説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】排気中の窒素酸化物についての排気特性の悪化を好適に抑制することのできるエンジン10の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】エンジン10から排気通路22へと排出される排気中の窒素酸化物を吸収する吸収液体Aを貯蔵するタンク30と、タンク30に貯蔵された吸収液体Aを排気通路22に供給する添加弁34とを備える。ここでタンク30は、添加弁34によって排気通路22に供給された吸収液体Aを回収して貯蔵するものであり、吸収液体Aと透過膜38によって仕切られて且つ窒素酸化物を吸収する貯蔵液体Bを更に貯蔵するものである。そして、透過膜38は、吸収液体Aに吸収された窒素酸化物を貯蔵液体B側へと選択的に透過させる機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排気中の窒素酸化物を浄化する内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出される排気中の窒素酸化物(NOx)を除去する排気浄化装置としては例えば、NOx吸蔵還元型触媒や、尿素選択還元型触媒が知られている。詳しくは、NOx吸蔵還元型触媒は、未燃燃料HCを還元剤として、自身に吸蔵させたNOxを還元して浄化するものである。また、尿素選択還元型触媒は、尿素を還元剤として排気中のNOxを選択的に還元して浄化するものである。
【0003】
しかしながら、これら装置では、内燃機関が始動され、触媒の暖機が開始されてから、触媒温度が活性温度に上昇するまでは、触媒の浄化能力が低く、排気中のNOxを適切に浄化することができない。このため、内燃機関の燃費低減効果の向上を目的として、内燃機関の熱効率を向上させる等の技術が導入される場合、触媒温度が上昇しにくくなることで、NOx浄化度合いの低下が顕著となるおそれがある。
【0004】
こうした問題を解決すべく、下記特許文献1に見られるような窒素酸化物の除去技術も知られている。詳しくは、この技術では、まず、排気中の一酸化窒素(NO)を酸化して易吸着性の窒素酸化物(NO2等)に改質し、その改質された窒素酸化物に向かって噴霧装置から水を噴霧することで、改質された窒素酸化物のイオン化を促進する。そして、イオン化された窒素酸化物を吸着材に吸着させるとともに、吸着材の一部に電界を形成することで窒素酸化物イオンを電気泳動によって濃縮する。そして、濃縮された窒素酸化物イオンを三元触媒によって還元することで、窒素酸化物を還元浄化する。これにより、排気温度によらず、排気中の窒素酸化物を浄化することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−233161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術によっても、排気中の窒素酸化物を適切に浄化することができない状況が生じ得る。こうした状況としては例えば、噴霧装置から噴霧された水を再利用する場合、水に含まれる窒素酸化物の濃度が上昇し、窒素酸化物のイオン化を促進することができない状況がある。このとき、窒素酸化物の浄化能力が低下し、内燃機関の排気特性が悪化するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、排気中の窒素酸化物についての排気特性の悪化を好適に抑制することのできる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0009】
請求項1記載の発明は、内燃機関から排気通路へと排出される排気中の窒素酸化物を吸収する吸収液体を貯蔵する第1貯蔵手段と、前記第1貯蔵手段に貯蔵された吸収液体を前記排気通路に供給する供給手段と、前記吸収液体と異種の液体であって且つ窒素酸化物を吸収する貯蔵液体を貯蔵する第2貯蔵手段とを備え、前記第1貯蔵手段と前記第2貯蔵手段とは、透過膜によって仕切られ、前記第1貯蔵手段は、前記供給手段によって前記排気通路に供給された前記吸収液体を回収して貯蔵するものであり、前記透過膜は、前記吸収液体に吸収された窒素酸化物を前記貯蔵液体側へと選択的に透過させる機能を有することを特徴とする。
【0010】
上記発明では、供給手段によって排気通路に吸収液体を供給することで、排気中の窒素酸化物を吸収し、排気特性の悪化を抑制している。ここで第1貯蔵手段に回収された吸収液体を繰り返し使用すると、吸収液体中の窒素酸化物の濃度が上昇し、吸収液体による窒素酸化物の単位時間あたりの吸収量(吸収速度)や、吸収液体の単位量あたりの窒素酸化物の吸収量(吸収密度)が低下するおそれがある。この場合、吸収液体によって排気中の窒素酸化物を適切に吸収することができず、排気特性が悪化するおそれがある。
【0011】
ここで上記発明では、第1貯蔵手段と透過膜によって仕切られた第2貯蔵手段に、窒素酸化物を吸収する貯蔵液体を貯蔵する。そして、吸収液体に吸収された窒素酸化物を貯蔵液体側へと選択的に透過させる機能を透過膜に持たせる。このため、吸収液体中の窒素酸化物の濃度の上昇を抑制することができ、吸収液体による窒素酸化物の吸収速度や吸収密度の低下を抑制することができる。これにより、排気特性の悪化を好適に回避することができる。
【0012】
更に、上記発明では、吸収液体と貯蔵液体とを異種の液体としている。このため、例えば、吸収液体及び貯蔵液体のそれぞれに要求される要素が相違する場合、この相違に適切に対応することもできる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、対となる電極間に電圧を印加することで前記貯蔵液体に電気エネルギを供給し、該貯蔵液体に吸収された窒素酸化物を還元して浄化する還元浄化手段を更に備えることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、上記態様にて貯蔵液体に電気エネルギを供給することで、貯蔵液体に吸収された窒素酸化物を還元して浄化することができる。このため、貯蔵液体中の窒素酸化物の濃度を低下させることができ、貯蔵液体に吸収可能な窒素酸化物の量の低下を回避することができる。これにより、吸収液体中の窒素酸化物の濃度の上昇を回避することができ、吸収液体による窒素酸化物の吸収速度や吸収密度の低下をより好適に回避することができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記還元浄化手段は、該還元浄化手段によって窒素酸化物を前回還元してから規定期間経過する毎に、前記貯蔵液体に吸収された窒素酸化物を還元して浄化することを特徴とする。
【0016】
窒素酸化物を前回還元してからの時間が長くなると、吸収液体側から透過膜を介して貯蔵液体側に透過する窒素酸化物の総量が増大することで、貯蔵液体中の窒素酸化物の吸収量が多くなる。この点に鑑み、上記発明では、上記態様にて窒素酸化物を還元浄化することで、貯蔵液体中の窒素酸化物を効率よく還元浄化することができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記供給手段は、前記吸収液体を前記排気通路に添加する添加弁、及び前記吸収液体を表面に保持して排気に接触させる接触器のうち少なくとも1つであることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、添加弁や接触器を用いることで、吸収液体を排気通路に適切に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかる透過膜を介した窒素酸化物の透過態様について示す図。
【図3】同実施形態にかかる透過膜を介した吸収液体及び貯蔵液体の濃度分布を示す図。
【図4】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図5】同実施形態にかかる還元浄化処理の手順を示すフローチャート。
【図6】同実施形態にかかる還元浄化処理の一例を示すタイムチャート。
【図7】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図8】その他の実施形態にかかる吸収液体を供給する構成を示す図。
【図9】その他の実施形態にかかる吸収液体を供給する構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる排気浄化装置を、車載主機としてエンジンのみが搭載された車両に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。
【0022】
図示されるエンジン10は、圧縮点火式内燃機関(ディーゼルエンジン)である。エンジン10の各気筒の燃焼室12には、燃焼室12に突出する電磁駆動式の燃料噴射弁14が設けられている。燃料噴射弁14には、図示しない蓄圧容器(コモンレール)から高圧の燃料(軽油)が供給され、燃料噴射弁14から燃焼室12に高圧の燃料が噴射供給される。そして、燃焼室12に噴射供給された燃料と、吸気通路16から燃焼室12に導入された吸気とは、燃焼室12の圧縮により燃焼に供される。そして、燃焼によって発生するエネルギは、エンジン10の出力軸(クランク軸18)の回転エネルギとして取り出される。なお、クランク軸18付近には、クランク軸18の回転角度を検出するクランク角度センサ20が設けられている。
【0023】
燃焼に供された吸気及び燃料は、排気として排気通路22に排出される。排気通路22には、排気後処理装置として、上流側から順に、排気中に含まれている窒素酸化物(NOx)を酸化させる酸化触媒(DOC24)、排気中の粒子状物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF26)、及び排気中のNOxを除去するNOx除去装置28が備えられている。なお、DOC24は、排気中の一酸化窒素(NO)を酸化して二酸化窒素(NO2)とする機能を有する部材である。また、本実施形態において、NOxには、一酸化窒素NO、二酸化窒素NO2及び硝酸イオン等の少なくともいずれかが含まれるものとする。
【0024】
上記NOx除去装置28は、タンク30、循環ポンプ32、添加弁34及び接触器36等を備えて構成されている。詳しくは、タンク30内は、透過膜38によって吸収液体貯蔵部32a及び貯蔵液体貯蔵部32bに仕切られている。吸収液体貯蔵部32a及び貯蔵液体貯蔵部32bのそれぞれには、NOxを吸収する吸収液体A及び貯蔵液体Bのそれぞれが貯蔵されている。
【0025】
より詳しくは、図2に示すように、透過膜38は、例えば有機高分子からなり、強度確保のために多孔質セラミック等からなる支持体38aによって支持されるものである。透過膜38には、その厚み方向に貫通される多数の細孔が形成されている。具体的には、これら細孔の直径は、吸収液体Aに吸収されたNOx(例えばNO2や硝酸イオン、図中に「○」にて表記)の大きさ(例えば0.22nm)よりも大きくて且つ、吸収液体A及び貯蔵液体Bの分子の大きさよりも小さいもの(例えば0.3nm)となっている。すなわち、透過膜38は、吸収液体貯蔵部32aの吸収液体Aに吸収されたNOxを、自身を介して貯蔵液体B側へと選択的に透過させる機能を有する。これにより、吸収液体A及び貯蔵液体Bを仕切りつつ、吸収液体A側から貯蔵液体B側へとNOxのみを透過させることが可能となっている。
【0026】
なお本実施形態では、上記吸収液体A及び貯蔵液体Bとして、イオン液体や、アルカリ水溶液(例えば、NaOH水溶液、NH3水溶液)、水(例えばエンジン冷却水)等であって且つ、化学変化を伴ってNOxを吸収(化学吸着)する物質を想定しており、吸収液体Aと貯蔵液体Bとで異種の物質を想定している。ここで異種の物質を想定しているのは、吸収液体A及び貯蔵液体Bのそれぞれに要求される要素(NOxの吸収能力)が異なることに適切に対応するためである。吸収液体A及び貯蔵液体Bのそれぞれに要求されるNOxの吸収能力について説明すると、本実施形態では、吸収液体Aとして、貯蔵液体Bよりも短時間に排気中のNOxを吸収できる能力を有するものを想定している。これを実現するためには例えば、吸収液体Aとして、貯蔵液体B(例えば水)よりも、物質移動係数が高い等、単位時間あたりのNOx吸収量(NOx吸収速度)が高いもの(例えばイオン液体)を採用すればよい。また、貯蔵液体Bとして、吸収液体AよりもNOxの最大貯蔵量が多い能力を有するものを想定している。これを実現するためには例えば、貯蔵液体Bとして、吸収液体A(例えばイオン液体)よりも、単位量あたりのNOx吸収量(NOx吸収密度)が高いもの(例えばアルカリ水溶液)を採用すればよい。
【0027】
図1の説明に戻り、吸収液体貯蔵部32aと添加弁34とは、循環通路40を介して接続されており、循環通路40上には、循環ポンプ32が設けられている。詳しくは、循環ポンプ32は、吸収液体貯蔵部32aに貯蔵されている吸収液体Aを汲み上げて添加弁34に圧送する電動式のものである。
【0028】
添加弁34は、吸収液体Aを排気通路22に噴射供給する電磁駆動式の弁体である。具体的には、添加弁34は、接触器36に向かって吸収液体Aを噴射するように設けられている。
【0029】
接触器36は、吸収液体Aを保持する保持体36a、及び保持体36aを内部に収容するケース36bを備えて構成されており、吸収液体Aと排気とを接触させる機能を有する部材である。詳しくは、接触器36は、排気通路22のうち添加弁34の下流側に設けられている。具体的には、接触器36が備えるケース36bは、排気通路22に接続されており、ケース36b内には排気が流通するようになっている。また、保持体36aは、例えば排気の流通方向に平行に延びる複数の壁を有して且つ排気が流通可能なように構成されるものであり、ケース36b内を流通する排気に晒されるように配置されている。
【0030】
こうした構成において、添加弁34から排気通路22へと吸収液体Aが噴射供給されると、吸収液体Aと排気とが接触することで、排気中のNOxが吸収液体Aに吸収される。詳しくは、噴射供給された吸収液体Aによって排気中のNOxが直接吸収される。また、噴射供給された吸収液体Aが保持体36aに接触して保持され、保持体36aに保持されている吸収液体Aに排気が接触することでNOxが吸収される。
【0031】
添加弁34から噴射供給され、NOxを吸収した吸収液体Aは、タンク30の吸収液体貯蔵部32aに回収される。詳しくは、噴射供給された後の吸収液体Aは、ケース36bの下部に移動したり、ケース36b内の排気下流側に設けられたデミスタ42によって捕集されたりした後、ケース36b内の下部に設けられた回収通路44を介して吸収液体貯蔵部32aに回収される。なお、デミスタ42は、吸収液体Aが大気へと放出されることを回避するための部材である。
【0032】
電子制御装置(以下、ECU46)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。ECU46には、クランク角度センサ20の出力信号等が入力される。ECU46は、上記各センサからの入力信号に基づき、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁14による燃料噴射制御等のエンジン10の燃焼制御を行う。
【0033】
特にECU46は、循環ポンプ32の駆動制御や、添加弁34による噴射制御等のNOxの浄化制御を行う。これら制御によれば、吸収液体貯蔵部32a→循環通路40→添加弁34→接触器36→回収通路44→吸収液体貯蔵部32aの経路で吸収液体Aを循環させつつ、吸収液体Aによって排気中のNOxを吸収することが可能となる。こうした制御によれば、例えばエンジン10の始動時等、排気系の温度が低い運転領域において排気中のNOxを適切に除去することが可能となる。
【0034】
ここで上記経路を吸収液体Aが循環しつつ排気中のNOxを吸収する状況が継続されると、吸収液体A中のNOxの濃度が上昇する。吸収液体A中のNOxの濃度が上昇すると、吸収液体AのNOx吸収速度や、吸収液体AのNOx吸収密度が低下することで、吸収液体Aによって排気中のNOxを適切に吸収することができなくなることが懸念される。
【0035】
こうした問題を解決すべく、本実施形態では、吸収液体Aに吸収されたNOxを、上述した貯蔵液体B側に移動させて貯蔵することで、吸収液体A中のNOxの濃度の上昇を抑制する。以下、図3を用いて、吸収液体A中のNOxの濃度の低下態様について説明する。
【0036】
図3は、透過膜38を介して吸収液体A中のNOxを貯蔵液体Bに移動させることで、吸収液体A中のNOxの濃度が低下する様子の一例を示したものである。詳しくは、図中、横軸は、透過膜38から吸収液体A側及び貯蔵液体B側への距離を示し、縦軸は、吸収液体A及び貯蔵液体B中のそれぞれのNOxの濃度を示している。
【0037】
図中破線にて示す例は、吸収液体Aが継続して使用されて吸収液体A中のNOxの濃度が貯蔵液体Bの濃度よりも大きく上昇した場合を示している。ここで、吸収液体Aと貯蔵液体Bとの濃度差によって、吸収液体A中のNOxが透過膜38を介して貯蔵液体B側へと透過することで、貯蔵液体B中にNOxが拡散する。これにより、図中実線にて示すように、吸収液体A及び貯蔵液体BのNOxの濃度について平衡状態となり、これら液体中のNOxの濃度が略同一となる。すなわち、吸収液体AのNOxの濃度が低下する。
【0038】
上述した構成によれば、吸収液体A中のNOxの濃度の上昇を抑制することができ、吸収液体AのNOx吸収速度の低下を回避することができる。これにより、排気特性の悪化を回避することができる。
【0039】
なお、貯蔵液体B中のNOxの濃度が過度に高くなる以前に、貯蔵液体Bを交換すべき旨を、ユーザに報知する報知処理をECU46によって行うのが望ましい。これにより、タンク30内の貯蔵液体Bがユーザ等によって交換されることで、排気特性を良好に維持することが可能となる。ここで上記報知処理は例えば、貯蔵液体Bが前回交換されてから車両の走行距離が規定走行距離経過すると判断された場合に行えばよい。
【0040】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0041】
(1)排気中のNOxを吸収液体Aによって吸収して除去し、透過膜38を介して吸収液体Aに吸収されたNOxを貯蔵液体Bに移動させた。このため、吸収液体A中のNOxの濃度の上昇を抑制することができ、吸収液体AのNOx吸収速度の低下を回避することができる。これにより、排気特性の悪化を好適に回避することができる。
【0042】
更に、例えば吸収液体A(イオン液体)のコストが高い場合であっても、貯蔵液体Bとしてコストの低いもの(水)を採用することで、NOxの吸収に用いる吸収液体Aの使用量を減らすことができることから、NOx除去装置28の導入によるコストの増大を好適に抑制することもできる。
【0043】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0044】
図4に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図4において、先の図1と同一の部材については、便宜上同一の番号を付している。また、図4において、排気通路22のうちNOx除去装置28よりも上流側の構成等については、先の図1と同様な構成であるため省略している。
【0045】
図示されるように、NOx除去装置28には、更に、NOxを還元浄化する機能を有する還元浄化装置48が備えられている。詳しくは、還元浄化装置48は、電源装置50と、この電源装置50に電気的に接続されて且つ貯蔵液体貯蔵部32bの貯蔵液体Bに全部(又は一部)が浸された対となる(1対の)電極(正極51a,負極51b)とを備えて構成されている。
【0046】
貯蔵液体貯蔵部32bには、還元浄化装置48によって後述する電気分解が行われた際に発生するN2及びO2を放出させるべく、排気通路22のうちケース36bの排気下流側と連通する放出通路52が設けられている。
【0047】
こうした構成において、電源装置50によって両電極51a,51b間に電圧が印加されると、電気分解によって貯蔵液体B中に吸収されたNOxが還元されることで、正極51a付近からO2が発生するとともに、負極51bからはN2が発生する。そして、これらO2及びN2は、放出通路52を介して排気通路22に放出される。これにより、貯蔵液体B中のNOxが還元浄化されて除去され、貯蔵液体B中のNOxの濃度を低下させることができる。
【0048】
なお、電極51a,51bとしては、貯蔵液体Bによって電極が腐食したり、貯蔵液体Bと電極との反応によって塩が生成されたりすることで電気分解が促進されなくなる事態を回避すべく、イオン化傾向が小さい金属(例えば銅、銀、白金、金)を用いることが望ましい。また、貯蔵液体Bとしては、NOxの吸収能力が電気分解によって低下しない(耐電圧が高い)ものを採用することが望ましい。
【0049】
ECU46は、電気分解によって貯蔵液体B中のNOxを還元浄化すべく、電極51a,51b間の通電状態を操作する還元浄化処理を行う。
【0050】
図5に、本実施形態にかかる電気分解による還元浄化処理の手順を示す。この処理は、ECU46によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0051】
この一連の処理では、まずステップS10において、クランク角度センサ20の出力値から算出されるエンジン回転速度NEと、燃料噴射弁14からの燃料噴射量Qとに基づき、貯蔵液体BによるNOxの総吸収量Gtotalを算出する。本実施形態では、還元浄化処理を前回実行したタイミングから現在までの貯蔵液体BによるNOx吸収量を総吸収量Gtotalとして算出する。なお、NOxの総吸収量Gtotalの算出に際し、エンジン回転速度NE及び燃料噴射量Qを用いるのは、これらパラメータによればエンジン10からのNOxの排出量を推定することが可能であるためである。
【0052】
続くステップS12では、NOxの総吸収量Gtotalに基づき、貯蔵液体B中のNOxの濃度Cnを算出する。ここでNOxの濃度Cnは、総吸収量Gtotalが多くなるほど高くなる傾向にある。
【0053】
続くステップS14では、還元浄化処理の実行条件が成立しているか否かを判断する。本実施形態では、実行条件を、還元浄化処理を前回実行してから規定期間が経過したとの条件とする。この条件は、貯蔵液体B中のNOxを効率よく還元浄化するための条件である。つまり、両電極51a,51b付近にNOxが多く存在する状況において電気分解を行うと、例えばこれら電極付近にNOxが少ない状況において電気分解を行う場合と比較して、多くのNOxを還元浄化することができる。
【0054】
ここで本実施形態では、上記規定期間を、還元浄化処理を前回実行してから貯蔵液体B中のNOxの濃度が規定濃度α以上になるまでの期間とする。なお、上記規定濃度αは、例えば、吸収液体Aによって排気中のNOxを適切に吸収することができなくなる程度に貯蔵液体BのNOx濃度が上昇したことを把握可能な値として設定すればよい。
【0055】
ステップS14において肯定判断された場合には、ステップS16に進み、電気分解による還元浄化処理を行う。詳しくは、電源装置50によって両電極51a,51b間に電圧を印加させて通電させる。ここで還元浄化処理を行う期間(浄化処理実行期間)は例えば、NOxの濃度Cnを、上記規定濃度αよりも小さい閾値(例えば0近傍の値)とするのに要する時間として予め実験等によって定めればよい。
【0056】
なお、上記ステップS14において否定判断された場合や、ステップS16の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0057】
図6に、本実施形態にかかる還元浄化処理の一例を示す。
【0058】
図に示す例では、時刻t1から時刻t2までの期間において、NOx除去装置28によって排気中のNOxが除去されることで、貯蔵液体B中にNOxが吸収され、貯蔵液体B中のNOxの濃度が上昇する。その後、時刻t2において貯蔵液体B中のNOxの濃度Cnが規定濃度αに到達したと判断されることで、還元浄化処理が開始される。そして、この処理が上記浄化処理実行期間T1(時刻t2〜t3)継続されることで、貯蔵液体B中のNOxの濃度Cnが低下する。
【0059】
このように、本実施形態では、電気分解による還元浄化処理を行うことで、吸収液体AによるNOxの吸収速度や吸収密度の低下をより好適に回避することができる。
【0060】
以上詳述した本実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0061】
(2)電気分解による還元浄化処理によって貯蔵液体Bに吸収されたNOxを還元して浄化した。これにより、貯蔵液体BのNOx貯蔵能力の低下を回避することで、吸収液体A中のNOx濃度の上昇を回避することができ、吸収液体AによるNOxの吸収能力の低下をより好適に回避することができる。
【0062】
また、還元浄化処理によって自動的に貯蔵液体B中のNOxが還元浄化されるため、例えばユーザ等による貯蔵液体Bの交換頻度を低下させることができる等、メンテナンス性の向上を図ることもできる。
【0063】
更に、吸収液体Aについては、耐電性の高さが要求されないため、貯蔵液体Bと比較して耐電性の低いものを採用することもできる。
【0064】
(3)貯蔵液体B中のNOxの濃度Cnが規定濃度α以上になると判断された場合、還元浄化処理を行った。これにより、例えば還元浄化処理を常時行う制御ロジックを採用する場合と比較して、電気分解に要する単位電気エネルギあたりのNOxの還元浄化量を増大させることができる等、貯蔵液体B中のNOxを効率よく還元浄化することができる。
【0065】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0066】
図7に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図7において、先の図4と同一の部材については、便宜上同一の番号を付している。
【0067】
図示されるように、本実施形態にかかる還元浄化装置54は、一対の電極56a,56b及びこれらに高電圧を印加する高電圧発生装置56cを備えるプラズマ発生装置56と、N2分離器58とを備えて構成されている。詳しくは、一対の電極56a,56bのうち、接地電極56aは貯蔵液体B中に浸されている。また、放電用電極56bは、貯蔵液体Bの静止状態において、貯蔵液体Bの表面から露出している。
【0068】
N2分離器58は、排気通路22のうちケース36bの排気下流側と接続され、排気中のN2を分離してプラズマ発生装置56に供給するためのものである。
【0069】
こうした構成において、高電圧発生装置56cによって放電用電極56b及び接地電極56a間に高電圧が印加されると、ストリーマ放電が生じる。この放電が生じる状況下、N2分離器58からプラズマ発生装置56にN2が供給されると、ストリーマ放電によってN2が解離してNラジカルが生成される。そして、Nラジカルが貯蔵液体Bの表面に吹き付けられることで、NOxが還元浄化されることとなる。これにより、貯蔵液体B中のNOxが還元浄化され、貯蔵液体B中のNOxの濃度を低下させることができる。
【0070】
このように、本実施形態では、プラズマ発生装置56を用いて貯蔵液体B中のNOxを還元浄化することができる。
【0071】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0072】
・吸収液体Aを排気通路22に供給するための構成としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、図8に示すように、接触器36のケース36b内に保持体36aを備えない構成としてもよい。また例えば、図9に示すように、添加弁34を備えず、ケース36b内の保持体36aに循環通路40を介して吸収液体Aが直接供給される構成としてもよい。この場合、鉛直上方からケース36b内に排気を流入させるべく、ケース36bの入口が鉛直上方に向くようにケース36bを排気通路22に接続し、ケース36bの入口に向かって鉛直上方から循環通路40を介して吸収液体Aを供給する構成とすることが望ましい。これにより、供給された吸収液体Aが、保持体36aの水平方向に延びるように広がることで、保持体36aに吸収液体Aを適切に保持させることなどが期待できる。
【0073】
・排気通路22に設けられる添加弁34としては、1つに限らず、例えば複数であってもよい。
【0074】
・吸収液体Aや貯蔵液体Bとしては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、イオン液体や、アルカリ水溶液、水等であって且つ化学変化を伴わずにNOxを吸収(物理吸着)する物質であってもよい。
【0075】
・NOxの総吸収量Gtotalの算出手法としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、排気通路22のうち、DPF26と添加弁34との間に、NOxを検出するNOxセンサを備え、このセンサを用いてエンジン10のNOx排出量を直接検出し、この検出結果に基づきNOxの総吸収量Gtotalを算出してもよい。
【0076】
・貯蔵液体B中のNOxの濃度Cnを把握する手法としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、貯蔵液体貯蔵部32b内に貯蔵液体B中のNOxの濃度を検出するセンサを備え、このセンサの出力値に基づきNOxの濃度Cnを検出してもよい。
【0077】
・還元浄化処理の実行条件としては、上記第2の実施形態に例示したものに限らない。例えば、上記総吸収量Gtotalが規定量以上になるとの条件としてもよい。また例えば、還元浄化処理を前回実行してから車両の走行距離が規定距離以上になるとの条件としてもよい。
【0078】
更に例えば、上記実行条件を、還元浄化処理を前回実行してから規定期間が経過したとの条件と、停車中(車両の走行速度が0)であるとの条件との論理積が真であるとの条件としてもよい。ここで停車中であるとの条件は、還元浄化処理によってNOxを適切に還元浄化することができなくなる事態を回避するためのものである。つまり例えば、上記第2の実施形態において、車両が動揺すること等に起因して、電極51a,51b間に貯蔵液体Bの流れが生じる等、貯蔵液体Bの挙動(液中・液面の挙動)が不安定になることがある。この場合、貯蔵液体B中に吸収されてイオン化されたNOxの電気泳動が妨げられ、還元浄化処理によって貯蔵液体B中のNOxを適切に還元浄化することができなくなるおそれがある。このため、停車中であるとの条件を設けることで、適切に還元浄化できなくなる事態を回避する。
【0079】
・本願発明が適用される車両としては、車載主機としてエンジンのみを搭載した車両に限らない。例えば、車載主機として、エンジンとともに回転機を備えるハイブリッド車両に適用してもよい。また例えば、車載主機として回転機のみを備えて且つ、回転機の電力供給源となるバッテリと、バッテリに充電するための補機発電機と、補機発電機の動力供給源となるエンジンとを備えるシリーズハイブリッド車両(いわゆるレンジエクステンダ車両)に適用してもよい。これらの場合、車載主機としてエンジンのみが搭載される車両と比較して、例えば低速走行速度域においてエンジンの使用頻度が低下し、排気系の温度が上昇しにくい状況が生じやすくなることが考えられる。このため、排気系の温度が低い領域から適切な浄化が期待できる本願発明を適用することで、排気特性の悪化を回避することができる。
【0080】
・プラズマ発生装置56としては、上記第3の実施形態に例示したものに限らない。例えば、一対の電極56a,56bの双方が貯蔵液体中に浸される水中放電式のものであってもよい。
【0081】
・吸収液体A及び貯蔵液体Bに要求される要素の相違としては、上記各実施形態に例示したもの(NOx吸収能力や、コスト、耐電性)に限らず、タンク30内における液体の流動性等、他の要求要素の相違も考えられる。この場合であっても、タンク30内を透過膜38によって仕切って且つ異種の液体を貯蔵する構成を備える本願発明の適用により、上記相違に適切に対応することが期待できる。
【0082】
・エンジン10としては、圧縮点火式エンジンに限らず、例えば筒内直噴式の火花点火式エンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…エンジン、22…排気通路、28…NOx除去装置(内燃機関の排気浄化装置の一実施形態)、30…タンク、34…添加弁、36…接触器、38…透過膜、48,54…還元浄化装置、A…吸収液体、B…貯蔵液体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排気通路へと排出される排気中の窒素酸化物を吸収する吸収液体を貯蔵する第1貯蔵手段と、
前記第1貯蔵手段に貯蔵された吸収液体を前記排気通路に供給する供給手段と、
前記吸収液体と異種の液体であって且つ窒素酸化物を吸収する貯蔵液体を貯蔵する第2貯蔵手段とを備え、
前記第1貯蔵手段と前記第2貯蔵手段とは、透過膜によって仕切られ、
前記第1貯蔵手段は、前記供給手段によって前記排気通路に供給された前記吸収液体を回収して貯蔵するものであり、
前記透過膜は、前記吸収液体に吸収された窒素酸化物を前記貯蔵液体側へと選択的に透過させる機能を有することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
対となる電極間に電圧を印加することで前記貯蔵液体に電気エネルギを供給し、該貯蔵液体に吸収された窒素酸化物を還元して浄化する還元浄化手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記還元浄化手段は、該還元浄化手段によって窒素酸化物を前回還元してから規定期間経過する毎に、前記貯蔵液体に吸収された窒素酸化物を還元して浄化することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記供給手段は、前記吸収液体を前記排気通路に添加する添加弁、及び前記吸収液体を表面に保持して排気に接触させる接触器のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−159039(P2012−159039A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19406(P2011−19406)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】