説明

内燃機関

【課題】 エンジン(11)と排気駆動過給機(13)とを備え、排気駆動過給機ランナが第1液圧機械(15)、エンジン(11)の駆動軸(12)が第2液圧機械(17)に連結された内燃機関の構造の簡単化とコンパクト化を図る。
【解決手段】エンジンが負荷上限値以上で動作している時は、第1液圧機械をジェネレータ運転として排気駆動過給機ランナから機械的動力を取り出し、第2液圧機械(17)のモータ運転で機械的動力に転換して駆動軸12を駆動し、エンジンが負荷下限値以下で動作している時は、第2液圧機械のジェネレータ運転で駆動軸から機械的動力を取り出して液圧動力に転換し、この動力を第1液圧機械のモータ運転で機械的動力に転換して排気駆動過給機を駆動する。第1液圧機械と第2液圧機械(17)は、エンジン油回路の油管(19、20、21、22、23、24)を介して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気駆動過給式内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の効率を高めるべく、内燃機関に排気駆動過給機を装備することは従来から公知である。排気駆動過給運転ないしターボチャージ運転の場合、エンジンから排出される排気ガスが排気駆動過給機のタービンで膨張し、その際、タービンがエンジンに供給すべき燃焼空気を圧縮する圧縮機を駆動する。この圧縮済み燃焼空気を所定の温度に冷却するため、排気駆動過給機の圧縮機とエンジンとの間にインタクーラが接続されている。かかる排気駆動過給運転ないしターボチャージ運転により、内燃機関の効率が向上する。
【0003】
排気駆動過給機は、排気駆動過給機が内燃機関のエンジンにおける最良の空燃比を得るために必要ない余剰動力を用意する程の高い効率を示す。その余剰動力を利用すべく、特許文献1は、排気駆動過給機で発生した余剰動力を駆動動力に転換するため、排気駆動過給機に液圧ポンプを連結し、内燃機関の駆動軸に液圧モータを連結することを開示している。更に特許文献1は、排気ガスエネルギが不足している内燃機関の運転時、排気駆動過給機に連結された液圧ポンプを、駆動軸に連結された液圧モータから切り離し、液圧ポンプを電動補助ポンプによってモータとして駆動することを提案している。
【特許文献1】独国特許第3532938号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の点から出発して、本発明の課題は、新しい内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は請求項1に記載の内燃機関により解決される。本発明に従う内燃機関はエンジンと排気駆動過給機とを利用し、エンジンは燃料を燃焼させて燃料燃焼で生じた動力でエンジンの駆動軸を駆動し、排気駆動過給機は内燃機関のエンジンから出る排気ガス流をタービン内で膨張させ、その際に得られた動力で、エンジンに供給する燃焼空気流を圧縮すべく圧縮機を駆動し、排気駆動過給機のタービンロータと圧縮機インペラで形成された排気駆動過給機ランナは第1液圧機械に連結され、エンジンの駆動軸は第2液圧機械に連結される。エンジンがその負荷上限値より大きな負荷で運転されているとき、排気駆動過給機ランナに連結された第1液圧機械が、液圧を発生するジェネレータ運転で排気駆動過給機ランナから機械的動力を取り出して液圧動力に転換し、この液圧動力が、エンジンの駆動軸に連結された第2液圧機械のモータ運転で機械的動力に転換され、駆動軸に伝達されこれを駆動する。エンジンがエンジン負荷下限値より小さな負荷で運転されているとき、エンジンの駆動軸に連結された第2液圧機械のジェネレータ運転で駆動軸から機械的動力を取り出して液圧動力に転換し、この液圧動力が、排気駆動過給機ランナに連結された第1液圧機械の、液圧を回転力に変換するモータ運転で機械的動力に転換され、排気駆動過給機に伝達されてこれを駆動する。排気駆動過給機ランナに連結された第1液圧機械と、駆動軸に連結された第2液圧機械とは、エンジン油槽を介在してエンジン油回路の油管を介して接続されている。
【発明の効果】
【0006】
このため本発明による内燃機関では、排気駆動過給機ランナに連結された第1液圧機械および駆動軸に連結された第2液圧機械が、内燃機関のエンジン負荷上限値より大きな負荷運転時並びにエンジン負荷下限値より小さな負荷運転時、エンジン油回路の油管並びにエンジン油回路のエンジン油槽を介して接続される。本発明に従い、従来の特許文献1における技術で必要であった補助ポンプ等の別個の液圧配管が省かれる。この結果内燃機関の構造は著しく単純になる。排気駆動過給機を駆動軸に液圧的に連結するためにエンジン油回路を利用することで、内燃機関の構造を非常にコンパクトになし得る。
【0007】
本発明の有利な実施態様を従属請求項および以下の説明から明らかにする。次に図を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図1〜図4を参照して本発明を詳細に説明する。
【0009】
図1および図2は、本発明に基づく内燃機関10の第1実施例を、2つの異なった運転状態について示している。内燃機関10はエンジン11を利用し、該エンジン11は燃料を燃焼させ、その燃焼で発生した動力で、エンジン10のクランク軸ないし駆動軸12を駆動する。また内燃機関10は排気駆動過給機13を利用し、該過給機13はタービンと圧縮機を備えている。内燃機関10のエンジン11から出る排気ガス流が排気駆動過給機13のタービン内で膨張し、その際に生じた動力が、エンジン11に供給する燃焼空気流を圧縮すべく、排気駆動過給機の圧縮機に供給される。排気駆動過給機13のタービンロータと圧縮機インペラは軸を介して連結され、排気駆動過給機13の所謂排気駆動過給機ランナを形成している。
【実施例1】
【0010】
図1および図2において、排気駆動過給機13にクラッチ14を介して第1液圧機械15が連結されている。また、エンジン11の駆動軸12にクラッチ16を介して第2液圧機械17が連結されている。両液圧機械15、17はジェネレータ運転並びにモータ運転で駆動でき、内燃機関10のエンジン油回路のエンジン油槽18に油管19〜21(図1参照)ないし油管22〜24(図2参照)を介して接続されている。
【0011】
図1は、エンジン11がエンジン全負荷の好適には85%のエンジン負荷上限値より大きな負荷で運転されている運転状態にある内燃機関を示しれている。この運転状態では、図1に示すように、エンジン油槽18が油管19を介して、排気駆動過給機13に連結された第1液圧機械15に接続され、該液圧機械15が油管20を介して、駆動軸12に連結された第2液圧機械17に接続され、この第2液圧機械17が油管21を介してエンジン油槽18に接続されている。この場合、排気駆動過給機13に連結された第1液圧機械15はジェネレータ運転され、排気駆動過給機13の機械的余剰動力が、第1液圧機械15によって液圧動力に転換され、この動力は第2液圧機械17のモータ運転により機械的動力に転換され、駆動軸12に伝達されてこれを駆動する。従って、エンジン負荷上限値より大きなエンジン負荷時に、両液圧機械15、17により排気駆動過給機13の機械的余剰動力が、駆動軸12用の駆動動力に転換される。両液圧機械15、17は油管19、20、21を介して相互に、並びにエンジン油回路のエンジン油槽18に接続されている。
【0012】
エンジンがエンジン全負荷の、好適には25%のエンジン負荷下限値より小さな負荷で運転されている場合、図2に示すように、エンジン油槽18が油管22を経て駆動軸12に連結された第2液圧機械17に接続され、この第2液圧機械17が油管23を経て排気駆動過給機13に連結された第1液圧機械15に接続され、第1液圧機械15が油管24を経てエンジン油槽18に接続されている。この際、駆動軸から機械的動力を取り出し、液圧動力に転換すべく、駆動軸12に連結された第2液圧機械17がジェネレータ運転される。その液圧動力は、排気駆動過給機13に連結された第1液圧機械15によって機械的動力に転換され、排気駆動過給機13に伝達されてこれを駆動する。従ってこの運転状態の場合も、両液圧機械15、17はエンジン油回路の油管を介して接続されている。
【0013】
図1と2の実施例では、液圧機械15、17を定容積形液圧機械として形成している。両液圧機械15、17を貫流する流量は、可調整吸込み絞り25、26で調整できる。エンジン11をエンジン負荷上限値より大きな負荷で運転している図1の運転状態では、吸込み絞り25は活動し、吸込み絞り26は活動していない。これに対しエンジン11をエンジン負荷下限値より小さな負荷で運転している図2の運転状態では、吸込み絞り26が活動し、吸込み絞り25が活動していない。両吸込み絞り25、26は、油の流れ方向において各液圧機械15、17に前置接続されている。油管19〜21並びに油管22〜24を通る油の流れ方向を、図1および図2では油管内の矢印で示している。
【0014】
従って、本発明に基づく内燃機関では、両液圧機械は、エンジン負荷上限値より大きな負荷運転状態とエンジン負荷下限値より小さな負荷運転状態では、エンジン油回路の油管を経て互いに接続されている。本発明に従い元来存在するエンジン油回路の油管を利用することで、追加的な液圧配管を必要としない内燃機関の非常にコンパクトな構造を実現でき。この内燃機関は、コンパクトな構造と小さな単位出力当たり重量の点で優れている。
【実施例2】
【0015】
図3と4は、本発明に基づく内燃機関27の異なる実施例を示す。これら図に示す実施例の内燃機関27は、ほぼ図1と2の実施例の内燃機関10に相当している。従って、両者における同一構造群についての重複説明を避けるべく、同一構造群に同一符号を付している。図3は、エンジン負荷上限値より大きな負荷運転状態における内燃機関、図4は、エンジン負荷下限値より小さな負荷運転状態における内燃機関を示している。以下、図3と4の内燃機関27が図1と2の内燃機関と異なっている点だけを説明する。
【0016】
即ち図3と4の実施例では、液圧機械15、17を可変容積形液圧機械として形成し、もって別個に形成した吸込み絞りを省いている。この種可変容積形液圧機械では、それを貫流する容積流量を直接調整できる。かかる可変容積形液圧機械を利用する場合、内燃機関の構造を簡素化し、構造重量を一層減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に基づく内燃機関の第1実施例におけるエンジン負荷上限値より大きな負荷運転状態の概略図。
【図2】図1の内燃機関におけるエンジン負荷下限値より小さな負荷運転状態の概略図。
【図3】本発明に基づく内燃機関の第2実施例におけるエンジン負荷上限値より大きな負荷運転状態の概略図。
【図4】図3の内燃機関におけるエンジン負荷下限値より小さな負荷運転状態の概略図。
【符号の説明】
【0018】
10、27 内燃機関、11 エンジン、12 駆動軸、13 排気駆動過給機、14、16 クラッチ、15、17 液圧機械、18 エンジン油槽、19〜23 油管、25、26 吸込み絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(11)と排気駆動過給機(13)とを備え、前記エンジン(11)で燃料を燃焼させ、その燃焼で発生した動力でエンジン(11)の駆動軸(12)を駆動し、前記排気駆動過給機(13)が内燃機関のエンジン(11)から出る排気ガス流をタービン内で膨張し、その際に得られた動力が、エンジンに供給すべき燃焼空気流を圧縮するために圧縮機を駆動し、排気駆動過給機(13)のタービンロータと圧縮機インペラで形成された排気駆動過給機ランナが第1液圧機械(15)に連結され、またエンジン(11)の駆動軸(12)が第2液圧機械(17)に連結されている内燃機関において、
a)エンジン(11)がエンジン負荷上限値より大きな負荷で運転されているとき、排気駆動過給機ランナに連結された第1液圧機械(15)が排気駆動過給機ランナから機械的動力を取り出して液圧動力に転換し、この液圧動力が、駆動軸(12)に連結された第2液圧機械(17)によって機械的動力に転換され、駆動軸12に伝達されこれを駆動し、
b)エンジン(11)がエンジン負荷下限値より小さな負荷で運転されているとき、エンジンの駆動軸12に連結された第2液圧機械(17)が駆動軸から機械的動力を取り出して液圧動力に転換し、この液圧動力が、排気駆動過給機ランナに連結された第1液圧機械(15)によって機械的動力に転換されて排気駆動過給機(13)に伝達されてこれを駆動し、
c)排気駆動過給機ランナに連結された第1液圧機械(15)と、駆動軸12に連結された第2液圧機械(17)とが、エンジン油槽(18)を介在しエンジン油回路の油管(19、20、21、22、23、24)を介して接続されている
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
エンジン負荷上限値が、エンジン全負荷の85%であることを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
エンジン負荷下限値が、エンジン全負荷の25%であることを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関。
【請求項4】
第1液圧機械(15)および第2液圧機械(17)が可変容積形液圧機械として形成されたことを特徴とする請求項1から3の1つに記載の内燃機関。
【請求項5】
第1液圧機械(15)および第2液圧機械(17)が定容積形液圧機械として形成され、各液圧機械(15、17)に各々吸込み絞り(25、26)が前置接続されたことを特徴とする請求項1から3の1つに記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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