説明

内燃エンジンの2つのカムシャフトの間の伝達装置

【課題】2つのカムシャフトを備えたエンジンの2つのカムシャフトを接続するトランスミッションにおいて、耐久性を有し、重量とコストの増加を抑制できるトランスミッションを提供する。
【解決手段】2つのカムシャフト40を互いに連結するトランスミッション7は、1対の関節接続された平行四辺形機構L1,L2からなり、各平行四辺形機構L1,L2は、カムシャフト40の端部とともに回転可能で、連結ロッドR1,R2により互いに連結された2つのクランク部材C1,C2からなる。クランク部材は、カムシャフト40に偏心して装着され、それぞれの連結ロッドR1,R2の端部に形成された円形開口に回転可能に受け入れられる円形ディスクで形成されている。2つのクランク部材C1,C2は同一のカムシャフトとともに回転可能であり、所定の角度だけ互いに離れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン弁を駆動する1対のカムシャフトと、ドライブシャフトをカムシャフトの一方に接続するトランスミッションと、2つのカムシャフトの各端部に接続するトランスミッションとからなる形式の内燃エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
上に示したタイプのエンジンでは、2つのカムシャフトを接続するトランスミッションは例えばギヤトランスミッション、チェーントランスミッション、又は歯付きベルトである。ギアトランスミッションは、特に2つのカムシャフトの軸間の距離がリミットバルブより大きく、ギアトランスミッションの全体寸法と重量が限界を超える場合には使用することができない。歯付ベルトは、簡易で安価であるが、寿命がエンジンや該エンジンが搭載される車両の寿命よりもかなり低く、車両の寿命の間に1回又はそれ以上のベルト交換を暗示している。最後にチェーントランスミッションは、液圧ベルト引張装置が必要であり、重量とコストを増加し、隙間が生じ、歯付ベルトよりも長い耐久性を有するが、この観点からも限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】GB−A−713938
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前記従来技術の全ての欠点を克服した前記タイプの内燃エンジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は、第1カムシャフトを第2カムシャフトに接続するトランスミッションは1対の平行四辺形機構からなり、該各平行四辺形機構は2つのクランク部材からなり、該クランク部材は、カムシャフトの端部とともに回転可能であり、連結ロッドにより互いに連結されていること、クランク部材は、円形ディスクで形成され、該円形ディスクは、カムシャフトに偏心して装着され、それぞれの連結ロッドの両端に形成された円形開口に回転可能に受け入れられること、2つのクランク部材は、同一のカムシャフトとともに回転可能であり、所定の角度だけ互いに離れていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
内燃エンジンに2対の偏心ディスクと2つのそれぞれの連結ロッドとを備えたこのタイプの機構の適用は、ドライブシャフトとカムシャフトの間の連結トランスミッションに関して以前から公知である(GB−A−713938)。これに対し、2つのカムシャフトを互いに接続するこのタイプのトランスミッションの使用は、公知でない。この
適用により、これまで使用されてきた機構に対して種々の利点を得ることができる。ギヤトランスミッションに関して、本発明によるトランスミッションは、簡単で安価な方法で連結することができ、2つのカムシャフトの軸間の距離が比較的大きいときでも、空間が最小になる。歯付ベルトの解決手段に関して、本システムは、エンジンと該エンジンが搭載される車両の寿命に等しいかそれより長い運転期間を確保することができる。さらに、チェーン解決手段に関しては、本発明による装置は、補助的装置もメンテナンス動作も必要としない。運転期間中、隙間を生じない、さらに、カムシャフト上でトランスミッションを組み立てることにより、カムシャフトのタイミング調整を自動的に得られる。システムはまた、チェーントランスミッションシステムより静かである。最後に、本発明による装置は、異なるモデルの車両を製造する場合に、スケールの相当な縮小を得るのに適していることを考慮すべきである。カムシャフトの軸間の距離に拘わらず、本装置の部品は、距離に合わせて提供することが必要な連結ロッドを除いて、実際に変化しない。他の部品は如何なるタイプのエンジンに対しても同一である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明のさらなる特徴及び利点は、単に非限定的な実施例である添付素面を参照してなされる説明から明確になる。
【図1】本発明によるトランスミッションを備えた内燃エンジンの概略斜視図。
【図2】トランスミッションのカバーを取り外した図1のエンジンの詳細の部分概略部分断面図。
【図3】図2の詳細の断面図。
【図4】本発明によるトランスミッションの分解斜視図。
【図5】図2と同様に、カバーを取り外した本発明によるトランスミッションの前面図。
【図6】代案の実施例を示す図3の変形例。
【図7】図6の変形例によるトランスミッションの分解斜視図。
【図8】図5,6のトランスミッションの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
内燃エンジンは、図1に符号1で全体的に概略示され、エンジンブロック2とシリンダヘッド3からなり、シリンダヘッド3にはエンジン弁を制御するように意図された2つの回転可能なカムシャフトが装着され、そのうち軸4のみが図示されている。エンジンは、エンジンの一端に配置された公知のタイプのトランスミッション5、例えばチェーントランスミッションを有し、2つのカムシャフトの一方とドライブシャフトのエンジンから外側に突出するそれぞれの端部を互いに回転可能に接続している。簡略化するために、図1はドライブシャフトの軸6を示している。
【0009】
本発明によると、トランスミッション7がエンジンの他の側に設けられ、その特徴は以下に説明するが、2つのカムシャフトのそれぞれの端部を互いに接続している。
【0010】
トランスミッション7の第1実施形態を示す図2に見られるように、このトランスミッションはケーシングに収容され、該ケーシングはカムシャフトが装着されているシリンダヘッドの構造(又はシリンダヘッドの上の上部構造)と1部品で鋳造により形成された部分7aであり、シリンダヘッドはカバー(不図示)により部分的に構成され、該カバーはシリンダヘッド(又はシリンダヘッドに装着される上部構造)の周囲の前面7bで結合されねじ止めされている。ねじ込まれた状態では、カバーは閉鎖チャンバ70を形成し、該閉鎖チャンバ70はトランスミッションの要素を収容し、オイルで満たされ、ダクト(不図示)を介してエンジン潤滑回路と連通している。
【0011】
図2,3は、参照符号40で示す2つのカムシャフトの一方とベアリングカム400を断面的に示し、カムシャフトはチャンバ70に面する端面40aを有する。図2,3には示されていない他方のカムシャフトも同様である。
【0012】
トランスミッション7は、2つのカムシャフト40を互いに連結するのに使用され、1対の関節平行四辺形機構L1,L2を有する。各関節平行四辺形機構L1,L2は、2つのクランク部材C1,C2を有する。該クランク部材C1,C2はそれぞれ2つのカムシャフト40とともに回転可能であり、連結ロッド(それぞれR1とR2で示されている)により互いに連結されている。2つのクランク部材C1,C2は、2つのカムシャフト40の端面40aに偏心して装着された2つの円形ディスクで形成されている。このディスクC1,C2は、連結ロッドR1,R2の端部に形成された円形開口9に、低摩擦係数の材料からなるブッシュ8を介在させて、回転可能に受け入れられている。
【0013】
図5に明瞭に見られるように、2つのクランク部材C1,C2は、カムシャフト40とともに回転可能であり、安定機構(non-labile mechanism)を得るために、角度A例えば約120°だけお互いに離れた位置でカムシャフト40に固定されている。
【0014】
2つの連結ロッドR1,R2は、金属平板の形態であって、互いに平行であり、それぞれ狭い中間部10と2つの円形の広い端部11とを有する8字形状を有し、端部11には円形ディスクC1,C2が回転可能に装着される円形開口9が形成されている。
【0015】
ディスクC1,C2はそれぞれ、ねじ13が係合する偏心円形孔12を有し、ねじ13はそれぞれカムシャフト40の端面40aに形成されたねじ軸孔14にねじ込まれ、対応のディスクC1,C2をカムシャフト40に固定している。
【0016】
図4を参照すると、2つのディスクC1,C2は同一のカムシャフト40に固定するように意図され、前面部で互いに連結されている。このために、ディスクC1は、偏心ピン15を有し、該偏心ピン15はディスクC2に対向する面の対応する空間(図には示されていない)に受け入れられる。これにより、2つのディスクC1,C2は同じシャフト40に固定され、前述の角度Aに相当する所定の角度位置にロックされている。さらに、ディスクの面は軽量化のための空間16を有している。
【0017】
組み立て時、ディスクC1,C2を連結ロッドR1,R2のそれぞれの座にベアリング8を介して装着する。そして、ねじ13をディスクC1,C2の孔12を通してカムシャフト40の孔14に係合するが、固定しない。この状態で、オペレータは、その目的のために使用可能な公知の器具を介して、カムシャフトの正しい角度タイミング調整を確認してもよい。カムシャフトが位置決めされ、正しい角度位置に維持されると、ねじ13を締め込んで、2つのカムシャフト40の連結を安定させる。
【0018】
エンジンの運転中、ドライブシャフトの回転はトランスミッション5を介してカムシャフトの一方に伝達され、一方カムシャフトから他方のカムシャフトへの回転は前述したトランスミッションシステムを介して伝達される。
【0019】
図6−8は、図2−5のものと類似したトランスミッションを示す。この図では、対応する部分には同一符号を使用して示されている。この第2実施形態と前述したものとの間の唯一の実質的な相違は、同一のカムシャフトに関連する2つのディスクC1,C2が例えば焼結又は鍛造の単一の部品の一部であるという事実にある。また、図7は2つのワッシャ17を示し、該ワッシャはねじ17の頭部の下に装着される。
【0020】
当然ながら、本発明の原理を既存しないかぎり、構成の詳細や実施形態は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、これまで説明し図示してきたものに対して広範囲に変更してもよい。
【0021】
例えば、ローラベアリングはスライドベアリング8の代わりに使用してもよい。
【符号の説明】
【0022】
5 トランスミッション
6 ドライブシャフト
7 トランスミッション
9 円形開口
40 カムシャフト
C1.C2 クランク部材
L1,L2 平行四辺形機構
R1,R2 連結ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライブシャフト(6)と、エンジン弁を駆動する少なくとも1つのカムシャフト(40)と、ドライブシャフト(6)を前記少なくとも1つのカムシャフト(40)に連結するトランスミッション(5,7)とからなる内燃エンジンであって、
前記トランスミッションは1対の平行四辺形機構(L1,L2)を有し、
前記各平行四辺形機構は、連結ロッド(R1,R2)により互いに連結された2つのクランク部材(C1,C2)からなり、前記連結ロッド(R1,R2)の両端は前記クランク部材(C1,C2)に関節接続され、
前記各平行四辺形機構の前記クランク部材は、円形ディスク(C1.C2)で形成され、該円形ディスク(C1,C2)は、それぞれのカムシャフト(40)に偏心して装着され、それぞれの連結ロッド(R1、R2)の両端に形成された円形開口(9)に回転可能に受け入れられ、
前記2つのクランク部材(C1,C2)は、同一のカムシャフト(40)とともに回転可能であり、所定の角度(A)だけ互いに離れている内燃エンジンにおいて、
前記エンジンは2つのカムシャフト(40)を有し、
前記トランスミッション(5,7)は、ドライブシャフト(6)を前記カムシャフト(40)の第1シャフトに連結する第1トランスミッション部(5)を有し、該第1トランスミッション部(5)は、前記カムシャフト(40)の一端に配置され、
前記トランスミッション(5,7)は、前記2つのカムシャフト(40)のそれぞれの端部を互いに連結する第2トランスミッション部(7)をさらに有し、該第2トランスミッション部(7)は、前記第1トランスミッション(5)が配置されているカムシャフトの端部と反対側のカムシャフトの端部に配置され、
前記第2トランスミッション部(7)は、前記1対の平行四辺形機構(L1,L2)により構成され、該各平行四辺形機構は、前記クランクシャフト(40)の端部とともに回転可能な2つのクランク部材(C1,C2)と、前記2つのクランク部材(C1,C2)に両端が関節連結された連結ロッド(R1,R2)とを有する、
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項2】
前記各連結ロッド(R1,R2)は、狭い中間部(10)と、2つの広い端部(11)とを備えたほぼ8字形状の板により形成され、前記端部は前記開口(9)を有し、該開口(8)に前記それぞれの偏心ディスク(C1,C2)が回転可能に装着されていることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
同一のカムシャフト(4)に関連する前記2つの偏心ディスク(C1,C2)は、単一の部品で形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジン。
【請求項4】
同一のカムシャフト(4)に関連する前記2つの偏心ディスク(C1,C2)は、所定の角度位置で互いに結合された2つの別個の要素から形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジン。
【請求項5】
前記各偏心ディスク(C1,C2)はそれぞれの開口(9)にローラ又はスライドベアリング(8)を介して回転可能に装着されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−72766(P2012−72766A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209617(P2011−209617)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(511224209)フィアット・パワートレイン・テクノロジーズ・ソシエタ・ペル・アチオニ (4)
【氏名又は名称原語表記】Fiat Powertrain Technologies S.p.A.
【Fターム(参考)】