説明

内照式標識装置

【課題】輸送コストを低減し、標識の設置施工時やメンテナンス時における通行止めの問題を改善してこれらの作業が容易となる内照式標識装置を提供する。
【解決手段】筐体2内の空間に配設された光源により、光透過性を有して筐体2の正面を形成する表示面6の裏側を照射し、表示面6の表側を発光表示する内照式標識装置1において、筐体2を一又は二以上の分割線Lを境に分割可能に構成する。これら分割された各筐体2a,2bは一体的に接合されるものである。また、各筐体2a,2b内のそれぞれの空間に収まるように光源を配設する。さらに、筐体2は、その設置状態における左右方向に分割可能に構成し、分割線Lを道路のセンターライン上となる位置に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に道路(車道)などに設置される標識に適用し、筐体内に配設された光源により筐体の表示面の裏側を照射し、表示面の表側を発光表示する内照式標識装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に道路(車道)には、道路の直上などにその先の道路情報などを知らせる標識が設置されている。通常、道路標識は、夜間などの見通しが悪いときでもドライバーから確実に認識される必要があるため、道路標識には自動車のヘッドライト光などを反射して認識させるものがある。ところが、このような光反射式標識は、ヘッドライト光があたらない遠方からはほとんど認識されないものであった。
【0003】
上述した光反射式標識の欠点を受けて、従来、遠方からでも認識可能とする内照式の標識がある。一般に、内照式標識は、筐体の正面が半透光性の表示面となり、筐体内に蛍光灯などの光源を配設し、この光源により表示面の裏側を照射し、表示面の表側を発光表示するものである。なお、例えば下記特許文献1には内照式標識装置(表示装置)の一般的な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−76592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、道路標識には様々な大きさのものがあるが、高速道路などに設置される標識の中には全長8メートルほどの大型のものがあり、これが複数の走行車線にわたって設置されていることがある。このような大型標識は、設置施工時に現地まで輸送することが困難なため、輸送にかかるコストが嵩むという問題があった。特に従来の内照式標識は、筐体内に光源などを収容するために厚みがあり、したがって、大型化が顕著となり、輸送は更に困難なものであった。
【0006】
また、標識の設置施工時やメンテナンス時には標識の少なくとも直下が作業エリアとなり、作業者以外の立ち入りを禁止する必要があるため、上述した大型標識のように複数の走行車線にわたって設置される場合は実質的に全面通行止めにしなければならない。ところが、高速道路などにおいて、道路の全面通行止めは避けたいことであり、改善案が検討されていた。
【0007】
そこで本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、輸送が容易となることで輸送コストを低減し、標識の設置施工時やメンテナンス時における通行止めの問題を改善してこれらの作業が容易となる内照式標識装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明に係る請求項1記載の内照式標識装置は、筐体2内の空間に配設された光源15により、光透過性を有して前記筐体2の正面を形成する表示面6の裏側を照射し、前記表示面6の表側を発光表示する内照式標識装置1において、
前記筐体2を一又は二以上の分割線Lを境に分割可能に構成し、該分割された各筐体2a,2bは接合手段18により一体的に接合されることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の内照式標識装置は、前記光源15を前記分割された各筐体2a,2b内のそれぞれの空間に収まるように配設することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の内照式標識装置は、前記筐体2をその設置状態における左右方向に分割可能に構成することを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の内照式標識装置は、請求項3記載の内照式標識装置1を道路に設置される案内標識に適用し、前記筐体2の前記分割線Lを道路のセンターライン41上となる位置に設定することを特徴としている。
【0012】
なお、内照式標識装置1を例えばトンネル30内の道路の案内標識に適用する場合に、筐体2の上面をトンネル30の天井30aの曲面に沿った形状に形成することで筐体2を天井30aに近接させて設置することができる。
【0013】
請求項5記載の内照式標識装置は、前記表示面6はシート状部材10を張設してなり、
前記筐体2(2a,2b)は、前記シート状部材10を張るために、前記分割線Lに沿って延びるとともに、該分割線Lに対して直交する方向に曲面を有する凸部22を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る内照式標識装置によれば、筐体が分割構造となっているため、筐体を分割して現地まで輸送することにより、輸送が容易となる。これにより、輸送コストの低減が可能となる。
【0015】
また、筐体をその設置状態における左右方向に分割可能とすることから、設置施工時やメンテナンス時には作業中の筐体の少なくとも直下を作業エリアとして立ち入り禁止にすればよく、作業前又は作業済みの筐体の直下をあけることができる。特にこの内照式標識装置を道路標識に適用した場合、筐体の分割線をセンターライン上となる位置に設定することで、設置施工時やメンテナンス時にセンターラインから右側又は左側のいずれかの走行車線をあけることができる。これにより、この標識装置の設置施工時やメンテナンス時に道路を全面通行止めにすることなくこれらの作業を行うことができるとともに、作業が容易となる。
【0016】
さらに、筐体にシート状部材を張るために設けられた支持部材が、分割線に対して直交する方向に曲面を有する凸部を備えているため、組み立てたときに表示面にあらわれる分割線(すなわち、シート状部材の間の境界線)が目立たなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】内照式標識装置の一実施の形態をトンネル内に設置した状態を示す図である。
【図2】同実施の形態の設置状態を示す側面図である。
【図3】(a)同実施の形態を示す正面図である。 (b)同側面図である。 (c)同底面図である。
【図4】図3(a)におけるA−A断面図である。
【図5】図3(a)におけるB−B断面図である。
【図6】同実施の形態の内部に配設された光源を示す正面図である。
【図7】同実施の形態の分割部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
この実施の形態(内照式標識装置)は、主に道路(車道)に設置される案内標識であり、図1に示すように、特に、トンネル30内に好適に設置可能となる。
【0019】
内照式標識装置1(以下、単に標識装置と略称する。)は、トンネル30内にて、複数の走行車線40(40a,40b)にわたって設置されている。なお、図1は二つの走行車線の例である。また、標識装置1は、道路の幅方向、すなわち、図1における左右方向の長さが6メートルほどの大型標識である。
【0020】
図2に示すように、標識装置1は、後述する筐体2の背面に設けられたSS400製のブラケット3に取り付けられるU字ボルトなどの固定部材4がトンネル30の天井30aから下方に延出している支柱部材31の横材32をブラケット3との間に挟み込むことにより、トンネル30の上部に固定される。なお、図中の符号5は標識装置1の落下を防止するためのフックである。
【0021】
図3〜5に示すように、標識装置1は、前述した筐体2と、光透過性を有し、筐体2の正面を形成している表示面6と、筐体2内の空間に配設されている光源15とを主な構成要件として備えている。このような標識装置1は、筐体2内の光源15により、表示面6の裏側を照射し、表示面6の表側を発光表示することができる。これにより、利用者からの視認性を高めている。
【0022】
図3(a)に示すように、筐体2は、アルミフレームからなり、正面から見て、横長矩形の上縁が円弧状に上方に湾曲した形状に形成されている。筐体2の上縁が湾曲していることにより、従来は標識装置1とトンネル30の天井30aとの間に存在していたデッドスペースが無くなり、図1に示すように、標識装置1を天井30aに近接させて設置することができる。また、筐体2の正面は、所定の道路情報(文字や図形)などが施された表示面6となる。
【0023】
図3(b),(c)に示すように、筐体2の側面及び底面にはこの筐体2内の点検などを行うための複数の点検口が設けられている。これらの点検口は、通常時は点検扉7にて閉塞されている。なお、点検扉7の閉塞にはキャッチクリップなどが使用されている。
【0024】
図3(a),(b)に示すように、筐体2の上面には複数のSUS製のアイボルト8が設けられており、アルミ製の筐体2やSS400製のブラケット3などの種類の異なる金属間の電位差による腐食を防止するために、筐体2の背面のブラケット3とビニール被膜されたSUS製の線材9を介して接続されている。
【0025】
また、後に詳述するが、筐体2は、分割線Lを境として、その設置状態における左右方向(図1又は3における左右方向)に分割可能に構成されている。
【0026】
図4,5に示すように、筐体2の正面となる表示面6は、光透過性を有し、予め所定の文字や図形が施されたシート状部材(繊維シート)10からなり、繊維シート10の上下左右の端部を引張機構11にて引っ張り、繊維シート10を張設することにより、筐体2の正面として平坦面となる。
【0027】
引張機構11は、繊維シート10を張設するための支点となる支持部材12と、支持部材12の外側から繊維シート10を引っ張るための引張部材14とからなる。支持部材12は、筐体2の上下左右の各端縁に設けられている。なお、図4,5では、筐体2の上下の端縁に設けられた支持部材12だけがあらわれており、筐体2の左右の端縁の支持部材12は省略している。支持部材12は、断面略三角形状の金属部材からなり、筐体2の各端縁に沿ってレール状に延びている。支持部材12の筐体2の正面側に突出している角(凸部13)は繊維シート10の張設のための支点となる。各端縁の支持部材12の凸部13は、繊維シート10のそれぞれの引張方向に対して直交する方向に曲面を有する形状に形成されている。また、引張部材14は、筐体2の各端縁に並んで設けられており、繊維シート10の端部を挟み込んだまま所定の引張力を付与することにより、筐体2の正面側に配置された繊維シート10を上下左右に引っ張るものである。
【0028】
筐体2内の空間には光源となるLED蛍光灯15が配設されている。LED蛍光灯15は、レール状の基台16に取り付けられており、図6に示すように、筐体2の左右の端部では縦向きに配設され、筐体2の中央部では横向きに配設されている。その他、筐体2内の空間には降圧器(ダウントランス)17などが設けられている。
【0029】
また、前述したように、筐体2は、分割線Lを境として、図3の左右方向に二つに分割可能なものである。図1に示すように、分割線Lは、標識装置1を設置した状態において、道路のセンターライン41の略直上に位置するように設定されている。図7に示すように、分割線Lから左側の筐体2aと分割線Lから右側の筐体2bとは、接合手段18にて一体的に接合されている。具体的には、左右の筐体2a,2bは、各筐体2a,2bのそれぞれの背面における分割線Lの近傍に対向して設けられている突片18a,18aに接合用のボルト18bを挿通することにより、接合されている。ここでは、突片18a,18aとボルト18bが接合手段18となる。
【0030】
各筐体2a,2b内のLED蛍光灯15は、図6に示すように、各筐体2a,2bのそれぞれの空間に収まるように配設されている。また、各筐体2a,2bのそれぞれに表示面6となる繊維シート10,10が張設されている。
【0031】
図7に示すように、筐体2の分割部分には、筐体2の上下左右の各端縁と同様に、各筐体2a,2bに繊維シート10,10を張設するための引張機構20が設けられている。引張機構20は、支持部材21と、引張部材23とからなる。支持部材21は、断面略三角形状の金属部材からなり、分割線Lに沿ってレール状に延びている。支持部材21の各筐体2a,2bの正面側に突出している角(凸部22)は繊維シート10の張設のための支点となる。支持部材21の凸部22は、繊維シート10のそれぞれの引張方向に対して直交する方向に曲面を有する形状に形成されている。引張部材23は、支持部材21を介して繊維シート10を引っ張るための部材であり、繊維シート10の端部を挟持する挟持部24を備えている。引張部材23では、繊維シート10の端部を挟み込んだまま所定の引張力を付与することができる。
【0032】
上述した実施の形態によれば、筐体2が二分割構造となっているため、筐体2(2a,2b)を二つに分割して現地まで輸送することにより、輸送が容易となる。これにより、輸送コストの低減が可能となる。
【0033】
また、筐体2をその設置状態における左右方向に分割可能とすることから、設置施工時やメンテナンス時には作業中の筐体の少なくとも直下を作業エリアとして立ち入り禁止にすればよく、作業前又は作業済みの筐体の直下をあけることができる。特にこの実施の形態では、筐体2の分割線Lがセンターライン61上となる位置に設定されているため、設置施工時やメンテナンス時にセンターライン61から右側又は左側のいずれかの走行車線60a,60bをあけることができる。これにより、設置施工時やメンテナンス時に道路を全面通行止めにすることなくこれらの作業を行うことができるとともに、作業が容易となる。
【0034】
さらに、各筐体2a,2bに設けられた引張機構20の支持部材21が、分割線Lに対して直交する方向に曲面を有する凸部22備えているため、筐体2a,2bを組み立てたときに表示面6にあらわれる繊維シート10,10の間の境界線が目立たなくなる。
【0035】
なお、上述した実施の形態では、筐体2がその設置状態における左右方向に分割可能に構成されているが、それ以外に、例えば上下に分割可能に構成されていてもよい。このように構成されていても、上記同様、輸送コストの低減を図ることができる。
【0036】
また、上述した実施の形態では、筐体2は二分割構造となっているが、三分割、四分割、あるいはそれ以上の分割構造であってもよい。これにより、更なる輸送コストの低減が可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1…内照式標識装置
2…筐体
2a,2b…分割された筐体
6…表示面
10…シート状部材(繊維シート)
15…光源
18…接合手段
22…凸部
41…道路のセンターライン
L…分割線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(2)内の空間に配設された光源(15)により、光透過性を有して前記筐体の正面を形成する表示面(6)の裏側を照射し、前記表示面の表側を発光表示する内照式標識装置(1)において、
前記筐体を一又は二以上の分割線(L)を境に分割可能に構成し、該分割された各筐体(2a,2b)は接合手段(18)により一体的に接合されることを特徴とする内照式標識装置。
【請求項2】
前記光源を前記分割された各筐体内のそれぞれの空間に収まるように配設することを特徴とする請求項1記載の内照式標識装置。
【請求項3】
前記筐体をその設置状態における左右方向に分割可能に構成することを特徴とする請求項1又は2記載の内照式標識装置。
【請求項4】
請求項3記載の内照式標識装置を道路に設置される案内標識に適用し、前記筐体の前記分割線を道路のセンターライン(41)上となる位置に設定することを特徴とする内照式標識装置。
【請求項5】
前記表示面はシート状部材(10)を張設してなり、
前記筐体は、前記シート状部材を張るために、前記分割線に沿って延びるとともに、該分割線に対して直交する方向に曲面を有する凸部(22)を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の内照式標識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−112119(P2012−112119A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260205(P2010−260205)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(390028185)株式会社エダキン (5)
【Fターム(参考)】