0m3であれば、粒状物の内容量VSが容器の半量((10.0−6.0)/(80/100)=5.0m3)となり、気相部容積VAが2.0m3であれば、粒状物の内容量VSが容器の満量((10.0−2.0)/(80/100)=10.0m3)となる。また、このような粒状物や粉体に限らず、例えば、容器としての倉庫内の貨物量(内容量)を推定するなど、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用する装置及びシステムは任意であり、また、容器内の内容量の推定対象となる固体の種類、形状等は任意である。
【0109】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0110】
1、2 車両燃料システム(内容量推定システム)
6、7 液量推定装置(内容量推定装置)
10 燃料タンク(容器)
17 燃料タンク内の気相部(気相部)
18 燃料タンク内の液相部
20 加圧器(気体移送手段)
30 気密タンク
38 第2配管(配管)
41 オリフィス(気体移動規制手段、流量規制部材)
42 遮断弁(気体移動規制手段)
51 差圧センサユニット(圧力差測定手段)
58 気相部圧力センサ(圧力情報測定手段)
60 制御部
62 CPU(内容量推定手段、気体移動規制手段(遮断弁切替手段))
Pm1 気体が押し込まれる前の気相部の圧力
ΔPm 気体が押し込まれた後の気相部と気密タンクとの間の圧力差
ΔVm 気相部に押し込まれた気体量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内にある液体又は固体の内容量を推定する内容量推定装置であって、
前記容器と別体で設けられた気密タンクと、
前記容器内の気相部と前記気密タンクとを接続する配管と、
前記気相部に外部から気体を押し込むように又は前記気相部から外部に気体を引き出すように前記気体を移送可能に設けられた気体移送手段と、
前記気体移送手段によって前記気体が移送されたときに、前記気相部と前記気密タンクとの間での気体の移動を規制可能な気体移動規制手段と、
前記気相部の圧力と前記気密タンク内の圧力との圧力差を測定する圧力差測定手段と、
前記気体が移送されるように前記気体移送手段を駆動するとともに、前記気体移送手段が駆動されることにより前記気体が移送される前の前記気相部の圧力、前記気体が移送された後に前記圧力差測定手段によって測定された前記圧力差、及び、前記気体移送手段によって移送された気体量、に基づいて前記内容量を推定する内容量推定手段と、を有している
ことを特徴とする内容量推定装置。
【請求項2】
前記気体移動規制手段が、前記配管に設けられ、前記気体が移送された後に少なくとも前記圧力差測定手段によって前記圧力差が測定されるまでの所定の圧力保持時間にわたり、前記気体が移送される前の前記気密タンク内の圧力を保持可能なように、前記気相部と前記気密タンクとの間での前記気体の移動の流量を制限する流量制限部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内容量推定装置。
【請求項3】
前記気体移動規制手段が、
前記気相部と前記気密タンクとの間での前記気体の移動を許容する移動許容状態と、前記気体の移動を遮断する移動遮断状態と、を切替可能なように開閉制御される、前記配管に設けられた遮断弁と、
前記気体移送手段によって前記気体が移送される前に、前記遮断弁を前記移動遮断状態に切り替える遮断弁切替手段と、で構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の内容量推定装置。
【請求項4】
前記気相部の圧力に応じた情報を測定する圧力情報測定手段を有し、
前記内容量推定手段が、前記圧力情報測定手段によって測定された前記情報に基づいて、前記内容量の推定に用いるための前記気体が移送される前の前記気相部の圧力を検出するように構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の内容量推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−225785(P2012−225785A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93963(P2011−93963)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】