説明

内燃機関の冷却水通路構造

【課題】冷却水の流通する通路内に空気が滞留することを防止することができ、安定した冷却が得られる内燃機関の冷却水通路構造を提供すること。
【解決手段】冷却水を流通させるウォータジャケット22と、ウォータジャケット22から冷却水を導入する冷却水導入通路31と、冷却水導入通路31から分岐しシリンダ21bの配列方向と同方向に延びるとともに、ラジエータ20に冷却水を環流させるメインウォータジャケット32と、冷却水導入通路31から分岐したサブウォータジャケット33と、サブウォータジャケット33の分岐する部分に形成された分岐ポート33aの反対側に位置する反対側端部ポート33bからウォータジャケット22に冷却水を環流させる環流通路35とを備え、メインウォータジャケット32にサブウォータジャケット33の反対側端部ポート33bを連通させるボトムバイパス通路23を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の冷却水通路構造に関し、特に、シリンダヘッドおよびシリンダブロックの内部に形成された内燃機関の冷却水通路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の内燃機関の冷却水通路構造として、シリンダブロックに形成されたシリンダに開口する排気ポートおよび吸気ポートと、排気ポートの開口部分に嵌合される排気バルブシートリングと、排気ポートと吸気ポートとの間に設けられ、シリンダの配列方向に延びる主冷却水通路と、排気バルブシートリングの近傍を通るよう、排気ポート下部側に設けられ、シリンダの配列方向に延びるとともに、主冷却水通路よりも狭い副冷却水通路と、シリンダブロックに形成された冷却水通路からの冷却水を副冷却水通路に供給するための供給通路と、シリンダブロックに固定するボルトが挿通されるボルト孔とを備え、主冷却水通路と副冷却水通路とを連通する連通路が、排気バルブシートリングの近傍のボルト孔周囲の肉部よりなるボルトボス部に形成されたシリンダヘッドの冷却構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このシリンダヘッドの冷却水通路構造においては、主冷却水通路と副冷却水通路とを連通する連通路が形成されているので、複雑で入り組んだ形状をなす副冷却水通路内を流れる冷却水は、この連通路を経て主冷却水通路へと円滑に流れる。その結果、副冷却水通路内の冷却水は、排気バルブシートリングの近傍にて停滞することはなく、排気バルブシートリング部分の冷却が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−185403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシリンダヘッドの冷却構造においては、連通路が形成されているので、排気バルブシートリング部分の冷却水の流通が良好となり、排気バルブシートリング部分の冷却が促進されるものの、副冷却水通路内に空気が滞留してしまい、副冷却水通路内の冷却水の流通を阻害してしまうおそれがあった。
すなわち、従来のシリンダヘッドの冷却構造においては、空気の滞留について考慮されていなかったので、副冷却水通路と連通路との連通部分から離隔した副冷却水通路の部分、例えば、副冷却水通路内の角部や端部に空気が滞留してしまった。このような副冷却水通路内の角部や端部は、空気が滞留し易く、滞留した空気の排出経路が考慮されていないので、空気の滞留を抑制することが困難であった。特に、エンジンが車両に対して車両の前方側が高く、車両の後方側が低くなるよう傾斜して車両に搭載されるという、いわゆる前後方向にスラントを有するエンジンの場合、副冷却水通路内の角部や端部が、エンジンの前方側に位置し、副冷却水通路内で比較的に高い位置になるよう形成された場合には、副冷却水通路内の角部や端部に空気が滞留し易い。
【0006】
このように、副冷却水通路内の角部や端部に空気が滞留してしまうと副冷却水通路内の冷却水の円滑な流通が阻害されてしまい安定した冷却が得られないおそれがあった。
特に、冷却水をラジエータを通さずにバイパス通路を循環させるというエンジンの暖機運転中には、副冷却水通路内で比較的に高温になっている冷却水のシリンダブロックへの流通量が不足し、シリンダブロックの温度上昇が促進されず、エンジンの効率的な熱交換が促進されないおそれがあるという問題があった。このような熱交換の効率の低下により、エンジンのいわゆる燃費の向上が図られないおそれがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、冷却水の流通する通路内に空気が滞留することを防止することができ、安定した冷却が得られる内燃機関の冷却水通路構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造は、上記課題を解決するため、(1)熱交換器で放熱される冷却水をシリンダの周囲で流通させるシリンダ周囲通路と、前記冷却水を前記シリンダ周囲通路から排気ポートを有するシリンダヘッド内に導入する冷却水導入通路と、前記冷却水導入通路から分岐し前記シリンダの配列方向と同方向に延びるとともに、前記シリンダヘッドを冷却した前記冷却水を前記熱交換器に環流させうる主冷却水通路と、前記冷却水導入通路から分岐し前記冷却水を前記排気ポートの近傍で流通させる副冷却水通路と、前記副冷却水通路の前記冷却水導入通路から分岐する部分に形成された分岐ポートの反対側に位置する反対側端部ポートから前記シリンダ周囲通路に前記冷却水を環流させる環流通路と、を備えた内燃機関の冷却水通路構造であって、前記主冷却水通路に前記副冷却水通路の前記反対側端部ポートを連通させる主副連通通路を備えたことを特徴とする。
【0009】
この構成により、シリンダ周囲通路を流通する冷却水により、シリンダの周囲が冷却され、主冷却水通路を流通する冷却水により、シリンダヘッド内が冷却され、副冷却水通路を流通する冷却水により排気ポートの周辺部分が冷却される。
また、副冷却水通路を流通した冷却水は、反対側端部ポートで環流通路を流通してシリンダ周囲通路に環流される経路と、主副連通通路を流通して主冷却水通路に流入する経路とに分岐する。また、主冷却水通路を流通した冷却水は、熱交換器に環流させる経路と、主副連通通路を流通し、反対側端部ポートを介して環流通路を流通し、シリンダ周囲通路に環流される経路とに分岐する。
したがって、本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造において冷却水は、順にシリンダ周囲通路、冷却水導入通路、主冷却水通路、主副連通通路、環流通路を通ってシリンダ周囲通路に戻る循環経路と、順にシリンダ周囲通路、冷却水導入通路、副冷却水通路、環流通路および通ってシリンダ周囲通路に戻る循環経路とからなる環流通路を経由するバイパス流通ルートを流通することができる。
他方、本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造において冷却水は、順にシリンダ周囲通路、冷却水導入通路、主冷却水通路を流通し熱交換器に流入する経路と、順にシリンダ周囲通路、冷却水導入通路、副冷却水通路、主副連通通路、主冷却水通路を流通し熱交換器に流入する経路と、熱交換器からシリンダ周囲通路に流出する経路とからなる、熱交換器を経由する放熱流通ルートを流通することができる。
その結果、副冷却水通路を流通した冷却水は、バイパス流通ルートおよび放熱流通ルートのいずれの流通ルートを経由する場合であっても、反対側端部ポートを必ず流通するので、反対側端部ポートに空気が滞留することが抑制され、従来の冷却水通路構造において、副冷却水通路のコーナ部分となる反対側端部ポートに滞留してしまいその排出が困難であった滞留空気の問題が解決される。
【0010】
上記(1)に記載の内燃機関の冷却水通路構造において、(2)前記内燃機関が車両に搭載され、前記車両が置かれる平坦な路面に垂直な鉛直方向に対して前記主副連通通路が前記副冷却水通路の前記反対側端部ポートよりも上方に位置することを特徴とする。
【0011】
この構成により、主副連通通路が副冷却水通路の反対側端部ポートよりも上方に位置するので、反対側端部ポートに空気が滞留することがより確実に抑制され、従来の冷却水通路構造において、副冷却水通路のコーナ部分となる反対側端部ポートに滞留してしまいその排出が困難であった滞留空気の問題が解決される。
【0012】
上記(1)または(2)に記載の内燃機関の冷却水通路構造において、(3)前記冷却水導入通路から分岐し前記主冷却水通路と同方向に延びるとともに、前記反対側端部ポートに対向する位置に形成され前記主冷却水通路に連通する対向端部ポートを有する対向冷却水通路を備え、前記主副連通通路が、前記対向端部ポートを介して前記主冷却水通路と連通することを特徴とする。
【0013】
この構成により、さらに対向冷却水通路を流通する冷却水によりシリンダヘッド内の構成要素、例えば、ラッシュアジャスタが冷却される。
そして、前述のバイパス流通ルートに、対向冷却水通路を流通した冷却水が、対向端部ポート、主副連通通路および反対側端部ポートを介して環流通路に流入する経路が加わる。
また、前述の放熱流通ルートに、対向冷却水通路を流通した冷却水が、対向端部ポートを介して主冷却水通路に流入する経路が加わる。
この対向冷却水通路を流通する経路を含めたバイパス流通ルートおよび放熱流通ルートのいずれの場合であっても、シリンダヘッド内を流通する冷却水は、反対側端部ポートを常に流通するので、反対側端部ポートに空気が滞留することが抑制され、従来の冷却水通路構造において、副冷却水通路のコーナ部分となる反対側端部ポートに滞留してしまいその排出が困難であった滞留空気の問題が解決される。
【0014】
上記(1)または(2)に記載の内燃機関の冷却水通路構造において、(4)前記熱交換器と前記シリンダ周囲通路との間に設けられ、前記熱交換器内の前記冷却水を前記シリンダ周囲通路内に圧送するウォータポンプと、前記ウォータポンプと前記熱交換器との間の前記冷却水の流通経路に設けられるとともに前記環流通路に連通する連通ポートを有するサーモスタットを備えたことを特徴とする。
【0015】
この構成により、ウォータポンプと熱交換器との間の流通経路に設けられたサーモスタットにより、冷却水の流通ルートがバイパス流通ルートおよび放熱流通ルートのいずれかに選択される。例えば、冷却水の温度が設定された所定温度未満であるときは、サーモスタットにより、バイパス流通ルートに切り替えられ、熱交換器を経由せずに、冷却水が内燃機関内部を流通するので、暖機運転に資することができる。このような、バイパス流通ルートの場合にも、反対側端部ポートを流通するので、反対側端部ポートに空気が滞留することが抑制され、従来の冷却水通路構造において、副冷却水通路のコーナ部分となる反対側端部ポートに滞留してしまいその排出が困難であった滞留空気の問題が解決される。また、副冷却水通路内の空気が排出されるので、安定した冷却が得られるとともに、暖機性も向上する。
【0016】
上記(1)または(2)に記載の内燃機関の冷却水通路構造において、(5)前記内燃機関が車両に搭載され、前記車両が置かれる平坦な路面に垂直な鉛直方向に対して前記副冷却水通路の前記反対側端部ポートが前記分岐ポートよりも上方に位置することを特徴とする。
【0017】
この構成により、特に、フロント上がりのスラントを有し、左右のスラントがない内燃機関の場合、従来の冷却水通路構造においては、副冷却水通路内に滞留し易く、排出が困難であったが、本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造においては、主副連通通路から空気が確実に排出される。その結果、安定した冷却が得られるとともに、暖機性も向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、冷却水の流通する通路内に空気が滞留することを防止することができ、安定した冷却が得られる内燃機関の冷却水通路構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関およびラジエータの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のシリンダブロックの平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のサーモスタット部分を含むシリンダブロックおよびシリンダヘッドの断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のシリンダヘッドの平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のシリンダヘッドの底面図である。
【図6】図4のBから見たシリンダヘッドの左側面図である。
【図7】図4のCから見たシリンダヘッドの右側面図である。
【図8】図4のDから見たシリンダヘッドの正面図である。
【図9】図4のA−A断面を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のシリンダヘッドの内部空間からなる冷却水の通路を示す斜視図である。
【図11】図10のEから見たシリンダヘッドの冷却水の通路の底面図である。
【図12】図10のFから見たシリンダヘッドの冷却水の通路の平面図である。
【図13】図10のGから見たシリンダヘッドの冷却水の通路の正面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のサーモスタットが開いた状態の断面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関およびラジエータの構成図であり、冷却水がボトムバイパス通路を経由して循環する状態を示す。
【図16】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のシリンダヘッドの部分断面図であり、サーモスタットが閉じているときに、冷却水がバイパス通路を流通する状態を示す。
【図17】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のシリンダヘッドの部分断面図であり、冷却水がバイパス通路を流通する状態を示す。
【図18】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のシリンダヘッドの平面図であり、冷却水がボトムバイパス通路を経由して循環する状態を示す。
【図19】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関およびラジエータの構成図であり、冷却水がラジエータを経由して循環する状態を示す。
【図20】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のサーモスタット部分を含むシリンダブロックおよびシリンダヘッドの断面図であり、冷却水がボトムバイパス通路を経由して循環する状態を示す。
【図21】本発明の実施形態に係る冷却水通路構造を備えた内燃機関のサーモスタット部分を含むシリンダブロックおよびシリンダヘッドの断面図であり、冷却水がラジエータを経由して循環する状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(実施形態)
図1ないし図20は、本発明の実施形態に係る内燃機関の冷却水通路構造が適用される車両1のエンジン10およびラジエータ20を示している。
この車両1は、前置エンジン後輪駆動車(FR:Front engine Rear drive)で構成されており、内燃機関としてのエンジン10と、アウトレット20a、インレット20bを備えエンジン10内で冷却水を循環させる熱交換器としてのラジエータ20とを備えている。この車両1を構成するエンジン10は、車両1が置かれる平坦な路面に垂直な鉛直方向に対して車両1の前方側が高く、車両1の後方側が低くなるよう傾斜するという、いわゆる前後方向にスラントを有するエンジンであって、車両1の左右方向は傾斜のない水平な状態で搭載されたエンジンで構成されている。
【0022】
なお、このエンジン10は、前後方向に水平に搭載されたいわゆるスラントのないエンジンであってもよく、左右方向にスラントを有するエンジンであってもよい。
また、エンジン10は、直列4気筒のエンジンで構成されているが、他の構造を有するエンジンで構成されていてもよい。例えば、単気筒や、3気筒、6気筒などの多気筒であってもよく、縦置きや横置きのエンジンであってもよく、V型エンジンであってもよい。
また、ガソリンエンジンであってもよく、ディーゼルエンジンであってもよい。
また、車両1は、前輪駆動車(FF:Front engine Front drive)で構成されていてもよい。
【0023】
エンジン10は、図1に示すように、シリンダブロック11と、シリンダヘッド12と、シリンダブロックに支持されたクランクシャフト13と、クランクシャフト13に固定されたクランクプーリ14と、ウォータポンプ15と、Vリブドベルト16と、ウォータポンプ15とラジエータ20との間に設けられたサーモスタット17と、シリンダブロック11とシリンダヘッド12との間に、両者の当接部分のシール性を高めるよう挟み込まれたシリンダヘッドガスケット18とを含んで構成されている。
【0024】
シリンダブロック11は、図1ないし図3に示すように、軽量なアルミ合金などの金属材料からなり、図示しないピストンを収容するシリンダ21a、21b、21c、21dと、シリンダ周囲通路としてのウォータジャケット22と、環流通路としてのボトムバイパス通路23と、ウォータポンプ15を支持するウォータポンプ支持部24と、サーモスタット17を支持するサーモスタット連結部25と、クランクシャフト13を回転自在に支持する図示しないクランクシャフト支持部とを有している。
【0025】
ウォータジャケット22は、シリンダ21a、21b、21c、21dの周囲に形成されたウォータジャケット部22aと、ラジエータ20から供給される冷却水をウォータジャケット部22aに流入させるよう車両前方側に形成されたウォータジャケット入口部22bと、車両後方側に形成されたウォータジャケット出口部22cとを有している。
このウォータジャケット22は、発熱したシリンダ21a、21b、21c、21dの周辺部を熱交換により冷却するよう、ラジエータ20で放熱された冷却水をウォータジャケット入口部22b、ウォータジャケット部22aおよびウォータジャケット出口部22cを流通させ、シリンダヘッド12内に供給するよう構成されている。
【0026】
ボトムバイパス通路23は、シリンダブロック11内の車両前方側に形成されており、シリンダヘッド12内を流通した冷却水をサーモスタット17内に流通させるようになっている。
【0027】
シリンダヘッド12は、図1、図3ないし図9に示すように、シリンダブロック11と同様、軽量なアルミ合金などの金属材料で形成されており、図示しない吸気カムシャフト、排気カムシャフトを収容するとともに吸気カムシャフトおよび排気カムシャフトの各カムとバルブロッカーアームとの隙間をなくすようクリアランスの調整を行うラッシュアジャスタ(HLA:Hydraulic Lash Adjuster)を収容するようになっている。
【0028】
シリンダヘッド12は、図5に示すように、その底面12a側に、シリンダブロック11のシリンダ21aに連通し図示しない吸気バルブにより開閉される一対の吸気口42aと図示しない排気バルブにより開閉される一対の排気口43aと点火プラグ孔44aとを有する燃焼室41aを備えている。また、燃焼室41aと同様、シリンダ21bに連通し一対の吸気口42bおよび一対の排気口43b、点火プラグ孔44bを有する燃焼室41bと、シリンダ21cに連通し一対の吸気口42cおよび一対の排気口43c、一対の点火プラグ孔44cを有する燃焼室41cと、シリンダ21dに連通し一対の吸気口42dおよび一対の排気口43d、点火プラグ孔44dを有する燃焼室41dとを備えている。
【0029】
また、シリンダヘッド12は、図4および図6に示すように、図4のBから見た左側面側に、一対の吸気口42aを介して燃焼室41aと連通する吸気ポート45aと、一対の吸気口42bを介して燃焼室41bと連通する吸気ポート45bと、一対の吸気口42cを介して燃焼室41cと連通する吸気ポート45cと、一対の吸気口42dを介して燃焼室41dと連通する吸気ポート45dとからなる吸気ポート部45を備えている。
【0030】
また、シリンダヘッド12は、図4および図7に示すように、図4のCから見た右側面側に、一対の排気口43aを介して燃焼室41aと連通する排気ポート部46aと、一対の排気口43bを介して燃焼室41bと連通する排気ポート部46bと、一対の排気口43cを介して燃焼室41cと連通する排気ポート部46cと、一対の排気口43dを介して燃焼室41dと連通する排気ポート部46dとからなる排気ポート部46を備えている。
【0031】
また、シリンダヘッド12は、図8に示すように、図4のDから見た正面側に、ラジエータ20のインレット20bと接続される接続通路47aを有する接続部47が設けられている。この接続通路47aを通って、シリンダヘッド12内を流通した冷却水がラジエータ20に環流するようになっている。
【0032】
このシリンダヘッド12は、図1および図10に示すように、その内部に空間によりそれぞれ画成された冷却水導入通路31と、主冷却水通路としてのメインウォータジャケット32と、副冷却水通路としてのサブウォータジャケット33と、対向冷却水通路としてのHLA冷却ジャケット34と、環流通路35と、HLA冷却ジャケット34とメインウォータジャケット32とを連通するアッパーバイパス通路36と、主副連通通路としてのバイパス通路37とを備えている。
【0033】
冷却水導入通路31は、車両後方側に形成されており、シリンダブロック11のウォータジャケット出口部22cから冷却水をシリンダヘッド12内に導入するようウォータジャケット出口部22cと接続されている。
【0034】
メインウォータジャケット32は、吸気カムシャフトおよび排気カムシャフトを冷却するよう、冷却水導入通路31から分岐し、吸気ポート部45と排気ポート部46との間でシリンダ21a、21b、21c、21dの配列方向と同方向に延びるともに、冷却水導入通路31からウォータジャケット出口部32a方向に流通するようになっている。
このメインウォータジャケット32は、発熱した燃焼室41a、41b、41c、41dの周辺部を熱交換により冷却するよう、それらの周辺部を流通するようになっている。
【0035】
サブウォータジャケット33は、図10および図11に示すように、冷却水導入通路31から分岐しメインウォータジャケット32と同方向に延びるともに、排気ポート部46の下部を通るようにシリンダヘッド12に設けられている。このサブウォータジャケット33は、発熱した排気ポート部46a、46b、46c、46dの周辺部を熱交換により冷却するとともに、受熱した冷却水をシリンダ21a、21b、21c、21dに環流させるようにして暖機運転の際の暖機の役割も果たすようなっている。
【0036】
HLA冷却ジャケット34は、図9、図10および図12に示すように、シリンダヘッド12に収容されている図示しないラッシュアジャスタ(HLA)の周辺部を通るよう、冷却水導入通路31から分岐しメインウォータジャケット32と同方向に延びるようにしシリンダヘッド12内に形成されている。このHLA冷却ジャケット34は、発熱した各ラッシュアジャスタ(HLA)の周辺部を熱交換により冷却するとともに、受熱した冷却水をラジエータ20に向けて流通させるようになっている。
【0037】
環流通路35は、図1、図3および図10に示すように、サブウォータジャケット33の冷却水導入通路31から分岐する部分に形成された分岐ポート33aの反対側に位置する反対側端部ポート33bからシリンダブロック11のボトムバイパス通路23を介してウォータジャケット22に冷却水を環流させるようになっている。
【0038】
アッパーバイパス通路36は、HLA冷却ジャケット34の車両前方側の端部に位置し、反対側端部ポート33bと対向するようHLA冷却ジャケット34に形成された対向端部ポート34aと、メインウォータジャケット32とを連通するよう構成されている。
HLA冷却ジャケット34を流通する冷却水は、対向端部ポート34aおよびこのアッパーバイパス通路36を流通して、メインウォータジャケット32内に流入するようになっている。なお、本実施形態におけるアッパーバイパス通路36は、本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造における対向端部ポートの一部を構成している。
【0039】
バイパス通路37は、図1、図9および図13に示すように、サブウォータジャケット33の反対側端部ポート33bと、アッパーバイパス通路36とを連通するよう、シリンダヘッド12内に形成されている。バイパス通路37は、サーモスタット17が開状態にあるときでも、サブウォータジャケット33内の冷却水をアッパーバイパス通路36を介してメインウォータジャケット32内に流通させることができ、反対側端部ポート33bの近傍でエア溜まりが発生することを防止する機能を有している。
このバイパス通路37は、図9に示すように、エンジン1が車両に搭載された状態で、この車両が置かれる平坦な路面に垂直な鉛直方向に対して、反対側端部ポート33bよりも上方に位置するよう形成されており、より確実にエア溜まりの発生が防止されるよう構成されている。
【0040】
クランクシャフト13は、図1および図2に示すように、エンジン10の気筒数に応じて設けられた図示しないクランクピンを有し、コネクティングロッドを介してピストンと連結され、ピストンの往復運動により回転運動するよう公知のもので形成されている。
また、このクランクシャフト13は、ジャーナル部を有しており、このジャーナル部で、軸受キャップ、メタルベアリングを介して、シリンダブロック11のクランクシャフト支持部に回転自在に支持されている。
【0041】
クランクプーリ14は、クランクシャフト13の先端部に連結されており、クランクシャフト13と一緒に回転するようになっている。
ウォータポンプ15は、シリンダブロック11に支持された図示しない本体と、動力を受けるプーリと、吸入された冷却水を加圧して吐出するインペラとを含んで構成されている。
【0042】
このウォータポンプ15は、ラジエータ20、シリンダブロック11およびシリンダヘッド12の内部にそれぞれ形成された循環経路内を循環する冷却水の自然対流に加えて、強制的に冷却水を対流させ、各構成要素と冷却水との熱交換効率を高めるようになっている。
【0043】
Vリブドベルト16は、接触面の断面が複数のV字を並べた凹凸形状になっており、各プーリとの接触面積を広くすることで伝達能力が高められるよう構成されている。このVリブドベルト16により、クランクシャフト13の動力がクランクプーリ14を介してウォータポンプ15のプーリに効率的に伝達されるようになっている。
【0044】
サーモスタット17は、図14に示すように、ラジエータ20のアウトレット20aと連結されたサーモハウジング51と、サーモハウジング51内に収容されたサーモエレメント52と、シール53とを備えている。
【0045】
サーモハウジング51は、シリンダブロック11のサーモスタット連結部25に連結される連結部51aと、サーモエレメント52を収容する収容部51bとを有している。
連結部51aには、ボトムバイパス通路23と連通する連通ポート51hが形成されており、連通ポート51hから冷却水がサーモハウジング51内に流入するようになっている。また、連結部51aには、サーモスタット連結部25に当接する部分にシール53が装着されており、連結部51aがサーモスタット連結部25に密着するようになっている。
【0046】
収容部51bは、サーモエレメント52を収容するとともに冷却水の通路を分岐する分岐ポート51dと、ラジエータ20のアウトレット20aから供給される冷却水を流入させるよう開口した流入口51eと、シリンダブロック11のボトムバイパス通路23から冷却水を流入させるよう開口した流入口51fと、ウォータポンプ15に冷却水を排出させるよう開口した排出口51gとを有している。
したがって、この分岐ポート51dにより、冷却水の供給経路が、ウォータポンプ15に接続される経路と、連通ポート51hを介してボトムバイパス通路23に接続される経路とに分岐されている。
【0047】
サーモエレメント52は、流入口51eに位置する上流側フレーム61と、上流側フレーム61に連結された下流側フレーム62と、下流側フレーム62に収容され流入口51eを開閉するバルブ63と、バルブ63に固定され温度変化により膨張および収縮するワックスが充填されたシリンダを有する感熱部64と、一端が上流側フレーム61に保持され、他端が感熱部64のシリンダ内に収容されたロッド65とを備えている。
【0048】
また、サーモエレメント52は、バルブ63を上流側フレーム61側に押圧するよう一端がバルブ63に当接し、他端が下流側フレーム62に当接するコイルスプリング66と、感熱部64に連結されたロッド67と、ロッド67の先端に固定され流入口51fを開閉するバルブ68と、バルブ68をサーモハウジング51の連通ポート51h側に押圧するよう一端がロッド67の基端に当接し、他端がバルブ68に当接するコイルスプリング69とを備えている。
【0049】
上流側フレーム61には、ラジエータ20のアウトレット20aから供給される冷却水を通す流通孔61aが形成されており、バルブ63が開状態のとき、アウトレット20aから下流側フレーム62内に冷却水が流入するようになっている。
また、下流側フレーム62には、流通孔62aが形成されており、下流側フレーム62内の冷却水が流通孔62aを流通して、排出口51gからウォータポンプ15に向けて排出されるようになっている。
【0050】
また、感熱部64は、所定の温度(例えば、80℃ないし90℃)になると、内部に充填されているワックスがコイルスプリング66の押圧力に抗して膨張し、バルブ63とともに上流側フレーム61から離隔する方向に移動し、バルブ63が開状態になるよう構成されている。
【0051】
このとき、ロッド67が感熱部64とともに移動し、コイルスプリング69を圧縮させ、圧縮で高められたコイルスプリング69の押圧力により、バルブ68がロッド67に沿って移動し流入口51eが閉状態になるよう構成されている。
【0052】
他方、感熱部64は、所定の温度未満になると、内部に充填されているワックスが収縮し、コイルスプリング66の押圧力により、バルブ63とともに上流側フレーム61に接近する方向に移動し、バルブ63が閉状態になるよう構成されている。
このとき、ロッド67が感熱部64と一緒に移動するとともに、バルブ68がロッド67と一緒に移動し、流入口51fが開状態になるよう構成されている。
【0053】
ラジエータ20は、モータを備えた冷却ファン71と、ラジエータコアを備えた本体72と、本体72に装着され本体72内の圧力を調整するラジエータキャップ73と、ラジエータキャップ73を介して本体72と連結され、冷却水の量および圧力を最適な状態に保つリザーバタンク74とを含んで構成されている。
【0054】
本体72には、前述のアウトレット20aおよびインレット20bが設けられており、冷却水はアウトレット20aからエンジン10内に供給され、エンジン10内の冷却水はインレット20bを介して本体72内に環流するようになっている。本体72内で熱交換により冷却水が放熱され、本体72、アウトレット20a、エンジン10およびインレット20bの間を冷却水が循環するようになっている。
【0055】
次いで、本実施形態に係る冷却水通路構造を備えたエンジン10およびラジエータ20の動作について簡単に説明する。
冷却水の温度が比較的に低い冷間時に、エンジン10が始動されると、エンジン10に接続された排気浄化装置の触媒の温度を早期に上昇させて排気エミッションを低減させるとともに、エンジン10の燃費および出力を向上させるよう、いわゆる暖機運転が実行される。
この暖機運転中は、冷却水の温度が設定された所定温度よりも低くなっており、サーモスタット17は、その感熱部64内のワックスが収縮した状態にある。
この場合、図14に示すサーモスタット17のバルブ63は閉状態となり、ラジエータ20のアウトレット20aからの冷却水の流入が遮断されるとともに、バルブ68が開状態となり、ボトムバイパス通路23とウォータジャケット22とがサーモスタット17の分岐ポート51dを介して連通した状態になる。
【0056】
この状態で、図15に示すクランクシャフト13が回転すると、クランクプーリ14およびVリブドベルト16を介してウォータポンプ15が駆動される。
ウォータポンプ15が駆動されると、冷却水がウォータポンプ15から吐出され、シリンダブロック11のウォータジャケット入口部22bを通ってウォータジャケット部22aに供給され、シリンダ21a、21b、21c、21dの周辺部が順に熱交換により冷却される。
【0057】
そして、冷却水は、ウォータジャケット出口部22cから、シリンダヘッド12の冷却水導入通路31内に供給され、さらにメインウォータジャケット32、サブウォータジャケット33、HLA冷却ジャケット34内を流通し、シリンダブロック11内が熱交換により冷却される。
メインウォータジャケット32内の冷却水は、図16に示すように、順にアッパーバイパス通路36、バイパス通路37、環流通路35を通って、ボトムバイパス通路23内に流入する。
【0058】
また、HLA冷却ジャケット34内の冷却水は、バイパス通路37、環流通路35を通って、ボトムバイパス通路23内に流入する。
このように、メインウォータジャケット32およびHLA冷却ジャケット34内の冷却水は、バイパス通路37を流通するので、図15に示すサブウォータジャケット33の反対側端部ポート33bにエアが滞留することが抑制される。
【0059】
そして、図17に示すように、ボトムバイパス通路23内の冷却水は、サーモスタット17の連通ポート51hから流入口51fを通って分岐ポート51d内に流入し排出口51gから排出され、ウォータポンプ15内に流入し加圧され、図15および図18に示すように、ウォータジャケット22内に供給され、ラジエータ20を介さずに、シリンダブロック11およびシリンダヘッド12の内部を循環する。
【0060】
エンジン10の暖機運転が終了し、通常の運転状態に移行し、冷却水の温度が設定された所定温度よりも高くなると、サーモスタット17は、その感熱部64内のワックスが膨張する。このとき、図14に示すように、サーモスタット17のバルブ63は開状態となり、ラジエータ20のアウトレット20aからの冷却水の流入が可能になるとともに、バルブ68が閉状態となり、ボトムバイパス通路23とウォータジャケット22との間の流通経路が遮断された状態になる。
【0061】
そして、図19に示すクランクシャフト13の回転により、クランクプーリ14およびVリブドベルト16を介してウォータポンプ15が駆動される。
ウォータポンプ15が駆動されると、冷却水がウォータポンプ15から吐出され、シリンダブロック11のウォータジャケット入口部22bを通ってウォータジャケット部22aに供給され、シリンダ21a、21b、21c、21dの周辺部が順に熱交換により冷却される。
【0062】
そして、冷却水は、ウォータジャケット出口部22cから、シリンダヘッド12の冷却水導入通路31内に供給され、さらにメインウォータジャケット32、サブウォータジャケット33、HLA冷却ジャケット34内を流通し、シリンダブロック11内が熱交換により冷却される。
【0063】
メインウォータジャケット32内の冷却水は、ウォータジャケット出口部32aを通ってインレット20bからラジエータ20内に流入する。
また、サブウォータジャケット33内の冷却水は、図20に示すように、順にバイパス通路37、アッパーバイパス通路36およびウォータジャケット出口部32aを通ってインレット20bからラジエータ20内に流入する。
また、HLA冷却ジャケット34内の冷却水は、順に、アッパーバイパス通路36およびウォータジャケット出口部32aを通ってインレット20bからラジエータ20内に流入する。
【0064】
このように、サブウォータジャケット33内の冷却水は、バイパス通路37を流通し、対向端部ポート34a、アッパーバイパス通路36およびウォータジャケット出口部32aを通ってインレット20bからラジエータ20内に流入する。
その結果、図19に示すサブウォータジャケット33の反対側端部ポート33bにエアが滞留することが抑制される。
【0065】
そして、冷却水は、ラジエータ20内で熱交換により放熱され、冷却水温が低くなる。放熱後の冷却水は、図21に示すように、アウトレット20aから、サーモスタット17の下流側フレーム62内に流入し、排出口51gから排出され、ウォータポンプ15内に流入し加圧される。そして、図19に示すように、ウォータジャケット22内に供給され、ラジエータ20を経由して、シリンダブロック11およびシリンダヘッド12の内部を循環する。
【0066】
本実施形態に係るエンジン10を構成する冷却水通路構造は、前述のように構成されているので、以下の効果が得られる。
【0067】
本実施形態に係るエンジン10を構成する冷却水通路構造は、ラジエータ20から供給される冷却水をシリンダ21a、21b、21c、21dの周囲で流通させるようシリンダブロック11内に形成されたウォータジャケット22と、ウォータジャケット22から冷却水を導入するようシリンダヘッド12に形成された冷却水導入通路31と、冷却水導入通路31から分岐しシリンダ21a、21b、21c、21dの配列方向と同方向に延びるとともに、ラジエータ20に冷却水を環流させるメインウォータジャケット32と、冷却水導入通路31から分岐し冷却水を流通させるサブウォータジャケット33とを備えている。
【0068】
また、本実施形態に係るエンジン10を構成する冷却水通路構造は、サブウォータジャケット33の冷却水導入通路31から分岐する部分に形成された分岐ポート33aの反対側に位置する反対側端部ポート33bからウォータジャケット22に冷却水を環流させる環流通路35とこの環流通路35に連通するおよびボトムバイパス通路23と、を備え、メインウォータジャケット32にサブウォータジャケット33の反対側端部ポート33bを連通させるバイパス通路37を備えたことを特徴としている。
【0069】
そして、このバイパス通路37は、エンジン10が車両1に搭載され、車両1が置かれる平坦な路面に垂直な鉛直方向に対してバイパス通路37がサブウォータジャケット33の反対側端部ポート33bよりも上方に位置するようシリンダヘッド12内に形成されている。
【0070】
また、本実施形態に係るエンジン10を構成する冷却水通路構造は、ラジエータ20とウォータジャケット22との間に設けられ、ラジエータ20内の冷却水をウォータジャケット22内に圧送するウォータポンプ15と、ウォータポンプ15とラジエータ20との間の冷却水の流通経路に設けられるとともに環流通路35およびボトムバイパス通路23に連通する連通ポート51hを有するサーモスタット17を備えたことを特徴している。
【0071】
その結果、エンジン10の暖機運転中は、サーモスタット17により、ラジエータ20のアウトレット20aからのシリンダブロック11内への冷却水の流入が遮断されるとともに、ボトムバイパス通路23とウォータジャケット22とがサーモスタット17の分岐ポート51dを介して連通した状態になる。
【0072】
この状態で、冷却水は、シリンダブロック11のウォータジャケット部22aを通り、シリンダヘッド12の冷却水導入通路31内に供給され、さらにメインウォータジャケット32、サブウォータジャケット33、HLA冷却ジャケット34内に供給される。
そして、メインウォータジャケット32内の冷却水は、順にアッパーバイパス通路36、バイパス通路37、環流通路35を通って、ボトムバイパス通路23内に流入する。
【0073】
また、HLA冷却ジャケット34内の冷却水は、バイパス通路37、環流通路35を通って、ボトムバイパス通路23内に流入する。次いで、ウォータポンプ15内に流入し加圧され、ウォータジャケット22内に供給されるので、ラジエータ20を介さずに、シリンダブロック11およびシリンダヘッド12の内部を循環するようになる。
【0074】
このように暖機運転中は、メインウォータジャケット32およびHLA冷却ジャケット34内の冷却水は、バイパス通路37を流通するので、サブウォータジャケット33の反対側端部ポート33bにエアが滞留することが抑制される。
【0075】
すなわち、従来の冷却水通路構造の場合は、本実施形態におけるバイパス通路37に相当するエア抜けの通路が設けられていなかったので、サブウォータジャケット33の反対側端部ポート33bとなる、エンジン10の前方側のサブウォータジャケット33のコーナ部分にエアが滞留し、安定した冷却が得られなかった。これに対し、本実施形態における冷却水通路構造においては、バイパス通路37により、サブウォータジャケット33がメインウォータジャケット32と連通することになり、暖機運転中でも、サブウォータジャケット33内を冷却水が循環するので、エアが滞留するという問題が解消されるという効果が得られる。
【0076】
特に、エンジンの前方が後方よりも高くなるよう搭載された、いわゆるフロント上がりのスラントを有し、左右のスラントがないエンジンの場合、サブウォータジャケット33のコーナ部分にエアが滞留し易く、滞留したエアの排出が困難であった。しかしながら、本実施形態における冷却水通路構造においては、エア溜まりの問題が解消されるのに加えて、排気ポート部46の脇を冷却水が流通するので、排気ポート部46周辺の熱を受熱することができ、暖機性が向上するという効果も得られる。
【0077】
エンジン10の通常運転中は、サーモスタット17により、ラジエータ20のアウトレット20aからのシリンダブロック11内への冷却水の流入が可能になるとともに、ボトムバイパス通路23とウォータジャケット22との間の流通経路が遮断された状態になる。
そして、冷却水は、シリンダブロック11のウォータジャケット部22aに供給され、ウォータジャケット出口部22cから、シリンダヘッド12の冷却水導入通路31内に供給され、さらにメインウォータジャケット32、サブウォータジャケット33、HLA冷却ジャケット34内を流通する。
【0078】
メインウォータジャケット32内の冷却水は、ウォータジャケット出口部32aを通ってインレット20bからラジエータ20内に流入する。
また、サブウォータジャケット33内の冷却水は、順にバイパス通路37、アッパーバイパス通路36およびウォータジャケット出口部32aを通ってインレット20bからラジエータ20内に流入する。
また、HLA冷却ジャケット34内の冷却水は、順に、アッパーバイパス通路36およびウォータジャケット出口部32aを通ってインレット20bからラジエータ20内に流入する。
【0079】
このように、サブウォータジャケット33内の冷却水は、バイパス通路37を流通し、対向端部ポート34a、アッパーバイパス通路36およびウォータジャケット出口部32aを通ってインレット20bからラジエータ20内に流入する。
その結果、サブウォータジャケット33の反対側端部ポート33bにエアが滞留することが抑制されるという効果が得られる。
【0080】
特に、フロント上がりのスラントを有し、左右のスラントがないエンジンの場合、暖機運転の場合と同様、エア溜まりの問題が解消される。すなわち、サブウォータジャケット33内に滞留しようとするエアは、冷却水に混ざって、インレット20bからラジエータ20内に流入しラジエータキャップ73を通ってリザーバタンク74まで到達する。そして、このエアはラジエータキャップ73やリザーバタンク74から大気中に排出されるので、シリンダブロック11およびシリンダヘッド12の内部に残ることはない。
【0081】
本実施形態のエンジン10においては、ラジエータ20のアウトレット20aとウォータポンプ15との間の冷却水通路にサーモスタット17を配置し、冷却水通路を開閉するという、いわゆるボトムバイパス式の経路構造で構成した場合について説明した。
しかしながら、本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造においては、他の経路構造で構成するようにしてもよい。例えば、ラジエータ20のインレット20bとメインウォータジャケット32との間の冷却水通路にサーモスタット17を配置し、冷却水通路を開閉するという、いわゆるインラインバイパス式の経路構造で構成するようにしてもよい。
【0082】
本実施形態のエンジン10においては、サブウォータジャケット33をシリンダヘッド12の内部に通路を形成する内部構造で構成した場合について説明した。
しかしながら、本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造においては、サブウォータジャケットを他の構造で構成するようにしてもよい。例えば、シリンダヘッドの外部に冷却通路を有するパイプで構成し、パイプの一端部をシリンダヘッドの冷却水通路部に連結して、冷却水の供給を受け、他端部をサーモスタットに連結する第1連結部と、シリンダヘッドのメインウォータジャケット部に連結する第2連結部とを設け、冷却水をサーモスタットに流通させるとともに、メインウォータジャケットにも流通させる外部パイプ構造で構成するようにしてもよい。
【0083】
本実施形態のエンジン10においては、クランクシャフト13の回転により駆動されるウォータポンプ15で構成した場合について説明した。
しかしながら、本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造においては、他の構造を有するウォータポンプで構成するようにしてもよい。例えば、電動モータで駆動する電動ウォータポンプで構成するようにしてもよい。
【0084】
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の冷却水通路構造は、冷却水の流通する通路内に空気が滞留することを防止することができ、安定した冷却が得られる内燃機関の冷却水通路構造を提供することができるという効果を奏するものであり、自動車などの車両の内燃機関の冷却水通路構造全般に有用である。
【符号の説明】
【0085】
1 車両
10 エンジン(内燃機関)
11 シリンダブロック
12 シリンダヘッド
15 ウォータポンプ
17 サーモスタット
20 ラジエータ(熱交換器)
22 ウォータジャケット(シリンダ周囲通路)
23 ボトムバイパス通路(環流通路)
31 冷却水導入通路
32 メインウォータジャケット(主冷却水通路)
33 サブウォータジャケット(副冷却水通路)
33a 分岐ポート
33b 反対側端部ポート
34 HLA冷却ジャケット(対向冷却水通路)
34a 対向端部ポート
35 環流通路
36 アッパーバイパス通路(対向端部ポート)
37 バイパス通路(主副連通通路)
51h 連通ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器で放熱される冷却水をシリンダの周囲で流通させるシリンダ周囲通路と、
前記冷却水を前記シリンダ周囲通路から排気ポートを有するシリンダヘッド内に導入する冷却水導入通路と、
前記冷却水導入通路から分岐し前記シリンダの配列方向と同方向に延びるとともに、前記シリンダヘッドを冷却した前記冷却水を前記熱交換器に環流させうる主冷却水通路と、
前記冷却水導入通路から分岐し前記冷却水を前記排気ポートの近傍で流通させる副冷却水通路と、
前記副冷却水通路の前記冷却水導入通路から分岐する部分に形成された分岐ポートの反対側に位置する反対側端部ポートから前記シリンダ周囲通路に前記冷却水を環流させる環流通路と、
を備えた内燃機関の冷却水通路構造であって、
前記主冷却水通路に前記副冷却水通路の前記反対側端部ポートを連通させる主副連通通路を備えたことを特徴とする内燃機関の冷却水通路構造。
【請求項2】
前記内燃機関が車両に搭載され、前記車両が置かれる平坦な路面に垂直な鉛直方向に対して前記主副連通通路が前記副冷却水通路の前記反対側端部ポートよりも上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の冷却水通路構造。
【請求項3】
前記冷却水導入通路から分岐し前記主冷却水通路と同方向に延びるとともに、前記反対側端部ポートに対向する位置に形成され前記主冷却水通路に連通する対向端部ポートを有する対向冷却水通路を備え、前記主副連通通路が、前記対向端部ポートを介して前記主冷却水通路と連通することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の冷却水通路構造。
【請求項4】
前記熱交換器と前記シリンダ周囲通路との間に設けられ、前記熱交換器内の前記冷却水を前記シリンダ周囲通路内に圧送するウォータポンプと、前記ウォータポンプと前記熱交換器との間の前記冷却水の流通経路に設けられるとともに前記環流通路に連通する連通ポートを有するサーモスタットを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の冷却水通路構造。
【請求項5】
前記内燃機関が車両に搭載され、前記車両が置かれる平坦な路面に垂直な鉛直方向に対して前記副冷却水通路の前記反対側端部ポートが前記分岐ポートよりも上方に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の冷却水通路構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−36815(P2012−36815A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177411(P2010−177411)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】