説明

内燃機関のクランク角判定装置

【課題】エンジンの低温時にクランク角を判定する際の基準となる欠歯部を精度良く検出できるようにする。
【解決手段】エンジン11のクランク軸23に固定したシグナルロータ24の外周部に、複数の突起26を等間隔で設けると共に、特定のクランク角で突起26が欠けた欠歯部27を設け、クランク角センサ25は、シグナルロータ24の回転に伴って突起26が対向する毎にクランク角信号を出力する。ECU31は、クランク角信号の出力タイミング毎に、クランク角信号間の時間比(クランク角信号の時間間隔の今回値と前回値との比)を算出すると共に、クランク角信号間の時間比の微分値(クランク角信号間の時間比の今回値と前回値との差分)を算出し、これらのクランク角信号間の時間比とクランク角信号間の時間比の微分値をそれぞれ所定の閾値と比較して欠歯部27を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク角を判定する際の基準となる欠歯部を検出する内燃機関のクランク角判定装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のクランク角判定装置としては、例えば、特許文献1(特開2001−182605号公報)や特許文献2(特開2005−240606号公報)に記載されているように、内燃機関のクランク軸に固定したシグナルロータの外周部に複数の突起を等間隔で設けると共に特定のクランク角で突起が欠けた欠歯部を設け、このシグナルロータの外周部に対向するように設置したクランク角センサから出力されるクランク角信号(パルス信号)の間隔が欠歯部の位置(特定のクランク角)で長くなることを利用して欠歯部を検出し、この欠歯部の位置(特定のクランク角)を基準にしてクランク角を判定するようにしたものがある。
【0003】
欠歯部の具体的な検出方法としては、例えば、クランク角信号の出力タイミング毎に、クランク角信号間の時間比(クランク角信号の時間間隔の今回値と前回値との比)を算出し、このクランク角信号間の時間比を所定の閾値と比較して欠歯部を検出するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−182605号公報
【特許文献2】特開2005−240606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、クランク角信号間の時間比を所定の閾値と比較して欠歯部を検出するシステムでは、次のような問題がある。内燃機関の低温始動時(例えば−10℃以下の始動時)には、フリクションの増大によりエンジン回転速度(クランキング回転速度)が低下し、圧縮行程のコンプレッショントルクにより圧縮TDC(圧縮上死点)付近でエンジン回転速度の変動が大きくなってクランク角信号の時間間隔が大きく変動する傾向があるため、欠歯部ではないにも拘らず、圧縮TDC付近でクランク角信号間の時間比が閾値を越えて、欠歯部であると誤検出する可能性があり、これにより、欠歯部の検出精度が低下して、クランク角の判定精度が低下する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、欠歯部の誤検出を防止することができ、欠歯部の検出精度を向上させることができる内燃機関のクランク角判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関のクランク軸に固定され、外周部に複数の突起が等間隔で設けられると共に特定のクランク角で突起が欠けた欠歯部が設けられたシグナルロータと、このシグナルロータの外周部に対向するように設置され、シグナルロータの回転に伴って突起が対向する毎にクランク角信号を出力するクランク角センサと、クランク角信号の時間間隔に基づいて欠歯部を検出する欠歯検出手段とを備えた内燃機関のクランク角判定装置において、欠歯検出手段は、クランク角信号の時間間隔の比(以下「クランク角信号間の時間比」という)の微分値を用いて欠歯部を検出するようにしたものである。
【0008】
欠歯部ではクランク角信号間の時間比の微分値が圧縮TDC(圧縮上死点)付近よりも大きくなる傾向があるため、クランク角信号間の時間比の微分値を用いれば、欠歯部と圧縮TDC付近とを精度良く区別することができる。これにより、内燃機関の低温時に欠歯部ではないにも拘らず圧縮TDC付近で欠歯部であると誤検出することを未然に防止することができ、欠歯部の検出精度を向上させることができる。
【0009】
この場合、請求項2のように、クランク角信号間の時間比と該クランク角信号間の時間比の微分値をそれぞれ所定の閾値と比較して欠歯部を検出するようにしても良い。このようにすれば、クランク角信号間の時間比とクランク角信号間の時間比の微分値の両方を用いて欠歯部を精度良く検出することができる。
【0010】
また、請求項3のように、内燃機関のクランク軸に固定され、外周部に複数の突起が等間隔で設けられると共に特定のクランク角で突起が欠けた欠歯部が設けられたシグナルロータと、このシグナルロータの外周部に対向するように設置され、シグナルロータの回転に伴って突起が対向する毎にクランク角信号を出力するクランク角センサと、クランク角信号の時間間隔に基づいて欠歯部を検出する欠歯検出手段とを備えた内燃機関のクランク角判定装置において、欠歯検出手段は、内燃機関の低温時に圧縮TDC(圧縮上死点)を含む所定クランク角領域で欠歯部の検出を禁止するようにしても良い。
【0011】
内燃機関の低温時(例えば低温始動時等)には、欠歯部ではないにも拘らず、圧縮TDC付近でクランク角信号の時間間隔が大きく変動して、欠歯部であると誤検出する可能性があるため、内燃機関の低温時に圧縮TDCを含む所定クランク角領域で欠歯部の検出を禁止すれば、内燃機関の低温時に欠歯部ではないにも拘らず圧縮TDC付近で欠歯部であると誤検出することを未然に防止することができ、欠歯部の検出精度を向上させることができる。
【0012】
この場合、請求項4のように、内燃機関のカム軸の回転に同期してカム角信号を出力するカム角センサを備えたシステムでは、カム角信号に基づいて所定クランク角領域を判定するようにしても良い。このようにすれば、所定クランク角領域(欠歯部の検出を禁止する領域)を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の実施例1におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は従来例の欠歯検出方法を説明するタイムチャートである。
【図3】図3は従来例の欠歯検出方法の問題を説明するタイムチャートである。
【図4】図4は実施例1の欠歯検出方法を説明するタイムチャートである。
【図5】図5は実施例1の欠歯検出方法の効果を説明するタイムチャートである。
【図6】図6は実施例1の欠歯検出ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は実施例2の欠歯検出方法を説明するタイムチャートである。
【図8】図8は実施例2の欠歯検出ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1を図1乃至図6に基づいて説明する。
内燃機関であるエンジン11の吸気ポート12に接続された吸気管13の途中には、スロットルバルブ14が設けられ、このスロットルバルブ14の開度(スロットル開度)がスロットル開度センサ15によって検出される。また、スロットルバルブ14の下流側には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ16が設けられ、各気筒の吸気ポート12の近傍には、それぞれ吸気ポート12に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁17が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ18が取り付けられ、各気筒の点火プラグ18の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0016】
一方、エンジン11の排気ポート19に接続された排気管20の途中には、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒21が設けられている。エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ22が設けられている。
【0017】
また、エンジン11のクランク軸23に固定されたシグナルロータ24の外周部に対向してクランク角センサ25が設置され、このクランク角センサ25からシグナルロータ24(クランク軸23)の回転に同期して所定クランク角毎にクランク角信号(パルス信号)が出力される。シグナルロータ24の外周部には、複数の突起26が等間隔で設けられると共に、特定のクランク角で1つ又は複数の突起26が欠けた欠歯部27が設けられている。クランク角センサ25は、シグナルロータ24の回転に伴って突起26が対向する毎にクランク角信号を出力し、欠歯部27の位置(特定のクランク角)でクランク角信号の間隔が長くなる。
【0018】
更に、エンジン11のカム軸28に固定されたシグナルロータ29の外周部に対向してカム角センサ30が設置され、このカム角センサ30からシグナルロータ29(カム軸28)の回転に同期して所定のカム角でカム角信号(パルス信号)が出力される。このカム角信号に基づいて気筒判別用のG信号のオン/オフが切り替わる。
【0019】
これら各種センサの出力は、電子制御ユニット(以下「ECU」と表記する)31に入力される。このECU31は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。
【0020】
また、ECU31は、クランク角信号の出力タイミング毎(例えばクランク角信号の立ち上がりタイミング又は立ち下がりタイミング毎)に、クランク角信号の時間間隔T(前回と今回のクランク角信号の出力タイミングの時間間隔)を算出して、このクランク角信号の時間間隔Tに基づいて欠歯部27を検出し、この欠歯部27の位置(特定のクランク角)を基準にしてクランク角を判定する。
【0021】
ところで、図2及び図3に示す従来例のように、クランク角信号の出力タイミング毎に、クランク角信号間の時間比Tr (クランク角信号の時間間隔Tの今回値と前回値との比)を算出し、このクランク角信号間の時間比Tr を所定の閾値と比較して欠歯部27を検出するシステムでは、次のような問題がある。
【0022】
図3に示すように、エンジン11の低温始動時(例えば−10℃以下の始動時)には、フリクションの増大によりエンジン回転速度(クランキング回転速度)が低下し、圧縮行程のコンプレッショントルクにより圧縮TDC(圧縮上死点)付近でエンジン回転速度の変動が大きくなってクランク角信号の時間間隔Tが大きく変動する傾向があるため、欠歯部27ではないにも拘らず、圧縮TDC付近でクランク角信号間の時間比Tr が閾値を越えて、欠歯部27であると誤検出する可能性があり、これにより、欠歯部27の検出精度が低下して、クランク角の判定精度が低下する可能性がある。
【0023】
この対策として、本実施例1では、ECU31により後述する図6の欠歯検出ルーチンを実行することで、図4及び図5に示すように、クランク角信号の出力タイミング毎に、クランク角信号間の時間比Tr (クランク角信号の時間間隔Tの今回値と前回値との比)を算出すると共に、クランク角信号間の時間比の微分値Trd(クランク角信号間の時間比Tr の今回値と前回値との差分)を算出し、これらのクランク角信号間の時間比Tr とクランク角信号間の時間比の微分値Trdをそれぞれ所定の閾値TH1 ,TH2 と比較して欠歯部27を検出する。
【0024】
欠歯部27ではクランク角信号間の時間比の微分値Trdが圧縮TDC付近よりも大きくなる傾向があるため、クランク角信号間の時間比の微分値Trdを用いれば、欠歯部27と圧縮TDC付近とを精度良く区別することができ、エンジン11の低温時に欠歯部27ではないにも拘らず圧縮TDC付近で欠歯部27であると誤検出することを未然に防止することができる(図5参照)。
【0025】
以下、本実施例1でECU31が実行する図6の欠歯検出ルーチンの処理内容を説明する。
図6に示す欠歯検出ルーチンは、ECU31の電源オン期間中(イグニッションスイッチのオン期間中)にクランク角信号の出力タイミング毎(例えばクランク角信号の立ち上がりタイミング又は立ち下がりタイミング毎)に繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう欠歯検出手段としての役割を果たす。
【0026】
本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、前回のクランク角信号の出力タイミングから今回のクランク角信号の出力タイミングまでの経過時間(時間間隔)を、今回のクランク角信号の時間間隔T(i) として算出する。
【0027】
この後、ステップ102に進み、今回のクランク角信号の時間間隔T(i) と前回のクランク角信号の時間間隔T(i-1) との比を、今回のクランク角信号間の時間比Tr(i)として算出する。
Tr(i)=T(i) /T(i-1)
【0028】
この後、ステップ103に進み、今回のクランク角信号間の時間比Tr(i)と前回のクランク角信号間の時間比Tr(i-1)との差分を、今回のクランク角信号間の時間比の微分値Trd(i) として算出する。
Trd(i) =Tr(i)−Tr(i-1)
【0029】
この後、ステップ104に進み、今回のクランク角信号間の時間比の微分値Trd(i) が所定の閾値TH2 よりも大きく、且つ、前回のクランク角信号間の時間比Tr(i-1)が所定の閾値TH1 よりも小さいか否かを判定する。
【0030】
このステップ104で「Yes」と判定された場合、つまり、今回のクランク角信号間の時間比の微分値Trd(i) が閾値TH2 よりも大きく、且つ、前回のクランク角信号間の時間比Tr(i-1)が閾値TH1 よりも小さいと判定された場合には、欠歯部27を検出したと判断して、ステップ105に進み、欠歯検出フラグをON(オン)にセットする。
【0031】
これに対して、上記ステップ104で「No」と判定された場合、つまり、今回のクランク角信号間の時間比の微分値Trd(i) が閾値TH2 以下であると判定された場合、又は、前回のクランク角信号間の時間比Tr(i-1)が閾値TH1 以上であると判定された場合には、欠歯部27ではないと判断して、ステップ106に進み、欠歯検出フラグをOFF(オフ)にリセット又は維持する。
【0032】
以上説明した本実施例1では、欠歯部27ではクランク角信号間の時間比の微分値Trdが圧縮TDC付近よりも大きくなる傾向があることに着目して、クランク角信号間の時間比の微分値Trdを用いて欠歯部27を検出するようにしたので、欠歯部27と圧縮TDC付近とを精度良く区別することができる。これにより、エンジン11の低温時に欠歯部27ではないにも拘らず圧縮TDC付近で欠歯部27であると誤検出することを未然に防止することができ、欠歯部27の検出精度を向上させることができる。
【0033】
しかも、本実施例1では、クランク角信号間の時間比Tr とクランク角信号間の時間比の微分値Trdをそれぞれ所定の閾値と比較して欠歯部27を検出するようにしたので、クランク角信号間の時間比Tr とクランク角信号間の時間比の微分値Trdの両方を用いて欠歯部27を精度良く検出することができる。
【0034】
尚、上記実施例1では、今回のクランク角信号間の時間比の微分値Trd(i) と前回のクランク角信号間の時間比Tr(i-1)をそれぞれ所定の閾値と比較して欠歯部27を検出するようにしたが、欠歯部27の検出方法は、これに限定されず、例えば、今回のクランク角信号間の時間比の微分値Trd(i) と前々回のクランク角信号間の時間比Tr(i-2)をそれぞれ所定の閾値と比較して欠歯部27を検出するようにしたり、或は、今回のクランク角信号間の時間比の微分値Trd(i) と前回のクランク角信号間の時間比Tr(i-1)と前々回のクランク角信号間の時間比Tr(i-2)をそれぞれ所定の閾値と比較して欠歯部27を検出するようにしても良い。
【実施例2】
【0035】
次に、図7及び図8を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0036】
エンジン11の低温時(例えば低温始動時等)には、欠歯部27ではないにも拘らず、圧縮TDC付近でクランク角信号の時間間隔Tが大きく変動して、欠歯部27であると誤検出する可能性があるため、本実施例2では、ECU31により後述する図8の欠歯検出ルーチンを実行することで、エンジン11の低温時に各気筒の圧縮TDCを含む所定クランク角領域(クランク角信号の時間間隔Tが大きく変動する領域)で欠歯部27の検出を禁止するようにしている。
【0037】
図7に示すように、例えば3気筒のエンジン11は、240℃A周期で圧縮TDCとなる。また、360℃A周期で欠歯部27の位置(クランク角信号の間隔が長くなる位置)となり、カム角センサ30の出力(カム角信号)に基づいて720℃A周期で気筒判別用のG信号がON(オン)となる。
【0038】
本実施例2では、欠歯部27の位置は、第2気筒#2の圧縮TDC付近と、第3気筒#3の圧縮TDCと第1気筒#1の圧縮TDCの中間付近になるように設定されている。また、G信号がONの期間は、第1気筒#1の圧縮TDCの直前で、第3気筒#3の圧縮TDCと第1気筒#1の圧縮TDCとの中間付近の欠歯部27の位置を含むように設定されている。従って、G信号がOFFの期間に、各気筒(第1気筒#1〜第3気筒#3)の圧縮TDCが含まれるようになっている。
【0039】
そして、エンジン11の低温時にG信号がOFFの期間に欠歯部27の検出を禁止することで、エンジン11の低温時に各気筒の圧縮TDCを含む所定クランク角領域(図7参照)で欠歯部27の検出を禁止する。
【0040】
以下、本実施例2でECU31が実行する図8の欠歯検出ルーチンの処理内容を説明する。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、前回のクランク角信号の出力タイミングから今回のクランク角信号の出力タイミングまでの経過時間(時間間隔)を、今回のクランク角信号の時間間隔T(i) として算出する。
【0041】
この後、ステップ202に進み、今回のクランク角信号の時間間隔T(i) と前回のクランク角信号の時間間隔T(i-1) との比を、今回のクランク角信号間の時間比Tr(i)として算出する。
Tr(i)=T(i) /T(i-1)
【0042】
この後、ステップ203に進み、冷却水温センサ22で検出した冷却水温が所定値(例えば0℃)よりも低いか否かを判定し、冷却水温が所定値よりも低いと判定された場合には、ステップ204に進み、G信号がONであるか否かを判定する。
【0043】
上記ステップ203で冷却水温が所定値よりも低いと判定され、且つ、上記ステップ204でG信号がONであると判定された場合には、エンジン11の低温時でG信号がOFFの期間であると判断して、後述するステップ205の処理(欠歯部27を検出する処理)を実行することなく、ステップ207に進み、欠歯検出フラグをOFFにリセット又は維持して、欠歯部27の検出を禁止する。
【0044】
一方、上記ステップ203で冷却水温が所定値以上であると判定された場合、又は、上記ステップ204でG信号がONであると判定された場合には、ステップ205に進み、今回のクランク角信号間の時間比Tr(i)が所定の下側閾値よりも小さく、且つ、前回のクランク角信号間の時間比Tr(i-1)が所定の上側閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0045】
このステップ205で「Yes」と判定された場合、つまり、今回のクランク角信号間の時間比Tr(i)が下側閾値よりも小さく、且つ、前回のクランク角信号間の時間比Tr(i-1)が上側閾値よりも大きいと判定された場合には、欠歯部27を検出したと判断して、ステップ206に進み、欠歯検出フラグをONにセットする。
【0046】
これに対して、上記ステップ205で「No」と判定された場合、つまり、今回のクランク角信号間の時間比Tr(i)が下側閾値以上であると判定された場合、又は、前回のクランク角信号間の時間比Tr(i-1)が上側閾値以下であると判定された場合には、欠歯部27ではないと判断して、ステップ207に進み、欠歯検出フラグをOFFにリセット又は維持する。
【0047】
以上説明した本実施例2では、エンジン11の低温時に各気筒の圧縮TDCを含む所定クランク角領域で欠歯部27の検出を禁止するようにしたので、エンジン11の低温時に欠歯部27ではないにも拘らず圧縮TDC付近で欠歯部27であると誤検出することを未然に防止することができ、欠歯部27の検出精度を向上させることができる。
【0048】
しかも、本実施例2では、カム角センサ30の出力(カム角信号)に基づいたG信号に基づいて所定クランク角領域を判定するようにしたので、所定クランク角領域(欠歯部27の検出を禁止する領域)を精度良く判定することができる。
【0049】
尚、上記実施例2では、各気筒(第1気筒#1〜第3気筒#3)の圧縮TDCを全て含む所定クランク角領域で欠歯部27の検出を禁止するようにしたが、これに限定されず、例えば、第1気筒#1の圧縮TDCを含む第1の所定クランク角領域と、第2気筒#2の圧縮TDCを含む第2の所定クランク角領域と、第3気筒#3の圧縮TDCを含む第3の所定クランク角領域とを別々に設定し、第1〜第3の所定クランク角領域でそれぞれ欠歯部27の検出を禁止するようにしても良い。
【0050】
また、上記実施例2では、3気筒のエンジン11に本発明を適用したが、これに限定されず、2気筒以下のエンジンや4気筒以上のエンジンに本発明を適用しても良く、要は、720℃Aの中で少なくと1回は欠歯部27の位置が圧縮TDCを含む所定クランク角領域(クランク角信号の時間間隔Tが大きく変動する領域)以外の領域になるように設定されていれば、本発明(請求項3に係る発明)を適用して実施できる。
【0051】
その他、本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射式エンジンに限定されず、筒内噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
【符号の説明】
【0052】
11…エンジン(内燃機関)、13…吸気管、14…スロットルバルブ、17…燃料噴射弁、18…点火プラグ、20…排気管、22…冷却水温センサ、23…クランク軸、24…シグナルロータ、25…クランク角センサ、26…突起、27…欠歯部、28…カム軸、29…シグナルロータ、30…カム角センサ、31…ECU(欠歯検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸に固定され、外周部に複数の突起が等間隔で設けられると共に特定のクランク角で前記突起が欠けた欠歯部が設けられたシグナルロータと、
前記シグナルロータの外周部に対向するように設置され、前記シグナルロータの回転に伴って前記突起が対向する毎にクランク角信号を出力するクランク角センサと、
前記クランク角信号の時間間隔に基づいて前記欠歯部を検出する欠歯検出手段とを備えた内燃機関のクランク角判定装置において、
前記欠歯検出手段は、前記クランク角信号の時間間隔の比(以下「クランク角信号間の時間比」という)の微分値を用いて前記欠歯部を検出することを特徴とする内燃機関のクランク角判定装置。
【請求項2】
前記欠歯検出手段は、前記クランク角信号間の時間比と該クランク角信号間の時間比の微分値をそれぞれ所定の閾値と比較して前記欠歯部を検出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のクランク角判定装置。
【請求項3】
内燃機関のクランク軸に固定され、外周部に複数の突起が等間隔で設けられると共に特定のクランク角で前記突起が欠けた欠歯部が設けられたシグナルロータと、
前記シグナルロータの外周部に対向するように設置され、前記シグナルロータの回転に伴って前記突起が対向する毎にクランク角信号を出力するクランク角センサと、
前記クランク角信号の時間間隔に基づいて前記欠歯部を検出する欠歯検出手段とを備えた内燃機関のクランク角判定装置において、
前記欠歯検出手段は、内燃機関の低温時に圧縮上死点を含む所定クランク角領域で前記欠歯部の検出を禁止することを特徴とする内燃機関のクランク角判定装置。
【請求項4】
内燃機関のカム軸の回転に同期してカム角信号を出力するカム角センサを備え、
前記欠歯検出手段は、前記カム角信号に基づいて前記所定クランク角領域を判定することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関のクランク角判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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