説明

内燃機関用点火コイル

【課題】組付工数及び部品点数を低減することができ、小型化を図ることができる内燃機関用点火コイルを提供すること。
【解決手段】内燃機関用点火コイル1は、一次コイル及び二次コイルを含むコイル部2と、コネクタケース部3とを備えている。一次コイルは、樹脂製の一次スプール211の外周に一次電線を巻回して形成されている。コネクタケース部3には、その嵌合穴内からコネクタ部まで配置された導体からなるターミナル4が設けられている。ターミナル4において、嵌合穴内に配置された差込部41には、コイル部2とコネクタケース部3との嵌合方向Aに向けて、差込スリット42が形成されている。一次コイル21の巻線端部213は、一次電線の巻回方向Bにほぼ沿って引き出されており、かつ、嵌合方向Aにおいて、差込スリット42に差し込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室内にスパークを発生させるために用いる内燃機関用点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関用点火コイルにおいては、一次スプールに一次電線を巻回して一次コイルを形成するとともに、二次スプールに二次電線を巻回して二次コイルを形成している。また、一次コイルと二次コイルとを同心状になるようケース内に配置してコイル部を形成し、このコイル部の端部を、イグナイタを配置したコネクタケース部の嵌合穴に嵌合している。
また、一次スプールの外周に一次電線を巻回した後には、一次電線の巻線端部を、一次スプールに設けたターミナルに固定している。そして、一次スプールに設けたターミナルと、コネクタケース部に設けたターミナル(導体ピン)とを、抵抗溶接、フュージング等を行って接合している。
一方、例えば、特許文献1の点火コイルにおいては、一次コイルの巻始め側及び巻終り側の巻線を、一次スプールの鍔部に設けられた巻線保持部に固定している。そして、鍔部に設けられた巻線保持部にターミナルを嵌合固定することにより、巻始め側及び巻終り側の巻線を保持している。また、ターミナルをコネクタ部に直接配置することにより、一次スプールに設ける中間ターミナルを廃止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−124043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、一次電線を一次スプールの軸方向に沿った上方へ引き回していることにより、一次コイルが上方に大きくなってしまう。また、点火コイルの組付を一層容易に行うためには、ターミナルの組付構造に更なる工夫が必要とされる。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、組付工数及び部品点数を低減することができ、小型化を図ることができる内燃機関用点火コイルを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内外周に同心状に配置された一次コイル及び二次コイルがコイルケース内に配置されて形成されたコイル部と、
該コイル部の端部を嵌合する嵌合穴が形成され、上記一次コイルの通電及びその遮断を行うためのコネクタ部を有するコネクタケース部とを備えており、
上記一次コイルは、樹脂製の一次スプールの外周に一次電線を巻回して形成されており、
上記コネクタケース部には、上記嵌合穴内から上記コネクタ部まで配置された導体からなるターミナルが設けられており、
該ターミナルにおいて、上記嵌合穴内に配置された差込部には、上記コイル部と上記コネクタケース部との嵌合方向に向けて、差込スリットが形成されており、
上記一次コイルの巻線端部は、上記一次電線の巻回方向にほぼ沿って引き出されており、かつ、上記嵌合方向において、上記差込スリットに差し込まれていることを特徴とする内燃機関用点火コイルにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
上記内燃機関用点火コイルにおいては、一次コイルの巻線端部と、これを導通させるターミナルとの構造に工夫を行っている。
具体的には、ターミナルをコネクタケース部に設けており、ターミナルの差込部には、コイル部とコネクタケース部との嵌合方向に向けて差込スリットを形成している。また、一次コイルの巻線端部は、一次電線の巻回方向にほぼ沿って引き出している。
そして、一次コイルの巻線端部は、コイル部をコネクタケース部に嵌合する際に、嵌合穴内に配置された差込部の差込スリットに差し込まれる。このとき、巻線端部とターミナルとの接合は、巻線端部とターミナルとの圧接によって行われる。
これにより、コイル部とコネクタケース部との嵌合を行うと同時に、巻線端部とターミナルとの圧接を行うことができる。そのため、巻線端部とターミナルとの接合(圧接)を極めて簡単に行うことができ、点火コイルの組付工数を低減することができる。
【0008】
また、ターミナルをコネクタケース部に設け、巻線端部とターミナルとを圧接させる構造を採用したことにより、ターミナル同士の接合を廃止することができる。これにより、点火コイルの組付工数及び部品点数を低減することができる。
さらに、一次コイルの巻線端部は、一次電線の巻回方向にほぼ沿って引き出している。これにより、一次コイルが一次スプールの軸方向に大きくなってしまうことを防止することができる。そのため、点火コイルを軸方向に小型化することができる。また、ターミナル同士の接合を廃止できることによっても、点火コイルを小型化することができる。
それ故、上記内燃機関用点火コイルによれば、組付工数及び部品点数を低減することができ、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例にかかる、内燃機関用点火コイルを正面から見た状態で示す断面図。
【図2】実施例にかかる、コネクタケース部の周辺におけるターミナルの配置を正面から見た状態で模式的に示す説明図。
【図3】実施例にかかる、コネクタケース部の周辺におけるターミナルの配置を上面から見た状態で模式的に示す説明図。
【図4】実施例にかかる、ターミナルの差込部における差込スリットに一次コイルの巻線端部を差し込んだ状態を示す斜視図。
【図5】実施例にかかる、コイル部の端部をコネクタケース部の嵌合穴へ嵌合する状態を示す斜視図。
【図6】実施例にかかる、ターミナルの差込部における差込スリットへ、一次コイルの巻線端部が差し込まれる状態を示す説明図。
【図7】実施例にかかる、ターミナルの差込部を下方から見た状態で示す説明図。
【図8】実施例にかかる、対向板部における差込スリットの周辺を拡大して示す説明図。
【図9】実施例にかかる、他のターミナルの差込部を下方から見た状態で示す説明図。
【図10】実施例にかかる、他のターミナルの差込部を下方から見た状態で示す説明図。
【図11】実施例にかかる、他のターミナルの差込部を下方から見た状態で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した内燃機関用点火コイルにおける好ましい実施の形態につき説明する。
上記内燃機関用点火コイルにおいて、上記コネクタ部とは、上記コネクタケース部において上記点火コイルの外部と電気的に接続する部分とすることができる。また、上記コネクタケース部内に、上記一次コイルの通電及びその遮断を行うスイッチング回路が内蔵されたイグナイタが配置されている場合には、上記コネクタ部は、イグナイタの周辺とすることもできる。
【0011】
また、上記差込部は、帯板形状の板面が互いに向き合う一対の対向板部と、該一対の対向板部の先端部同士に繋がる先端板部とを有しており、上記差込スリットは、上記先端板部を分断して上記一対の対向板部まで連続して形成されていてもよい(請求項2)。
この場合には、ターミナルの差込部の剛性を容易に確保することができる。
【0012】
また、上記一次スプールの端部には、上記差込スリットに上記一次コイルの巻線端部を差し込む際に、該巻線端部をバックアップするバックアップ部が形成されていてもよい(請求項3)。
この場合には、コイル部とコイルケース部とを嵌合する際に、バックアップ部によって巻線端部をバックアップする(受ける)ことができ、差込スリットへの巻線端部の差込を安定して行うことができる。
【0013】
また、上記一次コイルの巻線端部は、上記一次スプールの周方向における互いに対向する位置に一対に引き出されており、上記一対の対向板部及び上記先端板部を有する上記差込部は、上記コネクタケース部における上記嵌合穴の周方向における互いに対向する位置に一対に配置されており、上記コイル部と上記コネクタケース部とを嵌合することにより、上記一対の巻線端部を上記一対の差込部における上記差込スリットに差し込むよう構成されていてもよい(請求項4)。
この場合には、コイル部とコネクタケース部とを嵌合する際に、一次コイルの両端に形成された巻線端部を同時に差込スリットに差し込むことができ、点火コイルの組付を一層容易に行うことができる。
【0014】
また、上記差込スリットは、上記一対の対向板部において、互いに平行な端面によって形成されたスリット本体部と、該スリット本体部から連続して上記先端板部が位置する開口側に形成され、該開口側に向けてテーパ状に広がるスリットガイド部とを有していてもよい(請求項5)。
この場合には、巻線端部を差込スリットに差し込む際には、スリットガイド部によって、銅材料等からなる、巻線端部の導体部を削り、この導体部をターミナルと接触させることができる。そのため、巻線端部の導体部をターミナルに確実に圧接することができる。
【0015】
また、上記スリットガイド部における上記開口側とは反対側の奥側には、上記スリット本体部に対して平行で該スリット本体部よりも幅が広い幅広部が形成されており、該幅広部における上記奥側には、上記スリット本体部に繋がるテーパ部が形成されており、上記スリットガイド部と上記幅広部との間には、エッジ形状の角部が形成されていてもよい(請求項6)。
この場合には、一次コイルの巻線端部が差込スリットに差し込まれる際に、エッジ状の角部によって、巻線端部における絶縁被膜を削ることができる。また、テーパ部によって、絶縁被膜が削られた巻線端部の導体部を削ることができる。そのため、より確実に、巻線端部の導体部をターミナルに圧接することができる。
【実施例】
【0016】
以下に、内燃機関用点火コイルの実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
図1は、内燃機関用点火コイル1(以下、単に点火コイル1という。)を正面から見た断面にして示す。
同図に示すごとく、点火コイル1は、内外周に同心状に配置された一次コイル21及び二次コイル22がコイルケース23内に配置されて形成されたコイル部2と、コイル部2の端部を嵌合する嵌合穴31が形成され、一次コイル21の通電及びその遮断を行うためのコネクタ部32を有するコネクタケース部3とを備えている。
【0017】
図2は、コネクタケース部3の周辺におけるターミナル4の配置を正面から見た状態で模式的に示し、図3は、コネクタケース部3の周辺におけるターミナル4の配置を上面から見た状態で模式的に示す。図4は、ターミナル4の差込部41における差込スリット42に一次コイル21の巻線端部213を差し込んだ状態を示す。図2、図3においては、ターミナル4のコネクタ部32付近の形状は模式的に示す。
図2、図3に示すごとく、一次コイル21は、樹脂製の一次スプール211の外周に一次電線212を巻回して形成されている。コネクタケース部3には、嵌合穴31内からコネクタ部32まで配置された導体からなるターミナル4が設けられている。図4に示すごとく、ターミナル4において、嵌合穴31内に配置された差込部41には、コイル部2とコネクタケース部3との嵌合方向Aに向けて、差込スリット42が形成されている。一次コイル21の巻線端部213は、一次電線212の巻回方向Bにほぼ沿って引き出されており、かつ、嵌合方向Aにおいて、差込スリット42に差し込まれている。
【0018】
以下に、本例の点火コイル1につき、図1〜図11を参照して詳説する。
図1に示すごとく、本例の点火コイル1は、コイル部2を、内燃機関としてのエンジンのプラグホール内に配置し、コネクタケース部3を、プラグホールの外部に配置して用いるものである。コネクタケース部3は、コイル部2における軸方向上端部に嵌合され、コイル部2における軸方向下端部には、スパークプラグに導通されるプラグ装着部5が設けられている。
コイル部2において、一次コイル21及び二次コイル22の内周側には、軟磁性体からなる中心コア24が配置されており、コイルケース23の外周側には、軟磁性体からなる外周コア25が配置されている。二次コイル22は、一次電線212よりも細い二次電線を、二次スプール221の外周に一次コイル21よりも多い巻回数で巻回して形成されている。
【0019】
同図に示すごとく、プラグ装着部5は、一次スプール211の軸方向下端部において二次コイル22の高電圧巻線端部を導通する高電圧端子51と、高電圧端子51に導通され、スパークプラグの電極部を導通させるコイルスプリング52と、スパークプラグの碍子部を圧入するプラグキャップ53とを用いて構成されている。
コネクタケース部3の嵌合穴31は、コネクタケース部3を貫通して形成されている。コイル部2の軸方向上端部は、コネクタケース部3の嵌合穴31の下方から嵌合穴31に嵌入される。そして、コイル部2とコネクタケース部3とが嵌合されるときには、中心コア24、一次コイル21、二次コイル22の調芯が行われる。
また、コイル部2及びコイルケース部3内に形成された隙間には、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂6が充填されている。
【0020】
コネクタケース部3内には、一次コイル21の通電及びその遮断を行うスイッチング回路が内蔵されたイグナイタ34が配置されている。コネクタケース部3から径方向外方へは、複数の導体ピン331が整列して配置されたコネクタ端子部33と、点火コイル1をエンジンに固定するための取付部35とが突出して設けられている。
コネクタ端子部33には、プラス側電源ピン、マイナス側電源ピン、スイッチング信号ピン等の複数の導体ピン331が整列して配置されている。
コネクタケース部3の下端部に形成された筒状突起部36には、プラグホール内への水の浸入を防止するためのシールラバー37が設けられている。
【0021】
図2、図3に示すごとく、本例のコネクタ部32は、コネクタ端子部33に配置された導体ピン331として形成されている。ターミナル4は、嵌合穴31内に位置する差込部41から、コネクタ端子部33に配置された導体ピン331の部分まで形成されている。なお、ターミナル4は、イグナイタ34から直接引き出して形成することもできる。
一次コイル21の両端に位置する一対の巻線端部213は、一次スプール211の軸方向上端部において、一次スプール211の周方向における互いに対向する位置に一対に引き出されている。
【0022】
一次コイル21を導通させるターミナル4は、コネクタケース部3内に一対に配設されている。各ターミナル4に設けられた差込部41は、コネクタケース部3における嵌合穴31の周方向における互いに対向する位置に一対に配置されている。本例の点火コイル1は、図5に示すごとく、コイル部2とコネクタケース部3とを嵌合することにより、一対の巻線端部213を一対の差込部41における差込スリット42に差し込むよう構成されている。なお、同図は、コイル部2の端部をコネクタケース部3の嵌合穴31へ嵌合する状態を示す。
【0023】
図4に示すごとく、各ターミナル4における差込部41は、帯板形状の板面が互いに向き合う一対の対向板部411と、一対の対向板部411の先端部同士に繋がる先端板部412とを有している。差込部41は、一対の対向板部411に対して、コイル部2に対向する下方側に先端板部412を設けて形成されている。
図5に示すごとく、一次コイル21は、一次スプール211の外周に一次電線212を巻回し、一次電線212の巻線端部213を、一次スプール211の軸方向上端部に固定して形成されている。
【0024】
図4に示すごとく、一次スプール211の軸方向上端部には、ターミナル4の差込部41における差込スリット42に一次コイル21の巻線端部213を差し込む際に、巻線端部213をバックアップするバックアップ部215が形成されている。バックアップ部215は、一次電線212の巻回方向Bにほぼ沿って引き出された一次コイル21の巻線端部213を、下方(軸方向中心側)から受ける位置に形成されている。バックアップ部215の上面には、例えば、一次コイル21の巻線端部213を保持する溝形状を形成することができる。
一次スプール211の軸方向上端部においてバックアップ部215を形成した位置には、差込部41における一対の対向板部411及び先端板部412が配置される凹部216が形成されている。
【0025】
図6は、ターミナル4の差込部41における差込スリット42へ、一次コイル21の巻線端部213が差し込まれる状態を示す。
同図に示すごとく、一次電線212は、銅材料等からなる導体部212Aの回りに、樹脂材料からなる絶縁被膜212Bをコーティングして形成されている。導体部の回りに絶縁被膜を有する構造は、二次電線も同様である。一次電線212が一次コイル21の巻線端部213としてターミナル4の差込スリット42に差し込まれるときには、絶縁被膜212B及び導体部212Aの一部が削られて、導体部212Aがターミナル4に圧接される。
【0026】
図8は、対向板部411における差込スリット42の周辺を拡大して示す。同図に示すごとく、本例の差込スリット42は、一対の対向板部411において、互いに平行な端面43によって形成されたスリット本体部421と、スリット本体部421から連続して先端板部412が位置する開口側に形成され、開口側に向けてテーパ状に広がるスリットガイド部422とを有している。スリットガイド部422における開口側とは反対側の奥側には、スリット本体部421に対して平行でスリット本体部421よりも幅が広い幅広部423が形成されている。幅広部423における奥側には、スリット本体部421に繋がるテーパ部424が形成されている。テーパ部424は、差込スリット42の側に向けて膨らむ丸み形状に形成されている。また、スリットガイド部422と幅広部423との間には、エッジ形状の角部425が形成されている。
【0027】
図6に示すごとく、スリットガイド部422は、一次コイル21の巻線端部213が差込スリット42に差し込まれる際に、巻線端部213を安定してスリット本体部421へ案内する部分として機能する。エッジ状の角部425は、一次コイル21の巻線端部213が差込スリット42に差し込まれる際に、巻線端部213における絶縁被膜212Bを削る(剥離する)部分として機能する。また、テーパ部424は、一次コイル21の巻線端部213が差込スリット42に差し込まれる際に、絶縁被膜212Bが削られた巻線端部213の導体部212Aを削る部分として機能する。一次コイル21の巻線端部213は、絶縁被膜212B及び導体部212Aの一部が削られて、スリット本体部421に圧接される。
【0028】
図7は、ターミナル4の差込部41を下方から見た状態で示す。同図に示すごとく、差込スリット42は、先端板部412及び一対の対向板部411に下方から設けられており、先端板部412を分断して、一対の対向板部411まで連続して形成されている。
差込スリット42におけるスリットガイド部422、幅広部423、テーパ部424、スリット本体部421の各端面43は、対向板部411の板面に対して垂直に形成することができる。
また、差込スリット42の各端面43は、図9〜図11に示すごとく、先が尖る断面形状に形成することもできる。図9は、各端面43において、互いに向き合う一対の対向板部411の外側端を尖らせた場合、図10は、各端面43において、互いに向き合う一対の対向板部411の内側端を尖らせた場合、図11は、各端面43において、互いに向き合う一対の対向板部411の中心部を尖らせた場合をそれぞれ示す。
【0029】
本例の点火コイル1においては、一次コイル21の巻線端部213と、これを導通させるターミナル4との構造に工夫を行っている。
具体的には、一対のターミナル4をコネクタケース部3に設けており、一対のターミナル4の差込部41には、コイル部2とコネクタケース部3との嵌合方向Aに向けて差込スリット42を形成している。また、一次コイル21の両端の巻線端部213は、一次電線212の巻回方向Bにほぼ沿って引き出している。
そして、図5、図6に示したように、一次コイル21の巻線端部213は、コイル部2をコネクタケース部3に嵌合する際に、嵌合穴31内に配置された差込部41の差込スリット42に差し込まれる。コイル部2の端部をコネクタケース部3の嵌合穴31に嵌合するとき、各巻線端部213は、スリットガイド部422によって対向板部411の中心側に案内され、エッジ状の角部425によって、絶縁被膜212Bが削られる。そして、各巻線端部213は、一対の幅広部423を通過した後、テーパ部424によって導体部212Aの一部が削られて、導体部212Aの残部がターミナル4に圧接される。
【0030】
こうして、巻線端部213とターミナル4との接合は、巻線端部213とターミナル4との圧接によって行われる。これにより、コイル部2とコネクタケース部3との嵌合を行うと同時に、一対の巻線端部213と一対のターミナル4との圧接を行うことができる。そのため、一対の巻線端部213と一対のターミナル4との接合(圧接)を極めて簡単に行うことができ、点火コイル1の組付工数を低減することができる。
【0031】
また、ターミナル4の周りにはエポキシ樹脂6が充填されており、エポキシ樹脂6を硬化させる際には応力が発生する。このエポキシ樹脂6に作用する応力は収縮側に発生し、ターミナル4の差込スリット42の幅を狭くする方向へ働く。このエポキシ樹脂6の硬化収縮力を利用することにより、一次コイル21の巻線端部213の導体部212Aとターミナル4との接触力を増加させ、これらの確実な圧接を行うことができる。
さらに、一対の対向板部411の先端部同士と繋がった先端板部412が巻線端部213と平行に配置されていることにより、エポキシ樹脂6の硬化収縮力を受けやすくなり、より確実に、巻線端部213の導体部212Aをターミナル4に圧接させることができる。
【0032】
また、一対のターミナル4をコネクタケース部3に設け、一対の巻線端部213と一対のターミナル4とを圧接させる構造を採用したことにより、ターミナル4同士の接合を廃止することができる。これにより、点火コイル1の組付工数及び部品点数を低減することができる。
さらに、一次コイル21の両端の巻線端部213は、一次電線212の巻回方向Bにほぼ沿って引き出している。これにより、一次コイル21が一次スプール211の軸方向(嵌合方向Aと同じ。)に大きくなってしまうことを防止することができる。そのため、点火コイル1を軸方向に小型化することができる。また、ターミナル4同士の接合を廃止できることによっても、点火コイル1を小型化することができる。
それ故、本例の点火コイル1によれば、組付工数及び部品点数を低減することができ、小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 内燃機関用点火コイル
2 コイル部
21 一次コイル
211 一次スプール
212 一次電線
213 巻線端部
22 二次コイル
23 コイルケース
3 コネクタケース部
31 嵌合穴
32 コネクタ部
4 ターミナル
41 差込部
411 対向板部
412 先端板部
42 差込スリット
421 スリット本体部
422 スリットガイド部
423 幅広部
424 テーパ部
425 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外周に同心状に配置された一次コイル(21)及び二次コイル(22)がコイルケース(23)内に配置されて形成されたコイル部(2)と、
該コイル部(2)の端部を嵌合する嵌合穴(31)が形成され、上記一次コイル(21)の通電及びその遮断を行うためのコネクタ部(32)を有するコネクタケース部(3)とを備えており、
上記一次コイル(21)は、樹脂製の一次スプール(211)の外周に一次電線(212)を巻回して形成されており、
上記コネクタケース部(3)には、上記嵌合穴(31)内から上記コネクタ部(32)まで配置された導体からなるターミナル(4)が設けられており、
該ターミナル(4)において、上記嵌合穴(31)内に配置された差込部(41)には、上記コイル部(2)と上記コネクタケース部(3)との嵌合方向(A)に向けて、差込スリット(42)が形成されており、
上記一次コイル(21)の巻線端部(213)は、上記一次電線(212)の巻回方向(B)にほぼ沿って引き出されており、かつ、上記嵌合方向(A)において、上記差込スリット(42)に差し込まれていることを特徴とする内燃機関用点火コイル(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関用点火コイル(1)において、上記差込部(41)は、帯板形状の板面が互いに向き合う一対の対向板部(411)と、該一対の対向板部(411)の先端部同士に繋がる先端板部(412)とを有しており、
上記差込スリット(42)は、上記先端板部(412)を分断して上記一対の対向板部(411)まで連続して形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関用点火コイル(1)において、上記一次スプール(211)の端部には、上記差込スリット(42)に上記一次コイル(21)の巻線端部(213)を差し込む際に、該巻線端部(213)をバックアップするバックアップ部(215)が形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関用点火コイル(1)において、上記一次コイル(21)の巻線端部(213)は、上記一次スプール(211)の周方向における互いに対向する位置に一対に引き出されており、
上記ターミナル(4)は、上記コネクタケース部(3)内に一対に配設されており、
該一対のターミナル(4)に設けられた上記差込部(41)は、上記コネクタケース部(3)における上記嵌合穴(31)の周方向における互いに対向する位置に一対に配置されており、
上記コイル部(2)と上記コネクタケース部(3)とを嵌合することにより、上記一対の巻線端部(213)を上記一対の差込部(41)における上記差込スリット(42)に差し込むよう構成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル(1)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関用点火コイル(1)において、上記差込スリット(42)は、上記一対の対向板部(411)において、互いに平行な端面によって形成されたスリット本体部(421)と、該スリット本体部(421)から連続して上記先端板部(412)が位置する開口側に形成され、該開口側に向けてテーパ状に広がるスリットガイド部(422)とを有していることを特徴とする内燃機関用点火コイル(1)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関用点火コイル(1)において、上記スリットガイド部(422)における上記開口側とは反対側の奥側には、上記スリット本体部(421)に対して平行で該スリット本体部(421)よりも幅が広い幅広部(423)が形成されており、
該幅広部(423)における上記奥側には、上記スリット本体部(421)に繋がるテーパ部(424)が形成されており、
上記スリットガイド部(422)と上記幅広部(423)との間には、エッジ形状の角部(425)が形成されていることを特徴とする内燃機関用点火コイル(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−93545(P2013−93545A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159184(P2012−159184)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】