説明

内燃機関制御装置

【課題】制御及び演算が単純であり、気筒数の異なる内燃機関に於いても適用可能であり、且つ安価な、エンジンを素早く再始動できる内燃機関制御装置を提供する。
【解決手段】複数の気筒のピストンの夫々の上死点に対応する位置に挟まれた複数の中間位置から夫々識別信号を出力する機能を有し、且つ、隣り合う前記中間位置から夫々出力する前記識別信号を異なる種類の識別信号とするように構成されたクランク角度検出手段と、クランク角度範囲記憶手段に記憶されたクランク角度範囲とクランク角度検出手段により出力された識別信号の位置に対応するクランク角度とに基づいて、内燃機関の停止時に於けるピストンの停止位置を特定するピストン位置特定手段とを備え、このピストン位置特定手段により特定されたピストンの停止位置に基づいて、内燃機関の再始動時に最初に燃料を供給すべき気筒を特定するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関を制御する内燃機関制御装置、特に、クランク角度センサを用いて内燃機関のピストンの位置を特定して内燃機関を制御するようにした内燃機関制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばアイドルストップ車に於いて、アイドルストップにより内燃機関(以下、エンジンと称する)を停止させた後、エンジンの再始動を行なう際に、通常のエンジンの始動時と同様のピストン位置特定手法を用いてピストンの停止位置を特定し、その特定したピストンの停止位置に基づいてエンジンの再始動の当初からシーケンシャルに燃料の噴射制御を行なうようにした装置がある。
【0003】
しかし、このような従来の装置の場合、アイドルストップ後のエンジンの再始動に通常のエンジン始動時と同様のピストン位置特定手法を用いるので、アイドルストップ後のエンジンの再始動に多くの時間がかかるといった問題がある。
【0004】
そこで、従来、アイドルストップに於けるエンジン停止時のピストン位置を記憶しておき、エンジンの再始動時に、その記憶したピストン位置を用いることによりピストン位置を特定する時間の短縮を図るようにした装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
又、従来、エンジンの停止時にエンジンの負荷・補機といった装置を制御することで、エンジンのピストンの位置を目標位置で停止させるようにした装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
更に、従来、エンジンを停止させる過程で、エンジンの運動を表すパラメータとエンジンの運動を妨げるパラメータとに基づいて、エンジンの停止位置即ちピストンの停止位置を推定するようにした装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
又、従来、エンジン停止時にクランク軸が逆転することがあってもクランク角度を正確に検出することを可能としたセンサを用い、エンジン停止時のピストン位置を正確に特定するようにした装置が提案されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−83093号公報
【特許文献2】特許第3896640号公報
【特許文献3】特許第4244651号公報
【特許文献4】特開2005−233622号公報
【特許文献5】特開2005−256842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示された従来の装置の場合、エンジンの停止時に於ける揺り戻し(逆転)に対する対策が不十分であり、正確なエンジン停止位置の記憶ができない恐れがある。
【0010】
又、特許文献2に示された従来の装置の場合、エンジンを目標位置で停止させるための負荷・補機といった装置の制御が必要なため、制御が複雑であり、負荷・補機といった装置が異なれば、制御内容を変える必要がある。
【0011】
更に、特許文献3に示された従来の装置の場合、回転運動パラメータとしてのエンジンの運動を表すパラメータとエンジンの運動を妨げるパラメータを用いての演算が複雑であると同時に、エンジン固有のパラメータを物理モデル又は実験データにより各々求める必要があり、物理モデルを使用するための高価な演算装置も必要となる。
【0012】
更に、特許文献4及び特許文献5に示された従来の装置の場合、逆転検出機能を持つクランク角度センサを用いるので、通常のクランク角度センサを用いる場合に比べてコストがかかる。又、仮に、正確な角度を直接出力するエンコーダをクランク角度センサとして使用するとしても、エンコーダ自体は高価であり、同時に、エンコーダの出力信号をデコードするための高価な演算装置も必要となる。
【0013】
この発明は、前述のような従来の装置に於ける課題を解決するためになされたものであり、制御及び演算が単純であり、気筒数の異なる内燃機関に於いても適用可能であり、且つ安価な、内燃機関制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明による内燃機関制御装置は、複数の気筒を持つ内燃機関のクランク角度に対応したクランク角度信号を出力するクランク角度検出手段と、前記クランク角度信号に基づいて前記内燃機関の停止時のクランク角度範囲を記憶するクランク角度範囲記憶手段と、前記クランク角度信号に基づいて前記複数の気筒のピストン位置を特定するピストン位置特定手段とを備えた内燃機関制御装置であって、前記クランク角度検出手段は、前記複数の気筒のピストンの夫々の上死点に対応する位置に挟まれた複数の中間位置から夫々識別信号を出力する機能を有し、且つ、隣り合う前記中間位置から夫々出力する前記識別信号を異なる種類の識別信号とし、前記ピストン位置特定手段は、前記クランク角度範囲記憶手段に記憶された前記クランク角度範囲と前記クランク角度検出手段により出力された前記識別信号の位置に対応するクランク角度とに基づいて、前記内燃機関の停止時に於ける前記ピストンの停止位置を特定し、前記ピストン位置特定手段により特定された前記ピストンの停止位置に基づいて、前記内燃機関の再始動時に最初に燃料を供給すべき気筒を特定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明による内燃機関制御装置は、制御及び演算が単純であり、異なる気筒数の内燃機関に於いても適用可能であり、従来と同様の安価なクランク角度センサを使用することができ、容易、且つ安価に内燃機関の再始動時のピストン位置を特定することができ、最初に燃料が供給される気筒にて確実に点火して素早く内燃機関を再始動することできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の全体の構成を内燃機関と共に示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置に於けるクランク角度センサのシグナルロータの構成を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置に於けるクランク角度センサの出力波形とエンジン停止の範囲及び燃焼サイクルとの関係を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【0017】
【図6】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【図7】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【図8】この発明の実施の実施例1による内燃機関制御装置の動作の概略を説明するブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置に於けるクランク角度センサのシグナルロータの構成を示す説明図である。
【0018】
【図11】この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置に於けるクランク角度センサの出力波形とエンジン停止の範囲及び燃焼サイクルとの関係を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【図13】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【図14】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【図15】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【図16】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【図17】この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1.
以下、図面を参照して、この明の実施の形態1による内燃機関制御装置について説明する。図1は、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の全体の構成を内燃機関と共に示す説明図である。図1に示す内燃機関制御装置は、4気筒4サイクルのエンジンに適用したものである。
【0020】
図1に於いて、エンジン制御ユニット(以下、ECUと称する)内に設けられたアイドルストップ制御装置3は、マイクロコンピュータ等を含み、アイドルストップ制御部31と、内燃機関制御部32とを有し、エンジン7を電子的に制御する。速度センサ5は、自車の速度を測定し、その測定した速度に対応する車速信号Bを発生してアイドルストップ制御装置3に入力する。又、図示していないが、アイドルストップ制御装置3は、後述するクランク角度信号に基づいて内燃機関の停止時のクランク角度範囲を記憶するクランク角度範囲記憶手段と、クランク角度信号に基づいて複数の気筒のピストン位置を特定するピストン位置特定手段とを備えている。
【0021】
クランク角度センサ6は、エンジン7のクランクシャフト13と共に回転するシグナルロータ61と、このシグナルロータ61の外周部に間隙を介して対抗する磁気検出部62とを備えている。シグナルロータ61は、後述するように、外周部に所定の間隙を介して設けられた複数の磁性体により形成された歯を備えている。磁気検出部62は、シグナルロータ61の歯が対向間隙を通過することによる磁気変化を電気信号に変換し、クランク軸の回転角度(以下、クランク角度と称する)に対応したクランク角度信号Dを発生してアイドルストップ制御装置3に入力する。
【0022】
後述する♯1、♯2、♯3、及び♯4の4つの気筒に対応して設けられた4個のインジェクタ8は、吸気マニホールド内に夫々所定のタイミングで所定の量の燃料を噴射する。前記4つの気筒♯1〜♯4に夫々設けられた4個の点火プラグ9は、所定のタイミングで各気筒の燃焼室内の燃料に点火してこれを燃焼させる。
【0023】
アクセルポジションセンサ11は、ドライバのアクセル踏み込みによるアクセル開度を検出し、その検出したアクセル開度に対応したアクセル開度信号Hを発生してアイドルストップ制御装置3に入力する。モータ14は、クランクシャフト13に直結されている。カム角度センサ15は、エンジン7の夫々の気筒の吸気弁及び排気弁を駆動するカムの回転角度を検出し、その検出したカム角度に対応したカム角度信号Cを発生してアイドルストップ制御装置3に入力する。
【0024】
アイドルストップ制御装置3は、入力された車速信号B、アクセルポジション信号H、カム角度信号C、クランク角度信号D等の各センサからの信号等に基づいて、インジェクタ駆動信号E、及び点火プラグ駆動信号Fを演算し出力する。インジェクタ8を駆動するためのアクチュエータは、アイドルストップ制御装置3からのインジェクタ駆動信号Eに基づいて夫々のインジェクタ8を駆動し、夫々のインジェクタ8から所定のタイミングで所定量の燃料を噴射させる。又、夫々の点火プラグ9を駆動する点火装置は、アイドルストップ制御装置3からの点火プラグ駆動信号Fに基づいて駆動され、夫々の点火プラグ9から所定のタイミングで火花放電を発生させる。
【0025】
次に、クランク角度センサ6の構成について説明する。図2は、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置に於けるクランク角度センサのシグナルロータの構成を示す説明図である。図2に於いて、シグナルロータ61は、エンジンの気筒の数に対する約数のうちの最大の素数に相当する数の種類の識別信号を発生するように構成されている。この実施の形態1の場合、エンジンの気筒数は「4」であり、「4」に対する約数である「1」と「2」のうちの最大の素数は「2」であるので、その最大の素数「2」に相当する2種類の識別信号1、識別信号2を発生するように構成されている。
【0026】
シグナルロータ61の構成について更に詳しく述べれば、シグナルロータ61は、その外周部に、33個の磁性体からなる歯(実線により示している)を備えている。これ等の33個の歯は、シグナルロータの軸心を中心として10度間隔でシグナルロータ61の外周部を等分した36箇所の位置のうち、33箇所に設けられている。そして、シグナルロータ61の外周部の前記36箇所の位置のうち、残りの3箇所は、歯の存在しない欠け歯(破線により示している)となっている。
【0027】
4気筒4サイクルエンジンの場合、4個の気筒の夫々のピストンは、クランク角度180°CA、360°CA、540°CA、及び720°CA毎に順次上死点に達するように構成されている。そこで、シグナルロータ61は、その外周部に180°間隔でピストンの上死点対応位置が設定されており、これ等の2箇所の上死点対応位置の両側に歯B05、A05が配置されている。シグナルロータ61に於けるこれ等の2個の上死点対応位置は、夫々2個の気筒のピストンの上死点に対応しているが、その詳細については図3により後述する。
【0028】
今、図2に於ける最下方の上死点対応位置の左側の歯をA05とし、この歯A05を含めて時計回りに9個目の欠け歯をA85とする。そして、この欠け歯A85の次の歯をB85とし、この歯B85を含めて時計回りで9個目の歯をB05とする。更に、この歯B05の次の歯をA05とし、この歯A05を含めて時計回りで8個目と9個目が欠け歯であり、その9個目の欠け歯をA85とする。そして、この欠け歯A85の次の歯をB85とし、この歯B85を含めて時計回りで9個目の歯をB05とする。
【0029】
ここで、図2の左方に於ける欠け歯A85と、その両側の歯(そのうちの一つは歯B85)とにより識別信号1が形成される。又、図2の右方の欠け歯A85と、その2つ手前の歯とその次の欠け歯と、欠け歯A85の次の歯とにより識別信号2が形成される。前述したようにこの実施の形態1の場合、識別信号1と識別信号2との2種類の識別信号が形成されている。
【0030】
識別信号1、識別信号2は、図2に示すように、シグナルロータ61の軸心の周りに180度隔てた位置に設定されている。この識別信号1、識別信号2は、後述するようにクランク角度信号Dから4つの気筒のピストンの位置を夫々特定するために設定されている。
【0031】
尚、実施の形態1では、欠け歯の位置を設けることで識別信号1、識別信号2を形成しているが、識別信号1、識別信号2を出力できる設定となっていれば、欠け歯以外の方式としてもよい。
【0032】
図3は、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置に於けるクランク角度センサの出力波形とエンジンの停止範囲及び燃焼サイクルとの関係を示す説明図である。図3に於いて、クランク角度信号の波形は、前述の図2に示すクランク角度センサのシグナルロータ61がクランクシャフト13の回転に同期して反時計方向に回転することにより磁気検出部62から出力される波形であり、図2に於けるシグナルロータ61の最下方の右側の歯B05を基点として順次、歯A05、・・A85、B85、・・B05、A05、・・A85、B85、・・B05、に対応して発生するクランク角度信号の波形を、シグナルロータ61の歯若しくは欠け歯と同一符号で示している。
【0033】
この実施の形態1では、エンジン7は気筒1、気筒2、気筒3、及び気筒4の4つの気筒を備えており、♯1は気筒1を、♯2は気筒2を、♯3は気筒3を、♯4は気筒4を夫々意味する。各気筒♯1〜♯4は、クランク角度720°CA、即ちクランクシャフト13の2回転で、「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気」のサイクルを一巡する。
【0034】
図3に於いて、基点のクランク角度信号B05に対応するクランク角度番号CRKNUM(クランク角度CAと等価。以下の説明ではクランク角度番号CRKNUMと称する)は「0」、次のクランク角度信号A05に対応するクランク角度番号CRKNUMは「1」、以下順次発生するクランク角度信号に対応してクランク角度番号CRKNUMは「2」、「3」、・・・「71」となり、最後に基点のクランク角度信号B05に戻ってクランク角度番号CRKNUMは「0」となる。
【0035】
従って、図3に示すように、クランクシャフト13が2回転する間に、先ず識別信号1がクランク角度番号CRKNUM「8」、「9」、「10」に対応して発生し、次に識別信号2がクランク角度番号CRKNUM「25」、「26」、「27」、「28」に対応して発生し、次に識別信号1がクランク角度番号CRKNUM「44」、「45」、「46」に対応して発生し、次に識別信号2がクランク角度番号CRKNUM「61」、「62」、「63」、「64」に対応して発生する。
【0036】
気筒♯2のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「0」に於いて上死点♯2TDCに達し、気筒♯1のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「18」に於いて上死点♯1TDCに達し、気筒♯3のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「36」に於いて上死点♯3TDCに達し、気筒♯4のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「54」に於いて上死点♯4TDCに達する。
【0037】
図3に示すように、気筒♯1は、クランク角度番号CRKNUM「0」からクランク角度番号CRKNUM「11」の間が圧縮サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「11」からクランク角度番号CRKNUM「36」の間が燃焼サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「36」からクランク角度番号CRKNUM「54」の間が排気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「54」からクランク角度番号CRKNUM「0」の間が吸気サイクルである。
【0038】
気筒♯3は、クランク角度番号CRKNUM「0」からクランク角度番号CRKNUM「18」の範囲が吸気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「18」からクランク角度番号CRKNUM「29」の間が圧縮サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「29」からクランク角度番号CRKNUM「54」の間が燃焼サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「54」からクランク角度番号CRKNUM「0」の間が排気サイクルである。
【0039】
気筒♯4は、クランク角度番号CRKNUM「0」からクランク角度番号CRKNUM「18」の間が排気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「18」からクランク角度番号CRKNUM「36」の間が吸気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「36」からクランク角度番号CRKNUM「47」の間が圧縮サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「47」からクランク角度番号CRKNUM「0」の間が燃焼サイクルである。
【0040】
気筒♯2は、クランク角度番号CRKNUM「18」からクランク角度番号CRKNUM「36」の間が排気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「36」からクランク角度番号CRKNUM「54」の間が吸気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「54」からクランク角度番号CRKNUM「65」の間が圧縮サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「65」からクランク角度番号CRKNUM「18」の間で燃焼サイクルである。
【0041】
次に、エンジン7の停止範囲について説明する。エンジン7は、構造上、気筒内の圧力(以下、シリンダ圧力と称する)等の影響により、停止直前に、複数の気筒により隣接して発生する上死点TDCの間で、正転と逆転を繰り返すことによる振動の後に停止する。
【0042】
即ち、図3に示すように、エンジン7の停止直前に、例えばクランク角度番号CRKNUM「8」〜「10」の識別信号1を検出した場合、気筒♯2の上死点#2TDCと気筒1の上死点#1TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒♯1の上死点#1TDCを乗り越えた後に気筒♯1の上死点#1TDCと気筒3の上死点#3TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、#2TDCから#1TDCを経て#3TDCに至るまでの範囲、即ちクランク角度番号CRKNUM「0」〜「36」がエンジンの停止範囲となる。前述のアイドルストップ制御装置3に設けられているクランク角度範囲記憶手段は、エンジン停止範囲として、クランク角度番号CRKNUM「0」〜「36」を記憶する。
【0043】
前述のアイドルストップ制御装置3に設けられているピストン位置特定手段は、クランク角度範囲記憶手段に記憶されているエンジン停止範囲を、記憶されたクランク角度範囲の先頭から最初に現われる第1の識別信号の先頭までの第1の範囲と、第1の識別信号の先頭から第1の信号の次に現れる第2の識別信号の先頭までの第2の範囲と、第2の識別信号の先頭から記憶されたクランク角度範囲の後端までの第3の範囲との、3つの範囲に分けてクランク角度を算出する。即ち、具体的には、ピストン位置特定手段は、クランク角度範囲記憶手段に記憶されているクランク角度番号CRKNUM「0」〜「36」のうち、クランク角度番号CRKNUM「0」〜「8」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「8」〜「25」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「25」〜「36」を「範囲3」として算出する。アイドルストップ制御装置3は、ピストン位置特定手段により算出された「範囲1」〜「範囲3」の夫々のクランク角度番号の範囲に基づいて、以下のようにしてエンジン停止時のピストン位置を特定し、エンジンの再始動を迅速に行う。
【0044】
図4は、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「8」〜「10」の識別信号1を検出した場合、つまり前述の図3に例示した場合を示している。そして、「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0045】
即ち、図4に於いて、エンジンの再始動開始後、「8歯以内に識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は図3に示す「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「0」〜「8」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「10」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「0」〜「8」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯3」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯1」及び燃料供給済みの気筒「♯3」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯3」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯3」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯1」及び燃料供給済みの気筒「♯3」であるので、これ等の気筒のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0046】
又、図4に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は図3に示す「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「8」〜「25」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「28」である。この場合、エンジンの再始動後「9歯以上経過して識別信号2を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「8」〜「17」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯3」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯3」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯3」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯4」及び燃料供給済みの気筒「♯3」であるので、これ等の気筒のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0047】
一方、エンジンの再始動後「8歯以内に識別信号2を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「18」〜「25」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯4」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯4」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯4」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯3」及び燃料供給済みの気筒「♯4」であるので、これ等の気筒のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0048】
更に、図4に於いて、エンジンの再始動開始後、「9歯以上後に識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は図3に示す「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「25」〜「36」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「46」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「25」〜「36」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯4」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯4」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯4」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯4」であるので、この気筒「♯4」に初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0049】
次に、図5は、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「25」〜「28」の識別信号2を検出した場合に於ける「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0050】
エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「25」〜「28」の識別信号2を検出した場合、エンジン停止範囲は、気筒♯1の上死点#1TDCと気筒3の上死点#3TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒♯3の上死点#3TDCを乗り越えた後に気筒♯3の上死点#3TDCと気筒♯4の上死点#4TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、エンジン停止範囲は#1TDCから#3TDCを経て#4TDCまでの範囲となる。
【0051】
ここで、クランク角度番号CRKNUM「18」〜「25」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「25」〜「44」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「44」〜「54」の範囲を「範囲3」とすると、全エンジン停止範囲は、「範囲1」〜「範囲3」を加算した範囲であるクランク角度番号CRKNUM「18」〜「54」となる。
【0052】
図5に於いて、エンジンの再始動開始後、「7歯以内に識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「18」〜「25」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「28」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「18」〜「25」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯4」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯3」及び燃料供給済みの気筒「♯4」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯4」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯4」に最初に燃料を供給する。そして、気筒「♯4」及び気筒「♯3」のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0053】
又、図5に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は図3に示す「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「25」〜「44」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「46」である。この場合、エンジンの再始動後「10歯以上経過して識別信号1を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「25」〜「35」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯4」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯4」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯4」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯2」及び燃料供給済みの気筒「♯4」であるので、これ等の気筒のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0054】
一方、エンジンの再始動後「9歯以内に識別信号1を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「36」〜「44」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯2」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯2」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯2」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯4」及び燃料供給済みの気筒「♯2」であるので、これ等の気筒のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0055】
更に、図5に於いて、エンジンの再始動開始後、「8歯以上後に識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「44」〜「54」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「64」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「44」〜「54」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯2」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯2」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯2」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯2」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に気筒「♯2」に点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0056】
次に、図6は、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「44」〜「46」の識別信号1を検出した場合に於ける「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0057】
エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「44」〜「46」の識別信号1を検出した場合、エンジン停止範囲は、気筒♯3の上死点#3TDCと気筒♯4の上死点#4TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒♯4の上死点#4TDCを乗り越えた後に気筒♯4の上死点#4TDCと気筒♯2の上死点#2TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、エンジン停止範囲は#3TDCから#4TDCを経て#2TDCまでの範囲となる。
【0058】
ここで、クランク角度番号CRKNUM「36」〜「44」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「44」〜「61」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「61」〜「0」の範囲を「範囲3」とすると、全エンジン停止範囲は、「範囲1」〜「範囲3」を加算した範囲であるクランク角度番号CRKNUM「36」〜「0」となる。
【0059】
図6に於いて、エンジンの再始動開始後、「8歯以内に識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「36」〜「44」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「46」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「36」〜「44」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯2」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯4」及び燃料供給済みの気筒「♯2」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯2」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯2」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に気筒「♯4」及び気筒「♯2」のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0060】
又、図6に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「44」〜「61」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「64」である。この場合、エンジンの再始動後「9歯以上経過して識別信号2を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「44」〜「53」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯2」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯2」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯2」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯1」及び燃料供給済みの気筒「♯2」であるので、これ等の気筒のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0061】
一方、エンジンの再始動後「8歯以内に識別信号2を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「54」〜「61」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯1」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯1」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯1」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯2」及び燃料供給済みの気筒「♯1」であるので、これ等の気筒のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0062】
更に、図6に於いて、エンジンの再始動開始後、「9歯以上後に識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「61」〜「0」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「10」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「61」〜「0」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯1」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯1」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯1」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯2」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後の初回に気筒「♯1」に点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0063】
次に、図7は、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「61」〜「64」の識別信号2を検出した場合に於ける「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0064】
エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「61」〜「64」の識別信号2を検出した場合、エンジン停止範囲は、気筒♯4の上死点#4TDCと気筒♯2の上死点#2TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒♯2の上死点#2TDCを乗り越えた後に気筒♯2の上死点#2TDCと気筒♯1の上死点#1TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、エンジン停止範囲は#4TDCから#2TDCを経て#1TDCまでの範囲となる。
【0065】
ここで、クランク角度番号CRKNUM「54」〜「61」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「61」〜「8」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「8」〜「18」の範囲を「範囲3」とすると、全エンジン停止範囲は、「範囲1」〜「範囲3」を加算した範囲であるクランク角度番号CRKNUM「54」〜「18」となる。
【0066】
図7に於いて、エンジンの再始動開始後、「7歯以内に識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「54」〜「61」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「64」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「54」〜「61」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯1」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯2」及び燃料供給済みの気筒「♯1」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯1」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯1」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後、気筒「♯1」及び気筒「♯2」のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0067】
又、図7に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「61」〜「8」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「10」である。この場合、エンジンの再始動後「10歯以上経過して識別信号1を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「61」〜「71」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯1」である。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯3」及び燃料供給済みの気筒「♯1」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯1」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯1」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後、気筒「♯1」及び気筒「♯3」のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0068】
一方、エンジンの再始動後「9歯以内に識別信号1を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「0」〜「8」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯3」である。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯1」及び燃料供給済みの気筒「♯3」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯3」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯3」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後、気筒「♯1」及び気筒「♯3」のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0069】
更に、図7に於いて、エンジンの再始動開始後、「8歯以上後に識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「8」〜「18」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「28」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「8」〜「18」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯3」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯3」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯3」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯3」に最初に燃料を供給する。そして、エンジンの再始動後、気筒「♯3」に初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0070】
次に、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作について図面を参照しながら説明する。アイドルストップ制御装置3は、エンジン7のアイドルストップ及び再始動を電子制御する。そのために、エンジン7及び自車の運転状態を認識するために速度センサ5、クランク角度センサ6、アクセルポジションセンサ11、カム角度センサ15から、車速信号B、クランク角度信号D、アクセルポジション信号H、各角度信号Cを取り込み、インジェクタ駆動信号E、及び点火プラグ駆動信号Fを演算し出力する。
【0071】
インジェクタ8は、アイドルストップ制御装置3からのインジェクタ駆動信号Eに基づいて所定の時間、燃料を噴射し、若しくは燃料噴射を停止(燃料カット)する。又、点火プラグ9は、アイドルストップ制御装置3からの点火プラグ駆動信号Fに基づいて通電され、所定のタイミングで燃料に点火し、若しくは点火を停止させる。更に、モータ14は、アイドルストップ制御装置3からの制御信号に基づいて駆動され、クランクシャフト13を介してエンジン7を回転させる。
【0072】
内燃機関7の初回の始動時、アイドルストップ制御部31は、クランク角度センサ6及びカム角度センサ15からのクランク角度信号D及びカム角度信号C等の情報を用いて、各気筒♯1〜♯4のピストン位置を特定する。アイドルストップ時、アイドルストップ制御部31は、クランク角度センサ6により最後に検出した識別信号1又は識別信号2のクランク角度を記憶しておく。
【0073】
アイドルストップ中は、エンジン7に対して特別な制御は行なわないため、ピストンの位置は、図3及び図4に示すエンジン停止範囲内、若しくは前述の図5乃至図7により説明したエンジン停止範囲内で停止することになる。アイドルストップ後のエンジン再始動時には、図4乃至図7により説明した吸気可能な気筒に燃料噴射した上で、アイドルストップ制御装置3はクランク角度センサ6からのクランク角度信号D、及びアイドルストップ時に記憶していた識別信号1、識別信号2のクランク角度を用いて、素早く各気筒のピストン位置を特定、即ち気筒識別を行い、燃料供給済みの気筒に対して点火を開始する。
【0074】
図8は、この発明の実施の実施例1による内燃機関制御装置の動作の概略を説明するブロック図であって、アイドルストップ後のエンジン再始動時、アイドルストップ制御装置3が、クランク角度センサ6からのクランク角度信号及びアイドルストップ時の識別信号のクランク角度の記憶を用いて、素早く各気筒のピストン位置を特定して再始動するための処理を行う動作を示している。
【0075】
即ち、図8に示すように、アイドルストップ制御装置3は、クランク角度センサ6からのクランク角度信号によりエンジン停止直前の識別信号1及び識別信号2のクランク角度番号CRKNUMを記憶し(100)、更に、クランク角度センサ6からのクランク角度信号によりエンジン再始動直後の識別信号の種類、即ち、識別信号1か識別信号2かを識別する(200)。そして、エンジンの停止範囲を前述の「範囲1」、「範囲2」、「範囲3」の3つの範囲に分けてエンジン停止時のクランク角度を算出、即ち気筒識別を行い(300)、エンジン再始動開始時(400)に、気筒識別(300)に基づいて燃料供給済み気筒を判別(500)して点火信号を与えるものである。
【0076】
図9は、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置の動作を説明するフローチャートであって、アイドルストップ後の再始動時、アイドルストップ制御装置3はクランク角度センサ6の情報及びアイドルストップ時の識別信号のクランク角度の記憶を使用して素早く各気筒のピストン位置を特定し、燃料噴射及び点火を開始することに係る内燃機関制御装置の動作を示している。このフローチャートで示されるルーチンは、例えばエンジン再始動開始後に処理される。
【0077】
図9に於いて、先ず、ステップ101によりエンジン停止直前の識別信号のクランク角度番号CRKNUM_Bを読み出す。次に、ステップ102に於いて、読み出したエンジン停止直前の識別信号のクランク角度信号CRKNUM_Bの値により、以降の処理を振り分ける。即ち、その読み出したエンジン停止直前の識別信号のクランク角度信号CRKNUM_Bが「10」であればステップ103に進み、以降は前述の図4に従って処理を行なう。読み出したエンジン停止直前の識別信号のCRKNUM_Bが「28」、「46」、「64」であれば、夫々同様に、前述の図5、図6、図7に従った処理を行なうが、ここではフローチャートでの説明を省略する。
【0078】
ステップ103に於いて、図3のエンジン停止範囲に基づくピストン位置により、エンジン再始動開始時点で吸気ポートが開いている気筒は、図3から明らかなように気筒#3或いは気筒#4の何れかであるので、エンジン再始動時には、気筒#3及び気筒#4に燃料を噴射し、次のステップ104に進む。ステップ104では、エンジン再始動後、最初の識別信号の検出まで待ち、最初の識別信号を検出した時にステップ105に進む。
【0079】
ステップ105に於いて、エンジン再始動開始からステップ104での最初の識別信号の検出までのクランク角度番号数CRKNUM_Aを、[CRKNUM_A=(エンジン再始動直後の識別信号のクランク角度番号)−(エンジン再始動直前のクランク角度番号)]により算出する。この算出結果は、後のステップ107、又はステップ115での判定に用いる。
【0080】
次に、ステップ106に進み、ステップ104で検出した最初の識別信号の種類を判定する。その判定の結果、エンジン再始動開始後に発見した識別信号が識別信号1であれば、前述の図4に示すように、エンジンの停止範囲は「範囲1」又は「範囲3」のうちの何れかである。この場合はステップ107に進む。一方、ステップ106での判定の結果、識別信号2であれば、エンジンの停止範囲は「範囲2」である(図4参照)。この場合はステップ114に進む。
【0081】
ステップ107では、前述のステップ105により算出したクランク角度番号数CRKNUM_Aの値により、以降の処理を振り分ける。即ち、クランク角度番号数CRKNUM_Aが「8」以下であれば、エンジン停止範囲は「範囲1」であり(図4参照)、この場合はステップ108に進む。一方、クランク角度数CRKNUM_Aが「9」以上であれば、エンジン停止範囲は「範囲3」であり(図4参照)、この場合はステップ111に進む。
【0082】
ステップ108に於いて、識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUMとして、図4に示すように「10」をセットし、ステップ109に進む。ステップ109では、最初に燃料が供給された気筒番号を「#3」として(図4参照)、ステップ110に進む。
【0083】
次にステップ110に於いて、エンジン再始動後、初回点火設定可能な気筒は、「#1」及び「#3」である(図4参照)が、燃料供給済みの気筒は「#3」であるので点火開始気筒を「#3」とする。尚、都合により気筒「#1」から点火を開始してもよい。以上でこのルーチンを終了する。
【0084】
一方、ステップ107により算出したクランク角度番号数CRKNUM_Aの値が「9」以上でありステップ111に進むと、識別信号発見時のクランク角度番号として、識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUMとして「46」をセット(図4参照)し、ステップ112に進む。ステップ112では、最初に燃料が供給された気筒番号を#4とし(図4参照)、ステップ113に進む。ステップ113に於いて、エンジン再始動開始後の初回点火開始気筒を「#4」とし(図4参照)、このルーチンを終了する。
【0085】
前述のステップ106に於いて識別信号2であると判定してステップ114に進んだ場合、ステップ114では識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUMとして、「28」をセットする(図4参照)。次にステップ115に進む。
【0086】
ステップ115では、前述のステップ105により算出したエンジン再始動開始からステップ104での最初の識別信号の検出までのクランク角度番号数CRKNUM_Aの値に基づいて処理を振り分ける。即ち、図4により前述したように、ステップ105により算出したクランク角度番号数CRKNUM_Aが「8」以下であれば、即ち、エンジン再始動開始後8歯以内に識別信号2を検出したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「18」〜「25」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給された気筒は「#4」である(図4参照)ことから、ステップ116に進んで最初に燃料が供給された気筒番号を#4とする。
【0087】
一方、ステップ105により算出したクランク角度番号数CRKNUM_Aが「9」以上であれば、即ち、エンジン再始動開始後9歯以上で識別信号2を検出したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「8」〜「17」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給された気筒は「#3」である(図4参照)ことから、ステップ118に進んで最初に燃料が供給された気筒番号を♯3とする。
【0088】
ステップ116からステップ117に進むと、図4により前述したように、エンジン再始動後の初回に点火設定可能な気筒は「#3」及び「#4」であるが、燃料供給済みの気筒は「#4」であるので、点火開始気筒を「#4」とする。尚、都合により「#3」から点火を開始してもよい。以上でこのルーチンを終了する。
【0089】
ステップ118からステップ119に進むと、図4により前述したように、エンジン再始動後の初回に点火設定可能な気筒は「#3」及び「#4」であるが、燃料供給済みの気筒は「#3」であるので、点火開始気筒を「#3」とする。以上でこのルーチンを終了する。
【0090】
以上述べたように、この発明の実施の形態1による内燃機関制御装置によれば、クランク角センサを、エンジンの気筒数に含まれる素数のうち気筒数の約数となる最大素数分の種類の識別信号を持つ構成、即ち2種類の識別信号を持つ構成としているので、安価なクランク角度センサとすることが可能であり、又、制御及び演算が単純となり、容易且つ安価に、エンジン再始動時のピストン位置を特定でき、最初に燃料が供給される気筒にて確実に点火できることから、エンジンを素早く再始動できる。
【0091】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置について説明する。実施の形態2による内燃機関制御装置は、6気筒4サイクルのエンジンに適用したものである。図10は、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置に於けるクランク角度センサのシグナルロータの構成を示す説明図である。尚、図1の構成は、実施の形態2に於いても適用される。
【0092】
図10に於いて、シグナルロータ61は、エンジンの気筒の数「6」の約数である「1」、「2」、「3」のうちの最大の素数「3」に相当する3種類の識別信号1、識別信号2、識別信号3を発生するように構成されている。
【0093】
シグナルロータ61の構成について更に詳しく述べれば、シグナルロータ61は、その外周部に、31個の磁性体からなる歯(実線により示している)を備えている。これ等の31個の歯は、シグナルロータの軸心を中心として10度間隔でシグナルロータ61の外周部を等分した36箇所の位置のうち、31箇所に設けられている。そして、シグナルロータ61の外周部の前記36箇所の位置のうち、残りの5箇所は、歯の存在しない欠け歯(破線により示している)となっている。
【0094】
6気筒4サイクルエンジンの場合、6個の気筒の夫々のピストンは、クランク角度120°CA、240°CA、360°CA、480°CA、600°CA、及び720°CA毎に順次上死点に達するように構成されている。そこで、シグナルロータ61は、その外周部に120°間隔でピストンの上死点対応位置が設定されており、これ等の3箇所の上死点対応位置の両側に歯B05、A05が配置されている。シグナルロータ61に於けるこれ等の3個の上死点対応位置は、夫々2個の気筒のピストンの上死点に対応しているが、その詳細については図11により後述する。
【0095】
今、図10に於ける下方左側の上死点対応位置の左側の歯をA05とし、この歯A05を含めて時計回りに6個目の欠け歯をA55とする。そして、この欠け歯A55の次の歯をB55とし、この歯B55を含めて時計回りで6個目の歯をB05とする。更に、この歯B05の次の歯をA05とし、この歯A05を含めて時計回りで4個目と6個目が欠け歯であり、その6個目の欠け歯の歯をA55とする。そして、この欠け歯A55の次の歯をB55とし、この歯B55を含めて時計回りで6個目の歯をB05とする。更に、この歯B05の次の歯をA05とし、この歯A05を含めて時計回りで5個目と6個目が欠け歯であり、その5個目の欠け歯をA55とする。そしてこの欠け歯A55の次の歯をB55とし、この歯B55を含めて時計回りで6個目の歯をB05とする。
【0096】
ここで、図10の左上側に於ける欠け歯A55とその隣の両隣の歯(そのうちの一つが歯B55)とからなる3個の歯により識別信号1が形成される。又、図10の右上側の欠け歯A55と、その3つ手前の歯と、その次の欠け歯と、その次の歯と、欠けはA55の次の歯B55とからなる5個の歯(そのうちの二つは、A55を含めて欠け歯)により識別信号3が形成される。更に、図10の下方の欠け歯A55と、欠け歯A55の2つ手前の歯と、その次の欠け歯と、欠け歯A55の次の歯B55とからなる4個の歯(そのうち二つは、欠け歯)により識別信号2が形成される。
【0097】
識別信号1、識別信号2、及び識別信号3は、図10に示すように、シグナルロータ61の軸心の周りに120度間隔で設定されている。これ等の識別信号1、識別信号2、及び識別信号3は、後述するようにクランク角度信号Dから6つの気筒のピストンの位置を夫々特定するために設定されている。
【0098】
尚、実施の形態2では、欠け歯の位置を設けることで識別信号1、識別信号2、及び識別信号3を形成しているが、識別信号1、識別信号2、識別信号3を出力できる設定となっていれば、欠け歯以外の方式としてもよい。
【0099】
図11は、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置に於けるクランク角度センサの出力波形とエンジン停止の範囲及び燃焼サイクルとの関係を示す説明図である。図11に於いて、クランク角度信号の波形は、前述の図10に示すクランク角度センサのシグナルロータ61がクランクシャフト13の回転に同期して反時計方向に回転することにより磁気検出部62から出力される波形であり、図10に於けるシグナルロータ61の左下側の歯B05を基点として順次、歯A05、・・A55、B55、・・B05、A05、・・A55、B55、・・B05、A05、・・A55に対応して発生するクランク角度信号の波形を、シグナルロータ61の歯若しくは欠け歯と同一符号で示している。
【0100】
この実施の形態2では、エンジン7は気筒1、気筒2、気筒3、気筒4、気筒5、及び気筒6の6つの気筒を備えており、♯1は気筒1を、♯2は気筒2を、♯3は気筒3を、♯4は気筒4を、♯5は気筒5を、♯6は気筒6を夫々意味する。各気筒♯1〜♯6は、クランク角度720°CA、即ちクランクシャフト13の2回転で、「吸気」「圧縮」「燃焼」「排気」のサイクルを一巡する。
【0101】
図11に於いて、基点のクランク角度信号B05に対応するクランク角度番号CRKNUM(クランク角度CAと等価。以下の説明ではクランク角度番号CRKNUMと称する)は「0」、次のクランク角度信号A05に対応するクランク角度番号CRKNUMは「1」、以下順次発生するクランク角度信号に対応するクランク角度番号CRKNUMは「2」、「3」、・・・「71」となり、最後に基点のクランク角度信号B05に戻ってクランク角度番号CRKNUMは「0」となる。
【0102】
従って、図11に示すように、クランクシャフト13が2回転する間に、先ず識別信号1がクランク角度番号CRKNUM「5」、「6」、「7」に対応して発生し、次に識別信号2がクランク角度番号CRKNUM「16」、「17」、「18」、「19」に対応して発生し、次に識別信号3がクランク角度番号CRKNUM「27」、「28」、「29」、「30」、「31」に対応して発生する。更に、次に識別信号1がクランク角度番号CRKNUM「41」、「42」、「43」に対応して発生し、次に識別信号2がクランク角度番号CRKNUM「52」、「53」、「54」、「55」に対応して発生し、次に識別信号3がクランク角度番号CRKNUM「63」、「64」、「65」、「66」、「67」に対応して発生する。
【0103】
気筒♯6のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「0」に於いて上死点♯6TDCに達し、気筒♯1のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「12」に於いて上死点♯1TDCに達し、気筒♯2のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「24」に於いて上死点♯2TDCに達し、気筒♯3のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「36」に於いて上死点♯3TDCに達する。又、気筒♯4のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「48」に於いて上死点♯4TDCに達し、気筒♯5のピストンは、クランク角度番号CRKNUM「60」に於いて上死点♯5TDCに達する。
【0104】
図11に示すように、気筒♯1は、クランク角度番号CRKNUM「5」からクランク角度番号CRKNUM「30」の間で燃焼サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「30」からクランク角度番号CRKNUM「48」の間で排気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「48」からクランク角度番号CRKNUM「66」の間で吸気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「66」からクランク角度番号CRKNUM「5」の間で圧縮サイクルである。
【0105】
気筒♯2は、クランク角度番号CRKNUM「6」からクランク角度番号CRKNUM「17」の間が圧縮サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「17」からクランク角度番号CRKNUM「42」の間が燃焼サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「42」からクランク角度番号CRKNUM「60」の間が排気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「60」からクランク角度番号CRKNUM「6」の間が吸気サイクルである。
【0106】
気筒♯3は、クランク角度番号CRKNUM「0」からクランク角度番号CRKNUM「18」の間が吸気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「18」からクランク角度番号CRKNUM「29」の間が圧縮サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「29」からクランク角度番号CRKNUM「54」の間が燃焼サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「54」からクランク角度番号CRKNUM「0」の間が排気サイクルである。
【0107】
気筒♯4は、クランク角度番号CRKNUM「12」からクランク角度番号CRKNUM「30」の間が吸気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「30」からクランク角度番号CRKNUM「41」の間が圧縮サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「41」からクランク角度番号CRKNUM「66」の間が燃焼サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「66」からクランク角度番号CRKNUM「12」の間が排気サイクルである。
【0108】
気筒♯5は、クランク角度番号CRKNUM「6」からクランク角度番号CRKNUM「24」の間が排気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「24」からクランク角度番号CRKNUM「42」の間が吸気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「42」からクランク角度番号CRKNUM「53」の間が圧縮サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「53」からクランク角度番号CRKNUM「6」の間が燃焼サイクルである。
【0109】
気筒♯6は、クランク角度番号CRKNUM「18」からクランク角度番号CRKNUM「36」の間が排気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「36」からクランク角度番号CRKNUM「54」の間が吸気サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「54」からクランク角度番号CRKNUM「65」の間が圧縮サイクルであり、クランク角度番号CRKNUM「65」からクランク角度番号CRKNUM「18」の間が燃焼サイクルである。
【0110】
次に、エンジン7の停止範囲について説明する。エンジン7は、前述したように、構造上、シリンダ圧力等の影響により、停止直前に、複数の気筒により隣接して発生する上死点TDCの間で、正転と逆転を繰り返すことによる振動の後に停止する。
【0111】
即ち、図11に示すように、エンジン7の停止直前に、例えばクランク角度番号CRKNUM「5」〜「7」に対応する識別信号1を検出した場合、気筒♯6の上死点#6TDCと気筒1の上死点#1TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒♯1の上死点#1TDCを乗り越えた後に気筒♯1の上死点#1TDCと気筒2の上死点#2TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、エンジン停止範囲は#6TDCから#1TDCを経て#2TDCまでの範囲となる。前述のアイドルストップ制御装置3に設けられているクランク角度範囲記憶手段は、エンジン停止範囲として、クランク角度番号CRKNUM「0」〜「24」を記憶する。
【0112】
前述のアイドルストップ制御装置3に設けられているピストン位置特定手段は、クランク角度範囲記憶手段に記憶されているエンジン停止範囲を、記憶されたクランク角度範囲の先頭から最初に現われる第1の識別信号の先頭までの第1の範囲と、第1の識別信号の先頭から第1の信号の次に現れる第2の識別信号の先頭までの第2の範囲と、第2の識別信号の先頭から記憶されたクランク角度範囲の後端までの第3の範囲との、3つの範囲に分けてクランク角度を算出する。即ち、具体的には、ピストン位置特定手段は、クランク角度範囲記憶手段に記憶されているクランク角度番号CRKNUM「0」〜「24」のうち、クランク角度番号CRKNUM「0」〜「5」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「5」〜「16」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「16」〜「24」を「範囲3」として算出する。アイドルストップ制御装置3は、ピストン位置特定手段により算出された「範囲1」〜「範囲3」の夫々のクランク角度番号の範囲に基づいて、以下のようにしてエンジン停止時のピストン位置を特定し、エンジンの再始動を迅速に行う。
【0113】
図12は、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「5」〜「7」の識別信号1を検出した場合、つまり前述の図11例示した場合を示している。そして、「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0114】
即ち、図12に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は図11に示す「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「0」〜「5」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「7」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図3に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「0」〜「5」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯2」、「♯3」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯1」及び燃料供給済みの気筒「♯2」、「♯3」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯2」、「♯3」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯2」、「♯3」に最初に燃料を供給する。そして、気筒「♯1」乃至気筒「♯3」のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0115】
又、図12に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は図11に示す「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「5」〜「16」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「19」である。この場合、エンジンの再始動後「6歯以上経過して識別信号2を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「5」〜「11」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯3」である。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯2」、「♯4」及び燃料供給済みの気筒「♯3」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯3」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯3」に最初に燃料を供給する。そして、気筒「♯2」乃至気筒「♯4」のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0116】
一方、エンジンの再始動後「5歯以内に識別信号2を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「12」〜「16」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯3」、「♯4」である。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯2」及び燃料供給済みの気筒「♯3」、「♯4」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯3」、「♯4」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯3」、「♯4」に最初に燃料を供給する。そして、気筒「♯2」乃至気筒「♯4」のうちの何れかに初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0117】
更に、図12に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号3」を発見した場合は、エンジン停止範囲は図3に示す「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「16」〜「24」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号3を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「31」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「16」〜「24」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯4」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号3の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯3」、及び燃料供給済みの気筒「♯4」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯4」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯3」又は「♯4」に初回の点火信号を供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0118】
次に、図13は、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「16」〜「19」の識別信号2を検出した場合に於ける「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0119】
エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「16」〜「19」の識別信号2を検出した場合、エンジン停止範囲は、気筒♯1の上死点#1TDCと気筒♯2の上死点#2TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒♯2の上死点#2TDCを乗り越えた後に気筒♯2の上死点#2TDCと気筒♯3の上死点#3TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、エンジン停止範囲は#1TDCから#2TDCを経て#3TDCまでの範囲となる。
【0120】
ここで、クランク角度番号CRKNUM「12」〜「16」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「16」〜「27」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「27」〜「36」の範囲を「範囲3」とすると、全エンジン停止範囲は、「範囲1」〜「範囲3」を加算した範囲であるクランク角度番号CRKNUM「12」〜「36」となる。前述のアイドルストップ制御装置3に設けられているクランク角度範囲記憶手段は、エンジン停止範囲として、クランク角度番号CRKNUM「12」〜「36」を記憶する。
【0121】
図13に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「12」〜「16」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「19」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図13に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「12」〜「16」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯3」、「♯4」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯2」及び燃料供給済みの気筒「♯3」、「♯4」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯3」、「♯4」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯3」及び「♯4」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯2」〜「♯4」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0122】
又、図13に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号3」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「16」〜「27」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号3を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「31」である。この場合、エンジンの再始動後「5歯以上経過して識別信号3を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「16」〜「23」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯4」である。そしてエンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号3の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯3」、「♯5」、及び燃料供給済みの気筒「♯4」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯4」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯4」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯3」〜「♯5」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0123】
一方、エンジンの再始動後「4歯以内に識別信号3を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「24」〜「27」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯4」、「♯5」である。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号3の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯3」及び燃料供給済みの気筒「♯4」、「♯5」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯4」、「♯5」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯4」、「♯5」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯3」〜「♯5」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0124】
更に、図13に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「27」〜「36」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「43」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「27」〜「36」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯5」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯4」及び燃料供給済みの気筒「♯5」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯5」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯5」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯4」又は「♯5」に供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0125】
次に、図14は、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「27」〜「31」の識別信号3を検出した場合に於ける「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0126】
エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「27」〜「31」の識別信号3を検出した場合、エンジン停止範囲は、気筒2の上死点#2TDCと気筒3の上死点#3TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒3の上死点#3TDCを乗り越えた後に気筒3の上死点#3TDCと気筒4の上死点#4TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、エンジン停止範囲は#2TDCから#3TDCを経て#4TDCまでの範囲となる。
【0127】
ここで、クランク角度番号CRKNUM「24」〜「27」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「27」〜「41」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「41」〜「48」の範囲を「範囲3」とすると、全エンジン停止範囲は、「範囲1」〜「範囲3」を加算した範囲であるクランク角度番号CRKNUM「24」〜「48」となる。前述のアイドルストップ制御装置3に設けられているクランク角度範囲記憶手段は、エンジン停止範囲として、クランク角度番号CRKNUM「24」〜「48」を記憶する。
【0128】
図14に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号3」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「24」〜「27」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号3を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「31」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「24」〜「27」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯4」、「♯5」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号3の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯3」及び燃料供給済みの気筒「♯4」、「♯5」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯4」、「♯5」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯4」及び「♯5」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯3」〜「♯5」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0129】
又、図14に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「27」〜「41」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「43」である。この場合、エンジンの再始動後「7歯以上経過して識別信号1を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「27」〜「35」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯5」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯4」、「♯6」、及び燃料供給済みの気筒「♯5」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯5」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯5」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯4」〜「♯6」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0130】
一方、エンジンの再始動後「6歯以内に識別信号1を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「36」〜「41」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯5」、「♯6」である。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯4」及び燃料供給済みの気筒「♯5」、「♯6」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯5」、「♯6」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯5」、「♯6」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯4」〜「♯6」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0131】
更に、図14に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「41」〜「48」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「55」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「41」〜「48」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯6」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯5」及び燃料供給済みの気筒「♯6」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯6」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯6」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯5」又は「♯6」に供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0132】
次に、図15は、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「41」〜「43」の識別信号1を検出した場合に於ける「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0133】
エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「41」〜「43」の識別信号1を検出した場合、エンジン停止範囲は、気筒♯3の上死点#3TDCと気筒♯4の上死点#4TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒♯4の上死点#4TDCを乗り越えた後に気筒♯4の上死点#4TDCと気筒♯5の上死点#5TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、エンジン停止範囲は#3TDCから#4TDCを経て#5TDCまでの範囲となる。
【0134】
ここで、クランク角度番号CRKNUM「36」〜「41」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「41」〜「52」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「52」〜「60」の範囲を「範囲3」とすると、全エンジン停止範囲は、「範囲1」〜「範囲3」を加算した範囲であるクランク角度番号CRKNUM「36」〜「60」となる。前述のアイドルストップ制御装置3に設けられているクランク角度範囲記憶手段は、エンジン停止範囲として、クランク角度番号CRKNUM「36」〜「60」を記憶する。
【0135】
図15に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「36」〜「41」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「43」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「36」〜「41」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯5」「♯6」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯4」及び燃料供給済みの気筒「♯5」「♯6」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯5」、「♯6」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯5」及び「♯6」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯4」〜「♯6」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0136】
又、図15に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「41」〜「52」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「55」である。この場合、エンジンの再始動後「6歯以上経過して識別信号2を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「41」〜「47」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯6」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯5」、「♯1」、及び燃料供給済みの気筒「♯6」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯6」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯6」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯5」〜「♯6」、「♯1」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0137】
一方、エンジンの再始動後「5歯以内に識別信号2を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「48」〜「52」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯6」、「♯1」である。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯5」及び燃料供給済みの気筒「♯6」、「♯1」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯6」、「♯1」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯6」、「♯1」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯5」〜「♯6」、「♯1」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0138】
更に、図15に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号3」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「52」〜「60」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号3を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「67」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「52」〜「60」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯1」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号3の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯6」及び燃料供給済みの気筒「♯1」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯1」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯1」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯6」又は「♯1」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0139】
次に、図16は、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「52」〜「55」の識別信号2を検出した場合に於ける「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0140】
エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「52」〜「55」の識別信号2を検出した場合、エンジン停止範囲は、気筒♯4の上死点#4TDCと気筒♯5の上死点#5TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒♯5の上死点#5TDCを乗り越えた後に気筒♯5の上死点#5TDCと気筒♯6の上死点#6TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、エンジン停止範囲は#4TDCから#5TDCを経て#6TDCまでの範囲となる。
【0141】
ここで、クランク角度番号CRKNUM「48」〜「52」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「52」〜「63」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「63」〜「0」の範囲を「範囲3」とすると、全エンジン停止範囲は、「範囲1」〜「範囲3」を加算した範囲であるクランク角度番号CRKNUM「48」〜「0」となる。前述のアイドルストップ制御装置3に設けられているクランク角度範囲記憶手段は、エンジン停止範囲として、クランク角度番号CRKNUM「48」〜「0」を記憶する。
【0142】
図16に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「48」〜「52」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「55」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「48」〜「52」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯1」、「♯6」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯5」及び燃料供給済みの気筒「♯1」、「♯6」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯1」、「♯6」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯1」及び「♯6」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯5」〜「♯6」、「♯1」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0143】
又、図16に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号3」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「52」〜「63」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号3を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「67」である。この場合、エンジンの再始動後「5歯以上経過して識別信号3を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「52」〜「59」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯1」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号3の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯6」、「♯2」、及び燃料供給済みの気筒「♯1」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯1」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯1」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯6」、「♯1」〜「♯2」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0144】
一方、エンジンの再始動後「4歯以内に識別信号3を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「60」〜「63」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯1」、「♯2」である。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号3の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯6」及び燃料供給済みの気筒「♯1」、「♯2」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯1」、「♯2」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯1」、「♯2」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯6」、「♯1」〜「♯2」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0145】
更に、図16に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「63」〜「0」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「7」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「63」〜「0」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯2」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯1」及び燃料供給済みの「♯2」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯2」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯2」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯1」又は「♯2」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0146】
次に、図17は、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置の動作を説明する説明図であって、エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「63」〜「67」の識別信号3を検出した場合に於ける「再始動開始後に発見した識別信号」の種類に対応して、「エンジン停止範囲内の3つの範囲」、「識別信号発見時のクランク角度番号CRKNUM」、「最初に燃料が供給される気筒」、及び、「初回点火設定可能な気筒」が、夫々どのようになるかについて示したものである。
【0147】
エンジン停止直前に、クランク角度番号CRKNUM「63」〜「67」の識別信号3を検出した場合、エンジン停止範囲は、気筒♯5の上死点#5TDCと気筒♯6の上死点#6TDCとの間で振動した後に停止する場合と、惰性で気筒♯6の上死点#6TDCを乗り越えた後に気筒♯6の上死点#6TDCと気筒♯1の上死点#1TDCとの間で振動した後に停止する場合があることから、エンジン停止範囲は#5TDCから#6TDCを経て#1TDCまでの範囲となる。
【0148】
ここで、クランク角度番号CRKNUM「60」〜「63」の範囲を「範囲1」、クランク角度番号CRKNUM「63」〜「5」の範囲を「範囲2」、クランク角度番号CRKNUM「5」〜「12」の範囲を「範囲3」とすると、全エンジン停止範囲は、「範囲1」〜「範囲3」を加算した範囲であるクランク角度番号CRKNUM「60」〜「12」となる。前述のアイドルストップ制御装置3に設けられているクランク角度範囲記憶手段は、エンジン停止範囲として、クランク角度番号CRKNUM「60」〜「12」を記憶する。
【0149】
図17に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号3」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「60」〜「63」に該当し、エンジンの再始動開始後に識別信号3を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「67」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11に示すように「範囲1」であるクランク角度番号CRKNUM「60」〜「63」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯1」、「♯2」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号3の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯6」及び燃料供給済みの気筒「♯1」、「♯2」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯1」、「♯2」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯1」、「♯2」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯6」、「♯1」〜「♯2」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0150】
又、図17に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号1」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲2」であるクランク角度番号CRKNUM「63」〜「5」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号1を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「7」である。この場合、エンジンの再始動後「7歯以上経過して識別信号1を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「63」〜「71」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯2」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯1」、「♯3」、及び燃料供給済みの気筒「♯2」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯2」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯2」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯1」〜「♯3」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0151】
一方、エンジンの再始動後「6歯以内に識別信号1を発見」したのであれば、エンジンは「範囲2」内のクランク角度番号CRKNUM「0」〜「5」の範囲に於いて停止していたこととなり、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなようにエンジン停止時に吸気サイクルにある気筒「♯2」、「♯3」である。そして、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号1の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯1」及び燃料供給済みの気筒「♯2」、「♯3」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯2」、「♯3」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯2」、「♯3」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯1」〜「♯3」のうちの何れかに供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0152】
更に、図17に於いて、エンジンの再始動開始後、「識別信号2」を発見した場合は、エンジン停止範囲は「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「5」〜「12」に該当し、エンジンの再始動開始後に最初に識別信号2を発見した時のクランク角度信号CRKNUMは「19」である。この場合、エンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒は、図11から明らかなように「範囲3」であるクランク角度番号CRKNUM「5」〜「12」に於いて吸気サイクルにある気筒「♯3」であり、且つ、エンジンの再始動後の初回に点火を設定することができる気筒は、識別信号2の発見以降に燃焼サイクルとなる気筒「♯2」及び燃料供給済みの気筒「♯3」である。アイドルストップ制御装置3は、このようにしてエンジンの再始動後に最初に燃料が供給される気筒「♯3」を特定し、エンジンの再始動後に直ちに気筒「♯3」に燃料を供給し、初回の点火信号を気筒「♯2」又は「♯3」に供給してエンジンの再始動を速やかに実行する。
【0153】
以上のように構成されたこの発明の実施の形態2による内燃機関制御装置に於いて、アイドルストップ中は、エンジン7に対して特別な制御は行なわないため、ピストンの位置は、図11及び図12に示すエンジン停止範囲内、若しくは前述の図13乃至図17により説明したエンジン停止範囲内で停止することになる。アイドルストップ後のエンジン再始動時には、図12乃至図17により説明した吸気可能な気筒に燃料噴射した上で、アイドルストップ制御装置3はクランク角度センサ6からのクランク角度信号D、及びアイドルストップ時に記憶していた識別信号1、識別信号2、識別信号3のクランク角度を用いて、素早く各気筒のピストン位置を特定、即ち気筒識別を行い、燃料供給済みの気筒に対して点火を開始する。
【0154】
又、前述の図8に於いて、アイドルストップ制御装置3(図1参照)は、クランク角度センサ6からのクランク角度信号によりエンジン停止直前の識別信号1、識別信号2、及び識別信号3のクランク角度番号CRKNUMを記憶し(100)、更に、クランク角度センサ6からのクランク角度信号によりエンジン再始動直後の識別信号の種類、即ち、識別信号1か識別信号2か識別信号3かを識別する(200)。そして、エンジンの停止範囲を前述の「範囲1」、「範囲2」、「範囲3」の3つの範囲に分けてエンジン停止時のクランク角度を算出、即ち気筒識別を行い(300)、エンジン再始動開始時(400)に、気筒識別(300)に基づいて燃料供給済み気筒を判別(500)して点火信号を与えるものである。
【0155】
尚、実施の形態2に於けるアイドルストップ制御時のフローチャートは図示していないが、前述の実施の形態1に於ける図9のフローチャートの一部を、前述の実施の形態2の詳細な説明に対応して変形することで、実施の形態2に対応したフローチャートを得ることができる。
【0156】
以上述べたように、この発明の実施の形態2による内燃機関制御装置によれば、クランク角センサを、エンジンの気筒数に含まれる素数のうち気筒数の約数となる最大素数分の種類の識別信号を持つ構成、即ち3種類の識別信号を持つ構成としているので、安価なクランク角度センサとすることが可能であり、又、制御及び演算が単純となり、容易且つ安価に、エンジン再始動時のピストン位置を特定でき、最初に燃料が供給される気筒にて確実に点火できることから、エンジンを素早く再始動できる。
【0157】
尚、この発明は、4気筒エンジン、6気筒エンジン以外にも同様に実施することができることは言うまでもない。
【0158】
以上述べたこの発明の実施の形態1乃至2、及びそれらの変形例は、以下に述べる本願発明を具現化したものである。
1.複数の気筒を持つ内燃機関のクランク角度に対応したクランク角度信号を出力するクランク角度検出手段と、前記クランク角度信号に基づいて前記内燃機関の停止時のクランク角度範囲を記憶するクランク角度範囲記憶手段と、前記クランク角度信号に基づいて前記複数の気筒のピストン位置を特定するピストン位置特定手段とを備えた内燃機関制御装置であって、
前記クランク角度検出手段は、前記複数の気筒のピストンの夫々の上死点に対応する位置に挟まれた複数の中間位置から夫々識別信号を出力する機能を有し、且つ、隣り合う前記中間位置から夫々出力する前記識別信号を異なる種類の識別信号とし、
前記ピストン位置特定手段は、前記クランク角度範囲記憶手段に記憶された前記クランク角度範囲と前記クランク角度検出手段により出力された前記識別信号の位置に対応するクランク角度とに基づいて、前記内燃機関の停止時に於ける前記ピストンの停止位置を特定し、
前記ピストン位置特定手段により特定された前記ピストンの停止位置に基づいて、前記内燃機関の再始動時に最初に燃料を供給すべき気筒を特定するようにしたことを特徴とする内燃機関制御装置。
2.望ましくは、
前記識別信号の種類の数を、前記内燃機関の気筒の数に対する約数のうちの最大の素数に相当する数とする。
3.望ましくは、
前記内燃機関の停止直前に検出した識別信号の直前の気筒のピストンの上死点に対応するクランク角度から2気筒先のピストンの上死点に対応するクランク角度までを、前記内燃機関の停止時に於けるクランク角度範囲として記憶するように、前記クランク角度範囲記憶手段を構成する。
4.望ましくは、
前記クランク角度範囲記憶手段に記憶された前記クランク角度範囲を、前記記憶されたクランク角度範囲の先頭から最初に現われる第1の識別信号の先頭までの第1の範囲と、前記第1の識別信号の先頭から前記第1の信号の次に現れる第2の識別信号の先頭までの第2の範囲と、前記第2の識別信号の先頭から前記記憶されたクランク角度範囲の後端までの第3の範囲との3つの範囲に分けてクランク角度を算出し、前記第1の範囲乃至第3の範囲のうちの少なくとも1つと前記クランク角度検出手段により出力された前記識別信号の位置に対応するクランク角度とに基づいて、前記内燃機関の停止時に於ける前記ピストンの停止位置を特定するように、前記ピストン位置特定手段を構成する。
【符号の説明】
【0159】
11 アクセルポジションセンサ
13 クランクシャフト
14 モータ
15 カム角度センサ
3 アイドルストップ制御装置
31 アイドルストップ制御部
32 内燃機関制御部
5 速度センサ
6 クランク角度センサ
61 シグナルロータ
62 磁気検出部
7 内燃機関
8 インジェクタ
9 点火プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を持つ内燃機関のクランク角度に対応したクランク角度信号を出力するクランク角度検出手段と、前記クランク角度信号に基づいて前記内燃機関の停止時のクランク角度範囲を記憶するクランク角度範囲記憶手段と、前記クランク角度信号に基づいて前記複数の気筒のピストン位置を特定するピストン位置特定手段とを備えた内燃機関制御装置であって、
前記クランク角度検出手段は、前記複数の気筒のピストンの夫々の上死点に対応する位置に挟まれた複数の中間位置から夫々識別信号を出力する機能を有し、且つ、隣り合う前記中間位置から夫々出力する前記識別信号を異なる種類の識別信号とし、
前記ピストン位置特定手段は、前記クランク角度範囲記憶手段に記憶された前記クランク角度範囲と前記クランク角度検出手段により出力された前記識別信号の位置に対応するクランク角度とに基づいて、前記内燃機関の停止時に於ける前記ピストンの停止位置を特定し、
前記ピストン位置特定手段により特定された前記ピストンの停止位置に基づいて、前記内燃機関の再始動時に最初に燃料を供給すべき気筒を特定するようにしたことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記識別信号の種類の数は、前記内燃機関の気筒の数に対する約数のうちの最大の素数に相当する数であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関制御装置。
【請求項3】
前記クランク角度範囲記憶手段は、
前記内燃機関の停止直前に検出した識別信号の直前の気筒のピストンの上死点に対応するクランク角度から2気筒先のピストンの上死点に対応するクランク角度までを、前記内燃機関の停止時に於けるクランク角度範囲として記憶する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記ピストン位置特定手段は、
前記クランク角度範囲記憶手段に記憶された前記クランク角度範囲を、前記記憶されたクランク角度範囲の先頭から最初に現われる第1の識別信号の先頭までの第1の範囲と、前記第1の識別信号の先頭から前記第1の信号の次に現れる第2の識別信号の先頭までの第2の範囲と、前記第2の識別信号の先頭から前記記憶されたクランク角度範囲の後端までの第3の範囲との3つの範囲に分けてクランク角度を算出し、
前記第1の範囲乃至第3の範囲のうちの少なくとも1つと前記クランク角度検出手段により出力された前記識別信号の位置に対応するクランク角度とに基づいて、前記内燃機関の停止時に於ける前記ピストンの停止位置を特定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一項に記載の内燃機関制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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