内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関
【課題】ピストンスカート部の構造によって、ピストンスカート部の各部分の剛性を調整して、エンジン騒音を改善することができる内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関を提供する。
【解決手段】内燃機関の設計方法が、ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側上部の剛性よりも、スラスト側下部の剛性と反スラスト側上部の剛性がそれぞれ高くなるように設計するステップと、ピストンの重心位置及び慣性モーメントの調整を反スラスト側下部において行うステップとを含む。
【解決手段】内燃機関の設計方法が、ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側上部の剛性よりも、スラスト側下部の剛性と反スラスト側上部の剛性がそれぞれ高くなるように設計するステップと、ピストンの重心位置及び慣性モーメントの調整を反スラスト側下部において行うステップとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンのピストンスカート部の剛性を調整することでエンジン騒音を改善することができる内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストン−クランク機構を用いた内燃機関では、図14及び図15に示すように、シリンダ10内におけるピストン20の往復運動をクランク軸30の回転運動に変換して動力を発生させている。このとき、ピストン20には筒内ガス圧力及び運動部分の慣性力からなる往復運動方向の力Fだけではなく、コンロッド40の揺動角により往復運動と直交する方向の力(側圧)Rが作用する。つまり、ピストン20には、往復運動だけではなく、シリンダ10のライナー部11との隙間で、往復運動と直交する方向の並進運動とピストンピン21回りの回転運動が発生する。
【0003】
4サイクルエンジンの圧縮行程では、図14に示すように、側圧Rが反スラスト方向に作用するため、ピストン20はライナー部11との間の隙間(クリアランス)の範囲内で反スラスト側に片寄った状態で上昇する。その後、図15に示すように、圧縮上死点付近で側圧Rの向きが反転すると、ピストン20はスラスト方向に急速な並進又は回転、あるいはその両方を伴う運動を行い、スラスト側のライナー部11に衝突する。この現象はピストンスラップと呼ばれ、エンジン騒音を発生させる要因の一つになっている。
【0004】
このピストンスラップで、ピストン20側のライナー部11と衝突する部分は、ピストンスカート部22となるので、このピストンスカート部22は騒音の観点から重要な部位となっている。また、このピストンスカート部22はピストン20の往復運動の際にライナー部11と摺動するので、摩擦抵抗を発生する部分でもあり、摩擦損失の観点からも重要な部位となっている。
【0005】
特に、騒音対策の観点からは、ピストンスカート部22の形状(プロフィール)に対して、ピストン20とライナー部11の間の隙間を狭めることが好ましく、これにより、ピストン20の姿勢を安定させる効果と、ピストンスラップの際に反スラスト側からスラスト側への移動期間を短縮させて側圧Rによる加速期間を短縮する効果を奏することができる。また、この加速期間の短縮により、ピストン20がライナー部11へ衝突する際の衝突速度を減少させて、衝突エネルギーを緩和させることができ、騒音を低減する効果が得られる。
【0006】
一方、摩擦対策の観点からは、ピストン20がライナー部11と摺動することによる発生する抵抗を低減する必要がある。そのためにはピストン20とライナー部11の間の隙間は広く設定することが好ましい。つまり、騒音対策と摩擦対策で必要な要件が背反する。
【0007】
本発明者は、内燃機関の実働時のピストンとライナー部間の隙間(クリアランス)を測定した結果、ピストンスラップの衝突エネルギーに影響する移動直前のスラスト側の隙間が、単にピストンの外形形状(プロフィール)によってのみ決まるのではなく、側圧によってピストンが反スラスト側に押し付けられる際のピストンスカート部の弾性変形の影響を受けて決まるとの知見を得た。
【0008】
図16に示す各部位P1〜P4に関する内燃機関の実働時の隙間を測定した結果を図17〜図20に示す。圧縮行程における図17に示すスラスト側上部P1の変位量(最大変位量P1m)は、図18に示す反スラスト側上部P2の変位量(最大変位量P2m)よりも明らかに大きい。これは、ピストンが剛体運動だけしているとすると説明ができず、ピストンが弾性変形していると考えることで説明できる。また、この時、図19に示すスラスト側下部P3の変位量が少ないことから、圧縮行程でのピストン挙動は並進運動というよりも回転運動をしていることが分かる。
【0009】
以上の結果から圧縮行程におけるピストン挙動を整理すると、側圧が反スラスト方向に作用することでピストン上部がピストンピン21の回りに反スラスト方向に回転する(図16のピストン図では時計回りの)モーメントMが発生し、反スラスト側の隙間(図18の反スラスト側上部P2の変位量)分回転してピストンスカート部22の上部P2が反スラスト側ライナー部11に接触する。更に、モーメントMが作用し続けることでピストンスカート部22の反スラスト側上部P2が圧縮されるように弾性変形し、反対側のスラスト側の隙間(図17のスラスト側上部P1の変位量)が増加する。この時同時にピストンスカート部22のスラスト側下部P3が撓むことでピストンスカート部22の反スラスト側下部P4の隙間(図20の反スラスト側下部P4の変位量)が増加する。
【0010】
ここで、ピストンスカート部22の下部P3,P4の剛性値はピストンスカート部22の上部P1,P2の剛性値よりも低いため、隙間の増加量が大きい。上死点を過ぎてモーメントMの向きが反転すると、ピストン上部がスラスト側に急速に回転してピストンスラップが発生する。
【0011】
以上の挙動解析から、ピストンスラップに大きな影響を与えるピストンスカート部22のスラスト側上部P1の隙間に関しては、ピストンスカート部22の外形形状だけでなくピストンスカート部22の剛性が関与することが分かり、ピストンスカート部22の各部分の剛性を適切に設定することによって、内燃機関の実働時における各隙間を調整でき、ピストンスラップ騒音を改善することができるとの知見を得た。
【0012】
これに関連して、シリンダボアの内面に衝突する際の衝撃力を緩和し、シリンダボアとのクリアランスを最適化するために、内燃機関の運転でスカート部に温度分布が与えられた場合に、スカート部のスラスト側肩部の剛性と反スラスト側のインロー部の剛性とが略同じになるようにスカート部の剛性を設定する内燃機関用ピストンが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−107477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ピストンスカート部の構造によって、ピストンスカート部の各部分の剛性を調整して、エンジン騒音を改善することができる内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記のような目的を達成するための本発明の内燃機関の設計方法は、ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側下部の剛性と反スラスト側上部の剛性を、それぞれ、スラスト側上部の剛性よりも高くして形成すると共に、反スラスト側下部でピストンの重心位置及び慣性モーメントを調整することを特徴とする方法である。
【0016】
この内燃機関の設計方法では、図1に示すように、ピストン20のピストンスカート部22をスラスト側の上部P1、反スラスト側の上部P2、スラスト側の下部P3、反スラスト側の下部P4の合計4つの部分に大別し、ピストンスラップに至る過程で各部分に起こる現象に応じて、4つの部分に異なる剛性を持たせ、隙間拡大の抑制や衝突時の加振力の低減によりピストンスラップによって発生するエンジン騒音を改善する。
【0017】
この方法によれば、ピストンスカート部の構造によって、ピストンスカート部の剛性を調整すると共に、ピストンの重心位置と慣性モーメントも調整できるので、エンジン騒音が改善されたピストン構造を、容易に設計できるようになる。
【0018】
また、上記のような目的を達成するための本発明のピストン構造は、ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側上部では、シリンダのライナー部に衝突する部分の内面側に窪みを設け、スラスト側下部及び反スラスト側上部にはそれぞれの内面側にリブを設けて、前記スラスト側上部の剛性よりも前記スラスト側下部の剛性と前記反スラスト側上部の剛性を、それぞれ高くして形成する。
【0019】
この構成によれば、窪みとリブという比較的簡単な構成で、ピストンスカート部の剛性を変化することができる。これにより、ピストンスカート部の弾性変形を抑制して、ピストンとライナー部との間の隙間(クリアランス)を調整することができると共に、ピストンスラップ時の衝突エネルギーを緩和できる。その結果、ピストンスラップ騒音を低減できる。
【0020】
この構成によれば、ピストンの外形形状(プロフィール)を調整することによって、幾何学的にピストンとライナー部との間の隙間を縮小する構造に比べて、摩擦損失が悪化するというデメリットが生じない。
【0021】
上記ピストンにおいて、反スラスト側下部をピストンの重心位置及び慣性モーメントを調整する部分とすると、ピストンスラップ対策用にスラスト側上下部と反スラスト側上部の剛性を決めた後に、ピストンの重心位置と慣性モーメントをリブや凹部やこれらの組み合わせ等の比較的簡単な構成で、調整できるようになる。
【0022】
また、上記のような目的を達成するための本発明の内燃機関は、上記のピストン構造を用いる内燃機関であり、この内燃機関では、ピストンスラップによって発生するエンジン騒音を改善できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関によれば、ピストンスカート部の部分的な剛性を個別に設定することで、スカートの弾性変形を抑制してピストンとライナー部間の隙間を制御することと、ピストンスラップ時の衝突エネルギーを緩和することにより、エンジン騒音を低減することができる。しかも、ピストンの外形形状を調整することにより幾何学的に隙間を縮小する方法及び構成に対して、摩擦損失が悪化するというデメリットが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施の形態のピストンの各部位を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のピストンのスラスト側のピストンスカート部の構成を示した斜視図である。
【図3】図2のピストンの反スラスト側のピストンスカート部の構成を示した斜視図である。
【図4】ピストンに作用する力とモーメントを模式的に示した図である。
【図5】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、スラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図6】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、反スラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図7】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、スラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図8】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、反スラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図9】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後のスラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図10】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後の反スラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図11】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後のスラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図12】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後の反スラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図13】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後の衝突エネルギーを示した図である。
【図14】ピストンの挙動を説明するための圧縮行程における内燃機関の側断面図である。
【図15】ピストンの挙動を説明するための膨張行程における内燃機関の側断面図である。
【図16】ピストンの弾性変形を説明するためのピストンの側断面図である。
【図17】従来技術のピストンのスラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図18】従来技術のピストンの反スラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図19】従来技術のピストンのスラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図20】従来技術のピストンの反スラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
最初に、本発明に係る実施の形態の内燃機関の設計方法について説明する。この内燃機関の設計方法は、図1に示すようなピストン20のピストンスカート部22の構造に関して、スラスト側下部P3の剛性と反スラスト側上部P2の剛性を、それぞれ、スラスト側上部P1の剛性よりも高くして形成すると共に、反スラスト側下部P3でピストン20の重心位置及び慣性モーメントを調整する方法である。
【0027】
この内燃機関の設計方法では、図1に示すように、ピストン20のピストンスカート部22をスラスト側の上部P1、反スラスト側の上部P2、スラスト側の下部P3、反スラスト側の下部P4の合計4つの部分に大別し、ピストンスラップに至る過程で各部分に起こる現象に応じて、4つの部分に異なる剛性を持たせ、隙間拡大の抑制や衝突時の加振力の低減によりピストンスラップによって発生するエンジン騒音を改善する。
【0028】
つまり、スラスト側上部P1は、ピストンスラップによってライナー部に衝突する部分であり、衝突エネルギーを吸収するために剛性を低く設定する。また、スラスト側下部P2は、圧縮行程でピストン上部が反スラスト方向に回転運動する際にライナー部と接触する部分であり、弾性変形量(たわみ量)を低減して回転を抑制するために剛性を高く設定する。
【0029】
更に、反スラスト側上部P3は、圧縮行程でピストン上部が反スラスト方向に回転運動する際にライナー部と接触する部分であり、弾性変形量(たわみ量)を低減して回転を抑制するために剛性を高く設定する。また、反スラスト側下部P4は、ピストンスラップに対して影響が少ない部分であり、ピストン20の重心位置及び慣性モーメントを調整する部分として用いる。
【0030】
この方法によれば、ピストンスカート部22の構造によって、ピストンスカート部22の剛性を調整すると共に、ピストン20の重心位置と慣性モーメントも調整できるので、エンジン騒音が改善されたピストン構造を、容易に設計できるようになる。
【0031】
次に、本発明に係る実施の形態のピストン構造について説明する。このピストン20のピストンスカート部22は、部分的に異なった剛性を持つ。このピストンスカート部22の剛性の変化は、内面の構造の違いによって生じさせる。このピストン構造は、ピストン20のピストンスカート部22の構造に関して、図2に示すように、スラスト側上部P1では、シリンダのライナー部11に衝突する部分の内面側に窪み(凹部)23を設けることで部分的にピストンスカート部22の肉厚を減少させ、剛性を低下させる。スラスト側下部P3には内面側に一対のリブ(突条)24を設け、ピストン上下方向の曲げ剛性を向上させる。
【0032】
また、図3に示すように、反スラスト側上部P2と反スラスト側下部P4には内面側に一対のリブ25を設け、圧縮行程で側圧により弾性変形する部分の面剛性を向上させる。このリブ25は面剛性の向上が必要な部分を網羅し、ピストン20の重心位置及び慣性モーメントを調整する目的で、反スラスト側下部P4の任意の位置まで設ける。
【0033】
この構成により、ピストン20のスラスト側下部P3の剛性と反スラスト側上部P2の剛性を、それぞれ、スラスト側上部P1の剛性よりも高くする。また、反スラスト側下部P4に設けたリブ25の位置や幅、高さ、形状によりピストン20の重心位置及び慣性モーメントを調整する。
【0034】
この窪み23とリブ24、25の構成によれば、比較的簡単な構成で、ピストンスカート部22の各部位P1〜P4の剛性を変化させることができる。これにより、スラスト側上部P1の衝突点やスラスト側下部P3のライナー部11との接触点、及び、反スラスト側上部P2のライナー部11との接触点を調整することができる。
【0035】
その結果、ピストンスカート部22の弾性変形を抑制して、図14、図15に示すようなピストン20とライナー部11との間の隙間(クリアランス)を調整することができると共に、ピストンスラップ時の衝突エネルギーを緩和できる。その結果、ピストンスラップ騒音を低減できる。また、この構成によれば、ピストン20の外形形状(プロフィール)を調整することによって、幾何学的にピストン20とライナー部11との間の隙間を縮小する構造に比べて、摩擦損失が悪化することがない。
【0036】
そして、本発明に係る内燃機関は、上記のピストン構造のピストン20を用いる内燃機関であり、この内燃機関では、ピストンスラップによって発生するエンジン騒音を改善することができる。
【0037】
次に、この実施の形態のピストン構造を有したピストンにおけるシミュレーション計算結果について説明する。ピストンスラップの衝突エネルギー低減効果を検討するために、図4に示すモデルを用いて、図4に示す力及びモーメントの釣り合いから導出した運動方程式を解くことでピストン挙動を算出した。
【0038】
なお、図4に示す力とモーメントについては、Fgは筒内ガス圧力、Fixは慣性力(往復運動と直交する方向成分)、Fiyは慣性力(往復運動方向成分)、Mは慣性モーメント、Flはコンロッド反力、Fsはピストンスカート反力、Fplはピストン−シリンダ間摩擦力、Frlはピストンリング−シリンダ間摩擦力、Tpはピストン−コンロッド摩擦トルク、Gはピストンの重心位置を示す。
【0039】
このシミュレーション計算を用いて、図17〜図20で示した内燃機関の実働時におけるピストン挙動を再現した結果を図5〜図8に示す。シミュレーション計算の結果は実働時の計測結果を再現しており、シミュレーション計算で信頼できる結果が得られることが分かった。
【0040】
また、シミュレーション計算によってスカート部の各部の剛性を、表1のように変化させた場合のピストン挙動の変化を図9〜図12に示す。また、スラスト側上部P1の衝突エネルギーの比較を図13に示す。なお、太線Aが改善後を細線Bが改善前を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
この図9〜図13のシミュレーション計算結果から、本発明の内燃機関の設計方法、ピストン構造により、ピストンスラップ直前のスラスト側スカート上部P1のクリアランスが減少し、衝突エネルギーが減少することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関は、ピストンスカート部の構造によって、ピストンスカート部の剛性を調整して、エンジン騒音を改善することができるので、自動車搭載等の内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関として利用できる。
【符号の説明】
【0044】
10 シリンダ
11 ライナー部
20 ピストン
21 ピストンピン
22 ピストンスカート部
23 窪み
24、25 リブ
30 クランク軸
40 コンロッド
P1 スラスト側上部
P2 反スラスト側上部
P3 スラスト側下部
P4 反スラスト側下部
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のピストンのピストンスカート部の剛性を調整することでエンジン騒音を改善することができる内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストン−クランク機構を用いた内燃機関では、図14及び図15に示すように、シリンダ10内におけるピストン20の往復運動をクランク軸30の回転運動に変換して動力を発生させている。このとき、ピストン20には筒内ガス圧力及び運動部分の慣性力からなる往復運動方向の力Fだけではなく、コンロッド40の揺動角により往復運動と直交する方向の力(側圧)Rが作用する。つまり、ピストン20には、往復運動だけではなく、シリンダ10のライナー部11との隙間で、往復運動と直交する方向の並進運動とピストンピン21回りの回転運動が発生する。
【0003】
4サイクルエンジンの圧縮行程では、図14に示すように、側圧Rが反スラスト方向に作用するため、ピストン20はライナー部11との間の隙間(クリアランス)の範囲内で反スラスト側に片寄った状態で上昇する。その後、図15に示すように、圧縮上死点付近で側圧Rの向きが反転すると、ピストン20はスラスト方向に急速な並進又は回転、あるいはその両方を伴う運動を行い、スラスト側のライナー部11に衝突する。この現象はピストンスラップと呼ばれ、エンジン騒音を発生させる要因の一つになっている。
【0004】
このピストンスラップで、ピストン20側のライナー部11と衝突する部分は、ピストンスカート部22となるので、このピストンスカート部22は騒音の観点から重要な部位となっている。また、このピストンスカート部22はピストン20の往復運動の際にライナー部11と摺動するので、摩擦抵抗を発生する部分でもあり、摩擦損失の観点からも重要な部位となっている。
【0005】
特に、騒音対策の観点からは、ピストンスカート部22の形状(プロフィール)に対して、ピストン20とライナー部11の間の隙間を狭めることが好ましく、これにより、ピストン20の姿勢を安定させる効果と、ピストンスラップの際に反スラスト側からスラスト側への移動期間を短縮させて側圧Rによる加速期間を短縮する効果を奏することができる。また、この加速期間の短縮により、ピストン20がライナー部11へ衝突する際の衝突速度を減少させて、衝突エネルギーを緩和させることができ、騒音を低減する効果が得られる。
【0006】
一方、摩擦対策の観点からは、ピストン20がライナー部11と摺動することによる発生する抵抗を低減する必要がある。そのためにはピストン20とライナー部11の間の隙間は広く設定することが好ましい。つまり、騒音対策と摩擦対策で必要な要件が背反する。
【0007】
本発明者は、内燃機関の実働時のピストンとライナー部間の隙間(クリアランス)を測定した結果、ピストンスラップの衝突エネルギーに影響する移動直前のスラスト側の隙間が、単にピストンの外形形状(プロフィール)によってのみ決まるのではなく、側圧によってピストンが反スラスト側に押し付けられる際のピストンスカート部の弾性変形の影響を受けて決まるとの知見を得た。
【0008】
図16に示す各部位P1〜P4に関する内燃機関の実働時の隙間を測定した結果を図17〜図20に示す。圧縮行程における図17に示すスラスト側上部P1の変位量(最大変位量P1m)は、図18に示す反スラスト側上部P2の変位量(最大変位量P2m)よりも明らかに大きい。これは、ピストンが剛体運動だけしているとすると説明ができず、ピストンが弾性変形していると考えることで説明できる。また、この時、図19に示すスラスト側下部P3の変位量が少ないことから、圧縮行程でのピストン挙動は並進運動というよりも回転運動をしていることが分かる。
【0009】
以上の結果から圧縮行程におけるピストン挙動を整理すると、側圧が反スラスト方向に作用することでピストン上部がピストンピン21の回りに反スラスト方向に回転する(図16のピストン図では時計回りの)モーメントMが発生し、反スラスト側の隙間(図18の反スラスト側上部P2の変位量)分回転してピストンスカート部22の上部P2が反スラスト側ライナー部11に接触する。更に、モーメントMが作用し続けることでピストンスカート部22の反スラスト側上部P2が圧縮されるように弾性変形し、反対側のスラスト側の隙間(図17のスラスト側上部P1の変位量)が増加する。この時同時にピストンスカート部22のスラスト側下部P3が撓むことでピストンスカート部22の反スラスト側下部P4の隙間(図20の反スラスト側下部P4の変位量)が増加する。
【0010】
ここで、ピストンスカート部22の下部P3,P4の剛性値はピストンスカート部22の上部P1,P2の剛性値よりも低いため、隙間の増加量が大きい。上死点を過ぎてモーメントMの向きが反転すると、ピストン上部がスラスト側に急速に回転してピストンスラップが発生する。
【0011】
以上の挙動解析から、ピストンスラップに大きな影響を与えるピストンスカート部22のスラスト側上部P1の隙間に関しては、ピストンスカート部22の外形形状だけでなくピストンスカート部22の剛性が関与することが分かり、ピストンスカート部22の各部分の剛性を適切に設定することによって、内燃機関の実働時における各隙間を調整でき、ピストンスラップ騒音を改善することができるとの知見を得た。
【0012】
これに関連して、シリンダボアの内面に衝突する際の衝撃力を緩和し、シリンダボアとのクリアランスを最適化するために、内燃機関の運転でスカート部に温度分布が与えられた場合に、スカート部のスラスト側肩部の剛性と反スラスト側のインロー部の剛性とが略同じになるようにスカート部の剛性を設定する内燃機関用ピストンが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−107477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ピストンスカート部の構造によって、ピストンスカート部の各部分の剛性を調整して、エンジン騒音を改善することができる内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記のような目的を達成するための本発明の内燃機関の設計方法は、ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側下部の剛性と反スラスト側上部の剛性を、それぞれ、スラスト側上部の剛性よりも高くして形成すると共に、反スラスト側下部でピストンの重心位置及び慣性モーメントを調整することを特徴とする方法である。
【0016】
この内燃機関の設計方法では、図1に示すように、ピストン20のピストンスカート部22をスラスト側の上部P1、反スラスト側の上部P2、スラスト側の下部P3、反スラスト側の下部P4の合計4つの部分に大別し、ピストンスラップに至る過程で各部分に起こる現象に応じて、4つの部分に異なる剛性を持たせ、隙間拡大の抑制や衝突時の加振力の低減によりピストンスラップによって発生するエンジン騒音を改善する。
【0017】
この方法によれば、ピストンスカート部の構造によって、ピストンスカート部の剛性を調整すると共に、ピストンの重心位置と慣性モーメントも調整できるので、エンジン騒音が改善されたピストン構造を、容易に設計できるようになる。
【0018】
また、上記のような目的を達成するための本発明のピストン構造は、ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側上部では、シリンダのライナー部に衝突する部分の内面側に窪みを設け、スラスト側下部及び反スラスト側上部にはそれぞれの内面側にリブを設けて、前記スラスト側上部の剛性よりも前記スラスト側下部の剛性と前記反スラスト側上部の剛性を、それぞれ高くして形成する。
【0019】
この構成によれば、窪みとリブという比較的簡単な構成で、ピストンスカート部の剛性を変化することができる。これにより、ピストンスカート部の弾性変形を抑制して、ピストンとライナー部との間の隙間(クリアランス)を調整することができると共に、ピストンスラップ時の衝突エネルギーを緩和できる。その結果、ピストンスラップ騒音を低減できる。
【0020】
この構成によれば、ピストンの外形形状(プロフィール)を調整することによって、幾何学的にピストンとライナー部との間の隙間を縮小する構造に比べて、摩擦損失が悪化するというデメリットが生じない。
【0021】
上記ピストンにおいて、反スラスト側下部をピストンの重心位置及び慣性モーメントを調整する部分とすると、ピストンスラップ対策用にスラスト側上下部と反スラスト側上部の剛性を決めた後に、ピストンの重心位置と慣性モーメントをリブや凹部やこれらの組み合わせ等の比較的簡単な構成で、調整できるようになる。
【0022】
また、上記のような目的を達成するための本発明の内燃機関は、上記のピストン構造を用いる内燃機関であり、この内燃機関では、ピストンスラップによって発生するエンジン騒音を改善できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関によれば、ピストンスカート部の部分的な剛性を個別に設定することで、スカートの弾性変形を抑制してピストンとライナー部間の隙間を制御することと、ピストンスラップ時の衝突エネルギーを緩和することにより、エンジン騒音を低減することができる。しかも、ピストンの外形形状を調整することにより幾何学的に隙間を縮小する方法及び構成に対して、摩擦損失が悪化するというデメリットが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施の形態のピストンの各部位を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のピストンのスラスト側のピストンスカート部の構成を示した斜視図である。
【図3】図2のピストンの反スラスト側のピストンスカート部の構成を示した斜視図である。
【図4】ピストンに作用する力とモーメントを模式的に示した図である。
【図5】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、スラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図6】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、反スラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図7】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、スラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図8】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、反スラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図9】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後のスラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図10】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後の反スラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図11】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後のスラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図12】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後の反スラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図13】本発明に係る実施の形態のピストンのシミュレーション計算結果での、改善前と改善後の衝突エネルギーを示した図である。
【図14】ピストンの挙動を説明するための圧縮行程における内燃機関の側断面図である。
【図15】ピストンの挙動を説明するための膨張行程における内燃機関の側断面図である。
【図16】ピストンの弾性変形を説明するためのピストンの側断面図である。
【図17】従来技術のピストンのスラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図18】従来技術のピストンの反スラスト側上部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図19】従来技術のピストンのスラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【図20】従来技術のピストンの反スラスト側下部のピストンスカート部の隙間を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
最初に、本発明に係る実施の形態の内燃機関の設計方法について説明する。この内燃機関の設計方法は、図1に示すようなピストン20のピストンスカート部22の構造に関して、スラスト側下部P3の剛性と反スラスト側上部P2の剛性を、それぞれ、スラスト側上部P1の剛性よりも高くして形成すると共に、反スラスト側下部P3でピストン20の重心位置及び慣性モーメントを調整する方法である。
【0027】
この内燃機関の設計方法では、図1に示すように、ピストン20のピストンスカート部22をスラスト側の上部P1、反スラスト側の上部P2、スラスト側の下部P3、反スラスト側の下部P4の合計4つの部分に大別し、ピストンスラップに至る過程で各部分に起こる現象に応じて、4つの部分に異なる剛性を持たせ、隙間拡大の抑制や衝突時の加振力の低減によりピストンスラップによって発生するエンジン騒音を改善する。
【0028】
つまり、スラスト側上部P1は、ピストンスラップによってライナー部に衝突する部分であり、衝突エネルギーを吸収するために剛性を低く設定する。また、スラスト側下部P2は、圧縮行程でピストン上部が反スラスト方向に回転運動する際にライナー部と接触する部分であり、弾性変形量(たわみ量)を低減して回転を抑制するために剛性を高く設定する。
【0029】
更に、反スラスト側上部P3は、圧縮行程でピストン上部が反スラスト方向に回転運動する際にライナー部と接触する部分であり、弾性変形量(たわみ量)を低減して回転を抑制するために剛性を高く設定する。また、反スラスト側下部P4は、ピストンスラップに対して影響が少ない部分であり、ピストン20の重心位置及び慣性モーメントを調整する部分として用いる。
【0030】
この方法によれば、ピストンスカート部22の構造によって、ピストンスカート部22の剛性を調整すると共に、ピストン20の重心位置と慣性モーメントも調整できるので、エンジン騒音が改善されたピストン構造を、容易に設計できるようになる。
【0031】
次に、本発明に係る実施の形態のピストン構造について説明する。このピストン20のピストンスカート部22は、部分的に異なった剛性を持つ。このピストンスカート部22の剛性の変化は、内面の構造の違いによって生じさせる。このピストン構造は、ピストン20のピストンスカート部22の構造に関して、図2に示すように、スラスト側上部P1では、シリンダのライナー部11に衝突する部分の内面側に窪み(凹部)23を設けることで部分的にピストンスカート部22の肉厚を減少させ、剛性を低下させる。スラスト側下部P3には内面側に一対のリブ(突条)24を設け、ピストン上下方向の曲げ剛性を向上させる。
【0032】
また、図3に示すように、反スラスト側上部P2と反スラスト側下部P4には内面側に一対のリブ25を設け、圧縮行程で側圧により弾性変形する部分の面剛性を向上させる。このリブ25は面剛性の向上が必要な部分を網羅し、ピストン20の重心位置及び慣性モーメントを調整する目的で、反スラスト側下部P4の任意の位置まで設ける。
【0033】
この構成により、ピストン20のスラスト側下部P3の剛性と反スラスト側上部P2の剛性を、それぞれ、スラスト側上部P1の剛性よりも高くする。また、反スラスト側下部P4に設けたリブ25の位置や幅、高さ、形状によりピストン20の重心位置及び慣性モーメントを調整する。
【0034】
この窪み23とリブ24、25の構成によれば、比較的簡単な構成で、ピストンスカート部22の各部位P1〜P4の剛性を変化させることができる。これにより、スラスト側上部P1の衝突点やスラスト側下部P3のライナー部11との接触点、及び、反スラスト側上部P2のライナー部11との接触点を調整することができる。
【0035】
その結果、ピストンスカート部22の弾性変形を抑制して、図14、図15に示すようなピストン20とライナー部11との間の隙間(クリアランス)を調整することができると共に、ピストンスラップ時の衝突エネルギーを緩和できる。その結果、ピストンスラップ騒音を低減できる。また、この構成によれば、ピストン20の外形形状(プロフィール)を調整することによって、幾何学的にピストン20とライナー部11との間の隙間を縮小する構造に比べて、摩擦損失が悪化することがない。
【0036】
そして、本発明に係る内燃機関は、上記のピストン構造のピストン20を用いる内燃機関であり、この内燃機関では、ピストンスラップによって発生するエンジン騒音を改善することができる。
【0037】
次に、この実施の形態のピストン構造を有したピストンにおけるシミュレーション計算結果について説明する。ピストンスラップの衝突エネルギー低減効果を検討するために、図4に示すモデルを用いて、図4に示す力及びモーメントの釣り合いから導出した運動方程式を解くことでピストン挙動を算出した。
【0038】
なお、図4に示す力とモーメントについては、Fgは筒内ガス圧力、Fixは慣性力(往復運動と直交する方向成分)、Fiyは慣性力(往復運動方向成分)、Mは慣性モーメント、Flはコンロッド反力、Fsはピストンスカート反力、Fplはピストン−シリンダ間摩擦力、Frlはピストンリング−シリンダ間摩擦力、Tpはピストン−コンロッド摩擦トルク、Gはピストンの重心位置を示す。
【0039】
このシミュレーション計算を用いて、図17〜図20で示した内燃機関の実働時におけるピストン挙動を再現した結果を図5〜図8に示す。シミュレーション計算の結果は実働時の計測結果を再現しており、シミュレーション計算で信頼できる結果が得られることが分かった。
【0040】
また、シミュレーション計算によってスカート部の各部の剛性を、表1のように変化させた場合のピストン挙動の変化を図9〜図12に示す。また、スラスト側上部P1の衝突エネルギーの比較を図13に示す。なお、太線Aが改善後を細線Bが改善前を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
この図9〜図13のシミュレーション計算結果から、本発明の内燃機関の設計方法、ピストン構造により、ピストンスラップ直前のスラスト側スカート上部P1のクリアランスが減少し、衝突エネルギーが減少することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関は、ピストンスカート部の構造によって、ピストンスカート部の剛性を調整して、エンジン騒音を改善することができるので、自動車搭載等の内燃機関の設計方法、ピストン構造及び内燃機関として利用できる。
【符号の説明】
【0044】
10 シリンダ
11 ライナー部
20 ピストン
21 ピストンピン
22 ピストンスカート部
23 窪み
24、25 リブ
30 クランク軸
40 コンロッド
P1 スラスト側上部
P2 反スラスト側上部
P3 スラスト側下部
P4 反スラスト側下部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の設計方法であって、ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側上部の剛性よりも、スラスト側下部の剛性と反スラスト側上部の剛性がそれぞれ高くなるように設計するステップと、ピストンの重心位置及び慣性モーメントの調整を反スラスト側下部において行うステップとを含むことを特徴とする内燃機関の設計方法。
【請求項2】
ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側上部では、シリンダのライナー部に衝突する部分の内面側に窪みを設け、スラスト側下部及び反スラスト側上部にはそれぞれの内面側にリブを設けて、前記スラスト側上部の剛性よりも前記スラスト側下部の剛性と前記反スラスト側上部の剛性を、それぞれ高くして形成することを特徴とするピストン構造。
【請求項3】
反スラスト側下部をピストンの重心位置及び慣性モーメントを調整する部分としたことを特徴とする請求項2記載のピストン構造。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のピストン構造を用いることを特徴とする内燃機関。
【請求項1】
内燃機関の設計方法であって、ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側上部の剛性よりも、スラスト側下部の剛性と反スラスト側上部の剛性がそれぞれ高くなるように設計するステップと、ピストンの重心位置及び慣性モーメントの調整を反スラスト側下部において行うステップとを含むことを特徴とする内燃機関の設計方法。
【請求項2】
ピストンのピストンスカート部の構造に関して、スラスト側上部では、シリンダのライナー部に衝突する部分の内面側に窪みを設け、スラスト側下部及び反スラスト側上部にはそれぞれの内面側にリブを設けて、前記スラスト側上部の剛性よりも前記スラスト側下部の剛性と前記反スラスト側上部の剛性を、それぞれ高くして形成することを特徴とするピストン構造。
【請求項3】
反スラスト側下部をピストンの重心位置及び慣性モーメントを調整する部分としたことを特徴とする請求項2記載のピストン構造。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のピストン構造を用いることを特徴とする内燃機関。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−17263(P2011−17263A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161178(P2009−161178)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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