説明

内照式表示板

【課題】表示パネルに形成された立体図柄部をメリハリある輝き感で際立たせ、通常印刷部をムラ無く均一な明るさで照明できるとともに、装飾性、美観的に優れた薄型の内照式表示板を提供する。
【解決手段】透光性を有し立体的に隆起させた図柄が施された表示パネル4と、その裏側から照明するためのバックライト8が設けられた内照式表示板において、該照明手段として透明部材からなる導光板6とその端面に配置されたLED光源7とを具備し、該導光板はその面積の大部分を占める非発光エリア10と、非発光エリア内に点在する発光エリア9とからなり、非発光エリアはそこに直径が5mm以上30mm以下の仮想円を配置できる程度の広さを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な凹凸を立体的に隆起させて装飾効果を高めた表示パネルを持つ内照式表示板に関する。特には遊技機に使用されると有効な内照式表示板に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷等の方法により特定の絵柄を形成した透光性を有する表示パネルに対して、裏側より照明することにより発光表示させる内照式表示板は、商業看板、交通標識、遊技機、自動販売機などに広く利用されている。
【0003】
表示パネルの絵柄の一部分に、透光性を有し微小な凹凸を隆起させた立体図柄を形成することが、装飾性を高める目的で行われることがある。立体図柄の代表的な形成方法としては、縮み印刷と呼ばれる細かな縮緬状の皺を形成させた印刷を施す方法があり、特に遊技機の機種タイトルを表示するパネルなどでは頻繁に使用されている(例:特許文献1)。ここで縮み印刷と呼ばれる方法は、印刷インキの硬化工程において先に表面を硬化させ皮張り状態とした後に内部を硬化させることで硬化歪みを利用して皺状の凹凸を発生させる印刷方法で、例として特許文献2では紫外線により硬化させる方法が示されている。また、特許文献3においては、スクリーン印刷において粗いスクリーンメッシュと紫外線硬化型のインク使用し、インクを厚盛することにより膨隆を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2002−17982号公報
【特許文献2】 特許第2949121号公報
【特許文献3】 特開2007−55212号公報
【0005】
このような立体図柄を形成した印刷パネルに対し、裏側より適切に照明がなされると、表面の微小な凹凸による光の屈折によってキラキラと輝いて装飾効果が得られる。一般的には、パネル全体を立体図柄とはせずに、光拡散性で着色された通常の印刷を施した部分(以下、通常印刷部と記す。)の中に部分的に立体図柄部を形成する。こうすることで表示画面に意匠的な変化が生まれ、立体図柄部が周囲よりも輝き感を持って強調されるような表現がなされる。
【0006】
従来、内照式表示板の照明手段(以降バックライトと記す。)としては、熱陰極蛍光管や冷陰極管が主に使用され、広い面積を照明する場合には複数本の蛍光管が並べて使用されている。ところが、このような蛍光管による照明方法では、蛍光管の直上となるパネル部分が明るく(輝度が高く)、蛍光管から離れるに従い暗くなる輝度ムラの問題が生じる。輝度ムラは表示パネルと蛍光管との距離が近づくほど顕著となるため、ムラを目立たなくするためには蛍光管と表示パネルとを離す必要があり、照明装置の奥行きが大きくなるという問題がある。このような問題を解消するバックライトとしては、導光板を使用するエッジライト方式や多数のLED光源を狭ピッチで配列させる方式なども利用されている。
しかしながら、立体図柄が形成された表示パネルに対して、その装飾効果を引き出しつつムラを抑えて照明するには、いずれの方法も難点がある。以下に縮み印刷の輝き感が得られる効果を中心に説明する。
【0007】
図1〜図3は、微小な凹凸を有する立体図柄1が形成された表示パネル4を横断面方向から見た図である。
図1では、パネルの裏側から強い指向性を持った平行光線(光の進行方向を矢印で示す。)が照射されている状態を示した。立体図柄部分は内部拡散が起きず、裏側からの光が図柄の凹凸形状によって界面屈折される。これによって裏側から照射される光の進行方向から観察する場合には、屈折せず直進する微小領域が明部3として見え、屈折して直進しない微小領域は暗部2となる。この微小な領域での明暗コントラストによってキラキラとした輝き感が生じる。また、照射される光の進行方向からずれた方向から観察した場合には、その方向に光を屈折する部分のみが強く光って見えることになり、同様の原理により明暗のコントラストが生じる。
【0008】
図2では立体図柄1が形成された表示パネル4に対して点状光源5から放射状に広がる光が照射されている状況を示している。このようなバックライトでは平行光の場合と光の進行角度が変り、微小な明部暗部の位置やパターンは変るものの、やはり強い明暗コントラストが発生する。すなわちキラキラとした輝き感が発生する。
しかしながら、LEDのような点状光源を大きな間隔で表示パネル直下に配列する場合には、個々のLEDに対応して輝度ムラが通常印刷部にまで発生するため美観的に好ましくないものとなる。さらに立体図柄部では極端な明部が点在する発光となり見苦しいものとなる。また、蛍光管を用いた場合にも通常印刷部にまで輝度ムラが発生して光源の形状が認識されてしまう。径の太い熱陰極蛍光管を使用する場合には比較的目立たないものの、小さな径の冷陰極管を使用すると細い輝線となるため、やはり美観的に非常に好ましくない。光源と表示パネルとの距離を大きく広げると、表示パネルに到達する光の状態は図1の平行光を照射した場合に近づいてくるためムラの問題は軽微とすることができるが、この方法では装置の奥行きが極端に大きくなるばかりでなく、照明の効率も極端に悪化するため、実用性に欠ける。
【0009】
図3においては、パネル裏側から指向性を持たない拡散光が照射された場合を示している。この場合には、輝度ムラを目立たなくする効果を有するが立体図柄は全体的に光ってしまい、凹凸部分の明暗コントラストは著しく低下し、キラキラとした輝き感は得られないことになる。一般的な導光板を利用する場合には、薄型で輝度の面内均一性に優れた照明は得られるものの、導光板全体から拡散光が照射されるため図3の状態に近く、輝き感が得られなくなる問題が生じる。
【0010】
なお、図1および図2では縮み印刷部分の凹凸をパネル裏側に隆起させているが、表側に凹凸隆起させてあっても、これらの原理は同じである。また、表面の微小な立体的隆起を利用してキラキラとした装飾性を付与するパネルの形成方法としては、他にも、エンボス法や発泡法などもあるが、このような方法を用いても状況はほぼ同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
表面に微小な凹凸を立体的に隆起させた立体図柄を有する表示パネルを用いて、その立体感を際立たせて装飾性を引き出し、かつ通常印刷部はムラなく照明する手段を有した薄型の内照式表示板を安価に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、透光性を有し立体的に隆起させた図柄が施された表示パネルと、その裏側から照明するための照明手段が設けられた内照式表示板であって、該照明手段は透明部材からなる導光板とその端面に配置されたLED光源とを具備しており、該導光板はその面積の大部分を占める非発光エリアと、非発光エリア内に点在する発光エリアとからなり、非発光エリア内には直径が5mm以上30mm以下の仮想円を直径の2.5倍以下の間隔で全面に亘って配列させることが可能であり、導光板と表示パネルとの距離が15mm以上80mm以下であることを特徴とする内照式表示板である。
【0014】
本発明の導光板の裏面に形成されている発光エリアは、一つの発光エリアが一つの連続した傾斜反射面からなるものが特に好ましい。
【0015】
表示パネルに施された立体的図柄は、縮み印刷方式で印刷され、印刷部分の表面に皺状の凹凸を有するものが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
この発明に用いられる照明方法によれば、導光板裏面に一定の間隔で配列された発光エリアから出射される光によって、立体図柄部がメリハリのある輝き感を持って表示される。一方で、通常印刷部は明暗のムラ無く均一な明るさで表示される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】平行光照明により立体図柄の輝き感が生じる原理を説明する表示パネルの横断面図
【図2】点光源発散照明光により立体図柄の輝き感が生じる説明する表示パネルの横断面図
【図3】拡散照明光により輝き感が失われる原理を説明する表示パネルの横断面図
【図4】本発明の表示板の特徴を示す正面及び側面図
【図5】本発明の導光板の特徴を示す正面図
【図6】一般的な導光板バックライトによる照明を説明する側面図
【図7】本発明のバックライトによる照明を説明する側面図
【図8】本発明の導光板の別の実施例を示す正面及び側面図
【図9】本発明の導光板の別の実施例を示す正面及び側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の特徴について代表的な実施例を挙げて説明する。図4は特徴となる導光板6とLED7と表示パネル4を模式的に示した正面図と側面図である。
表面に微小な凹凸を立体的に隆起させた立体図柄を有する表示パネル4の裏側には、導光板6とLED7からなるバックライト8が設けられている。LEDは導光板の一方の端面に配列して設置されている。導光板はハッチングした扇形部分の発光エリア9が点在し、それ以外の大部分の面積は非発光エリア10となっている。この非発光エリアには直径が5〜30mmの(非発光の)仮想円を配列(存在)させることが可能な程度に広い面積を有している。発光エリア9には、導光板の裏側に傾斜反射面が形成されている。この実施例では、一つの傾斜反射面が一つの発光エリアに対応している。導光板の側面形状は、板厚が傾斜反射面によって入光端面より徐々に薄くなる形状となっている。
【0020】
図5は図4と同じパターンの発光エリアをもつ導光板の発光エリアと非発光エリアの配列を抜き出した正面図である。円11は最短となる3つの発光エリア同士に接するように描いた円であり、本発明で定義する非発光エリア内に配列可能な仮想円を示している。一般的な導光板は、印刷ドット、凹凸ドット、レーザードット、V溝などの反射パターンを配列させて面全体を発光させる。個々の反射パターンの間には一定の間隔があるものの、通常はそれらが視認されないように細かなピッチで配列させる。一般的にそれらのピッチは4mm以内である。本発明で規定する「非発光エリアに配列可能な仮想円」の寸法で言った場合にも4mm以内である。これに対して本発明で用いる導光板の特徴は、発光エリアがより大きな間隔で非発光エリア内に点在していることにある。導光板の発光エリア同士の間隔を適切に設定し、導光板と表示パネルとの距離を適切に設定することによって、通常印刷部は明暗のムラ無く均一な明るさで表示されながら、立体図柄部はリズミカルな明暗を設けてメリハリ感を持たせる。それにより美観的に優れた標示板となることを見出し、本発明に至ったものである。また、先に説明したように、一般的な導光板バックライトでは立体図柄の輝き間が損なわれてしまうのに対して、本発明のバックライトでは輝き感が発現する。
【0021】
本発明の照明方法によって立体図柄部がメリハリのある輝き感を持って表示される原理について図により説明する。先に説明したように、立体図柄部の輝き感は微小な明暗のコントラストによって生じるものであるが、同一個所に種々の方向から照明光が照射されて混ざり合ってしまうと明暗のコントラストが発生しない。図6は一般的な導光板照明の状態を模式的に示している。導光板6の裏面に細かなピッチで配列した反射パターン15から光が表示パネル4に照射される。表示パネルの同一個所に種々の方向からの照明光が照射されて混ざり合っているため輝き感が生じない。
【0022】
図7は本発明の照明状態を模式的に示したものである。立体図柄部のある表示パネル4の一領域12aでは、導光板6の中の一つの発光エリア9aからの照射光が大部分を占めている。立体図柄部の隣の一領域12bでは、隣の発光エリア9bからの照射光が大部分を占めている。このため、個々の位置では図2のように点光源を配置したときと同様に立体図柄の屈折による強い明暗コントラストが生じる。隣接する発光エリアからの照射光が(ある程度は重なり合うが)大きくは混じり合わないように表示パネルと導光板との距離が設定されている。立体図柄部での屈折作用はそれほど大きくはないため、発光エリアに対応して一定の明暗が発生することになるが、発光エリア間の適度なピッチにより明暗の分布はリズミカルなメリハリ感として好ましく感じられる。
【0023】
発光エリアの間隔が狭すぎる場合には立体図柄の輝き感が引き出せず、広すぎる場合には通常印刷部においても明暗のムラが発生するため美観的に好ましくない。好適な範囲は配列可能な仮想円11の直径が5mm以上30mm以下の範囲であり、特に好ましくは8mm以上15mm以下である。
【0024】
導光板と表示パネルとの距離が小さすぎる場合、通常印刷部においても明暗のムラが発生するため美観的に好ましくなく、大きすぎる場合には表示板が厚くなるため好ましくない。好適な距離範囲は15mm以上80mm以下である。
【0025】
表示板の用途によっては、法線方向からずれた斜めの方向の見栄えが重要となる場合がある。例えば遊技機の上部に設ける(タイトルなどの)表示板においては斜め下方向からの見栄えが重要となり、逆に遊技機の下部に設ける(タイトルなどの)表示板においては斜め上方向からの見栄えが重要となる。このような場合には導光板からの出射光を意図的に斜め方向へと出射させることで、斜め方向での明るさと縮み印刷部分の輝き感とを増強することが可能である。導光板からの出射光の方向は傾斜反射面の角度の制御によって可能である。
【0026】
図4の導光板では、一つの発光エリアが一つの傾斜反射面となっており、板厚が傾斜反射面によって徐々に薄くなるような構造であるが、本発明の導光板はこれに限られるものではなく、非発光エリアに配列可能な仮想円の直径が5mm以上30mm以下となるように反射面(発光エリア)を形成すれば同様の効果が得られる。様々な構造が有りうるが、例として図8のように導光板6の板厚が全体的に入光端面から薄くなるくさび形となっており、非発光エリア10は仮想円11が配列可能な広さを有し、発光エリア9には光を反射/屈折させて外部へ照射する微小凹凸が形成されている構造が挙げられる。
【0027】
本発明での発光エリアは、複数の反射パターンの集合体となっていてもよい。例としては図9のように、一つの発光エリア9がドット形状の反射パターン15の集合体となっているケースが挙げられる。画面全体での輝度分布を均一化したり、意図的に中央を明るくするなどの目的のために、発光エリア内の反射パターンを面内位置によって変化させることも可能である。反射パターンを密に形成することで輝度を高く、反射パターンを粗とすることで輝度を低く制御できる。
【0028】
導光体の発光エリアから全ての光が表示パネル側に出射されるのではなく、一定量の光は裏側にも進行する。このため、裏側に光反射性の部材を空気層を介して配置し、光を表示パネル側に戻すことで、表示板の輝度を高めることができる。ただし、導光体裏面に配置する反射性部材から反射されて表示パネルに到達する光は、導光板から直接に表示パネルに到達する光とはその方向が異なるために、立体図柄による輝き感を減じさせる効果を有する。このため、輝き感を最優先する目的においては、反射部材を配置しない方法も場合により有効である。輝き感を減じさせない観点からは、反射性部材を配置する場合にも、拡散反射性よりも鏡面反射性の部材を使用するほうが望ましい。
【0029】
本発明で用いられる導光板は、射出成形法(溶融させた樹脂を金型内に充填させる方法)、により安価に量産できる。材質としては、透明性の高い熱可塑性樹脂が好ましく、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂などが用いられる。
【0030】
光源として用いるLEDは、特に限定されるものではないが、導光板の端面に配置したときのスペースや導光板への入射効率を高くする観点からは、発光面が平坦な表面実装型のパッケージが好適である。赤、青、緑などの多色の発光ダイオードチップを一つのパッケージに収めたものを使用することで多色の照明装置とすることも可能となる。LED光源は点滅させて演出効果を持たせることも可能であり、さらに多色のLED光源を使用する場合には、照明装置による様々な演出が可能となる。熱陰極蛍光管を使用とするバックライトでは定期的なランプ交換が必要となるが、LEDは長寿命であるため、ランプ交換のメンテナンスは不要となる。
【0031】
導光板の光入射部の板厚を用いるLEDの発光領域を被う厚さとし、LEDと入射面とをできるだけ密接させて配置することで、LEDからの光束を効率よく導光板内に入射させ、有効に利用することができる。
【産業上の利用分野】
【0032】
本発明の表示板は、遊技機、自動販売機、交通標識、商業看板など、印刷された文字や絵柄をバックライトで光らせる内照式表示板として広く利用可能で、美観に優れ観察者の視線を誘導する表示板が提供される。
【符号の説明】
【0033】
1.立体図柄
2.微小暗部(観察方向に光が直進しない部分)
3.微小明部(観察方向に光が直進する部分)
4.表示パネル
5.点状光源
6.導光板
7.LED
8.バックライト
9.発光エリア(=傾斜反射面)
10.非発光エリア
11.非発光エリアに配列可能な仮想円
12.標示板上の一領域
15.反射パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し立体的に隆起させた図柄が施された表示パネルと、その裏側から照明するための照明手段が設けられた内照式表示板であって、該照明手段は透明部材からなる導光板とその端面に配置されたLED光源とを具備しており、該導光板はその面積の大部分を占める非発光エリアと、非発光エリア内に点在する発光エリアとからなり、非発光エリア内には直径が5mm以上30mm以下の仮想円を直径の2.5倍以下の間隔で全面に亘って配列させることが可能であり、導光板と表示パネルとの距離が15mm以上80mm以下であることを特徴とする内照式表示板。
【請求項2】
一つの発光エリアは、一つの連続した傾斜反射面からなることを特徴とする請求項1記載の内照式表示板。
【請求項3】
立体的に隆起させた図柄が縮み印刷方式で印刷され、印刷部分の表面に皺状の凹凸を有する表示パネルを用いたものであることを特徴とする請求項1または2記載の内照式表示板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−15799(P2013−15799A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160330(P2011−160330)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(591054303)コルコート株式会社 (27)
【Fターム(参考)】