説明

内燃機関の燃料噴射制御システム

【課題】本発明は、燃料タンクから燃料を汲み上げるための電動式の低圧燃料ポンプと、該低圧燃料ポンプから吐出される燃料を昇圧させるための高圧燃料ポンプと、を備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、高圧燃料ポンプに吸引される燃料の圧力を所望の圧力で安定させることを課題とする。
【解決手段】本発明は、燃料タンクから燃料を汲み上げるための電動式の低圧燃料ポンプと、該低圧燃料ポンプから吐出される燃料を昇圧させるための高圧燃料ポンプと、低圧燃料ポンプを駆動するための駆動回路と、駆動回路を制御する制御手段と、を備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、制御手段から駆動回路へ入力される制御パラメータとして電力値を用いるものとし、駆動回路は、低圧燃料ポンプの実際の消費電力が制御手段から入力される電力値と一致するように低圧燃料ポンプを駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関により駆動される高圧燃料ポンプに対して、電動式の低圧燃料ポンプを利用して燃料を送り、高圧燃料ポンプにより加圧された燃料を内燃機関に供給する内燃機関の燃料供給装置において、低圧燃料ポンプから高圧燃料ポンプに至る燃料経路における燃料圧力(フィード圧)の不足を要因としたベーパの発生を回避できるように、低圧燃料ポンプを制御する技術が知られている(たとえば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−071224号公報
【特許文献2】特開平09−184460号公報
【特許文献3】特開2005−076568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来の技術は、低圧燃料ポンプの制御パラメータとして電圧を用いているため、ベーパの発生を回避しつつフィード圧を可及的に低くすることができない可能性がある。すなわち、低圧燃料ポンプの印加電圧は、該低圧燃料ポンプの回転数(単位時間あたりの吐出流量)に相関するが、低圧燃料ポンプの吐出圧力との相関が低い。そのため、低圧燃料ポンプの制御パラメータとして電圧が用いられると、機関負荷の増減によって高圧燃料ポンプの負荷(吸引量)が変化した場合に、フィード圧が所望の圧力から乖離する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料タンクから燃料を汲み上げるための電動式の低圧燃料ポンプと、該低圧燃料ポンプから吐出される燃料を昇圧させるための高圧燃料ポンプと、を備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、フィード圧を所望の圧力で安定させることができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するために、燃料タンクから燃料を汲み上げるための電動式の低圧燃料ポンプと、該低圧燃料ポンプから吐出される燃料を昇圧させるための高圧燃料ポンプと、前記低圧燃料ポンプを駆動するための駆動回路と、前記駆動回路を制御する制御手段と、を備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、制御手段から駆動回路へ入力される制御パラメータとして電力値を用いるようにした。
【0007】
詳細には、本発明は、燃料タンクから燃料を汲み上げるための電動式の低圧燃料ポンプと、
前記低圧燃料ポンプから吐出される燃料を昇圧させるための高圧燃料ポンプと、
前記低圧燃料ポンプを駆動するための駆動回路と、
前記低圧燃料ポンプの目標吐出圧力に基づいて前記駆動回路を制御する制御手段と、
を備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、
前記制御手段は、前記目標吐出圧力に対応した目標電力を前記駆動回路に入力させ、
前記駆動回路は、前記低圧燃料ポンプの消費電力が前記目標電力に一致するように前記低圧燃料ポンプを駆動させるようにした。
【0008】
低圧燃料ポンプに流れる電流(消費電流)は、該低圧燃料ポンプから吐出される燃料の圧力に比例する。また、低圧燃料ポンプに印加される電圧(印加電圧)は、該低圧燃料ポンプの回転数、すなわち、該低圧燃料ポンプから吐出される燃料量に比例する。よって、電流値と電圧値との合成値である電力値が低圧燃料ポンプの制御パラメータとして用いられると、低圧燃料ポンプから高圧燃料ポンプに至る経路における燃料圧力(フィード圧)を所望の圧力に収束させ易くなるとともに、機関負荷が変化した場合であってもフィード圧が所望の圧力から乖離し難くなる。したがって、本発明の内燃機関の燃料噴射制御システムによれば、フィード圧を所望の圧力で安定させることが可能になる。
【0009】
本発明に係わる内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、駆動回路は、前記低圧燃料ポンプに流れている電流を検知する電流検知部と、
前記低圧燃料ポンプに印加されている電圧を検知する電圧検知部と、
前記電流検知部及び前記電圧検知部により検知された電流値及び電圧値から前記低圧燃料ポンプの消費電力を演算する第1演算部と、
前記演算部により算出された消費電力と前記制御手段から入力される目標電力の差をパラメータにして、前記低圧燃料ポンプに電圧を印加する時間と電圧を印加しない時間との比であるデューティ比を演算する第2演算部と、
前記第2演算部により算出されたデューティ比に従って前記低圧燃料ポンプを駆動させる駆動部と、
を備えるようにしてもよい。
【0010】
このように駆動回路が構成されると、低圧燃料ポンプの消費電力を目標電力に収束させることが可能になる。
【0011】
また、本発明に係わる内燃機関の燃料噴射制御システムは、前記高圧燃料ポンプの吐出圧力を測定する圧力センサと、
前記高圧燃料ポンプの目標吐出圧力と前記圧力センサの測定値の偏差をパラメータとして演算される比例項及び積分項を用いて前記高圧燃料ポンプの駆動信号を演算する演算手段と、
前記積分項の変化傾向に応じて前記低圧燃料ポンプの目標吐出圧力を低下させる低下処理手段と、
を更に備えるようにしてもよい。
【0012】
このように構成された内燃機関の燃料噴射制御システムによれば、燃料のベーパを抑制しつつ、フィード圧を最低の圧力に安定させることができる。その結果、低圧燃料ポンプの消費電力を可及的に少なくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、燃料タンクから燃料を汲み上げるための電動式の低圧燃料ポンプと、該低圧燃料ポンプから吐出される燃料を昇圧させるための高圧燃料ポンプと、を備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、フィード圧を所望の圧力で安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用する内燃機関の燃料噴射系の概略構成を示す図である。
【図2】低圧燃料ポンプの吐出圧力を低下させたときの積分項の挙動及び高圧燃料通路内の燃料圧力の挙動を示す図である。
【図3】駆動回路の概略構成を示す図である。
【図4】低圧燃料ポンプの印加電圧と回転数との関係を示す図である。
【図5】低圧燃料ポンプの消費電流とトルクとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
図1は、本発明に係わる内燃機関の燃料噴射制御システムの概略構成を示す図である。図1に示す燃料噴射制御システムは、直列4気筒の内燃機関に適用される燃料噴射制御システムであり、低圧燃料ポンプ1と、高圧燃料ポンプ2とを備えている。なお、内燃機関の気筒数は、4つに限られず、5つ以上であってもよく、あるいは3つ以下であってもよい。
【0017】
低圧燃料ポンプ1は、燃料タンク3に貯留されている燃料を汲み上げるためのポンプである。低圧燃料ポンプ1は、直流式の電動モータにより駆動されるタービン式ポンプ(ウェスコ式ポンプ)である。低圧燃料ポンプ1から吐出された燃料は、低圧燃料通路4によって高圧燃料ポンプ2の吸入口へ導かれるようになっている。
【0018】
高圧燃料ポンプ2は、低圧燃料ポンプ1から吐出された燃料を昇圧するためのポンプである。高圧燃料ポンプ2は、内燃機関の動力(たとえば、カムシャフトの回転力)により駆動される往復式のポンプ(プランジャー式ポンプ)である。高圧燃料ポンプ2の吸入口には、該吸入口の導通と閉塞とを切り換える吸入弁2aが設けられている。吸入弁2aは、電磁駆動式の弁機構であり、プランジャの位置に対する開閉タイミングを変更することによって高圧燃料ポンプ2の吐出量を変更する。また、高圧燃料ポンプ2の吐出口には、高圧燃料通路5の基端が接続されている。高圧燃料通路5の終端は、デリバリパイプ6に接続されている。
【0019】
デリバリパイプ6には、4つの燃料噴射弁7が接続されており、高圧燃料ポンプ2からデリバリパイプ6へ圧送された高圧の燃料が各燃料噴射弁7へ分配されるようになっている。燃料噴射弁7は、内燃機関の気筒内へ直接燃料を噴射する弁機構である。
【0020】
なお、上記した燃料噴射弁7のような筒内噴射用の燃料噴射弁に加え、吸気通路(吸気ポート)内へ燃料を噴射するためのポート噴射用の燃料噴射弁が内燃機関に取り付けられている場合は、低圧燃料通路4の途中から分岐してポート噴射用のデリバリパイプへ低圧の燃料が供給されるように構成されてもよい。
【0021】
上記した低圧燃料通路4の途中には、パルセーションダンパ11が配置されている。パルセーションダンパ11は、前記高圧燃料ポンプ2の動作(吸引動作と吐出動作)に起因する燃料の脈動を減衰するものである。また、上記した低圧燃料通路4の途中には、分岐通路8の基端が接続されている。分岐通路8の終端は、燃料タンク3に接続されている。分岐通路8の途中には、プレッシャーレギュレータ9が設けられている。プレッシャーレギュレータ9は、低圧燃料通路4内の圧力(燃料圧力)が所定値を超えたときに開弁することにより、低圧燃料通路4内の余剰の燃料が分岐通路8を介して燃料タンク3へ戻るように構成される。
【0022】
上記した高圧燃料通路5の途中には、チェック弁10が配置されている。チェック弁10は、前記高圧燃料ポンプ2の吐出口から前記デリバリパイプ6へ向かう流れを許容し、前記デリバリパイプ6から前記高圧燃料ポンプ2の吐出口へ向かう流れを規制するワンウェイバルブである。
【0023】
上記したデリバリパイプ6には、該デリバリパイプ6内の余剰の燃料を前記燃料タンク3へ戻すためのリターン通路12が接続されている。リターン通路12の途中には、該リターン通路12の導通と遮断とを切り換えるリリーフ弁13弁が配置されている。リリーフ弁13は、電動式又は電磁駆動式の弁機構であり、デリバリパイプ6内の燃料圧力が目標値を超えたときに開弁される。
【0024】
前記リターン通路12の途中には、連通路14の終端が接続されている。前記連通路14の基端は、前記高圧燃料ポンプ2に接続されている。この連通路14は、前記高圧燃料ポンプ2から排出される余剰燃料を前記リターン通路12へ導くための通路である。
【0025】
ここで、本実施例における燃料供給システムは、上記した各機器を電気的に制御するためのECU15を備えている。ECU15は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどを備えた電子制御ユニットである。ECU15は、燃圧センサ16、吸気温度センサ17、アクセルポジションセンサ18、クランクポジションセンサ19などの各種センサと電気的に接続されている。
【0026】
燃圧センサ16は、デリバリパイプ6内の燃料圧力(高圧燃料ポンプ2の吐出圧力)Phに相関した電気信号を出力するセンサである。吸気温度センサ17は、内燃機関に吸入される空気の温度に相関した電気信号を出力する。アクセルポジションセンサ18は、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)に相関した電気信号を出力する。クランクポジションセンサ19は、内燃機関の出力軸(クランクシャフト)の回転位置に相関した電気信号を出力するセンサである。
【0027】
ECU15は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、低圧燃料ポンプ1や吸入弁2aを制御する。たとえば、ECU15は、燃圧センサ16の出力信号(実吐出圧力)Phが目標吐出圧力Phtrgに収束するように、吸入弁2aの開閉タイミングを調整する。その際、ECU15は、実吐出圧力Phと目標吐出圧力Phtrgとの差ΔPh(=Phtrg−Ph)に基づいて、吸入弁2aの制御量である駆動デューティ(ソレノイドの通電時間と非通電時間との比)Dhをフィードバック制御する。具体的には、ECU15は、吸入弁2aの駆動デューティDhに対し、前記差ΔPhに基づく比例積分制御(PI制御)を行う。なお、前記目標吐出圧力Phtrgは、燃料噴射弁7の目標燃料噴射量に応じて定められる値である。
【0028】
上記した比例積分制御において、ECU15は、目標燃料噴射量に応じて定まる制御量(フィードフォワード項)Tffと、実吐出圧力Phと目標吐出圧力Phtrgとの差ΔPhの大きさに応じて定める制御量(比例項)Tpと、前記差ΔPhの一部(たとえば、比例制御の残留偏差)を積算した制御量(積分項)Tiと、を加算することにより、駆動デューティDhを算出する。
【0029】
なお、前記目標燃料噴射量とフィードフォワード項Tffとの関係、及び、前記差ΔPhと比例項Tpとの関係は、予め実験などを利用した適合作業によって定められるものとする。また、前記差ΔPhのうち、積分項Tiに加算される量の割合についても、予め実験などを利用した適合作業によって定められるものとする。
【0030】
また、ECU15は、低圧燃料ポンプ1の消費電力を可及的に低減するために、フィード圧Plを低下させる処理を実行する。具体的には、ECU15は、以下の式(1)に従って、低圧燃料ポンプ1の駆動信号Dlを演算する。ここで、駆動信号Dlは、電流値と電力値を合成(乗算)した電力値である。
Dl=D1old+ΔTi*F−Cdwn・・・(1)
式(1)中のD1oldは、駆動信号(電力値)Dlの前回の計算値である。式(1)
中のΔTiは、前記比例積分制御に用いられる積分項Tiの変化量ΔTi(たとえば、駆動デューティDhの前回の演算に用いられた積分項Tioldと今回の演算に用いられた積分項Tiとの差(Ti−Tiold))である。式(1)中のFは、補正係数である。なお、補正係数Fとしては、積分項Tiの変化量ΔTiが正値であるときは1以上の増加係数Fiが使用され、積分項Tiの変化量ΔTiが負値であるときは1未満の減少係数Fdが使用される。また、式(1)中のCdwnは、低下定数である。
【0031】
上記した式(1)に従って低圧燃料ポンプ1の駆動信号(電力値)Dlが決定されると、前記積分項Tiが増加傾向を示すとき(ΔTi>0)は低圧燃料ポンプ1の駆動信号(電力値)Dlが増加し、前記積分項Tiが減少傾向又は一定値を示すとき(ΔTi≦0)は低圧燃料ポンプ1の駆動信号(電力値)Dlが減少することになる。
【0032】
ここで、前記積分項Tiは、低圧燃料通路4にベーパが発生したとき、言い換えると、低圧燃料通路4内の燃料圧力が燃料の飽和蒸気圧を下回ったときに、増加傾向を示す。ここで、フィード圧Plを連続的に低下させた場合における積分項Tiと高圧燃料通路5内の燃料圧力(高圧燃料ポンプ2の実吐出圧力)Phの挙動を図2に示す。
【0033】
図2において、フィード圧Plが飽和蒸気圧を下回ると(図2中のt1)、積分項Tiが穏やかな増加傾向を示す。その後、フィード圧Plが更に低下されると、高圧燃料ポンプ2の吸引不良又は吐出不良が発生する(図2中のt2)。高圧燃料ポンプ2の吸引不良又は吐出量が発生すると、積分項Tiの増加速度が大きくなるとともに、高圧燃料通路5内の燃料圧力Phが低下する。
【0034】
よって、上記した式(1)により低圧燃料ポンプ1の駆動信号(電力値)Dlが決定されると、前記積分項Tiが増加傾向を示すとき(ΔTi>0)は低圧燃料ポンプ1の吐出圧力が上昇し、前記積分項Tiが一定又は減少傾向を示すとき(ΔTi≦0)は低圧燃料ポンプ1の吐出圧力が低下する。すなわち、前記積分項Tiが増加傾向を示すとき(ΔTi>0)はフィード圧Plが上昇し、前記積分項Tiが一定又は減少傾向を示すとき(ΔTi≦0)はフィード圧Plが低下する。その結果、低圧燃料ポンプ1から高圧燃料ポンプ2に至る経路におけるベーパの発生を回避しつつ、フィード圧Plを低下させることができる。その結果、低圧燃料ポンプ1の消費電力を可及的に少なくすることができる。
【0035】
ここで、本実施例の低圧燃料ポンプ1は、ECU14から出力される駆動信号(電力値)Dlに従って該低圧燃料ポンプ1を駆動するための駆動回路100を備えている。駆動回路100は、図3に示すように、2つのオペアンプ101,102と、トランジスタ103と、2つの抵抗104,105を備えている。
【0036】
オペアンプ101は、低圧燃料ポンプ1に印加される電圧値と低圧燃料ポンプ1を流れる電流値とを入力し、それら電圧値と電流値から低圧燃料ポンプ1の消費電力を演算する。オペアンプ101により算出された消費電力は、オペアンプ102に入力される。なお、オペアンプ101は、本発明に係わる第1演算部に相当する。
【0037】
オペアンプ102は、ECU15から出力される駆動信号(目標電力)Dlとオペアンプ101から出力される消費電力との差分に基づいて、低圧燃料ポンプ1にバッテリ電圧Bが印加される時間と印加されない時間との比であるデューティ比を演算する。オペアンプ102の演算結果(デューティ比)は、トランジスタ103に入力される。なお、オペアンプ102は、本発明に係わる第2演算部に相当する。
【0038】
トランジスタ103は、オペアンプ102から出力されるデューティ比に従って、低圧燃料ポンプ1に対するバッテリ電圧Bの印加と非印加とを切り換える。トランジスタ10
3は、本発明に係わる駆動部に相当する。
【0039】
抵抗104は、低圧燃料ポンプ1に印加される電圧を検知するための抵抗であり、本発明に係わる電圧検知部に相当する。また、抵抗105は、低圧燃料ポンプ1に流れる電流値を検知するための抵抗であり、本発明に係わる電流検知部に相当する。
【0040】
このように構成された駆動回路100によれば、低圧燃料ポンプ1に印加されるバッテリ電圧Bは、低圧燃料ポンプ1が実際に消費する電力が駆動信号(目標電力)Dlに一致するようにデューティ制御されることになる。
【0041】
ここで、低圧燃料ポンプ1の印加電圧は、図4に示すように、該低圧燃料ポンプ1の回転数に比例する。すなわち、低圧燃料ポンプ1の印加電圧が高くなるほど、該低圧燃料ポンプ1の回転数が高くなる。その結果、低圧燃料ポンプ1の印加電圧が高くなるほど、該低圧燃料ポンプ1から吐出される燃料量(流量)が多くなる。一方、低圧燃料ポンプ1の消費電流は、図5に示すように、該低圧燃料ポンプ1のトルクに比例する。すなわち、低圧燃料ポンプ1の消費電流が多くなるほど、該低圧燃料ポンプ1のトルクが大きくなる。その結果、低圧燃料ポンプ1の消費電流が多くなるほど、該低圧燃料ポンプ1から吐出される燃料の圧力が高くなる。
【0042】
したがって、電圧と電流の合成値(乗算値)である電力を制御パラメータにして低圧燃料ポンプ1が制御されると、該低圧燃料ポンプ1から吐出される燃料の量及び圧力を所望の量及び圧力にすることが可能になる。その結果、機関負荷の変化による要求燃料量の変化が発生した場合であっても、フィード圧を所望の圧力に安定させることが可能になる。すなわち、燃料のベーパを抑制しつつフィード圧を最低の圧力に収束及び安定させることが可能になる。
【符号の説明】
【0043】
1 低圧燃料ポンプ
2 高圧燃料ポンプ
2a 吸入弁
3 燃料タンク
4 低圧燃料通路
5 高圧燃料通路
6 デリバリパイプ
7 燃料噴射弁
8 分岐通路
9 プレッシャーレギュレータ
10 チェック弁
11 パルセーションダンパ
12 リターン通路
13 リリーフ弁
14 連通路
15 ECU
16 燃圧センサ
100 駆動回路
101 オペアンプ
102 オペアンプ
103 トランジスタ
104 抵抗
105 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクから燃料を汲み上げるための電動式の低圧燃料ポンプと、
前記低圧燃料ポンプから吐出される燃料を昇圧させるための高圧燃料ポンプと、
前記低圧燃料ポンプを駆動するための駆動回路と、
前記低圧燃料ポンプの目標吐出圧力に基づいて前記駆動回路を制御する制御手段と、
を備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、
前記制御手段は、前記目標吐出圧力に対応した目標電力を前記駆動回路に入力させ、
前記駆動回路は、前記低圧燃料ポンプの消費電力が前記目標電力に一致するように前記低圧燃料ポンプを駆動させることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項2】
請求項1において、前記駆動回路は、前記低圧燃料ポンプに流れている電流を検知する電流検知部と、
前記低圧燃料ポンプに印加されている電圧を検知する電圧検知部と、
前記電流検知部及び前記電圧検知部により検知された電流値及び電圧値から前記低圧燃料ポンプの消費電力を演算する第1演算部と、
前記演算部により算出された消費電力と前記制御手段から入力される目標電力の差をパラメータにして、前記低圧燃料ポンプに電圧を印加する時間と電圧を印加しない時間との比であるデューティ比を演算する第2演算部と、
前記第2演算部により算出されたデューティ比に従って前記低圧燃料ポンプを駆動させる駆動部と、
を備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記高圧燃料ポンプの吐出圧力を測定する圧力センサと、
前記高圧燃料ポンプの目標吐出圧力と前記圧力センサの測定値の偏差をパラメータとして演算される比例項及び積分項を用いて前記高圧燃料ポンプの駆動信号を演算する演算手段と、
前記積分項の変化傾向に応じて前記低圧燃料ポンプの目標吐出圧力を低下させる低下処理手段と、
を更に備えることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−108358(P2013−108358A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251523(P2011−251523)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】