説明

内皮特異的な生体内伝達のターゲティング剤としての熱ショックタンパク質

【課題】治療薬及びシグナル伝達物質を含むがこれらに限定されない、細胞内への内在化剤として有用なLOX−1に結合するHSP又はそのフラグメントの使用。
【解決手段】本発明は、ターゲティング配位子としての熱ショックタンパク質及びそのフラグメントの使用に関する。熱ショックタンパク質は、レクチン様の酸化低密度リポタンパク質受容体(LOX−1)を結合でき、イメージング剤で標識又は治療薬に付着できる。ペプチド配列は、シグナル伝達部分及び治療薬を内在化する手段だけでなく、疾患の診断及び監視に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、シグナル伝達物質(例えば、造影剤又はイメージング剤)及び治療薬の送達及び内在化のための、熱ショックタンパク質(HSP)から誘導したペプチド及びポリペプチドを用いる化合物、組成物及び方法に関する。例えば,熱ショックタンパク質70は、酸化低密度リポタンパク質受容体(LOX−1又はOLR−1)に結合してLOX−1受容体にHSP及び任意の結合する部分を、内皮細胞を通して伝達するようシグナル伝達する。HSPペプチドはイメージング剤又は治療薬に直接又はリンカーを介して結合し得る。また、組成物は、インビボで生体分子をマクロファージ及び他の炎症性細胞を含む、高濃度のLOX−1を有する部位に送達するのに有用である。造影剤/イメージング剤は、様々なイメージングモダリティのために選択することができ,より詳細には、前記結合する部分は、例えばアテローム性動脈硬化症等の、炎症に関連するプラークの攻撃を受けやすい部位のイメージングに有用である。組成物は、炎症及び炎症と関連する疾患、(例えばアテローム性動脈硬化症,不安定プラーク及び冠動脈疾患を含むがこれらに限定されない様々な心血管疾患、並びに関節リウマチ)を診断及び監視するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
HSP(熱ショックタンパク質)は、バクテリアから哺乳類まで、全器官の細胞内に見られる高度に保存されたタンパク質のファミリーの1つである。HSPは、ストレス無負荷の細胞内でさえ細胞の代謝に要求される。HSPは、合成、構成、輸送及びタンパク質アセンブリの他の態様、例えば、新たに合成されたポリペプチドの折り畳みを支援して、他のタンパク質との早過ぎる相互作用を防止する(即ち、シャペロンとして作用する)ことを促進する。HSPの発現は、例えば温度の上昇、pHの変化及び酸素欠乏等の生理的ストレスに応答して増大する。これらのストレスは、細胞のタンパク質の三次元構造の崩壊又は変成を起こす場合がある。もしこれらのストレスが野放しにされた場合、異常に折り畳まれた又は変成したタンパク質が凝集体を形成し、最終的に細胞を殺傷する場合がある。HSPは、損傷したタンパク質に結合して、適切な形状へ再び折り畳み及び/又は損傷の発生を阻止する補助をする。
【0003】
欧州特許1046652号は、哺乳類の酸化LDL受容体(LOX−1)の細胞外ドメイン及びIgGの一部から構成されることから、融合ポリペプチドが標識剤によって標識される融合ポリペプチドを開示している。従って、融合ポリペプチドは、酸化LDLの検出、定量、分離及び精製に使用することができる。欧州特許1046652号の融合ポリペプチドは、LOX−1の検出又は定量に使用することができない。
【0004】
TATペプチド配列(YGRKKRRQRRR)及び最近報告されたAntp内在性配列(RQIAWFQNRRNKWKK)は、インビトロ及びインビボの両方で、様々な基質の内在性の活性を示している。TATペプチドは、酸化鉄ナノ粒子を非特異的に細胞内へ送達するのに使用されているが(Wunderbalinger,P. et. al., Bioconjugate Chemistry,2002,13,264−8)、診断用造影剤を内皮細胞上の疾患領域に送達する目的で、特異的受容体を標的とすることを示すものは存在しない。これらの方法の不都合は、関心細胞に造影剤を標的とするペプチドの非特異性である。造影剤の非特異的な送達は、診断する関心領域(即ち、アテローム性動脈硬化病変)を、血管系の他の機能的領域から区別する試みを阻止する。
【0005】
心血管疾患は、米国において主要な死因となっており、年間100万人越の死者数を占めている。アテローム性動脈硬化は、冠動脈心疾患の主な要因であり、西洋の国々にて非偶発的な死亡の主な原因となっている。アテローム性動脈硬化症には、例えば高血圧、上昇した総血清コレステロール、高い低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール値、低い高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール値、真性糖尿病、重症の肥満及び喫煙等の複数の危険因子が寄与することは十分裏付けられている。アテローム性動脈硬化症、並びに心筋梗塞、アンギナ、臓器不全及び卒中を含む疾患の予後及び潜在的治療法を明らかにするための、相当の取り組みが為されている。今日まで、アテローム性動脈硬化症の治療は、コレステロール値を低下させ、脂質を調整することを焦点としている。しかし、最近の研究では、冠動脈疾患に起因する死亡の40%は、総コレステロール値が220mg/dl未満の男性に起こることが示されている。アテローム性動脈硬化病変がいつどのように陥りやすく、かつ致命的となるか,最良の医療行為及び病変の進行をどのように検出及び監視するかを含む、未解決の問題が多数存在している。
【0006】
数種の侵襲的及び非侵襲的技術が、アテローム性動脈硬化症のイメージング及び該疾患の進行及び安定化の評価に使用される。これらは、冠動脈造影、血管内超音波内視鏡、血管内核磁気共鳴画像法,及び赤外線カテーテルを用いるプラークの赤外線イメージングが含まれる。これらの技術は、不安定プラークの確認に首尾よく用いられているが、一般的に侵襲性である(例えば、外科手術又はプローブ若しくはカメラの挿入を必要とする)。可溶性マーカー、例えばP−セレクチン、フォン・ヴィレブランド因子、アンジオテンシン変換酵素(C146)、C−反応性タンパク質、D−二量体(Ikeda et. al., Am.J.Cardiol.,1990,65,1693−1696)及び活性化循環炎症細胞は、不安定狭心症の患者に見られるが、それらの存在を利用して関連する病変の位置を特定することができない。カテーテルに含まれる温度感知要素は、炎症過程及び細胞増殖が発熱過程であるという理論の下に、プラークの位置を特定するのに使用されており、例えば米国特許第4986671号及び同第4752141号に記載されている。血管造影図は内腔径の像を映し、狭窄の程度を優れた分解能で提供する。しかし、血管造影図は血管壁又は様々な病理組織成分をイメージングしない。
【0007】
現在利用可能な技術は、一般的に、アテローム性動脈硬化症の形態学的及び/又は機能的パラメータのいくつかを同定して、該疾患に関連する相対的危険性を定性的に又は半定量的に評価する。しかし、これらの診断的手順は、侵襲的であるか又は例えばプラークの細胞組成物、プラーク中の各成分の分子レベルにおける生物学的特徴等の内在的な病態生理学上の情報は殆ど得られない。
【0008】
酸化LDL(oxLDL)は、アテローム性動脈硬化症と病理生物学的に深く関わっている。動脈硬化プラーク中の脂質プールは、天然LDLではなく、oxLDLの摂取に起因することが疑われている。OxLDLは、マクロファージ上でスカベンジャー受容体により認識され、マクロファージによる大量のoxLDLの摂取によって、動脈硬化プラークの重要な成分である泡沫細胞を生じる。LOX−1、即ちレクチン様酸化LDL受容体は、最近、oxLDLのための内皮細胞上の受容体として同定されている。内皮細胞によるoxLDLの内在化を仲介し、例えば国際公開第02/06771号(Sawamura,T. Nature 1997 386:73−77)に記載されているマクロファージスカベンジャー受容体とは異なる。LOX−1のアミノ酸配列を図3に示す。また、LOX−1は、マクロファージ上において発現し、oxLDL認識/内在化の役割を果たす(Yoshida,H. et. al., Biochem.J.1998 334:9−13)。LOX−1は、健康なヒトの大動脈サンプルからは殆ど検出不可能であるが、動脈硬化プラークに見られ、特に、他の手段によって検出不可能と思われる病変早期に見られる(Kataoka,H. et. al., Circulation 1999 99:3110−3117)。最近の研究は、LOX−1によるoxLDLの認識が、内皮細胞上の接着受容体の発現における重要な初期段階であることを示唆している。これらの受容体は、単球を早期の動脈硬化プラークに引き付ける役割を担うと考えられる。LOX−1に対する抗体は、oxLDLのLOX−1に対する結合を防止することによって、アテローム性動脈硬化症の治療に有用であるものとして記載されている(国際公開第01/64862号)。
【特許文献1】欧州特許1046652号明細書
【特許文献2】米国特許第4986671号明細書
【特許文献3】米国特許第4752141号明細書
【特許文献4】国際公開第02/06771号パンフレット
【特許文献5】国際公開第01/64862号パンフレット
【非特許文献1】Wunderbalinger,P. et. al., Bioconjugate Chemistry,2002,13,264−8
【非特許文献2】Ikeda et. al., Am.J.Cardiol.,1990,65,1693−1696
【非特許文献3】Yoshida,H. et. al., Biochem.J.1998 334:9−13
【非特許文献4】Kataoka,H. et. al., Circulation 1999 99:3110−3117
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在のイメージング剤及びイメージングモダリティは、主に解剖学的情報を提供する。通常、この情報は、極めて高い解像度を提供するコントラストの形態によって得られる。しかし、潜在する疾患状態は、肉体的な物理的徴候の発現前に、疾患を増殖させる生化学的プロセスに関与している。早期疾患過程において、生化学的経路又は該経路内の特定のマーカー(バイオマーカー)をイメージングする能力によって機能的情報が提供される。従って、様々な心血管疾患(例、アテローム性動脈硬化症、不安定プラーク、冠動脈疾患、腎疾患、血栓症、凝固による一過性虚血、卒中、心筋梗塞、臓器移植、臓器不全及び高コレステロール血症)を診断及び監視する非侵襲的方法が必要である。非侵襲的方法によって、プラークの潜在する病態生理学、例えばプラークの細胞組成物及びプラーク中の各成分の分子レベルにおける生物学的特徴に関する情報を得る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、治療薬及びシグナル伝達物質を含むがこれらに限定されない、細胞内への内在化剤として有用なLOX−1に結合するHSP又はそのフラグメントの使用を開示する。別の一実施形態では、HSPのLOX−1結合部分は、例えばアテローム性動脈硬化症に関連する炎症等の、身体内の炎症を確認及び位置付けする有用な手段を提供する。さらに、本発明の実施形態は、HSP(LOX−1ペプチド結合配列)を用いて、診断的手順を補助する方法を提供する。より詳細には、化合物及び組成物は、プラークの形成を検出する方法に使用される。本発明の実施形態は、さらに、LOX−1ペプチド結合配列を用い、LOX−1の過剰発現又は増大した発現に起因するヒト及び/又は他の動物の疾患治療を監視する方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、インビボでLOX−1タンパク質の発現を検出して定量することができる、LOX−1に結合可能なイメージング剤/分子を提供する。
【0012】
イメージングする目的に加え、化合物及び組成物を、高濃度のLOX−1を有する領域、例えばマクロファージ及び他の炎症細胞内の対象とする生体分子への送達機構としても使用してもよい。
本発明はさらに、炎症性疾患、例えばアテローム性動脈硬化症の治療効果を監視する方法も提供する。別の一実施形態では、本発明は、LOX−1の発現に起因する疾患又は障害の罹患が疑われる哺乳類のLOX−1の発現レベルを測定する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の実施形態では、本発明は式Iの化合物を提供する。
【0014】
(I)Y−(L)−E
式中、YはSIG又はTであって、SIGはインビボ又はインビトロで検出可能なシグナルを提供するシグナル伝達部分であり、Tは、治療薬であり、
LはYとEとを連結するリンカー基であり、
EはLOX−1に結合する熱ショックタンパク質又はそのフラグメント若しくは変異体を含む結合部分であり、
nは0又は1である。
【0015】
定義
結合部分(E)
「結合部分」(E)は、LOX1に結合することができる、哺乳類、好ましくはヒトの熱ショックタンパク質又はそのフラグメント若しくは変異体である。LOX−1に結合する周知の部分とは異なり、本発明の結合部分は、ヒト体液の存在下で(インビボ又はインビトロで)、LOX−1が過剰発現している組織(例、動脈硬化組織)が、健康な組織から区別されるように、十分な特異性をもってLOX−1に結合するよう設計されている。本願明細書で使用される用語「LOX−1に結合する熱ショックタンパク質又はそのフラグメント若しくは変異体」は、本願明細書全体を通して、ペプチド、ペプチド配列、HSPペプチド、LOX−1結合ペプチド又は結合ペプチドと称される。これらの各用語は、フラグメント、融合ペプチド、誘導体、変異体及びホモログを含むことを意図する。さらに、例えばHSP−70又は配列番号1〜5等の特定の参照は、実際には例示であり、そのフラグメント、融合ペプチド、誘導体、変異体及びホモログもその特定の参照に含まれる。
【0016】
引用した各実施形態に関して、熱ショックタンパク質(リガンド)は、完全配列、そのフラグメント又はその完全配列、フラグメント及び変異体のいずれかのホモログであってよい。タンパク質とペプチド間の相違は寸法である。用語「ペプチド」は、通常、約10,000Daの分子量を有する、100個未満のアミノ酸を含むものを示すのに使用される。好ましいHSPペプチドは、30個未満のアミノ酸を含むか又は3500Da未満の分子量を有する。抗体又はタンパク質と比較すると、これらの小さいペプチドは利点をいくつか有する。例えば、これらは、就職又はナノ粒子への結合における厳しい化学的条件を許容することができる。さらに、全体としての粒子の合成が単純化され、制御が容易となる。また、小さいペプチドは免疫原性となりにくく、さらには、基本的な生物学的過程において、分子の他のクラスと比較して広義に必要とされ、また多くの場合、小さいペプチドの受容体に対する親和性は、抗体又はそのフラグメントの親和性と比較してかなり高い。好ましくは、熱ショックタンパク質は、熱ショックタンパク質70、そのフラグメント又はその完全配列、フラグメント及び変異体のいずれかのホモログである。HSPペプチド結合配列は、HSP−70フラグメントであるのがより好ましい。熱ショックタンパク質70のフラグメントは、30−mers又はそれより短いのがより好ましい。以下に説明するように、30個又はそれより少ないアミノ酸を含むこれらのフラグメントは、より良好な特異性、輸送及び/又はクリアランス特性を有し、HSP−70の親水性部分を含むことが好ましい。30−mersは、熱ショックタンパク質70のアミノ酸数383〜640から選択されることがより好ましい。
【0017】
一実施形態では、HSP−70はその全体を使用することができるが、HSP−70の所定の部分は、細胞表面受容体に結合する傾向がより高い。未変換状態において、HSP−70は、安定な三次構造を有する。しかし短鎖オリゴマーは、安定な三次構造の状態に達しない又は代替的にHSPの結合部分を表さない可能性がある。従って、本発明の一実施形態では、HSPの親水性部分は、LOX−1との複合体に使用されるフラグメントを生成するのに利用される。親水性領域は、以下の2つの異なる利点を有する。
【0018】
(1)本来親水性であるため、これら比較的短鎖のオリゴマーは、より安定性が高いと考えられる。
【0019】
(2)親水性ドメインは、細胞結合の役目を担う可能性が最も高い。結合部分は、例えば、
・DAAKNQVALNPQNTVFDAKRLIGRKFGDPVVQSDMKHWPF(配列番号1)
?QVINDGDKPKVQVSYKGETKAFY(配列番号2)
?PEEISSMVLTKMKEIAEAYLGYPVT(配列番号3)
?DSQRQATKDAGVIAGLNVLRIINEPTAAAIAYGLDR(配列番号4)
?MGDKSENVQDLLLLDVAPLSLGLETAGGVM(配列番号5)
?KDNNLLGRFELSGIPPAPGVPQIEVTFDID(配列番号6)
を含んでもよい。
【0020】
別の一実施形態では、配列番号1〜6のホモログ又はより大きいフラグメントであるセグメントを使用することが好ましい。
【0021】
当業者であれば、HSP−70は例示であり、HSP間において大変保護される性質により他のHSPも使用できることが認識されよう。詳細には、HSP−70の結合領域に対して高い相同性を有する他のHSPからの配列を使用することが好ましい。さらに、本発明者等は、相同構造において、C−末端の半分内よりN−末端の半分内に多くの親水性ドメインが存在することが示唆されるため、C−末端の相同セグメントよりもN−末端の相同セグメントが好ましいことを見出した。
【0022】
二次構造解析を使用すれば、N−末端の相同セグメントは主にα−螺旋からなり、C−末端の相同セグメントは、主にβ−シートからなることが示される。他の好ましいフラグメントは、3−Dモデリング及び例えば静電気及び疎水性等の表面特性により同定されてもよい。
【0023】
例えば、実験的に同定される構造を有する相同タンパク質は、共有財産、詳細にはタンパク質構造データバンク(Protein Structural Databank)から同定され、その配列は、LOX−1に最も高い相同性を示した。PDB構造データベースのphi−psi BLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を使用して、相同性のあるテンプレートを同定した。その後に、タンパク質データバンクから結晶構造を得た。
【0024】
また、以下の構造情報は、有用な配列及び内部のアミノ酸置換の同定を支援するのに役立つ。以下の情報は、1HJO(ヒト)由来のHSPフラグメントに基づくものであり、www.pdb.org.にさらに記載されている。
【0025】
1.β−シートA
アミノ酸7−ILE〜アミノ酸28−ILE
アミノ酸141−ASN〜アミノ酸146−VAL
アミノ酸168−ASN〜アミノ酸174−ASN
2.β−シートB
アミノ酸42−VAL〜アミノ酸51−ILE
3.ヘリックス1
アミノ酸53−ASP〜アミノ酸61−LEU
4.ヘリックス2
アミノ酸63−PRO〜アミノ酸65−ASN
5.ヘリックス3
アミノ酸70−ALA〜アミノ酸73−LEU
6.ヘリックス4
アミノ酸81−PRO〜アミノ酸89−HIS
7.β−シートC
アミノ酸93−GLN〜アミノ酸115−TYR
8.ヘリックス5
アミノ酸116−PRO〜アミノ酸135−LEU
9.ヘリックス6
アミノ酸152−ASP〜アミノ酸164−ILE
10.ヘリックス7
アミノ酸175−GLU〜アミノ酸182−ALA
11.ヘリックス8
アミノ酸230−GLY〜アミノ酸248−LYS
12.β−シートD
アミノ酸192−GLU〜アミノ酸337−VAL
13.ヘリックス9
アミノ酸257−LYS〜アミノ酸275−SER
14.β−シートE
アミノ酸279−GLN〜アミノ酸298−THR
15.ヘリックス10
アミノ酸299−ARG〜アミノ酸323−ASP
16.ヘリックス11
アミノ酸328−LYS〜アミノ酸330−GLN
17.ヘリックス12
アミノ酸339−GLY〜アミノ酸342−ARG
18.ヘリックス13
アミノ酸344−PRO〜アミノ酸353−PHE
19.ヘリックス14
アミノ酸368−ALA〜アミノ酸380−LEU。
【0026】
これらのパラメータ及び本願明細書に記載する方法を使用して、数種のHSPフラグメントを合成した。他の変異体は、(1以上の)新規なグリコシル化及び/又はリン酸化部位を生成又は(1以上の)従来のグリコシル化及び/又はリン酸化部位を削除するように設計されたものを含む。変異体は、グリコシル化部位、タンパク質分解切断部位及び/又はシステイン残基において、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。変異体は、リンカーペプチド上の対象とするアミノ酸配列の前又は後にアミノ酸残基をさらに有するペプチドも含む。例えば、システイン残基は、対象とするアミノ酸配列のアミノ及びカルボキシ末端の両方に付加され、ジスルフィド結合の形成による対象とするアミノ酸配列の環化を可能にする。また、用語「変異体」は、対象アミノ酸の3′又は5′末端のいずれかに隣接する少なくとも1つの及び25以上のアミノ酸をさらに含む対象とするアミノ酸配列を有するポリペプチドも包含する。
【0027】
本発明のHSPタンパク質及びペプチドは、天然又は合成由来のものであってよい。天然タンパク質及びペプチドは、哺乳類由来のHSPから単離されてもよい。本願明細書にて使用される「単離された」は、元の環境(例、物質が生成される天然環境)から移された物質を意味し、つまり、その天然環境から「人の手によって改変」される。さらに、単離される物質は、単離されたHSPペプチド結合配列又は特定のHSP70フラグメント結合配列を包含する。
【0028】
用語「フラグメント」は、対象とするアミノ酸配列の連続するサブ配列からなるタンパク質又はポリペプチドを指し、天然に存在するフラグメント、例えばスプライス変異体及び天然に存在する生体内プロテアーゼ活性から得られるフラグメントを含む。そのようなフラグメントは、アミノ末端、カルボキシ末端及び/又は内部で(例えば、天然のスプライシングにより)切断されてもよい。そのようなフラグメントは、アミノ末端メチオニンを含む或いは含まずに生成されてもよい。本発明の適切なHSPフラグメントは、3〜100個のアミノ酸、好ましくは4〜50個のアミノ酸、最も好ましくは5〜30個のアミノ酸を含んでなる。
【0029】
用語「変異体」は、対象とするアミノ酸配列と比較して、1以上のアミノ酸置換、欠損及び/又は挿入が見られるタンパク質又はポリペプチドを指し、天然に存在する対立遺伝子多型又は別のスプライス変異体を含む。用語「変異体」は、(1以上の)相似若しくは相同のアミノ酸又は(1以上の)異なるアミノ酸によるペプチド配列内の1以上のアミノ酸の置換を含む。アミノ酸の相似性又は相同性を順番付けする多数の尺度が存在する(Gunnarvon Heijne,Sequence Analysis in Molecular Biology,p.123−39(Academic Press,New York、NY1987)。好ましい変異体は、1以上のアミノ酸位置におけるアラニン置換を含む。他の好ましい置換は、タンパク質の全体の正味荷電、極性又は疎水性に殆ど又は全く影響を与えない保存的置換を含む。保存的置換を、下の表1に示す。
【0030】
【表1】

表2に、アミノ酸置換の他のスキームを示す。
【0031】
【表2】

他の変異体は、例えば(a)置換領域における、例えばシート若しくは螺旋状構造等のポリペプチドバックボーンの構造、(b)ターゲティング部位における分子の電荷若しくは疎水性又は(c)側鎖の嵩を維持する効果において、より有意に異なる残基を選択する等、より保存性の低いアミノ酸置換からなる。機能上、より有意な効果があると一般的に考えられる置換は、(a)グリシン及び/又はプロリンが他のアミノ酸で置換又は削除若しくは挿入(b)親水性残基、例えばセリル又はスレオニルが、疎水性残基、例えばロイシルイソロイシル、フェニルアラニル、バリル、若しくはアラニルに(で)置換、(c)システイン残基が、任意の他の残基に(で)置換、(d)電気的陽性の側鎖を有する残基、例えばリシル、アルギニル、若しくはヒスチジルが、陰性の電荷を有する残基、例えばグルタミル若しくはアスパルチルに(で)置換又は(e)嵩高い側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが、そのような側鎖を持たない、例えばグリシンに(で)置換されるものである。
【0032】
ポリペプチド及びその変異体
用語「ポリペプチド」は、HSPヌクレオチドによってコードされるタンパク質、ペプチド及びそのフラグメント(機能性又は非機能性)を包含する。用語「誘導体」は、例えばプロセシング及び他の転写後修飾等の天然プロセスだけでなく、例えば1以上のポリエチレングリコール分子、糖、ホスフェート及び/又はそのような他の分子の付加等の化学的修飾技術により化学的に修飾された化学修飾タンパク質又はポリペプチドを指す。その(1以上の)分子は、そのように誘導体化された野生型アミノ酸に天然では結合されない。誘導体は塩を含む。そのような化学的修飾は、基礎的な教科書に詳細に説明され、またモノグラフ及び膨大な研究文献により詳細に説明されており、当業者に周知である。所定のタンパク質又はポリペプチドの数個の部位に、同一の種類の修飾が同一又は様々な程度で存在してもよいことが理解されよう。
【0033】
さらに、所定のタンパク質又はポリペプチドは、多くの種類の修飾を含んでもよい。修飾は、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖及びアミノ又はカルボキシル末端を含む、タンパク質又はポリペプチドの任意の位置において行なわれてもよい。修飾は、例えば、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解過程、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、ヒドロキシル化及びADP−リボシル化、セレノイル化、硫酸化、転移−RNA仲介によるアミノ酸のタンパク質への付加、例えばアルギニル化及びユビキチン化を含む。PROTEINS−STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES、2nd Ed.,T.E. Creighton, W.H.Freeman and Company,New York(1993)及びWold,F.,Posttranslational Protein Modification:Perspectives and Prospects,pgs.1−12 in Posttranslational Covalent Modification Of Proteins, H.C.Johnson, Ed., Academic Press, New York(1983)、Seifter et. al.,Meth.Enzymol.182:626−646(1990)及びRattan et. al.,Proteinsynthesis :Posttranslational Modificationand Aging, Ann. N. Y.Acad. Sci.663:48−62(1992)。用語「誘導体」は、分岐鎖又は分岐鎖を伴う若しくは伴わない環状タンパク質又はポリペプチドにする化学的修飾も含む。環状、分岐鎖及び分岐鎖を伴う環状タンパク質又はポリペプチドは、翻訳後の天然プロセスの結果であり、完全な合成方法によっても形成されてもよい。
【0034】
用語「ホモログ」は、そのアミノ酸配列において、2つのポリペプチドのアミノ酸位置の類似性を比較するのに通常使用される標準的な方法で測定され、対象とするアミノ酸配列の少なくとも60%の同一性を有するタンパク質を指す。2つのタンパク質間の類似性又は同一性の程度を、COMPUTATIONAL MOLECULAR BIOLOGY, Lesk、A.M.,ed.,Oxford University Press,NewYork,1988,Biocomputing: Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993,Computer Analysis of Sequence Data,PartI,Griffin,A.M.,及びGriffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994,Sequence Analysisin Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987,Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.及びDevereux,J.,eds.,M Stockton ress,New York,1991、並びにCarilloH.及びLipman,D.,SIAM,J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載されているものを含むが周知の方法に限定されない方法により容易に計算することができる。同一性を測定する好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を算出するよう設計される。同一性及び類似性を測定する方法は、一般に入手可能なコンピュータプログラムに体系化されている。
【0035】
2つの配列間の同一性及び類似性を測定するのに有用な好ましいコンピュータプログラム法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J. et. al., Nucleic Acids Research、12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA、Atschul,S.F. et. al., J.Molec.Biol.,215:403−410(1990)を含むが、これらに限定されない。BLASTXプログラムは、NCBI及び他のソース(BLAST Manual、Altschul,S. et. al.,NCBI NLM NIH Bethesda、Md.20894、Altschul、S. et. al.,J.Mol.Biol.,215:403−410(1990)より一般に入手可能である。例として、GAP(Genetic ComputerGroup、University of Wisconsin、Madison、Wis.)等のコンピュータアルゴリズムを使用して、配列の同一性を表す百分率を測定しようとする2つのタンパク質又はポリペプチドを、各々のアミノ酸が最適に一致するようにアラインする(アルゴリズムにより測定される「一致の長さ」)。
【0036】
ギャップオープニングペナルティ(平均ダイアゴナルの3倍として計算、「平均ダイアゴナル」とは、使用する比較マトリクスのダイアゴナルの平均であり、「ダイアゴナル」とは、特定の比較マトリクスにより、アミノ酸の完全一致の各々に割り当てられるスコア又は数である)及びギャップエクステンションペナルティ(通常、ギャップオープニングペナルティの1/10倍)、並びに、例えば、PAM250又はBLOSUM62等の比較マトリクスを、アルゴリズムと併せて使用する。標準的な比較マトリクス(PAM250比較マトリクスに関しては、Dayhoff et. al., Atlas of Protein Sequence and Structure、vol.5、supp.3[1978]を参照、BLOSUM62比較マトリクスに関しては、Henikoff et. al., Proc.Natl.Acad.Sci USA、89:10915−10919[1992]を参照)も、アルゴリズムにより使用されてもよい。次に、同一性の百分率をアルゴリズムにより計算する。一般的に、ホモログは、比較対象のアミノ酸と比較して、場合により1以上のアミノ酸置換、欠損及び/又は挿入を有する。
【0037】
用語「ペプチド模倣体」又は「模倣体」は、ペプチド又はタンパク質の生物学的活性を模倣するが、化学的性質においてペプチド性を持たない、即ち、ペプチド結合(即ち、アミノ酸間のアミド結合)を全く含まない、生物学的に活性な化合物を指す。用語「ペプチド模倣体」は、例えば、擬ペプチド、セミペプチド及びペプトイド等の、実際に完全なペプチド性を持たない分子を含む広義な意味で使用される。この広義な意味でのペプチド模倣体の例(ペプチドの一部が、ペプチド結合を欠いた構造で置換)について、以下に説明する。完全又は一部が非ペプチドであるかに関わらず、本発明によるペプチド模倣体は、ペプチド模倣体がベースとなる対象とするペプチドの活性基の三次元配置と大変類似の反応性のある化学部分の空間配置を提供する。この類似した活性部位の構造によって、ペプチド模倣体は、生体系に対して対象とするペプチドの生物学的活性と同様の効果がある。
【0038】
本発明のペプチド模倣体は、三次元形状及び生物学的活性の両面において、本願明細書に記載する対象とするペプチドと実質的に類似していることが好ましい。ペプチドを構造的に修飾してペプチド模倣体を形成する当分野において周知の方法の例は、特にN−末端において、活性に悪い影響を与えることなくタンパク質分解による劣化に対して安定性を高めるD−アミノ酸残基構造を導くバックボーンのキラル中心の反転を含む。1つの例は、論文「Tritriated D−ala−Peptide T Binding」、Smith C.S. et. al., Drug Development Res.,15,pp.371−379(1988)に記載されている。第2の方法は、例えばNからCへの鎖間結合イミド及びラクタムのように、環構造を安定化のために改変することである(Ede et. al., Smith and Rivier(Eds.)「Peptides:Chemistry and Biology」、Escom、Leiden(1991)、pp.268−270)。この1つの例は、例えば米国特許第4457489号(1985)に開示されているような、構造的に制限されたチモペンチン状化合物である。第3の方法は、対象とするペプチドのペプチド結合を、タンパク質分解に対する抵抗性を付与する擬ペプチド結合で置換することである。
【0039】
ペプチドの構造及び生物学的活性に影響を与えない、多数の擬ペプチド結合が記載されている。このアプローチの1つでは、retro−inverso型擬ペプチド結合で置換する(Rivier、J.E.and Marshall、G.R.(eds)「Peptides、Chemistry、Structure and Biology」、Escom、Leiden(1990)、pp.722−773の「Biologically active retro inverso analogues of thymopentin」、SistoA et. al.及びDalpozzo et. al.(1993)、Int.J.Peptide Protein Res.,41:561−566、参照により本願明細書に組み入れられる)。この変更によれば、ペプチドのアミノ酸配列は、1以上のペプチド結合がretro−inverso型擬ペプチド結合で置換されている以外は、対象とするアミノ酸配列の配列と同一であってよい。N−末端側のペプチド結合を置換することが最も好ましく、それは、そのような置換が、N−末端上に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対する抵抗性を付与するためである。さらに、アミノ酸の化学基を、同様の構造の他の化学基と置換することにより修飾してもよい。生物学的活性を全く又は殆ど損なうことなく、酵素切断に対する安定性を高める他の周知の適切な擬ペプチド結合は、還元型イソスター擬ペプチド結合である(Couder et. al.,(1993)、Int.J.Peptide Protein Res.,41:181−184、その全体が参照により本願明細書に組み入れられる)。
【0040】
従って、これらのペプチドのアミノ酸配列は、1以上のペプチド結合がイソスター擬ペプチド結合で置換されていることを除いて、対象とするアミノ酸配列の配列と同一であってよい。最もN−末端側のペプチド結合を置換するのが好ましく、それは、そのような置換が、N−末端上に作用するエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対する抵抗性を付与するためである。1以上の還元型イソスター擬ペプチド結合を有するペプチドの合成は、当分野において周知である[Couder et. al.(1993)、上記に引用]。他の例は、ケトメチレン又はメチルスルフィド結合を導入して、ペプチド結合を置換することを含む。
【0041】
ペプトイド誘導体は、生物学的活性のための重要な構造的決定因子を保持するペプチド模倣体の別のクラスであるが、ペプチド結合を削除することにより、タンパク質分解に対する抵抗性が付与される(Simon et. al.,1992、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:9367−9371、その全体が参照により本願明細書に組み入れられる)。ペプトイドは、N−置換グリシンのオリゴマーである。各々天然アミノ酸の側鎖に対応する、多数のN−アルキル基が記載されている(Simon et. al.(1992)、上記に引用)。対象とする分子の数個又は全部のアミノ酸が、置換アミノ酸に対応するN−置換グリシンで置換されてもよい。
【0042】
用語「ペプチド模倣体」又は「模倣体」は、反転−Dペプチド及びエナンチオマーも含む。用語「反転−Dペプチド」は、対象とするペプチドのL−アミノ酸配列と比較して、逆順に配列されたD−アミノ酸からなる、生物学的に活性なタンパク質又はペプチドを指す。用語「エナンチオマー」は、1以上の対象とするペプチドのアミノ酸配列内のL−アミノ酸残基が、対応する(1以上の)D−アミノ酸残基で置換されている、生物学的に活性なタンパク質又はペプチドを指す。
【0043】
LOX−1の様々な種が単離され、配列決定されており、比較的有意な種間の相違性が明らかになっている[Chen、M et. al., J.Biochem.,355:289−95(2001)]。米国特許第5962260号及び米国特許第6197937号は、ヒト及びウシLOX−1のアミノ酸配列を開示している。任意の種からLOX−1を単離するための、これら文献に開示された技術を使用して、HSPペプチド(E)のLOX−1に対する結合を容易に確立することができる。
【0044】
このように、結合部分(E)は、周知のLOX−1ポリペプチドのアミノ酸配列が与えられる場合、周知の技術(一般的に、単離又は合成)により得ることができる。周知の及び/又は考えられる抗原決定基又はエピトープ結合部位が与えられる場合、LOX−1の特定の部分のみに結合する部分(E)も合成することができる。
【0045】
異なるE基の結合親和性のスクリーニング及び評価に、多数の方法を使用することができる。1つの方法は、例えばインビトロでの蛍光ベースの実験を含む。細胞ベースのアッセイにおいて、同時に、検出に必要なシグナルの生成する要素の量、つまり結合部分(E)のコンジュゲートに必要なシグナルの生成する要素の量に関する情報を得ることができる。このような実験において、蛍光色素は、好ましくは例えばアミノ酸配列KKGG(K=リシン、G=グリシン)等の可撓性リンカーを介してHSPペプチドのN−末端に結合される。N−末端が色素を付着する更なる官能基末端を持たないシグナル伝達部分に結合される場合、色素は配列内(例、リンカー内)に組み込まれたK残基の側鎖アミンを介して結合することもできる。
【0046】
使用するスクリーニングアッセイの種類に関わらず、(例、一般的なインビトロモデル)、基質表面上のLOX−1の量が、まず、その基質が細胞又は別の基質かに関わらず周知であると仮定する。マルチウェル透明プレート内で、LOX−1はウェル全体にて均一に(純粋なLOX−1タンパク質として又は細胞上に発現して)存在する。次いで、標識HSPペプチドを加え、異なるウェル内で最適な時間インキュベートすることができる。次いで、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝剤でウェルを徹底的に洗浄し、続いてレーザーを照射して、取り付けた色素を励起させ蛍光発光を開始して、プレートをイメージングする。各ウェルからの蛍光の強度、つまり、様々なペプチド結合の程度を定量化することができる。絶対結合数を得るためには、結合アッセイの同様の条件下で、周知の量の色素コンジュゲートHSPペプチドの蛍光強度を得ることにより、シグナルをさらに調整することが好ましい。LOX−1分子の数が周知であり、また結合するペプチドの量が求められている場合、結合親和性を評価する解離定数を計算することができる。このように、様々なHSPペプチドの結合親和性を定量的にスクリーニングすることができる。細胞当たりの結合ペプチドの数も、ペプチドにコンジュゲートしたシグナルを生成する要素からの検出可能なシグナルの得るのに必要なパラメータに関する情報を提供することができる。
【0047】
アッセイにおいて、画像は、レーザー共焦点顕微鏡又は撮像装置を使用して得てもよい。例えば、細胞に結合するペプチドの画像は、以下のようにレーザー共焦点顕微鏡を使用して得ることができる。HCAE細胞を高品質ホウケイ酸塩8−チャンバガラススライド(Electron Microscopy Sciences、Fort Washington、PA)上で増殖させることができる。次いで、標識ペプチドの1mg/ml水溶液約10μLを細胞に加えて、1時間インキュベートする。その後、好ましくは細胞をHBSS緩衝液で3回洗浄する。次いで、細胞を4%ホルムアルデヒド溶液で10分間固定化することができる。緩衝液による最後の洗浄後、スライドをイメージングする。画像は、Arイオンレーザー(488nm線を選択)及び510nmロングパスフィルターを使用して、OLYMPUSレーザー走査共焦点顕微鏡、Fluoview 300モデルにより得ることが好ましい。画像は、2つのチャネル、反射光及び蛍光モードチャネル又は両方のチャネルのオーバーレイを用いて獲得することができる。さらに、例えば、共焦点顕微鏡法を介して内在化のレベルを調べることが可能である。共焦点顕微鏡法は、三次元全域を走査する能力を備えることによって、細胞内部及び細胞表面全体を検査することができる。従って、蛍光剤が内在化したか否かを詳細に調べることができる。
【0048】
より高いスループットのスクリーニングのために、上述した方法を拡張することができる。96ウェルプレートを8ウェルスライドと交換し、共焦点顕微鏡をBiorad撮像装置、FX Proplusモデルと交換してもよい。例えば、細胞に結合するフルオレセイン標識HSPの画像は、撮像装置を使用して得ることができ、それによりHCAE細胞を、一般に市販されている96ウェルプレート(Becton−Dickenson、Franklin Lakes、NJ)上のウェル内に置き、増殖させることができる。次いで、1mg/ml標識HSP水溶液約10μLを細胞に加え、1時間インキュベートすることができる。その後、好ましくは細胞をPBS緩衝液で3回洗浄する。緩衝液による最後の洗浄後、蛍光プローブとして「フルオレセイン」を選択して、Biorad撮像装置を使用してスライドをイメージングすることができる。
【0049】
シグナル伝達部分(SIG
「シグナル伝達部分」SIGは、インビボ又はインビトロで検出することができるシグナルを提供する。SIGは、それ自体で又は他の物質と反応することによりイメージング可能であり、検出機器を用いてインビボ又はインビトロで検出可能な構成要素を示す。適切なシグナル部分(SIG)は、蛍光色素、放射性核種、近赤外色素、磁気的に活性な同位体、超常磁性粒子、50を越えるZ値を有する金属イオン、例えばミセル、リポソーム、ポリソーム及びガス封入マイクロバブル等の封入種、並びにこれらの組合せを含む。結合部分(E)のLOX−1に対する結合を損なうことなく、結合部分(E)に結合して検出可能なシグナルを生成することができる限り、任意のシグナル部分/ソースを使用することができる。
【0050】
インビボでのイメージングに適切なSIG部分は、
・単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)によるイメージングのためのγ放射体である放射性核種、
・陽電子放射断層撮影(PET)のための陽電子放射体である放射性核種、
・光学的イメージングのための蛍光又は化学発光を発することできる色素、
・X線イメージング、コンピュータ断層撮影法(CT)のための、ハイ−Z元素、好ましくはヨウ素又はビスマスを含む分子、
・超音波検査法のための、ガス封入マイクロバブル、フッ化炭素充填ミセル、
・核磁気共鳴画像法(MRI)のための、例えばキレートGd+++等の常磁性イオン又は例えば超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPIO)等の超常磁性粒子又は
・好ましくは酸化鉄及び元素鉄の少なくともどちらかを含むナノ粒子である超常磁性粒子、を含む。
【0051】
IG基は、インビボでのイメージングに適していることが好ましい。そのようなSIG基は、哺乳類身体の外部から、即ちインビボでの使用のために設計された検出器、例えば血管内照射又は例えば内視鏡等の光学検出器又は術中使用のために設計された放射線検出器を使用して検出してもよい。好ましいインビボSIG基は、インビボで、投与後に非侵襲的方法で外部から検出可能なものである。インビボでのイメージングに適切な最も好ましいSIG基は、特にSPECT又はPETを用いるイメージングに適切な、放射性、特に放射性金属イオン、γ線を放射する放射性ハロゲン及び陽電子を放出する放射性非金属である。
【0052】
インビボでのイメージングに適したSIGは、最も好ましくは、
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線を放射する放射性ハロゲン、
(iv)陽電子を放出する放射性非金属、
(v)過分極NMR活性核、
(vi)インビボでの光学的イメージングに適したレポーター、
(vii)血管内検出に適したβ−放射体、から選択される。
【0053】
IGが放射性金属イオン、即ち放射性金属の場合、適切な放射性金属は、例えば64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Ga等の陽電子放射体、例えば99mTc、111In、113mIn又は67Ga等のγ−放射体のいずれであってよい。好ましい放射性金属は、99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。最も好ましい放射性金属は、γ−放射体、特に99mTcである。
【0054】
IGが常磁性金属イオンの場合、適切なそのような金属イオンは、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III)、Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)又はDy(III)を含む。好ましい常磁性金属イオンは、Gd(III)、Mn(II)及びFe(III)であり、Gd(III)が特に好ましい。
【0055】
IGがγ線を放射する放射性ハロゲンの場合、放射性ハロゲンは、適切には123I、131I及び77Brから選択される。好ましいγ線放出放射性ハロゲンは、123Iである。
【0056】
IGが陽電子を放出する放射性非金属の場合、そのような適切な陽電子放射体は、11C、13N、15O、17F、18F、75Br、76Br又は124Iを含む。好ましい陽電子放出放射性非金属は、11C、13N、18F及び124Iであり、特に11C及び18Fが好ましく、特に18Fが最も好ましい。
【0057】
IGが過分極NMR−活性核の場合、そのようなNMR−活性原子核は、核スピンがゼロであり、13C、15N、19F、29Si及び31Pを含む。これらのうちでは、13Cが好ましい。用語「過分極」は、NMR−活性原子核の平衡分極を越えた、分極の程度の増大を意味する。(12Cに対する)13Cの天然存在度は約1%であり、適切な13C標識化合物は、過分極化される前に、少なくとも5%、好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも90%に適切に濃縮される。式(I)の化合物の少なくとも1つの炭素原子は、適切には13Cで濃縮され、続いて該13Cは過分極化される。
【0058】
IGがインビボでの光学的イメージングに適するレポーターの場合、該レポーターは、光学的イメージング法において直接的に又は間接的に検出することが可能な任意の部分である。レポーターは、光散乱体(例、着色又は非着色粒子)、光吸収体又は光放射体である可能性がある。レポーターは、発色団又は蛍光化合物等の色素であることがより好ましい。色素は、紫外線光から近赤外光までの波長を伴う電磁スペクトル内の光と相互作用する任意の色素であってよい。レポーターは、蛍光特性を有することが最も好ましい。
【0059】
好ましい有機発色団及び蛍光団レポーターは、広範囲に非局在化した電子系を有する基、例えばシアニン、メロシアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン、ポルフィリン、ピリリウム色素、チオピリリウム(thiapyriliup)色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、インドアニリン、ベンゾフェノキサジニウム色素、ベンゾチアフェノチアジニウム色素、アントラキノン、ナフトキノン、インダスレン、フタロイルアクリドン、トリスフェノキノン、アゾ色素、分子内及び分子間電荷移動色素及び色素錯体、トロポン、テトラジン、ビス(ジチオレン)錯体、ビス(ベンゼン−ジチオレート)錯体、ヨードアニリン色素、ビス(S、O−ジチオレン)錯体を含む。蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)及び様々な吸収/放射特性を有するGFPの修飾も有用である。所定の希土類金属(例、ユーロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の錯体も、蛍光ナノ結晶(量子ドット)のように、所定の文脈において使用される。
【0060】
使用することができる発色団の特定の例は、フルオレセイン、スルホローダミン101(Texas Red)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーンCy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、Marina Blue、Pacific Blue、Oregon Green 88、Oregon Green 514、テトラメチルローダミン、並びにAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700及びAlexa Fluor 750を含む。
【0061】
特に好ましくは、可視又は近赤外領域内、400nm〜3μm、特に600〜1300nmに吸収極大を有する色素である。
【0062】
光学的イメージングモダリティ及び測定技術は、発光イメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光干渉断層法、透過率イメージング、時間分解透過率イメージング、共焦点イメージング、非線形顕微鏡法、光音響イメージング、音響光学イメージング、分光法、反射分光法、干渉分光法、コヒーレンス干渉法、拡散光トモグラフィー及び蛍光を介した拡散光トモグラフィー(連続波、時間領域及び周波数領域系)、並びに光散乱、吸収、偏光、発光、蛍光寿命、量子収量及び消光の測定を含むが、これらに限定されない。
【0063】
イメージング部分が、血管内検出に適したβ−放射体である場合、適切なそのようなβ−放射体は、放射性金属67Cu、89Sr、90Y、153Sm、186Re、188Re又は192Ir、並びに非金属32P、33P、38S、38Cl、39Cl、82Br及び83Brを含む。
【0064】
特に好ましいシグナル部分は、フルオレセイン、11C、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、111In、123I、124I、125I、131I、154−158Gd及び175Lu、超常磁性酸化鉄ナノ粒子、重金属イオン、ガス封入マイクロバブル、光学色素、ポルフィリン、テキサフィリン、高度にヨウ化された有機化合物、そのキレート、前述した成分の1種以上を含むポリマー、前述した成分の1種以上を含むエンドエドラル(endoedral)フラーレン及びそれらの混合物を含む。さらに好ましくは、シグナル部分が、PETに関しては18F、MRIに関しては超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPIO)又はキレートGd、X線CTに関してはヨウ素及びSPECTに関しては99mTcである。インビボでのイメージングに特に好ましい実施形態では、SIGは、18F、11C、68Ga及び64Cu(PETに関しては)から選択された陽電子放出放射性同位体又は123I及び99mTc(SPECTに関しては)から選択されたγ線放出放射性同位体である。最も好ましくは、シグナル部分は、PETに関しては18Fである。
【0065】
IGは、当分野において周知の方法により導入されてもよい。放射性SIG基は、適切な前駆体の放射標識により都合よく導入することができる。「前駆体」は、結合部分Eの非放射性誘導体を適切に含み、該非放射性誘導体は、所望の非金属放射性同位体の都合よい化学形態との化学反応を、最小のステップ数(理想的には1ステップ)で、かつ所望の放射性生成物を得る有意な精製を必要とすることなく(理想的には更なる精製工程なしで)行なうことができるように設計されている。そのような前駆体は合成品であり、高い化学的純度で好適に得られる。「前駆体」は、HSPペプチドの所定の官能基のための保護基(PGP)を任意に含んでもよい。適切な前駆体は、Bolton、J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。
【0066】
用語「保護基」(PGP)は、望ましくない化学反応を阻害又は抑制するが、分子の他の部分を変更しない十分に穏やかな条件下で、対象とする官能基から切断するのに十分な反応性を有するよう設計される基を意味する。脱保護の後、所望の生成物が得られる。保護基は、当業者に周知であり、適切には、アミン基に関しては、Boc(即ち、tert−ブチルオキシカルボニル)、Fmoc(即ち、フルオレニルメチルカルボニル)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]又はNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)、カルボキシル基に関しては、メチルエステル、tert−ブチルエステル又はベンジルエステルから選択される。ヒドロキシル基に関して、適切な保護基は、メチル、エチル若しくはtert−ブチル、アルコキシメチル若しくはアルコキシエチル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)又はトリアルキルシリル、例えばテトラブチルジメチルシリルである。チオール基に関して、適切な保護基は、トリチル及び4−メチルベンジルである。更なる保護基の使用は、「Protective Groups in Organic Synthesis」、Theorodora W.Greene及びPeter G.M.Wuts、(Third Edition、John Wiley&Sons、1999)に記載されている。
【0067】
非金属放射性同位体を用いた放射標識のための好ましい前駆体は、求電子又は求核のいずれかのハロゲン化を受けるか又はアルキル若しくはフルオロアルキルハライド、トシラート、トリフレート(即ち、トリフルオロメタンスルホネート)若しくはメシラートから選択されたアルキル化剤による容易なアルキル化を受けるか、アルキレートチオール部分をアルキル化してチオエーテル結合を形成するか又は標識アルデヒド若しくはケトンとの縮合を受ける誘導体を含む。第1のカテゴリーの例は、
(a)例えばトリアルキルスタンナン(例、トリメチルスタンニル若しくはトリブチルスタンニル)又はトリアルキルシラン(例、トリメチルシリル)等の有機金属誘導体、
(b)ハロゲン交換のための非放射性ヨウ化アルキル又は臭化アルキル及び求核ハロゲン化のためのトシル酸アルキル、メシル酸アルキル又はアルキルトリフレート、
(c)求電子ハロゲン化が行なわれるように活性化した芳香環(例、フェノール)及び求核ハロゲン化が行なわれるように活性化した芳香環(例、アリールヨウドニウム、アリールジアゾニウム、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)である。
【0068】
容易なアルキル化を受ける好ましい誘導体は、アルコール類、フェノール類又はアミン類であり、特にフェノール類及び立体障害第一級又は第2級アミン類が好ましい。チオール含有放射性同位体反応物をアルキル化する好ましい誘導体は、N−ハロアセアチル類、特にN−クロロアセチル及びN−ブロモアセチル誘導体である。
【0069】
前駆体は、固体支持体マトリクスに共有結合する状態で任意に供給されてもよい。その場合、所望のイメージング剤生成物を溶液中で形成しながら、出発物質及び不純物を固相に結合させたまま残留する。18F−フッ化物を用いた固相の求電子フッ素化する前駆体は、国際公開第03/002489号パンフレットに記載されている。18F−フッ化物を用いた固相の求核フッ素化する前駆体は、国際公開第03/002157号パンフレットに記載されている。
【0070】
IGが例えばヨウ素等の放射性ハロゲンの場合、前駆体は、非放射性ハロゲン原子、例えばヨウ化若しくは臭化アリール(放射性ヨウ素交換を可能にする)、活性化前駆体アリール環(例、フェノール基)、有機金属化合物(例、トリアルキル錫又はトリアルキルシリル)又は有機前駆体、例えばトリアゼン又は求核置換のための良好な脱離基、例えばヨードニウム塩を適切に含む。放射性ハロゲン(123I及び18Fを含む)を導入する方法は、Bolton[J.Lab.Comp.Radiopharm.、45、485−528(2002)]に記載されている。放射性ハロゲン、特にヨウ素を結合し得る適切な前駆体アリール基の例を、以下に示す。
【0071】
【化1】

双方とも芳香環上にて放射性ヨウ素置換を可能にする置換基を含有する。これに代わる放射性ヨウ素を含有する置換基は、放射性ハロゲン交換、例えば以下の直接ヨウ素化で合成し得る。
【0072】
【化2】

IGがヨウ素の放射性同位体である場合、放射性ヨウ素原子は、飽和脂肪族系に結合するヨウ素元素は、インビボで代謝を受けやすく、従って放射性ヨウ素は損失されることが周知であるため、好ましくは、例えばベンゼン環等の芳香環又はビニル基に対する直接共有結合を介して付着する。
【0073】
IGがフッ素の放射性同位体である場合、放射性フッ素原子は、フッ化アルキルが生体内代謝に対して抵抗性を有することから、フルオロアルキル又はフルオロアルコキシ基の一部を形成することができる。また、放射性フッ素原子は、芳香環、例えばベンゼン環に対して直接共有結合により付着することができる。18F−フッ化物と、良好な脱離基、例えば臭化アルキル、メシル酸アルキル又はトシル酸アルキルを有する適切な前駆体との反応を用いた標識を直接介して放射性フッ素化することができる。18Fはまた、例えば18F(CHOMs(Msは、メシラートである)等のアルキル化剤を用いて、アミン前駆体をN−アルキル化してN−(CH18Fを得るか又は18F(CHOMs若しくは18F(CHBrを用いてヒドロキシル基をO−アルキル化して導入することもできる。また、18Fは、18F(CHOH反応物を用いたN−ハロアセアチル基のアルキル化により導入され、NH(CO)CHO(CH18F誘導体を得ることができる。アリール系について、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール第4級アンモニウム塩からの18F−フッ化物の求核置換が、アリール18F誘導体への適切な経路である。
【0074】
第一級アミン基を含む前駆体を、Kahn et. al.[J.Lab.Comp.Radiopharm.45、1045−1053(2002)]及びBorch et. al.[J.Am.Chem.Soc.93、2897(1971)]に教示されているように、18F−C−CHOを用いた還元的アミノ化により18Fで標識することができる。この方法は、アリール第一級アミン、例えばフェニル−NH又はフェニル−CHNH基を含む化合物にも有効に適用することができる。
【0075】
18Fで標識する好ましい方法は、Poethko et. al.[J.Nuc.Med.,45,892−902(2004)]に教示されているように、前駆体としてペプチドのアミノオキシ誘導体を使用することである。次いで、その前駆体を酸性条件下(例、pH2〜4)で18F−C−CHOと縮合させて、オキシムエーテル結合を介して所望の18F−標識イメージング剤を与える。オキシムエーテルは、加水分解に対する抵抗性が遙かに大きい点で、イミンよりも有利である。
【0076】
アミン含有前駆体を、例えば以下の18F−標識活性エステルとの反応によって18Fで標識して、アミド結合で結合する生成物を与えてもよい。
【0077】
【化3】

N−ヒドロキシスクシンイミドエステル及びそのペプチド標識における使用は、Vaidyanathan et. al.[Nucl.Med.Biol.,19(3),275−281(1992)]及びJohnstro金属[Clin.Sci.,103(Suppl.48)、45−85(2002)]に教示されている。18F−標識誘導体へ至る合成経路の更なる詳細は、Bolton、J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。
【0078】
IGが金属イオンを含んでいる場合、金属イオンは金属錯体として存在する。用語「金属錯体」は、1以上の配位子を有する、金属イオンの配位錯体を意味する。金属錯体は、「トランスキレーション(transhelation)に対して抵抗性を有する」、即ち金属配位部位に関して競合する可能性がある他の配位子との容易な配位子交換を受けないことが極めて好ましい。競合する可能性がある配位子は、HSPペプチドそれ自体及び生体外の製剤中の他の賦形剤(例、製剤中に使用される放射性防御物質若しくは抗菌保存剤)又は生体内の内因性化合物(例、グルタチオン、トランスフェリン若しくは血漿タンパク質)を含む。
【0079】
金属錯体は、コンジュゲートである前駆体から誘導され(即ち、コンジュゲートした金属を配位する配位子)、配位子はE及びリンカー基L(存在する場合)のいずれかに共有結合する。
【0080】
トランスキレーションに対して抵抗性を有する金属錯体を形成する、本発明に使用される適切な配位子は、2〜6、好ましくは2〜4個の金属供与体原子が、(金属供与体原子に結合する炭素元素及び複素原子のいずれかの非配座バックボーンを有することにより)5員又は6員のキレート環を形成するように配置されるキレート剤又は例えばイソニトリル、ホスフィン又はジアゼニド等の、金属イオンに対して強力に結合する供与体原子を含む単座配位子を含む。キレート剤の一部として金属に良好に結合する供与体原子の例は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンである。ホスフィンは強力な金属錯体を形成することによって、単座又は二座のホスフィンでさえも適切な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドの線状構造は、キレート剤への容易な組み込みに有用ではないため、単座配位子として使用される。適切なイソニトリルの例は、例えばtert−ブチルイソニトリル等の単純アルキルイソニトリル及び例えばmibi(即ち、1−イソシアノ−2−メチル−2−メチルプロパン)等のエーテル置換イソニトリルを含む。適切なホスフィンの例は、テトロフォスミン及び例えばトリス(3−メチルプロピル)ホスフィン等の単座ホスフィンを含む。適切なジアゼニドの例は、配位子のHYNICシリーズ、即ち、ヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミドを含む。
【0081】
トランスキレーションに対して抵抗性を有する金属錯体を形成するテクネチウムに対する適切なキレート剤の例は、以下の(i)〜(v)を含むが、これに限定されない。
【0082】
(i)式のジアミンジオキシム
【0083】
【化4】

式中、E1〜E6は各々独立にR′基であり、
各R′は、H若しくはC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキル、C2−10カルボキシアルキル若しくはC1−10アミノアルキルであるか又は2つ若しく3個以上のR′基は、それらが結合する元素と共炭素環、複素環、飽和若しくは不飽和環を形成し、かつ1以上のR′基は、式(I)の−(L)Eに結合し、
Qは、式−(J)−の架橋基であり、
fは、3、4又は5であり、各Jは、独立に−O−、−NR′−又は−C(R′)2−であり、但し、J基は、−O−、−NR′−の少なくとも1つを含有し、
好ましいQ基は、
Q=−(CH)(CHR′)(CH)−即ち、プロピレンアミンオキシム又はPnAO誘導体、
Q=−(CH(CHR′)(CH−即ち、ペンチレンアミンオキシム又はPentAO誘導体、
Q=−(CHNR′(CH−であり、
〜Eは、好ましくはC1−3アルキル、アルキルアリールアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、フルオロアルキル、カルボキシアルキル及びアミノアルキルから選択される。最も好ましくは、E〜E基の各々は、CHであり、
コンジュゲーションは、好ましくはE若しくはER′基のいずれか又はQ部分のR′基に存在する。最も好ましくは、HSPペプチドはQ部分のR′基に結合する。HSPペプチドがQ部分のR′基に結合する場合、R′基は橋頭位置に存在するのが好ましい。その場合、Qは、好ましくは−(CH)(CHR′)(CH)−、−(CH(CHR′)(CH−又は−(CHNR′(CH−であり、最も好ましくは−(CH(CHR′)(CH−であり、特に好ましい二官能性ジアミンジオキシムキレート剤は、次の式のものであり、従ってHSPペプチドは、橋頭−CHCHNH基を介して結合するジアミンジオキシムである。
【0084】
【化5】

(ii)例えばMAG(メルカプトアセチルトリグリシン)等のチオールトリアミド供与体の組又は例えばPica等のジアミドピリジンチオール供与体の組を有するNS配位子及び関連する配位子
(iii)例えばBAT又はECD(即ち、エチルシステイナート二量体)等のジアミンジチオール供与体の組を有する又は例えばMAMA等のアミドアミンジチオール供与体の組を有するN配位子
(iv)例えばサイクラム、モノオキソサイクラム又はジオキソサイクラム等のテトラミン、アミドトリアミン又はジアミドジアミン供与体の組を有する鎖状又は大環状配位子であるN配位子
(v)ジアミンジフェノール供与体を有するN配位子 。
【0085】
上述した配位子は、テクネチウム例えば94mTc又は99mTcを錯化するのに特に適しており、Jurisson et. al.[Chem.Rev.,99,2205−2218(1999)]により完全に記載されている。配位子は、他の金属、例えば銅(64Cu又は67Cu)、バナジウム(例、48V)、鉄(例、52Fe)又はコバルト(例、55Co)にも有用である。他の適切な配位子は、Sandozによる国際公開第91/01144号パンフレットに記載されており、インジウム、イットリウム及びガドリニウムに特に適した配位子、特に大環状アミノカルボキシラート及びアミノホスホン酸配位子を含む。ガドリニウムの非イオン性(即ち、中性)金属錯体を形成する配位子は周知であり、米国特許第4885363号に記載されている。放射性金属イオンがテクネチウムの場合、配位子は、四座であるキレート剤が好ましい。テクネチウムのための好ましいキレート剤は、ジアミンジオキシム又は上述したN若しくはNS供与体の組を有する。
【0086】
連結剤
Lは、Y、即ちシグナル部分SIG又は治療薬Tを結合部分(E)に接続することができる任意の部分を含む。説明した各実施形態では、Lは、独立に選択されてもよい。例えば、リンカーは、2以上の原子価の有機基、1種以上の金属陽イオンと結合する金属キレート剤又はその組合せであってよい。多くの場合、SIGをEに又はTをEに付着するため、Lを含むことが好ましい。即ち、式(I)のnは1である。
【0087】
上記したように、SIGが金属の場合、Lは、金属を配位する配位子又はキレート剤を任意に含んでもよい。
【0088】
2以上の原子価の有機部分は、Lとして有用であり、例えばベンゾエート又はプロピオネート等の小さい有機部分を含む(図4)。有機基は、共有結合的に又はイオン結合的に、E及びYの双方に結合してもよい。連結剤として使用するに適した有機部分は、一般的に約1〜約10,000個の炭素元素を有し、アルキレン、アリーレン、シクロアルキレン、アミノアルキレン、アミノアリーレン、アミノシクロアルキレン、チオアルキレン、チオアリーレン、チオシクロアルキレン、オキシアルキレン、オキシアリーレン、オキシシクロアルキレン、アシルアルキレン、アシルアリーレン、アシルシクロアルキレン単位及びその組合せからなる群から選択される有機基を含んでもよい。特に好ましいアシルアリーレン単位は、以下の構造の4−アシルフェニレン基である。
【0089】
【化6】

他の適切な連結剤は、金属キレート剤、例えばDTPA、1,4,7−トリアザ−シクロノナン−N,N′,N″−三酢酸(NOTA)、p−ブロモアセトアミド−ベンジル−テトラエチルアミンテトラ酢酸(TETA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(DOTA)、EDTA及びCHXaの1以上を含む。金属キレート剤は、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、111In、154−158Gd及び175Luの陽イオンから選択される少なくとも一種の金属に結合できることが好ましい。
【0090】
当業者には明らかであろうが、様々な連結剤が所定のシグナル部分と共に使用される。例えば、金属シグナル生成部分、例えば64Cuは、一般的に結合配位子を必要とするが、18Fは結合配位子を必要としない。さらに、標識した人工官能基、例えば18F−フルオロプロピオネート又は18F−フルオロベンゾエート(図4)を一旦調製したら、活性エステルのコンジュゲーションによりペプチドにコンジュゲートすることができるように使用することもできる。
【0091】
Lは、好ましくは式−(A)−を有し、式中、各Aは、独立に、
−CR−、−CR=CR−、−C≡C−、−CRCO−、−COCR−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SONR−、−NRSO−、−CROCR−、−CRSCR−、−CRNRCR−、C4−8シクロヘテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基又はC3−12ヘテロアリーレン基、アミノ酸、糖又は単分散のポリエチレングリコール(PEG)構成単位であり、
Rは、H、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C1−4アルコキシアルキル及びC1−4ヒドロキシアルキルから独立に選択され、
zは、値0〜10の整数である。
【0092】
式Iのリンカー基(L)の役割は、シグナル伝達部分をHSPペプチドの活性部位から遠ざけると考えられる。このことは、阻害剤のLOX−1に対する結合が損なわれないように、SIGの嵩が比較的高い場合(例、金属錯体)特に重要である。これは、嵩高い基がそれ自身を活性部位から離れた状態である可撓性(例、単純アルキル鎖)及び/又はシクロアルキル又はアリールスペーサが、金属錯体を活性部位から遠ざけるように配向させる剛性の組合せにより達成することができる。
【0093】
リンカー基の性質は、イメージング剤の体内分布を変更する際にも使用し得る。従って、例えばエーテル基をリンカーに導入すると、血漿タンパク質の結合を最小にする補助となるであろう。Lがポリエチレングリコール(PEG)構成単位又はペプチド鎖(適切には1〜10個のアミノ酸残基)を含む場合、リンカー基は、イメージング剤のインビボで薬物動態及び血中クリアランス速度を変更するように機能できる。そのような「生物学的変更因子」であるリンカー基は、筋肉又は肝臓等の背景組織からの及び/又は血液からのクリアランスを加速し、背景干渉がより少ないことにより、より良好な診断画像を与え得る。生物学的変更因子であるリンカー基は、特定の排泄経路、例えば肝臓に対して腎臓による排泄を選択するように使用し得る。
【0094】
Lが1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖を含む場合、アミノ酸残基は、好ましくはグリシン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はセリンから選択される。L−がPEG部分を含む場合、好ましくは式IIA又はIIBの単分散PEG−様構造のオリゴマー化から誘導される単位を含む。
【0095】
【化7】

式中、pは1〜10の整数であり、C−末端単位()は、シグナル伝達部分に接続されている。また、式IIBのプロピオン酸誘導体を基礎としたPEG−様構造を使用することもできる。
【0096】
【化8】

式IIB中、pは式IIAに定義した通りであり、qは3〜15の整数であり、
pは、好ましくは1又は2であり、qは好ましくは5〜12である。
【0097】
リンカー基がPEG又はペプチド鎖を含まない場合、好ましい−(A)−基は、2〜10個の原子、最も好ましくは2〜5個の原子、特に好ましくは2個又は3個の原子からなる−(A)−部分を形成する、結合する原子のバックボーン鎖を有する。2個の原子からなる最小のリンカー基のバックボーン鎖は、相互作用が最小となるようにイメージング部分をHSPペプチドから十分に分離させる利点を与える。
【0098】
非ペプチドリンカー基、例えばアルキレン基又はアリーレン基は、コンジュゲートしたHSPペプチドとの水素結合による有意な相互作用が存在せず、従ってリンカーが巻き込まれない利点を有する。好ましいアルキレンスペーサ基は、−(CH−(dは2〜5)である。好ましいアリーレンスペーサは、式
【0099】
【化9】

のアリーレンスペーサである。
式中、a及びbは、独立に0、1又は2である。
【0100】
リンカー基−(A)−は、好ましくはジグリコール酸部分、マレイミド部分、グルタル酸、コハク酸、例えばKKGG等のリシン−グリシン誘導体、ポリエチレングリコールベースの単位又は式IIA又はIIBのPEG様単位を含む。
【0101】
例えばシグナル伝達物質を有する場合に、シグナル伝達物質又は治療薬の結合には、例えば18F又は11Cリンカーが必要でない場合がある。同様に、放射性同位体は、共有結合を介してEに直接付着することができる。その場合、HSPペプチドは、単に放射性同位体で標識される。用語「〜で標識される」とは、官能基がSIGを含むか又はSIGが更なる種として付着することを意味する。官能基がSIGを含む場合、これは「シグナル伝達部分」が化学的構造の一部を形成し、放射性同位体が該同位体の天然存在度を有意に越えるレベルで存在することを意味する。そのような同位体の上昇又は濃縮レベルは、適切には少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも20倍であり、理想的には対象とする同位体の天然存在度の少なくとも50倍又は対象とする同位体の濃縮レベルが90〜100%のレベルで存在する。そのような官能基の例は、SIGが化学的構造において同位体で標識される11C又は18F原子となるように、11Cレベルが上昇したCH基及び18Fレベルが上昇したフッ化アルキル基を含む。放射性同位体H及び14Cは、インビボでの適切なイメージング部分ではない。
【0102】
LOX−1を認識する部分(E)の標識に有用なペプチド配位子リンカー(L)の合成方法及びLOX−1に結合する連結剤を直接標識する方法を、本願明細書の以下に記載する。
【0103】
ペプチド合成
HSPペプチドを、標準的な固相技術を使用して、25μモルスケール上の2,4−ジメチルベンズヒドリルアミン樹脂(Rink Amide AM)を用いて、Nα−Fmoc−保護アミノ酸により合成した(Fmoc=フルオレニルメチルカルボニル)。ペプチドは、Rainin/Protein Technology Symphony固相ペプチド合成機(Woburn、MA)を使用して合成した。任意の化学反応に、樹脂を塩化メチレン中で1時間膨張させ、続いて30分間又はそれ以上かけて、DMF(ジメチルホルムアミド)で交換排出した。各カップリング反応は、室温にてDMF中で、5当量のアミノ酸を用いて実施した。反応時間は、一般的に45分、カップリングが困難と予想される残基については1時間であった(例えば、イソロイシン、IをIPP配列中のプロリン、Pへカップリング)。使用したカップリング試薬は、HBTU(O−ベンゾトリアゾリル−1−イル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)であり、塩基としてNMM(N−メチルモルホリン)を有する。各ステップにつき、カップリング剤は、見積もった樹脂の容量に対して5当量供給し、反応をDMF中の0.4M NMM溶液2.5ml中で実施した。一般的に、反応性の基が存在する場合、反応によって、酸に不安定な基で保護したアミノ酸の側鎖が変化しなかった。一般的に、チロシン、スレオニン及びセリン側鎖は、対応するtert−ブチルエーテルとして保護した。グルタミン酸側鎖は、対応するtert−ブチルエステルとして保護した。リシン及びオルニチン側鎖はBoc保護した。グルタミン側鎖は、γ−トリフェニルメチル誘導体として保護し、アルギニン側鎖は、2,2,5,7,8−ペンタメチル−クロマン−6−スルホニル誘導体として保護した。各カップリング反応の後、N−末端Fmoc保護アミンを、DMF中20%ピペリジンを室温で約15分間、2回添加して脱保護した。最後の残基を付加した後、尚ペプチド合成剤に存在する樹脂を、DMF及び塩化メチレンで徹底的に濯いだ。
【0104】
本発明において、1mLTFA、2.5%TSP(トリイソプロピルシラン)及び2.5%水からなるカクテルを使用して、ペプチドを樹脂から切断した。樹脂及びカクテルを、室温で約3〜4時間撹拌した。樹脂ビーズをグラスウールで濾過除去し、次いでfTFA2〜3mlで濯いだ。ペプチドを氷冷エーテル40mlで沈殿させ、沈殿が遠心分離管の底でペレットを形成するまで、3000〜4000rpmで遠心分離した。エーテルをデカントし、ペレットを冷エーテル(40mL)中に再懸濁させ、再度遠心分離した。この工程を2〜3回繰り返した。最後の洗浄中、Millipore水10mlを冷エーテル30mlに加え、混合物を再度遠心分離した。エーテルをデカントした。粗ペプチドを含む水層を、凍結乾燥のため丸底フラスコに移した。
【0105】
ペプチドの合成は、飛行時間型マトリクス補助レーザー脱離スペクトロスコピー(MALDI−TOF)を用いた質量分析により確認した。さらに粗合成混合物中の純粋な生成物の特性を調べるために、予備LC/MS技術も用いた。
【0106】
結合の合成
フルオレセイン色素、5(6)−カルボキシフルオレセインと合成ペプチドのN−末端との結合は、好ましくは色素、HBTU及びNMMを添加して、上記のアミノ酸と同じ方法で樹脂に含めることが好ましい。反応後、樹脂を、好ましくはDMF及び塩化メチレンで徹底的に洗浄し、窒素流下で乾燥する。1mLTFA、2.5%TSP(トリイソプロピルシラン)及び2.5%水を含む混合物を用いて、ペプチドを樹脂から切断することができる。樹脂及び混合物を、好ましくは室温で約3〜4時間撹拌する。次いで、ガラスウールを用いて樹脂ビーズを濾過して除去し、次いでTFA2〜3mlで濯ぐ。さらに、ペプチドを、好ましくは氷冷エーテル(40mL)で沈殿させ、沈殿物が遠心分離管の底でペレットを形成するまで遠心分離する(例、3000〜4000rpm)。エーテルをデカントしてもよく、ペレットを冷エーテル(40mL)中に再懸濁し、再び遠分離した。このプロセスを2〜3回繰り返してもよい。最後の洗浄中、好ましくはMillipore水10mlを冷エーテル30mlに加え、混合物を再度遠心分離した。次に、エーテルをデカントしてもよく、粗ペプチドを含有する水層を、凍結乾燥のために丸底フラスコに移してもよい。ペプチド合成に関する粗収率は、通常約90%であった。非標識ペプチドは、一般的に観察されなかった。
【0107】
好ましくは100ペプチドを、C4−シリカカラム(Vydac、Hesperia、CA)を用いた逆相セミ分取又は分取HPLCにより精製した。ペプチドのクロマトグラムを、アミド発色団の吸収に対応する220nmにおいて測定することができる。495nmにおける測定も監視し、ペプチド上のフルオレセイン色素の存在を確認することができる。セミ分取及び分取に、各々流速3ml/分及び10ml/分のCHCN/TFA(アセトニトリル/トリフルオロ酢酸、100:0.01)及びHO/TFA(水/トリフルオロ酢酸、100:0.01)溶離液を含む溶媒系を使用することが好ましい。Millipore水に溶解した粗ペプチドを、セミ分取及び分取のために、各々1.5mg及び5〜10mgペプチドの範囲で注入することができる。クロマトグラム形を分析して、良好な分解能及びピークの形状を確認した。全ペプチドに関する傾斜条件は、一般的に30分でCHCN/TFA(100:0.01)5〜50%であった。精製したペプチドの同一性を、マトリクス補助レーザー脱離飛行時間(Time−of−Flight)質量分析により確認した。
【0108】
治療薬
本発明の治療薬(T)は、例えば抗ウイルス及び抗癌剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、ウイルス及びステロイドとして有用な、例えば抗生物質、鎮痛薬、ワクチン、抗炎症薬、抗うつ薬、抗ウイルス薬、抗癌剤、酵素阻害剤、ジドブジンを含有する製剤、高分子ポリペプチド、芳香族ニトロ及びニトロソ化合物、並びにそれらの代謝産物等の医薬化合物又は組成物及び生物学的に活性な組成物、例えばホルモン又は他の増殖刺激剤、その混合物、並びに同様物等の増殖を促進する組成物を含むが、これらに限定されない。
【0109】
生物学的に活性な成分は、例えば抗癌剤等の細胞内に内在化した場合、有効性を改善することが可能である、任意の周知の活性物質から選択されてもよい。活性成分は、例えば5−フルオロウラシル(5−FU)、シトシンアラビノシド(ARAc)、6−メルカプトプリン、メトトレキサート等の代謝拮抗薬、例えばナイトロジェンマスタード、シクロホスファミド、ニトロソウレア、シスプラチン等のアルキル化、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド(VP16)等の植物性アルカロイド、例えばマイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン等の抗生物質又は例えばタモキシフェン若しくはフルタミド等のホルモンを含んでもよい。
【0110】
第2の実施形態では、本発明は、哺乳類への投与に適した形態における式Iの化合物と生体適合性の担体とを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物のために、式(I)の本質的な特徴及びその好ましい実施形態は、第1の実施形態(上記)に記載した通りである。
【0111】
「生体適合性担体」は体液であり、特に、組成物が生理学的許容性を有するように、即ち有毒性又は過度の不快感なしで哺乳類の身体へ投与できるように、薬剤が懸濁又は溶解することができる液体である。生体適合性担体は、注入可能な担体液体であることが適切であり、例えば滅菌された、非発熱性の注射用水、水溶液、例えばエタノール水溶液又は生理食塩水(注射用の最終生成物が等張となるように、好適に平衡にすることができる)、1以上の等張性調整物質(例、血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例、ブドウ糖又はショ糖)、糖アルコール(例、ソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例、グリセロール)又は他の非イオン性ポリオール材料(例、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等)の水溶液である。生体適合性担体は、非発熱性の注射用水又は等張生理食塩水が好ましい。
【0112】
そのような医薬組成物は、皮下注射用針による1以上回の穿孔に適切であるが、完全な無菌状態を保持する密閉容器(例、襞付き隔壁(crimped−on septum)密閉容器)内に適切に供給される。そのような容器は、患者の1以上回の用量を収容し得る。好ましい複数回用量の容器は、1バルクのバイアルを含む(例、10〜30cm容量)。この容器は、複数回の患者線量を収容するため、1回の患者線量を、製剤の利用可能な期間、臨床状態に適するように様々な時間間隔において臨床グレードの注射器内に引き入れることができる。プレフィルド注射器は、ヒトの1回の用量又は「単位用量」を収容するよう構成されており、従って臨床用途に適した使い捨て注射器又は他の注射器であることが好ましい。SIGが放射性の場合、プレフィルド注射器は、操作者を放射性線量から保護する注射器遮蔽物を任意にて備えてもよい。そのような放射性医薬品注射器の適切な遮蔽物は、当分野にて周知であり、鉛及びタングステンのいずれかを含むことが好ましい。
【0113】
IGがインビボにおけるイメージングのための放射性核種(即ち、放射性医薬品)の場合、放射性医薬品を、以下の第3の実施形態に説明するように、キットから調製することができる。また、放射性医薬品を無菌製造条件下で調製して所望の滅菌生成物を得てもよい。放射性医薬品を非滅菌条件下で調製する後、例えばγ−照射、高圧蒸気滅菌法、乾熱又は化学的処理(例、酸化エチレンを用いた)により最終的に滅菌してもよい。本発明の放射性医薬品は、キットから調製することが好ましい。
【0114】
第3の実施形態では、本発明は、第2の実施形態の医薬組成物の調製用キットを提供する。SIGは放射性同位体又は放射性核種を含む。そのようなキットは、放射性同位体の滅菌原料との反応によって、最小数の操作により所望の放射性医薬品が得られるように、好ましくは滅菌型非発熱性の形態の上記「前駆体」を含む。そのような考慮は、放射性同位体が比較的短い半減期である放射性医薬品及び取り扱いを容易にして放射性物質を扱う薬剤師の放射線量を低減させるのに特に重要である。従って、そのようなキットを再構成するための反応媒体は、好ましくは上記に定義した「生体適合性担体」であり、最も好ましくは水性担体である。
【0115】
適切なキット容器は、完全な滅菌状態及び/又は放射能に対する安全性及び容器の上部空間の不活性気体(例、窒素又はアルゴン)を任意に保持しながら、注射器による溶液の添加する及び引き入れることができる密閉容器を含む。好ましいそのような容器は、隔壁で密封されたバイアルであり、気密容器には、(一般的にアルミニウムの)上部シールが襞で止められている。そのような容器は、所望であれば、例えば上部空間の気体の交換又は溶液の脱気のための真空に耐える密閉容器であるという更なる利点を有する。
【0116】
非放射性キットは、さらに例えば放射性保護剤、抗菌保存剤、pH−調整剤又はフィラー等の追加の成分を任意に含んでもよい。
【0117】
用語「放射性保護剤」は、水の放射線分解により生じた例えば酸素含有フリーラジカル等の高い反応性を有するフリーラジカルをトラップすることによって、例えば酸化還元工程等の劣化反応を抑制する化合物を意味する。本発明の放射性保護剤は、適切にはアスコルビン酸、パラ−アミノ安息香酸(即ち、4−アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(即ち、2,5−ジヒドロキシ安息香酸)及びその生体適合性陽イオンとの塩から選択される。用語「生体適合性陽イオン」は、イオン化した、負荷電を有する基と塩を形成する、正電荷の対イオンを意味する。また、前記正電荷の対イオンは無毒であるため、哺乳類、特にヒトの身体に投与するに適している。適切な生体適合性陽イオンの例は、アルカリ金属ナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属カルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンを含む。好ましい生体適合性陽イオンは、ナトリウム及びカリウム、最も好ましくはナトリウムである。
【0118】
用語「抗菌保存剤」は、例えばバクテリア、酵母又はカビ等の有害である恐れのある微生物の増殖を阻害する薬剤を意味する。抗菌保存剤は、用量に応じていくつかの殺菌特性も示す。本発明の(1種以上の)抗菌保存剤の主な役割は、再構成後の放射性医薬組成物、即ち放射性診断生成物それ自体においてそのような微生物の増殖を阻害することである。しかし、抗菌保存剤を、再構成前の本発明の非放射性キットの1種以上の成分中の有害である恐れのある微生物の増殖の阻害にも任意に使用することができる。適切な(1種以上の)抗菌保存剤は、パラベン、即ちメチル、エチル、プロピル若しくはブチルパラベン又はその混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオマーサルを含む。好ましい(1種以上の)抗菌保存剤は、パラベンである。
【0119】
用語「pH調整剤」は、ヒト又は哺乳類への投与のために、再構成されたキットのpHが許容可能な範囲(約pH4.0〜10.5)内にあることを確実にする有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。そのような適切なpH調整剤は、薬理学的に許容できる緩衝剤、例えばトリシン、ホスフェート又はTRIS[即ち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]及び薬理学的に許容できる塩基、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はその混合物を含む。コンジュゲートが酸の塩の態で用いられる場合、pH調整剤は、別個のバイアル又は容器内に任意に提供されるため、キットの使用者は、複数ステップからなる手順の一部としてpHを調整することができる。
【0120】
用語「フィラー」は、製造及び凍結乾燥中の材料の取り扱いを容易にすることができる薬理学的に許容できる充填剤を意味する。適切なフィラーは、無機塩、例えば塩化ナトリウム及び水溶性の糖又は糖アルコール、例えばショ糖、麦芽糖、マンニトール又はトレハロースを含む。
【0121】
キット中に用いられる場合、「前駆体」の好ましい態様は上述した通りである。キット中で使用される前駆体を無菌製造条件下で使用して、所望の滅菌型非発熱性材料を得ることができる。前駆体は、非滅菌条件下で使用した後、例えばγ−照射、高圧蒸気滅菌法、乾熱又は(例、酸化エチレンで)化学的処理により最終的に滅菌されてもよい。好ましくは、前駆体は滅菌、非発熱形態で使用される。最も好ましくは滅菌、非発熱性前駆体は、上述した密閉容器内で使用される。
【0122】
キットの「前駆体」は、任意にて、上述したように固体支持体のマトリクスに共有結合させて任意に供給することができる。従ってPET放射性医薬品の調製において、キットは、適合させた自動合成機内に差し込み可能なカートリッジを含んでもよい。カートリッジは、固体支持体に結合する前駆体とは別に、望ましくないフッ化物イオンを除去するカラム及び必要に応じて、反応混合物を蒸発させ、生成物を製剤化するよう接続される適切な容器を含んでもよい。合成に必要な試薬及び溶媒、並びに他の消耗品を、放射性濃度、容積、送達時間等に関する消費者の要求に合わせるように合成機を作動させるソフトウエアを携えたコンパクトディスクを含んでもよい。稼働間の汚染率を最小にし、滅菌状態及び品質を保証するために、キットの全成分が使い捨てのものであれば都合がよい。
【0123】
第4の実施形態では、本発明は、組織をイメージングしてLOX−1の存在及び/又は量を検出する方法を提供する。該方法は、
式(I)(式中、YはSIGである)の化合物を哺乳類に投与し、
LOX−1に結合していない式(I)の化合物を除去する排除剤を適宜投与し、
哺乳類をSIGで生成されるシグナルを検出するのに有効なイメージングに付してLOX−1の存在及び/又は量の検出することを含む。
【0124】
イメージング方法に関して、YはSIGであり、そうでない場合、式(I)の本質的な性質及びその好ましい実施形態は第1の実施形態(上記)に記載した通りである。
【0125】
用語「排除剤」は、血流中を循環する任意の式(I)の化合物に結合して、肝臓又は腎臓により容易に排泄させて哺乳類の身体から除去される種を形成する、生体適合性を有する無毒の化合物を意味する。
【0126】
結合部分Eに付着する特定のSIGに応じて、適当なイメージング技術を使用して標的組織をイメージングする。例えば、18Fが標識剤として使用される場合、PETイメージングを実施する。好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、第2の実施形態の医薬組成物として投与される。
【0127】
標識される配位子を診断として使用し、LOX−1の過剰発現が疑われる標的組織のイメージングを支援することができる。イメージング方法は、診断として使用され、インビトロ又はインビボで、好ましくはインビボでヒト組織内のLOX−1の存在を検出することができる。さらに、イメージング方法を何日間も繰り返してLOX−1の増殖又は発現の程度を定量的に評価することができる。このように、インビトロでのイメージングは、組織又は細胞培養をイメージングしてLOX−1の存在及び/又は量を検出することを含むことができる。
【0128】
好ましい態様において、哺乳類は、以前にアテローム性動脈硬化症を罹患していると診断され、アテローム性動脈硬化症の治療用の治療薬で既に治療されており、該方法はさらに、
投与及びイメージング法を、ある期間にわたって1回以上繰り返し、LOX−1の量の差を検出することを含んでなる。
【0129】
これは、LOX−1の発現に起因する疾患又は障害を治療する治療の有効性を監視する方法を提供する。
【0130】
LOX−1の発現に起因する疾患又は障害は、高濃度のLOX−1が存在する炎症部位、並びに例えばマクロファージ及び他の炎症細胞が蓄積する領域を含む。より好ましくは、組織は、動脈硬化性プラークを含む動脈硬化組織である。
【0131】
第5の実施形態では、本発明は、LOX−1の発現に起因する疾患又は障害が疑われる哺乳類の診断方法における、式(I)(式中、YはSIGである)の化合物の使用を提供する。そのような疾患は、上記の第4の実施形態に記載した通りである。この使用に関して、YはSIGであり、SIGはインビボにおけるイメージングに適切であることが好ましい。そうでない場合、式(I)の本質的な特徴及びその好ましい実施形態は、第1の実施形態(上記)に記載した通りである。
【0132】
この使用において、哺乳類は、以前に第3の実施形態の放射性医薬組成物を投与される。用語「以前に投与した」は、臨床医が薬剤を患者に例えば静脈注射による投与に関するステップが、既に行なわれていることを意味する。SIGがインビボでのイメージングにおいて適切である場合、この実施形態は、本発明の第1の態様に記載される前記イメージング剤の好ましい実施形態を含む。また、好ましい実施形態では、この使用はLOX−1が関与する哺乳類の身体の疾患状態を、インビボで診断的イメージングするための診断薬の製造における式(I)の化合物(式中、YはSIGである)の使用も含む。
【実施例】
【0133】
本発明を、以下の非限定的な例にて説明する。
【0134】
全ての実施例は、机上の実施例である。
【0135】
実施例1
熱ショックタンパク質E基を、当分野にて周知の標準的な技術を用いて、4−アシルフェニレン基(L)を介してフルオレセイン(SIG)に共有結合させる。細胞株を用いて、細胞に対する錯体の結合能を試験する。錯体を細胞と共にインキュベートし、続いて洗浄する。その後、次いで標準的な技術を用いて細胞をイメージングする。さらに、HSPフラグメントのシグナルを内在化する能力を、細胞内に内在化させた色素を介し、蛍光像を介して示された細胞表面上のものと対比させて示す。フラグメントを、細胞中に内在化すると蛍光を発するpH感受性色素、例えばCypHer(Amersham Biosciences、Pscataway、NJ)で標識する。
【0136】
実施例2
当分野にて周知の標準的な技術を用いて、Lys−Lys−Gly−Gly(L)を介してEを18F(SIG)に共有結合させる。次いで錯体を、インビボによる注射によって、Jackson Laboratoriesから入手可能な5匹の対照及び5匹の疾患ApoE−/−マウスへ送達する。送達後、標準的なPET技術を用いてマウスを走査する。疾患マウスは、患部動脈壁に沿って特異的結合を示す。
【0137】
第2段階にて、錯体による処理を繰り返し、患部領域の分解能を増大させるイメージング剤の蓄積を示す。
【0138】
実施例3
当分野にて周知の標準的な技術を用いて、DTPA(L)を介してEをタキソール(T)に共有結合させる。細胞株を用いて、錯体の細胞に対する結合能を試験する。錯体を細胞と共にインキュベートし、続いて洗浄する。HSPフラグメントのシグナルを内在化する能力を、細胞内に内在化させた色素の認識を介して、蛍光像を介して示された細胞表面上のものと対比させて示す。
【0139】
実施例4
当分野にて周知の標準的な技術を用いて、68Ga(L)を介してEを共有結合させる。錯体を、インビボにおける注射により、5匹の対照及び5匹の疾患ApoE−/−マウスへ送達する。送達後、標準的なPET技術を用いてマウスを走査する。疾患マウスは、患部動脈壁に沿って特異的結合を示す。
【0140】
第2段階にて、錯体による処理を繰り返してイメージング剤の蓄積を示し、患部領域の分解能を増大させる。
【0141】
実施例5
当分野にて周知の標準的な技術を用いて、Lys−Lys−Gly−Gly(L)を介してEを18F(SIG)に共有結合させ、さらにタキソール(T)に共有結合させる。熱ショックHeLa細胞株及びストレス無負荷の正常HeLa細胞を用いて、細胞に対する錯体の結合能を検査する。さらに、錯体を細胞と共にインキュベートし、続いて洗浄する。LOX−1を発現する細胞は、選択的細胞死がより多くなることを示す。さらに、細胞死の選択性を、細胞のイメージング及びシグナルの内在化を介して示す。
【0142】
実施例6
リンカーを持たない錯体の例として、当分野にて周知の標準的な技術を用い、68Ga(SIG)を介してEを共有結合させる。次いで錯体を、インビボにおける注射によって、5匹の対照及び5匹の疾患ApoE−/−マウスへ送達する。送達後、標準的なPET技術を用いてマウスを走査する。疾患マウスは、患部動脈壁に沿って特異的結合を示す。
【0143】
第2段階にて、錯体による処理を繰り返してイメージング剤の蓄積を示し、患部領域の分解能を増大させる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】HSP−70のN−末端に関するアミノ酸配列。
【図2】HSP−70のC−端末に関するアミノ酸配列。
【図3】ヒトLOX−1に関するアミノ酸配列。
【図4】式(I)の化合物におけるL及びSIGの変形を示す図。
【図5】HSP−70のN−末端に関する三次元構造図。
【図6】HSP−70のC−端末に関する三次元構造図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)の化合物。
(I)Y−(L)n−E
式中、YはSIG又はTであって、SIGはインビボ又はインビトロで検出可能なシグナルを与えるシグナル伝達部分であり、Tは治療薬であり、
LはYとEとを連結するリンカー基であり、
EはLOX−1に結合する熱ショックタンパク質又はそのフラグメント若しくは変異体を含む結合部分であり、
nは0又は1である。
【請求項2】
YがSIGである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
IGが蛍光色素、放射性核種、近赤外色素、磁気的に活性な同位体、超常磁性粒子、放射線不透過性ヨウ素化有機化合物、Z値が50を超える放射線不透過性金属イオン、ガス封入マイクロバブル又はこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載の化合物。
【請求項4】
IGが放射性核種である、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
前記放射性核種が11C、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、111In、123I、124I、125I、131I、154−158Gd及び175Luからなる群から選択される、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
前記放射性核種が陽電子放射体である、請求項4又は請求項5記載の化合物。
【請求項7】
前記陽電子放射体が18F及び11Cから選択される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
前記放射性核種がγ放射体である、請求項4又は請求項5記載の化合物。
【請求項9】
IGが近赤外色素である、請求項3記載の化合物。
【請求項10】
Lが2以上の原子価の有機基である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
前記有機基がY基及びE基の双方と共有結合している、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
前記有機基がY基及びE基の双方とイオン結合している、請求項10記載の化合物。
【請求項13】
前記有機基がアルキレン、アリーレン、シクロアルキレン、アミノアルキレン、アミノアリーレン、アミノシクロアルキレン、チオアルキレン、チオアリーレン、チオシクロアルキレン、オキシアルキレン、オキシアリーレン、オキシシクロアルキレン、アシルアルキレン、アシルアリーレン、アシルシクロアルキレン単位及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項10記載の化合物。
【請求項14】
前記アシルアリーレン単位が以下の構造の4−アシルフェニレン基である、請求項13記載の化合物。
【化1】

【請求項15】
Lがポリエチレングリコール(PEG)構成単位又はペプチド鎖を含んでいて、Lが式Iの化合物の生体内での薬物動態及び血中クリアランス速度を変えるように機能し得る、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の化合物。
【請求項16】
前記ペプチド鎖が1〜10のアミノ酸残基からなる、請求項14記載の化合物。
【請求項17】
IGが金属イオンを含んでおり、SIG又は有機基のいずれかが金属キレート剤を含む、請求項1乃至請求項16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
前記金属キレート剤が52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94mTc、94Tc、99mTc、111In、154−158Gd及び175Luの陽イオンからなる群から選択される1種以上の金属陽イオンと結合する、請求項16記載の化合物。
【請求項19】
前記金属キレート剤がDTPA、1,4,7−トリアザシクロノナン−N,N′,N″−三酢酸(NOTA)、p−ブロモアセトアミド−ベンジル−テトラエチルアミンテトラ酢酸(TETA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(DOTA)、EDTA及びCHXaからなる群から選択される、請求項17又は請求項18記載の化合物。
【請求項20】
EがLOX−1に結合する熱ショックタンパク質70又はそのフラグメントである、請求項1乃至請求項19のいずれか1項記載の化合物。
【請求項21】
前記フラグメントが熱ショックタンパク質70のN−末端フラグメントである、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
前記フラグメントが30個以下のアミノ酸からなる、請求項20又は請求項21記載の化合物。
【請求項23】
請求項1乃至請求項22のいずれか1項記載の式(I)の化合物を生体適合性担体と共に哺乳類への投与に適した形態で含む医薬組成物。
【請求項24】
Yが請求項2乃至請求項9のいずれか1項記載のSIGである、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
IGが放射性核種である、請求項24記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項25記載の組成物の調製用キット。
【請求項27】
哺乳類におけるLOX−1の存在及び/又は量を検出するために組織をイメージングする方法であって、
YがSIGである請求項1乃至請求項22のいずれか1項記載の式(I)の化合物を哺乳類に投与すること、
LOX−1に結合していない式(I)の化合物を除去する排除剤を適宜投与すること、及び
IGで生成されるシグナルを検出するのに有効なイメージングに哺乳類を付してLOX−1の存在及び/又は量を検出すること
を含んでなる方法。
【請求項28】
哺乳類が以前にアテローム性動脈硬化症を罹患していると診断され、アテローム性動脈硬化症の治療用の治療薬で治療されており、投与及びイメージング法をある期間にわたって1回以上繰り返し、LOX−1の量の差を検出することをさらに含んでなる、請求項27記載の方法。
【請求項29】
式(I)の化合物が請求項23乃至請求項25のいずれか1項記載の医薬組成物の一部である、請求項27又は請求項28記載の方法。
【請求項30】
IGを検出するのに有効なイメージングが陽電子放射断層撮影である、請求項27乃至請求項29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
IG18F及び11Cから選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
LOX−1の発現に起因する疾患又は障害が疑われる哺乳類を診断する方法における、Yが請求項3乃至請求項10のいずれか1項に規定される請求項1乃至請求項22のいずれか1項記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項33】
前記方法が請求項27乃至請求項31のいずれか1項記載の方法を含んでなる、請求項32記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−509921(P2008−509921A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525779(P2007−525779)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2005/028491
【国際公開番号】WO2006/020743
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(307035790)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (1)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】