説明

内燃機関の制御装置

【課題】EGR弁の凍結固着を的確に抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関10は、排気通路30から吸気通路20に排気を導入するためのEGR通路41及び排気通路30における排気の流通面積を可変とするEGR弁42からなるEGR装置40を備える。電子制御装置60は、EGR弁42に液体としての水が付着しているか否かを機関運転状態に基づいて推定するとともに、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定される場合には、機関運転の停止に際して、EGR弁42に付着している水の量を低減すべくEGR弁42を強制的に開閉駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路から吸気通路に排気を導入するためのEGR通路及び同通路に設けられて排気の流通面積を可変とするEGR弁からなるEGR装置を備える内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の内燃機関の制御装置としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載のものも含めて従来一般の制御装置の制御対象である内燃機関には、排気通路から吸気通路に排気を導入するためのEGR通路が設けられ、同通路には排気の流通面積を可変とするEGR弁が設けられている。そして、EGR弁の開度制御を通じて吸気通路に導入される排気の流量を機関運転状態に基づいて調節することにより、排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を低減することができる。
【0003】
ところで、こうした内燃機関にあっては、機関運転の停止時に、EGR弁の弁体に付着している水が凍結してEGR弁が固着するといった問題が生じる。こうしたEGR弁の凍結固着が生じると、次の機関運転時にEGR弁の開度制御を行うことができなくなることがあり、排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を低減することができなくなるおそれがある。
【0004】
そこで例えば、EGR弁の凍結固着の程度を予め小さく抑えるべく、機関運転の停止時に、EGR弁を強制的に開閉駆動し、これによりEGR弁に付着している水を飛散させてその量を低減することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002―227727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、こうした制御装置にあっては、機関運転を停止する度にEGR弁を強制的に開閉駆動することとなり、このことに起因してEGR弁に磨耗等の異常が生じやすくなるといった新たな問題が生じる。
【0007】
尚、こうした問題は、EGR弁を強制的に開閉駆動するものに限られるものではなく、他に例えばEGR弁を加熱するもの等、EGR弁に付着している水の量を低減する処理を実行する低減処理実行手段を備えるものにあっては、概ね共通して生じ得るものである。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、EGR弁の凍結固着を的確に抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、排気通路から吸気通路に排気を導入するためのEGR通路及び同通路に設けられて排気の流通面積を可変とするEGR弁からなるEGR装置を備える内燃機関に適用されて、機関運転の停止に際して、前記EGR弁に付着している水の量を低減する処理を実行する低減処理実行手段を備える内燃機関の制御装置であって、前記EGR弁に液体としての水が付着しているか否かを機関運転状態に基づいて推定する推定手段を備え、前記低減処理実行手段は、前記推定手段により前記EGR弁に液体としての水が付着していると推定される場合に前記処理を実行することをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、機関運転の停止に際して、EGR弁における水の付着量を低減する処理が常に実行されるのではなく、EGR弁に液体としての水が付着していると推定される場合に上記処理が実行される。これにより、上記処理が不要に実行されることを抑制することができる。従って、EGR弁の凍結固着を的確に抑制することができるようになる。
【0011】
(2)請求項1に記載の発明は、請求項2に記載の発明によるように、前記推定手段は、前記EGR弁近傍における水の分圧と前記EGR弁近傍における温度とを推定するとともに、当該温度における飽和水蒸気圧を当該水の分圧が上回ることをもって、前記EGR弁に液体としての水が付着していると推定するといった態様をもって具体化することができる。この場合、EGR弁に液体としての水が付着しているか否かを精度よく推定することができ、EGR弁の凍結固着を一層的確に抑制することができるようになる。
【0012】
(3)また、請求項2に記載の発明は、請求項3に記載の発明によるように、前記推定手段は、前記EGR弁近傍における排気の圧力を推定するとともに、内燃機関の吸入空気量と燃料噴射量とに基づいて排気中における水の体積比率を推定し、前記排気の圧力と前記排気中における水の体積比率とに基づいて前記EGR弁近傍における水の分圧を推定するといった態様をもって具体化することができる。
【0013】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、前記推定手段は、前記EGR弁に液体としての水が付着していると推定される場合には、更に、当該水の付着量を機関運転状態に基づいて推定するものであり、前記低減処理実行手段は、前記推定手段により推定される前記水の付着量に基づいて前記水の量を低減する処理の実行態様を設定することをその要旨としている。
【0014】
EGR弁に液体としての水が付着している場合であっても、その付着量が多いほど、これを低減しにくくなる。
この点、上記構成によれば、EGR弁における水の付着量に応じて上記処理の実行態様を的確に設定することができ、EGR弁の凍結固着を一層的確に抑制することができるようになる。
【0015】
(5)請求項4に記載の発明は、請求項5に記載の発明によるように、前記推定手段は、前記EGR弁を通じて前記吸気通路に導入される排気の流量を推定するとともに、前記排気の流量が多いほど前記水の付着量を大きな値として推定するものであるといった態様をもって具体化することができる。
【0016】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、前記低減処理実行手段は、前記推定手段により推定される前記水の量が所定量以下である場合には、前記水の量を低減する処理の実行を禁止することをその要旨としている。
【0017】
EGR弁に液体としての水が付着している場合であっても、その付着量が比較的少ない場合には、EGR弁の凍結固着の程度が小さなものとなり、次回の機関運転時にEGR弁のアクチュエータの駆動力によって氷を粉砕することができ、EGR弁の開度制御を行うことができる。従って、このような場合にまで、EGR弁に付着している水の量を低減する処理を実行すると、同処理の実行に起因して例えばEGR弁に摩耗等の異常が生じるといった種々の問題が生じることとなる。
【0018】
この点、上記構成によれば、EGR弁近傍に液体としての水が存在していると推定される場合に、このことのみをもって上記処理が実行されるのではなく、EGR弁における水の付着量が所定量以下である場合に上記処理が実行される。これにより、上記処理が不要に実行されることを一層抑制することができる。従って、EGR弁の凍結固着を一層的確に抑制することができるようになる。
【0019】
(7)請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の発明は、請求項7に記載の発明によるように、前記低減処理実行手段は、前記EGR弁を強制的に開閉駆動するものであり、前記推定手段により推定される前記水の付着量が多いときほど前記EGR弁の強制駆動期間を長く設定するといった態様をもって具体化することができる。
【0020】
(8)また、請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載の発明は、請求項8に記載の発明によるように、前記低減処理実行手段は、前記EGR弁を強制的に開閉駆動するものであり、前記推定手段により推定される前記水の付着量が多いほど前記EGR弁の強制駆動速度を大きく設定するといった態様をもって具体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る内燃機関の制御装置の第1実施形態について、その概略構成を示す概略構成図。
【図2】同実施形態における液体水分付着量算出制御の処理手順を示すフローチャート。
【図3】水の状態図に相当するマップであって、当該水の温度Tw及び圧力Pwと、当該水の状態(固体、液体、気体のいずれか)との関係を示したマップ。
【図4】同実施形態におけるEGR弁の強制駆動制御の処理手順を示すフローチャート。
【図5】本発明に係る内燃機関の制御装置の第2実施形態について、同実施形態におけるEGR弁の強制駆動制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態における液体水分付着量とEGR弁の強制駆動時間との関係を規定したマップ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、図1〜図4を参照して、本発明に係る内燃機関の制御装置を車載内燃機関の制御装置として具体化した第1実施形態について説明する。
【0023】
図1に、内燃機関10及びこれを制御する電子制御装置60の概略構成を示す。
内燃機関10の燃焼室11には、吸気通路20が接続されており、吸気通路20を通じて燃焼室11に吸気が供給される。吸気通路20の途中にはサージタンク21が設けられており、サージタンク21の上流側には吸気を調量するためのスロットル弁22が設けられている。内燃機関10には、燃焼室11に燃料を直接噴射するための燃料噴射弁13が設けられている。内燃機関10には、吸気と燃料との混合気に対して火花点火を行うための点火プラグ14が設けられている。また、燃焼室11には、排気通路30が接続されている。
【0024】
こうした構成において、吸気通路20を通じて供給される吸気と、燃料噴射弁13から噴射供給される燃料とが燃焼室11において混合され、こうして混合された混合気が燃焼室11において燃焼に供される。そして、この燃焼による膨張エネルギによりクランクシャフト12が回転駆動される。また、燃焼室11において燃焼により発生した排気は、排気通路30を通じて外部に排出される。
【0025】
また、内燃機関10には、燃焼室11から排気通路30に排出された排気の一部を吸気通路20に導入ためのEGR装置40が設けられている。EGR装置40は、サージタンク21と排気通路30とを連通するEGR通路41、EGR通路41に設けられて排気の流通面積を可変とするEGR弁42、及びEGR弁42を開閉駆動するためのステップモータ43を備えている。そして、ステップモータ43の作動制御を通じてEGR弁42の開度を変更すると、これに応じて、EGR通路41を通じてサージタンク21に導入される排気の流量(以下、「EGR量」)が調節される。尚、本実施形態のEGR弁42は、ポペット式のものである。
【0026】
また、内燃機関10には、その運転状態を検出するための各種センサが設けられている。すなわち、アクセルペダルの踏み込み量(以下、「アクセル開度ACCP」)を検出するアクセル開度センサ51、内燃機関10のクランクシャフト12の回転から機関回転速度NEを検出する機関回転速度センサ52、及び車両の走行速度(以下、「車速SPD」)を検出する車速センサ53が設けられている。また、スロットル弁22の開度(以下、「スロットル開度TA」)を検出するスロットル開度センサ54、吸入空気量GAを検出する吸入空気量センサ55が設けられている。また、サージタンク21における吸気の圧力(以下、「吸気管圧力PIM」)を検出する吸気管圧力センサ56、排気の温度Texを検出する排気温度センサ57が設けられている。また、外気温度Tambを検出する外気温度センサ58が設けられている。また、排気の圧力Pexを検出する排気圧力センサ59が設けられている。尚、これらセンサ以外にもイグニッションスイッチ(以下、「I/Gスイッチ」)等の各種のセンサが必要に応じて設けられている。これら各センサ51〜59の検出信号は、内燃機関10の各種制御を実行する電子制御装置60に入力される。
【0027】
電子制御装置60は、各種制御を実行するためのプログラム及び演算用マップ、並びに制御の実行に際して算出される各種データ等を記憶するメモリを備えている。そして、上記各センサ51〜59をはじめとする各種センサの出力値により把握される内燃機関10の運転状態等に基づいて、例えば次の各制御を実行する。すなわち、運転者の要求であるアクセル開度ACCPに応じて目標スロットル開度を算出し、同目標スロットル開度に応じて同スロットル弁22を制御するスロットル制御を実行する。また、機関回転速度NE及び吸入空気量GA等に基づいて目標燃料噴射量Qを算出し、同目標燃料噴射量Qに応じて燃料噴射弁13を制御する燃料噴射制御を実行する。また、機関回転速度NE及び吸入空気量GA等に基づいて目標EGR開度を算出し、目標EGR開度に応じてステップモータ43を制御するEGR制御を実行する。
【0028】
ところで、こうした内燃機関10にあっては、機関運転の停止時に、EGR弁42の弁体に付着している水が凍結してEGR弁42が固着するといった問題が生じる。こうしたEGR弁42の凍結固着が生じると、次の機関運転時にEGR弁42の開度制御を行うことができなくなることがあり、排気に含まれるNOxを低減することができなくなるおそれがある。
【0029】
そこで例えば、EGR弁42の凍結固着の程度を予め小さく抑えるべく、機関運転の停止時に、EGR弁42を強制的に開閉駆動し、これによりEGR弁42に付着している水を飛散させてその量を低減することが考えられる。
【0030】
ところがこの場合には、機関運転を停止する度にEGR弁42の強制駆動処理が実行されることに起因してEGR弁42に磨耗等の異常が生じやすくなるといった新たな問題が生じる。
【0031】
そこで本実施形態では、電子制御装置60を通じて、EGR弁42に液体としての水が付着しているか否かを機関運転状態に基づいて推定するとともに、機関運転の停止に際して、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定される場合に、EGR弁42を強制的に開閉駆動するようにしている。これにより、EGR弁42の強制駆動処理が不要に実行されることを抑制するようにしている。
【0032】
ただし、EGR弁42に液体としての水が付着している場合であっても、その付着量が比較的少ない場合には、EGR弁42の凍結固着の程度が小さなものとなり、次回の機関運転時にステップモータ43の駆動力によって氷を粉砕することができ、EGR弁42の開度制御を行うことができる。従って、このような場合にまで、EGR弁42の強制駆動処理を実行すると、同処理の実行に起因してEGR弁42に摩耗等の異常が生じるといった問題を的確に抑制することができない。
【0033】
そこで本実施形態では、電子制御装置60を通じて、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定される場合には、更に、当該水の付着量Vwを機関運転状態に基づいて推定し、推定される水の付着量Vwに基づいてEGR弁42の強制駆動処理の実行態様を設定するようにしている。具体的には、推定される水の付着量Vwが所定量A1以下である場合には、EGR弁42の強制駆動処理の実行を禁止することとした。これにより、EGR弁42の強制駆動処理が不要に実行されることを一層抑制するようにしている。尚、所定量A1は、予め実験を通じて設定された固定値であり、EGR弁42の構造やステップモータ42の駆動力等を考慮して設定されている。
【0034】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態の液体水分付着量算出制御について説明する。尚、図2は、液体水分付着量算出制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、内燃機関10の運転中に電子制御装置60により繰り返し実行される。また、図3は、水の状態図に相当するマップであって、当該水の温度Tw及び圧力Pwと、当該水の状態(固体、液体、気体のいずれか)との関係を示したマップである。
【0035】
図2に示すように、この処理では、まず、EGR弁42近傍における排気の圧力Ptotalを推定する(ステップS101)。ここでは、また、吸気管圧力PIM、排気圧力Pex、及びEGR弁42の目標EGR開度に基づいて、EGR通路41においてEGR弁42近傍における排気の圧力Ptotalを推定する。そして次に、EGR弁42近傍における排気中の水の分圧Pwを推定する(ステップS102)。ここでは、まず、そのときの吸入空気量GAと目標燃料噴射量Qとに基づいて排気中における水の体積比率Rwを推定する。そして、次に、上記ステップS101において推定されたEGR弁42近傍における排気の圧力Ptotalに対して同体積比率Rwを乗じることにより、EGR通路41においてEGR弁42近傍における排気中の水の分圧Pwを推定する。すなわち、排気中における水の体積比率Rwが高いほど、排気中の水の分圧Pwを大きな値として推定する。そして次に、EGR弁42近傍における排気の温度Twを推定する(ステップS103)。ここでは、排気の温度Texに基づいてEGR通路41においてEGR弁42近傍における排気の温度Twを推定する。尚、本実施形態において、EGR弁42の近傍とは、EGR通路41においてEGR弁42の内部を想定している。
【0036】
こうして、EGR弁42近傍における排気の圧力Ptotal、排気中の水の分圧Pw、及び排気の温度Twを推定すると、次に、図3に示すマップに基づいてEGR弁42近傍における水の状態を導出する(ステップS104)。ここでは、EGR弁42近傍における排気の温度Twを水の温度Twとして用いている。また、当該水の分圧Pwが、そのときの排気の温度Twにおける飽和水蒸気圧Ps(Tw)を上回ることをもって、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定する。そして、次に、EGR弁42近傍における水が液体状態であるか否かを判断する(ステップS105)。そしてこの結果、EGR弁42近傍における水が液体状態でないと判断した場合には(ステップS105:「NO」)、すなわち、EGR弁42に液体としての水が付着していないと判断した場合には、次に、液体水分付着量Vwを「0」として(ステップS108)、この一連の処理を一旦終了する。
【0037】
一方、EGR弁42近傍における水が液体状態であると判断した場合には(ステップS105:「YES」)、すなわち、EGR弁42に液体としての水が付着していると判断した場合には、次に、そのときのEGR量を推定する。ここでは、吸入空気量GA、吸気管圧力PIM、排気圧力Pex、及びEGR弁42の目標EGR開度に基づいて、予め実験を通じて求められたマップを参照して、EGR量を推定する。そして、次に、推定されたEGR量に基づいて液体水分付着量Vwを算出して(ステップS107)、この一連の処理を一旦終了する。ここでは、EGR量が多いほど液体水分付着量Vwを大きな値として算出するようにしている。
【0038】
次に、図4を参照して、本実施形態のEGR弁42の強制駆動制御について説明する。尚、図4は、EGR弁42の強制駆動制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、電子制御装置60により繰り返し実行される。
【0039】
同図に示すように、この処理では、まず、I/Gスイッチが「OFF」であるか否かを判断する(ステップS201)。ここで、I/Gスイッチが「ON」である場合には(ステップS201:「NO」)、EGR弁42の強制駆動制御の実行時期ではないとして、この一連の処理を一旦終了する。
【0040】
一方、I/Gスイッチが「OFF」である場合には(ステップS201:「YES」)、次に、上記液体水分付着量算出制御において算出された液体水分付着量Vwが所定値A1以上であるか否かを判断する(ステップS202)。そしてこの結果、液体水分付着量Vwが所定値A1以上である場合には(ステップS202:「YES」)、次に、EGR弁42の強制駆動を実行して、この一連の処理を一旦終了する。
【0041】
一方、液体水分付着量Vwが所定値A1以上でない場合には(ステップS202:「NO」)、EGR弁42の強制駆動を実行することなく、すなわちEGR弁42の強制駆動処理の実行を禁止して、この一連の処理を一旦終了する。
【0042】
以上説明した本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)電子制御装置60を通じて、EGR弁42に液体としての水が付着しているか否かを機関運転状態に基づいて推定するとともに、機関運転の停止に際して、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定される場合に、EGR弁42を強制的に開閉駆動することとした。このように、機関運転の停止に際して、EGR弁42の強制駆動処理が常に実行されるのではなく、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定される場合にEGR弁42の強制駆動処理が実行される。これにより、EGR弁42の強制駆動処理が不要に実行されることを抑制することができる。従って、EGR弁42の凍結固着を的確に抑制することができるようになる。
【0043】
(2)電子制御装置60を通じて、EGR弁42近傍における水の分圧PwとEGR弁42近傍における温度Twとを推定するとともに、当該温度Twにおける飽和水蒸気圧Ps(Tw)を当該水の分圧Pwが上回ることをもって、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定することとした。これにより、EGR弁42に液体としての水が付着しているか否かを精度よく推定することができ、EGR弁42の凍結固着を的確に抑制することができるようになる。
【0044】
(3)電子制御装置60を通じて、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定される場合には、更に、当該水の付着量Vwを機関運転状態に基づいて推定するとともに、推定される水の付着量Vwに基づいてEGR弁42の強制駆動処理の実行態様を設定することとした。具体的には、推定される水の付着量Vwが所定量A1以下である場合には、EGR弁42の強制駆動処理の実行を禁止することとした。このように、EGR弁42近傍に液体としての水が存在していると推定される場合に、このことのみをもってEGR弁42の強制駆動処理が実行されるのではなく、EGR弁42における水の付着量Vwが所定量A1以下である場合にEGR弁42の強制駆動処理が実行される。これにより、EGR弁42の強制駆動処理が不要に実行されることを一層抑制することができる。従って、EGR弁42の凍結固着を一層的確に抑制することができるようになる。
<第2実施形態>
以下、図5及び図6を参照して、本発明に係る内燃機関の制御装置の第2実施形態について第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0045】
EGR弁42に液体としての水が付着している場合であっても、その付着量が多いほど、これを低減しにくくなる。
そこで本実施形態では、液体水分付着量Vwが多いときほどEGR弁42の強制駆動時間tを長く設定することにより、EGR弁42の強制駆動処理の実行態様を液体水分付着量Vwに応じて的確に設定するようにしている。
【0046】
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態のEGR弁42の強制駆動制御について説明する。尚、図5は、EGR弁42の強制駆動制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、電子制御装置60により繰り返し実行される。また、図6は、液体水分付着量VwとEGR弁42の強制駆動時間tとの関係を規定したマップである。
【0047】
同図5に示すように、この処理では、まず、I/Gスイッチが「OFF」であるか否かを判断する(ステップS401)。ここで、I/Gスイッチが「ON」である場合には(ステップS401:「NO」)、EGR弁42の強制駆動制御の実行時期ではないとして、この一連の処理を一旦終了する。
【0048】
一方、I/Gスイッチが「OFF」である場合には(ステップS401:「YES」)、次に、図6のマップを参照して、EGR弁42の強制駆動時間tを設定する(ステップS402)。ここでは、液体水分付着量Vwが「0」であるときには強制駆動時間tが「0」とされ、液体水分付着量Vwが多いときほどEGR弁42の強制駆動時間tが長くなるように設定される。こうしてEGR弁42の強制駆動時間tを設定すると、次に、EGR弁42の強制駆動を上記強制駆動時間tにわたり実行して(ステップS403)、この一連の処理を一旦終了する。
【0049】
以上説明した本実施形態に係る内燃機関の制御装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)電子制御装置60を通じて、液体水分付着量Vwが多いときほどEGR弁42の強制駆動時間tを長く設定することとした。これにより、EGR弁42の強制駆動処理の実行態様をEGR弁42に付着している水の量に応じて的確に設定することができ、EGR弁42の凍結固着を一層的確に抑制することができるようになる。
【0050】
尚、本発明に係る内燃機関の制御装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記各実施形態では、ステップモータ43によりEGR弁42が駆動されるものについて例示したが、EGR弁を駆動するアクチュエータはこれに限られるものではなく、DCモータ等の他のアクチュエータであってもよい。
【0051】
・上記各実施形態では、ポペット式のEGR弁42を備える内燃機関10について例示したが、本発明に係る内燃機関のEGR弁はポペット式のものに限られるものではなく、他に例えばバタフライ式のEGR弁を備える内燃機関に対しても本発明を適用することができる。
【0052】
・上記第2実施形態では、液体水分付着量Vwが多いときほどEGR弁の強制駆動時間tを長く設定するようにしているが、これに代えて、液体水分付着量Vwが多いときほどEGR弁の強制駆動速度を大きく設定するようにしてもよい。この場合であっても、上記第3実施形態と同様の効果を奏することができる。また、液体水分付着量Vwが多いときほど、EGR弁の強制駆動時間tを長く設定するとともに、EGR弁の強制駆動速度を大きく設定するようにしてもよい。これにより、EGR弁の凍結固着をより一層的確に抑制することができるようになる。
【0053】
・上記実施形態によるように、液体水分付着量Vwに基づいてEGR弁の強制駆動処理の実行態様を設定するようにすることが、EGR弁の強制駆動処理の実行態様をEGR弁に付着している水の量に応じて的確に設定する上では望ましい。しかしながら、本発明に係る低減処理実行手段はこれに限られるものではなく、液体水分付着量Vwを推定する構成、液体水分付着量Vwに基づいてEGR弁の強制駆動処理の実行態様を設定する構成をそれぞれ割愛することができる。この場合であっても、EGR弁の強制駆動処理が不要に実行されることをある程度は抑制することができるようになる。
【0054】
・上記各実施形態では、EGR弁の内部における水の分圧Pwや温度Twを推定するようにしているが、本発明に係るEGR弁近傍とはEGR弁42の内部に限られるものではない。要するに、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定することができるのであれば、EGR通路41においてEGR弁42の外部であってもよい。
【0055】
・上記各実施形態では、EGR弁近傍における排気の圧力Ptotalを推定するとともに、吸入空気量GAと燃料噴射量Qとに基づいて排気中における水の体積比率Rwを推定し、これら排気の圧力Ptotalと同水の体積比率Rwとに基づいてEGR弁近傍における水の分圧Pwを推定するようにしている。しかしながら、水の分圧Pwの推定態様はこれに限られるものではなく、水の分圧Pwを推定することができるものであればその構成を任意に変更することができる。
【0056】
・上記実施形態では、機関運転の停止に際して、EGR弁を強制的に開閉駆動するようにしているが、本発明に係る低減処理実行手段はこれに限られるものではない。他に例えば、ヒーター等のEGR弁を加熱するものであってもよい。要するに、EGR弁に付着している水の量を低減する処理を実行するものであればよい。
【0057】
・上記各実施形態では、EGR弁42近傍における水の分圧PwとEGR弁42近傍における温度Twとを推定するとともに、当該温度Twにおける飽和水蒸気圧Ps(Tw)を当該水の分圧Pwが上回ることをもって、EGR弁42に液体としての水が付着していると推定するようにしている。しかしながら、本発明に係る推定手段はこれに限られるものではない。例えば、外気温度Tambが比較的低い場合であって、長期間にわたって車両が停車状態とされている場合に、そのまま機関運転を停止すると、EGR弁42に液体としての水が付着することとなる。そこで、外気温度Tambが所定温度よりも低い場合であって、所定期間以上にわたり車両が停車状態とされること、すなわち内燃機関10がアイドル運転状態とされることをもってEGR弁42に液体としての水が付着していると推定するようにしてもよい。
【0058】
結局、推定手段としては、EGR弁に液体としての水が付着しているか否かを機関運転状態に基づいて推定するものであればよい。
【符号の説明】
【0059】
10…内燃機関、11…燃焼室、12…クランクシャフト、13…燃料噴射弁、14…点火プラグ、20…吸気通路、21…サージタンク、22…スロットル弁、30…排気通路、40…EGR装置、41…EGR通路、42…EGR弁、43…ステップモータ、51…アクセル開度センサ、52…機関回転速度センサ、53…車速センサ、54…スロットル開度センサ、55…吸入空気量センサ、56…吸気管圧力センサ、57…排気温度センサ、58…外気温度センサ、59…排気圧力センサ、60…電子制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路から吸気通路に排気を導入するためのEGR通路及び同通路に設けられて排気の流通面積を可変とするEGR弁からなるEGR装置を備える内燃機関に適用されて、機関運転の停止に際して、前記EGR弁に付着している水の量を低減する処理を実行する低減処理実行手段を備える内燃機関の制御装置であって、
前記EGR弁に液体としての水が付着しているか否かを機関運転状態に基づいて推定する推定手段を備え、
前記低減処理実行手段は、前記推定手段により前記EGR弁に液体としての水が付着していると推定される場合に前記処理を実行する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記推定手段は、前記EGR弁近傍における水の分圧と前記EGR弁近傍における温度とを推定するとともに、当該温度における飽和水蒸気圧を当該水の分圧が上回ることをもって、前記EGR弁に液体としての水が付着していると推定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記推定手段は、前記EGR弁近傍における排気の圧力を推定するとともに、内燃機関の吸入空気量と燃料噴射量とに基づいて排気中における水の体積比率を推定し、前記排気の圧力と前記排気中における水の体積比率とに基づいて前記EGR弁近傍における水の分圧を推定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記推定手段は、前記EGR弁に液体としての水が付着していると推定される場合には、更に、当該水の付着量を機関運転状態に基づいて推定するものであり、
前記低減処理実行手段は、前記推定手段により推定される前記水の付着量に基づいて前記水の量を低減する処理の実行態様を設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、
前記推定手段は、前記EGR弁を通じて前記吸気通路に導入される排気の流量を推定するとともに、前記排気の流量が多いほど前記水の付着量を大きな値として推定するものである
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、
前記低減処理実行手段は、前記推定手段により推定される前記水の量が所定量以下である場合には、前記水の量を低減する処理の実行を禁止する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記低減処理実行手段は、前記EGR弁を強制的に開閉駆動するものであり、前記推定手段により推定される前記水の付着量が多いときほど前記EGR弁の強制駆動期間を長く設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項8】
請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記低減処理実行手段は、前記EGR弁を強制的に開閉駆動するものであり、前記推定手段により推定される前記水の付着量が多いほど前記EGR弁の強制駆動速度を大きく設定する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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